(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649032
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】重ね合わせ接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/21 20180101AFI20200210BHJP
B42D 15/02 20060101ALI20200210BHJP
B42D 15/04 20060101ALI20200210BHJP
B32B 3/02 20060101ALI20200210BHJP
B32B 29/06 20060101ALI20200210BHJP
B65D 27/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
C09J7/21
B42D15/02 501B
B42D15/04 A
B32B3/02
B32B29/06
B65D27/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-206136(P2015-206136)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-78107(P2017-78107A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097560
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤村 浩輝
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−276943(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3079848(JP,U)
【文献】
特開2003−335081(JP,A)
【文献】
特開2014−177036(JP,A)
【文献】
特開2000−319604(JP,A)
【文献】
特開2008−143166(JP,A)
【文献】
特開2017−077658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B42D 15/02− 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせ接着する少なくとも第1紙片及び第2紙片に対し、縁部の1辺を折り部又は接合部として他の3辺を接着させ、何れかの隅部の剥離開始端より対角方向の剥離終端にかけた剥離方向に剥離開封させる重ね合わせ接着シートであって、
前記第1紙片及び第2紙片の何れかの前記3辺に、細長形状の長手方向を前記剥離方向と略同じ方向とした形状の剥離剤不形成領域が断続的に設けられて形成される剥離層と、
少なくとも前記剥離剤不形成領域に接着剤が塗布されて形成される接着層と、
を有することを特徴とする重ね合わせ接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁部に形成された接着層により重ね合わせ接着されて接着層部分より剥離開封される重ね合わせ接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、剥離自在に重ね合わせ接着された接着シートは、帳票、封書、はがき、パンフレット、冊子等に広く用いられるようになってきている。このような重ね合わせ接着シートは、剥離開封する際に紙破れを防止必要がある。
【0003】
従来、後に剥離開封して情報等を認識させる重ね合わせ接着シートは種々知られている。例えば、特許文献1に記載されているように、三つ折りされた封書上紙片と封書中紙片と封書下紙片の周縁を接着して封書を作製するための三つ折封書用帳票の表面側及び裏面側の縦方向に設けられる接着剤を破線棒状とし、横方向に設けられる接着剤を直線状とした三つ折封書用帳票が知られている。
【0004】
また、特許文献2に記載されているように、用紙を2つの折り線によって三つ折りしたのち、さらに折り線で四つ折りすることにより定形郵便物サイズに折り畳み、四周に開口する紙面の周縁部に間隔を開けたドット状に塗布した接着剤によって通気可能かつ再剥離可能に封緘する封書が知られている。
【0005】
さらに、特許文献3に記載されているように、綴じ合わせ部における対向面それぞれに剥離剤を塗布し、綴じ合わせ部において相対向する剥離剤塗布部分それぞれに、剥離剤塗布部分の重ね合わせ時に少なくとも一部が重なる剥離剤未塗布部を設けて、少なくとも一方の剥離剤未塗布部を不連続とし、剥離剤未塗布部を覆う直線状に形成された接着剤を介して相対向する綴じ合わせ部を分離可能に綴じ合わせた封書が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−017171号公報
【特許文献2】特許3153908号公報
