(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態における緊急遮断装置100を例示する図である。緊急遮断装置100は、例えば都市ガス、あるいは石油等の可燃性流体を給送する管路途中に設けられ、例えば地震発生時や火災発生時等の緊急時に管路を遮断する。
【0012】
図1に示すように、緊急遮断装置100は、緊急遮断用アクチュエータ1、
図1では一点鎖線で示されている遮断弁2を有する。
【0013】
遮断弁2は、通常時は開弁状態に保持され、地震発生時や火災発生時等の緊急時に緊急遮断用アクチュエータ1によって閉弁駆動される。遮断弁2は、弁軸201が回転すると、弁軸201と共に不図示の弁体が回動することにより開弁又は閉弁する構造になっている。遮断弁2は、例えばボールバルブ、バタフライバルブであるが、これらに限られるものではない。
【0014】
緊急遮断用アクチュエータ1は、本体3、ピストン機構4、係止機構5、高圧気体供給機構6を有する。
【0015】
本体3は、本体ケース301、出力軸303、リンク305を有する。本体ケース301は、リンク室309を有し、遮断弁2の上部に載置固定されている。
【0016】
出力軸303は、
図1において上下方向に延在してリンク室309を貫通して設けられ、本体ケース301に回転可能に支持されている。出力軸303は、下端部分が遮断弁2の弁軸201に連結固定されている。出力軸303は、後述するピストン機構4に連動して回転駆動するように設けられている。
【0017】
出力軸303が回転すると、出力軸303に連結されている弁軸201が回転して遮断弁2が開弁又は閉弁される。また、出力軸303は上端303aが本体ケース301から露出しており、例えば上端303aに嵌合する手動操作ハンドルを用いて出力軸303を手動で回転させ、遮断弁2を開弁又は閉弁させることもできる。
【0018】
リンク305は、リンク室309内で出力軸303に固定され、ピストン機構4のピストンロッド407に設けられている連結ピン408に係合している。ピストン機構4においてピストン403に連動してピストンロッド407が
図1に示されるA方向又はB方向に変位すると、ピストンロッド407に設けられている連結ピン408に係合するリンク305が回転する。リンク305がピストン403に連動して回転すると、リンク305が固定されている出力軸303が回転し、出力軸303と共に弁軸201が回転して遮断弁2が開弁又は閉弁される。
【0019】
ピストン機構4は、シリンダ401、ピストン403、ピストンロッド407、バネ受け409、コイルバネ411を有する。
【0020】
シリンダ401は、中空円筒状の形状を有し、一方の開口が本体ケース301のリンク室309に連結され、他方の開口が蓋402によって塞がれている。本体ケース301に設けられている開口311により、シリンダ401の内部空間とリンク室309の室内とは連通する空間となっている。
【0021】
ピストン403は、シリンダ401の内部において矢印A,B方向に摺動するように移動可能に設けられ、シリンダ401内において本体ケース301側の第1シリンダ室405aと、蓋402側の第2シリンダ室405bとを画成する。第1シリンダ室405a及び第2シリンダ室405bは、ピストン403の位置によってそれぞれの大きさが変化する。
【0022】
ピストンロッド407は、一端がピストン403に連結され、他端に設けられている連結ピン408が本体3のリンク305に係合している。ピストンロッド407は、ピストン403がA方向又はB方向に移動すると、ピストン403と共にA方向又はB方向に移動する。
【0023】
図2は、実施形態におけるピストンロッド407及びリンク305の構成を例示する図である。
図2に示すように、ピストンロッド407は、連結ピン408によって、出力軸303に固定されているリンク305に係合している。ピストンロッド407がピストン403(
図1参照)に連動してA方向又はB方向に移動すると、ピストンロッド407に係合するリンク305が回転し、リンク305が固定されている出力軸303が回転する。
【0024】
本実施形態において例示する構成では、ピストン403に連動してピストンロッド407がA方向に移動すると、リンク305及び出力軸303が
図2における時計回り方向に回転する。出力軸303が時計回り方向に回転すると、出力軸303に連結されている弁軸201も同様に時計回り方向に回転して遮断弁2が開弁する。
