(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと同等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係るレーザ投射表示装置の全体構成を示すブロック図である。レーザ投射表示装置1は、画像処理部2、フレームメモリ3、レーザドライバ(レーザ光源駆動部)4、レーザ光源5、反射ミラー6、MEMS走査ミラー7、MEMSドライバ8、増幅器9、光センサ10、CPU(Central Processing Unit)11を有し、投射面に表示画像12を表示する。各部の構成と動作を説明する。
【0014】
画像処理部2は、外部から入力される画像信号に各種補正を加えた画像信号を生成し、且つそれに同期した水平同期信号(H同期信号)及び垂直同期信号(V同期信号)を生成し、MEMSドライバ8へ供給する。ここで水平同期信号及び垂直同期信号は、画像信号を投射する表示期間と画像信号を投射しない帰線期間からなり、それぞれ水平表示期間、水平帰線期間、垂直表示期間、垂直帰線期間を有する。以降、水平表示期間と垂直表示期間をまとめて表示期間、水平帰線期間と垂直帰線期間をまとめて帰線期間と呼ぶ。ここで、垂直表示期間と垂直帰線期間からなる1枚の画像に対応する期間を1フレームとする。また、画像処理部2はCPU11より取得した情報に応じてレーザドライバ4(以下、レーザ光源駆動部とも呼ぶ)を制御するとともに、各種補正を加えた画像信号をレーザドライバ4へ送出する。
【0015】
ここで、画像処理部2で行う各種補正とは、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正、LOOK UP TABLE(以下、LUTと記載)による画像の明るさの変更(以下、調光と記載)や階調調整などを含む。なお、画像歪みは、レーザ投射表示装置1と投射面との相対角が異なること、レーザ光源5とMEMS走査ミラー7の光軸ずれなどのために発生する。また、LUTによる画像の調光や階調調整について、その詳細は後述する。
【0016】
レーザドライバ4は、画像処理部2から出力される各種補正を加えた画像信号を受け、それに応じてレーザ光源5の駆動電流を変調する。レーザ光源5は、例えばRGB用に3個の半導体レーザ(5a,5b,5c)を有し、画像信号のRGB毎に画像信号に対応したRGBのレーザ光を出射する。
【0017】
RGBの3つのレーザ光は、3つのミラーを有する反射ミラー6により合成され、MEMS走査ミラー7に照射される。反射ミラー6は特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過する特殊な光学素子(ダイクロイックミラー)で構成される。詳しくは、半導体レーザ5aから出射されたレーザ光(例えばR光)を反射し他の色のレーザ光を透過するダイクロイックミラー6aと、半導体レーザ5bから出射されたレーザ光(例えばG光)を反射し他の色のレーザ光を透過するダイクロイックミラー6bと、半導体レーザ5cから出射されたレーザ光(例えばB光)を反射し他の色のレーザ光を透過するダイクロイックミラー6cとを有する。これにより、R光、G光、B光のレーザ光を1つのレーザ光に合成して、MEMS走査ミラー7に供給する。
【0018】
MEMS走査ミラー7は2軸の回転機構を有する画像の走査部であって、中央のミラー部を水平方向と垂直方向の2つの方向に振動させることができる。MEMS走査ミラー7の振動制御はMEMSドライバ8により行われる。MEMSドライバ8は画像処理部2からの水平同期信号に同期した正弦波信号を生成し、また、垂直同期信号に同期したノコギリ波信号を生成して、MEMS走査ミラー7を駆動する。
【0019】
MEMS走査ミラー7は、MEMSドライバ8からの正弦波駆動信号を受けて水平方向に正弦波共振運動を行う。これと同時に、MEMSドライバ8からのノコギリ波駆動信号を受けて垂直方向に一方向の等速運動を行う。これにより、
図1の表示画像12に示すような軌跡でレーザ光は走査され、その走査動作がレーザドライバ4によるレーザ光の変調動作と同期することで、入力画像が光学的に投射されることになる。
【0020】
光センサ10は、投射されるレーザ光の光量を測定し、増幅器9に出力する。増幅器9は、光センサ10の出力を、画像処理部2により設定された増幅率に従い増幅した後、画像処理部2へ出力する。
図1では、光センサ10は反射ミラー6により合成されたRGBのレーザ光の漏れ光を検出する。即ち、光センサ10を半導体レーザ5cに対しダイクロイックミラー6cを挟んで対向側に配置する。ダイクロイックミラー6cは半導体レーザ5a及び5bからのレーザ光を透過し、半導体レーザ5cからのレーザ光を反射する特性を持つが、その透過率もしくは反射率は100%ではなく、各半導体レーザからのレーザ光の数%が光センサ10に入射されることになる。
【0021】
CPU11は、レーザ投射表示装置1全体の制御を行うとともに、外部からの制御信号、例えば表示画像12の明るさを決定する情報Ndim(Number Dimming)を受ける調光設定入力部としての役割を有する。調光設定入力部では、明るさを決定する情報Ndimに基づき、表示画像の明るさを調光モードと調光ステップに分割して明るさの制御を行うが、その詳細は後述する。
【0022】
図2は、
図1の信号処理部を示すブロック図であり、画像処理部2およびレーザドライバ4の内部構成を詳細に示した図である。
