特許第6648643号(P6648643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648643
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】封止用タブレット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/02 20060101AFI20200203BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20200203BHJP
   C03C 8/02 20060101ALI20200203BHJP
   C23C 4/073 20160101ALI20200203BHJP
   C23C 4/10 20160101ALI20200203BHJP
【FI】
   H01C17/02
   H01C1/034
   C03C8/02
   C23C4/073
   C23C4/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-118627(P2016-118627)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-224705(P2017-224705A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 卓司
(72)【発明者】
【氏名】三戸 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 勝彦
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−269336(JP,A)
【文献】 特開平02−058301(JP,A)
【文献】 特開昭49−080552(JP,A)
【文献】 特開平02−069381(JP,A)
【文献】 実開平02−146133(JP,U)
【文献】 実開昭57−097907(JP,U)
【文献】 特開2015−174801(JP,A)
【文献】 特開2004−285423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/02
H01C 1/034
C03C 8/02
C23C 4/073
C23C 4/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子を内部に搭載して封止するための筒状の封止用タブレットの製造方法であって、
セッター(キャビティを有する型を除く)の表面に金属化合物を含む金属又は合金を溶射する工程と、
ガラスを含み、かつプレス成形体である筒状体を、前記金属化合物を含む金属又は合金が溶射された前記セッターの溶射面上に載置する工程と、
前記筒状体を前記セッターの溶射面上に載置した状態で焼成し、封止用タブレットを得る工程と、
を備える、封止用タブレットの製造方法。
【請求項2】
前記セッターの溶射面における算術平均粗さRaが、5μm以上である、請求項1に記載の封止用タブレットの製造方法。
【請求項3】
前記金属化合物を含む金属又は合金が、タングステンカーバイドと、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金との混合物である、請求項1又は2に記載の封止用タブレットの製造方法。
【請求項4】
素子を内部に搭載して封止するための筒状の封止用タブレットであって、
前記封止用タブレットが、ガラスを含み、かつプレス成形体の焼結体であり
前記封止用タブレットの外側面に、金属化合物を含む金属又は合金が付着している、封止用タブレット。
【請求項5】
前記封止用タブレットの内側面に、前記金属化合物を含む金属又は合金が付着していない、請求項4に記載の封止用タブレット。
【請求項6】
前記金属化合物を含む金属又は合金が、タングステンカーバイドと、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金との混合物である、請求項5に記載の封止用タブレット。
【請求項7】
ガラスセラミックスの焼結体により構成されている、請求項5又は6に記載の封止用タブレット。
【請求項8】
サーミスタ素子の封止に用いられる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の封止用タブレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子を内部に搭載して封止するための封止用タブレット及び該封止用タブレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素子を内部に搭載して封止するために、封止用タブレットが用いられている。上記封止用タブレットは、ガラスセラミックスの焼結体などにより形成されている。
【0003】
このような焼結体の製造方法として、下記の特許文献1には、セラミック原料を、セラミック製の型に導入して有形化し、該有形化されたセラミック原料を焼成する方法が記載されている。特許文献1では、有形化されたセラミック原料をセラミック製の型と一体としたまま焼成している。焼成により得られた焼結体は、冷却後、セラミック製の型から離型される。なお、特許文献1では、セラミック製の型の表面に離型層が形成されており、それによって得られた焼結体が型から離型しやすくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−269336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、離型層の上に原料を載せた状態で焼成する方法を用いて、筒状の封止用タブレットを作製する場合、離型層を構成する離型剤が封止用タブレットの内孔に侵入することがあった。そのため、封止用タブレットの内部にサーミスタ素子などの素子を搭載して使用すると、電極との間で導通不良が生じることがあった。
