(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一金属箔の一方の面に第一耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に第一熱融着性樹脂層が貼り合わされ、前記第一熱融着性樹脂層側の面に第一金属箔に導通する第一内側導通部を有する第一外装材と、
第二金属箔の一方の面に第二耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に第二熱融着性樹脂層が貼り合わされ、前記第二熱融着性樹脂層側の面に第二金属箔に導通する第二内側導通部を有する第二外装材と、
正極集電体に正極活物質が塗工された正極と、負極集電体に負極活物質が塗工された負極と、前記正極と負極との間に配置されるセパレーターとを有する電極体とを備え、
前記第一外装材が凹部とこの凹部の開口縁から外方に延びるフランジを有し、前記フランジの第一耐熱性樹脂層側の面に第一金属箔に導通する第一外側導通部が形成され、前記第二外装材の周縁部の第二耐熱性樹脂層側の面に第二金属箔に導通する第二外側導通部が形成され、
前記第一外装材の第一熱融着性樹脂層と第二外装材の第二熱融着性樹脂層とが向かい合い、第一外装材のフランジの第一熱融着性樹脂層と第二外装材の周縁部の第二熱融着性樹脂層とが融着した熱封止部に囲まれることによって、室内に第一内側導通部および第二内側導通部が臨む電極体室を有する外装体が形成され、
前記電極体室内に電解質とともに封入された電極体は、正極が第一内側露出部に導通するとともに負極が第二内側導通部に導通し、
前記第一金属箔と正極集電体、第二金属箔と負極集電体のうちの少なくとも一組が同種金属からなることを特徴とする蓄電デバイス。
前記第一金属箔および正極集電体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、前記第二金属箔および負極集電体が銅または銅合金からなる請求項2に記載の蓄電デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現行の蓄電デバイスは、タブリードの引き出し部分がラミネート外装材同士と直接接合されている部分に比べてシール性が劣り、また電極体とタブリードとの接続により抵抗値が大きくなる、という構造上の問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、シール性に優れかつ抵抗値が抑制された蓄電デバイスの提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[3]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]第一金属箔の一方の面に第一耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に第一熱融着性樹脂層が貼り合わされ、前記第一熱融着性樹脂層側の面に第一金属箔に導通する第一内側導通部を有する第一外装材と、
第二金属箔の一方の面に第二耐熱性樹脂層が貼り合わされ、他方の面に第二熱融着性樹脂層が貼り合わされ、前記第二熱融着性樹脂層側の面に第二金属箔に導通する第二内側導通部を有する第二外装材と、
正極集電体に正極活物質が塗工された正極と、負極集電体に負極活物質が塗工された負極と、前記正極と負極との間に配置されるセパレーターとを有する電極体とを備え、
前記第一外装材の第一熱融着性樹脂層と第二外装材の第二熱融着性樹脂層とが向かい合い、第一熱融着性樹脂層と第二熱融着性樹脂層とが融着した熱封止部に囲まれることによって、室内に第一内側導通部および第二内側導通部が臨む電極体室を有する外装体が形成され、
前記電極体室内に電解質とともに封入された電極体は、正極が第一内側露出部に導通するとともに負極が第二内側導通部に導通し、
前記第一金属箔と正極集電体、第二金属箔と負極集電体のうちの少なくとも一組が同種金属からなり、
前記外装体の外面に、前記第一金属箔に導通する第一外側導通部および前記第二金属箔に導通する第二外側導通部が設けられていることを特徴とする蓄電デバイス。
【0009】
[2]前記第一金属箔と正極集電体とが同種金属からなり、かつ前記第二金属箔と負極集電体とが同種金属からなる前項1に記載の蓄電デバイス。
【0010】
[3]前記第一金属箔および正極集電体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、前記第二金属箔および負極集電体が銅または銅合金からなる前項2に記載の蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0011】
上記[1]に記載の蓄電デバイスは、外装体を構成する第一外装材および第二外装材の第一金属箔および第二金属箔を通じて電気の授受を行う。電気の授受にタブリードを必要とせず、熱封止部は全周において第一熱融着性樹脂層と第二熱融着性樹脂層とが直接接合しているのでシール性が優れている。さらに、第一金属箔と正極集電体、第二金属箔と負極集電体のうちの少なくとも一組は同種金属からなるため、両者間の電極電位差が小さく内部抵抗の上昇が抑制される。