まず、画像処理部2の動作について説明する。外部から入力される画像信号は、画像補正部20に入力される。画像補正部20は、入力された画像信号に対し、MEMS走査ミラー7の走査に起因する画像歪み補正、およびLUTによる画像の調光や階調調整などを行う。補正後の画像信号28はタイミング調整部21へ送出される。
【0023】
タイミング調整部21は、画像補正部20から入力される補正後の画像信号28から水平同期信号(H)と垂直同期信号(V)を生成し、MEMSドライバ8および発光制御部22に送出する。また、画像信号28は、一旦フレームメモリ3に格納される。フレームメモリ3に書き込まれた画像信号28は、タイミング調整部21で生成される水平同期信号と垂直同期信号に同期した読み出し信号で読み出される。その結果、フレームメモリ3から読み出される画像信号は、書き込まれる画像信号に対して、1フレーム分遅延する。
【0024】
読み出された画像信号28はラインメモリ23に入力される。ラインメモリ23は1水平期間分の画像信号を取り込み、次の水平期間で順次読み出して、画像信号28’としてレーザドライバ4へ供給する。ここでラインメモリ23を中継する理由は、フレームメモリ3から画像信号28を読み出すクロック周波数と、レーザドライバ4へ画像信号28’を伝送するクロック周波数が異なる場合に、その差をラインメモリ23への書き込みと読み出し周波数で調整するためである。
【0025】
発光制御部22は、光センサ10で取得した光量を増幅器9により増幅した信号に基づき、出射するレーザ光の強度が所定の値となるようレーザドライバ4を制御する。すなわち発光制御部22は、レーザドライバ4に対するオフセット電流設定信号29、電流ゲイン設定信号30などの電流設定信号を最適に調整し、また調整用に用いる基準画像信号31を送出する。これにより、経時劣化によるレーザ光の強度不足や、周囲環境の温度変化によるレーザ光量の変動などに対応し、半導体レーザに流れる電流を最適に調整してレーザ光量を目標値に追従させ、投射画像を一定のホワイトバランスに保持することができる。
【0026】
次に、レーザドライバ4(レーザ光源駆動部)の動作について説明する。レーザドライバ4は、ラインメモリ23から入力される画像信号28’もしくは発光制御部22から入力される基準画像信号31を、半導体レーザ5に供給する電流値に変換する電流設定部の役割を有する。この電流設定のため、電流ゲイン回路24とオフセット電流回路25を有する。
【0027】
電流ゲイン回路24は、画像信号28’もしくは基準画像信号31に対して、これらの画像信号値Sに電流ゲインβを乗算することで、半導体レーザ5に流れる信号電流値β×Sを決定する。その際の電流ゲインβは、発光制御部22から電流ゲイン設定信号30にて与えられる。電流ゲインβを増減することで、画像信号28’,31に比例する信号電流値成分を増減させる。
【0028】
一方オフセット電流回路25は、半導体レーザ5に流れる電流値の下限値(オフセット成分)を決定する。その際のオフセット電流値αは、発光制御部22からオフセット電流設定信号29にて与えられる。オフセット電流値αは画像信号28’,31に依存しない固定値である。
【0029】
レーザドライバ4は、電流ゲイン回路24で決定された信号電流値β×Sと、オフセット電流回路25で決定されたオフセット電流値αとを加算し、合計の電流値26を半導体レーザ5に供給する。
【0030】
次に、発光制御部22による電流調整方法について詳細に説明する。表示画像12を安定に表示するためには、画像信号と半導体レーザの出射強度とが、常に一対一に対応していなければならない。そのため、基準の画像信号を入力したとき、半導体レーザから出射される光量が予め定めた目標値となるよう電流設定を調整する。具体的には、発光制御部22は、基準画像信号31とともに電流設定信号29,30をパラメータとしてレーザドライバ4に送出することで、様々な電流量で半導体レーザ5を発光させ、そのときの光量を光センサ10および増幅器9を介して取得する。そして、取得した各光量を目標値と比較し、目標値の光量が得られるような電流設定信号29,30を決定する。その際の最適条件の探索法について、従来方法と本実施例の方法を比較して説明する。
【0031】
図3は、従来の電流調整方法を説明する図で、半導体レーザの光量−順方向電流特性を用いて説明する。図中の直線は一般的な半導体レーザの特性を示し、直線上のA〜E点は、所定の電流差Isだけ異なる電流における半導体レーザの光量をプロットしたものである。
【0032】
従来の探索法では、得られる光量が目標値の許容範囲に入るか否かで判定する。この探索のためには、同一フレーム内の帰線期間に少なくとも1回だけ探索用に発光して光量を取得すれば良い。この場合、発光制御部22は、図示しない記憶領域に基準画像信号に対応する光量の目標値P0および許容範囲である上限値と下限値を保存しておき、基準画像信号にて発光したときの光量が上限値と下限値の間に入るまで電流Iを電流差Isだけ変化させる。この電流差Isは小さいほど調整の精度が向上することが期待されるが、反面、調整時間(調整発光回数)が増加してしまう。よって、調整の精度と調整時間のバランスを考慮して定められる。
【0033】
例えば、
図3のE点から探索を始めた場合、E点では光量が上限値よりも大きいため、電流Iを電流差Isだけ減らすことで、光量はD点となる。しかし、D点でも僅かに上限値よりも大きいため、再び電流を電流差Isだけ減らすことで、光量はC点となり、上限値と下限値の間に入る。その結果、探索型の調整は、C点で終了となる。
