特許第6649092号(P6649092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649092
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】流体放出ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20200210BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20200210BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20200210BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20200210BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20200210BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20200210BHJP
   A63J 5/02 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   F24F13/06 C
   A63F7/02 304D
   F04B45/047 A
   F04B45/04 D
   F24F13/06 A
   F24F13/20
   B60H1/34
   !A63J5/02
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-4577(P2016-4577)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-125643(P2017-125643A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 行洋
(72)【発明者】
【氏名】村松 健次
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−240616(JP,A)
【文献】 特開2011−094870(JP,A)
【文献】 特開平08−098297(JP,A)
【文献】 特開2013−024479(JP,A)
【文献】 特開2014−129891(JP,A)
【文献】 特開2013−200076(JP,A)
【文献】 特開平04−191786(JP,A)
【文献】 実開昭50−038727(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0030116(US,A1)
【文献】 特開2005−296540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00−13/32、
A63F 1/00−13/98、
B60H 1/00−3/06、
F04B 43/00−47/14、
A63J 1/00−99/00、
B05B 17/00−17/08、
H04R 9/00、9/02−9/10、
H04R 9/18、31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動板を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出する流体放出ユニットであって、
前記可動板を直線的に移動させる可動体と、
前記可動体を移動可能に保持する固定体と、
前記可動体と前記固定体とを繋ぐ支持部材と、
前記可動体に備えられたコイル、および、前記コイルを囲うように前記固定体に配置される磁石を備える駆動機構と、
前記放出口が形成され、前記可動板および前記支持部材とともに前記加圧室を仕切る加圧室形成部材と、
前記可動板に対して前記加圧室と反対側に配置され、且つ、前記駆動機構を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材には、前記カバー部材、前記可動板、および前記支持部材によって囲まれる駆動機構保護室の流体を外部に放出するための駆動機構保護室放出口が形成され、
前記駆動機構保護室放出口は、前記放出口よりも開口面積が大きく、
前記カバー部材は、前記駆動機構の外周側を囲む筒状部を備え、
