(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法の一実施形態は、例えば、
図2〜
図4Cに示すように、基板1上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ2(Vertically Aligned carbon nanotubes;以下、VACNTs2とする。)を準備する工程と、VACNTs2からカーボンナノチューブウェブ3(以下、CNTウェブ3とする。)を引き出す工程と、CNTウェブ3を複数積層して、積層体としてのCNT積層体4を形成する工程と、CNT積層体4に撚りをかける工程とを含んでいる。
【0023】
このような製造方法では、例えば、
図1A〜
図1Dに示すように、化学気相成長法(CVD法)により、基板1上にVACNTs2を成長させて、基板1上に配置されるVACNTs2を準備する(準備工程)。
【0024】
詳しくは、
図1Aに示すように、まず、基板1を準備する。基板1は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0025】
基板1として、例えば、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5が挙げられる。なお、
図1A〜
図1Dおよび
図2では、基板1が、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5である場合を示す。
【0026】
そして、
図1Aに示すように、基板1上、好ましくは、二酸化ケイ素膜6上に触媒層7を形成する。基板1上に触媒層7を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、基板1(好ましくは、二酸化ケイ素膜6)上に成膜する。
【0027】
金属触媒として、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。このような金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法として、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
【0028】
これによって、基板1上に触媒層7が配置される。なお、基板1が、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板5である場合、二酸化ケイ素膜6および触媒層7は、例えば、特開2014−94856号公報に記載されるように、二酸化ケイ素前駆体溶液と金属触媒前駆体溶液とが混合される混合溶液を、ステンレス基板5に塗布した後、その混合液を相分離させ、次いで、乾燥することにより、同時に形成することもできる。
【0029】
次いで、触媒層7が配置される基板1を、
図1Bに示すように、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層7が、凝集して、複数の粒状体7Aとなる。
【0030】
そして、加熱された基板1に、
図1Cに示すように、原料ガスを供給する。原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1〜4の炭化水素ガスとして、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。
【0031】
また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0032】
原料ガスの供給時間としては、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0033】
これによって、複数の粒状体7Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ10(以下、CNT10とする。)が成長する。なお、
図1Cでは、便宜上、1つの粒状体7Aから、1つのCNT10が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体7Aから、複数のCNT10が成長してもよい。
【0034】
複数のCNT10のそれぞれは、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。これらCNT10は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
CNT10の平均外径は、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下、さらに好ましくは、20nm以下である。
【0036】
CNT10の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上、好ましくは、100μm以上、さらに好ましくは、200μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、さらに好ましくは、400μm以下である。なお、CNT10の層数、平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
【0037】
このような複数のCNT10のそれぞれは、基板1上において、互いに略平行となるように、基板1の厚み方向に延びている。これによって、複数のCNT10からなるVACNTs2が、基板1上に成長する。
【0038】
つまり、複数のCNT10は、基板1に対して直交するように配向(垂直に配向)されており、VACNTs2は、基板1に対して垂直に配向されている。
【0039】
