特許第6649209号(P6649209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649209針先プロテクターの揺動防止部材およびピックアップカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649209
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】針先プロテクターの揺動防止部材およびピックアップカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G11B 3/54 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   G11B3/54 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-166704(P2016-166704)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-37122(P2018-37122A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 大之
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−026711(JP,U)
【文献】 実開昭59−074509(JP,U)
【文献】 米国特許第04165078(US,A)
【文献】 韓国公開特許第1984−0008858(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のシート状素材を用いて、ベース部材と、前記ベース部材に対して同方向に幅をもって一対の脚部が一体に形成され、前記一対の脚部が前記ベース部材に対して、それぞれ同一の角度をもって同方向に折り曲げられ、
前記一対の脚部によって、ピックアップカートリッジを両外側から挟むようにして前記ピックアップカートリッジに取り付けられると共に、前記ベース部材が再生針を覆った状態の針先プロテクターの一部に当接して、前記針先プロテクターの揺動を防止することを特徴とする針先プロテクターの揺動防止部材 。
【請求項2】
前記一対の脚部における少なくとも一方の脚部の先端部には、他の脚部に向かう係止部が形成され、前記係止部が前記ピックアップカートリッジの前記両外側に直交する面に係止することで、ピックアップカートリッジへの取り付け状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の針先プロテクターの揺動防止部材。
【請求項3】
前記ベース部材における一対の脚部の間には、ベース部材の面に沿って突起体が形成され、前記突起体がカートリッジケースの一部に当接することで、前記一対の脚部と前記ベース部材との折り曲げ状態が維持されるように構成した請求項1または請求項2に記載の針先プロテクターの揺動防止部材。
【請求項4】
前記ベース部材の面に沿って形成された前記突起体の長手方向の両辺に続いて、前記ベース部材にそれぞれスリットが切り込まれて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の針先プロテクターの揺動防止部材。
【請求項5】
請求項1に記載の針先プロテクターの揺動防止部材を前記ピックアップカートリッジに取り付けたことを特徴とするピックアップカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レコード盤の音溝をトレースする再生針を保護する針先プロテクターを備えたピックアップカートリッジに取り付けられて用いられ、例えば搬送時などに受ける衝撃により前記針先プロテクターが揺動するのを阻止する針先プロテクターの揺動防止部材に関する。また、この針先プロテクターの揺動防止部材をピックアップカートリッジに取り付けたピックアップカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
レコード盤の音溝をトレースする再生針を備えたピックアップカートリッジには、その未使用時(保管時)や搬送時などにおいて、前記再生針が損傷するのを避けるために、再生針を保護するカバー部材(針先プロテクター)を具備したものが提案されている。
このような針先プロテクターを具備したピックアップカートリッジは、例えば特許文献1および2などに開示されている。
【0003】
図4は、特許文献1および2に開示され針先プロテクターを備えたピックアップカートリッジと同様の構成を備えたピックアップカートリッジの外観構成を示している。
このピックアップカートリッジ11は、一例としてムービングマグネット(MM)型カートリッジを示している。すなわち、このMM型カートリッジ11は、コイルやヨークなどの磁気回路を内蔵したカートリッジ本体12に対して、再生針交換ユニット13が着脱可能に装着されている。この再生針交換ユニット13には、先端部に再生針が取り付けられ、基端部にマグネット等を備えたカンチレバーが、ダンパー等を介して取り付けられている。
【0004】
そして図4に示す例においては、再生針交換ユニット13のユニットケースを兼ねるノブ部材13aの前端部側には、針先プロテクター13bが配置されている。この針先プロテクター13bは、コ字状に成形されてその両脚部がノブ部材13aに回動可能に取り付けられており、これにより針先プロテクター13bは、白抜きの両方向矢印で示す範囲で回動可能になされている。
【0005】
したがって針先プロテクター13bを、図4に示す状態のように起立させることで、前記した再生針とこれを支持するカンチレバーを覆うことができ、この針先プロテクター13bによって、再生針およびカンチレバーを含む振動系を保護することができる。
また、針先プロテクター13bをノブ部材13aの前方に向かって倒すことで、再生針とカンチレバーは露出され、この状態でピックアップカートリッジとして利用することができる。すなわち、針先プロテクター13bは、図4に示す両方向矢印のいずれかの状態に位置設定がされるように、ノブ部材13aとの間でクリック機能が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭49−27206号公報