【0006】
本発明の目的は、素子を内部に搭載して使用する場合に、導通不良が生じ難い、封止用タブレット及び該封止用タブレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る封止用タブレットの製造方法は、素子を内部に搭載して封止するための筒状の封止用タブレットの製造方法であって、セッターの表面に金属化合物を含む金属又は合金を溶射する工程と、ガラスを含む筒状体を、前記金属化合物を含む金属又は合金が溶射された前記セッターの溶射面上に載置した状態で焼成し、封止用タブレットを得る工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る封止用タブレットの製造方法は、好ましくは、前記セッターの溶射面における算術平均粗さRaが、5μm以上である。
【0009】
本発明に係る封止用タブレットの製造方法は、好ましくは、前記金属化合物を含む金属又は合金が、タングステンカーバイドと、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金との混合物である。
【0010】
本発明に係る封止用タブレットは、素子を内部に搭載して封止するための筒状の封止用タブレットであって、前記封止用タブレットが、ガラスを含み、前記封止用タブレットの外側面に、金属化合物を含む金属又は合金が付着していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る封止用タブレットでは、好ましくは、前記封止用タブレットの内側面に、前記金属化合物を含む金属又は合金が付着していない。
【0012】
本発明に係る封止用タブレットは、好ましくは、前記金属化合物を含む金属又は合金が、タングステンカーバイドと、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金との混合物である。
【0013】
本発明に係る封止用タブレットは、好ましくは、ガラスセラミックスの焼結体により構成されている。
【0014】
本発明に係る封止用タブレットは、好ましくは、サーミスタ素子の封止に用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素子を内部に搭載して使用する場合に、導通不良が生じ難い、封止用タブレット及び該封止用タブレットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る封止用タブレットの模式的斜視図である。
図2図1のA−A線に沿う模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る封止用タブレットの製造方法を説明するための模式的斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る製造方法で得られた封止用タブレットに、サーミスタ素子を搭載している状態を示す模式的断面図である。
図5】実施例1で得られた封止用タブレットの外側面における倍率700倍の走査型顕微鏡写真である。
図6】比較例1で得られた封止用タブレットの外側面における倍率700倍の走査型顕微鏡写真である。
図7】実施例1で得られた封止用タブレットの内側面における倍率50倍の走査型顕微鏡写真である。
図8】比較例1で得られた封止用タブレットの内側面における倍率50倍の走査型顕微鏡写真である。
図9】従来の封止用タブレットの製造方法で得られた封止用タブレットに、サーミスタ素子を搭載している状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0018】
(封止用タブレット)
図1は、本発明の一実施形態に係る封止用タブレットの模式的斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿う模式的断面図である。図1に示すように、封止用タブレット1は、筒状の形状を有している。封止用タブレット1の内孔1aには、サーミスタ素子などの素子を搭載して封止することができる。
【0019】
封止用タブレット1は、外側面2を有する。外側面2には、金属化合物を含む金属又は合金が付着している。外側面2には、金属又は合金が融着していることが好ましい。その場合、後述する導通不良をより一層生じ難くすることができる。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、封止用タブレット1は、内孔1a側に内側面3を有している。本実施形態では、内側面3に、金属化合物を含む金属又は合金が付着していない。内側面3には、金属又は合金が付着していてもよいが、本実施形態のように金属又は合金が付着していないことが好ましい。また、金属又は合金が付着している場合においても、金属又は合金が、内側面3に融着していることが好ましい。その場合、後述する導通不良をより一層生じ難くすることができる。また、後述する導通不良をさらに一層生じ難くする観点から、内側面3にタルクなどの離型剤が付着していないことが好ましい。
【0021】
