特許第6648801号(P6648801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6648801
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20200203BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B60C11/03 200A
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300E
   B60C11/03 C
   B60C11/13 C
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-199410(P2018-199410)
(22)【出願日】2018年10月23日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】増山 達也
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−199120(JP,A)
【文献】 特開2017−128217(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/179756(WO,A1)
【文献】 特表2012−500747(JP,A)
【文献】 特開2003−054219(JP,A)
【文献】 特開2004−352023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部の外表面に、タイヤ赤道に対して一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道と交差するラグ溝と、タイヤ赤道に対して他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道と交差するラグ溝とが、タイヤ周方向に交互に配列され、
各ラグ溝は、タイヤ赤道と交差してタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部と、前記第一溝部の一端から前記第一溝部よりもタイヤ周方向に対して小さい角度で傾斜してトレッド端まで延在する第二溝部とからなり、前記第一溝部の他端はタイヤ周方向に隣り合うラグ溝の前記第二溝部に連通し、前記第一溝部は前記ラグ溝のトレッド端側の端部よりも踏込側に位置しており、
タイヤ赤道に対して一方側または他方側でタイヤ周方向に隣り合う前記第二溝部どうしを連結する周方向細溝が形成され、前記ラグ溝と前記周方向細溝によって複数のブロックが区画され、これらブロックが前記周方向細溝よりもタイヤ赤道側に位置するセンターブロックと前記周方向細溝よりトレッド端側に位置するショルダーブロックとを含み、
各ラグ溝において、タイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックどうしで挟まれる部位をラグ溝センター部とし、タイヤ周方向に隣り合う前記ショルダーブロックどうしで挟まれる部位をラグ溝ショルダー部としたとき、前記ラグ溝センター部におけるタイヤ幅方向外側であって前記第二溝部に含まれる端部の溝幅が前記ラグ溝ショルダー部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅よりも狭く、前記ラグ溝センター部の延在方向の一部または全部に底上げ部が設けられ、前記ラグ溝センター部における踏込側および蹴出側の各々の溝壁が1つの角度変化点を有し、前記角度変化点よりも踏面側で前記ラグ溝センター部の溝壁と前記トレッド部の踏面に対する法線とがなす溝壁角度αが前記角度変化点よりも溝底側で前記ラグ溝センター部の溝壁と前記トレッド部の踏面に対する法線とがなす溝壁角度βよりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部の踏面から前記角度変化点までの深さが前記ラグ溝の最大深さに対して35%〜60%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αが5°〜30°であり、前記ラグ溝センター部における溝底側の溝壁角度βが3°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αにおける蹴出側の溝壁角度α1と踏込側の溝壁角度α2とが0°≦α1−α2≦8°の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ラグ溝センター部におけるタイヤ幅方向外側であって前記第二溝部に含まれる端部の溝幅が前記ラグ溝ショルダー部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅に対して38%〜60%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ラグ溝センター部における底上げ部の深さが前記ラグ溝の最大深さに対して65%〜85%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αがタイヤ赤道から前記第二溝部に含まれる前記ラグ溝センター部のタイヤ幅方向外側の端部に向かって漸増することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αがタイヤ赤道上において7°である一方で前記第二溝部に含まれる前記ラグ溝センター部のタイヤ幅方向外側の端部において25°であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ラグ溝の最大深さが15mm〜28mmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