前記筒状部は、前記加圧室が位置する側から前記加圧室と反対の側に向かうに従って縮径する傾斜部を備え、
前記駆動機構保護室放出口は、前記傾斜部に形成されていることを特徴とする流体放出ユニット。
【請求項2】
可動板を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出する流体放出ユニットであって、
前記可動板を直線的に移動させる可動体と、
前記可動体を移動可能に保持する固定体と、
前記可動体と前記固定体とを繋ぐ支持部材と、
前記可動体に備えられたコイル、および、前記コイルを囲うように前記固定体に配置される磁石を備える駆動機構と、
前記放出口が形成され、前記可動板および前記支持部材とともに前記加圧室を仕切る加圧室形成部材と、
前記可動板に対して前記加圧室と反対側に配置され、且つ、前記駆動機構を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材には、前記カバー部材、前記可動板、および前記支持部材によって囲ま
れる駆動機構保護室の流体を外部に放出するための駆動機構保護室放出口が形成され、
前記駆動機構保護室放出口は、前記放出口よりも開口面積が大きく、
前記固定体は、前記支持部材を支持するフレームを備え、
前記フレームは、前記カバー部材の内周側に位置する複数の支柱部を備え、
前記支柱部の少なくとも一部が前記駆動機構保護室放出口と対向することを特徴とする流体放出ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動板を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出させる流体放出ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動板(振動板)を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出させる流体放出ユニットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の流体放出ユニット(空気砲用スピーカ型加振器)は、振動板が固定されるコイルボビンと、コイルボビンを移動可能に保持するフレームと、コイルボビンとフレームとを繋ぐ蛇腹状のダンパーと、コイルボビンの内側に挿入される円柱状のシャフトと、シャフトの外周側に配置されるマグネットと、マグネットの上端面および下端面に固定されるプレートを備える。
【0003】
特許文献1に記載の流体放出ユニット(空気砲用スピーカ型加振器)では、振動板の前方にチャンバー(加圧室)が形成され、チャンバーの上面中央に放出口が形成される。振動板は放出口が形成されたチャンバー上面に対して振動し、放出口から渦輪状の気流が放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−129891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体放出ユニットにおいて、可動板に対して加圧室と反対側に配置された駆動機構(コイルボビン、マグネット等)をカバーによって保護することが提案されている。しかしながら、可動板の振動時には可動板の後方側で流体が移動するため、可動板の後方をカバーによって塞いでしまうと負圧によって可動板の振動が妨げられる。その結果、流体放出ユニットが放出する流体の勢いが低下するという問題点がある。
【0006】
本発明の課題は、以上のような問題点に鑑みて、流体放出ユニットの後方側を覆うカバーによって流体放出ユニットが放出する流体の勢いが低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、可動板を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出する流体放出ユニットであって、前記可動板を直線的に移動させる可動体と、前記可動体を移動可能に保持する固定体と、前記可動体と前記固定体とを繋ぐ支持部材と、前記可動体に備えられたコイル、および、前記コイルを囲うように前記固定体に配置される磁石を備える駆動機構と、前記放出口が形成され、前記可動板および前記支持部材とともに前記加圧室を仕切る加圧室形成部材と、前記可動板に対して前記加圧室と反対側に配置され、且つ、前記駆動機構を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材には