特許第6648967号(P6648967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648967
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】直接取付型防水性履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20200210BHJP
   A43B 13/20 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   A43B23/02 Z
   A43B13/20 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-528506(P2014-528506)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-525323(P2014-525323A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2012052596
(87)【国際公開番号】WO2013033055
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年6月5日
【審判番号】不服2017-7029(P2017-7029/J1)
【審判請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】13/224,811
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ.ウィーナー
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 長馬 望
【審判官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−506029(JP,A)
【文献】 特開平8−38208(JP,A)
【文献】 特開昭64−27503(JP,A)
【文献】 特表2003−506176(JP,A)
【文献】 国際公開第01/012004(WO,A1)
【文献】 特開平8−205903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーアセンブリとアウトソールとを備える防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴であって、
前記アッパーアセンブリは上部及び下部を備え、前記上部及び下部はそれぞれ、外側材料と、少なくとも1つの防水性機能層を備える少なくとも1つの通気性層とを備え、前記靴は、前記通気性層の底部に固定され、耐圧縮性を有する前記アッパーアセンブリの形状を維持する手段を更に備え、
記アウトソールは、前記アウトソールに挿入される前記アッパーアセンブリの前記外側材料の下部を包含し、
前記少なくとも一つの通気性層及び前記アッパーアセンブリの形状を維持する手段がブーティーを形成しており、
前記靴は、前記アウトソールと前記アッパーアセンブリの前記外側材料の下部との間にスペースを形成する、スペーサー材料、成形インソール、又はスペーサー材料/インソール複合体を更に備え、
前記スペースはポリマーで充填されており、前記ポリマーは前記アウトソールと前記アッパーアセンブリの前記外側材料の下部とを接着して、それらの間に防水ガスケット材料なしで防水シールを形成している、
防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項2】
前記スペースが1個又は複数の開口部を備える、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項3】
前記アッパーアセンブリの形状は、シュトローベルボード、弾性材料又は織物により維持されている、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項4】
前記アッパーアセンブリの形状は、ストリングラスティングにより維持されている、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項5】
前記少なくとも1つの通気性層が、前記少なくとも1つの防水性機能層とともに積層体を形成するように構成された1つ又は複数の追加の層をさらに備える、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項6】
前記防水性機能層が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、コポリエーテルエステル又はコポリエーテルアミドを含んでなる、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項7】