以上によって、基板1上に配置されるVACNTs2が準備される。
【0040】
VACNTs2は、
図2に示すように、基板1の厚み方向(上下方向)と直交する面方向(縦方向および横方向)に延びる平面視略矩形形状を有している。VACNTs2は、複数のCNT10が縦方向に直線的に並ぶ列2Aを、横方向に複数備えている。VACNTs2において、複数のCNT10は、面方向(縦方向および横方向)に互いに密集している。
【0041】
このようなVACNTs2において、複数のCNT10の嵩密度は、例えば、10mg/cm
3以上、好ましくは、20mg/cm
3以上、例えば、60mg/cm
3以下、好ましくは、50mg/cm
3以下である。なお、CNT10の嵩密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm
2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
【0042】
次いで、
図1Dに示すように、CNTウェブ3をVACNTs2から引き出す(引出工程)。
【0043】
CNTウェブ3をVACNTs2から引き出すには、
図2に示すように、VACNTs2のうち、各列2Aの縦方向一方側端部に位置するCNT10を、図示しない引出具により一括して保持し、基板1の厚み方向と交差する(交わる)方向、好ましくは、縦方向に沿って引っ張る。
【0044】
すると、引っ張られたCNT10は、
図1Dに示すように、対応する粒状体7Aから引き抜かれる。このとき、引き抜かれるCNT10に縦方向に隣接するCNT10は、引き抜かれるCNT10との摩擦力およびファンデルワ―ルス力などにより、そのCNT10の一端(下端)が、引き抜かれるCNT10の一端(下端)に付着され、対応する粒状体7Aから引き抜かれる。
【0045】
このとき、一端(下端)にCNT10が付着されたCNT10は、その一端(下端)が引出方向の下流に引っ張られることにより、CNT10の他端(上端)が引出方向の上流に向かうように傾倒し、隣接するCNT10の他端(上端)に付着する。
【0046】
次いで、他端(上端)にCNT10が付着されたCNT10は、その他端(上端)が引出方向の下流に引っ張られることにより、その一端(下端)が対応する粒状体7Aから引き抜かれ、隣接するCNT10の一端(下端)に付着する。
【0047】
これによって、複数のCNT10が、順次連続して、VACNTs2から引き出され、複数のCNT10が直線状に連続的に繋がるカーボンナノチューブ単糸8(以下、CNT単糸8とする。)を形成する。
【0048】
より詳しくは、CNT単糸8において、連続するCNT10は、それらCNT10の一端(下端)同士または他端(上端)同士が付着されており、CNT単糸8の延びる方向に沿うように配向されている。なお、
図1Dでは、便宜上、CNT10が1本ずつ連続的に繋がり、CNT単糸8を形成するように記載されているが、実際には、複数のCNT10からなる束(バンドル)が連続的に繋がり、CNT単糸8を形成している。
【0049】
このようなCNT単糸8は、撚り合わされていない無撚糸であって、撚り角度は、略0°である。CNT単糸8の外径は、例えば、5nm以上、好ましくは、8nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、80nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。
【0050】
このようなCNT単糸8は、
図2の拡大図に示すように、各列2AのCNT10が、同時かつ平行に一括して引き出されるため、CNT単糸8の延びる方向と交差する(交わる)方向に複数並列配置されている。
【0051】
具体的には、複数のCNT単糸8は、縦方向に沿って延びており、横方向に並列配置されている。これによって、並列配置される複数のCNT単糸8は、略シート形状を有しており、CNTウェブ3として形成される。つまり、CNTウェブ3は、複数のCNT単糸8が並列配置されるように引き出されてなる。
【0052】
CNTウェブ3の横方向寸法は、例えば、0.5mm以上、好ましくは、1cm以上、例えば、500cm以下、好ましくは、100cm以下である。
【0053】
次いで、CNTウェブ3を複数積層してCNT積層体4を形成する(積層工程)。
【0054】
CNTウェブ3を複数積層するには、本実施形態では、
図2に示すように、まず、ローラ20を準備する。
【0055】
ローラ20は、横方向に延びる円柱形状を有しており、軸線を回転中心として、回転可能である。また、ローラ20の周面には、好ましくは、樹脂フィルムが設けられている。
【0056】
ローラ20の外径は、例えば、1cm以上、好ましくは、3cm以上、例えば、500cm以下、好ましくは、100cm以下である。ローラ20の横方向(軸線方向)の寸法は、例えば、3cm以上、好ましくは、5cm以上、例えば、500cm以下、好ましくは、100cm以下である。
【0057】
次いで、CNTウェブ3の引出方向下流端部を、ローラ20の周面に固定して、ローラ20を回転させる。
【0058】
これにより、CNTウェブ3は、1つのVACNTs2から連続的に引き出されるとともに、ローラ20の周面に複数周巻き付けられ、ローラ20の径方向に複数積層される。
【0059】
引き出されるCNTウェブ3の移動速度は、例えば、0.01m/min以上、好ましくは、0.1m/min以上、例えば、200m/min以下、好ましくは、100m/min以下である。
【0060】
積層されるCNTウェブ3において、複数のCNT単糸8は、
図3Aに示すように、ローラ20の周方向に沿うように延びている。つまり、CNTウェブ3は、複数のCNT単糸8の延びる方向が互いに沿うように、複数積層されている。