【0012】
上記[2]に記載の蓄電デバイスは、第一金属箔と正極集電体が同種金属からなり、かつ第二金属箔と負極集電体が同種金属からなるので、両極において外装材の金属箔と集電体との間の電極電位差が小さく内部抵抗の上昇が抑制される。
【0013】
上記[3]に記載の蓄電デバイスは、第一金属箔および正極集電体がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、第二金属箔および負極集電体が銅または銅合金からなるので、特に内部抵抗の上昇を抑制する効果が大きい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に本発明の蓄電デバイスの実施形態を示し、
図2に蓄電デバイスの外装体を構成する外装材の構造を示す。
【0016】
以下の説明において、同一符号を付した部材は同一物または同等物を表しており、重複する説明を省略する。
[第一外装材および第二外装材]
図2は
図1の蓄電デバイス1の外装体30を構成する第一外装材10および第二外装材20の積層構造および導通部の形成例を示している。
【0017】
第一外装材10は第一金属箔11の一方の面に接着剤層12により第一耐熱性樹脂層13が貼り合わされ、他方の面に接着剤層14により第一熱融着性樹脂層15が貼り合わされている。前記耐熱性樹脂層13側の面に、第一耐熱性樹脂層13および接着剤層12が無く第一金属箔11が露出して第一金属箔11に導通する導通部16が形成されている。前記第一熱融着性樹脂層15側の面に、第一熱融着性樹脂層15および接着剤層14が無く第一金属箔11が露出する導通部17が形成されている。外装体において、前記第一熱融着性樹脂層15側の導通部17は外装体の形態にかかわらず少なくとも一つ存在し、電極体室内に臨む第一内側導通部となる。前記第一熱融着性樹脂層15が外装体の外面の一部となる場合は、第一熱融着性樹脂層15側の面に第一外側導通部が設けられることがある。一方、第一耐熱性樹脂層13側の導通部16は外装体の形態によって存在する場合と存在しない場合とがあり、存在する場合は外装体の外面に形成されて第一外側導通部となる。
【0018】
同様に、第二外装材20は第二金属箔21の一方の面に接着剤層22により第二耐熱性樹脂層23が貼り合わされ、他方の面に接着剤層24により第二熱融着性樹脂層25が貼り合わされている。前記耐熱性樹脂層23側の面に、第二耐熱性樹脂層23および接着剤層22が無く第二金属箔21が露出して第二金属箔21に導通する導通部26が形成されている。前記第二熱融着性樹脂層25側の面に、第二熱融着性樹脂層25および接着剤層24が無く第二金属箔21が露出する導通部27が形成されている。外装体において、前記第二熱融着性樹脂層25側の導通部27は外装体の形態にかかわらず少なくとも一つ存在し、電極体室内に臨む第二内側導通部となる。前記第二熱融着性樹脂層25が外装体の外面の一部となる場合は、第二熱融着性樹脂層25側の面に第二外側導通部が設けられることがある。一方、第二耐熱性樹脂層23側の導通部26は外装体の形態によって存在する場合と存在しない場合とがあり、存在する場合は外装体の外面に形成されて第二外側導通部となる。
【0019】
本発明において導通部16、17、26、27は第一金属箔11または第二金属箔21に導通することが要件であり、第一金属箔11または第二金属箔21が露出していることは要件ではない。たとえば、接着剤層12、14、22、24が導電性接着剤で形成されている場合は、第一金属箔11または第二金属箔21上の接着剤層12、14、22、24が露出していても導通部が形成される。前記導通部16、17は第一外装材10の任意の位置に任意の形状で形成することができる。第二外装材20の導通部26、27も同様である。
【0020】
前記導通部は以下の方法で形成することができる。なお、本発明は導通部の形成方法を含む第一外装材10および第二外装材20の製造方法を限定するものではなく、以下は導通部形成方法の一例にすぎない。
(1)周知の方法により、接着剤で耐熱性樹脂層、金属箔層、熱融着性樹脂層を貼り合わせ、レーザーを照射して樹脂層および接着剤層を焼灼除去する。
(2)金属箔に接着剤を塗布する際に導通部を形成する部分に接着剤を塗布しない未塗布部を形成し、耐熱性樹脂層または熱融着性樹脂層を貼り合わせる。その後、未塗布部上の樹脂層を切除する。
(3)金属箔の導通部を形成する部分にマスキングテープを貼っておき、接着剤を塗布して耐熱性樹脂層または熱融着性樹脂層を貼り合わせる。その後、マスキングテープとともに樹脂層および接着剤を除去する。
[蓄電デバイス]
図1に示す蓄電デバイス1は、電極体70とこの電極体70を収納して密封する外装体30とを備えている。なお、
図1は、第一外装材10および第二外装材20の接着剤層12、14、22、24の図示を省略している。
(外装体)
外装体30は、凹部を有する本体40とこの本体40に被せるフラットな蓋体50とで構成されている。
【0021】