、前記カバー部材、前記可動板、および前記支持部材によって囲まれる駆動機構保護室の流体を外部に放出するための駆動機構保護室放出口が形成され、前記駆動機構保護室放出口は、前記放出口よりも開口面積が大きく、前記カバー部材は、前記駆動機構の外周側を囲む筒状部を備え、前記筒状部は、前記加圧室が位置する側から前記加圧室と反対の側に向かうに従って縮径する傾斜部を備え、前記駆動機構保護室放出口は、前記傾斜部に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、流体放出ユニットの背面側(加圧室と反対の側)に、駆動機構を覆うカバー部材を配置する。従って、カバー部材によって駆動機構を保護でき、防塵機能や悪
戯防止機能を高めることができる。また、駆動機構と周囲の構造との距離を保つことができるので、防磁機能を高めることができる。更に、カバー部材には放出口よりも大きい開口(駆動機構保護室放出口)が形成されているので、可動板が振動する際にカバー部材、可動板、および支持部材によって囲まれる駆動機構保護室の流体を外部に放出することができる。よって、可動板を駆動する際に可動板の振動が妨げられることを抑制でき、カバー部材を設けたことによって流体放出ユニットが放出する流体の勢いが低下することを抑制できる。
【0010】
本発明によれば、前記カバー部材は、前記駆動機構の外周側を囲む筒状部を備え、前記筒状部は、前記加圧室が位置する側から前記加圧室と反対の側に向かうに従って縮径する傾斜部を備え、前記駆動機構保護室放出口は、前記傾斜部に形成されているので、カバー部材をプラスチック等により成形する際に、上下型のみで駆動機構保護室放出口を備えるカバー部材を形成できる。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、可動板を移動させて加圧室内の流体を放出口から放出する流体放出ユニットであって、前記可動板を直線的に移動させる可動体と、前記可動体を移動可能に保持する固定体と、前記可動体と前記固定体とを繋ぐ支持部材と、前記可動体に備えられたコイル、および、前記コイルを囲うように前記固定体に配置
される磁石を備える駆動機構と、前記放出口が形成され、前記可動板および前記支持部材とともに前記加圧室を仕切る加圧室形成部材と、前記可動板に対して前記加圧室と反対側に配置され、且つ、前記駆動機構を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材には、前記カバー部材、前記可動板、および前記支持部材によって囲まれる駆動機構保護室の流体を外部に放出するための駆動機構保護室放出口が形成され、前記駆動機構保護室放出口は、前記放出口よりも開口面積が大きく、前記固定体は、前記支持部材を支持するフレームを備え、前記フレームは、前記カバー部材の内周側に位置する複数の支柱部を備え、前記支柱部の少なくとも一部が前記駆動機構保護室放出口と対向することを特徴とする。このようにすると、駆動機構保護室放出口から駆動機構保護室に塵埃が侵入することを抑制できる。従って、駆動機構保護室放出口を形成したことによる防塵機能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カバー部材によって駆動機構を保護でき、防塵機能や悪戯防止機能、防磁機能を高めることができる。また、カバー部材を設けたことによって流体放出ユニットが放出する流体の勢いが低下することを抑制できる。さらに、カバー部材をプラスチック等により成形する際に、上下型のみで駆動機構保護室放出口を備えるカバー部材を形成できる。あるいは、駆動機構保護室放出口から駆動機構保護室に塵埃が侵入することを抑制できる。従って、駆動機構保護室放出口を形成したことによる防塵機能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した流体放出ユニットの斜視図である。
図2図1に示す流体放出ユニットの縦断面図である。
図3図1に示す流体放出ユニットの分解斜視図である。
図4】加圧室形成部材と防護部材の分解斜視図である