【0025】
また、ピストン403に連動してピストンロッド407がB方向に移動すると、リンク305及び出力軸303が
図2における反時計回り方向に回転し、出力軸303に連結されている弁軸201も同様に反時計回り方向に回転して遮断弁2が閉弁する。
【0026】
本実施形態では、ピストン403がA方向に移動して本体ケース301に近付くと遮断弁2が開弁し、ピストン403がB方向に移動して蓋402に近付くと遮断弁が閉弁する。
図1に示すように、ピストン403が開弁位置(ピストン403の移動可能範囲において最も本体ケース301側の位置)に移動すると、遮断弁2が全開状態となる。また、
図4に示すように、ピストン403が閉弁位置(ピストン403の移動可能範囲において最も蓋402側の位置)に移動すると、遮断弁2が完全に閉じて閉弁状態となる。
【0027】
ピストン403は、地震発生時や火災発生時等の緊急時以外は、開弁位置に保持されて遮断弁2を開弁状態に保つ。ピストン403は、緊急時には、高圧気体供給機構6から供給される高圧気体によって、開弁位置から閉弁位置に向かってB方向に移動する。
【0028】
高圧気体供給機構6は、本体ケース301のリンク室309に連結され、地震発生時や火災発生時等の緊急時にリンク室309を通じて第1シリンダ室405aに高圧気体を供給してピストン403を開弁位置から閉弁位置に向かってB方向に移動させる。
【0029】
図3は、実施形態における高圧気体供給機構6を例示する図である。高圧気体供給機構6は、ソレノイド610、開封機構620、高圧気体容器630、配管640を有する。
【0030】
開封機構620は、高圧気体容器630側の端部にカッタ622が設けられているロッド621、ロッド621を高圧気体容器630に向かって付勢するコイルバネ623、ロッド621を係止する係止球624を有する。
【0031】
ロッド621は、ソレノイド610によって
図3における上下方向に駆動されるプランジャ611によって変位が制限されている係止球624によって、コイルバネ623を圧縮状態に保持する上側位置に係止されている。
【0032】
ソレノイド610は、例えば感震器や火災検知器等から送信される外部信号としての緊急作動信号に応じて作動し、プランジャ611を上方に引き上げて係止球624を変位させ、ロッド621の係止状態を解く。ロッド621は、係止状態から解放されると、コイルバネ623に付勢されて高圧気体容器630に向かって移動する。ロッド621が高圧気体容器630に向かって移動すると、カッタ622が高圧気体容器630に設けられている封板631を突き破る。
【0033】
高圧気体容器630は、気体発生源の一例であり、例えば窒素ガス、炭酸ガス等の高圧気体が封入された容器である。封板631がカッタ622により破られると、高圧気体容器630の内部に密封されていた高圧気体が本体ケース301のリンク室309に通じる高圧気体供給路312(
図1参照)を介してリンク室309に流入し、さらに開口311からシリンダ401の第1シリンダ室405aに供給される。
【0034】
シリンダ401の第1シリンダ室405aに高圧気体が供給されると、
図4に示すように、第1シリンダ室405aに充満する高圧気体によってピストン403が押されて閉弁位置に向かって移動する。ピストン403が閉弁位置に向かってB方向に移動すると、ピストン403に連動してピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が閉弁する。
【0035】
高圧気体供給機構6から供給される高圧気体によって閉弁位置に移動したピストン403は、地震や火災発生後に安全が確認された後に、ピストン押圧部材としてのバネ受け409に押圧されて開弁位置に移動して遮断弁2を開弁させる。その後、第1シリンダ室405aに充満した高圧気体はピストン403に形成されているオリフィス403aを介して第2シリンダ室405bに徐々に流出し、更に、第2シリンダ室405b内に流入した高圧気体は図示しない通路を介して外部に排出される。この結果、第1シリンダ室405a内と第2シリンダ室405b内の圧力は同圧になる。なお、オリフィス403aは、第1シリンダ室405aと第2シリンダ室405bとを連通する連通孔である。
【0036】