【0034】
しかしながら、探索方向を変えた場合には、終了点はC点とならないことがある。例えば、A点から探索を始めた場合、A点では光量が下限値よりも小さいため、電流Iを電流差Isだけ増やすことで、光量はB点となる。ここで、B点は上限値と下限値の間に入るため、探索型の調整は、B点で終了となる。
【0035】
このように、従来の調整方法では、基準画像信号に対応する光量を上限値と下限値の間に入れることは可能ではあるが、複数の終了点(C点とB点)が存在することがある。この例では目標値P0に最も近いのはC点であるが、探索方向によってはC点に収束せず、電流設定が最適化されたとは言い難い。その結果、半導体レーザから得られる光量が目標値からずれて、表示画面の輝度のずれやホワイトバランスのずれが視認されることになる。
【0036】
これを回避するために、許容範囲である上限値と下限値の差を小さく設定すればよいが、小さくし過ぎると光センサ10や増幅器9のノイズ成分の影響を受けて制御が安定しなくなる。また、電流Iを所定の電流差Isだけずらしながら探索するので、上限値と下限値の間に解が存在しなくなる場合がある、といった問題がある。
【0037】
上記のように、従来の探索法では基準画像信号に対応する電流量を必ずしも最適に調整できない。そこで本実施例では、各フレーム内の帰線期間において、基準画像信号に対して電流を変えて複数回の調整用発光を行い、この中で目標値P0に最も近い光量が得られる電流を求めて、これで次のフレームの電流設定を行うようにした。
【0038】
以下、本実施例における電流設定処理を
図4〜
図6を用いて説明をする。以下の例では、画像信号の1フレームに対応する帰線期間に、電流を変えて3回の調整用発光を行うものとする。
【0039】
図4Aは、実施例1に係る電流設定方法を説明する図で、半導体レーザの光量−順方向電流特性を用いて説明する。
図3と同様、直線上のA〜E点は、所定の電流差Isだけ異なる電流における半導体レーザの光量をプロットしたものである。
【0040】
本実施例では、各フレーム内の帰線期間に隣り合う3点の発光を行う。すなわち、フレーム1の帰線期間にはABC点の組、フレーム2の帰線期間にはBCD点の組、フレーム3の帰線期間にはCDE点の組といった発光を行う。そして、各フレームにおいて得られた3つの光量を目標値P0と比較し、目標値P0に最も近い電流を求めて、これで次のフレームの電流設定を置き換える。例えば、フレーム1のABC点での発光の結果、C点が最も目標値P0に近い場合はC点に電流設定する。
【0041】
次のフレームでは、現在の電流設定を含めた3点で発光を行う。例えばフレーム2では、現在の設定されているC点を含むBCD点で発光させる、という手順である。フレーム2の発光の結果、仮にD点が最も目標値P0に近くなった場合は、フレーム3ではD点を含むCDE点で発光させることになる。この方法によれば、1つのフレームでの発光で、あるいは複数のフレームに渡る発光で、電流設定を光量の目標値P0に最も近いC点に収束させることができる。
【0042】
前記
図3に示した従来法では、A点から始める場合とE点から始める場合とで、最終的に収束する点が異なっていた。これに対し本実施例による方法では、スタート位置がABC点の組に限らず、CDE点の組からスタートした場合でも、またBCD点からスタートした場合でも、複数のフレームでの調整を繰り返すことで必ず光量の目標値P0に最も近いC点に収束する。もちろん、A点より少ない電流量およびE点より多い電流量を含む組からスタートした場合も同様である。
【0043】
図4Bは、
図4Aにおける各発光時の電流設定の例を説明する図である。発光時の電流値I0は、オフセット電流設定値α、電流ゲイン設定値β、基準画像信号S0とするとき、I0=α+β×S0で表される。そして、αとβをパラメータとして変化させて電流値I0を変化させる。簡単のために、パラメータα,βのいずれかを単位量1だけ変化させると、電流値I0は前記の電流差Isだけ変化するように各値は規格化されているものとする。このように電流値I0を決める2つのパラメータが存在するので、以下のようにパラメータを交互に変化させる。
【0044】
フレーム1の第1発光(B点)でのパラメータを(α、β)とするとき、第2発光(A点)ではパラメータを(α、β−1)とすることで電流をIsだけ減少させ、第3発光(C点)ではパラメータを(α、β+1)とすることで電流をIsだけ増加させる。次のフレーム2では第1発光(C点)でのパラメータを(α’、β’)とするとき、第2発光(B点)ではパラメータを(α’−1、β’)とすることで電流をIsだけ減少させ、第3発光(D点)ではパラメータを(α’+1、β’)とすることで電流をIsだけ増加させる。さらに次のフレーム3では、パラメータβ”について変化させている。このように、ここではパラメータα、βを交互に変化させているが、各フレームでいずれのパラメータを変化させるかは、半導体レーザの光量−順方向電流特性に基づき、両者の寄与を考慮して決定してもよい。
【0045】
図5は、電流設定処理のタイミングチャートを示す図であり、垂直同期信号、電流設定信号、電流設定、増幅率、実際のレーザ発光の項目について記載している。ここでは、表示期間における電流設定は