封止用タブレット1は、ガラスを含んでいる。より具体的に、封止用タブレット1は、ガラスや、ガラスセラミックスの焼結体により構成することができる。上記ガラスとしては、例えば、SiO−B−RO(RはMg、Ca、SrまたはBa)系ガラス、SiO−B−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SiO−B−RO−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SnO−P系ガラス、TeO系ガラス又はBi系ガラス、鉛珪酸塩系ガラスなどが挙げられる。ガラスセラミックスとしては、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)等が挙げられる。LTCCの具体的な例としては、酸化チタンや酸化ニオブ等の無機粉末と上記のガラス粉末との焼結体等が挙げられる。
【0022】
金属化合物を含む金属又は合金としては、例えば、サーメット材料を用いることができる。サーメット材料としては、例えば、金属化合物としてのタングステンカーバイドと、Coを含む金属又は合金との混合物を用いることができる。Coを含む金属又は合金としては、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金、すなわちコニクラリーが挙げられる。
【0023】
以下、封止用タブレット1の製造方法の一例について説明する。
【0024】
(封止用タブレットの製造方法)
封止用タブレット1の製造方法では、まず、セッターの表面に金属化合物を含む金属又は合金を溶射する。続いて、図3に示すように、金属化合物を含む金属又は合金が溶射されたセッター4の溶射面4a上に、筒状体5を載置する。次に、筒状体5をセッター4の溶射面4a上に載置した状態で焼成し、図1に示す封止用タブレット1を得る。なお、セッター4の溶射面4aとは、金属又は合金が溶射されたセッター4において、金属又は合金より外側の表面のことを意味するものとする。
【0025】
セッター4を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼により構成することができる。ステンレス鋼としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いることができる。また、セッター4には、上記金属又は合金の溶射前に、研磨処理が施されていてもよい。もっとも、後述する溶射面4aの算術平均粗さをより一層大きくする観点からは、溶射前のセッター4に研磨処理が施されていないことが好ましい。
【0026】
金属化合物を含む金属又は合金を溶射する方法としては、特に限定されず、フレーム溶射法やプラズマ溶射法などを用いることができる。フレーム溶射法としては、例えば、高速フレーム溶射法(HVOF)が挙げられる。プラズマ溶射法としては、例えば、大気圧プラズマ溶射法や、真空プラズマ溶射法を用いることができる。
【0027】
金属化合物を含む金属又は合金としては、例えば、サーメット材料を用いることができる。サーメット材料としては、例えば、金属化合物としてのタングステンカーバイドと、Coを含む金属又は合金との混合物を用いることができる。Coを含む金属又は合金としては、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金、すなわちコニクラリーが挙げられる。
【0028】
また、金属化合物を含む金属又は合金の平均粒径は、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。金属又は合金の平均粒径が大きすぎると、溶射によって形成される層の成分が不均一になることがある。また、金属又は合金の平均粒径が小さすぎると、噴出口の詰まりが発生し、作業効率が低下することがある。なお、上記平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0029】
セッター4の溶射面4aにおける算術平均粗さRaは、5μm以上であることが好ましい。算術平均粗さRaが、上記下限以上である場合、焼成により得られた封止用タブレット1をセッター4の溶射面4aからより一層容易に取り外すことができる。焼成により得られた封止用タブレット1をセッター4の溶射面4aからより一層容易に取り外す観点から、溶射面4aの算術平均粗さRaは、より好ましくは8μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。溶射面4aの算術平均粗さRaの上限としては、特に限定されないが、溶射性の観点から、25μmであることが好ましい。なお、算術平均粗さRaは、JIS B 601−2001に準拠して測定することができる。
【0030】
筒状体5は、必要に応じて無機粉末を加えたガラス粉末を、プレス成形することにより用意することができる。なお、筒状体5は、焼成前の封止用タブレット1であり、封止用タブレット1と実質的に同一の形状を有するものとする。
【0031】
上記ガラス粉末に用いるガラスとしては、例えば、SiO−B−RO(RはMg、Ca、SrまたはBa)系ガラス、SiO−B−R’O(R’はLi、NaまたはKa)系ガラス、SiO−B−RO−R’O系ガラス、SnO−P系ガラス、TeO系ガラス又はBi系ガラス、鉛珪酸塩系ガラスなどが挙げられる。無機粉末としては、例えば、酸化チタンや酸化ニオブ等が挙げられる。
【0032】
筒状体5の焼成は、例えば、電気炉内で行うことができる。また、筒状体5の焼成温度は、好ましくは550℃以上、より好ましくは600℃以上、好ましくは670℃以下、より好ましくは650℃以下である。筒状体5の焼成温度が上記範囲内である場合、金属又は合金をより一層確実に筒状体5の外側面に融着させることができる。
【0033】
