特許第6648965号(P6648965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648965
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート板
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/04 20060101AFI20200210BHJP
   E04B 1/06 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   E04C2/04 E
   E04B1/06
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-254740(P2014-254740)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113841(P2016-113841A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514322054
【氏名又は名称】市毛 一弘
(73)【特許権者】
【識別番号】596079312
【氏名又は名称】守谷 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】守谷 和夫
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−185162(JP,A)
【文献】 米国特許第08881480(US,B1)
【文献】 実開平06−008546(JP,U)
【文献】 特開2006−159766(JP,A)
【文献】 実開昭55−116114(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/04
E04B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋の無い第1コンクリート板材と
該第1コンクリート板材から間隔をあけて平行にされた鉄筋の無い第2コンクリー
ト板材と
該第1コンクリート板材と該第2コンクリート板材との間に設定された中間板材であって、合板、木材、ケイ酸カルシウム板、大平板、フレキシブルボード及び合板、木材、ケイ酸カルシウム板を組み合わせたものから選択された1つからなる中間板材と
を有し、
該中間板材が該第1コンクリート板材及び該第2コンクリート板材に接触している
面全体で接着されているプレキャストコンクリート板。
【請求項2】
該第1及び第2コンクリート板材がプレストレスコンクリートとされている請求項1に記載のプレキャストコンクリート板。
【請求項3】
該中間板材が耐水性合板とされている請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工場生産されるプレキャストコンクリート板に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート板は、工場生産されるコンクリート板であり床材や壁材などの建材その他に広く用いられている。通常のプレキャストコンクリート板は、ひび割れを防止し、強度を高めるために格子状に組んだ鉄筋(ワイヤーメッシュ)を入れるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのようなプレキャストコンクリート板は、その中に入れた鉄筋による重量のために当該プレキャストコンクリート板の重量が増大する。また、プレキャストコンクリート板の外部からの湿気による鉄筋の腐食及びそれに伴う爆裂を防ぐために、プレキャストコンクリート板の外表面から一定以上内側に離れた位置に鉄筋を配置する必要があるために鉄筋と外表面との間が厚くなり、このためにもプレキャストコンクリート板の重量は大きなものとなってしまう。
例えば、一般家屋の建築の際には戸別に敷地内に穴を掘り浄化槽を埋設することがある。
この埋設に当たっては穴の底部に浄化槽を支持するためのコンクリート基礎が作られる。この基礎を作る方法としては、まず砂利等で穴底部を固め、その上にコンクリートを打設して、さらにその上に鉄筋の入ったプレキャストコンクリート板を敷いて、その上に浄化槽を設置する方法がある。その場合のプレキャストコンクリート板は通常200〜300Kgであり、それを地上から穴の底面へ運ぶにはクレーン車が必要となり、しかも危険を伴う。
【0005】
また、ビルの外壁材として用いられるカーテンウォールはその多くがプレキャストコンクリート板として作られている。カーテンウォールは鉄骨材から組み立てられる建物構造(躯体)の外面に吊り下げられるようにして設定されるものであり、従って鉄筋の入ったプレキャストコンクリート板としてのカーテンウォールは大きな荷重を躯体にかけることになる。躯体はかけられる重量に比例した強度が要求されるため、使用される鉄骨材もその分だけ大量になり躯体重量も大きなものとなる。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑み、鉄筋を使用せずに必要な強度を有するプレキャストコンクリート板、特に、水平に設定されて、上面で荷重を受けるようにして使用されるのに適したプレキャストコンクリート板を提供することを目的としている。また、本発明はカーテンウォールなどの壁材に適した軽量のプレキャストコンクリート板を提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
水平に設定され、上面で荷重を受けるようにして用いられるプレキャストコンクリート板であって、
鉄筋の無い第1コンクリート板材と、
該第1コンクリート板材から間隔をあけて平行にされた、鉄筋の無い第2コンクリート板材と、
該第1コンクリート板材と該第2コンクリート板材との間に設定される中間板材と
を有し、
中間板材が合板、ケイ酸カルシウム板、大平板、フレキシブルボード及び合板、木材、ケイ酸カルシウム板を組み合わせたものから選択された1つからなり、
該中間板材が該第1コンクリート板材及び該第2コンクリート板材に接触している面全体で接着されているプレキャストコンクリート板を提供する。
【0008】
このプレキャストコンクリート板では上記の如き積層構造として各層の接触面全面で接着することにより、例えば一般家屋用の浄化槽を支持するのに十分な強度をもつものとすることを可能とする。また、鉄筋の無い板材を用いることにより、当該プレキャストコンクリート板の重量を従来の鉄筋の入ったプレキャストコンクリート板に比べて大幅に低減することが可能となる。合板は耐水性合板とすることが好ましく、第1及び第2コンクリート板材はプレストレスコンクリート板とすることが好ましい。