図4A中のB点とし、1フレームの垂直帰線期間において、B点を含むA点とC点にて3回のレーザ発光50,52,54を行う。1回目のレーザ発光50は表示期間の電流設定(B点)のままとし、次のレーザ発光52(A点),54(C点)のため、電流設定信号51,53を与える。3回のレーザ発光の結果から次のフレームで用いる電流設定(例えばC点)を決定し、電流設定信号55により与える。これを次のフレームでも繰り返して実施する。
【0046】
図6は、電流設定処理のフローチャートを示す図であり、
図4Aと
図5を引用して説明する。以下の動作は発光制御部22が制御する。
S60では、発光制御部22は帰線期間中かを判断する。帰線期間でない場合は帰線期間に入るまで待機し、帰線期間中と判断した場合にS61に移行する。S61では基準画像信号S0に対応する第1の発光50を行い、第1の光量L1を取得する(
図4A中のB点)。
【0047】
S62では電流設定信号51を送り、第2の電流設定に変更する。これにより、電流設定をB点からA点に変更する。S63にて基準画像信号S0に対応する第2の発光52を行い、第2の光量L2を取得する(
図4A中のA点)。
S64では電流設定信号53を送り、第3の電流設定に変更する。これにより、電流設定をA点からC点に変更する。S65にて基準画像信号S0に対応する第3の発光54を行い、第3の光量L3を取得する(
図4A中のC点)。
【0048】
S66では、得られた3点の光量L1,L2,L3を目標値P0と比較し、それぞれの差分値を算出する。S67では、差分値が最小となる電流設定を求め、次のフレームの電流設定に決定する。
図4Aおよび
図5の例では、C点での差分値が最小であり、電流設定をC点に決定する。S68で電流設定信号55を送り、次のフレームの表示期間の電流設定をC点となるよう変更する。その後S60に戻り、一連の電流設定処理を繰り返す。
【0049】
上記の通り本実施例では、1フレームに対応する帰線期間内に3回の発光を行い電流設定の最適値を求めるので、最適化に要する時間が短縮し、調整の迅速化が図られる。ここでは3回発光する例としたが、少なくとも2回以上行えば良いことは言うまでもない。
【0050】
調整時間の短縮に伴い、探索時の電流差Isをより小さく設定して調整精度を向上させることができる。すなわち探索時の電流差Isは、電流ゲイン回路24もしくはオフセット電流回路25で設定可能な最小の電流差、あるいはその2倍以下の電流差であることが好ましい。
【0051】
また、探索時の電流差Isは、発光制御部22がレーザドライバ4に送出する電流設定信号29,30により実現したが、上記以外でも良い。例えば、電流設定信号29,30を固定し、レーザドライバ4に送出する基準画像信号31を変えることでも実現できる。その場合、基準画像信号S0に、パラメータα、βの変化量Δα、Δβに相当する画像信号ΔSを加算もしくは減算してやればよい。具体的には、Δα、Δβに等価な画像信号は、それぞれΔS=Δα/β、ΔS=Δβ×S0/βである。
【0052】
実施例1によれば、画像信号の1フレームに対応する帰線期間に、所定の電流差Isを有する複数回の調整用発光を行うことで、画像信号に対する電流設定をより高精度に最適化することが可能になる。これにより光量制御が安定し、全ての色に同様の電流設定処理を行うことで色度変化が抑制され、ユーザに色の変化を視認させにくいレーザ投射表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0053】
実施例1では、1つの基準画像信号S0に対する電流設定を最適化する処理を説明した。これに対し実施例2では、2つの基準画像信号S1,S2に対して同時に電流設定を最適化する処理を説明する。つまり、予め定めた対応する2つの光量目標値P1,P2に最も近い光量が得られるよう電流設定を行う。これにより実施例1に比べ、広範囲の画像信号に渡り、表示画像12を安定に表示することが可能となる。
【0054】
以下、実施例2の電流設定処理を
図7、
図8を用いて説明をする。なお、装置構成や信号処理部は実施例1(
図1、
図2)と共通であり、その詳細な説明を省略する。
図7は、実施例2に係る電流設定方法を説明する図で、再度半導体レーザの光量−順方向電流特性を用いて説明する。ここで、光量特性直線上に光量の異なる2点(例えば、黒レベルの近傍と白レベルの近傍)を設定し、第1の基準画像信号S1に対応する光量目標値P1(黒レベル)と、第2の基準画像信号S2に対応する光量目標値P2(白レベル)を設定する。これらの値は、発光制御部22内の記憶領域に保存しておく。
【0055】
レーザドライバ4における電流設定値、すなわちオフセット電流設定値をα、電流ゲイン設定値をβとすると、第1の基準画像信号S1に対応する電流量I1はα+β×S1、第2の基準画像信号S2に対応する電流量I2はα+β×S2となる。このように、第1および第2の基準画像信号S1,S2に対応する電流量I1,I2は、いずれも共通のオフセット電流設定値αと電流ゲイン設定値βで決まる。言い換えると、第1および第2の基準画像信号に対応して出射される光量は、共通のオフセット電流設定値αと電流ゲイン設定値βの影響を受ける。
【0056】
そこで本実施例では、発光制御部22は画像信号の1フレームに対応する帰線期間に、レーザドライバ4に対し、所定の電流差Isにて複数回の調整用発光をするよう電流設定信号29,30を送出するとともに、それぞれの電流設定において2つの基準画像信号に対応する発光を行う。以下の例では、第1の基準画像信号S1および第2の基準画像信号S2に対して、それぞれ、電流差Isを有する3回の発光(すなわち、計6回の発光)を行う。また、電流差Isを与えるために、オフセット電流設定値αと電流ゲイン設定値βの変化の組み合わせを9通り設定し、これを3通りずつ3フレームにわたり実施するようにした。すなわち、合計6×3=18回の発光を1サイクルとして繰り返し、電流設定の最適化を行う。
