【実施例】
【0072】
以下、本発明に係る具体的な実施例と、比較例及び従来例について説明する。
なお、各実施例のセパレータは、再生セルロース繊維を使用して、抄紙法にてセパレータを構成した。電気化学素子のサイズは、直径(mm)×高さ(mm)の順に記載した。
【0073】
(実施例1)
再生セルロース繊維である溶剤紡糸レーヨン繊維(以下リヨセルと表記する)を、前段濃度5%、後段濃度2%、総負荷1kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ30.0μm、密度0.40g/cm
3、平均繊維長0.79mm、平均繊維幅13μm、A値60.8のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量100F、セルサイズ25mm×45mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例1の電気二重層キャパシタとした。
【0074】
(実施例2)
リヨセル繊維を、前段濃度8%、後段濃度4%、総負荷3kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ25.0μm、密度0.32g/cm
3、平均繊維長0.56mm、平均繊維幅18μm、A値31.1のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量100F、セルサイズ25mm×45mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例2の電気二重層キャパシタとした。
【0075】
(実施例3)
再生セルロース繊維であるポリノジックレーヨン繊維を、前段濃度5%、後段濃度6%、総負荷6kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ20.0μm、密度0.50g/cm
3、平均繊維長0.63mm、平均繊維幅11μm、A値57.3のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量300F、セルサイズ35mm×60mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例3の電気二重層キャパシタとした。
【0076】
(実施例4)
リヨセル繊維を、濃度6%、総負荷7kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ20.0μm、密度0.83g/cm
3、平均繊維長0.54mm、平均繊維幅35μm、A値15.4のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量300F、セルサイズ25mm×45mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例4の電気二重層キャパシタとした。
【0077】
(実施例5)
リヨセル繊維を、前段濃度6%、後段濃度2%、総負荷4kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ15.0μm、密度0.50g/cm
3、平均繊維長0.42mm、平均繊維幅6μm、A値70.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例5の電気二重層キャパシタとした。
【0078】
(実施例6)
リヨセル繊維を、前段濃度8%、後段濃度3%、総負荷11kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ10.0μm、密度0.70g/cm
3、平均繊維長0.78mm、平均繊維幅33μm、A値23.6のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例6の電気二重層キャパシタとした。
【0079】
(実施例7)
リヨセル繊維を、前段濃度12%、後段濃度7%、総負荷9kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ10.0μm、密度0.50g/cm
3、平均繊維長0.36mm、平均繊維幅23μm、A値15.7のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例7の電気二重層キャパシタとした。
【0080】
(実施例8)
リヨセル繊維を、前段濃度11%、後段濃度6%、総負荷10kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ5.0μm、密度0.60g/cm
3、平均繊維長0.26mm、平均繊維幅4μm、A値65.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例8の電気二重層キャパシタとした。
【0081】
(実施例9)
リヨセル繊維を、前段濃度15%、後段濃度8%、総負荷15kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ3.0μm、密度0.83g/cm
3、平均繊維長0.25mm、平均繊維幅15μm、A値16.7のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、実施例9の電気二重層キャパシタとした。
【0082】
(比較例1)
リヨセル繊維を、前段濃度15%、後段濃度4%、総負荷2kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ35.0μm、密度0.43g/cm
3、平均繊維長0.64mm、平均繊維幅38μm、A値16.8のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量100F、セルサイズ25mm×45mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例1の電気二重層キャパシタとした。