前記本体40は第一外装材10からなり、フラットシートの第一外装材10に張り出し成形や絞り成形等の加工を施すことにより、電極体室60となる平面視長方形の凹部41を成形し、凹部41の4辺の開口縁から外方にほぼ水平に延びるフランジ42を有している。前記凹部41の底壁の内側、即ち、第一熱融着性樹脂層15側の面に第一金属箔11が露出する第一内側導通部43が形成されている。また、4辺のフランジ42のうちの一つの外面、即ち第一耐熱性樹脂側13の面に第一金属箔11が露出する第一外側導通部44が形成されている。
【0022】
前記蓋体50は本体40の平面寸法と同寸の第二外装材20からなり、組み立て時に電極体室60内において前記第一内側導通部43に対向する位置、即ち第二熱融着性樹脂層25側の面に第二金属箔21が露出する第二内側導通部51が形成されている。また、前記蓋体50の外面である第二耐熱性樹脂層23側の面に第二金属箔21が露出する第二外側導通部52が設けられている。
(電極体)
電極体70は正極71、負極72、セパレーター73とにより構成されている。
【0023】
図3に示すように、前記正極71は、金属箔からなる正極集電体71aの一方の面の端部71cを除いて両面に正極活物質を塗工してなる正極活物質部71bを有している。前記端部71cは正極集電体71aが露出し、外装体30の第一内側導通部43との接続部となる。前記負極72は、金属箔からなる負極集電体72aの一方の面の端部72cを除いて両面に負極活物質を塗工してなる負極活物質部72bを有している。前記端部72cは負極集電体72aが露出し、外装体30の第二内側導通部51との接続部となる。前記電極体70は、前記正極71と負極72との間にセパレーター73を介在させて組み立てた積層体である。
図1の電極体70はそれぞれ長尺の正極71と負極72との間にセパレーター73を挟み、端部71c、72cが巻き終わりとなるように捲回することにより積層した捲回型電極体である。
【0024】
電極体は図示例の捲回型の他、所要寸法に裁断した1枚以上の正極と1枚以上の負極とをセパレーターを挟みながら交互に積層した積層型であってもよい。複数枚の正極および負極を積層する場合は、複数の正極集電体および複数の負極集電体をそれぞれに接合する。
(組み立て)
前記本体40の第一内側導通部43に導電性バインダー74で電極体70の正極71の端部71c(
図1において符号省略)を接続するとともに、蓋体50の第二内側導通部51に導電性バインダー74で負極72の端部72c(
図1において符号省略)を接続し、電解質を注入して電極体室60の周囲を熱封止して熱封止部61を形成する。これにより、電極体70が外装体30の電極体室60内に密封された蓄電デバイス1が作製される。前記蓄電デバイス1は、外装体30の電極体室60内に密封された電極体70の正極71が第一外装材10の第一内側導通部43に接合されて第一金属箔11に導通し、負極72が第二外装材20の第二内側導通部51に接合されて第二金属箔21に導通し、第一金属箔11および第二金属箔21を通じて、外装体30外面に設けられた第一外側導通部44および第二外側導通部52において外部との電気の授受を行う。
(外装体の金属箔と電極体の集電体)
前記蓄電デバイス1において、第一金属箔11と正極集電体71aとが同種金属で構成され、第二金属箔21と負極集電体72aとが同種金属で構成されている。本発明において、同種金属とはその金属中に最も多く含まれる元素が同一である純金属および合金を意味し、異種金属とはその金属中に最も多く含まれる元素が異なる純金属および合金を意味する。例えば、純アルミニウムとアルミニウム合金は同種金属であり、組成の異なるアルミニウム合金同士も同種金属である。一方、アルミニウム合金と銅合金は異種金属である。
【0025】
前記正極集電体71aは第一金属箔11の第一内側導通部43に導通し、前記負極集電体72aは第二金属箔21の第二内側導通部51に導通し、それぞれに電流が流れる。このような状況において、外装材の金属箔とその金属箔に接合される集電体との電極電位差が大きいほど腐食が起こり易い。表1に示すように標準電極電位は金属元素によって異なり、外装材の金属箔と電極体の集電体を異種金属で構成すると電位差が大きくなる。また、電解質(液)環境下において異種金属間では電極電位の差によりガルバニック腐食が起こり、両者の接触部において腐食反応に起因する内部抵抗異常が発生するおそれがある。本発明は、外装体の金属箔と電極体の集電体の材料として同種金属を用いて電極電位差を小さくすることにより、電位差によって生じる腐食を抑制し内部抵抗の上昇を抑えている。また、同種金属同士でも電極電位差は可及的に小さいことが好ましいので、同一組成の金属を用いるか、あるいは電極電位差が0.5V以下の同種金属を用いることがなお一層好ましい。
【0027】
本発明の蓄電デバイスにおいては、第一金属箔と正極集電体、および第二金属箔と負極集電体のうちの少なくとも一組が同種金属からなることを要件とする。さらには、両組ともに同種金属からなることが好ましく、両極において内部抵抗の上昇を抑えることができる。
【0028】