【特許文献3】特許3717001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各特許文献に記載されているような接着剤は接着力の弱い疑似接着用のものではなく、水性系接着剤を使用しており、剥離開封の際には接着剤の厚み方向の層間で剥がれるように分離されていくものであるが、接着剤を上記破線棒状、ドット状若しくは不連続に形成させた形状では、スポット的な接着であっても局所的に強接着力で接着されるために剥離開封時に加えられる力が接着剤の層間に集中せずに紙破れを生じやすいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、剥離開封時に紙破れを防止する重ね合わせ接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、重ね合わせ接着する少なくとも第1紙片及び第2紙片に対し、縁部の1辺を折り部又は接合部として他の3辺を接着させ、何れかの隅部の剥離開始端より対角方向の剥離終端にかけた剥離方向に剥離開封させる重ね合わせ接着シートであって、前記第1紙片及び第2紙片
の何れかの前記3辺に、細長形状の長手方向を前記剥離方向と略同じ方向とした形状の剥離剤不形成領域が断続的に設けられて形成される剥離層と、少なくとも前記剥離剤不形成領域に接着剤が塗布されて形成される接着層と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、縁部の一辺を折り部又は接合部として他の3辺を接着させ、何れかの隅部の剥離開始端より対角方向の剥離終端にかけた剥離方向に剥離開封させる少なくとも第1紙片及び第2紙片
の何れかの3辺に、細長形状の長手方向を剥離方向と略同じ方向とした形状の剥離剤不形成領域が断続的に設けられた剥離層を形成し、少なくとも剥離剤不形成領域に接着剤が塗布された接着層を形成させる構成とすることにより、接着層が剥離方向に細長くなり、開封時に剥離される接着層の領域が少なくなって破壊による層間での分離がされやすくなり、紙破れを防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る重ね合わせ接着シートにおける実施形態の構成図である。
【
図2】
図1の重ね合わせ接着シートの各部断面図である。
【
図3】
図1の重ね合わせ接着シートの一部剥離状態の説明図である。
【
図4】本発明に係る重ね合わせ接着シートにおける他の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。なお、この実施形態における各断面図は、理解を容易にするために寸法(特に厚み)を無視している。
【0013】
図1に本発明に係る重ね合わせ接着シートにおける実施形態の構成図を示すと共に、
図2に
図1の重ね合わせ接着シートの各部断面図を示す。
図2(A)は
図1(B)のA−A(B−B)断面図、
図2(B)は
図1(B)のC−C断面図、
図2(C)は
図1(A)のD−D断面図である。
【0014】
図1(A)において、重ね合わせ接着シート11は、第1紙片12と第3紙片13とが折り部14(
図1(B))により折り重ね接着されたもので、第1紙片12の折り方向の長さが第2紙片13より短く、折り重ねたときに第2紙片13には第1紙片12と重ならない重ね合わせ延長部15が形成されることとなる。また、折り重ねた第1紙片12の延長部15側端部で当該第2紙片13に対して段差部16が形成される。当該段差部16は、例えば下隅(上隅でもよい)が剥離開始端17とされ、当該剥離開始端17より対角方向への剥離方向Toffに剥離されるものとされる。なお、重ね合わせ延長部15及び段差部16を設けなくともよく、この場合には剥離開始端17の部分を不接着とさせればよい。
【0015】
図1(B)に示すように、第1紙片12及び第2紙片13が折り部14で連設される。紙類として、例えばコート紙が用いられる。また、
図1(B)、(C)に示すように、第2紙片13の縁部であって、折り部14の辺以外の3辺に「コ」の字状に剥離層21が剥離剤不形成領域22を断続的(例えば等間隔)に有して形成される。剥離剤として、例えばニスが使用される。なお、第2紙片13における上記3辺のうちの1辺は、重ね合わせ延長部15を除いたものとしての辺であって、重ね合わせ延長部15の有無に拘わらず、重ね合わせ対象の紙片(第1紙片12)の対応する辺(折り部14に対向する辺)が重ねられる辺である。
【0016】
上記剥離剤不形成領域22は、長方形状の細長形状で所定間隔に並設させたものであって、長手方向を、例えば
図1(A)に示す第1紙片12の右下隅を剥離開始端17とした場合、当該剥離開始端17より対角方向の剥離終端にかけた剥離方向(右下隅から左上隅)Toffの方向と略同じ方向とさせたものである。当該剥離剤不形成領域22を含む剥離層21の形成は、例えば型(版)により形成することができる。
【0017】
上記並設された剥離剤不形成領域22を含む剥離層21上には接着層31が塗布形成され、
図2(A)、(B)に示すように、当該剥離剤不形成領域22に入り込んだ接着剤の接着層31により第1紙片12及び第2紙片13が重ね接着されることとなる。当該接着層31(剥離剤不形成領域22)の間隔は、接着力の調整に応じて適宜形成されるが、細長形状の長手方向に対する幅方向の長さより大であることが好適である。接着剤としては、水性エマルジョン系のものが使用される。
【0018】
なお、接着層31を形成するにあたり、図のように連続的とせずに、剥離剤不形成領域22にのみ接着剤を形成させて断続的とさせることとしてもよく、また、連続的な辺と断続的な辺とを混在させてもよい。断続的とさせる場合には、剥離層21の剥離剤不形成領域22上に接着剤を滴下状に塗布させて当該剥離剤不形成領域22内に入り込ませればよく、剥離剤不形成領域22におおよそかかる程度で厳密な塗布精度を要しない。
