特許第6649211号(P6649211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649211異形棒鋼のマーキング装置及びマーキング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649211
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】異形棒鋼のマーキング装置及びマーキング方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20200210BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20200210BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B21C51/00 B
   B05C1/02 101
   B05C13/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-172722(P2016-172722)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-39018(P2018-39018A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391037803
【氏名又は名称】株式会社伊藤製鐵所
(73)【特許権者】
【識別番号】595108572
【氏名又は名称】クロダイト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】林 順三
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃正
(72)【発明者】
【氏名】三田 朗
(72)【発明者】
【氏名】小串 和之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正人
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030277(JP,A)
【文献】 実開昭54−143372(JP,U)
【文献】 実開昭54−056663(JP,U)
【文献】 実開昭56−020673(JP,U)
【文献】 実公昭48−031956(JP,Y1)
【文献】 特開2015−224375(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3000110(JP,U)
【文献】 特開平06−274063(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0266127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 51/00
B05C 1/00−3/20
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形棒鋼の軸線と直交する搬送方向に該異形棒鋼を搬送する搬送手段と、前記異形棒鋼の周面に前記異形棒鋼の鋼種及び径に応じた識別マークを形成する塗料供給手段と、を備えた異形棒鋼のマーキング装置において、
前記塗料供給手段は、
前記異形棒鋼の周面に前記鋼種の識別マークを接触塗布する第1の塗付部材及び前記異形棒鋼の周面に前記径の識別マークを接触塗付する第2の塗付部材を備えた塗料塗付部と、
前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を上下方向に昇降させる昇降部と、
前記異形棒鋼が前記塗料供給手段を通過する際に前記異形棒鋼を一時停止させて、前記昇降部で前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を前記異形棒鋼の周面に押し当てる制御部と、
を備え
前記第1の塗布部材及び第2の塗布部材は、前記搬送手段の上下にそれぞれ対向して設けられ、前記異形棒鋼の周面に押し当てられた際に前記異形棒鋼を挟み込むように変形可能な塗布体を備えていることを特徴とする異形棒鋼のマーキング装置。
【請求項2】
前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材は、前記塗布体の前記搬送手段に対向する面が凸設するように前記塗布体を支持するフレームをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の異形棒鋼のマーキング装置。
【請求項3】
前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材は、前記フレームに収容され、前記塗布体に塗料を供給する塗料供給体を備え、
前記フレームは、前記昇降部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の異形棒鋼のマーキング装置。
【請求項4】
前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材は、前記塗布体に塗料を圧送する供給ラインを備えていることを特徴とする請求項2記載の異形棒鋼のマーキング装置。
【請求項5】