前記外装体の金属箔および電極体の集電体を構成する金属の種類は導電性の高い金属である限り限定されないが、第一金属箔および正極集電体を構成する金属中に最も多く含まれる金属元素として好ましいのは、Al、Ni、Fe、Ag、Pt、Auである。また、前記第二金属箔および負極集電体を構成する金属中に最も多く含まれる金属元素として好ましいのは、Cu、Fe、Ag、Pt、Auである。これらの金属箔の厚さは7μm〜150μmが好ましい。なお、鉄合金箔を用いる場合はステンレス鋼箔が好ましい。
【0029】
また、前記第一外装材の第一金属箔および第二外装材の第二金属箔には外装材の金属層と集電部との導通に影響を及ぼさない程度であれば化成皮膜を形成することも好ましい。前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、このような化成処理が施されていることによって、電解液による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば、次のような処理を行うことによって、金属箔に化成処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を金属箔の表面に塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0030】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2であれば外装材の金属層と集電部の導通にも影響を及ぼさず、かつ腐食対策としても好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
[外装材の金属箔と電極体の集電体の組み合わせの評価]
外装材の金属箔と電極体の集電体の材料を変えて種々組み合わせた試験用蓄電デバイスを作製し、組み合わせの適否を評価した。
図4は試験用蓄電デバイス100の断面図であり、以下に作製する複数の試験用蓄電デバイス100は構成部材の材料が異なる。なお、
図4は接着剤層12、14、22、24の図示を省略している。
(第一金属箔と正極集電体の組み合わせ)
第一外装材10は、第一耐熱性樹脂層13として厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルム、第一熱融着性樹脂層15として厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム、接着剤層12として二液硬化型ポリエステル−ウレタン系接着剤(塗布厚さは3μm)、接着剤層14として、二液硬化型酸変性ポリプロピレン系接着剤(塗布厚さは2μm)を共通材料とし、これらを4種類の第一金属箔11と組み合わせて、4種類の第一外装材10を作製した。4種類の第一金属箔11はいずれも厚さ40μmであり、硬質アルミニウム箔(JIS H4160 で規定されるA8079H)、硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)、ステンレス鋼箔(SUS304)、ニッケル箔(JIS H4551で分類されるNB−1のニッケル箔)を用いた。
【0031】
前記材料により、外形が60mm×45mmであり、第一熱融着性樹脂層15側の面に40mm×25mmの第一内側導通部101を有し、第一耐熱性樹脂層13側の面に10mm×5mmの第一外側導通部102を有する4種類の第一外装材10を作製した。
【0032】
前記第一外装材10に組み合わせる第二外装材20は共通であり、第二金属箔21として厚さ15μmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)を用い、第二耐熱性樹脂層23として厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルム、第二熱融着性樹脂層15として厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム、接着剤層22として二液硬化型ポリエステル−ウレタン系接着剤(塗布厚さは3μm)、接着剤層24として、二液硬化型酸変性ポリプロピレン系接着剤(塗布厚さは2μm)を用いた。
【0033】
前記材料により、外形が60mm×45mmであり、第二熱融着性樹脂層25側の面に40mm×25mmの第二内側導通部103を有し、第二耐熱性樹脂層23側の面に10mm×5mmの第二外側導通部104を有する第二外装材20を作製した。
【0034】
電極体110は正極111の正極集電体111aを変えて2種類を作製した。使用した正極集電体111aは、いずれも50mm×35mmであり、厚さ30μmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160 で規定される 8079H)および厚さ20μmのニッケル箔(JIS H4551 で規定される NB−1)を用いた。一方、負極集電体112aは共通であり、前記正極集電体111aと同寸で厚さ15μmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)を使用した。前記正極111は、正極集電体111aの片面に厚さ30μmの正極活物質部111bを形成して作製した。