【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0028】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0029】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0030】
まず、圧延した異形棒鋼を所定本数毎に結束するまでの手順を
図1に基づいて説明する。原料を溶解して所定サイズに鋳造されたビレットは、圧延工程S1、冷却工程S2、切断工程S3、搬送工程S4及び結束工程S5を経て異形棒鋼として出荷される。圧延工程S1は、約1000℃のビレットをロールで引き伸ばし、所望の径を有する異形棒鋼を製造する。圧延工程S1で得られる異形棒鋼は、冷却可能な長さ(例えば、100m)に分割された後に、高温のまま冷却工程S2に送られる。冷却工程S2では、時間をかけて異形棒鋼を搬送することにより切断可能な温度まで冷却する。切断工程S3では、長い異形棒鋼を所定長さ(例えば、12m)に切断する。
【0031】
搬送工程S4では、異形棒鋼を所定本数ずつまとめて搬送する。また、異形棒鋼の搬送と並行して、鋼種や径に応じた識別マークが異形棒鋼に塗装される。結束工程S5では、搬送工程S4から送られた異形棒鋼を所定本数ずつ結束する。
【0032】
次に、異形棒鋼のマーキング装置1の構成について図面に基づいて説明する。
図2は、異形棒鋼のマーキング装置1を示す平面図である。
図3は、異形棒鋼のマーキング装置1の塗料供給手段10を搬送方向Dから視た正面図である。
【0033】
異形棒鋼のマーキング装置1は、上述した搬送工程S4に設置されるものである。異形棒鋼のマーキング装置1は、搬送手段としてのコンベア2と、塗料供給手段10と、を備えている。
【0034】
コンベア2は、従来から異形棒鋼Rの搬送に用いられているものである。コンベア2は、切断工程で切断された異形棒鋼Rをその軸線方向と直交する方向(搬送方向D)に搬送する。
【0035】
塗料供給手段10は、コンベア2の上方及び下方にそれぞれ設けられると共に、平面から視てコンベア2を横断するように設けられた梁3に取り付けられている。上下の塗料供給手段10は、対向するように配置されている。なお、塗料供給手段10は、コンベア2の上方又は下方の何れか一方のみに設けられるものであっても構わない。
【0036】
塗料供給部10は、異形棒鋼の軸線方向と平行な梁3の長手方向に複数設けられている。隣り合う塗料供給部10同士の間隔は、例えば1.5mに設定されるが、任意に変更可能である。塗料供給手段10は、異形棒鋼Rに塗料を塗装する塗料塗付部20を備えている。なお、コンベア2の上方に設けられた塗料供給手段10aと、コンベア2の下方に設けられた塗料供給手段10bとは、その構成が共通するため、以下では、塗料供給手段10aを例に構成を説明し、塗料供給手段10bに関する説明を省略する。
【0037】
塗料塗付部20は、第1の塗付部材30と、第2の塗付部材40と、を備えている。
【0038】
第1の塗付部材30は、異形棒鋼Rの周面に鋼種(種類)を示す識別マークM1を塗装する。第1の塗付部材30は、塗布体31と、塗料供給体32と、フレーム33と、を備えている。
【0039】
塗布体31は、塗布体31の下部がフレーム33から突出した状態でフレーム33に支持されている。塗布体31は多孔質体から成り、例えばポリウレタン製である。塗布体31は、異形棒鋼Rの周面に直接接触するため、例えば200℃以上の耐熱性を有するもので好ましい。識別マークM1の幅は、塗布体31の幅寸法に応じて変更可能である。塗布体31は、複数の異形棒鋼Rを一括してマーキングするために搬送方向Dに沿って長く形成されている。
【0040】
塗料供給体32は、フレーム33に内包されると共に塗布体31を挟むように配置され、隣り合う塗布体31に塗料を供給する。塗料供給体32は多孔質から成り、例えばポリウレタン製である。塗料供給体32に含まれる塗料は、塗布供給体32に隣接する塗布体31に供給される。
【0041】
フレーム33は、金属製であり、搬送方向に延伸された略角筒状に形成されている。フレーム33の外周には、塗布体31の一部を突出させるスリットが形成されている。フレーム33は、塗布体31及び塗料供給体32を一体で持ち運び可能に収容している。フレーム33は、後述する支持部材51の凹部52に収容されており、支持部材51に対して着脱自在に取り付けられている。例えば、係脱可能なロック機構やボルト等の締結具を用いて、フレーム33及び支持部材51を連結することが考えられる。フレーム33が塗布体31及び塗料供給体32を一体で収容し、支持部材51に着脱自在に取り付けられることにより、第1の塗付部材30がカートリッジとして機能するため、第1の塗付部材30の塗料切れの際には、第1の塗付部材30を新品に交換することで塗料充填の手間を省くことができる。
【0042】
第2の塗付部材40は、異形棒鋼Rの周面に径(呼び名)を示す識別マークM2を塗装する。第2の塗付部材40は、第1の塗付部材30と同様の構成であり、塗布体41と、塗料供給体42と、フレーム43と、を備えている。第2の塗付部材40の塗布体41、塗料供給体42及びフレーム43は、第1の塗付部30の塗布体31、塗料供給体32及びフレーム33とそれぞれ共通するため、重複する説明を省略する。