前記塗布体は、前記搬送方向に延伸されていることを特徴とする請求項2乃至の何れか1項記載の異形棒鋼のマーキング装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項記載の異形棒鋼のマーキング装置を用いた異形棒鋼のマーキング方法において、
前記異形棒鋼を所定間隔毎に一時停止させながら搬送方向に沿って搬送し、
前記異形棒鋼が一時停止した際に、前記昇降部で前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を前記異形棒鋼の周面に押し当てることを特徴とする異形棒鋼のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形棒鋼の鋼種や径等を識別するための識別マークを異形棒鋼の周面に塗付するマーキング装置及びマーキング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異形棒鋼は、建設現場の配筋場所に応じて鋼種(種類)や径(呼び名)が異なるものが用いられる。異形棒鋼は、鋼種や径に応じて機械的性質が異なるため、異形棒鋼の取り違えを回避する必要があるところ、異形棒鋼は一見して鋼種や径が区別し難い。そこで、JIS G 3112では、異形棒鋼の鋼種や径に応じた識別色が設定され、異形棒鋼を容易に区別できるようになっている。
【0003】
このような異形棒鋼に鋼種や径に応じた識別マークを付与するマーキング方法として、特許文献1には、異形棒鋼を軸線と直交する方向に搬送しながら塗料供給手段を通過させて、異形棒鋼の周面にスプレーで塗料を噴射するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5786209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような特許文献1記載のマーキング方法では、スプレーで塗料を異形棒鋼に向けて広範囲に噴射することにより、噴射された塗料の多くが異形棒鋼に付着しないため、異形棒鋼に塗装される塗料の分量に対して破棄される塗料の分量が多いという問題があった。
【0006】
また、スプレーで噴射された塗料は異形棒鋼に付着するものを除いて作業場内に舞い上がるため、作業員が塗料を吸い込む虞があり作業環境が悪いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたものであり、異形棒鋼に識別マークを塗装するにあたり、塗料の省資源化と作業環境性の向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、異形棒鋼の軸線と直交する搬送方向に該異形棒鋼を搬送する搬送手段と、前記異形棒鋼の周面に前記異形棒鋼の鋼種及び径に応じた識別マークを形成する塗料供給手段と、を備えた異形棒鋼のマーキング装置において、前記塗料供給手段は、前記異形棒鋼の周面に前記鋼種の識別マークを接触塗布する第1の塗付部材及び前記異形棒鋼の周面に前記径の識別マークを接触塗付する第2の塗付部材を備えた塗料塗付部と、前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を上下方向に昇降させる昇降部と、前記異形棒鋼が前記塗料供給手段を通過する際に前記異形棒鋼を一時停止させて、前記昇降部で前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を前記異形棒鋼の周面に押し当てる制御部と、を備え、前記第1の塗布部材及び第2の塗布部材は、前記搬送手段の上下にそれぞれ対向して設けられ、前記異形棒鋼の周面に押し当てられた際に前記異形棒鋼を挟み込むように変形可能な塗布体を備えている異形棒鋼のマーキング装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼の周面に押し当てられて識別マークが塗装されることにより、塗料は異形棒鋼の周面に付着する分だけが供給されるため、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて少量の塗料で識別マークを形成することができる。
【0010】
また、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼に直接接触して塗料を異形棒鋼の周面に塗装することにより、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて塗料の舞い上がりが抑制されるため、作業環境の向上を実現することができる。さらに、上下に対向して配置された塗布体が異形棒鋼を挟み込むように変形して異形棒鋼の周面に連続した識別マークを形成するため、異形棒鋼の向き等に係わらず、視認し易い識別マークを形成することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の異形棒鋼のマーキング装置の構成に加えて、前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材は、前記塗布体の前記搬送手段に対向する面が凸設するように前記塗布体を支持するフレームをさらに備えている異形棒鋼のマーキング装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、塗布体が異形棒鋼の周面に沿って変形しながら異形棒鋼に直接接触するため、少量の塗料で識別マークを形成することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の異形棒鋼のマーキング装置の構成に