タイヤ赤道からトレッド端までの距離をWとし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.5W離間した位置とタイヤ赤道との間の領域を内側領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.5W離間した位置とトレッド端との間の領域を外側領域としたとき、前記外側領域における前記第二溝部のタイヤ周方向に対する平均角度よりも前記内側領域における前記第二溝部のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなるように前記第二溝部は湾曲または屈曲しており、
前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大長さがトレッド展開幅の25%〜35%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記センターブロックと前記ショルダーブロックの踏面に少なくとも1つの屈曲点を有する浅溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記センターブロックに形成された前記浅溝の一端が前記周方向細溝に連通し、他端が前記第二溝部に連通し、前記センターブロックに形成された前記浅溝をタイヤ赤道に向かって投影したときの前記浅溝の投影成分どうしが重複せず、
前記ショルダーブロックに形成された前記浅溝は両端がブロック内で終端し、前記ショルダーブロックの踏面のタイヤ幅方向内側の頂点の位置よりも踏込側に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤとして好適な空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、未舗装路におけるトラクション性能および耐石噛み性能を改善しながら、低騒音性能を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラック等の建設車両に用いられる重荷重用空気入りタイヤは、主として、未舗装路におけるトラクション性能および耐石噛み性能に優れることが求められる。そのため、タイヤ幅方向に延在するラグ溝を多数備えたブロック基調のトレッドパターンが採用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、近年、各種タイヤに対する要求性能が高まっており、上記のようなタイヤにおいても、未舗装路におけるトラクション性能だけでなく、舗装路におけるタイヤ性能(例えば、低騒音性能)を改善することが求められている。そのため、未舗装路におけるトラクション性能および耐石噛み性能を改善しながら、低騒音性能を改善するための対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4676959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未舗装路におけるトラクション性能および耐石噛み性能を改善しながら、低騒音性能を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部の外表面に、タイヤ赤道に対して一方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道と交差するラグ溝と、タイヤ赤道に対して他方側のトレッド端からタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道と交差するラグ溝とが、タイヤ周方向に交互に配列され、各ラグ溝は、タイヤ赤道と交差してタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部と、前記第一溝部の一端から前記第一溝部よりもタイヤ周方向に対して小さい角度で傾斜してトレッド端まで延在する第二溝部とからなり、前記第一溝部の他端はタイヤ周方向に隣り合うラグ溝の前記第二溝部に連通し、前記第一溝部は前記ラグ溝のトレッド端側の端部よりも踏込側に位置しており、タイヤ赤道に対して一方側または他方側でタイヤ周方向に隣り合う前記第二溝部どうしを連結する周方向細溝が形成され、前記ラグ溝と前記周方向細溝によって複数のブロックが区画され、これらブロックが前記周方向細溝よりもタイヤ赤道側に位置するセンターブロックと前記周方向細溝よりトレッド端側に位置するショルダーブロックとを含み、各ラグ溝において、タイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックどうしで挟まれる部位をラグ溝センター部とし、タイヤ周方向に隣り合う前記ショルダーブロックどうしで挟まれる部位をラグ溝ショルダー部としたとき、前記ラグ溝センター部におけるタイヤ幅方向外側であって前記第二溝部に含まれる端部の溝幅が前記ラグ溝ショルダー部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅よりも狭く、前記ラグ溝センター部の延在方向の一部または全部に底上げ部が設けられ、前記ラグ溝センター部における踏込側および蹴出側の各々の溝壁が1つの角度変化点を有し、前記角度変化点よりも踏面側で前記ラグ溝センター部の溝壁と前記トレッド部の踏面に対する法線とがなす溝壁角度αが前記角度変化点よりも溝底側で前記ラグ溝センター部の溝壁と前記トレッド部の踏面に対する法線とがなす溝壁角度βよりも大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、第一溝部と第二溝部とからなるラグ溝を設けているので、未舗装路におけるトラクション性能を向上しながら、低騒音性能を向上することができる。即ち、トラクション性能への寄与が大きいタイヤ赤道近傍にタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部が配され、この第一溝部が他のラグ溝(第二溝部)に連通しているので、効率的にトラクション性能を向上することができる。