【特許文献2】実公昭59−3400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図4に示したピックアップカートリッジにおいては、商品の出荷時においては、保護ケースに収容されて再生針やカンチレバーなどの振動系を含むカートリッジ全体が保護されるように配慮されている。
しかしながら、搬送中などにおいて落下などの強い衝撃を受けた場合には、針先プロテクターが回動して、再生針とカンチレバーが露出された状態で、商品がユーザに届く状態が発生し得る。
【0008】
この種のピックアップカートリッジは、ユーザにとって好みや趣味性が非常に高い商品であり、しかも繊細な精密部品であることから、保護ケースの開封時に針先プロテクターが開放され、再生針とカンチレバーが露出した状態で手元に届くことは、印象が悪くメーカへの不信感を抱かせるなど、ユーザに対して不快な感覚を与える結果となる。
これは、たとえピックアップカートリッジに損傷はなくても、商品としての価値や心証を損ねるなどの問題に発展し得る。
【0009】
そこで、商品の出荷時において、例えば接着テープを利用して針先プロテクターを固定することが考えられが、接着テープによるプロテクターの固定は、必ずしも体裁が良いとは言えない。また接着テープの剥離に際して、誤って針先プロテクターも取り外されるなどの問題も発生し得る。しかも、接着テープを剥離した跡に接着糊が残り、カートリッジの外観を損なうなどの問題も発生し得る。
【0010】
したがって、この発明が解決しようとする課題は、針先プロテクターを備えたピックアップカートリッジに対する装着操作および取り外し操作が容易であると共に、ローコストにして、搬送時などに受ける衝撃による針先プロテクターの揺動を確実に阻止することができる針先プロテクターの揺動防止部材およびピックアップカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る針先プロテクターの揺動防止部材は、可撓性のシート状素材を用いて、ベース部材と、前記ベース部材に対して同方向に幅をもって一対の脚部が一体に形成され、前記一対の脚部が前記ベース部材に対して、それぞれ同一の角度をもって同方向に折り曲げられ、前記一対の脚部によって、ピックアップカートリッジを両外側から挟むようにして前記ピックアップカートリッジに取り付けられると共に、前記ベース部材が再生針を覆った状態の針先プロテクターの一部に当接して、前記針先プロテクターの揺動を防止することを特徴とする。
【0012】
この場合、好ましい一つの形態においては、前記一対の脚部における少なくとも一方の脚部の先端部には、他の脚部に向かう係止部が形成され、前記係止部が前記ピックアップカートリッジの前記両外側に直交する面に係止することで、ピックアップカートリッジへの取り付け状態が維持できるように構成される。
【0013】
また、前記ベース部材における一対の脚部の間には、ベース部材の面に沿って突起体が形成されていることが望ましく、前記突起体がカートリッジ本体の一部に当接することで、一対の脚部と前記ベース部材との折り曲げ状態が維持されるように構成される。
【0014】
そして、ベース部材の面に沿って形成された前記突起体の長手方向の両辺に続いて、前記ベース部材にはそれぞれスリットが切り込まれて形成されていることが望ましい。
【0015】
さらに、この発明に係るピックアップカートリッジは、前記した構成の針先プロテクターの揺動防止部材をピックアップカートリッジに取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記した構成の針先プロテクターの揺動防止部材によると、ベース部材に対して一体に形成された一対の脚部を利用して、揺動防止部材はピックアップカートリッジに取り付けられる。そして、一対の脚部に対して所定の角度をもって折り曲げられた前記ベース部材が、再生針を覆った状態の針先プロテクターの一部に当接して、前記針先プロテクターの揺動を防止するように作用する。
【0017】
すなわち、この揺動防止部材によると、一対の脚部を利用してカートリッジケースを、その両外側から挟むようにしてカートリッジ本体に取り付けることができるので、ピックアップカートリッジに対する着脱操作を容易にすることができる。
しかも、この揺動防止部材は、可撓性のシート状素材、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明な樹脂素材により成形することができる。これによると、ローコストにして体裁にも優れ、かつ素材のばね効果を生かして、衝撃による針先プロテクターの揺動を確実に阻止することが可能な針先プロテクターの揺動防止部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明に係る針先プロテクターの揺動防止部材を示す平面図である。
図2図1に示す揺動防止部材をピックアップカートリッジに取り付ける様子を示した斜視図である。
図3】同じく取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】ピックアップカートリッジの外観構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に係る針先プロテクターの揺動防止部材(以下、単に揺動防止部材とも言う。)は、図1に単体構成で示したとおり、可撓性のシート状素材、好ましくはPETなどの透明な樹脂素材を材料として、抜型を用いた打抜き加工によって得ることができる。
【0020】
図1に示す揺動防止部材1は、隅角部が円弧状に縁取りされた四辺形状に成形されたベース部材2に対して、同方向に互いに平行となるように一対の脚部3が一体に成形されている。そして、それぞれ直線状に成形された一対の脚部3の各先端部には、半円形状に突出した係止部4がそれぞれ内側に向かって対向するように形成されている。
【0021】
また、ベース部材2における前記一対の脚部3間には、ベース部材2の面に沿って突起体5が形成されており、前記突起体5の長手方向の両辺に続くようにして、前記ベース部材2には、それぞれスリット6が切り込まれて形成されている。