図5】カバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した流体放出ユニットの実施形態を説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した流体放出ユニット1の斜視図であり、図1(a)は上側から見た斜視図であり、図1(b)は下側から見た斜視図である。図2図1に示す流体放出ユニット1の縦断面図である。また、図3は、図1に示す流体放出ユニット1の分解斜視図である。流体放出ユニット1は、可動板2を移動させて加圧室3内の流体を放出口4aから放出する。流体放出ユニット1は、たとえば、自動車に搭載されて使用され、運転手の眠気を覚ますために、運転手に向かって空気を塊の状態で放出する。また、この流体放
出ユニットは、アミューズメント機器に搭載され、演出効果を高めるために、遊技者に向かって空気を塊の状態で放出する。あるいは、この流体放出ユニット1は、映画館の中に配置され、演出効果を高めるために、視聴者に向かって空気を塊の状態で放出する。なお、流体放出ユニット1は、空気以外の気体を放出しても良いし、液体を放出しても良い。また、流体放出ユニット1は、液体を含む気体を放出しても良い。
【0016】
流体放出ユニット1は、放出口4aが形成される加圧室形成部材4と、加圧室3に配置される防護部材5と、可動板2を直線的に移動させる可動体6と、可動体6を移動可能に保持する固定体7と、可動体6と固定体7とを繋ぐ支持部材8と、可動体6と固定体7との間に配置されるダンパ部材9と、流体放出ユニット1の背面側を覆うカバー部材10を備える。本明細書において、可動板2の移動方向(図1図3のZ方向)を上下方向とする。また、可動板2の移動方向のうちの、空気の放出側(図1図3のZ1方向側)を上側とし、その反対側(図1図3のZ2方向側)を下側とする。
【0017】
(可動板)
可動板2は、上下方向Zに見た場合に円形の剛体であり、樹脂フィルム等によって形成される。本形態の可動板2は、上面側が窪む(すなわち、下側Z2に向かって膨らむ)曲板状である。なお、可動板2は、下面側が窪む(すなわち、上側Z1に向かって膨らむ)曲板状であっても良いし、平板状であっても良い。
【0018】
(加圧室形成部材および防護部材)
加圧室形成部材4は、下端が開口する円筒部41と、円筒部41から外周側に張り出す張り出し42を備える。張り出し部42は、周方向に等角度間隔となる4箇所に形成されている。4箇所の張り出し部42は、上下方向Zに見た場合に全体として略正方形の外形となるように配置されている。図2に示すように、円筒部41の内側には、可動板2との間に加圧室3が形成される。加圧室3には防護部材5が配置される。防護部材5は平面状の網状部材である。例えば、防護部材5として、金属製の線材を縦横にクロスさせた平織り状の網状部材を用いる。本形態では、防護部材5として、SUS製の線材(φ0.25mm)を1mm間隔で縦横に配置した網状部材を用いる。
【0019】
図4は加圧室形成部材と防護部材を下側Z2から見た分解斜視図である。加圧室形成部材4の円筒部41は、円板状の端板部43と、端板部43の外周縁から下側Z2に延びる筒状部44を備える。端板部43は可動板2と対向する。放出口4aは、端板部43の中央を貫通する円形の開口部である。上下方向Zに見た場合に放出口4aの中心と可動板2の中心は一致する。防護部材5は、放出口4aの開口径よりも大きい平面状部材であり、放出口4aと対向する。図2に示すように、防護部材5は、放出口4aとの間に所定の隙間ができる位置に配置される。また、防護部材5は、可動板2の可動範囲よりも上側Z1に配置される。
【0020】
加圧室形成部材4の内周面4bは円筒面である。すなわち、上下方向から見たときの内周面4bの形状は円形状である。また、上下方向から見たときに、放出口4aの中心と内周面4bの中心とが一致する。内周面4bの上下方向Zの中央より少し上側の位置には、下側Z2を向く段面4cが形成されている。図2に示すように、防護部材5の外周縁は、段面4cの下側Z2に配置されたリング状部材45と段面4cとの間に挟まれている。リング状部材45と防護部材5の外周縁は、全周にわたって接着剤により加圧室形成部材4の筒状部44に固定されている。
【0021】
(可動体)
可動体6は、上下方向Zを軸方向とする円筒状のボビン61と、ボビン61の外周面に巻回される駆動用コイル62を備える。ボビン61は、絶縁性の樹脂材料などの絶縁性材
料で形成されている。ボビン61の上端側には、支持部材8を構成する後述の可動側固定部8aを介して、可動板2が取り付けられている。
【0022】
駆動用コイル62はボビン61の外周面に固定されている。駆動用コイル62の端部は、FFC(Flexible Flat Cable)またはFPC(Flexible