また、周方向細溝を有することで、周方向細溝を通じて騒音が分散されるので、低騒音性能を向上することができる。更に、周方向細溝によってタイヤ周方向の溝成分を追加することができるので、トラクション時にタイヤが横ずれすることを防止して安定性を向上することができる。これに加えて、ラグ溝センター部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅がラグ溝ショルダー部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅よりも狭く、ラグ溝センター部に底上げ部が配されているので、ラグ溝の体積が過度に大きくならず、トラクション性能を損なわずに低騒音性能を維持することができる。また、ラグ溝センター部において、角度変化点よりも踏面側の溝壁角度αを角度変化点よりも溝底側の溝壁角度βよりも大きくすることで、溝幅が相対的に狭まるラグ溝センター部において耐石噛み性を維持することができる。
【0008】
本発明では、トレッド部の踏面から角度変化点までの深さはラグ溝の最大深さに対して35%〜60%の範囲であることが好ましい。これにより、耐石噛み性を効果的に改善することができる。
【0009】
本発明では、ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αは5°〜30°であり、ラグ溝センター部における溝底側の溝壁角度βは3°以下であることが好ましい。これにより、低騒音性能を維持しながら、耐石噛み性を効果的に改善することができる。
【0010】
本発明では、ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αにおける蹴出側の溝壁角度α1と踏込側の溝壁角度α2とは0°≦α1−α2≦8°の関係を満たすことが好ましい。これにより、耐石噛み性を効果的に改善することができる。
【0011】
本発明では、ラグ溝センター部におけるタイヤ幅方向外側であって第二溝部に含まれる端部の溝幅はラグ溝ショルダー部におけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅に対して38%〜60%の範囲であることが好ましい。これにより、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。
【0012】
本発明では、ラグ溝センター部における底上げ部の深さはラグ溝の最大深さに対して65%〜85%の範囲であることが好ましい。これにより、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。
【0013】
本発明では、ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αはタイヤ赤道から第二溝部に含まれるラグ溝センター部のタイヤ幅方向外側の端部に向かって漸増することが好ましい。例えば、ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αはタイヤ赤道上において7°である一方で第二溝部に含まれるラグ溝センター部のタイヤ幅方向外側の端部において25°であることが好ましい。これにより、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。
【0014】
本発明では、ラグ溝の溝深さが15mm〜28mmであることが好ましい。本発明は、このような特徴を有する重荷重用空気入りタイヤにおいて、トラクション性能、耐石噛み性能および低騒音性能について、特に優れた性能を発揮することができる。
【0015】
本発明では、タイヤ赤道からトレッド端までの距離をWとし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.5W離間した位置とタイヤ赤道との間の領域を内側領域とし、タイヤ赤道からタイヤ幅方向に0.5W離間した位置とトレッド端との間の領域を外側領域としたとき、外側領域における第二溝部のタイヤ周方向に対する平均角度よりも内側領域における第二溝部のタイヤ周方向に対する平均角度が小さくなるように第二溝部は湾曲または屈曲しており、センターブロックのタイヤ幅方向の最大長さはトレッド展開幅の25%〜35%であることが好ましい。第二溝部が上述のように湾曲または屈曲することで溝長さを増大することができ、トラクション性能を向上すると共に、気柱共鳴音の発生を抑制することができる。また、センターブロックの最大幅を適度に確保することで、ブロック剛性を充分に確保して、良好なトラクション性能を発揮することができる。
【0016】
本発明では、センターブロックとショルダーブロックの踏面に少なくとも1つの屈曲点を有する浅溝が形成されていることが好ましい。浅溝が屈曲点を有するので、タイヤ周方向の溝成分とタイヤ幅方向の溝成分とをバランスよく増加することができ、タイヤ周方向および幅方向の雪上トラクション性能を効率的に向上することができる。
【0017】