加えて、前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材は、前記フレームに収容され、前記塗布体に塗料を供給する塗料供給体を備え、前記フレームは、前記昇降部に着脱自在に取り付けられている異形棒鋼のマーキング装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、塗布体及び塗料供給体がフレームに内包され、フレームが昇降部に対して着脱自在に取り付けられていることにより、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が交換可能なカートリッジとして機能するため、塗料切れの際に、塗料を塗布体に充填させることなく、第1の塗付部材又は第2の塗付部材を交換するだけで速やかに塗料を充填することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の異形棒鋼のマーキング装置の構成に加えて、前記塗布体に塗料を圧送する供給ラインを備えている異形棒鋼のマーキング装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、塗料が供給ラインを介して塗布体に圧送されるため、塗布体が高温の異形棒鋼に直接接触して塗布体表面が硬化することに起因する目詰まりを抑制できる。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項2乃至の何れか1項記載の異形棒鋼のマーキング装置の構成に加えて、前記塗布体は、前記搬送方向に延伸されている異形棒鋼のマーキング装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、搬送方向に並ぶ異形棒鋼に一括して識別マークを形成することができる。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項1乃至の何れか1項記載の異形棒鋼のマーキング装置を用いた異形棒鋼のマーキング方法において、前記異形棒鋼を所定間隔毎に一時停止させながら搬送方向に沿って搬送し、前記異形棒鋼が一時停止した際に、前記昇降部で前記第1の塗付部材及び第2の塗付部材を前記異形棒鋼の周面に押し当てる異形棒鋼のマーキング方法を提供する。
【0022】
この構成によれば、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼の周面に押し当てられることにより、塗料は異形棒鋼の周面に付着する分だけが供給されるため、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて少量の塗料で識別マークを形成することができる。
【0023】
また、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼に直接接触して塗料を異形棒鋼の周面に塗装することにより、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて塗料の舞い上がりが抑制されるため、作業環境の向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼の周面に押し当てられることにより、塗料は異形棒鋼の周面に付着する分だけが供給されるため、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて少量の塗料で識別マークを形成することができる。また、第1の塗付部材及び第2の塗付部材が異形棒鋼に直接接触して塗料を異形棒鋼の周面に塗装することにより、塗料を異形棒鋼に向けて噴射する場合と比べて塗料の舞い上がりが抑制されるため、作業環境の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】圧延した異形棒鋼を所定本数毎に結束するまでの手順を示すフローチャート。
図2】本発明の一実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置を示す平面図。
図3図2に示す異形棒鋼のマーキング装置の塗料供給手段を搬送方向から視た正面図。
図4】塗料供給手段の変形例を示す正面図。
図5】異形棒鋼のマーキング方法の手順を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、異形棒鋼に識別マークを塗装するにあたり、塗料の省資源化と作業環境性の向上を実現するという目的を達成するために、異形棒鋼の軸線と直交する搬送方向に異形棒鋼を搬送する搬送手段と、異形棒鋼の周面に異形棒鋼の鋼種及び径に応じた識別マークを形成する塗料供給手段と、を備えた異形棒鋼のマーキング装置において、塗料供給手段は、異形棒鋼の周面に鋼種の識別マークを接触塗布する第1の塗付部材及び異形棒鋼の周面に径の識別マークを接触塗付する第2の塗付部材を備えた塗料塗付部と、第1の塗付部材及び第2の塗付部材を上下方向に昇降させる昇降部と、異形棒鋼が塗料供給手段を通過する際に異形棒鋼を一時停止させて、昇降部で第1の塗付部材及び第2の塗付部材を異形棒鋼の周面に押し当てる制御部と、を備えていることにより実現した。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0028】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0029】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0030】