Printed Circuits)からなるケーブル(図示省略)の一端に接続される。このケーブルの他端は、固定体7に固定される基板(図示省略)等に接続される。なお、駆動用コイル62の端部が接続されるケーブルは、リード線であっても良い。
【0023】
(固定体)
固定体7は、上下方向Zを軸方向とする筒状の駆動用磁石71を備える。駆動用磁石71は肉厚の円筒状であり、その内径は、ボビン61の外径よりも大きい。駆動用磁石71は、その上端面の磁極と下端面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。例えば、駆動用磁石71は、その上端面側の磁極がN、その下端面側の磁極がSとなるように着磁されている。また、固定体7は、ボビン61の内周側に挿入される円柱状のシャフト72と、駆動用磁石71の下端面に固定される円板状の固定板73と、駆動用磁石71の上端面に固定される円板状の固定板74と、加圧室形成部材4が固定されるフレーム75を備える。駆動用磁石71、シャフト72、固定板73、固定板74、フレーム75は同軸に配置されている。
【0024】
固定板73、74は、軟磁性材料で形成されている。固定板73は駆動用磁石71の下端面に固定され、固定板74は駆動用磁石71の上端面に固定されている。固定板73の中心には、シャフト72を固定するための円形の貫通孔73aが形成されている。固定板74の中心には、ボビン61等を配置するための丸孔状の貫通孔74aが形成されている。
【0025】
シャフト72は、軟磁性材料で形成されている。シャフト72は円柱状であり、駆動用磁石71の内周側に配置されている。シャフト72の下端には下側Z2へ突出する被固定部72aが形成されている。被固定部72aは、シャフト72の他の部分よりも一回り細い円柱状であり、固定板73の貫通孔73aに挿入されて固定されている。また、被固定部72aを除いたシャフト72の長さ(上下方向Zの長さ)は、駆動用磁石71の上下方向Zの長さと固定板74の厚さとの合計寸法と略等しい。
【0026】
フレーム75は、略円環状の底部75aと、底部75aの外周縁から上側Z1へ階段状に拡径しながら立ち上がる拡径部75bと、拡径部75bの上端から径方向の外側へ広がる鍔部75cと、底部75aの中心穴の縁から下側Z2に延びる筒部75dを備える。また、フレーム75には、拡径部75bを径方向に貫通する空気抜き用の窓部75eが周方向に等角度間隔で4箇所に形成されている。拡径部75bにおける隣り合う窓部75eの間の領域は、底部75aと鍔部75cとを繋ぐ支柱部75fとなっている。支柱部75fは、周方向に等角度間隔で4箇所に配置されている。
【0027】
フレーム75は、固定板74の貫通孔74aにフレーム75の筒部75dが内接し、フレーム75の底部75aが固定板74の上面に接触した状態で、固定板74に固定されている。筒部75dの上下方向Zの長さと固定板74の厚さとは略等しい。筒部75dの内周側には、駆動用コイル62が巻回されたボビン61が配置される。駆動用コイル62と筒部75dの内周面との間には隙間がある。ボビン61の上下方向Zの長さは、固定板74の厚さよりも長い。また、駆動用コイル62の巻回領域の上下方向Zの長さも、固定板74の厚さより長い。
【0028】
鍔部75cは、上下方向Zから見たときの外形が略正方形である。鍔部75cは、加圧
室形成部材4の筒状部44および張り出し部42の下端面に下側Z2から当接する。流体放出ユニット1の背面側を覆うカバー部材10は、後述するように、張り出し部42および鍔部75cと上下方向Zに重なる位置に形成されたフランジ部11を備える。フランジ部11は、鍔部75cに下側Z2から当接する。張り出し部42、鍔部75c、およびフランジ部11は図示を省略するネジによって下側Z2からネジ止めされて固定される。すなわち、加圧室形成部材4とカバー部材10は図示を省略するネジによって固定され、固定体7はそのフレーム75を介して加圧室形成部材4およびカバー部材10に固定されている。
【0029】
(支持部材)
可動体6と固定体7とを繋ぐ支持部材8は、可動板2およびボビン61が固定される円環状の可動側固定部8aと、固定体7に固定される円環状の固定側固定部8bと、可動側固定部8aと固定側固定部8bとを繋ぐ円環状の折返し部8cを備える。固定側固定部8bは、支持部材8の外周端に設けられている。折返し部8cは固定側固定部8bの内周側に配置され、上側Z1に膨らむように1回折り返されている。図2に示すように、駆動用コイル62に電流が供給されていないときの折返し部8cの縦断面の形状は、略半円弧状である。