さらに前記ベース部材2と、一対の脚部3との間には、破線で示した折り曲げ部(ほぼ90度の谷折り)7が直線状に形成されており、この折り曲げ部7によって、前記一対の脚部3は前記ベース部材2に対して、それぞれ同一の角度をもって同方向に折り曲げられている。この折り曲げられた様子は、図2および図3に示されている。
【0022】
図2および図3に示すピックアップカートリッジ11は、図4に基づいて説明したピックアップカートリッジの構成と同様であり、カートリッジ本体12と、これに着脱可能に取り付けられる再生針交換ユニット13より構成されている。
カートリッジ本体12は、コイルやヨークなどの磁気回路を内蔵した概ね直方体形状になされたカートリッジケース12aが、台座12b上に搭載された状態で構成されている。そして、前記台座12bはカートリッジケース12aに比較して、その幅および長さ方向の寸法が若干大きく構成されており、台座12bの長さ方向の両辺には、ピックアップカートリッジ11を図示せぬヘッドシェルに締結するためのねじ挿通用の溝孔12cがそれぞれ施されている。
【0023】
また、カートリッジケース12aにおける再生針交換ユニット13の装着面には、この装着面の長手方向に沿って、開口12dが形成されている。この開口12dには再生針交換ユニット13が装着された場合に、カンチレバーやマグネットおよびダンパーの一部などが収容される。
なお、カートリッジケース12aの尾端部側の面12eには、カートリッジの出力端子としての端子ピン12fが取り付けられている。
【0024】
一方、再生針交換ユニット13は先に説明したとおり、図には示されていないが、先端部に再生針が取り付けられ、基端部にマグネット等を備えたカンチレバーが、ダンパーを介してユニットケースを兼ねるノブ部材13a側に揺動可能に配置されている。
また、ノブ部材13aの前端部側には、コ字状に成形された針先プロテクター13bの両脚部が、前記ノブ部材13aに対して回動可能に取り付けられている。そして、図2に示すようにカートリッジ本体12に対して、再生針交換ユニット13が矢印A方向に装着されてピックアップカートリッジ11が構成される。
【0025】
このピックアップカートリッジ11には、カートリッジ本体12の台座12bと、再生針交換ユニット13のノブ部材13aとの間に形成される隙間に沿って、針先プロテクターの揺動防止部材1が取り付けられる。
なお、揺動防止部材1の両脚部3におけるベース部材2と係止部4との間の長さ寸法Lは、カートリッジ本体12の前記台座12bに沿ったカートリッジケース12aの長さ寸法よりも僅かに大きく設定されている。また揺動防止部材1の両脚部3間の幅寸法Wは、前記台座12bに沿ったカートリッジケース12aの幅寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0026】
そして、前記揺動防止部材1は、0.3mm程度の厚さを有するPETにより成形されているので、揺動防止部材1は適度に弾性をもって変形する。したがってピックアップカートリッジ11に対して、揺動防止部材1を図2に示す矢印B方向に沿って装着することにより、それ程大きな抵抗を受けずに揺動防止部材1を容易に装着することができる。
【0027】
この場合、前記揺動防止部材1の一対の脚部3が、カートリッジケース12aをその両外側から挟むようにして装着される。そして、各脚部3の先端部にそれぞれ内側に向かって形成された各係止部4が、カートリッジケース12aの前記両外側に直交する面、すなわちカートリッジケースの尾端部側の面12eに係止される。これにより、揺動防止部材1はカートリッジ11への取り付け状態を維持することができる。
なお、図に示す揺動防止部材1においては、各脚部3の先端部に互いに内側に向かって係止部4が形成されているが、この係止部4は一方の脚部のみに、他の脚部に向かうようにして形成されていても、同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
斯くして、図3に示すようにピックアップカートリッジ11に取り付けられた揺動防止部材1は、ベース部材2の面に沿って形成された突起体5が、カートリッジ本体12の台座12bの一部に当接する。これにより、ベース部材2には前記した折り曲げ部7を介して、白抜きの矢印の方向への付勢力(折り曲げ作用)が与えられ、ベース部材2は起立状態の針先プロテクター13bに当接した状態になされる。
【0029】
そして、前記ベース部材2に形成された突起体5は、突起体5に沿ってベース部材2に切り込まれたスリット6の存在によって適度に湾曲され、突起体5にはこの湾曲に応じたばね作用が付与される。
したがってベース部材2は、突起体5に付与されるばねの反作用を受けて、針先プロテクター13bに対して柔軟に当接し、針先プロテクター13bの揺動を阻止することになる。したがって、ピックアップカートリッジ11は、多少の衝撃を受けても図3に示す状態を維持することになる。
【0030】
以上の説明で明らかなように、この発明に係る針先プロテクターの揺動防止部材によると、ピックアップカートリッジに対する着脱操作を容易にすることができる。しかも、PETなどの透明な樹脂素材を利用することで、ローコストにして体裁にも優れ、かつ素材のばね効果を利用して、衝撃を受けた場合の針先プロテクターの揺動を確実に阻止することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。なお、実施形態では再生針が交換可能なピックアップカートリッジについて説明したが、交換不可のカートリッジに適用してもよい。また、MM型カートリッジの他にムービングコイル(MC)型カートリッジにも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 針先プロテクターの揺動防止部材
2 ベース部材
3 脚部
4 係止部
5 突起体
6 スリット
7 折り曲げ部
11 ピックアップカートリッジ
12 カートリッジ本体
12a カートリッジケース
12b 台座
12c ねじ挿通用の溝
12d 開口
12e 尾端部側の面
12f 端子ピン
13 再生針交換ユニット
13a ノブ部材(ユニットケース)
13b 針先プロテクター
図1
図2
図3
図4