まず、圧延した異形棒鋼を所定本数毎に結束するまでの手順を図1に基づいて説明する。原料を溶解して所定サイズに鋳造されたビレットは、圧延工程S1、冷却工程S2、切断工程S3、搬送工程S4及び結束工程S5を経て異形棒鋼として出荷される。圧延工程S1は、約1000℃のビレットをロールで引き伸ばし、所望の径を有する異形棒鋼を製造する。圧延工程S1で得られる異形棒鋼は、冷却可能な長さ(例えば、100m)に分割された後に、高温のまま冷却工程S2に送られる。冷却工程S2では、時間をかけて異形棒鋼を搬送することにより切断可能な温度まで冷却する。切断工程S3では、長い異形棒鋼を所定長さ(例えば、12m)に切断する。
【0031】
搬送工程S4では、異形棒鋼を所定本数ずつまとめて搬送する。また、異形棒鋼の搬送と並行して、鋼種や径に応じた識別マークが異形棒鋼に塗装される。結束工程S5では、搬送工程S4から送られた異形棒鋼を所定本数ずつ結束する。
【0032】
次に、異形棒鋼のマーキング装置1の構成について図面に基づいて説明する。図2は、異形棒鋼のマーキング装置1を示す平面図である。図3は、異形棒鋼のマーキング装置1の塗料供給手段10を搬送方向Dから視た正面図である。
【0033】
異形棒鋼のマーキング装置1は、上述した搬送工程S4に設置されるものである。異形棒鋼のマーキング装置1は、搬送手段としてのコンベア2と、塗料供給手段10と、を備えている。
【0034】
コンベア2は、従来から異形棒鋼Rの搬送に用いられているものである。コンベア2は、切断工程で切断された異形棒鋼Rをその軸線方向と直交する方向(搬送方向D)に搬送する。
【0035】
塗料供給手段10は、コンベア2の上方及び下方にそれぞれ設けられると共に、平面から視てコンベア2を横断するように設けられた梁3に取り付けられている。上下の塗料供給手段10は、対向するように配置されている。なお、塗料供給手段10は、コンベア2の上方又は下方の何れか一方のみに設けられるものであっても構わない。
【0036】
塗料供給部10は、異形棒鋼の軸線方向と平行な梁3の長手方向に複数設けられている。隣り合う塗料供給部10同士の間隔は、例えば1.5mに設定されるが、任意に変更可能である。塗料供給手段10は、異形棒鋼Rに塗料を塗装する塗料塗付部20を備えている。なお、コンベア2の上方に設けられた塗料供給手段10aと、コンベア2の下方に設けられた塗料供給手段10bとは、その構成が共通するため、以下では、塗料供給手段10aを例に構成を説明し、塗料供給手段10bに関する説明を省略する。
【0037】
塗料塗付部20は、第1の塗付部材30と、第2の塗付部材40と、を備えている。
【0038】
第1の塗付部材30は、異形棒鋼Rの周面に鋼種(種類)を示す識別マークM1を塗装する。第1の塗付部材30は、塗布体31と、塗料供給体32と、フレーム33と、を備えている。
【0039】
塗布体31は、塗布体31の下部がフレーム33から突出した状態でフレーム33に支持されている。塗布体31は多孔質体から成り、例えばポリウレタン製である。塗布体31は、異形棒鋼Rの周面に直接接触するため、例えば200℃以上の耐熱性を有するもので好ましい。識別マークM1の幅は、塗布体31の幅寸法に応じて変更可能である。塗布体31は、複数の異形棒鋼Rを一括してマーキングするために搬送方向Dに沿って長く形成されている。
【0040】
塗料供給体32は、フレーム33に内包されると共に塗布体31を挟むように配置され、隣り合う塗布体31に塗料を供給する。塗料供給体32は多孔質から成り、例えばポリウレタン製である。塗料供給体32に含まれる塗料は、塗布供給体32に隣接する塗布体31に供給される。
【0041】
フレーム33は、金属製であり、搬送方向に延伸された略角筒状に形成されている。フレーム33の外周には、塗布体31の一部を突出させるスリットが形成されている。フレーム33は、塗布体31及び塗料供給体32を一体で持ち運び可能に収容している。フレーム33は、後述する支持部材51の凹部52に収容されており、支持部材51に対して着脱自在に取り付けられている。例えば、係脱可能なロック機構やボルト等の締結具を用いて、フレーム33及び支持部材51を連結することが考えられる。フレーム33が塗布体31及び塗料供給体32を一体で収容し、支持部材51に着脱自在に取り付けられることにより、第1の塗付部材30がカートリッジとして機能するため、第1の塗付部材30の塗料切れの際には、第1の塗付部材30を新品に交換することで塗料充填の手間を省くことができる。
【0042】
第2の塗付部材40は、異形棒鋼Rの周面に径(呼び名)を示す識別マークM2を塗装する。第2の塗付部材40は、第1の塗付部材30と同様の構成であり、塗布体41と、塗料供給体42と、フレーム43と、を備えている。第2の塗付部材40の塗布体41、塗料供給体42及びフレーム43は、第1の塗付部30の塗布体31、塗料供給体32及びフレーム33とそれぞれ共通するため、重複する説明を省略する。
【0043】
塗料供給手段10は、塗料塗付部20を昇降させる昇降部50を備えている。昇降部50は、例えば、上下方向に伸縮可能なエアシリンダ等である。昇降部50の上端は梁3に固定され、昇降部50の下端が側面視で断面E字状に形成された支持部材51に固定されている。昇降部50は、支持部材51を介してフレーム33、43に連結されている。
【0044】