前記防水性機能層がポリテトラフルオロエチレンを含んでなる、請求項1に記載の防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【請求項8】
アッパーアセンブリと、ミッドソールと、アウトソールとを備える防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴であって、
前記アッパーアセンブリは上部及び下部を備え、前記上部及び下部はそれぞれ、外側材料と、少なくとも1つの防水性機能層を含んでなる少なくとも1つの通気性層とを備え、前記靴は、前記通気性層の底部に固定され、耐圧縮性を有する前記アッパーアセンブリの形状を維持する手段を更に備え、
前記ミッドソールは、前記ミッドソールに挿入される前記アッパーアセンブリの通気性外側材の下部を包含し、
前記アウトソールは、前記ミッドソールに取り付けられるように構成されていて、
前記少なくとも1つの通気性層及び前記アッパーアセンブリの形状を維持する手段はブーティーを形成しており、
前記靴は、前記ミッドソールと前記アッパーアセンブリの前記外側材料の下部との間にスペースを形成する、スペーサー材料、成形インソール、又はスペーサー材料/インソール複合体を更に備え、
前記スペースはポリマーで充填されており、前記ポリマーは前記ミッドソールと前記アッパーアセンブリの前記外側材料の下部とを接着して、それらの間に防水ガスケット材料なしで防水シールを形成している、
防水性且つ通気性のある、釣り込み工程された靴。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
当技術分野においては、防水性且つ通気性の履物を製造しようと多くの試みがなされている。そのような履物を製造しようする初期の試みとして、耐水処理された革等のアッパー材料及びゴム製のソールからなる履物を製造することがあった。その結果、ある程度の通気性は得られた。しかしながら、この種の履物構造にはいくつかの課題が生じた。アッパー材料を完全に防水処理してしまうと、通気性を失ってしまう。その上、防水性のソールとアッパーの連結部位を防水処理する効果的な方法がないため、この連結部位が漏れの主な原因となった。
【0002】
快適な防水性の履物を得るという目的への別の取り組みとして、靴の中に防水性の挿入物やブーティーを使用することが行われた。この方法は、当技術分野においては公知であるが、マシーンラスティングされた履物において特に有用である。この防水性の挿入物は、適切な材料で構成されていれば、湿気を通すために靴を着用している間にわたって靴内部に湿気がたまることがないというさらなる利点があった。履物分野においては、防水性且つ透湿性の材料は通常「機能性」材料と呼ばれている。かかる機能性材料の例としては、GORE−TEX(登録商標)の商品名でWLゴア&アソシエイツ社(メリーランド州、エルクトン)から入手可能な、微多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜材料がある。機能性材料は他にも開発されており、当技術分野において周知である。
【0003】
さらなる取り組みとして、釣り込み工程によって防水性且つ通気性のライナー材料を履物のアッパーの内側に固定し、このライナー材料を防水性のガスケット又はインソールに封止することが行われた。ライナー材料と防水性のガスケット又はインソールとを接合させる部位において耐久性のある防水シール又は連結部を設けようとして、多くの様々な試みがなされたが、成功の度合いは様々であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような防水性且つ通気性の履物を成形する際に度々起こる課題の1つとして、ライナー又はブーティーを挿入することによって度々、フィット感に欠ける靴になったり(すなわち、既に寸法が決められたアッパーにライナーを挿入することによるフィット感の低下)、且つ/又はライナー又はブーティーとアッパー材料との連結が不十分なものとなり、その結果、何よりも、履物の内側の外観が到底望ましいものとは言えなくなったりする(すなわちライナーが、皺が寄ったように見えたり、アッパーから剥がれたりする)。
【0005】
さらに、履物構造に旧来の防水性のガスケットを使用するのは、防水性を得るためにさらなる加工工程が加わるため経済性が悪いという課題がある。
【0006】
従って、使用の際の柔軟性と生産性とを両立した、耐久的に封止された防水性且つ通気性のガスケットレス履物が、引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アッパーアセンブリ及びソールアセンブリを有する防水性且つ通気性の靴を記載する。アッパーアセンブリは上部及び下部を備え、上部及び下部はそれぞれ、ブーティーを構成する外側材料と1つ又は複数の通気性層とを有し、少なくとも1つの防水性機能層を備える。アッパーアセンブリの下部は、アッパーアセンブリの形状を維持する非機能手段をさらに備える。非機能手段は、少なくとも1つの防水性機能層を備える1つ又は複数の通気性層とつながっている。
