(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載するように、治療薬、例えば1つ以上の微粒子の投与を介してのタンパク質の制御された及び持続的な投与は、前眼部または後眼部の不快な眼症状などの症状の治療を改善することができる。微粒子は、薬学的に許容可能なポリマー組成物を含み、長期間に渡って、1つ以上の薬学的に活性な薬剤、例えばタンパク質、または他の眼圧低下剤若しくは神経保護剤を放出するように処方される。微小球は、タンパク質の徐放性を提供するように製剤化することができ、同時に微小球製剤内のタンパク質の凝集体の数を減らし、望ましい放出プロファイルを達成し、タンパク質の安定性を向上させる。
【0012】
単語の文脈が異なる意味を示していない限り、次の用語は次のように定義される。
【0013】
本明細書で使用する場合、「微小球」または「微粒子」は、生体適合性マトリックスの封入を含むか、または治療成分を含有する粒子、微小球、微粒子、微粉末などを指すように互換的に使用される。いくつかの実施形態によれば、微小球は、ナノ粒子もナノ球体も含まない。微小球は一般的に眼などのヒトの器官の生理学的条件と生体適合性があり、有害な副作用を引き起こすことはない。結膜下に投与される微小球は、眼の視力を損なうことなく、安全に使用されることができる。いくつかの実施形態では、微小球は、例えば直径または長さが1mm未満の最大寸法を有する。例えば、微粒子は、約500μm未満の最大寸法を有することができる。他のサイズの内、微粒子はまた、約200μm以下の最大寸法を有していてもよく、または約30μmから約50μmまでの最大寸法を有することができる。
【0014】
本明細書で使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的状態を治療するために使用される1つ以上の治療薬または物質を含むポリマーマトリックス以外の微小球の部分を指す。治療成分は、微小球の離散的な領域であってもよいし、微小球全体に均一に分散されてもよい。治療成分の治療薬は、少なくとも1つのタンパク質を含むことができ、一般的には眼に許容可能で、微小球が眼内に配置された時に重大な有害反応を生じない形態で提供される。
【0015】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」は、当該技術分野で公知のようにその共通の意味を有し、及びアミノ酸の1つ以上の鎖から成る大きな生体分子を指すことができる。タンパク質は、代謝反応を触媒すること、DNAを複製すること、刺激に応答すること、及びある場所から別の場所へ分子を送達することを含む生物内の広大な多数の機能を実施することができる。タンパク質は、直鎖状、分枝状、または環状であることができ、及び化学的に合成されるまたは天然に若しくは組換え的に生成されることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質はまた、PEG化タンパク質または翻訳後修飾のタンパク質のような修飾されたタンパク質を含むことができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、「薬剤徐放成分」は、微小球からの治療薬の徐放性を提供するのに有効である微小球の部分を指す。薬剤徐放成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含む微小球のコア領域を覆うコーティングであってもよい。
【0017】
本明細書で使用する場合、「と会合する」は、と混合される、内部に分散される、と結合される、被覆する、または取り囲むことを意味する。
【0018】
用語「生分解性ポリマー」とは、生体内で分解するポリマーまたは複数のポリマーを指し、ポリマーまたは複数のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時またはその後に時間をかけて生じる。「生分解性」及び「生体侵食性」という用語は等価であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3つ以上の異なるポリマー単位を含むポリマーであってもよい。
【0019】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、眼症状などの状態を治療する、または眼若しくは眼の領域に重大な弊害若しくは有害な副作用を引き起こすことなく、眼の傷害若しくは損傷を低減若しくは防止するために必要な薬剤のレベルまたは量を指す。上記を考慮して、タンパク質などの治療薬の治療有効量は、眼症状の少なくとも1つの症状を低減するのに有効な量である。
【0020】
当業者は、本明細書で使用される程度の様々な用語の意味を理解するであろう。例えば、本明細書で量(例えば、「約6%」)を参照する文脈の中で使用するように、「約」という用語は、更に所望の機能を実行する、または所望の結果を達成する所定の量に近い量及びその量を含む量を表す。例えば、「約6%」は6%を含み得、更に所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する6%に近い量を表す。例えば、「約」という用語は、所定の量の10%未満の範囲内、5%未満の範囲内、0.1%未満の範囲内、または0.01%未満の範囲内である量を指すことができる。