【0061】
CNTウェブ3の巻回数(積層数)は、例えば、5回以上、好ましくは、10回以上、さらに好ましくは、50回以上、とりわけ好ましくは、100回以上、例えば、2000回以下、好ましくは、500回以下、さらに好ましくは、300回以下、とりわけ好ましくは、150回以下である。
【0062】
以上によって、CNTウェブ3が複数積層されて、CNT積層体4が形成される。
【0063】
このように、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4は、切断刃(例えば、剃刀、カッター刃など)により、ローラ20の軸線方向に切断し展開して、ローラ20から離脱させることにより、そのままカーボンナノチューブ撚糸100(後述)の製造に使用することができるが、カーボンナノチューブ撚糸100(後述)の性能向上の観点から好ましくは、高密度化処理される(高密度化工程)。
【0064】
高密度化処理として、例えば、CNT積層体4に揮発性の液体を供給する方法や、CNT積層体4を加圧する方法が挙げられる。
【0065】
本実施形態では、ローラ20に対するCNT積層体4の巻き付けが完了した後、CNT積層体4が、ローラ20に巻き付けられた状態で、揮発性の液体が供給され、次いで、加圧される態様について詳述する。つまり、本実施形態のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法は、CNT積層体4に揮発性の液体を供給する工程(液体供給工程)と、CNT積層体4を加圧する工程(加圧工程)とを順に含んでいる。なお、これら工程は、後述する撚掛工程よりも前に実施される。
【0066】
本実施形態の高密度化処理では、まず、ローラ20を回転させながら、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4に、噴霧器24により揮発性の液体を供給する。
【0067】
噴霧器24は、公知の噴霧器であって、ローラ20に対して間隔を空けて配置されている。噴霧器24は、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4に、揮発性の液体をスプレーするように構成されている。
【0068】
揮発性の液体として、例えば、水、有機溶媒などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、低級(C1〜3)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(例えば、アセトンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)、極性非プロトン類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0069】
このような揮発性の液体のなかでは、好ましくは、低級アルコール類、さらに好ましくは、エタノールが挙げられる。このような揮発性の液体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
また、揮発性の液体には、好ましくは、微粒子を分散でき、また、金属塩および/または樹脂材料を溶解することもできる。
【0071】
微粒子は、その平均一次粒子径が、例えば、0.001μm以上、好ましくは、0.01μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下の粒子である。微粒子は、例えば、有機微粒子、無機微粒子などが挙げられる。
【0072】
有機微粒子として、例えば、シリコーン微粒子、アクリル微粒子などが挙げられる。
【0073】
無機微粒子として、例えば、炭素微粒子、金属微粒子(例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、白金、金、ロジウム、パラジウム、および、それらを含む合金など)などが挙げられる。
【0074】
このような微粒子のなかでは、好ましくは、無機微粒子が挙げられ、さらに好ましくは、炭素微粒子が挙げられる。このような微粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
金属塩として、例えば、上記した金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸酸化物などが挙げられ、好ましくは、硝酸塩、さらに好ましくは、硝酸コバルト(Co(NO
3)
2)が挙げられる。このような金属塩は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
樹脂材料として、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂など)、熱硬化樹脂(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂など)などが挙げられる。また、樹脂材料として、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性高分子を用いることもできる。なお、揮発性の液体に、微粒子を分散するとともに、金属塩および/または樹脂材料を溶解することもできる。
【0077】
これによって、ローラ20上のCNT積層体4に揮発性の液体が均一に付着する。さらに、CNT積層体4には、揮発性の液体に粒子が分散されている場合、微粒子が付着し、揮発性の液体に金属塩および/または樹脂材料が溶解されている場合、金属塩および/または樹脂材料が付着する。
【0078】