前記正極活物質部111bは、コバルト酸リチウムを主成分とする正極活物質60質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDF10質量部、アセチレンブラック(導電材)5質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを前記正極集電体111aの表面に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことにより作製した。負極112は、負極集電体112aの片面に厚さ20μmの負極活物質部112bを形成した。前記負極活物質部112bは、カーボン粉末を主成分とする負極活物質100質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのPVDFを5質量部、ヘキサフルオロプロピレンと無水マレイン酸の共重合体10質量部、アセチレンブラック(導電材)3質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを前記負極集電体112aの表面に塗布した後、100℃で30分間乾燥させて、次いで熱プレスを行うことにより作製した。セパレーター113は厚さ30μmのプロピレンフィルムを使用した。前記電極体110は、
図4に示すように、前記正極活物質部111bと負極活物質部112bとが対向するよう正極111と負極112を配置し、その間にセパレーター113を挟んで組み立てた。
【0035】
また、電解質として、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネートを1:1:1の体積比率で混合した混合カーボネート液にLiPF
6を添加し、LiPF
6濃度が1モル/Lとなるように調製した液を用いた。
【0036】
前記試験用蓄電デバイス100は、前記第一外装材10の第一内側導通部101に前記電極体100の正極集電部111aを接合するとともに、第二外装材20の第二内側導通部103に負極集電部112aを接合し、前記電解質1mLを注入し、試験用電極体110の周囲をヒートシール接合して熱封止部105を形成して作製した。試験用蓄電デバイス100は、第一金属箔11の異なる4種類の第一外装材10と2正極集電体111aの異なる2種類の電極体110との組み合わせで8種類を作製した。
【0037】
作製した8種類の試験用蓄電デバイス100について、周波数アナライザを内蔵したポテンショ/ガルバノスタット(Biologic社製、VMP3)により正極側の1kHzのインピーダンスを測定した。測定結果を表2に示す。
【0039】
表2に記載した測定結果は、アルミニウムの正極集電体111aに対してはアルミニウムの第一金属箔11を組み合わせた時に最もインピーダンスが低く、ニッケルの正極集電体111aに対してはニッケルの第一金属箔11を組み合わせた時に最もインピーダンスが低く、同種金属を組み合わせることにより内部抵抗が抑制されていることを示している。さらに、8種類の組み合わせにおいて、アルミニウム同士の組み合わせが最もインピーダンスが低く、正極側ではアルミニウム同士の組み合わせが好ましいことを示している。
(第二金属箔と負極集電体の組み合わせ)
第一外装材10は、第一金属箔11として厚さ40μmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160で規定されるA8079H)を使用し、第一耐熱性樹脂層13、第一熱融着性樹脂層15、接着剤層12、14は上記の正極側評価用の第一外装材と同じ材料を使用した。これらの材料により、正極側評価用の第一外装材10と同じく、第一内側導通部101および第一外側導通部102を有する第一外装材10を作製した。
【0040】
一方、第二外装材20は、上記の正極側評価用の第二耐熱性樹脂層23、第二熱融着性樹脂層25、接着剤層22、24を共通材料とし、これらを4種類の第二金属箔21と組み合わせて4種類の第二外装材20を作製した。4種類の第二金属箔21はいずれも厚さが40μmであり、軟質アルミニウム箔(JIS H4160 で規定されるA8079H)、硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)、ステンレス鋼箔(SUS304)、ニッケル箔(JIS H4551 で規定される NB−1)を用いた。これらの材料により、正極側評価用の第二外装材20と同じく、第二内側導通部103および第二外側導通部104を有する4種類の第二外装材20を作製した。
【0041】
電極体110は負極112の負極集電体112aを変えて2種類を作製した。使用した負極集電体112aは、いずれも50mm×35mmであり、厚さ15μmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)および厚さ20μmのステンレス鋼箔(SUS304)を用いた。一方、正極集電体111aは共通であり、前記負極集電体112aと同寸で厚さ30μmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160 で規定される 8079H)を使用した。前記正極111は、正極集電体111aの片面に厚さ30μmの正極活物質部111bを形成して作製した。負極112は負極集電体112aの片面に厚さ20μmの負極活物質部112bを形成して作製した。使用した正極活物質、負極活物質、形成方法は、正極側試験用の正極および負極と同じである。前記電極体110は、