タンパク質
【0021】
いくつかの実施形態によれば、製剤または微小球製剤はタンパク質を含み、また本明細書においてタンパク質成分と呼ばれる。タンパク質は、直鎖状、分枝状、または環状であり得る。タンパク質は、融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、その天然起源の形態に比べて短縮型であり得る。タンパク質は、たった1つの単一アミノ酸鎖または2つ以上のアミノ酸鎖を含むことができる。タンパク質は、3つ以上のアミノ酸鎖を含む場合、2つ以上の鎖は共有結合または非共有結合で相互に会合することができる。例えば、アミノ酸鎖は、ジスルフィド結合を介して会合してもよいし、または2つ若しくは鎖は、非共有結合力によってのみ互いに会合することができる。いくつかの実施形態によれば、タンパク質は、合成または翻訳後修飾アミノ酸を含有しない。タンパク質は、(例えば哺乳動物または原核生物の細胞培養によって)組換え、(例えば固相合成によって)合成で生成され、または天然源(例えば、哺乳類若しくはバクテリアの細胞培養物、血漿、血清、植物、菌類など)から単離することができる。
【0022】
製剤中及び微小球製剤中に含まれ、従って、送達されることができるタンパク質の非限定的な実施例としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、二重特異性抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、アンチカリン、DARPin、及び酵素を含む。他の実施例としては、糖タンパク質及び血清アルブミンを含む。使用する場合、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、例えば細胞により生成されたような天然の形態で使用することができ、及び翻訳後修飾を含んでも含まなくてもよい、またはその細胞培養若しくは他の生物学的サンプルからの単離の後に生成された化学的若しくは酵素的に修飾された形態で使用することができる。使用する場合、抗体はキメラであってよい。いくつかの実施形態において、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMであってよい。抗体フラグメントはパパイン(例えば、Fabフラグメント)または抗体のペプシン切断によって生成されるものを含む。より一般的には、有用な抗体フラグメントは、Fab’、F(ab)2、Fabc、及びFvフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、補体抗体フラグメントを使用することができる。抗体フラグメントは全抗体の修飾により製造されるか、または組換えDNA方法論を用いてデノボ合成されるかのいずれかであり、更に現在、従来の技術によって作られた「ヒト化」抗体を含むことができる。「抗体フラグメント」は、全長抗体、一般的にその抗原結合または可変領域の一部を含む。
【0023】
いくつかの実施形態は、抗VEGF抗体またはタンパク質(即ち、特に血管内皮増殖因子タンパク質、若しくはVEGF−Aに結合する抗体またはタンパク質)を含む製剤及び微小球製剤を提供する。有用な抗VEGF抗体としては、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))及びベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))を含むが、これらに限定されない。有用な抗VEGFタンパク質はアフリベルセプト(Eylea(登録商標))(また、VEGF TRAPとして知られている)、VEGF結合DARPin、及びVEGF結合アンチカリンを含む。VEGF Trap(Regeneron Pharmaceuticals,New York)は、ヒト抗体のFc領域(C末端)に結合された2つの異なるVEGF受容体の細胞外ドメインの部分を含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、製剤または微小球製剤は、抗VEGF抗体、抗VEGF受容体抗体、抗PDGF(血小板由来増殖因子)抗体、抗インテグリン抗体、治療的に有効なそれらのフラグメント、及びそれらの組合せから成る群から選択される抗体を含むことができる。
【0024】
別の実施形態では、製剤または微小球製剤は、抗TNF(腫瘍壊死因子)抗体を含むタンパク質またはタンパク質を含むことができる。抗TNF抗体の実施例としては、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、及びゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))を含むが、これらに限定されない。有用な抗TNFタンパク質は、融合タンパク質エタネルセプト(ENBREL(登録商標))を含む。抗TNFタンパク質を含む製剤及び微小球製剤は、ブドウ膜炎及びベーチェット病を治療するのに特に有用であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質は、例えば神経成長因子、酸性線維芽細胞成長因子、及び塩基性線維芽細胞増殖因子などの増殖因子;繊毛様神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、及びグリア細胞系由来神経栄養因子などの神経栄養因子;例えばインターフェロン−γ及びインターロイキン−10などのサイトカイン;リツキシマブなどの抗増殖性化合物;及び組織プラスミノーゲン活性化因子などのフィブリノリジン(fibrinolysing)タンパク質を含むことができる。このようなタンパク質の治療的使用は、一般的に当該技術分野で公知である。