【0057】
図8は、各発光時の電流設定の例を説明する図であり、フレーム1〜3を1つのサイクルとしている。(a)は1サイクルにおける電流設定の例を、(b)は1サイクルにおいて取得した光量の例を示す。
【0058】
(a)の電流設定では、フレーム1では電流ゲイン設定値をβ-1に固定し、オフセット電流設定値をα−1、α、α+1と変えることで、第1、第2の基準画像信号S1,S2に対応する電流量I1,I2を変化させる。フレーム2では電流ゲイン設定値をβに固定し、オフセット電流設定値をα−1、α、α+1と変えることで、同様に電流量I1,I2を変化させる。フレーム3では電流ゲイン設定値をβ+1に固定し、オフセット電流設定値をそれぞれα−1、α、α+1と変えることで、同様に電流量I1,I2を変化させる。実施例1でも述べたように、パラメータα、βをそれぞれ単位量1だけ増減すると電流量I1,I2が電流差Isだけ変化するものとする。これにより、第1、第2の基準画像信号S1,S2に対し、電流差Isを有する9通りの電流量I1,I2を設定することができる。
【0059】
(b)は取得した光量の例であり、電流量I1,I2に対してそれぞれ得られた光量L1,L2を示す。第1、第2の基準画像信号S1,S2に対する光量の目標値P1,P2は、ここではP1=100,P2=900とする。
【0060】
得られた9組の光量L1,L2をそれぞれの目標値P1,P2と比較し、目標値との差分値を算出する。そして、光量L1,L2における差分値の和が最も小さくなる電流設定を求める。
図8の例では、フレーム3の第7発光の場合に、目標値との差分値の和が最も小さくなる。よって、そのときの電流設定である、オフセット電流設定値α−1、電流ゲイン設定値β+1を最適値と決定し、次のフレームの電流設定に適用する。
【0061】
なお、
図8で示したオフセット電流設定値α、電流ゲイン設定値βの変化の組み合わせは一例であり、半導体レーザの光量−順方向電流特性に応じ、両者の寄与を考慮して適宜決定してもよい。
【0062】
実施例2によれば、信号レベルの異なる2つの基準画像信号に対する電流設定を同時に最適化することで、広範囲の画像信号にわたり、光量制御を安定化させることが可能となる。もちろん、全ての色に同様の電流設定処理を行うことで色度変化が抑制され、ユーザに色の変化を視認させにくいレーザ投射表示装置を提供できる。
ここでは2つの基準画像信号について最適化を行ったが、2つ以上の基準画像信号について最適化を行うことも可能であり、さらに光量制御が安定化するのは言うまでもない。
【実施例3】
【0063】
実施例3では、調光処理時における輝度変化および色度変化を抑制する方法について説明する。レーザ投射表示装置は、一般的な表示装置と同様に、使用環境の明るさに応じて適切な明るさで画像を表示するために、表示輝度を広いレンジで調整する調光処理機能を備えている。そのため、画像の明るさを決定する情報Ndim(Number Dimming)を調光設定入力部に入力する。そして、情報Ndimに応じて、離散的な明るさに対応する調光モードと、調光モード内を複数の明るさで区切る調光ステップを割り当てる。各調光モードでは、レーザの光量−順方向電流特性に合致したLUT(Look Up Table)を備え、LUTから調光量を読み出すことで、きめ細かな調光処理を行う。
【0064】
しかしながら、異なる調光モードの境界において輝度および色度を一致させるようにLUTを設定することは容易でなく、異なる調光モードに遷移する際に、ユーザに明るさや色の変化が視認されてしまうという課題があった。そこで実施例3では、調光モードの境界において遷移強度決定処理を実施することで、調光処理時の輝度と色度の変化を抑制し、ユーザに明るさと色の変化を視認されにくくした。なお、実施例1と同一の構成、機能を有するものには同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図9は、実施例3に係る信号処理部の構成を示すブロック図であり、実施例1(
図2)の画像処理部2およびレーザドライバ4の内部構成に対応する。
図2の場合とは、画像処理部2内の画像補正部90および発光制御部91の動作が異なり、調光処理で参照するLUTを更新するため調整用の発光を行う。そのため発光制御部91と画像補正部90の間で、後述する各種制御信号27と補正後の画像信号28のやり取りを行う。
【0066】
図10は、
図9の画像補正部90と発光制御部91の内部構成を示す図である。
まずCPU11には、外部から表示画像12の明るさを決定する情報Ndimが入力する。CPU11内の調光設定入力部96は、入力された情報Ndimに応じて表示画像の明るさを調光モードと調光ステップに分割して割り当て、その情報を発光制御部91に送出する。
図10の例では、離散的な3つの調光モードを有し、明るい方から調光モード1〜調光モード3とし、それぞれの調光モード内を100段階の調光ステップに分割している。つまり調光設定入力部96は、入力される情報Ndimが0〜299という数字(0が最も明るい)で表される場合、0〜99は調光モード1、100〜199は調光モード2、200〜299は調光モード3に割り当て、それぞれの調光モードの情報(1〜3)と、調光ステップの情報(0〜99)を発光制御部91に送出する。
