【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明における測定方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
密閉状態とされたシリンダ内を真空引きする第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記シリンダ内にペレット状の合成樹脂を供給する第2ステップと、
前記第2ステップの後、前記シリンダを加熱して、該シリンダ内にあるペレット状の合成樹脂を溶融樹脂とする第3ステップと、
前記第3ステップの後、前記シリンダ内に摺動自在に嵌合されたピストンによって前記溶融樹脂を押圧しつつ、該シリンダ内に挿入されたプローブによって熱伝導率を測定する第4ステップと、
を備えているようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、シリンダ内の溶融樹脂の熱伝導率をプローブにより測定する際に、溶融樹脂はピストンにより押圧されてプローブ外周面やシリンダ内面に確実に密着されるので、熱伝導率を精度よく測定することができる。また、ペレット状の合成樹脂をシリンダ内に供給する前に、あらかじめシリンダ内を真空引きするので、溶融樹脂内に気泡が混在してしまう事態を防止して、熱伝導率をより精度よく測定することができる。ちなみに、シリンダ内にペレット状の合成樹脂を供給した状態でシリンダ内を真空引きしたときは、溶融樹脂内への気泡混入防止効果が低いものとなる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2〜請求項7に記載のとおりである。すなわち、
前記第4ステップでは、溶融樹脂を高温状態から低温状態へと温度変化させて、溶融樹脂の異なる温度毎に熱伝導率の測定が行われる、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、溶融樹脂の異なる温度における熱伝導率を精度よく測定することができる。特に、
溶融樹脂の温度を徐々に低下させるのに伴って溶融樹脂が収縮しても、ピストンによる押圧によって溶融樹脂のプローブ外周面およびシリンダ内面に対する密着性が確実に確保されるので、熱伝導率を常に精度よく測定することができる。
【0011】
前記ピストンには、前記シリンダ内に配設された前記プローブの先端部が挿入される挿入凹部が形成されており、
前記第4ステップにおいて溶融樹脂の温度が高温状態から低温状態へと温度変化されるのに伴って、前記プローブの先端部がより深く前記挿入凹部に挿入される、
用スリップ制御3対応)。この場合、プローブをシリンダ内に所望位置に正確に位置決めして、熱伝導率をより精度よく測定する上で好ましいものとなる。また、溶融樹脂の収縮に伴なってピストンが変位しても、挿入凹部内にプローブの先端部を確実に挿入させておくことができる。
【0012】
前記第4ステップにおいて、溶融樹脂とするための溶融温度以上となるように前記ピストンが加熱される、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、溶融樹脂のうちピストンに対する接触部位やその付近の固化を防止して、熱伝導率を精度よく測定する上で好ましいものとなる。また、プローブが樹脂の固化部分によって不用意にあたってプローブが損傷されてしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0013】
前記シリンダのうち前記ピストンとは反対側端に開閉可能な挿通孔が形成されて、前記第1ステップでの真空引きが該挿通孔が閉じられた状態で行われ、
前記第3ステップの後で前記第4ステップの前に、前記プローブを、開いた状態の前記挿通孔を通して前記シリンダの軸線方向に伸びるようにして該シリンダ内に挿入する第5ステップをさらに備えている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、必要のないときはプローブをシリンダの外部に退出させた状態として、シリンダ内にペレット状の合成樹脂を供給する際にこの合成樹脂がプローブにあたってプローブを損傷させてしまう事態を防止する等の上で好ましいものとなる。
【0014】
前記第3ステップの後でかつ前記第5ステップの前に、前記挿通孔を開いた状態で、前記溶融樹脂を前記ピストンが所定位置になるまで押圧して、余剰の溶融樹脂を該挿通孔を通して排出する第6ステップをさらに備えている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、熱伝導率が測定される際のシリンダ内の溶融樹脂量を所望の一定量(基準量)として、熱伝導率を精度よく測定する上でより好ましいものとなる。
【0015】
ぺレット状の合成樹脂を前記シリンダ内に供給するための供給経路が前記ピストンの移動軌跡に臨むように形成されて、前記第1ステップでは、前記ピストンの位置を該供給経路をわずかに開く中間位置として、該供給経路を通してペレット状の合成樹脂がシリンダ内へ移動しないようにしつつ該シリンダ内の真空引きが行われ、
前記第2ステップでは、前記ピストンの位置を前記供給経路を大きく開く待避位置として、該供給経路から前記シリンダ内へペレット状の合成樹脂を供給し、
前記第4ステップでは、前記ピストンでもって前記供給経路を遮断した状態を維持しつつ、該ピストンにより溶融樹脂を押圧する、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、ピストンを有効に利用して、真空引き用と、ペレット状の合成樹脂のシリンダ内への供給用として兼用させることができる。
【0016】
前記目的を達成するため、本発明における測定装置にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項8に記載のように、
熱伝導率の測定対象となる合成樹脂が充填されるシリンダと、
前記シリンダを加熱して、該シリンダ内の合成樹脂を溶融樹脂とするシリンダ用ヒーターと、
前記シリンダ内に、該シリンダの軸線方向に伸びるように挿入され、前記溶融樹脂の熱伝導率を測定するためのプローブと、
前記シリンダ内に摺動自在に嵌合され、前記溶融樹脂を押圧するためのピストンと、
前記ピストンの移動軌跡に臨む供給経路を有し、該シリンダ内に供給するためのペレット状の合成樹脂を貯溜する密閉状の樹脂供給部と、
前記樹脂供給部に接続された真空引き用のポンプと、
を有し、
前記ピストンは、その変位に応じて、前記供給経路を大きく開いて該樹脂供給部内のペレット状の合成樹脂を該シリンダ内へ供給可能とする待避位置と、該供給経路を閉じた状態で溶融樹脂を押圧可能とする押圧位置と、該待避位置と該押圧位置との間の位置で該供給経路をわずかに開いた状態として、ペレット状の合成樹脂が該樹脂供給部から該シリンダ内へ供給されることを阻止しつつ該樹脂供給部と該シリンダ内とを連通状態とする中間位置と、を選択的にとり得るようにされ、
前記ピストンを前記中間位置とした状態で前記ポンプを作動させることにより、前記樹脂供給部および前記供給経路を介して前記シリンダ内が真空引きされる、
ようにしてある.上記解決手法によれば、請求項7に対応した測定方法を実行するための測定装置が提供される。
【0017】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項9以下に記載のとおりである。すなわち、
溶融樹脂とするための最低溶融温度以上の温度となるように前記ピストンを加熱するピストン用ヒーターをさらに有している、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、請求項4に対応した測定方法を実行するための測定装置が提供される。
【0018】
前記シリンダのうち前記ピストンとは反対側端に、開閉可能とされた挿通孔が形成されて、前記プローブは、開状態とされた前記挿通孔を通して前記シリンダ内に進退出可能とされている、ようにしてある(請求項10対応)。この場合、請求項5に対応した測定装置が提供される。