【0083】
(比較例2)
リヨセル繊維90質量%を、前段濃度6%、後段濃度3%、総負荷3kWh/kgで叩解した後、未叩解の針葉樹パルプ10質量%と混合し、長網抄紙することで、厚さ25.0μm、密度0.40g/cm
3、平均繊維長0.60mm、平均繊維幅25μm、A値24.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量100F、セルサイズ25mm×45mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例2の電気二重層キャパシタとした。
【0084】
(比較例3)
リヨセル繊維90質量%を、前段濃度6%、後段濃度3%、総負荷3kWh/kgで叩解した後、フィブリル化アラミド繊維10質量%と混合し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ20.0μm、密度0.60g/cm
3、平均繊維長0.55mm、平均繊維幅22μm、A値25.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量300F、セルサイズ35mm×60mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例3の電気二重層キャパシタとした。
【0085】
(比較例4)
リヨセル繊維を、前段濃度8%、後段濃度3%、総負荷0.5kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ20.0μm、密度0.45g/cm
3、平均繊維長0.82mm、平均繊維幅20μm、A値41.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量300F、セルサイズ35mm×60mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例4の電気二重層キャパシタとした。
【0086】
(比較例5)
リヨセル繊維を、濃度4%、総負荷10kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ15.0μm、密度0.47g/cm
3、平均繊維長0.71mm、平均繊維幅9μm、A値78.9のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量300F、セルサイズ35mm×60mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例5の電気二重層キャパシタとした。
【0087】
(比較例6)
リヨセル繊維を、前段濃度8%、後段濃度6%、総負荷17kWh/kgで叩解し、長網抄紙することで、厚さ10.0μm、密度0.50g/cm
3、平均繊維長0.23mm、平均繊維幅7μm、A値32.9のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例6の電気二重層キャパシタとした。
【0088】
(比較例7)
リヨセル繊維を、前段濃度15%、後段濃度10%、総負荷15kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ10.0μm、密度0.70g/cm
3、平均繊維長0.28mm、平均繊維幅20μm、A値14.0のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例7の電気二重層キャパシタとした。
【0089】
(比較例8)
リヨセル繊維を、前段濃度15%、後段濃度8%、総負荷15kWh/kgで叩解し、長網抄紙後、キャレンダー加工することで、厚さ2.5μm、密度0.88g/cm
3、平均繊維長0.35mm、平均繊維幅13μm、A値26.9のセパレータを得た。
このセパレータを用いて、定格電圧2.5V、定格静電容量3000F、セルサイズ60mm×140mmの電気二重層キャパシタを作製し、比較例8の電気二重層キャパシタとした。
【0090】
(実施例10)
実施例4と同じセパレータを用いて、定格電圧63V、定格容量120μF、コンデンササイズ10mm×20mmのアルミニウム電解コンデンサを作製し、実施例10のアルミニウム電解コンデンサとした。
【0091】
(実施例11)
実施例5と同じセパレータを用いて、定格電圧3.7V、定格容量2200mA、セルサイズ18mm×65mmのリチウムイオン二次電池を作製し、実施例11のリチウムイオン二次電池とした。
【0092】
なお、各実施例と、比較例2乃至比較例8に用いた再生セルロース繊維は、叩解前の平均繊維長が1〜8mm、且つ平均繊維幅が3〜20μmである。
【0093】
実施例1乃至実施例9、比較例1乃至比較例8について、原料の繊維名と配合割合、得られたセパレータの諸物性、電気二重層キャパシタ作製時の作業性、電気二重層キャパシタの評価結果を、表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例10について、原料の繊維名と配合割合、得られたセパレータの諸物性、アルミ電解コンデンサ作製時の作業性、アルミ電解コンデンサの評価結果を、表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
実施例11について、原料の繊維名と配合割合、得られたセパレータの諸物性、リチウムイオン二次電池作製時の作業性、リチウムイオン二次電池の評価結果を、表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例1乃至実施例9の電気二重層キャパシタは、電気化学素子作製時の作業性が全て「○」である。また、ショート不良率は0.0〜0.4%と、1%を下回っており低い。更に内部抵抗値も充分に小さい。