【0009】
以下、本発明に係るプレキャストコンクリート板の実施形態につき添付図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は一般住宅において用いられる地中埋設型の浄化槽の支持板として適した本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート板の斜視図である。
図2図2はカーテンウォールなどの壁材として適した本発明の第2の実施形態に係るプレキャストコンクリート板の斜視図である。
図3図3の(a),(b)は、それぞれ、第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板に埋設される木材片の端面であり、木材片の表面に設けた溝を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本発明に係るプレキャストコンクリート板10は、一般住宅において用いられる地中埋設型の浄化槽などを載置して支持する支持板のように、水平に設定されて上面で荷重を受ける状態で用いられるのに適したプレキャストコンクリート板である。このプレキャストコンクリート板10は、鉄筋の無い第1コンクリート板材12と、第1コンクリート板材12から間隔をあけて平行にされた、鉄筋の無い第2コンクリート板材14と、第1コンクリート板材12と第2コンクリート板材14との間に設定される中間板材16とを有し、中間板材16が合板、ケイ酸カルシウム板、大平板、フレキシブルボードから選択された1つからなり、これら第1及び第2コンクリート板材12,14及び中間板材16は、相互に接触している面全体で接着されている。接着剤としては耐水性のあるものが好ましい。
【0012】
一般住宅で用いられる地下埋設型の浄化槽の支持板として用いる場合は、例えば、縦2000mm、横1000mmとされ第1及び第2コンクリート板材及び中間部材の厚さがそれぞれ20mmとされる。第1及び第2コンクリート板材は基本的にはセメントを用いて作られるが、砂や砂利を必要に応じて混入したものとされる。好ましくはこれらコンクリート板はプレストレスコンクリートとする。また合板は耐水性合板を用いることが好ましい。
【0013】
この浄化槽支持板は従来の同じ強度の鉄筋入りプレキャストコンクリート板に比べ、その重量を8分の1程度とすることができ、例えば重量が2〜3トンになる浄化槽を支持する支持板として十分な強度を得られるようにすることを可能とする。
【0014】
図2に示すのはカーテンウォールなどに使用するのに適したプレキャストコンクリート板20を示す。従来のカーテンウォールは鉄筋を入れたものであるために、その重量が大きくなると共に鉄筋の腐食による爆裂が発生しやすいという問題があった。本発明に係る図2に示すプレキャストコンクリート板20は鉄筋の代わりに例えば木材の繊維方向に細長くされた、横断面が矩形で、断面サイズが横10〜20mm×縦5〜10mmの木材片22を格子状に組んで当該プレキャストコンクリート板20の厚さ方向での中央部分に埋設している。当該コンクリート板20はセメントに必要に応じて砂や砂利を混入したものとすることが出来る。コンクリート板20を構成するセメントは強アルカリ性でありその中に埋設される木材には腐食が起こらず木材の強靭性が保たれる。このため図2に示すプレキャストコンクリート板はカーテンウォールとして用いる場合の強度を十分有しながら鉄筋不使用のために重量を大幅に軽減することが可能となる。
【0015】
用いられる木材は乾燥させているものを用いることが好ましい。木材片としてはホワイトアッシュ、ハードメイプルなどの堅木類を用いることが好ましい。木材片表面は40番程度の粗いサンダー仕上げによりコンクリートとの密着性を増すようにすることが好ましい。図3は、コンクリートとの密着性を良くするために木材片の表面に溝22cを設けた例を示す。
【0016】
図示のプレキャストコンクリート板20においては、木材22は、水平面内で相互に平行に間隔をあけて当該プレキャストコンクリート板20の縦方向に延びる複数の木材片22aと、その上に該木材片22aとは直交する方向で相互に平行に間隔をあけて当該プレキャストコンクリート板20の横方向に延びる複数の木材片22bとを組み合わせるように配置されているが、他の種々の配置が可能である、例えば、木材片22aと木材片22bとを相互に一定角度をなすようにすることもでき、また、木材片22aと木材片22bとを相互に編み合わせたものとすることもできる。また、木材片22a及び木材片22bの一方だけとして平行な木材片だけとすることも可能である。
【0017】
図示しないが、本発明の上記第2の実施形態に係るプレキャストコンクリート板20の変形例として、上述のような木材片22の替わりに乾燥していない木材を圧延ローラ間に通して圧搾し水分を絞り出したものから当該木材の長く延びる繊維を含む細長い木材片としたものを用いることが出来る。具体的には、上述の木材22a、22bの替わりに、切り落とされた枝材を圧延ローラ間に通して圧搾して枝材としては組織が破砕され且つ長い繊維を残したものを木材片として用いたり、断面矩形の繊維方向に長い乾燥していない木材を繊維方向で長く薄い板材に切り出したものを圧延ローラ間に通して圧搾し水分を絞り出し、これを更に繊維方向で延びる細長い複数の木材片に分割したものを用いたりすることが出来る。
【0018】
また、図示しないが、上述のような木材片の代わりに種々の植物性繊維を用いることが出来る。例えば、パーム椰子、サトウキビなどからとった細長い繊維を上述の木片の代わりに配置してコンクリート板内に埋設しプレキャストコンクリート板20とすることができる。このようにした場合にもカーテンウォールで要求されるカーテンウォール表面に掛かる荷重に対する耐圧性を有しながら、従来の鉄筋を入れたカーテンウォールに較べて遙かに軽量のプレキャストコンクリート板20を形成することができる。
【0019】
以上、本発明に係るプレキャストコンクリート板の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレキャストコンクリート板のコンクリートの中にカーボン粒子を混入したものとすることが出来る。このようなプレキャストコンクリート板は電磁波を遮蔽する作用があり、電磁波の外部からの又は内部からの透過の防止が望まれる部屋の壁材などとして有用なものとすることができる。
【符号の説明】
【0020】
10:プレキャストコンクリート板
12:鉄筋の無い第1コンクリート板材
14:鉄筋の無い第2コンクリート板材
16:中間板材
20:プレキャストコンクリート板
22、22a、22b:木材片
図1
図2
図3