【0030】
固定側固定部8bと折返し部8cは一体で形成され、別体で形成された可動側固定部8aが折返し部8cに接着等によって固定されている。固定側固定部8bおよび折返し部8cは、ゴム、樹脂あるいは圧縮スポンジ等の弾性材料で形成されている。一方、可動側固定部8aは、紙または樹脂等によって形成された剛体である。
【0031】
可動側固定部8aは、上側Z1に向けて拡径する略円錐状である。可動側固定部8aの内周縁には、ボビン61の上端部分が固定されている。可動側固定部8aの外周端部分には、可動板2の外周端部分が固定されている。固定側固定部8bは、フレーム75の鍔部75cの上面に固定されている。
【0032】
(ダンパ部材)
ダンパ部材9は円環状であり、ボビン61に固定ざれる可動体側固定部9aと、フレーム75に固定される固定体側固定部9bと、可動体側固定部9aと固定体側固定部9bを繋ぐ蛇腹状のバネ部9cを備える。固定体側固定部9bは、拡径部75bの段面に上側Z1から当接して固定され、可動体側固定部9aはボビン61の外周面に固定される。ダンパ部材9は、上下方向Zと交差する方向でボビン61の位置決めを行う。また、駆動用コイル62に電流が供給されていないときのボビン61の上下方向Zの位置は、ダンパ部材9によって規定される。
【0033】
(流体放出ユニット1の動作)
可動板2の上側Z1には、可動板2、加圧室形成部材4、支持部材8およびフレーム75の鍔部75cによって区画される加圧室3が配置される。加圧室3は、空気に圧力を加える(空気を圧縮する)空間である。また、本形態では、軟磁性材料で形成されるシャフト72および固定板73、74によって、駆動用磁石71の上端面から下端面に向かって(あるいは、駆動用磁石71の下端面から上端面に向かって)磁力線が回り込む磁路が形成されている。この磁路は、シャフト72の外周面の上端側部分と固定板74の内周面(すなわち、貫通孔74aの側面)との間で駆動用コイル62を通過しており、シャフト72の外周面の上端側部分と固定板74の内周面との間には、磁気ギャップが形成されている。このように、シャフト72は、駆動用磁石71が発生させる磁力によって駆動用コイル62を通過する磁路が形成されるようにボビン61の内周側に挿入されている。
【0034】
流体放出ユニット1は、可動板2を上下方向Zに移動させる駆動機構1Aを備える。駆
動機構1Aは、可動体6に配置されたボビン61に巻回された駆動用コイル62と、固定体7に配置された駆動用磁石71と、軟磁性材料で形成されるとともに駆動用磁石71が発生させる磁力によって駆動用コイル62を通過する磁路が形成されるようにボビン61の内周側に挿入されるシャフト72と、可動体6と固定体7とを繋ぐダンパ部材9と、を備える。
【0035】
本形態では、ボビン61の内径はシャフト72の外径よりも大きく、ボビン61とシャフト72が接触しないように、ボビン61とシャフト72との間は隙間が形成されている。シャフト72に対するボビン61の位置決めは、ダンパ部材9によって行われる。
【0036】
流体放出ユニット1では、駆動用コイル62にパルス状の電流を供給することにより、駆動機構1Aを駆動する。1パルスの電流が供給されると、電流が磁場から受けるローレンツ力により、可動体6(ボビン61および駆動用コイル62)が上下方向Zへ1往復する。このとき、可動板2も上下方向Zへ1往復する。可動板2は下側Z2へ引かれ、次に上側Z1へ飛び出すときに加圧室3内の空気を圧縮する。その結果、加圧室3内の空気が放出口4aから放出される。放出口4aから放出される空気が放出口4aの外側の空気を巻き込むため、渦輪状の気流が放出口4aの上側Z1へ飛び出す。パルス状の電流を連続して供給することにより、放出口4aから気流を連発することもできる。
【0037】
(カバー部材)
図5はカバー部材10の斜視図であり、図5(a)は上側から見た斜視図であり、図5(b)は下側から見た斜視図である。カバー部材10は、可動板2に対して加圧室3と反対側(下側Z2)に配置されている。カバー部材10は、駆動機構1Aの外周側および下側Z2を覆い、上側Z1に開口する形状である。カバー部材10の内側には駆動機構保護室10Aが形成されている。駆動機構保護室10Aは、カバー部材10、可動板2、および支持部材8によって囲まれる空間である。駆動機構保護室10Aには駆動機構1Aが配置される。本形態では、図2に示すように、可動体6および固定体7の大部分が駆動機構保護室10Aに収容されているが、可動体6と固定体7とを繋ぐ支持部材8、および、フレーム75の鍔部75cは駆動機構保護室10Aの上方に位置する。