その後、揮発性の液体が気化することにより、積層されるCNTウェブ3が積層方向(ローラ20の径方向)に互いに凝集するとともに、各CNT単糸8において、複数のCNT10が互いに凝集する。そのため、CNT積層体4の密度が向上する。
【0079】
次いで、液体が供給された積層体4を、加圧ローラ21により加圧する。
【0080】
加圧ローラ21は、ローラ20に沿うように延びる略円筒形状を有しており、軸線を回転中心として回転可能である。加圧ローラ21は、噴霧器24に対して、ローラ20の回転方向の下流側に間隔を空けて配置されており、かつ、CNT積層体4をローラ20との間に挟むように、ローラ20に対して径方向に向かい合って配置されている。また、加圧ローラ21は、ローラ20の径方向に沿って移動可能である。
【0081】
加圧ローラ21の外径は、ローラ20の外径よりも小さく、例えば、1cm以上、好ましくは、3cm以上、例えば、100cm以下、好ましくは、50cm以下である。加圧ローラ21の軸線方向の寸法は、ローラ20の軸線方向の寸法よりも長く、例えば、3cm以上、好ましくは、5cm以上、例えば、500cm以下、好ましくは、100cm以下である。なお、加圧ローラ21は、ローラ20の回転に伴なって従動回転する。
【0082】
そして、液体が供給されたCNT積層体4は、ローラ20の回転に伴なって、ローラ20と加圧ローラ21との間に到達する。このとき、加圧ローラ21は、CNT積層体4をローラ20の径方向(つまり、CNT積層体4の積層方向)に加圧する。
【0083】
加圧ローラ21のCNT積層体4に対する圧力は、例えば、10kg/cm
2以上、好ましくは、100kg/cm
2以上、例えば、1000kg/cm
2以下、好ましくは、500kg/cm
2以下である。
【0084】
以上によって、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4に、ローラ20の周方向全体にわたって、揮発性の液体が供給され、かつ、圧力が付与され、CNT積層体4の高密度化処理が完了する。その後、必要によりCNT積層体4を乾燥させる。
【0085】
次いで、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4を、上記のように、切断刃により、ローラ20の軸線方向に切断し展開して、ローラ20から離脱させる。これによって、
図3Bに示すように、シート形状のCNT積層体4が形成される。CNT積層体4は、厚み方向に積層される複数のCNTウェブ3からなり、好ましくは、平帯形状を有している。つまり、CNT積層体4の厚み方向は、複数のCNTウェブ3の積層方向と同一方向である。また、CNT積層体4の長手方向は、各CNTウェブ3におけるCNT単糸8の延びる方向に沿っており、CNT積層体4の長手方向とCNT単糸8の延びる方向とは同一方向である。また、CNT積層体4の幅方向は、複数のCNTウェブ3の積層方向およびCNT単糸8の延びる方向の両方向と直交する直交方向である。
【0086】
CNT積層体4において、CNTウェブ3の積層数は、例えば、5層以上、好ましくは、10層以上、さらに好ましくは、50層以上、とりわけ好ましくは、100層以上、例えば、2000層以下、好ましくは、400層以下、さらに好ましくは、300層以下、とりわけ好ましくは、150層以下である。
【0087】
CNTウェブ3の積層数が上記下限以上であれば、CNT積層体4の取扱性の向上を確実に確保することができ、CNTウェブ3の積層数が上記上限以下であれば、カーボンナノチューブ撚糸100(後述)の密度の向上を確実に図ることができる。
【0088】
CNT積層体4の厚みL1(CNTウェブ3の積層方向)は、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上、さらに好ましくは、2μm以上、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下、さらに好ましくは、30μm以下、とりわけ好ましくは、10μm以下である。
【0089】
そして、CNT積層体4は、
図3Cに示すように、幅方向の寸法L2が所定の範囲内となるように、必要に応じて裁断される。この場合、CNT積層体4は、上記の切断刃により、CNT単糸8の延びる方向(CNT積層体4の長手方向)に沿って複数に裁断される。
【0090】
CNT積層体4の幅方向の寸法L2は、例えば、0.05cm以上、好ましくは、0.1cm以上、さらに好ましくは、0.5cm以上、例えば、10cm以下、好ましくは、5cm以下、さらに好ましくは、1cm以下である。
【0091】
また、CNT積層体4の厚みL1(CNTウェブ3の積層方向寸法)に対する、CNT積層体4の幅方向(直交方向)の寸法L2の比率(CNT積層体4の幅方向の寸法L2/CNT積層体4の厚みL1)は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、さらに好ましくは、100以上、とりわけ好ましくは、4000以上、特に好ましくは、5000以上、例えば、10
5以下、好ましくは、50000以下、さらに好ましくは、40000以下、とりわけ好ましくは、30000以下である。
【0092】
CNT積層体4の厚みL1に対するCNT積層体4の幅方向の寸法L2の比率が上記下限以上であれば、CNT積層体4の取扱性の向上を図ることができ、CNT積層体4の厚みL1に対するCNT積層体4の幅方向の寸法L2の比率が上記上限以下であれば、CNT積層体4に撚りをかけて形成されるカーボンナノチューブ撚糸100(後述)の密度の向上を図ることができる。
【0093】
次いで、
図4A〜
図4Cに示すように、CNT積層体4に撚りをかけて、カーボンナノチューブ撚糸100(以下、CNT撚糸100とする。)を製造する(撚掛工程)。