【0026】
従って、いくつかの実施形態では、製剤または微小球製剤は、抗VEGF抗体(特にVEGFに結合する抗体)、抗PDGF抗体、抗VEGF受容体抗体、抗インテグリン抗体、治療的に有効なそれらのフラグメント、及びそれらの組合せから成る群から選択される抗体を含んでいてもよい。
【0027】
血管内皮増殖因子A(VEGF−A、またVEGFとも呼ばれる)は、生体外での内皮細胞の成長及び生体内での血管新生を刺激することができる血管内皮細胞に特効の分泌された分裂促進因子である。VEGF−Aは、異なるアイソフォームで発生する可能性がある。VEGF−A
121を除いてVEGF−Aの全てのアイソフォームは、ヘパリンに結合する。ヒトではVEGF−Aの最も豊富なアイソフォームは、165アミノ酸のポリペプチド、VEGF−A
165である。例えば、Houckら、Mol.Endocrin.5:1806(1991)及びLeungら、Science 246:1306(1989)を参照のこと。
【0028】
従って、いくつかの実施形態は、生分解性ポリマーマトリックスを含む微小球製剤、及びVEGF−A
165に結合する抗体、DARPin、若しくはアンチカリンを含む、それらから本質的に成る、またはそれらから成るタンパク質を提供する。抗体、DARPin、またはアンチカリンは、VEGF−Aの全てのアイソフォームに存在するエピトープを認識することができるため、その同じ抗体、DARPin、またはアンチカリンはVEGF−Aの全てのアイソフォームを認識して結合することができる。例えば、抗体、DARPin、またはアンチカリンは、VEGF
121を含むVEGF−Aの全てのアイソフォームで存在するドメインに結合するVEGF−A受容体の領域においてエピトープを認識して特異的に結合することができる。従って、単一抗VEGF抗体(またはDARPin若しくはアンチカリン)は製剤または微小球製剤中で、VEGF−Aの全てのアイソフォームを認識して特異的に結合することができる。モノクローナル抗体及びヒト化抗VEGF抗体を含み、VEGF−AまたはVEGF受容体に結合する抗体が記載されている。例えば、米国特許第5,955,311号及び米国特許第6,884,879号を参照のこと。ベバシズマブは、ヒトVEGF−Aに特異的に結合し、ヒトVEGF−Aを阻害するモノクローナル抗体の一例である。PDGFに対する阻害抗体も記載されている。例えば、WO2003/025019を参照のこと。従って、微粒子はアンチカリンを含む、本質的にアンチカリンから成る、またはアンチカリンから成るタンパク質を含んでもよい。
【0029】
VEGF(血管内皮増殖因子)または血小板由来増殖因子(PDGF)阻害剤またはその両方を含む製剤または微小球製剤、例えば生体内でVEGF及び/またはPDGFに特異的に結合する抗体または抗体の組合せは、黄斑変性症(滲出型加齢黄斑変性症を含む)、網膜症、糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、鎌状赤血球網膜症、未熟児網膜症、虚血性網膜症、眼の血管新生(眼内の新生血管の異常成長)、脈絡膜血管新生、網膜静脈閉塞に起因する血管新生、角膜血管新生、糖尿病性網膜虚血、及び黄斑浮腫の治療に、それを必要とする患者にとって特に有効であり得る。
【0030】
一実施形態では、製剤または微小球製剤は、生分解性ポリマーマトリックス、並びにそれぞれVEGF及びPDGFに特異的に結合する第1及び第2の抗体、または二重特異性抗体を含み、製剤または微小球製剤は、哺乳動物の眼に製剤または微小球製剤を配置した後、少なくとも30、60、または90日間、生物学的に活性な形態において第1及び第2の抗体または二重特異性抗体の連続的な放出を提供する。一形態において、抗体または二重特異性抗体は、血管内皮増殖因子A(VEGF−A)及び血小板由来成長因子B(PDGF−B)に特異的である。これらの製剤または微小球製剤は、眼の腫瘍、眼の血管新生、脈絡膜血管新生、及び黄斑変性症を治療するために特に有用であり得る。「PDGF−B」は、PDGFのB鎖ポリペプチドを意味する。
【0031】
本発明の製剤及び微小球製剤は、抗体がシステムから解放される時、それが、その指定されたタンパク質標的に特異的に結合するように、抗体の生物学的活性を維持するように設計されている。タンパク質標的への抗体の結合は、タンパク質とそのリガンドまたは受容体との間の干渉を提供することができ、従って、タンパク質/受容体相互作用によって媒介される機能は、抗体によって阻害または減少させることができる。抗体が特異的に結合するか、またはタンパク質(ポリペプチド)標的「と免疫反応性」であるか否かを決定するいくつかの方法は、当該分野で公知である。免疫化学発光メトリックアッセイ(ICMA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び放射性免疫測定法(RIA)は、いくつかの例である。