図4に示すように、前記正極活物質部111bと負極活物質部112bとが対向するように正極111と負極112を配置し、その間にセパレーター113を挟んで組み立てた。
【0042】
試験用蓄電デバイス100は、前記第一外装材10の第一内側導通部101に前記試験用電極体110の正極111を接合するとともに、第二外装材20の第二内側導通部103に負極112を接合し、前記電解質1mLを注入し、試験用電極体110の周囲をヒートシール接合して熱封止部105を形成して作製した。試験用蓄電デバイス100は、第二金属箔21の異なる4種類の第二外装材20と負極集電体112aの異なる2種類の電極体110との組み合わせで8種類を作製した。
【0043】
作製した8種類の試験用蓄電デバイス100について、周波数アナライザを内蔵したポテンショ/ガルバノスタット(Biologic社製、VMP3)により負極側の1kHzのインピーダンスを測定した。測定結果を表3に示す。
【0045】
表3に記載した測定結果は、銅の負極集電体112aに対しては銅の第二金属箔21を組み合わせた時に最もインピーダンスが低く、Feの負極集電体112aに対してはFeの第二金属箔21を組み合わせた時に最もインピーダンスが低く、同種金属の組み合わせることにより内部抵抗が抑制されていることを示している。さらに、8種類の組み合わせにおいて、銅同士の組み合わせが最もインピーダンスが低く、負極側では銅同士の組み合わせが好ましいことを示している。
【0046】
本発明の蓄電デバイスはタブリードを用いずに電気の授受を行え、熱封止部は全周で第一熱融着性樹脂層と第二熱融着性樹脂層とが直接接合されているので、高いシール性を有している。
【0047】
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイス1のように耐熱性樹脂層側の面に外側導通部を設けることに限定されない。外装体を熱融着性樹脂層の一部が外面となる形態に変更することによって熱融着性樹脂層側の面に外側導通部を形成することができる。例えば、第一外装材と第二外装材の端部をずらして重ねると熱融着性樹脂層が外装体の外面に現れる。また、第一外装材または第二外装材の端部を折り返すことでも熱融着性樹脂層が外装体の外面に現れる。そして、熱融着性樹脂層が外装体の外面に現れた箇所に第一外側導通部または第二外側導通部を設けことができる。また、外装体が塑性加工による凹部を有していることにも限定されない。
[第一外装材、第二外装材および蓄電デバイスの構成材料]
本発明は第一外装材、第二外装材および蓄電デバイスの材料を限定するものではないが、上述した外装材の金属箔および電極体の集電体を除く構成部材の好ましい材料として以下の材料を挙げることができる。
(耐熱性樹脂層)
第一耐熱性樹脂層13および第二耐熱性樹脂層23を構成する耐熱性樹脂としては、熱封止する際の熱封止温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、前記第一熱融着性樹脂層15および第二熱融着性樹脂層25を構成する熱融着性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱融着性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。例えば、延伸ポリアミドフィルム(延伸ナイロンフィルム等)または延伸ポリエステルフィルムを用いるのが好ましい。中でも、二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム等)、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。なお、前記第一耐熱性樹脂層13および第二耐熱性樹脂層23は単層で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。前記耐第一熱性樹脂層13および第二耐熱性樹脂層23の厚さは20μm〜100μmが好ましい。
【0048】
また、前記耐第一耐熱性樹脂層13および第二耐熱性樹脂層23を貼り合わせる接着剤層12、22を構成する接着剤は、ポリエステルウレタン系接着剤およびポリエーテルウレタン系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の接着剤を用いるのが好ましい。前記第接着剤層12、22の厚さは、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。
(熱融着性樹脂層)
第一熱融着性樹脂層15および第二熱融着性樹脂層25を構成する熱融着性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱融着性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。前記熱融着性樹脂層15、25の厚さは20μm〜150μmに設定されるのが好ましい。