【0094】
CNT積層体4に撚りをかけるには、まず、
図4Aに示すように、CNT積層体4の長手方向(複数のCNT単糸8の延びる方向)の両端部を把持する。そして、
図4Bに示すように、CNT積層体4の他方側端部を固定した状態で、CNT積層体4の一方側端部を、CNT積層体4の長手方向に沿う仮想線を回転中心として回転させる。
【0095】
CNT積層体4の一方側端部の回転速度は、例えば、10rpm以上、好ましくは、50rpm以上、例えば、1000rpm以下、好ましくは、100rpm以下である。また、CNT積層体4の一方側端部の回転時間は、例えば、0.2分以上、好ましくは、0.5分以上、例えば、100分以下、好ましくは、10分以下である。
【0096】
これによって、
図4Cに示すように、CNT積層体4が撚りかけられ、CNT積層体4が有する複数のCNT単糸8が互いに撚り合わされて、CNT撚糸100が製造される。つまり、CNT撚糸100は、複数のCNT単糸8が並列配置されてなるCNTウェブ3が複数積層されているCNT積層体4を、複数のCNT単糸8が互いに撚り合わされるように、撚りかけてなる。
【0097】
その後、必要により、把持されているCNT撚糸100の長手方向両端部を切断して除去する。
【0098】
CNT撚糸100の撚り数は、例えば、100T/m以上、好ましくは、500T/m以上、例えば、10000T/m以下、好ましくは、5000T/m以下である。
【0099】
CNT撚糸100の外径は、例えば、30μm以上、好ましくは、80μm以上、さらに好ましくは、100μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0100】
CNT撚糸100の嵩密度は、例えば、0.2g/cm
3以上、好ましくは、0.6g/cm
3以上、さらに好ましくは、1.0g/cm
3以上、例えば、1.7g/cm
3以下、好ましくは、1.5g/cm
3以下、さらに好ましくは、1.4g/cm
3以下である。
【0101】
CNT撚糸100の引張強度は、例えば、0.3GPa以上、好ましくは、0.5GPa以上、さらに好ましくは、0.8GPa以上、とりわけ好ましくは、1.0GPa以上、例えば、3.0GPa以下、好ましくは、2.0GPa以下である。なお、引張強度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0102】
CNT撚糸100の電気抵抗率は、CNT撚糸100の延びる方向において、例えば、0.1mΩ・cm以上、好ましくは、0.3mΩ・cm以上、例えば、5.0mΩ・cm以下、好ましくは、3.0mΩ・cm以下、さらに好ましくは、2.0mΩ・cm以下、とりわけ好ましくは、1.0mΩ・cm以下である。なお、電気抵抗率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0103】
このようなCNT撚糸100は、例えば、炭素繊維が用いられる織物(シート)、電気機器(例えば、モータ、トランス、センサーなど)の導電線材など各種産業製品に利用される。
【0104】
このCNT撚糸100の製造方法は、例えば、
図2〜
図4Cに示すように、撚糸製造装置30により連続的に実施される。撚糸製造装置30は、供給部31(
図2参照)と、積層部32(
図3A参照)と、撚掛部33(
図4A参照)とを備えている。なお、撚糸製造装置30の説明において、上記した部材と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
供給部31は、
図2に示すように、CNTウェブ3を積層部32に供給するように構成されている。供給部31は、基板1上に配置されるVACNTs2と、図示しない引出具とを備えている。
【0106】
積層部32は、
図3Aに示すように、ローラ20と、噴霧器24と、加圧ローラ21と、図示しない切断刃とを備えている。ローラ20は、VACNTs2に対して、縦方向の一方側に間隔を空けて配置されている。噴霧器24は、ローラ20に対して縦方向の一方側に間隔を空けて配置されている。加圧ローラ21は、ローラ20に対して縦方向他方側の斜め下側から、ローラ20と向かい合っている。
【0107】
撚掛部33は、
図4Aに示すように、互いに間隔を空けて対向配置される第1挟持部34および第2挟持部35とを備えている。
【0108】
第1挟持部34は、2つの第1プレート36を備えている。2つの第1プレート36のそれぞれは、略平板形状を有している。2つの第1プレート36は、それらの厚み方向に互いに向かい合うように配置されている。また、第1挟持部34は、第1挟持部34と第2挟持部35との対向方向に沿う仮想線を回転中心として、回転可能である。
【0109】
第2挟持部35は、2つの第2プレート37を備えている。2つの第2プレート37のそれぞれは、略平板形状を有している。2つの第2プレート37は、それらの厚み方向に互いに向かい合うように配置されている。
【0110】
このような撚糸製造装置30では、
図2に示すように、図示しない引出具が、VACNTs2の各列2AのCNT10を同時かつ平行に、縦方向一方側に向かって引き出す。これにより、複数のCNT単糸8が横方向に並列配置される略シート形状のCNTウェブ3が、VACNTs2から引き出される。
【0111】
次いで、
図3Aに示すように、CNTウェブ3の先端をローラ20の周面に固定し、ローラ20を、横方向他方側からみて時計回り方向に回転させる。このとき、加圧ローラ21は、ローラ20から離れるように、ローラ20の径方向の外側に退避しており、ローラ20に対して径方向に間隔を空けて配置されている。これにより、CNTウェブ3が、VACNTs2から連続して引き出されるとともに、ローラ20の周面に複数周巻き付けられ、CNT積層体4が形成される。