バネ受け409は、シリンダ401の第2シリンダ室405bに移動可能に設けられている。バネ受け409は、円盤状のバネ受け部409a、バネ受け部409aの中央部分からピストン403とは反対側に突出する係止軸409bを有する。
【0037】
バネ受け409は、バネ受け部409aと蓋402との間に設けられているコイルバネ411が圧縮状態となるように、
図1及び
図4に示す位置で係止機構5によって係止されている。
【0038】
図5は、実施形態における係止機構5を例示する図である。係止機構5は、ハウジング510、第1ホルダ520、第2ホルダ530、ストッパ540、ソレノイド550を有する。
【0039】
ハウジング510は、円筒状の部材であり、蓋402を貫通する係止軸409bの端部を覆うように、蓋402に固定されている。ハウジング510の蓋402とは反対側には、ソレノイド550が固定されている。
【0040】
第1ホルダ520は、円筒状の部材であり、ハウジング510内に移動可能に設けられ、コイルバネ511によってA方向に付勢されている。第1ホルダ520は、蓋402とは反対側の端部に設けられている係合ピン520aが、ソレノイド550の係合部551に係合している。また、第1ホルダ520は、蓋402側の端部に大径部520b、大径部520bよりもソレノイド550側に、大径部520bよりも内径が小さい小径部520cを有する。第1ホルダ520は、大径部520b及び小径部520cによって、蓋402側から内径が階段状に小さくなるように形成されている。
【0041】
第2ホルダ530は、円筒状の部材であり、第1ホルダ520内に設けられ、ハウジング510に固定して接続され、且つ、蓋402とハウジング510との間に挟み込まれた状で保持されている。第2ホルダ530は、複数の係止孔530aを有し、各係止孔530aに係止球513が嵌入されている。
【0042】
ストッパ540は、第2ホルダ530内に設けられ、コイルバネ515によってA方向に付勢されている。ストッパ540は、係止機構5がバネ受け409の係止軸409bを解放したときにA方向に変位し、係止球513が係止孔530aから脱落するのを防止する。
【0043】
係止機構5は、第1ホルダ520の小径部520cによってハウジング510側への変位が制限されている係止球513が、係止軸409bの端部に設けられている係止溝409cに嵌ることで、バネ受け409を係止する。
【0044】
緊急時に高圧気体供給機構6が高圧気体を供給してピストン403を閉弁位置に移動させて遮断弁2を閉弁させた後、安全が確認された場合には、例えば操作盤から係止機構5に外部信号として開弁信号が送信される。
【0045】
係止機構5に開弁信号が送信されると、ソレノイド550が駆動して、第1ホルダ520をコイルバネ511の付勢力に抗してB方向に移動させる。大径部520bが第2ホルダ530の係止孔530aに対向する位置まで第1ホルダ520がB方向に移動すると、各係止球513が
図5に示す位置からハウジング510に向かって変位可能な状態になる。この状態で、各係止球513は、係止軸409bから離れてハウジング510に近付く方向に変位し、係止溝409cから外れて係止軸409bを解放する。
【0046】
バネ受け409は、係止軸409bが係止機構5から解放されると、
図6に示すように、コイルバネ411からの付勢力によってA方向に移動する。このとき、バネ受け409は、ピストン403を本体ケース301に向かって押圧し、ピストン403を閉弁位置から開弁位置までA方向に移動させる。このようにバネ受け409に押圧されてピストン403が開弁位置に移動することで、ピストン403に連動してピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が開弁する。
【0047】
このように、係止機構5は、例えば操作盤から送信される開弁信号に応じて、係止していたバネ受け409を解放してピストン403を押圧させることで、ピストン403を閉弁位置から開弁位置まで移動させて遮断弁2を開弁させる。
【0048】
以上で説明したように、本実施形態における緊急遮断用アクチュエータ1は、通常時には、
図1に示すように、ピストン403が開弁位置に存在して遮断弁2が開弁状態に保たれ、係止機構5がバネ受け409を係止する。
図1に示す通常時の状態で、例えば感震器や火災検知器等から緊急作動信号が送信されると、高圧気体供給機構6から第1シリンダ室405aに高圧気体が供給される。第1シリンダ室405aに高圧気体が供給されると、