【0008】
またソールアセンブリは、アウトソールを備え、アウトソールはそこに挿入されるアッパーの外側材料及び1つ又は複数の通気性層の下部を包含する。それは、さらにソールアセンブリとアッパーアセンブリの下部を接着させて防水シールを形成するためにソールアセンブリ全体にわたってポリマーの流れを促進する手段を備える。
【0009】
別の実施形態においては、ポリマーの流れを促進する手段は、スペーサー材料、インソール又はスペーサー材料/インソール複合体であってよい。非機能手段は、シュトローベルボード、弾性材料又は織物であってよく、ストリングラスティングされてもよい。
【0010】
1つ又は複数の通気性層は、1つ又は複数の防水性機能層とともに積層体を形成するように構成された1つ又は複数の追加の層をさらに備えてよい。
【0011】
1つ又は複数の防水性機能層は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ポリテトラフルオロエチレン又はそれらの組合せ等からなってよい。
【0012】
さらなる実施形態においては、アッパーアセンブリ、ミッドソール及びアウトソールを有する防水性且つ通気性の靴を記述する。アッパーアセンブリは上部及び下部を備え、上部及び下部はそれぞれ、ブーティーを構成する外側材料と1つ又は複数の通気性層とを有し、少なくとも1つの防水性機能層を備える。アッパーアセンブリの下部は、アッパーアセンブリの形状を維持する非機能手段をさらに備える。非機能手段は、少なくとも1つの防水性機能層を備える1つ又は複数の通気性層とつながる。
【0013】
ミッドソールは、そこに挿入されるアッパーの通気性外側材料の下部を包含し、且つミッドソールとアッパーアセンブリの下部を接着させて防水シールを形成するようミッドソール全体にわたってポリマーの流れを促進する手段を備える。
【0014】
アウトソールは、ミッドソールに取り付けられるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ポリマーの流れを促進する手段として成形インソールを含む防水性の履物の断面図である。
図2】ポリマーの流れを促進する手段としてスペーサー材料を含む防水性の履物の断面図である。
図3】ポリマーの流れを促進する手段としてスペーサー材料/インソール複合体を含む防水性の履物の断面図である。
図4】ポリマーの流れを促進する手段として成形インソールを含む防水性の履物の分解図である。
図5】ポリマーの流れを促進する手段としてスペーサー材料を含む防水性の履物の分解図である。
図6】ポリマーの流れを促進する手段としてスペーサー材料/中底複合体を含む防水性の履物の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、防水性の履物及びその製造方法に関する。旧来のWPBマシーンラスティングされた履物とは異なり、開示されている本発明の履物の構造はガスケットレスである。すなわち本発明の履物は、ガスケットレス、すなわち機能性材料を有しない機能性ライナーを、ブーティーの底全体にわたって含んでいる。その代わりに、アッパーアセンブリ10の少なくとも一部とソールアセンブリ20の少なくとも一部の間にスペースが形成されており、アッパーアセンブリとソールアセンブリとの間にシールを形成するために、ポリマーの流れを促進する手段100がポリマー又は他の接着剤の流れを促進している。さらに、ポリマー又は他の接着剤を用いて、当技術分野において公知の方法で後からアウトソールを取り付けることができるように所望により選択できるミッドソール240を調製してよく、ソールアセンブリの一部として完成したアウトソールを調製してもよい。旧来のガスケットやフルブーティーを使用しないため、これにより、材料、労働力、エネルギー及び在庫等の工場生産に関する改善、並びに生産性の改善、具体的には、製造工程、床面積及び総製造時間の削減につながる。
【0017】
図1図6を参照すると、まず初めに、アッパーアセンブリ(構成要素の詳細は後述)は上部30及び下部40を備える。上部及び下部はそれぞれ、ライナー230の一部として、少なくとも1つの防水性機能層70と少なくとも1つの追加の層60とを備える。
【0018】
図7を参照すると、開口頂部140及び開口底部150を有するライナー材料230が示されている。また、所望により選択できる継ぎ目160も示されており、この継ぎ目で2枚のライナー材料を接合して、ライナー材料をアッパーと概ね一致した形状に形成することができる。ライナー材料片は、縫製、部分縫製、溶接、膠付け等により接合できる。ライナー片を縫い合わせる場合、GORE−SEAM.(登録商標)tape(WLゴア&アソシエイツ社製)等の公知のシーリング材で継ぎ目160を封止することにより継ぎ目を防水処理してもよい。溶接や膠付けによりに元々防水性ではない場合は、他のシーラントを継ぎ目に塗布して防水処理してもよい。ライナー材料230は、防水性機能層70として知られる、通気性高分子膜等の防水性且つ透湿性の材料(すなわち機能性材料)の層を少なくとも1つ含む。