【0032】
いくつかの実施形態では、製剤及び微小球製剤は、生分解性ポリマーマトリックス及びタンパク質、例えば、VEGFまたは血小板由来成長因子(PDFG)、またはVEGFとPDFG両方と相互作用する(例えば、これらに結合しその活性を減少させるまたは阻害する)1つ以上のモノクローナル抗体、二重特異性抗体、DARPin、アンチカリン、抗体フラグメント、抗体可変領域に由来する組換えポリペプチド、またはそれらの混合物などを含むことができる。例えば、一実施形態によれば、製剤または微小球製剤は生分解性ポリマーマトリックス並びにVEGF及びPDFGに特異的に結合する二重特異性抗体を含み、製剤または微小球製剤は生物学的に活性な形態で抗体の連続的な放出を哺乳動物の眼への配置後の少なくとも90日間提供する。他の実施形態において、製剤及び微小球製剤はVEGF受容体に特異的な生分解性ポリマーマトリックス及び抗体を含むことができる。
【0033】
製剤及び微小球製剤において有用なモノクローナル抗体は、当業者に公知の通常の方法を用いて得ることができる。簡潔に言えば、マウスなどの動物は、VEGFまたはVEGFRのような所望の目標タンパク質またはその一部(抗原)を注射される。目標タンパク質は、担体タンパク質に結合させることができる。動物は、1つ以上の目標タンパク質の注射で追加免疫され、融合の3日前に静脈内(IV)ブースターによって高度免疫される。マウスから脾臓細胞は単離され、骨髄腫細胞に標準的な方法によって融合される。ハイブリドーマは、標準的な方法に従って、標準のヒポキサンチン/アミノプテリン/チミン(HAT)培地で選択されることができる。目標タンパク質を認識する抗体を分泌するハイブリドーマは、標準的な免疫学的技術を用いて同定され、培養され、サブクローニングされ、抗体は、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって精製される。本発明の送達システムの特定の実施形態では、抗VEGFまたは抗VEGFRモノクローナル抗体は、ImClone Systems,Inc.(NY、NY)から得られる。例えば、本製剤は、IMC−18F1の名でImClone Systemsから入手可能な抗体、またはIMC−1121Fabの名の抗体を含むことができる。本発明の薬物製剤に使用され得る別の抗VEGF抗体フラグメントはラニビズマブ、VEGF−Aに結合するFabフラグメントである。本発明の薬物送達システムに有用な別の抗VEGF抗体はベバシズマブ、VEGF−Aに結合するモノクローナル抗体である。
【0034】
タンパク質成分は、液体の誘導体化された微粒子、または粉末の形態であってもよく、それは、生分解性ポリマーマトリックスによって封入されてもよい。通常、噴霧乾燥粒子または粉末状のタンパク質粒子は、約1ミクロン未満の有効平均粒径を有するであろう。いくつかの実施形態において、粒子は、1000ナノメータより約1桁小さな有効平均粒径を有することができる。例えば、粒子は約500ナノメートル未満の有効平均粒径を有することができる。いくつかの微小球製剤において、粒子は約250ナノメートル未満の有効平均粒子サイズ、及び更に別の実施形態では約200ナノメートル未満のサイズを有してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、タンパク質成分は適切な分子量を有することができる。タンパク質の分子量は約10キロダルトン(「kDa」)〜約150kDaの範囲とすることができる。いくつかの実施形態によれば、タンパク質成分の分子量は、約5kDaより大きく、10kDaより大きく、20kDaより大きく、50kDaより大きく、または100kDaより大きくすることができる。いくつかの実施形態によれば、タンパク質成分は、約10kDa〜30kDa、14kDa〜16kDa、14kDa〜21kDa、または20kDa〜50kDaの範囲の分子量を有することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、製剤または微小球製剤に基づくタンパク質は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、または少なくとも300アミノ酸長であってもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、3つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、30〜50アミノ酸長、または100〜500アミノ酸長であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、製剤または微小球製剤は、製剤または微小球製剤の総重量に基づいて、製剤の1.0重量%〜約50重量%までの量のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、タンパク質は、製剤または微小球製剤中に製剤または微小球製剤の総重量に基づいて、約5重量%〜約30重量%、約5重量%〜約40重量%、約10重量%〜約25重量%、または約5重量%、約10重量%、約20重量%、若しくは約30重量%の量のタンパク質が存在することができる。いくつかの実施形態によれば、製剤または微小球製剤は微小球製剤の総重量に基づいて約5重量%、約6重量%、約7重量%のタンパク質、約8重量%のタンパク質、約10重量%のタンパク質、約15重量%のタンパク質、約20重量%のタンパク質、約25重量%のタンパク質、約30重量%のタンパク質、または約35重量%のタンパク質を含む。