【0067】
発光制御部91は、遷移強度決定処理部97と光量検出調光モード決定部98を備える。遷移強度決定処理部97は、調光設定入力部96から送出される調光モードや調光ステップの情報に応じて、画像補正部90に対して調光処理を行うための各種の制御信号27(調光ステップ信号27aほか)を送出する。光量検出調光モード決定部98は、今後遷移する可能性のある調光モード(以下、先読み対象調光モードと呼ぶ)を決定し、遷移強度決定処理部97に先読み対象調光モードの情報27fを送出する。
【0068】
次に、画像補正部90の構成を説明する。画像補正部90は、以下の3つの調光処理部により構成される。
第1の調光処理部101は、分割された調光モードのそれぞれについて、画像信号の階調レベルをインデックスとして調光量をテーブル値として記憶する複数の調光LUT(94a〜94c)で構成される。
【0069】
第2の調光処理部102は、分割された調光モードのそれぞれについて、画像信号の階調レベルをインデックスとして前記調光LUT(94a〜94c)のインデックスを得る、更新可能な複数の更新LUT(92a〜92c)で構成される。ここで各更新LUT(92a〜92c)は、遷移強度決定処理部97により送出される更新信号27bにより更新されるが、その詳細は後述する。
【0070】
第3の調光処理部103は、調光ステップに対応するゲインを保持するゲインLUT99と、画像信号に前記ゲインを乗じて前記更新LUT(92a〜92c)のインデックスを得る乗算器100で構成される。ここにゲインLUT99は、調光モード内の明るさの差を100段階の調光ステップで分割するようなデジタルデータを所有するLUTであり、遷移強度決定処理部97により送出される調光ステップ信号27aをインデックスとする。
【0071】
さらに画像補正部90は、第1の調光処理部101に入力するインデックスとして、更新LUT(92a〜92c)の出力か遷移強度決定処理部97から送出される遷移信号値27cかを選択するセレクタ(93a〜93c)を有する。各セレクタ(93a〜93c)は、遷移強度決定処理部97から送出される選択信号27dにより制御される。また、第1の調光処理部101のいずれの調光LUTの値を補正後画像信号28として出力するかを選択するモードセレクタ95を有する。モードセレクタ95は、遷移強度決定処理部97から送出されるモード選択信号27eにより制御される。
【0072】
以下、本実施例における遷移強度決定処理について説明する。この遷移強度決定処理は、異なる調光モードに遷移する際に、明るさや色の変化が視認されにくくするためのものであり、調光モードの境界にある調光ステップにおける光量を比較し、得られる光量が一致するように更新LUTを修正するものである。
【0073】
図11は、遷移強度決定処理のタイミングチャートを示す図であり、垂直同期信号、電流設定信号、電流設定、増幅率、レーザ発光、先読み対象調光モード27f、モード1の遷移信号値27c、選択信号27d、更新信号27bについて記載している。
【0074】
この例では、表示期間は調光モード3が選択されており、先読み対象として調光モード1を選択した場合である。この場合の遷移強度決定処理は、調光モード1と調光モード2との境界の調光ステップにおいて光量を一致させる処理となる。すなわち、調光モード1において最も暗い調光ステップ99に対応する更新LUTのインデックスに対し、該更新LUTの出力値を遷移信号値27cに変更することで、調光モード2における最も明るい調光ステップ0の場合と、輝度が一致するように動作させるものである。そのために帰線期間において、境界上にある調光モード1の発光112と調光モード2の発光115を行い、両者の光量が一致するように遷移信号値27cを増減させる。そして、両者の光量が一致した遷移信号値27cを更新信号27bとして更新LUTへ送る。
【0075】
図15は、更新LUTの一例を説明する図である。符号151で示す直線(点線で示す)は補正前の更新LUTを、符号152で示す直線(実線で示す)は補正後の更新LUTの一例である。
図15中のQ点が、最も暗い調光ステップ99における画像信号の最大階調レベルに対応する。このQ点における出力が、更新LUTのインデックスである遷移信号値27cである。また、補正後の更新LUT152は、点(Q,遷移信号値27c)を中心に原点と最大値の点を結ぶ線形補間により作成する。
【0076】
図12は、遷移強度決定処理のフローチャートを示す図であり、
図11のタイミングチャートを参照して説明する。
S121では、発光制御部91内の光量検出調光モード決定部98は、先読み対象調光モードを決定し、遷移強度決定処理部97に先読み対象調光モードの情報27fを送出する。以降、先読み対象調光モードである調光モードを「上位モード」とも呼び、ここでは、調光モード1が相当する。また、先読み対象調光モードより1つ暗い調光モードを「下位モード」とも呼び、ここでは、調光モード2が相当する。S122では、発光制御部91は、帰線期間中かを判断する。帰線期間でない場合は帰線期間に入るまで待機し、帰線期間中と判断した場合にS123に移行する。
【0077】
S123では、先読み対象調光モード(上位モード)に応じて、レーザドライバ4に対する電流設定および増幅器9に対する増幅率を変更する。すなわち、