本明細書で用いる「透湿性」及び「通気性」は、交換可能に用いられ、機能層の透湿抵抗値Retが200m2PaW-1未満であることを意味する。透湿性は、ホーヘンシュタインスキンモデルにより試験する。この方法は、DIN EN 31092(02/94)又はISO 11092(19/33)に開示されている。通気性高分子膜の通気性は、膜内の細孔によるものであってよく、溶液拡散メカニズムによるものであってもよい。通気性高分子膜は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、コポリエーテルエステル及びコポリエーテルアミドより選択することができる。本発明の一態様においては、防水性且つ透湿性の膜は、微多孔性ポリテトラフルオロエチレンの膜である。本発明のさらなる態様においては、微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜は、米国特許第3,953,566号及び同第4,187,390号(ゴア社)に教示されるように、延伸ポリテトラフルオロエチレンの膜である。かかる延伸ポリテトラフルオロエチレンの膜は、WLゴア&アソシエイツ社(メリーランド州、エルクトン)よりGORE−TEX.(登録商標)fabricの商品名で市販される。これらの米国特許の主題は、ともに参照により本明細書の一部として援用される。
【0019】
ライナー材料は、少なくとも上記機能性材料70と、それに積層された少なくとも1つの他の材料60とを含む。これに関しては、ライナーは、機能性材料、及びその少なくとも片面、多くの場合は両面に積層又はそうでなければ接合された織物材料(望ましくは通気性)を含み得る。積層は、概して、不連続パターンの好適な接着剤を使用して行われる。そのため透湿性が大きく影響されることはない。少なくとも1つの他の材料は、織布であってよい。織布は、織物構造、編物構造、メッシュ構造、不織構造、フェルト構造等であってもよい。織物は、綿等の天然繊維、又はポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリオレフィン、それらの混合物等の合成繊維から製造することができる。本発明の一態様においては、機能性材料のアッパーの外側材料50と接触する側に織布を積層する。本発明のさらなる態様においては、機能性材料の履物の内側に対面する側に織布を積層する。また本発明のさらなる態様においては、機能性材料の両面に織布を積層し、それにより三層のライナー材料となる。好適なアッパーの外側材料としては、革、コーデュラ、ナイロン等が挙げられる。
【0020】
アッパーアセンブリ10の形状を維持する手段80を図7に示す。この手段は概して足の裏の形をしており、縫合等の当技術分野において公知のいずれかの好適な方法によって防水性且つ通気性の機能層に取り付けられる。アッパーアセンブリの形状を維持する手段は、開口底部150において防水性且つ通気性の機能層に固定することができ、且つアッパーアセンブリの形状を維持してブーティーを形成するのに充分な耐圧縮性を有していれば、いずれの好適な材料であってもよい。アッパーアセンブリの形状を維持する手段は、例えば、織布材料又は不織布材料を含んでよく、また例えばシュトローベルボード、弾性材料又は織物であってもよい。アッパーアセンブリの形状を維持する手段は、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニル、綿、アセテート、レーヨン、オレフィン、アクリル、羊毛、スパンデックス、金属等から生成してもよい。理由は明らかとなるが、アセンブリの形状を維持する手段が防水性である、ましてや耐水性であることは望ましくない。アッパーアセンブリの形状を維持する手段は、いずれかの好適な手段により通気性層の底部に固定できる。例えばアッパーアセンブリの形状を維持する手段は、縫合、部分縫合、ステープリング、溶接、超音波溶接等により、ライナー材料230の底部に固定できる。アッパーアセンブリの形状を維持する手段をライナー材料230の底部に固定すると、着用者の足が入るように形成されたブーティーが得られる。
【0021】
あるいは、アッパーアセンブリ10の形状を維持する手段80は、ストリングラスティングされたライナーを含んでよい。すなわち、追加の材料を必要とすることなくアッパーアセンブリを支える帯状の材料からなってもよい。
【0022】
ブーティー形成後は、釣り込み工程を行う。具体的には、当技術分野において公知である靴型を開口頂部140からブーティーに挿入して、靴型の形状に正確にあわせてブーティーを形成する。
【0023】
通常は、従来技術の釣り込み工程においては、靴型をブーティーに挿入するこの時点で、防水性のガスケット材料をソールアセンブリの一部としてブーティーの底面部に取り付ける。
【0024】
しかしながら、予想外にも防水性のガスケット材料の取り付けは不要であるということがわかった。
【0025】