【0049】
また、前記第一熱融着性樹脂層15および第二熱融着性樹脂層25を貼り合わせる接着剤層14、24を構成する接着剤は、オレフィン系接着剤により形成された層であるのが好ましい。2液硬化型のオレフィン系接着剤を用いた場合には、電解液による膨潤で接着性が低下するのを十分に防止できる。前記接着剤層14、24の厚さは、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。
(電極体)
正極活物質部71b、111bは、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンとヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、等を有するモノマーとの共重合体、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、スチレンとアクリル酸の共重合体、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩など)、PAN(ポリアクリロニトリル)等のバインダーと、正極活物質(例えば、リチウムを含有し、さらにコバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウムから選ばれる少なくとも一つの金属を含有する層状岩塩型の結晶構造を有する金属酸化物、あるいはリチウムを含有し、さらに鉄、マンガンから選ばれる少なくとも一つの金属を含有するオリビン型の結晶構造を有する金属酸化物、あるいはリチウムを含有し、さらにマンガン、ニッケルから選ばれる少なくとも一つの金属を含有する、スピネル型の結晶構造を有する金属酸化物等)を添加した混合組成物などで形成される。前記正極活物質部71b、111bの厚さは、2μm〜300μmに設定されるのが好ましい。さらに、前記正極活物質部71b、111bには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛微粒子、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤を含有させてもよい。
【0050】
負極活物質部72b、112bとして、例えば、PVDF、フッ化ビニリデンとヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、等を有するモノマーとの共重合体、SBR、スチレンとアクリル酸の共重合体、CMC、PAN等のバインダーに、負極活物質(例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、チタン酸リチウム、シリコン、スズ等のリチウムと合金化可能な元素を含む金属等)を添加した混合組成物等で形成される。前記負極活物質部72b、112bの厚さは、1μm〜300μmに設定されるのが好ましい。さらに、前記負極活物質部72b、112bには、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)、黒鉛微粒子等の導電補助剤を含有させてもよい。
【0051】
セパレーター73、113としては、ポリエチレン製セパレーター、ポリプロピレン製セパレーター、ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとからなる複層フィルムで形成されるセパレーター、あるいはこれの樹脂製セパレーターにセラミック等の耐熱無機物を塗布した湿式または乾式の多孔質フィルムで構成されるセパレーター等が挙げられる。前記セパレーター73、113の厚さは、5μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0052】
集電体と活物質部の接触抵抗を低減するために集電体と活物質部の間にアンダーコート層を設けてもよい。前記アンダーコート層の組成は特に限定されるものではないが、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、PAN(ポリアクリロニトリル)、キトサン等の多糖類、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩など)の多糖類誘導体等のバインダーに導電性を向上させるために、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤を添加させた混合物が好ましい。配置する場合、厚みは0.01μm〜10μmに設定されるのが好ましい。
(電解質)
電解質は、六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス-トリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムビス-フルオロスルホニルイミド等のリチウム塩から選択された塩をエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、アセトニトリル、γブチロラクトン等の有機溶媒を単独あるいは混合したものに溶解させたものが好ましい。