【0038】
カバー部材10の上端には、上述したように、加圧室形成部材4の張り出し部42およびフレーム75の鍔部75cと上下方向Zに重なると重なるフランジ部11が形成されている。カバー部材10は、上側Z1に開口する筒状部12と、筒状部12の底部を塞ぐ端板部13を備えており、フランジ部11は筒状部12の上端において径方向に突出する。図5(b)に示すように、端板部13には周方向に延在する湾曲状の開口部14が形成されている。
【0039】
筒状部12は、フランジ部11が設けられた大径筒状部15と、端板部13と繋がる小径筒状部16と、小径筒状部16の上端と大径筒状部15の下端とを繋ぐ傾斜部17を備える。筒状部12は全体として略円筒状であり、傾斜部17が設けられた部位で縮径する形状となっている。筒状部12は駆動機構保護室10Aに配置された駆動機構1Aの外周側に位置し、カバー部材10の側面を構成する。筒状部12には、傾斜部17を径方向に貫通する駆動機構保護室放出口18が周方向に等角度間隔で4箇所に形成されている。駆動機構保護室放出口18の開口面積は、4箇所の合計開口面積が少なくとも放出口4aの開口面積よりも大きいことが望ましく、本形態では、4箇所の合計開口面積が放出口4aの開口面積の3倍以上となっている。なお、駆動機構保護室放出口18の数、形状および配置はこの実施例の形態に限定されるものではない。例えば、放出口4aの数は1箇所あるいは複数個所とすることができ、駆動機構保護室放出口18の1箇所あたりの開口面積がそれぞれ、放出口4aの開口面積よりも大きくても良い。また、駆動機構保護室放出口18の配置は周方向に均等でなくても良い。
【0040】
駆動機構保護室放出口18は略矩形の開口であり、直線状に延在する上側開口端面18aおよび下側開口端面18bを備える。駆動機構保護室放出口18は、上下方向Zから見た場合に、上側開口端面18aと下側開口端面18bが全く重ならずに径方向にずれている。本形態では、駆動機構保護室放出口18を傾斜部17に形成し、且つ、駆動機構保護室放出口18の上下方向Zの開口幅を所定の寸法以上に設定することにより、上側開口端面18aと下側開口端面18bが上下方向Zに見た場合に全く重なることがない形状が実現される。
【0041】
図3に示すように、駆動機構保護室放出口18は、フレーム75に形成された窓部75eに対して周方向に45度位置ずれしており、隣り合う窓部75eの間に位置する支柱部75fは駆動機構保護室放出口18と同じ角度位置にある。図2に示すように、フレーム75をカバー部材10の内周側に組み付けたとき、フレーム75の支柱部75fが駆動機構保護室放出口18の正面に位置し、支柱部75fと駆動機構保護室放出口18とが径方向に対向する。従って、支柱部75fにより、駆動機構保護室放出口18から内部に塵埃や異物が侵入することを妨げられる。
【0042】
(作用効果)
以上のように、本形態の流体放出ユニット1は、流体を放出する放出口4aが形成された加圧室3の内部に、放出口4aの開口径よりも大きな防護部材5が放出口4aと対向して配置されている。従って、可動板2の上に異物が入り込むことを防護部材5によって防ぐことができ、異物による可動板2の破損等を抑制できる。また、加圧室3の内部に防護部材5を配置しているので、放出口4aから放出される流体が放出口4aの周囲の流体を巻き込むことを防護部材5が妨げるおそれが少ない。従って、流体放出ユニット1が放出する流体の勢いが防護部材5により低下することを抑制できる。
【0043】
本形態では、防護部材5と放出口4aとの間に所定の隙間を確保するように防護部材5を配置するので、放出口4aから放出される流体の勢いを防護部材5が低下させるおそれが少ない。従って、流体放出ユニット1が放出する流体の勢いが防護部材5により低下することを抑制できる。また、防護部材5は、開口率の高い網状部材であるため、加圧室3における流体の移動を防護部材5が大きく妨げることがない。この点からも、放出口4aから放出される流体の勢いを防護部材5が低下させるおそれが少ない。
【0044】
ここで、防護部材5としては、開口率の高いもの用いることが望ましいが、上記のような網状部材に限定されるものではない。例えば、線材を交差させずに一定ピッチで配列した部材であってもよいし、波型に屈曲した線状部材を一定ピッチで配列したものであってもよい。また、平面状の部材に多数の開口部を設けた部材であってもよい。