図11における電流設定信号110により、表示期間の調光モード3から上位モードである調光モード1に変更する。また、図示しない増幅率設定信号により、増幅率をG3から下位モードに対応するG2へ変更する。ここで下位モードに対応する増幅率G2にする理由は、下位モードにおける調光ステップが0の場合(下位モードの最も明るい場合)を基準に、上位モードの遷移信号値を比較するためである。
【0078】
S124では、遷移強度決定処理部97は、上位モードの遷移信号値27cを画像補正部90に出力する。これは、
図11におけるモード1の遷移信号値Ts1に相当する。
S125では、選択信号27dを画像補正部90に送出し、セレクタ93a〜93cが遷移信号値27cを選択するよう変更する。ここで選択信号27dは、
図11における選択信号111に相当する。セレクタ93a〜93cから出力された遷移信号値27cは、調光LUT94a〜94cのインデックスとなる。調光LUT94a〜94cからは、画像信号を遷移信号値27cとしたときの調光量が出力される。
【0079】
S126では、モード選択信号27eとして調光モード1を選択する信号を画像補正部90に送出し、モードセレクタ95から上位モードに対応する調光LUT94aの調光量が出力される。
つまり、S123からS126を実施することで、画像補正部90から、上位モードにおける入力画像信号を遷移信号値27cとしたときの補正後画像信号28が出力される。
【0080】
S127では、発光制御部91は補正後画像信号28を、調整用画像信号31’としてレーザドライバ4に送出することで、
図11における発光112を行わせる。そして、上位モードの遷移信号値27cにおける光量L1を取得する。
【0081】
次にS128では、下位モード(調光モード2)の電流設定に変更する。すなわち、
図11における電流設定信号113により、調光モードを下位モードである調光モード2に変更する。
【0082】
S129では、遷移強度決定処理部97は、下位モードの遷移信号値27cを画像補正部90に出力する。これは、下位モードにおける最も明るい調光ステップ0の場合である。
【0083】
S130では、選択信号27dを画像補正部90に送出し、セレクタ93a〜93cが遷移信号値27cを選択するよう変更する。ここで選択信号27dは、
図11における選択信号114に相当する。セレクタ93a〜93cから出力された遷移信号値27cは、調光LUT94a〜94cのインデックスとなる。調光LUT94a〜94cからは、画像信号を遷移信号値27cとしたときの調光量が出力される。
【0084】
S131では、モード選択信号27eとして調光モード2を選択する信号を画像補正部90に送出し、モードセレクタ95から下位モードに対応する調光LUT94bの調光量が出力される。
つまり、S128からS131を実施することで、画像補正部90から、下位モードにおける入力画像信号を遷移信号値27cとしたときの補正後画像信号28が出力される。
【0085】
S132では、発光制御部91は補正後画像信号28を、調整用画像信号31’としてレーザドライバ4に送出することで、
図11における発光115を行わせる。そして、下位モードの遷移信号値27cにおける光量L2を取得する。
【0086】
次にS133では、発光制御部91は、S127およびS132で取得した光量L1,L2を比較する。S134では、比較結果に応じて上位モードの遷移信号値を増減させ、両者の光量が一致する遷移信号値を求める。
図11の例では、上位モードでの発光112の光量より、下位モードでの発光115の光量が大きいため、上位モードの遷移信号値をTs1からTs2に増やしている。
【0087】
S135では、遷移強度決定処理部97は、この修正された上位モードの遷移信号値Ts2を更新信号27bとして画像補正部90に出力し、対応する調光モードの更新LUTを更新する。今回の例では、調光モード1の更新LUT92aが更新される。
【0088】
次にS136では、光量検出調光モード決定部98が、次の帰線期間における先読み対象調光モードを決定する。S137では、発光制御部91は表示モードの電流設定に変更する。すなわち、
図11における電流設定信号116により、下位モードの調光モード2から表示モードである調光モード3に変更する。
【0089】
以後、S122に戻り上記処理を繰り返す。このように、更新LUTの調光値を新たな遷移信号値27cで更新し、上位モードにおける最も暗い調光ステップと、下位モードにおける最も明るい調光ステップとの間で、輝度が一致するように調整することができる。
【0090】
以上の遷移強度決定処理を全ての色に対し実施することで、上位モードにおける最も暗い調光ステップと、下位モードにおける最も明るい調光ステップとの間で、色度変化が抑制され、調光処理の際ユーザに明るさと色の変化を視認されにくくなる。
【0091】
上記の説明では、上位モードにおける最も暗い調光ステップ99に対応する更新LUTのインデックスに対し、更新LUTの出力値を遷移信号値27cに変更する例を説明した。さらに、他の調光ステップに対応する更新LUTのインデックスに対しても、更新LUTの出力値を遷移信号値27cを用いた線形補間により変更することは言うまでもない。
【0092】
なお、上記の説明では上位および下位モードの遷移信号値における光量を取得する際に、1種類の発光を行うものとして説明したが、実施例1のように、所定の電流差Isを有する複数回の発光をするようにしても良い。このようにすることで、調光モード間の輝度および色度をより高精度に一致させることが可能となる。