賦形剤
【0038】
いくつかの実施形態によれば、製剤または微小球製剤は1つ以上の一般的なクラスの賦形剤を含むことができる。一般的な賦形剤のクラスはアルブミン、緩衝剤、アミノ酸、炭水化物、キレート剤、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、界面活性剤などを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、微小球組成物を含む組成物は、僅かに3クラスの賦形剤を含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、2つのクラスの賦形剤だけを含む。
【0039】
緩衝剤はリン酸緩衝剤、例えば二塩基性リン酸ナトリウム七水和物、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、及び/またはホウ酸塩緩衝剤、例えばホウ酸ナトリウム、ホウ酸、塩化ナトリウム(EU薬局方による)を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、緩衝剤は、製剤または微小球製剤中に使用される唯一の賦形剤である。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0040】
本発明の組成物の特定の実施形態では、シクロデキストリン成分を含む。例えば、治療成分を含む組成物とシクロデキストリン成分を実質的に含まない組成物とを比べて、シクロデキストリン成分は組成物中の治療成分の溶解性を高めるように、組成物中の治療成分の安定性を高めるようにまたは改善するように、治療成分と会合することができる。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の組成物の賦形剤は、シクロデキストリン成分、例えば1種類以上の異なったシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含む。例えば、シクロデキストリン成分は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、それらの誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択されるシクロデキストリンを含むことができる。用語「シクロデキストリン誘導体」は、当該技術分野において一般に理解される最も広い意味を有し、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンの遊離ヒドロキシル基の1つ以上が任意の他の基で置換されている化合物または化合物の混合物を指す。「水溶性」シクロデキストリン誘導体は、水に少なくとも300mg/mLの濃度で溶解する。本明細書に開示される組成物において使用されるシクロデキストリン誘導体は異なる場合がある。α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキストリンの誘導体が使用できる。特定の組成物では、β−シクロデキストリン誘導体、例えばカルシウムスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、ナトリウムスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは使用されることができる。あるいは、γ−シクロデキストリン誘導体、例えばカルシウムスルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン、ナトリウムスルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン、及びヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンは使用されることができる。本明細書で想定されるいくつかの特定の誘導体は、シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体、例えばヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである。
【0042】
シクロデキストリン(CDs)は、CAVASOL(登録商標)として市販されているヒドロキシプロピルγ−CD(「HP−γ−CD」)、CAPTISOL(登録商標)として市販されているスルホブチルエーテル4β−CD(「SBE−CD」)、及びKLEPTOSE(登録商標)として市販されているヒドロキシプロピルβ−CD(「HP−β−CD」)、ヒドロキシプロピルα−シクロデキストリン(「HP−α−シクロデキストリン」)などの化合物として市販されている。
【0043】