本発明では、センターブロックに形成された浅溝の一端が周方向細溝に連通し、他端が第二溝部に連通し、センターブロックに形成された浅溝をタイヤ赤道に向かって投影したときの浅溝の投影成分どうしが重複せず、ショルダーブロックに形成された浅溝は両端がブロック内で終端し、ショルダーブロックの踏面のタイヤ幅方向内側の頂点の位置よりも踏込側に配置されていることが好ましい。このようにトラクション性能への寄与が大きいタイヤ赤道近傍に位置するセンターブロックに適切な形状の浅溝を設けることで、効果的に雪上トラクション性能を向上することができる。また、上記のように浅溝が重複しないように配置することで、タイヤ全周に亘ってブロック剛性が過度に低下することを避けて、タイヤ周方向での雪上トラクション性能とオフロードトラクション性能とのバランスを良好にし、これら性能を高度に両立することができる。更に、ショルダーブロックの剛性低下を抑制しながら、踏込側にエッジ成分を増加することができ、雪上性能を効果的に向上することができる。その一方で、蹴出側については浅溝が無く、ブロック剛性とゴム量が確保されるので、偏摩耗(ヒールアンドトウ摩耗)を効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明において、「トレッド端」とは、タイヤを正規リムにリム組みして、正規内圧を充填し、荷重を加えない状態(無負荷状態)で、タイヤのトレッド模様部分の両端である。本発明における「タイヤ赤道からトレッド端までのタイヤ幅方向の距離W」は、上述の状態でタイヤ幅方向に沿って測定されるトレッド端間の直線距離であるトレッド展開幅(JATMAで規定される「トレッド幅」)の1/2に相当する。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド面を示す正面図である。
図3図2のトレッド面に形成されたラグ溝を示す断面図である。
図4】従来例の空気入りタイヤのトレッド面の一例を示す正面図である。
図5】(a)〜(c)はそれぞれトレッド面に形成されたラグ溝の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示し、符号Eはトレッド端を示す。図示の例では、トレッド端Eが、タイヤ幅方向最外側のブロックのタイヤ幅方向外側のエッジ(タイヤ幅方向最外側のブロックの踏面とタイヤ幅方向外側の側面とが成す縁部)と一致している。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0022】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では4層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜60°の範囲に設定されている。図1の空気入りタイヤでは採用されていないが、本発明では、ベルト層7の外周側に、更にベルト補強層(不図示)を設けることもできる。ベルト補強層を設ける場合、ベルト補強層は、例えばタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含み、この有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定することができる。
【0023】
トレッド部1におけるカーカス層4およびベルト層7の外周側にはトレッドゴム層11が配される。サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層12が配される。ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層13が配される。トレッドゴム層11は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層およびアンダートレッドゴム層)がタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。
【0024】
本発明は、このような一般的な空気入りタイヤに適用されるが、その断面構造は上述の基本構造に限定されるものではない。
【0025】
本発明の空気入りタイヤのトレッド部1の表面には、図2に示すように、タイヤ赤道CLに対して一方側(図の右側)のトレッド端Eからタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道CLと交差するラグ溝20(以降の説明では「一方側のラグ溝20」という場合がある)と、タイヤ赤道CLに対して他方側(図の左側)のトレッド端Eからタイヤ幅方向内側に向かって延在してタイヤ赤道CLと交差するラグ溝30(以降の説明では「他方側のラグ溝30」という場合がある)とが設けられる。一方側のラグ溝20と他方側のラグ溝30は、それぞれ複数本ずつ設けられる。
【0026】
各ラグ溝20,30は、タイヤ赤道CLと交差してタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部21,31と、第一溝部21,31の一端から第一溝部21,31よりもタイヤ周方向に対して小さい角度で傾斜してトレッド端Eまで延在する第二溝部22,32とからなる。詳述すると、一方側のラグ溝20は、タイヤ赤道CLと交差してタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部21と、第一溝部21の一端(タイヤ赤道に対して一方側(図の右側)の端部)から第一溝部21よりもタイヤ周方向に対して小さい角度で傾斜してトレッド端Eまで延在する第二溝部22とからなる。同様に、他方側のラグ溝30は、タイヤ赤道CLと交差してタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部31と、第一溝部31の一端(タイヤ赤道に対して他方側(図の左側)の端部)から第一溝部31よりもタイヤ周方向に対して小さい角度で傾斜してトレッド端Eまで延在する第二溝部32とからなる。
【0027】
一方側のラグ溝20と他方側のラグ溝30とは1本ずつがタイヤ周方向に交互に配列される。但し、これらラグ溝20,30は、上述のように、基本的にタイヤ赤道CLから互いに逆方向に延在するので、タイヤ赤道CL上では一方側のラグ溝20の第一溝部21と他方側のラグ溝30の第一溝部31とがタイヤ周方向に交互に配置されるが、タイヤ赤道CLに対して一方側では、一方側のラグ溝20の第二溝部22がタイヤ周方向に間隔をおいて配列され、タイヤ赤道CLに対して他方側では、他方側のラグ溝30の第二溝部32がタイヤ周方向に間隔をおいて配列される。本発明では、タイヤ赤道CL上で第一溝部21,31どうしが交互に配列されて隣り合っていれば、特に断りがない限り、ラグ溝20,30が交互に配列されていると見做すものとする。