このように、本実施形態の製造方法においては、金属化合物を含む金属又は合金が溶射されたセッター4の溶射面4a上に、ガラスを含む筒状体5を載置し、焼成する。そのため、得られた封止用タブレット1の外側面に金属又は合金が融着することとなる。また、本実施形態の製造方法では、金属又は合金が封止用タブレット1の外側面に融着するので、洗浄工程等において、封止用タブレットの外側面から金属又は合金が遊離し難くなり、封止用タブレットの内側面に金属又は合金が実質的に存在しないこととなる。よって、得られた封止用タブレット1の内孔にサーミスタ素子などの素子を搭載した場合に、導通不良が生じ難い。これを以下、従来の製造方法で得られた封止用タブレットにサーミスタ素子を搭載した場合と比較して、詳細に説明する。
【0034】
図9は、従来の封止用タブレットの製造方法で得られた封止用タブレットに、サーミスタ素子を搭載している状態を示す模式的断面図である。なお、従来の製造方法では、表面に離型剤としてのタルクを塗布したセッターの上に、ガラスを含む筒状体を載置した状態で焼成することにより、封止用タブレット101を得ている。また、得られた封止用タブレット101の内部には、サーミスタ素子102が搭載されている。サーミスタ素子102は、封止用タブレット101の内部において、電極103,104に接続されている。
【0035】
図9に示すように、従来の製造方法で得られた封止用タブレット101を用いてサーミスタ素子102を封止した場合、サーミスタ素子102と電極103,104との界面に離型剤105が存在することがある。従来の製造方法においては、焼成工程や、洗浄工程において、セッターに塗布された離型剤105の一部が遊離し、封止用タブレット101の内孔に混入するためであると考えられる。このように、従来の製造方法で得られた封止用タブレット101では、焼成工程や洗浄工程において遊離した離型剤105がサーミスタ素子102と電極103,104との界面に存在することがあるため、サーミスタ素子102と電極103,104との間で導通不良が生じることがある。
【0036】
これに対して、本実施形態の製造方法では、セッターの表面に金属又は合金を溶射しており、セッターの表面に離型剤を塗布していない。しかも、本実施形態の製造方法では、焼成により得られた封止用タブレット1の表面に金属又は合金が融着し、封止用タブレット1の外側面から金属又は合金が遊離し難くなるため、焼成工程や洗浄工程において、封止用タブレット1の内部に金属又は合金が混入し難い。このように、本実施形態の製造方法では、封止用タブレット1の内部に金属又は合金が混入し難く、しかも離型剤を用いてないことから内部に離型剤が混入することがない。従って、図4に示すようにサーミスタ素子6と、電極7,8との界面には、金属又は合金が存在し難く、離型剤が存在することがない。よって、封止用タブレット1の内部にサーミスタ素子6を搭載しても、導通不良が生じ難い。
【0037】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
(実施例1)
まず、マルテンサイト系ステンレス鋼からなるセッターの表面に、タングステンカーバイドと、Co、Ni、Cr、Al、Y及びFeを含む合金(コニクラリー)との混合物を、高速フレーム溶射法により溶射した。次に、タングステンカーバイドとコニクラリーとの混合物を溶射したセッターの溶射面上に、組成が鉛珪酸塩系のガラスセラミックスからなる筒状体を載置した状態で、620℃の温度で、焼成し、筒状の封止用タブレットを得た。
【0039】
(比較例1)
セッターの表面に、タングステンカーバイドとコニクラリーとの混合物を溶射する代わりに、離型剤としてのタルクを塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、筒状の封止用タブレットを得た。
【0040】
(評価)
図5は、実施例1で得られた封止用タブレットの外側面における倍率700倍の走査型顕微鏡写真である。図6は、比較例1で得られた封止用タブレットの外側面における倍率700倍の走査型顕微鏡写真である。図5に示すように、実施例1で得られた封止用タブレットの外側面には、タングステンカーバイトとコニクラリーとの混合物の融着痕が観察された。また、図5に示すように、実施例1では、封止用タブレットの外側面に離型剤が付着していなかった。一方、図6に示すように、比較例1で得られた封止用タブレットの外側面には離型剤が数多く付着していた。
【0041】
図7は、実施例1で得られた封止用タブレットの内側面における倍率50倍の走査型顕微鏡写真である。図8は、比較例1で得られた封止用タブレットの内側面における倍率50倍の走査型顕微鏡写真である。図7に示すように、実施例1で得られた封止用タブレットの内側面には、離型剤などの異物が付着していなかった。一方、比較例1で得られた封止用タブレットの内側面には、例えば図8に矢印で示すように、異物(離型剤)が付着していた。なお、エネルギー分散型X線分光器(EDS)により、この異物が、離型剤のタルクに由来するMgやSiを含んでいることが確認されている。
【0042】
また、実施例1及び比較例1で得られた封止用タブレットを、それぞれ、100個ずつ袋に入れて、500回振ったときの脱落粉を倍率3000倍の走査型顕微鏡写真により確認した。その結果、比較例1では、30視野中16個の脱落粉が観察されたのに対し、実施例1では、脱落粉が全く観察されなかった(30視野中0個)。
【0043】
なお、実施例1で得られた封止用タブレットの内部にサーミスタ素子を搭載したところ、実施例1では電極との間で導通不良が生じなかった。他方、比較例1で得られた封止用タブレットにサーミスタ素子を搭載したところ、電極との間で導通不良が生じるサンプルが存在していた。
【符号の説明】
【0044】
1…封止用タブレット
1a…内孔
2…外側面
3…内側面
4…セッター
4a…溶射面
5…筒状体
6…サーミスタ素子
7,8…電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9