【0043】
塗料供給手段10は、塗料塗付部20を昇降させる昇降部50を備えている。昇降部50は、例えば、上下方向に伸縮可能なエアシリンダ等である。昇降部50の上端は梁3に固定され、昇降部50の下端が側面視で断面E字状に形成された支持部材51に固定されている。昇降部50は、支持部材51を介してフレーム33、43に連結されている。
【0044】
異形棒鋼のマーキング装置1の動作は、制御部60によって制御される。制御部60は、異形棒鋼のマーキング装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部60は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部60の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0045】
なお、上述した塗料供給部10は、上述したカートリッジ方式の他に、塗料を外部から常時供給するものであっても構わない。例えば、
図4に示すような塗料供給部10は、塗布体31に塗料を供給する供給ライン35と、塗布体41に塗料を供給する供給ライン45と、を備えている。供給ライン35、45には図示しないポンプが接続されており、供給ライン35、45内を塗料が圧送される。供給ライン35、45には、塗料循環システムが接続されており、原液を所定濃度まで希釈して得られた塗料が常時供給されている。このように供給ライン35、45を介して供給される高圧の塗料は、塗布体31、41の目詰まりを抑制することができる。
【0046】
異形棒鋼Rに塗付される塗料は、耐燃塗料が好ましい。異形棒鋼Rの鋼種を示す識別マークM1は、幅30mmに形成され、識別色が、SD345を「黄」、SD390を「緑」、SD490を「青」、SD590を「ピンク」、SD685を「シルバー」に設定されている。異形棒鋼Rの径を示す識別マークM2は、幅30mmに形成され、識別色が、D19(径19mm、以下同じ)、D25、D32、D38、D51を「ピンク」、D22、D29、D35、D41を「白」に設定されている。なお、識別マークM1、M2の識別色は、これらに限定されるものではなく任意に変更可能である。また、識別マークM1、M2は、異なる幅寸法であっても構わない。また、異形棒鋼Rに塗付される塗料に蛍光塗料を採用することにより、識別マークM1、M2の視認性を高めることができる。
【0047】
次に、本発明の一実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1を用いて異形棒鋼Rにマーキングを塗装する手順について、
図5に基づいて説明する。
【0048】
まず、
図5(a)に示すように、異形棒鋼Rがコンベア2で搬送方向Dに向かって搬送される。異形棒鋼Rは、搬送方向Dに所定本数ずつ並んだ状態でまとめて搬送される。
【0049】
次に、
図5(b)に示すように、異形棒鋼Rが塗料供給手段10a、10bの間まで搬送させると、制御部60がコンベア2を一時停止させる。なお、制御部60がコンベア2を停止させるタイミングは、図示しないセンサ等が塗料供給手段10a、10bの間に異形棒鋼Rを検知したときに設定することが考えられる。また、上述した切断工程から搬送工程に移行する際に、コンベア2を一時停止させて異形棒鋼Rをコンベア2に移載させる間欠搬送の場合には、異形棒鋼Rを移載させるタイミングと異形棒鋼Rを塗料供給手段10a、10bの間に進入させるタイミングを同期させるのが好ましい。これにより、コンベア2の一時停止時間が最小化されて、識別マークM1、M2を効率的に塗装することができる。
【0050】
そして、
図5(c)に示すように、制御部60は、昇降部50を起動して、塗料供給手段10aを下降させると共に塗料供給手段10bを上昇させる。塗布体31、41は異形棒鋼Rの外周に沿って変形して上下から異形棒鋼Rを挟み込む。また、塗布体31、41は、搬送方向Dに沿って並ぶ複数の異形棒鋼Rを同時に挟み込むようになっている。
【0051】
その後、塗料供給手段10a、10bが異形棒鋼Rから離れると、識別マークM1、M2が異形棒鋼Rの外周に亘って形成される。そして、制御部60は、再びコンベア2を起動して異形棒鋼Rの搬送を再開する。
【0052】
このようにして、本実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1は、第1の塗付部材30及び第2の塗付部材40が異形棒鋼Rの周面に押し当てられて、異形棒鋼Rの周面に付着する塗料のみが供給されることにより、異形棒鋼Rの周面に付着せずに破棄される塗料が減少し、少量の塗料で識別マークM1、M2を形成することができる。また、第1の塗付部材30及び第2の塗付部材40が異形棒鋼Rに直接接触することにより、塗料の舞い上がりが抑制されるため、作業環境の向上を実現することができる。
【0053】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなることができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。