図4に示すように、ピストン403が開弁位置から閉弁位置に向かってB方向に移動し、ピストン403に連動してピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が閉弁する。
【0049】
また、遮断弁2が閉弁された後に、例えば操作盤から開弁信号が送信されると、
図6に示すように、係止機構5による係止状態を解かれたバネ受け409がピストン403を押圧し、ピストン403が開弁位置に向かってA方向に移動する。このように、ピストン403が閉弁位置から開弁位置に向かってA方向に移動すると、ピストン403に連動してピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が開弁する。
【0050】
このように、本実施形態における緊急遮断用アクチュエータ1は、緊急時に送信される緊急作動信号に応じて作動して遮断弁2を閉弁させ、安全確認後に送信される開弁信号に応じて作動して遮断弁2を開弁させることができる。
【0051】
本実施形態における緊急遮断用アクチュエータ1によれば、開弁用の高圧気体発生機構や、開弁用の高圧気体発生機構からシリンダ内部に高圧気体を供給する配管等を設けることなく、係止機構5を作動させて遮断弁2を開弁することができる。したがって、より簡易な構成で作動して遮断弁2を閉弁又は開弁させることが可能になっている。
【0052】
(変形例)
図7は、緊急遮断用アクチュエータ1の変形例を示す図である。
図7に示す緊急遮断用アクチュエータ1は、バネ受け409及び係止機構5の構成が、上記した実施形態とは異なっている。なお、
図7では、上記した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図7に示す変形例におけるバネ受け409は、円盤状のバネ受け部409d、バネ受け部409dの外周に設けられている係止孔409eを有し、シリンダ401の第2シリンダ室405bに移動可能に設けられている。バネ受け409は、バネ受け部409dと蓋402との間に設けられているコイルバネ411が圧縮状態となり、コイルバネ411から付勢力を受けるように係止機構5によって係止されている。
【0054】
係止機構5は、ソレノイド570、係止ピン571を有する。ソレノイド570は、シリンダ401の蓋402側端部の側面に設けられている。係止ピン571は、シリンダ401を貫通してバネ受け409の係止孔409eに嵌合し、コイルバネ411が圧縮状態となるように
図7に示す位置でバネ受け409を係止する。ソレノイド570は、例えば操作盤から送信される開弁信号に応じて作動し、係止ピン571を引き上げてバネ受け409を係止状態から解放する。
【0055】
緊急遮断用アクチュエータ1は、例えば感震器や火災検知器等から緊急作動信号が送信されると、高圧気体供給機構6から第1シリンダ室405aに供給される高圧気体によって、ピストン403が開弁位置から閉弁位置に向かってB方向に移動する。ピストン403が閉弁位置に向かってB方向に移動すると、ピストン403に連動するピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が閉弁する。
【0056】
緊急時に遮断弁2が閉弁された後に、例えば安全が確認されて操作盤から開弁信号が送信されると、ソレノイド570が係止ピン571をシリンダ401の外側に引き上げることで、係止機構5がバネ受け409を解放する。バネ受け409は、係止機構5から解放されると、コイルバネ411からの付勢力によってA方向に移動する。このとき、バネ受け409は、ピストン403を本体ケース301に向かって押圧し、ピストン403を閉弁位置から開弁位置に向かってA方向に移動させる。ピストン403が開弁位置に移動することで、ピストン403に連動するピストンロッド407、出力軸303及び弁軸201が駆動して遮断弁2が開弁する。
【0057】
このように、緊急遮断用アクチュエータ1は、
図7に例示するバネ受け409及び係止機構5によって、ピストン403を閉弁位置から開弁位置に向かってA方向に移動させて遮断弁2を開弁させてもよい。上記した変形例に係る構成によれば、係止機構5をより簡易な構成とすることができる。
【0058】
以上、実施形態に係る緊急遮断弁用アクチュエータ及び緊急遮断装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。