【0112】
ローラ20の回転による、CNTウェブ3の移動速度は、例えば、0.1m/min以上、好ましくは、5m/min以上、例えば、100m/min以下、好ましくは、10m/min以下である。
【0113】
次いで、ローラ20を回転させながら、噴霧器24により上記の揮発性の液体を、CNT積層体4にスプレーし、かつ、加圧ローラ21をローラ20の径方向の内側に向かって移動させ、CNT積層体4をローラ20との間に挟みこみ、CNT積層体4を加圧する。
【0114】
次いで、ローラ20に巻き付けられたCNT積層体4を、図示しない切断刃により、ローラ20の軸線方向に沿って切断し、ローラ20から離脱させる。これによって、
図3Bに示すように、平帯状のCNT積層体4が形成される。その後、平帯状のCNT積層体4を、
図3Cに示すように、図示しない切断刃により、幅方向の寸法L2が所定の値となるように、CNT積層体4の長手方向に沿って裁断する。
【0115】
次いで、
図4Aおよび
図4Bに示すように、裁断されたCNT積層体4の一方側端部を、第1挟持部34の2つの第1プレート36が挟み込み、CNT積層体4の他方側端部を、第2挟持部35の2つの第2プレート37が挟み込む。そして、第1挟持部34が、CNT積層体4の長手方向に沿う仮想線を回転中心として、長手方向一方側からみて反時計回り方向に回転する。
【0116】
これによって、CNT積層体4は、複数のCNT単糸8が互いに撚り合わされるように、撚りかけられる。
【0117】
このとき、第1挟持部34の回転速度(周速度)の範囲は、上記のCNT積層体4の一方側端部の回転速度の範囲と同一である。
【0118】
以上によって、CNT撚糸100が、撚糸製造装置30により製造される。
【0119】
3.作用効果
本実施形態において、CNT撚糸100は、
図4A〜
図4Cに示すように、CNTウェブ3が複数積層されてなるCNT積層体4に撚りをかけることにより製造される。そのため、CNT撚糸100が1枚のCNTウェブ3に撚りをかけて製造される場合と比較して、CNT撚糸100の密度の向上を図ることができる。その結果、CNT撚糸100の機械強度、熱伝導性および電気伝導性などの性能の向上を図ることができる。
【0120】
また、CNTウェブ3は、
図2に示すように、ローラ20の周面に複数周巻き付けることにより、ローラ20の径方向に複数積層されて、CNT積層体4を形成する。そして、巻き付けられたCNT積層体4をローラ20の軸線方向に切断することにより、CNT積層体4をローラ20から離脱させることができる。そのため、簡易な方法でありながら、CNT積層体4を円滑に形成することができ、ひいては、CNT撚糸100の生産効率の向上を図ることができる。
【0121】
また、
図3Cに示すように、CNT積層体4の厚みL1に対する、CNT積層体4の幅方向の寸法L2(幅方向の寸法L2/厚みL1)が、4000以上である。そのため、CNT積層体4の取扱性の向上を図ることができ、CNT積層体4に容易に撚りをかけることができる。
【0122】
また、CNT積層体4の厚みL1に対する、CNT積層体4の幅方向の寸法L2(幅方向の寸法L2/厚みL1)が、50000以下である。そのため、CNT積層体4に撚りをかけて形成されるCNT撚糸100の密度の向上を図ることができる。
【0123】
また、CNTウェブ3の積層数は50以上である。そのため、CNT積層体4の取扱性の向上を確実に図ることができ、CNT積層体4により容易に撚りをかけることができる。
【0124】
また、CNTウェブ3の積層数は400以下である。そのため、CNT積層体4に撚りをかけて形成されるCNT撚糸100の密度の向上を確実に図ることができる。
【0125】
また、CNT積層体4には、
図3Aに示すように、揮発性の液体が供給される。そのため、揮発性の液体が気化することにより、CNT積層体4において積層される複数のCNTウェブ3が積層方向に互いに凝集するとともに、各CNTウェブ3において、複数のCNT10が互いに凝集する。その結果、CNT積層体4の密度の向上を図ることができ、ひいては、CNT撚糸100の密度の向上を確実に図ることができる。
【0126】
また、揮発性の液体に、微粒子が分散されているか、金属塩および/または樹脂材料が溶解されている。そのため、CNT積層体4に液体を供給したときに、複数のCNT10に微粒子や、金属塩、樹脂材料を付着させることができる。その結果、CNT積層体4から形成されるCNT撚糸100に、微粒子、金属塩および/または樹脂材料の特性を付与することができる。
【0127】
また、CNT積層体4は、
図3Aに示すように、積層方向に加圧される。そのため、CNT積層体4の密度のさらなる向上を図ることができ、ひいては、CNT撚糸100の密度の向上をより一層確実に図ることができる。
【0128】
CNT撚糸100は、
図4A〜
図4Cに示すように、CNTウェブ3が複数積層されるCNT積層体4に撚りをかけてなる。そのため、CNT撚糸100の密度の向上を図ることができる。
【0129】
また、CNT撚糸100の嵩密度は、0.6g/cm
3以上であるので、CNT撚糸100の機械強度、熱伝導性および電気伝導性などの性能の向上を図ることができる。また、CNT撚糸100の嵩密度は、1.7g/cm
3以下であるので、CNT撚糸100を、上記の方法により円滑に製造することができる。
【0130】
4.変形例
上記の実施形態では、CNTウェブ3がローラ20の周面に複数周巻き付けられて積層されるが、これに限定されず、
図5Aおよび