【0028】
各ラグ溝20,30の第一溝部21,31の他端は、タイヤ周方向に隣り合う別のラグ溝30,20の第二溝部32,22に連通する。つまり、一方側のラグ溝20の第一溝部21はタイヤ周方向に隣り合う他方側のラグ溝30の第二溝部32に連通し、他方側のラグ溝30の第一溝部31はタイヤ周方向に隣り合う一方側のラグ溝20の第二溝部22に連通している。
【0029】
各ラグ溝20,30の第一溝部21,31は各ラグ溝20,30のトレッド端E側の端部よりも踏込側に位置している。即ち、本発明の空気入りタイヤは回転方向Rが指定されたタイヤであるが、各ラグ溝20,30は、溝全体として、タイヤ赤道CL側からタイヤ幅方向外側に向かって回転方向Rとは反対方向に傾斜した形状を有する。
【0030】
このようなラグ溝20,30の他に、周方向細溝40が設けられる。周方向細溝40は、タイヤ赤道CLの片側でタイヤ周方向に隣り合う第二溝部どうし、即ち、タイヤ赤道CLに対して一方側でタイヤ周方向に隣り合う一方側のラグ溝20の第二溝部22どうし、或いは、タイヤ赤道Cに対して他方側でタイヤ周方向に隣り合う他方側のラグ溝30の第二溝部32どうしを連結するように、タイヤ周方向に沿って延在する。
【0031】
周方向細溝40は、ラグ溝20,30よりも溝幅が小さい溝である。具体的には、ラグ溝20,30は、溝幅Gが例えば5mm〜30mm、溝深さが例えば8mm〜25mmである。特に、タイヤが重荷重用空気入りタイヤである場合は、溝深さを例えば15mm〜28mmにするとよい。これに対して、周方向細溝40は、溝幅が例えば7mm〜11mm、溝深さが例えば15mm〜20mmである。
【0032】
これらラグ溝20,30と周方向細溝40とによって、複数のブロック50が区画される。これら複数のブロック50のうち、周方向細溝40よりもタイヤ赤道CL側に位置するものをセンターブロック51、周方向細溝40よりもトレッド端E側に位置するものをショルダーブロック52という。センターブロック51は、上述の溝形状によって、少なくとも一部がタイヤ赤道CL上に存在している。
【0033】
各ラグ溝20,30において、タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック51どうしで挟まれる部位をラグ溝センター部20c,30cとし、タイヤ周方向に隣り合うショルダーブロック52どうしで挟まれる部位をラグ溝ショルダー部20s,30sとする。具体的には、図2に示すようにラグ溝センター部20c,30cは、タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック51で近接する角部どうしを結んだ線と、センターブロック51の縁線とで囲まれた斜線部に相当し、ラグ溝ショルダー部20s,30sは、タイヤ周方向に隣り合うショルダーブロック52で近接する角部どうしを結んだ線と、ショルダーブロック52の縁線とで囲まれた斜線部に相当する。ラグ溝センター部20c,30cにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gcは、ラグ溝ショルダー部20s,30sにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gsよりも狭くなっている。なお、溝幅Gcおよび溝幅Gsはいずれもトレッド部1の踏面上で測定される幅である。具体的には、溝幅Gcはタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック51の角部どうしを結んだ線の長さであり、溝幅Gsはタイヤ周方向に隣り合うショルダーブロック52の角部どうしを結んだ線の長さである。
【0034】
図3に示すように、ラグ溝センター部20c,30cには、その延在方向の一部または全部に底上げ部25,35が設けられている。また、ラグ溝センター部20c,30cは、踏込側(図の左側)および蹴出側(図の右側)のそれぞれの溝壁に1つの角度変化点Pを有している。これら踏込側および蹴出側の角度変化点Pは、いずれもトレッド部1の踏面から同じ深さにある。角度変化点Pよりも踏面側でラグ溝センター部20c,30cの溝壁とトレッド部1の踏面に対する法線とがなす溝壁角度を溝壁角度αは、角度変化点Pよりも溝底側でラグ溝センター部20c,30cの溝壁とトレッド部1の踏面に対する法線とがなす溝壁角度を溝壁角度βよりも大きい。言い換えると、ラグ溝センター部20c,30cにおいて、少なくともタイヤ径方向外側の溝壁はトレッド部1の踏面に対する法線に対して傾斜しており、タイヤ径方向外側の溝壁の傾斜角度はタイヤ径方向内側の溝壁の傾斜角度よりも大きい。
【0035】
上述した空気入りタイヤでは、第一溝部21,31と第二溝部22,32とからなるラグ溝20,30を設けているので、未舗装路におけるトラクション性能を向上しながら、低騒音性能を向上することができる。即ち、トラクション性能への寄与が大きいタイヤ赤道近傍にタイヤ幅方向に沿って延在する第一溝部21,31が配され、この第一溝部21,31が他のラグ溝30,20の第二溝部32,22に連通しているので、効率的にトラクション性能を向上することができる。また、周方向細溝40を有することで、周方向細溝40を通じて騒音が分散されるので、低騒音性能を向上することができる。更に、周方向細溝40によってタイヤ周方向の溝成分を追加することができるので、トラクション時にタイヤが横ずれすることを防止して安定性を向上することができる。これに加えて、ラグ溝センター部20c,30cにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gcがラグ溝ショルダー部20s,30sにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gsよりも狭く、ラグ溝センター部20c,30cに底上げ部25,35が配されているので、ラグ溝20,30の体積が過度に大きくならず、トラクション性能を損なわずに低騒音性能を維持することができる。また、ラグ溝センター部20c,30cにおいて、角度変化点Pよりも踏面側の溝壁角度αを角度変化点Pよりも溝底側の溝壁角度βよりも大きくすることで、溝幅Gが相対的に狭まるラグ溝センター部20c,30cにおいて耐石噛み性を維持することができる。