これに関しては、ソールアセンブリ20とアッパーアセンブリの下部40を接着させて防水シールを形成するためにソールアセンブリ全体にわたってポリマーの流れを促進する手段100を、後で取り付けるためにブーティーの底部に置く。一実施形態においては、この手段は、スペーサー材料、例えば靴型の底とほぼ同じ形状にカットされたスペーサーメッシュ110であってもよい。別の実施形態においては、この手段は、靴型の底(すなわち足の裏)とほぼ同じ形状のスペーサー材料/インソールボード複合体130であってもよい。注入工程の際に流路を維持するのに充分な耐圧縮性を有し、且つアッパーの釣り込みを容易に行うのに充分な剛性及び屈曲性を有すれば、他のいずれの好適な手段を使用してよい。別の実施形態においては、この手段は、単独で成形インソールボード120であってもよい。全ての実施形態において、スペーサー材料、インソールボード及び/又はスペーサー材料/インソールボード複合体は、ソールアセンブリ全体にわたって接着材料の流れを促進して防水シールを作成するために、1個又は複数の開口部を備えてよい。開口部は、穴、管等であってもよい。
【0026】
図7を参照すると、ブーティー170の透視図が示されている。図3及び図6に見られるように、スペーサー材料/インソールボード複合体が、ブーティーの底面部に取り付けられ、接着する。一実施形態においては、スペーサー材料がインソールボードの上に位置し、ブーティーの底と直接連通する。別の実施形態においては、その順番が逆である。さらに別の実施形態においては、上記のとおり、成形インソールボード又はスペーサー材単独をブーティーの底部に取り付けてもよい。構造や配置にかかわらず、スペーサー材料及びインソールボードは、剛性が充分であるいずれかの好適な材料からなっていればよい。非限定的な例としては、ポリマー材料及び織物材料が挙げられる。ポリマーの流れを促進する手段100は、いずれかの好適な接着剤によってブーティーの底面部に接着させることができる。好適な接着剤の非限定的な例としてはポリウレタン及びPVCが挙げられるが、シールの形成に充分である延伸性且つ発泡性の物質であれば、いずれの物質をブーティーに使用してもよい。
【0027】
用いる接着剤の種類にかかわらず、接着剤は、ポリマーの流れを促進する手段100の開口部の中を流動して少なくとも実質的にその開口部にポリマーを充填し、ソールアセンブリとアッパーアセンブリの下部を接着させる程度に流動性がなければならない。
【0028】
その後、アッパーアセンブリ10を引き下げ、セメントで接合し(又は別の方法でポリマーの流れを促進する手段100の底に取り付け)、折り畳んでアッパーの形状を靴型に固定する。スペーサー材料は、接着剤を一度開口部に注入すればブーティーの底を完全に封止できるように、インソールがブーティーの底と全く接触しないような位置に置く。
【0029】
次に、例えば射出成形、注入成形等の当技術分野において公知の従来の方法を用いて、当技術分野において公知の成形材料を開口部に投入する。
【0030】
次に、必要に応じて従来の工程を行って好適なアウトソール材料又はアウトソール/ミッドソールを履物の底面に取り付けてもよい。
【0031】
完璧を期すため、図1図3は本発明の履物の断面図であり、従来のアウトソールが番号220により示される。アウトソール220は、例えばポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、革、人工皮革、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル及びそれらの組合せ等のいずれかの好適な材料であってよい。
【0032】
従来の方法としては、従来の射出成形を用いてポリマー材料を射出又は注入してアウトソール又はミッドソールを形成する方法が挙げられる。あるいは、ポリマー材料の射出又は注入の後に、アウトソールを履物構造の底にセメントで接合するか又は別の方法(縫合、部分縫合、ステープリング、溶接等)で取り付けてよい。
【0033】
「防水性の履物」が意味するものは以下の通りである。吸い取り紙の上に履物を置く。履物の内側に室温の水を入れ、機能性材料のトップラインの下約30mmの高さ(履物の踵部のインソールから測定)まで満たす。履物に水を入れたまま少なくとも2時間静置する。2時間後、吸い取り紙及び履物のアッパーを調べて、水が吸い取り紙又はアッパーの外側に達しているかどうか確認する。吸い取り紙にもアッパーの外側にも水が達していなければ、履物は防水性とする。
【0034】
本明細書で用いる「防水性且つ透湿性の機能層」及び「防水性のガスケット材料」は、本発明の履物を形成するためにそれらを組み合わせた時に上記で定義した「防水性」の履物が得られた場合に、「防水性」であるとする。
【0035】
本発明の特定の実施形態を、例示且つ説明してきたが、本発明はかかる例示及び説明に限定されるものではない。変更及び改変を本発明の一部として以下の特許請求の範囲内に組み込み具現化できることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7