使用される場合、シクロデキストリンは、開示された製剤または微小球製剤の特定の重量パーセントを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、シクロデキストリンは、製剤の総重量に基づいて、10重量%〜75重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態によれば、シクロデキストリンは、製剤の総重量に基づいて、30重量%〜70重量%、1重量%〜10重量%、3重量%〜7重量%、または5重量%〜15重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態によれば、シクロデキストリンは製剤または微小球製剤に使用される唯一の賦形剤である。いくつかの実施形態において、シクロデキストリンは、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。いくつかの実施形態によれば、SBE−CD及び緩衝剤は、製剤または微小球製剤中に存在する唯一の賦形剤である。
【0044】
いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、タンパク質成分とは別のアミノ酸を含むことができる。製剤及び微小球製剤中で使用することができる賦形剤アミノ酸の例は、アルギニン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、ヒスチジン、及び/またはグリシン、並びに当業者に公知の他のアミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、第1のアミノ酸は製剤の総重量に基づいて0.5重量%〜2重量%、1重量%〜10重量%、1重量%〜3重量%、4重量%〜7重量%、3重量%〜7重量%、または5重量%〜15重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態によれば、第2のアミノ酸は製剤の総重量に基づいて0.5重量%〜2重量%、1重量%〜10重量%、1重量%〜3重量%、4重量%〜7重量%、3重量%〜7重量%、または5重量%〜15重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態によれば、アミノ酸及び緩衝剤のみが製剤及び微小球製剤中に存在する賦形剤である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0045】
いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は炭水化物を含むことができる。製剤及び微小球製剤中で用いることができる賦形剤炭水化物の例は、トレハロース、イヌリン、またはスクラロース、並びに当業者に公知の他の炭水化物を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、炭水化物は製剤の総重量に基づいて0.5重量%〜2重量%、1重量%〜10重量%、1重量%〜3重量%、4重量%〜7重量%、3重量%〜7重量%、または5重量%〜15重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態によれば、炭水化物及び緩衝剤のみが製剤または微小球製剤中に存在する賦形剤である。いくつかの実施形態において、炭水化物は、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、キレート剤を含むことができる。製剤及び微小球製剤中で使用することができる賦形剤のキレート剤の実施例は、EDTAを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、キレート剤及び緩衝剤のみが製剤または微小球製剤中に存在する賦形剤である。いくつかの実施形態では、キレート剤は、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0047】
いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、ポリエチレングリコールを含むことができる。製剤及び微小球製剤中で使用することができる賦形剤のポリエチレングリコールの実施例はPEG400を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、ポリエチレングリコール及び緩衝剤のみが、製剤または微小球製剤中に存在する賦形剤である。いくつかの実施形態において、ポリエチレングリコールは、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤は、界面活性剤を含むことができる。製剤及び微小球製剤中で使用することができる賦形剤界面活性剤の例はポリソルベート80を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、界面活性剤及び緩衝剤のみが、製剤または微小球製剤中に存在する賦形剤である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、製剤または微小球製剤中に存在する2つの賦形剤の内の1つまたは3つの賦形剤の内の1つである。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、組成物中に存在する賦形剤成分は適切なモル濃度の液体形態であり得る。いくつかの実施形態では、組成物中に存在する1つ以上の賦形剤は、約6mM〜約120mMの範囲のモル濃度を有する。いくつかの実施形態では、賦形剤は、約5mM〜約75mMの範囲の濃度を有する。他の実施形態によれば、賦形剤は、約6mM〜約60mMの範囲の濃度を有する。更に他の実施形態によれば、賦形剤は約6mM、約20mM、約40mM、約60mM、約100mM、及び約120mMなどの濃度を有する。実施形態によれば、賦形剤、例えばスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンは、60mMの濃度を有して使用することができる。