【0036】
ラグ溝センター部20c,30cの深さは、当該タイヤにおいて重視する性能によって適宜設定することができるが、トレッド部1の踏面から角度変化点Pまでの深さPDは、ラグ溝20,30の最大深さFDに対して35%〜60%の範囲であることが好ましい。このように角度変化点Pの深さPDをラグ溝20,30の最大深さFDに対して適度に設定することで、耐石噛み性を効果的に改善することができる。ここで、ラグ溝20,30の最大深さFDに対する角度変化点Pの深さPDの比率が35%を下回る或いは60%を超えると、耐石噛み性能の改善効果を十分に得ることができない。なお、角度変化点Pの深さPDは、後述する底上げ部25,35の深さRDの変化に伴い、ラグ溝20,30の最大深さFDに対する比率を維持することが好ましいが、実深さを維持することもできる。
【0037】
また、ラグ溝センター部20c,30cにおける底上げ部25,35の深さRDは、ラグ溝20,30の最大深さFDに対して65%〜85%の範囲であることが好ましい。このように底上げ部25,35の深さRDをラグ溝20,30の最大深さFDに対して適度に設定することで、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。ここで、ラグ溝20,30の最大深さFDに対する底上げ部25,35の深さRDの比率が65%を下回るとトラクション性能が低下し、逆に85%を超えると低騒音性能が低下する傾向がある。
【0038】
ラグ溝センター部20c,30cの溝壁角度は、当該タイヤにおいて重視する性能によって適宜設定することができるが、踏面側の溝壁角度αは5°〜30°であり、溝底側の溝壁角度βは3°以下であることが好ましい。このとき、ラグ溝センター部20c,30cにおいて角度変化点Pよりも溝底側の溝幅Gは4mm以上であるとよい。このように踏面側の溝壁角度αおよび溝底側の溝壁角度βを適度に設定することで、低騒音性能を維持しながら、耐石噛み性を効果的に改善することができる。ここで、踏面側の溝壁角度αが5°より小さくなると耐石噛み性能の改善効果を十分に得ることができず、踏面側の溝壁角度αが30°より大きくなるとラグ溝20,30の容積が過度に大きくなるため、低騒音性能を維持することが難しくなる。
【0039】
更に、ラグ溝センター部20c,30cにおける踏面側の溝壁角度αにおける蹴出側の溝壁角度α1と踏込側の溝壁角度α2とは0°≦α1−α2≦8°の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは、蹴出側の溝壁角度α1は踏込側の溝壁角度α2より大きく、0°<α1−α2≦8°の関係を満たすとよい。このように蹴出側の溝壁角度α1および踏込側の溝壁角度α2を適度に設定することで、耐石噛み性を効果的に改善することができる。ここで、溝壁角度α1と溝壁角度α2の角度差(α1−α2)が8°より大きくなると耐石噛み性能が悪化する傾向がある。
【0040】
上記空気入りタイヤにおいて、ラグ溝センター部20c,30cにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gcは、ラグ溝ショルダー部20s,30sにおけるタイヤ幅方向外側の端部の溝幅Gsに対して38%〜60%の範囲であるとよい。このように溝幅Gsに対する溝幅Gcの比率を適度に設定することで、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。ここで、溝幅Gsに対する溝幅Gcの比率が38%を下回るとトラクション性能が低下し、逆に60%を超えると低騒音性能が低下する傾向がある。
【0041】
また、ラグ溝センター部20c,30cにおける踏面側の溝壁角度αは、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向外側に向かって漸増することが好ましい。このような溝壁角度αの角度変化は、ラグ溝20,30の第一溝部21,31と第二溝部22,32との連結部を始点として、第二溝部22,32に含まれるラグ溝センター部20c,30cのタイヤ幅方向外側の端部を終点とする。このように踏面側の溝壁角度αがタイヤ赤道CLからタイヤ幅方向外側に向かって徐々に大きくなることで、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。なお、上述した溝壁角度αの角度変化は、蹴出側(図3の右側)の溝壁角度α1と踏込側(図3の左側)の溝壁角度α2のいずれにも適用することができる。
【0042】
特に、上述した踏面側の溝壁角度αは、タイヤ赤道CL上において7°である一方でタイヤ幅方向外側の端部において25°であるとよい。このようにタイヤ幅方向の特定の位置で踏面側の溝壁角度αを設定することで、低騒音性能を維持しながらトラクション性能を効果的に改善することができる。
【0043】