【0019】
そして、第1紙片12を折り部14より第2紙片13側に折り曲げることで接着層31により重ね合わせ接着されるもので、
図2(C)(
図1(A)のD−D断面図)に示すように、接着層31を構成する接着剤は剥離層21上に形成されると共に、各剥離剤不形成領域22内に入り込む状態となる。この場合、接着層31は剥離層21に密接する部分では剥離力に応じた接着力を有し、第2紙片13に対して断続的に形成された接着層31の接着力を有することとなる。
【0020】
そこで、
図3に、
図1の重ね合わせ接着シートの一部剥離状態の説明図を示す。
図3(A)は剥離開始直後の状態を示したもので、
図3(B)はそのE−E断面図、
図3(C)はそのF−F断面図である。
図3(A)において、
図1(A)に示す重ね合わせ接着シート11における第1紙片12を段差部16の右下隅の剥離開始端17より引き上げて剥離を開始すると、幅方向のE−E断面及び長手方向のF−F断面における接着層31では、
図3(B)、(C)に示すように、剥離層21上に形成された接着層31の接着剤は当該剥離層21より剥離され、剥離剤不形成領域22内に流れ込んだ各接着剤が厚さ方向で分断されるように分離していくことで剥離される。
【0021】
この場合、剥離剤不形成領域22に形成された接着層31は、その形状が細長の長方形状であり、その長手方向が剥離方向Toffと略同じ方向であることから、接着層31が剥離方向に細長くなり、開封時に剥離される接着層31の領域が少なくなって破壊による層間での分離がされやすくなり、紙破れを防止することができるものである。
【0022】
次に、
図4に、本発明に係る重ね合わせ接着シートにおける他の実施形態の説明図を示す。
図4は、上記実施形態の剥離剤不形成領域22の形状を異ならせたもので、基本的には細長形状であり、その長手方向を剥離方向Toffと略同じ方向に形成したものである。
【0023】
すなわち、
図4(A)に示す剥離剤不形成領域22Aは細長の三角形状で剥離方向Toffの剥離終端側を頂点とした形状として、その長手方向を当該剥離方向Toffと略同じ方向に形成したものである。また、
図4(B)に示す剥離剤不形成領域22Bは細長の楕円形状として、その長手方向を当該剥離方向Toffと略同じ方向に形成したものである。さらに、
図4(C)に示す剥離剤不形成領域22Cは細長のひし形形状として、その長手方向を当該剥離方向Toffと略同じ方向に形成したものである。
【0024】
上記のように剥離剤不形成領域22A〜22Cの形状として、その長手方向を当該剥離方向Toffと略同じ方向に形成とすることによっても、上記同様に接着層31が剥離方向に細長くなり、開封時に剥離される接着層31の領域が少なくなって破壊による層間での分離がされやすくなり、紙破れを防止することができるものである。
【0025】
ところで、上記実施形態では、第2紙片13に剥離層21(剥離剤不形成領域22,22A〜22C)、接着層31を形成させた場合を示したが、第1紙片12に形成してもよく、また、両方に形成しても同様である。
【0026】
また、上記実施形態では、2つ折りの重ね合わせ接着シートについて説明したが、3紙片(連設されたa紙片、b紙片、c紙片)のZ折りにする場合であっても同様である。すなわち、a紙片を上記第1紙片12、b紙片を上記第2紙片13として、b紙片における第1面(a紙片との重ね合わせ面)の折り部の辺以外の3辺に、上記のように剥離層21(剥離剤不形成領域22,22A〜22C)及び接着層31を形成して重ね合わせ、これをさらに第1紙片12とし、c紙片を第2紙片13として当該c紙片の重ね合わせ面における折り部の辺以外の3辺に、剥離層21(剥離剤不形成領域22,22A〜22C)及び接着層31を形成して第1紙片12(重ね接着されたa紙片及びb紙片)のb紙片の第2面(第1面の裏面)と重ね合わせることで重ね合わせ接着シート11とさせるものである。
【0027】
さらに、上記実施形態では、2つの紙片の重ね合わせ接着シート11について説明したが、これを冊子(例えば単葉のa紙片、b紙片、c紙片)に適用させる場合、まず、a紙片を上記第1紙片12、b紙片を上記第2紙片13として、b紙片の第1面(a紙片との重ね合わせ面)の接合部の辺以外の3辺に、上記のように剥離層21(剥離剤不形成領域22,22A〜22C)及び接着層31を形成して重ね合わせ、これをさらに第1紙片12とし、c紙片を第2紙片13として当該c紙片の重ね合わせ面における接合部の辺以外の3辺に、剥離層21(剥離剤不形成領域22,22A〜22C)及び接着層31を形成して第1紙片12(重ね接着されたa紙片及びb紙片)におけるb紙片の第2面(第1面の裏面)と重ね合わせることで重ね合わせ接着シート11とさせるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の重ね合わせ接着シートは、帳票、封書、はがき、パンフレット、冊子等の製造、販売、使用等の産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
11 重ね合わせ接着シート
12 第1紙片
13 第2紙片
14 折り部
15 重ね合わせ延長部
16 段差部
17 剥離開始端
21 剥離層
22 剥離剤不形成領域
31 接着層