【0050】
賦形剤または複数の賦形剤は、製剤または微小球製剤中に製剤の総重量に基づいて、製剤の0.01重量%〜約50重量%、0.01重量%〜約20重量%、約0.01重量%〜約15重量%、または約15重量%〜約30重量%の量で存在することができる。
生分解性ポリマーマトリックス
【0051】
一実施形態では、微小球は、生分解性ポリマーマトリックスを含む。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤徐放成分の一種である。生分解性ポリマーマトリックスは、1つのポリマーまたは2種以上のポリマーの混合物から生成されることができる。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性微小球を形成するのに有効であり得る。生分解性微小球は、生分解性ポリマーマトリックスと会合したタンパク質成分を含む。
【0052】
微小球で使用するのに適切なポリマー材料または組成物は、眼の機能または生理機能との実質的な干渉を引き起こさないように眼と相性が良く、即ち生体適合性がある材料を含む。このような材料は、少なくとも部分的にまたは実質的に完全に生分解性または生体侵食性であることができる。
【0053】
有用なポリマー材料の例としては、分解されて結果的にモノマーを含む生理学的に許容される分解生成物と成る有機エステル及び有機エーテル由来の、並びに/または、有機エステル及び有機エーテルを含む材料を含むが、これに限らない。また、無水物、アミド、オルトエステルなど由来の、及び/または、これらを含むポリマー材料はそれらだけで、または他のモノマーと組み合わせても、使用を見出し得る。ポリマー材料は、付加ポリマーまたは縮合ポリマー、有利には縮合ポリマーであることができる。ポリマー材料は、例えば多くて架橋されたポリマー材料の約5%未満、または約1%未満の軽い架橋のように、架橋または非架橋でよい。ほとんどの場合、炭素及び水素の他に、ポリマーは酸素及び窒素の少なくとも1つ、有利には酸素を含む。酸素はオキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えばカルボン酸エステルのような非オキソカルボニルなどとして存在してもよい。窒素は、アミド、シアノ及びアミノとして存在してもよい。制御された薬剤送達用のカプセル化を記載する、Heller,Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery,In:CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,Vol.1,CRC Press,Boca Raton,Fla.1987,pp 39−90に記載のポリマーは本微小球で使用を見出すことができる。
【0054】
更に関心があるのはヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか、及び多糖類である。関心のポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトン、及びそれらの組合せのポリマーを含む。一般的に侵食は乳酸ラセミ体で実質的に強化されるが、L−ラクテートまたはD−ラクテートを用いることによって、ゆっくり侵食するポリマーまたはポリマー材料が得られる。
【0055】
有用な多糖類の中では、アルギン酸カルシウム、及び官能化セルロース、例えば特に水不溶性で約5kD〜500kDの分子量であることを特徴とするカルボキシメチルセルロースエステルであるが、これらに限らない。
【0056】
関心のあるその他のポリマーとしては、生体適合性であり、生分解性及び/または生体侵食性であることができるポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、及びそれらの組合せを含むが、これに限らない。
【0057】
使用のためのポリマーまたはポリマー材料のいくつかの特徴は、生体適合性、タンパク質との適合性、微小球を製造する際のポリマーの使用の容易性、少なくとも約2週間の、いくつかの実施形態においては約1ヶ月以上の生理学的環境における半減期、及び水への溶解性(または溶解性の欠如)を含むことができる。
【0058】