【0045】
本形態では、平面状の防護部材5によって加圧室3を上下に仕切っている。従って、可動板2の上に異物が入り込むことを防護部材5によって防ぐことができる。
【0046】
本形態の駆動機構1Aは、可動体6に配置されたボビン61に巻回された駆動用コイル62と、固定体7に配置された駆動用磁石71と、軟磁性材料で形成されるとともに前記磁石が発生させる磁力によって駆動用コイル62を通過する磁路が形成されるようにボビン61の内周側に挿入されるシャフト72と、可動体6と固定体7を繋ぐダンパ部材9と、を備えるボイスコイル構造のリニア駆動機構である。従って、小型でありながらインパクトのある流体を放出できる。
【0047】
また、本形態では、流体放出ユニット1の背面側(加圧室3と反対の側)に、駆動機構1Aを覆うカバー部材10を配置しているため、カバー部材10によって駆動機構1Aを
保護でき、防塵機能や悪戯防止機能を高めることができる。また、駆動機構1Aと周囲の構造との距離を保つことができるので、防磁機能を高めることができる。更に、カバー部材10には放出口4aよりも大きい開口(駆動機構保護室放出口18)が形成されているので、可動板2が振動する際にカバー部材10、可動板2、および支持部材8によって囲まれる駆動機構保護室10Aの流体を外部に放出することができる。よって、可動板2を駆動する際に可動板2の振動が妨げられることを抑制でき、カバー部材10を設けたことによって流体放出ユニット1が放出する流体の勢いが低下することを抑制できる。
【0048】
本形態のカバー部材10は、駆動機構1Aの外周側に位置する側面(筒状部12)を備え、側面(筒状部12)に駆動機構保護室放出口18が形成されており、カバー部材10の底面(端板部13)よりも可動板2に近い部位に駆動機構保護室放出口18が設けられている。従って、駆動機構保護室放出口18から出入りする流体の勢いを低下させるおそれが少ない。また、底面(端板部13)から流体を放出する場合には、駆動機構1Aとカバー部材10の側面(筒状部12)との距離を大きくして広い流体通路を確保する必要があるが、本形態はこのような流体通路を設ける必要がないため、小型化に有利である。
【0049】
本形態のカバー部材10は、駆動機構1Aの外周側を囲む筒状部12が傾斜部17を備え、この傾斜部17に駆動機構保護室放出口18を形成する。そして、このような構成により、駆動機構保護室放出口18は、上下方向Zから見た場合に、上側開口端面18aと下側開口端面18bが全く重ならずに径方向にずれた形状となっている。従って、カバー部材10をプラスチック等により成形する際に、上下型のみで駆動機構保護室放出口18を備えるカバー部材10を形成できる。よって、カバー部材10を容易に製造でき、製造コストを低減させることができる。
【0050】
本形態のカバー部材10は、カバー部材10の内周側に位置するフレーム75の支柱部75fと駆動機構保護室放出口18とが対向する。従って、駆動機構保護室放出口18から駆動機構保護室10Aに塵埃が侵入することを抑制できる。従って、駆動機構保護室放出口18を形成したことによる防塵機能の低下を抑制できる。なお、支柱部75fは、その少なくとも一部が駆動機構保護室放出口18と対向していればよい。
【符号の説明】
【0051】
1…流体放出ユニット、1A…駆動機構、2…可動板、3…加圧室、4…加圧室形成部材、4a…放出口、4b…内周面、4c…段面、5…防護部材、6…可動体、7…固定体、8…支持部材、8a…可動側固定部、8b…固定側固定部、8c…折返し部、9…ダンパ部材、9a…可動体側固定部、9b…固定体側固定部、9c…バネ部、10…カバー部材、10A…駆動機構保護室、11…フランジ部、12…筒状部、13…端板部、14…開口部、15…大径筒状部、16…小径筒状部、17…傾斜部、18…駆動機構保護室放出口、18a…上側開口端面、18b…下側開口端面、41…円筒部、42…張り出し部、43…端板部、44、44A…筒状部、45…リング状部材、61…ボビン、62…駆動用コイル、71…駆動用磁石、72…シャフト、72a…被固定部、73…固定板、73a…貫通孔、74…固定板、74a…貫通孔、75…フレーム、75a…底部、75b…拡径部、75c…鍔部、75d…筒部、75e…窓部、75f…支柱部、Z…上下方向、Z1…上側、Z2…下側
図1
図2
図3
図4
図5