【0093】
実施例3によれば、異なる調光モードの境界においてレーザ光の光量が等しくなるようにLUTの値を更新することで、調光モード間の輝度を一致させることが可能となる。全ての色に同様の遷移強度決定処理を行うことで、調光処理時の色度変化が抑制され、ユーザに色の変化を視認させにくいレーザ投射表示装置を提供できる。
【実施例4】
【0094】
実施例1、2では、単一調光モードにおける基準画像信号に対応する電流設定を最適化する構成について説明した。また実施例3では、複数の調光モードを有する場合に、異なる調光モード間を遷移するときの輝度変化や色度変化を抑えるよう調光量を最適化する構成について説明した。
【0095】
これに対し実施例4では、異なる調光モード間を遷移するとき、予め遷移先の調光モードにおける電流設定を最適化する構成について説明する。このため、前記
図10に示した発光制御部91の光量検出調光モード決定部98により、今後遷移する可能性のある調光モード(先読み対象調光モード)を切り替え、予めそれぞれの調光モードについて基準画像信号に対応する電流設定を最適化する構成とした。その際光量検出調光モード決定部98は、現在の調光モード(滞在調光モードと呼ぶ)および明るさの変化状況に応じて、どの調光モードを先読み対象とするかを選択する。すなわち、調光モードおよび調光ステップの遷移方向および/または変化速度に応じて先読み対象調光モードの割合を変更する。以下、実施例1〜3と同一の構成、機能を有するものには同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0096】
図13は、実施例4に係る先読み対象調光モードの例を示す図であり、明るさの変化に応じて先読み対象を決定している。ここでは5つの調光モードを有し、調光モード1が最も明るく、調光モード5が最も暗いとする。現在、調光モード3に滞在し、予想される今後の明るさが、明るさ停滞時(明るさが変化しない)、明るさ増加時、明るさ減少時に分け、フレーム毎の先読み対象調光モードの例を示す。(a)はフレーム順に先読みする調光モードを、(b)はフレーム数15までに先読み対象とする調光モードの割合(度数)を示している。
【0097】
明るさ停滞時には、滞在調光モード3および隣り合う明るさの調光モード2,4を先読み対象とする割合を高くする。明るさ増加時には、滞在調光モード3よりも明るい調光モード2の割合を高くし、明るさ減少時には滞在調光モード3よりも暗い調光モード4の割合を高くする。また、明るさの変化の速度に応じて、上記の割合(度数)を変えてもよい。なお、複数のフレームに渡り先読みを実行するのは、電流設定を複数のフレームに渡り繰り返して行うためである。このように、遷移する可能性の高い調光モードを高い割合で先読みすることで、より効率的に調光処理時の輝度および色度変化を抑制することが可能となる。
【0098】
図14は、先読み対象調光モードに対する電流設定処理のフローチャートを示す図である。実施例1と同様、1フレームの帰線期間において、電流調整用に3回の発光を行う例で説明する。
【0099】
S140では、発光制御部91は、帰線期間中かを判断する。帰線期間でない場合は帰線期間に入るまで待機し、帰線期間中と判断した場合にS141に移行する。S141では、光量検出調光モード決定部98は先読み対象調光モードを決定する。これには、例えば
図13のように、明るさの変化に応じて先読み対象調光モードを選択する。
【0100】
S142では、決定した先読み対象調光モードに基づき、レーザドライバ4に対して電流設定信号29,30を送り第1の電流設定を行い、また増幅器9に対する増幅率を変更する。S143にて、先読み対象調光モードにおける基準画像信号S0に対応する第1の発光を行い、第1の光量L1を取得する。
【0101】
S144では、第1の電流設定とは所定の電流差Isを有する第2の電流設定に変更する。S145にて、先読み対象調光モードにおける基準画像信号S0に対応する第2の発光を行い、第2の光量L2を取得する。
【0102】
S146では、第2の電流設定とは所定の電流差Isを有する第3の電流設定に変更する。S147にて、先読み対象調光モードにおける基準画像信号S0に対応する第3の発光を行い、第3の光量L3を取得する。
【0103】
S148では、得られた3点の光量L1,L2,L3を先読み対象調光モードにおける目標値P0と比較し、それぞれの差分値を算出する。S149では、差分値が最小となる電流設定を求め、先読み対象調光モードの電流設定に決定して保持する。ここで保持している電流設定値は、先読み対象調光モードに遷移した際に適用する。S150では、滞在調光モードに対応する電流設定に変更し、S140に戻り一連の電流設定処理を繰り返す。
【0104】
実施例4によれば、滞在調光モードおよび明るさの遷移方向および/または変化速度に応じて先読み対象調光モードの割合を変更することで、より遷移する可能性の高い調光モードを選択することが可能となる。また、選択した先読み対象調光モードにおいては、1フレームの帰線期間に電流設定を変えて複数回の発光を行うことで、それぞれの調光モードにおける最適な電流設定を予め求めることができる。これにより調光処理において安定した光量制御が実現でき、この処理を全ての色に対し実施することで色度変化が抑制され、ユーザに色の変化を視認させにくいレーザ投射表示装置を提供できる。