図5Bに示すように、CNTウェブ3を複数準備して、それらCNTウェブ3を厚み方向に積層して、CNT積層体4を形成してもよい。この場合、CNT積層体4は、互いに向かい合う1対の加圧ローラ40の間を通過させることにより、積層方向に加圧される。
【0131】
上記の実施形態では、高密度化処理の液体供給工程として、ローラ20に巻き付けられた状態のCNT積層体4に、揮発性の液体が供給されるが、これに限定されず、CNT積層体4を、ローラ20から離脱させた後、CNT積層体4に揮発性の液体をスプレーしてもよく、CNT積層体4を揮発性の液体に浸漬させることもできる。この場合においても、揮発性の液体には、上記と同様に、微粒子が分散されているか、金属塩および/または樹脂材料が溶解されていてもよい。
【0132】
上記の実施形態では、高密度化処理の加圧工程として、ローラ20に巻き付けられた状態のCNT積層体4が加圧されるが、これに限定されず、CNT積層体4を、ローラ20から離脱させた後、加圧してもよい。
【0133】
上記の実施形態では、CNT積層体4に揮発性の液体が供給された後、CNT積層体4が加圧されるが、これに限定されず、CNT積層体4を加圧した後、CNT積層体4に揮発性の液体を供給してもよい。また、CNT撚糸100の製造方法は、高密度化処理として、CNT積層体4に対する揮発性の液体の供給(液体供給工程)および加圧(加圧工程)のいずれか一方のみを含んでいてもよく、また、高密度化処理を含んでいなくてもよい。
【0134】
なお、CNT撚糸100の製造方法が、高密度化処理として、CNT積層体4に対する揮発性の液体の供給(液体供給工程)および加圧(加圧工程)のいずれか一方のみを含んでいる場合、撚糸製造装置30の積層部32は、噴霧器24および加圧ローラ21のいずれか一方を備えている。また、CNT撚糸100の製造方法が高密度化処理を含んでいない場合、撚糸製造装置30は、噴霧器24および加圧ローラ21を備えていなくてもよい。
【0135】
上記の実施形態では、ローラ20に対するCNT積層体4の巻き付けが完了した後、液体供給工程および加圧工程が実施されるが、これに限定されない。
【0136】
例えば、CNTウェブ3がローラ20の周面に巻き付けられるときに、揮発性の液体を供給してもよい。この場合、揮発性の液体が供給されたCNTウェブ3が、順次ローラ20の周面に巻き付けられ、積層される。つまり、積層工程と液体供給工程とが同時に実施される。これによっても、CNT積層体4に揮発性の液体を供給することができる。
【0137】
また、CNTウェブ3がローラ20の周面に巻き付けられるときに、加圧してもよい。この場合、CNTウェブ3が、順次ローラ20の周面に巻き付けられ、積層されるときに、加圧される。つまり、積層工程と加圧工程とが同時に実施される。これによっても、CNT積層体4を積層方向に加圧することができる。
【0138】
これら変形例によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0139】
これら上記の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0140】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0141】
実施例1
ステンレス製の基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
【0142】
次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上において、平面視略矩形形状のVACNTsを形成した。
【0143】
VACNTsにおいて、複数のCNTは、互いに略平行となるように延び、基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。CNTは、多層カーボンナノチューブであり、CNTの平均外径は、10nm、CNTの平均長さは、約300μm、VACNTsの嵩密度は、50mg/cm
3であった。
【0144】
そして、VACNTsにおいて、前端部に配置される複数のCNTを、引出具により、全幅にわたって一括して保持し、前側に引っ張った。これによって、VACNTsから、複数のCNT単糸からなるCNTウェブを引き出した。
【0145】
次いで、CNTウェブの先端(引出方向下流端部)を、直径60mmのローラの周面に固定して、ローラを30rpmで7分間回転させた。これにより、CNTウェブが、VACNTsから連続して引き出され、ローラの周面に210周巻き付けられた。
【0146】
次いで、巻き付けたCNTウェブをローラの軸線方向に切断し展開して、ローラから離脱させた。これによって、複数のCNTウェブが積層されたCNT積層体(積層数:210)を得た。なお、CNT積層体の長さ(長手方向長さ)は、190mmであった。
【0147】
次いで、そのCNT積層体にエタノールをスプレーした後、60℃で乾燥させて、CNT積層体を凝集させ、高密度化させた。凝集後のCNT積層体の厚みは10μm、凝集後のCNT積層体の嵩密度は0.52g/cm
3であった。
【0148】
次いで、凝集後のCNT積層体を、CNT単糸の延びる方向に沿って、5mm幅に裁断した。つまり、裁断されたCNT積層体は、厚みに対する幅方向の寸法の比率(幅方向寸法/厚み)が5000であった。
【0149】
次いで、裁断されたCNT積層体を10000T/m未満となるように撚糸化した。これにより、CNT撚糸を得た。CNT撚糸の直径は140μmであり、CNT撚糸の嵩密度は1.62g/cm
3であった。
【0150】
なお、実施例1〜14、比較例1および2における、CNT積層体とCNT撚糸との構成(積層数、寸法、嵩密度など)および高密度化処理の有無について、表1に示す。
【0151】