図2において、各ラグ溝20,30は、タイヤ赤道CLからトレッド端Eまでのタイヤ幅方向の距離をWとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.50W離間した位置とタイヤ赤道CLとの間の領域を内側領域Aとし、タイヤ赤道CLからタイヤ幅方向に0.50W離間した位置とトレッド端Eとの間の領域を外側領域Bとしたとき、外側領域Bにおける第二溝部22,32のタイヤ周方向に対する平均角度θbよりも内側領域Aにおける第二溝部22,32のタイヤ周方向に対する平均角度θaが小さくなるように第二溝部22,32は湾曲または屈曲している。言い換えると、ラグ溝20,30の第二溝部22,32は、トレッド端E側からタイヤ赤道CL側に向かってタイヤ周方向に対する傾斜角度が漸減するように滑らかに湾曲するか、少なくとも1つの屈曲点を有して屈曲している。また、センターブロック51は、タイヤ幅方向の最大長さLがトレッド展開幅TWの25%〜35%に設定されている。上述のように、第二溝部22,32が湾曲または屈曲することで溝長さを増大することができ、トラクション性能を向上すると共に、気柱共鳴音の発生を抑制することができる。また、センターブロック51の最大幅を適度に確保しているので、ブロック剛性を充分に確保して、良好なトラクション性能を発揮することができる。
【0044】
なお、ラグ溝20,30の第二溝部22,32の平均角度は、各領域の境界位置におけるラグ溝20,30の溝幅方向の中点を結んだ直線がタイヤ周方向に対してなす角度として求めることができる。但し、タイヤ赤道CLとトレッド端Eでは、図示のように、タイヤ赤道CLまたはトレッド端Eに向かって引いた第二溝部22,32の延長線のタイヤ赤道CLまたはトレッド端Eにおける中点を用いるものとする。
【0045】
第一溝部21,31は、上述のように、主としてトラクション性能への寄与が大きいタイヤ赤道CLの近傍においてタイヤ幅方向の溝成分を確保するために設けられる。そのため、第一溝部21,31は、タイヤ周方向に対して略垂直方向に延在することが好ましい。具体的には、第一溝部21,31のタイヤ周方向に対する角度θcを好ましくは80°〜100°にするとよい。これにより、第一溝部21,31によって効率的にトラクション性能を向上することができる。第一溝部21,31の角度θcが80°未満または100°超であると、第一溝部21,31のタイヤ幅方向に対する傾斜が大きくなって、タイヤ幅方向の溝成分を充分に確保することができず、トラクション性能を向上する効果が限定的になる。
【0046】
また、図2において、各ブロック50の踏面には少なくとも1つの屈曲点を有する浅溝60が形成される。浅溝60とは、ラグ溝20,30および周方向細溝40よりも溝深さが小さい溝であり、溝深さを好ましくは1mm〜3mm、溝幅を例えば1mm〜3mmに設定することができる。浅溝60の溝深さが1mm未満であると、浅溝60が浅すぎて浅溝60を設けることによる効果が得られず、浅溝60の溝深さが3mmを超えるとブロック剛性への影響が大きくなる。以降の説明では、センターブロック51に形成された浅溝60をセンター浅溝61、ショルダーブロック52に形成された浅溝60をショルダー浅溝62という。図示の例では、センター浅溝61およびショルダー浅溝62は共に屈曲点を1つ有している。各ブロック50に形成される浅溝60の本数は特に限定されないが、図示のように各ブロック50に1本ずつを設けることが好ましい。
【0047】
本発明では、オフロードトラクション性能を確保するために上述のようにラグ溝20,30と周方向細溝40とによって複数のブロック50を区画したブロック基調のトレッドパターンを有するタイヤにおいて、各ブロック50の踏面に屈曲点を有する浅溝60を設けているので、タイヤ周方向の溝成分とタイヤ幅方向の溝成分とをバランスよく増加することができ、タイヤ周方向および幅方向の雪上トラクション性能を効率的に向上することができる。
【0048】
更に、センター浅溝61は、図示のように、一端が周方向細溝40に連通し、他端がラグ溝20,30の第二溝部22,32に連通しているとよい。また、センター浅溝61は、センターブロック51の踏込側または蹴出側の外縁に沿うように屈曲しているとよい。このとき、センター浅溝61はセンターブロック51のタイヤ周方向中心位置からタイヤ周方向に±5mmの範囲内に配置されるとよい。更に、センター浅溝61をタイヤ赤道CLに向かって投影したときのセンター浅溝61の投影成分どうしが重複しないことが好ましい。このようにトラクション性能への寄与が大きいタイヤ赤道CL近傍に位置するセンターブロック51に適切な形状のセンター浅溝61を設けることで、効果的に雪上トラクション性能を向上することができる。また、上記のようにセンター浅溝61が重複しないことで、タイヤ全周に亘ってブロック剛性が過度に低下することを避けて、タイヤ周方向での雪上トラクション性能とオフロードトラクション性能とのバランスを良好にし、これら性能を高度に両立することができる。
【0049】
一方、ショルダー浅溝62は、図示のように、両端がショルダーブロック52内で終端しているとよい。また、ショルダー浅溝62は、ショルダーブロック52の踏込側の外縁に沿うように屈曲しているとよい。更に、ショルダー浅溝62は、ショルダーブロック52の踏面のタイヤ幅方向内側の頂点の位置よりも踏込側に配置されているとよい。このようにショルダー浅溝62を設けることで、ショルダーブロック52の剛性低下を抑制しながら、踏込側にエッジ成分を増加することができ、雪上性能を効果的に向上することができる。その一方で、蹴出側については浅溝が無く、ブロック剛性とゴム量が確保されるので、偏摩耗(ヒールアンドトウ摩耗)を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0050】
タイヤサイズが315/80R22.5であり、図1に例示する基本構造を有し、基調とするトレッドパターン、ラグ溝センター部における底上げの有無、ラグ溝センター部の断面形状、ラグ溝センター部の溝壁角度αと溝壁角度βの大小関係、ラグ溝の最大深さFDに対する角度変化点の深さPDの比率(PD/FD×100%)、ラグ溝センター部の蹴出側の溝壁角度α1、ラグ溝センター部の踏込側の溝壁角度α2、溝壁角度α1と溝壁角度α2の角度差(α1−α2)、ラグ溝ショルダー部の溝幅Gsに対するラグ溝センター部の溝幅Gcの比率(Gc/Gs×100%)、ラグ溝の最大深さFDに対する底上げ部の深さRDの比率(RD/FD×100%)、ラグ溝センター部における角度変化の有無をそれぞれ表1および表2のように設定した従来例、比較例1〜2、実施例1〜12の空気入りタイヤを作製した。