【0100】
一方、比較例1のセパレータの厚さが35.0μmと厚い。このため、電気二重層キャパシタの内部抵抗値が、同じ静電容量の実施例より20%以上悪化している。このセパレータの厚さを、キャレンダー加工により薄くすると、密度が上昇し、かえって内部抵抗値が増大してしまう。また、密度を変えずに坪量を減らすことで薄くすると、遮蔽性が低下し、ショート不良が増加すると考えられる。
比較例1と各実施例から、セパレータの厚さは30μm以下が好ましいとわかる。
【0101】
また、比較例2のセパレータは、針葉樹パルプを10質量%含有している。このため、内部抵抗が同じ静電容量の実施例より、20%以上悪化している。また、ショート不良率は0.8%であり、1%には達しないものの、各実施例と比べて高い。ショート不良率を実施例と同等まで低減するために針葉樹パルプを叩解すると、抵抗値が更に悪化すると予想される。
【0102】
そして、比較例3のセパレータは、フィブリル化アラミド繊維を10質量%含有している。フィブリル化アラミド繊維は、水素結合を持たないため、シートの強度が低下する。このため、電気二重層キャパシタ作製時の作業性が悪化(×)した。また、同様の理由により遮蔽性が低いので、ショート不良も増加した。
【0103】
以上、比較例2及び比較例3から、叩解された再生セルロース繊維のみからなるセパレータが好ましいとわかる。
【0104】
比較例4のセパレータは、叩解時の総負荷が0.5kWh/kgと低く、平均繊維長が0.82mmである。これは、総負荷が小さく、繊維に充分な叩解エネルギーが加わっておらず、フィブリル化が不十分であるためと考えられる。このため、シートとしたときの緻密性が低く、セパレータとしたときの遮蔽性に劣る。結果、ショート不良率が1%以上となった。
比較例6のセパレータは、叩解時の総負荷が17kWh/kgと高く、平均繊維長は0.23mmであった。これは、総負荷が大きく、繊維に叩解エネルギーが過剰にかかったためと考えられる。結果、セパレータの強度が低下し、作業性が悪化(×)した。
以上、各実施例と比較例4及び比較例6から、平均繊維長は0.25〜0.80mmの範囲が好ましいとわかる。
【0105】
比較例5のセパレータは、従来の技術によるセパレータであり、A値は78.9である。これは、前段の濃度が4%と低く、リヨセルの短繊維化優位に叩解が進み、フィブリル化が不十分となったためと考えられる。このため、これほどの薄さでは遮蔽性及び強度が不足する。結果、作業性は悪化(×)し、ショート不良も増加した。
また、実施例5と比較例5は、同厚さのセパレータを用いた、容量の異なる電気二重層キャパシタである。本発明を用いれば、この例のように、電気二重層キャパシタの高容量化が達成できる。また、静電容量は極材の巻き取り長に比例するため、高容量化せず同巻き取り長とする場合は、捲回素子の小型化が可能となる。
比較例7のセパレータは、A値が14.0である。これは、叩解時の後段濃度が10%と高かったためと思われる。叩解時のような水中では、フィブリルが発生したことにより、原料の流動性が高まっている。このため、叩解の中期から末期にかけては、繊維同士の摩擦によるフィブリル化が起こり難い。ここで高濃度のまま所望の平均繊維長となるまで叩解すると、平均繊維幅が広くならず、逆に、叩解初期に発生したフィブリルの脱落が増加し、平均繊維幅が狭くなってしまったと推察される。結果として、強度がやや不足し、作業性が悪化(△)した。また、遮蔽製も不足するため、ショート不良率も0.5%を超過した。
以上、各実施例と比較例5及び比較例7から、A値は15〜70の範囲が好ましいとわかる。
【0106】
比較例8のセパレータは、厚さが2.5μmと薄い。このため、密度が0.88g/cm
3と高いにも関わらず、強度が低く作業性が悪化(×)し、ショート不良も増加した。このことから、セパレータの厚さは3μm以上が好ましいと分かる。また、密度が高いため、電気二重層キャパシタの内部抵抗も同容量の実施例と比べ20%以上悪化した。このことから、セパレータの密度は0.85g/cm
3以下が好ましいとわかる。
更に、実施例8と実施例9とを比べると、実施例8のショート不良率が低い。このことから、セパレータの厚さは、5μm以上がより好ましいとわかる。
【0107】
そして、平均繊維長、平均繊維幅、A値を、それぞれ前述した範囲内とするためには、叩解時の濃度と総負荷をコントロールすることが重要であるとわかる。前段濃度5〜15%、且つ後段濃度2〜8%、且つ総負荷1〜15kWh/kgとすることで、平均繊維長、平均繊維幅、A値を、それぞれ前述した範囲内にできる。
更に、実施例3のように後段の濃度が高い場合や、実施例4のように全後段の濃度が同じであっても、叩解濃度は全後段ともこの範囲にあればよいとわかる。
【0108】
また、実施例10及び実施例11から、アルミニウム電解コンデンサやリチウムイオン二次電池でも、これらの電気化学素子は問題なく機能している。
【0109】
以上説明した通り、本実施の形態例によれば、叩解濃度及び叩解時の総負荷を管理することで、平均繊維長0.25〜0.80mm、且つ平均繊維幅3〜35μm、且つA値15〜70とできる。そして、この範囲の平均繊維長、平均繊維幅、A値とすることで、30μm以下といった非常に薄いセパレータであっても、電気化学素子作製工程での作業性を悪化させない強度を持ち、遮蔽性に優れた、低抵抗なセパレータを提供できる。
そしてこのセパレータを用いることで、電気化学素子の低抵抗化、高容量化、小型化、長寿命化等を達成できる。
【0110】
また、本発明のセパレータは、本実施の形態例で取り上げた、電気二重層キャパシタ、アルミニウム電解コンデンサ、リチウムイオン二次電池以外にも、例えばリチウムイオンキャパシタ、リチウム一次電池といった、高い遮蔽性と薄さを求められる各種電気化学素子にも好適に使用できる。