また、実施例1のCNT撚糸のSEM写真を、
図6Aおよび
図6Bに示し、比較例1のCNT撚糸のSEM写真を、
図7Aおよび
図7Bに示す。
【0152】
実施例2
CNTウェブをローラの周面に100周巻き付けたこと、および、CNT積層体にエタノールをスプレーしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0153】
実施例3
実施例1と同様にして、CNTウェブをローラの周面に100周巻き付けた後、ローラに巻き付けたCNTウェブに、エタノールをスプレーした。その後、60℃で乾燥させてCNTウェブを凝集させた。
【0154】
次いで、実施例1と同様にして、そのCNTウェブをローラから離脱させて、CNT積層体(積層数:100)を得た。そして、そのCNT積層体からCNT撚糸を調製した。
【0155】
実施例4
実施例3と同様にして、CNT積層体(積層数:100)を得た。その後、CNT積層体を、0.5mol/Lの硝酸コバルトのエタノール溶液に、60秒間浸漬させた。そして、CNT積層体を、CO(NO
3)
2エタノール溶液から引き上げ、60℃で乾燥させた。
【0156】
次いで、実施例1と同様にして、そのCNT積層体からCNT撚糸を得た。
【0157】
実施例5
実施例1と同様にして、CNTウェブをローラの周面に100周巻き付けた後、ローラに巻き付けたCNTウェブを、ローラと加圧ローラ(直径20mm)とで挟み、ローラを回転させて、10kg/cm
2の圧力で加圧した。
【0158】
次いで、実施例1と同様にして、そのCNTウェブをローラから離脱させて、CNT積層体(積層数:100)を得た。そして、そのCNT積層体からCNT撚糸を調製した。
【0159】
実施例6
CNTウェブをローラの周面に200周巻き付けたこと以外は、実施例5と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0160】
実施例7
実施例3と同様にして、ローラに巻き付けたCNTウェブに、エタノールをスプレーした。次いで、実施例5と同様にして、ローラに巻き付けたCNTウェブを、10kg/cm
2の圧力で加圧した。その後、60℃で乾燥させた。
【0161】
次いで、実施例1と同様にして、そのCNTウェブをローラから離脱させて、CNT積層体(積層数:100)を得た。そして、そのCNT積層体からCNT撚糸を調製した。
【0162】
実施例8
CNTウェブをローラの周面に50周巻き付けたこと以外は、実施例7と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0163】
実施例9
CNTウェブをローラの周面に200周巻き付けたこと以外は、実施例7と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0164】
実施例10
CNTウェブをローラの周面に400周巻き付けたこと以外は、実施例7と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0165】
実施例11
CNTウェブをローラの周面に10周巻き付けたこと以外は、実施例7と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0166】
実施例12
CNTウェブをローラの周面に500周巻き付けたこと以外は、実施例7と同様にして、CNT積層体およびCNT撚糸を得た。
【0167】
比較例1
実施例1と同様にして、平面視略矩形形状のVACNTsを形成し、VACNTsから、複数のCNT単糸からなるCNTウェブを引き出した。
【0168】
次いで、CNTウェブを、VACNTsから連続的に引き出すとともに、1000T/mとなるように撚糸化した。これにより、CNT撚糸を得た。その後、CNT撚糸にエタノールをスプレーした後、60℃で乾燥させた。
【0169】
比較例2
実施例1と同様にして、平面視略矩形形状のVACNTsを形成し、カッターにより、VACNTsを基板から分離した。そして、分離したVACNTsを、公知のプレス加工によりシート状に形成して、プレス成形シートを調製した。プレス成形シートの厚みは10μmであり、プレス成形シートの嵩密度は1.0g/cm
3であった。プレス成形シートに撚りをかけると、断裂し撚糸化できなかった。
評価:
(1)取扱性
各実施例および比較例で得られたCNT積層体の取扱性を、下記基準により評価した。
○:風などの影響が限定的であり、容易に把持して円滑に撚りをかけることができた。
△:風などの影響を僅かに受け、把持して撚りをかけることが不安定となる場合があった。
×:風などに影響を受け、把持して撚りをかけることが困難であった。
【0170】
その結果を表1に示す。
(2)引張強度
各実施例および比較例で得られたCNT積層体およびCNT撚糸の引張強度を、下記のように測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例2のプレス成形シートの引張強度は、15MPaであった。
【0171】
CNT撚糸の一端を固定し、CNT撚糸の他端をフォースゲージへ固定して、0.2mm/secで引き上げて断裂した負荷を破断強度とした。そして、破断強度をCNT撚糸の断面積で除して、引張強度を算出した。
【0172】
また、CNT撚糸と同様にして、CNT積層体の破断強度を測定し、引張強度を算出した。
(3)電気抵抗率
各実施例および比較例で得られたCNT積層体およびCNT撚糸の電気抵抗率を、電気抵抗測定装置(商品名:ロレスタ MCP−FP、三菱化学アナリテック社製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0173】
【表1】