異形棒鋼のマーキング装置1の動作は、制御部60によって制御される。制御部60は、異形棒鋼のマーキング装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部60は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部60の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0045】
なお、上述した塗料供給部10は、上述したカートリッジ方式の他に、塗料を外部から常時供給するものであっても構わない。例えば、図4に示すような塗料供給部10は、塗布体31に塗料を供給する供給ライン35と、塗布体41に塗料を供給する供給ライン45と、を備えている。供給ライン35、45には図示しないポンプが接続されており、供給ライン35、45内を塗料が圧送される。供給ライン35、45には、塗料循環システムが接続されており、原液を所定濃度まで希釈して得られた塗料が常時供給されている。このように供給ライン35、45を介して供給される高圧の塗料は、塗布体31、41の目詰まりを抑制することができる。
【0046】
異形棒鋼Rに塗付される塗料は、耐燃塗料が好ましい。異形棒鋼Rの鋼種を示す識別マークM1は、幅30mmに形成され、識別色が、SD345を「黄」、SD390を「緑」、SD490を「青」、SD590を「ピンク」、SD685を「シルバー」に設定されている。異形棒鋼Rの径を示す識別マークM2は、幅30mmに形成され、識別色が、D19(径19mm、以下同じ)、D25、D32、D38、D51を「ピンク」、D22、D29、D35、D41を「白」に設定されている。なお、識別マークM1、M2の識別色は、これらに限定されるものではなく任意に変更可能である。また、識別マークM1、M2は、異なる幅寸法であっても構わない。また、異形棒鋼Rに塗付される塗料に蛍光塗料を採用することにより、識別マークM1、M2の視認性を高めることができる。
【0047】
次に、本発明の一実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1を用いて異形棒鋼Rにマーキングを塗装する手順について、図5に基づいて説明する。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、異形棒鋼Rがコンベア2で搬送方向Dに向かって搬送される。異形棒鋼Rは、搬送方向Dに所定本数ずつ並んだ状態でまとめて搬送される。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、異形棒鋼Rが塗料供給手段10a、10bの間まで搬送させると、制御部60がコンベア2を一時停止させる。なお、制御部60がコンベア2を停止させるタイミングは、図示しないセンサ等が塗料供給手段10a、10bの間に異形棒鋼Rを検知したときに設定することが考えられる。また、上述した切断工程から搬送工程に移行する際に、コンベア2を一時停止させて異形棒鋼Rをコンベア2に移載させる間欠搬送の場合には、異形棒鋼Rを移載させるタイミングと異形棒鋼Rを塗料供給手段10a、10bの間に進入させるタイミングを同期させるのが好ましい。これにより、コンベア2の一時停止時間が最小化されて、識別マークM1、M2を効率的に塗装することができる。
【0050】
そして、図5(c)に示すように、制御部60は、昇降部50を起動して、塗料供給手段10aを下降させると共に塗料供給手段10bを上昇させる。塗布体31、41は異形棒鋼Rの外周に沿って変形して上下から異形棒鋼Rを挟み込む。また、塗布体31、41は、搬送方向Dに沿って並ぶ複数の異形棒鋼Rを同時に挟み込むようになっている。
【0051】
その後、塗料供給手段10a、10bが異形棒鋼Rから離れると、識別マークM1、M2が異形棒鋼Rの外周に亘って形成される。そして、制御部60は、再びコンベア2を起動して異形棒鋼Rの搬送を再開する。
【0052】
このようにして、本実施例に係る異形棒鋼のマーキング装置1は、第1の塗付部材30及び第2の塗付部材40が異形棒鋼Rの周面に押し当てられて、異形棒鋼Rの周面に付着する塗料のみが供給されることにより、異形棒鋼Rの周面に付着せずに破棄される塗料が減少し、少量の塗料で識別マークM1、M2を形成することができる。また、第1の塗付部材30及び第2の塗付部材40が異形棒鋼Rに直接接触することにより、塗料の舞い上がりが抑制されるため、作業環境の向上を実現することができる。
【0053】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなることができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0054】
1 ・・・ 異形棒鋼のマーキング装置
2 ・・・ コンベア
3 ・・・ 梁
10、10a、10b ・・・ 塗料供給部
20 ・・・ 塗料塗付部
30 ・・・ 第1の塗付部材
31 ・・・ (第1の塗付部材の)塗布体
32 ・・・ (第1の塗付部材の)塗料供給体
33 ・・・ (第1の塗付部材の)フレーム
40 ・・・ 第2の塗付部材
41 ・・・ (第2の塗付部材の)塗布体
42 ・・・ (第2の塗付部材の)塗料供給体
43 ・・・ (第2の塗付部材の)フレーム
44 ・・・ (第2の塗付部材の)スリット
50 ・・・ 昇降部
51 ・・・ 支持部材
52 ・・・ 凹部
60 ・・・ 制御部
D ・・・ 搬送方向
R ・・・ 異形棒鋼
図1
図2
図3
図4
図5