【0051】
表1および表2の「トレッドパターン」について、対応する図面の番号を記載した。従来例の図4のパターンは、図2のパターンとは大きく異なるが、図中に記載したように各部の寸法等を図2と対応させて各項目の数値を求めた。表1および表2の「ラグ溝センター部における断面形状」について、対応する図面の番号を記載した。従来例の図5(a)は踏込側および蹴出側の溝壁が角度変化点を有しない断面形状であり、比較例1の図5(b)はセンターブロックのエッジ部に切り欠きが設けられた断面形状であり、比較例2の図5(c)は踏込側の溝壁が角度変化点を有しない断面形状である。また、比較例1は、第一溝部の他端がタイヤ周方向に隣り合うラグ溝の第二溝部に連通しないパターンであるが、便宜的に図2のパターンに対応するものとして各項目の数値等を表示した。
【0052】
表1および表2の「ラグ溝センター部における角度変化の有無」について、ラグ溝センター部における踏面側の溝壁角度αがタイヤ赤道からタイヤ幅方向外側に向かって漸増するか否かを示しており、「有り」の場合は漸増し、「無し」の場合は角度変化がないことを意味する。
【0053】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、トラクション性能、低騒音性能および耐石噛み性能を評価し、その結果を表1および表2に併せて示した。
【0054】
トラクション性能:
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、空気圧を850kPaとして、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、未舗装路からなるテストコースでテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどトラクション性能に優れることを意味する。
【0055】
低騒音性能:
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、ECE R117−02(ECE Regulation No.117 Revision 2)に定めるタイヤ騒音試験法に準拠して車外通過音を測定した。具体的には、試験車両を騒音測定区間の充分手前から走行させ、当該区間の直前でエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値(dB)(周波数800〜1200Hzの範囲の騒音値)を、基準速度に対し±10km/時の速度範囲をほぼ等間隔に8以上に区切った複数の速度で測定し、その平均を車外通過騒音とした。最大騒音値dBは、騒音測定区間内の中間点において走行中心線から側方に7.5mかつ路面から1.2mの高さに設置した定置マイクロフォンを用いてA特性周波数補正回路を通して測定した音圧〔dB(A)〕である。評価結果は、測定値の逆数を用いて、従来例の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど車外通過騒音が小さく低騒音性能に優れることを意味する。
【0056】
耐石噛み性能:
各試験タイヤをリムサイズ22.5×9.00のホイールに組み付けて、空気圧を850kPaとして、試験車両(車軸配列が6×4であるトラック)の駆動軸に装着し、未舗装路からなるテストコースを走行後、ラグ溝に噛んだ石の個数を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、従来例の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐石噛み性能に優れることを意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜12はいずれも、従来例と比較して、トラクション性、低騒音性能および耐石噛み性能が改善されていた。
【0060】
一方、比較例1は、第一溝部の他端はタイヤ周方向に隣り合うラグ溝の第二溝部に連通しておらず、ラグ溝の底上げ部を有していないため、オフロードトラクション性が向上することなく低騒音性能が悪化した。比較例2は、ラグ溝センター部における踏込側の溝壁に角度変化点がないため、耐石噛み性を維持しつつ十分なオフロードトラクション性能を得られない。
【符号の説明】
【0061】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
20,30 ラグ溝
20c,30c ラグ溝センター部
20s,30s ラグ溝ショルダー部
21,31 第一溝部
22,32 第二溝部
25,35 底上げ部
40 周方向細溝
51 センターブロック
52 ショルダーブロック
CL タイヤ赤道
E トレッド端
P 角度変化点
【要約】
【課題】未舗装路におけるトラクション性能および耐石噛み性能を改善しながら低騒音性能を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ赤道CLと交差してタイヤ幅方向に延在する第一溝部21,31と、第一溝部21,31の一端から延在する第二溝部22,32とからなるラグ溝20,30を交互に配列し、第一溝部21,31の他端をタイヤ周方向に隣り合うラグ溝30,20の第二溝部32,22に連通させ、ラグ溝20,30と周方向細溝40とがセンターブロック51およびショルダーブロック52を区画し、各ラグ溝20,30において、ラグ溝センター部20c,30cの延在方向の一部または全部に底上げ部25,35を配し、ラグ溝センター部20c,30cにおける踏込側および蹴出側の各々の溝壁に1つの角度変化点を有し、角度変化点Pよりも踏面側の溝壁角度αを角度変化点Pよりも溝底側の溝壁角度βよりも大きくする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5