微小球を形成するために含まれる生分解性ポリマー材料は、酵素的不安定性または加水分解不安定性を受けることがある。水溶性ポリマーは加水分解性不安定架橋または生分解性不安定架橋で架橋され得、有用な水不溶性ポリマーを提供する。安定度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーが使用されているかどうか、ポリマーの混合物を用いること、及びポリマーが末端酸基を含むかどうかに応じて、広く変化させることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、微小球に使用されるポリマー組成物の相対平均分子量は、ポリマーの生分解、及びこれ故に微小球製剤の拡張された徐放性プロファイルを制御するのに同様に重要である。同じまたは異なるポリマー組成物の異なる分子量は放出プロファイルを調節するように微小球中に含まれてもよい。特定の製剤及び微小球製剤において、ポリマーの相対平均分子量は約9kD〜約64kD、約10kD〜約54kD、または約12kD〜約45kDの範囲であることができる。
【0060】
いくつかの微小球ではグリコール酸及び乳酸のコポリマーが使用され、生分解速度はグリコール酸の乳酸に対する比によって制御される。最も急速に分解するコポリマーは、ほぼ等しい量のグリコール酸及び乳酸を有する。同等以外の比を有するホモポリマーまたはコポリマーは、分解に対してより耐性がある。グリコール酸の乳酸に対する比はまた、微小球の脆性に影響を与える。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマー中のポリ乳酸のモル百分率(モル%)は15モル%〜約85モル%の間とすることができる。いくつかの実施形態では、(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸のモル百分率は、約35モル%〜約65モル%の間である。いくつかの実施形態では、50モル%のポリ乳酸及び50モル%のポリグリコール酸を有するPLGAコポリマーは、ポリマーマトリックス中で使用されることができる。いくつかの実施形態では、75モル%のポリ乳酸及び25モル%のポリグリコール酸を有するPLGAコポリマーは、ポリマーマトリックス中で使用されることができる。
【0061】
結膜下微小球の生分解性ポリマーマトリックスは、2つ以上の生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。例えば、微小球は、第1の生分解性ポリマー及び異なる第2の生分解性ポリマーの混合物を含むことができる。生分解性ポリマーの1つ以上は末端酸基を有していてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、使用される生分解性ポリマーは、約0.1dL/g〜約1.0dL/gの範囲内の固有粘度を有することができる。いくつかの実施形態によれば、使用される生分解性ポリマーは、約0.5dL/g〜約1.0dL/gの範囲内の固有粘度を有することができる。
【0063】
微小球を形成するために、単独で、または組み合わせて使用されることができるいくつかのポリマーの実施例は、以下の表Aに列挙されたものを含み、市販のポリマーの仕様、データシート、及び試験データは、その全体が、参照され盛り込まれている。
【0064】
生分解性ポリマー微小球は、2つ以上の生分解性ポリマーの混合物を含むことができる。例えば、微小球は、第1の生分解性ポリマー及び異なる第2の生分解性ポリマーの混合物を含むことができる。生分解性ポリマーの1つ以上が末端酸基を有していてもよい。いくつかの実施形態によれば、微小球は、1種類だけの生分解性ポリマーを含む。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、生分解性ポリマーは製剤の総重量に基づいて微小球製剤の75重量%〜94重量%を含む。他の実施形態によれば、生分解性ポリマーは微小球製剤の総重量に基づいて微小球製剤の75重量%〜85重量%を含む。他の実施形態によれば、生分解性ポリマーは微小球製剤の総重量に基づいて微小球製剤の85重量%〜95重量%を含む。
微小球
【0066】
タンパク質含有微小球は、適切な方法を用いて製造することができる。一実施形態において、タンパク質含有微小球はPCT公報第2011/041642号に記載されたような水エマルジョンプロセスにおいて油中の水により製造されることができる。水エマルジョンプロセスにおける油中で水を介して微小球を製造するその方法は全体が参照され本明細書に盛り込まれている。
【0067】
微小球からのタンパク質成分の放出は、放出されるタンパク質成分の量の初期の突発放出に続く漸増を含む、または放出はタンパク質成分の放出における初期遅延に続く放出の増加を含むことができる。
【0068】
微小球からのタンパク質成分の放出の比較的一定の速度を提供することが望ましい場合がある。例えば、タンパク質成分は微小球の寿命のために1日当たり約2μg〜約10μgの量で放出されることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態によれば、タンパク質成分は1日当たり約4μg、1日当たり5μg、1日当たり6μg、1日当たり7μgなどの量で放出されることが望ましい場合がある。しかし、放出速度は生分解性ポリマーマトリックスの配合設計に依存して増加または減少のいずれかに変えることができる。更に、タンパク質成分の放出プロファイルは、1つ以上の直線部分及び/または1つ以上の非直線部分を含むことができる。いくつかの実施形態では、放出速度は、微小球が分解または侵食し始めるとゼロより大きい。
【0069】
微小球はモノリシック、即ちポリマーマトリックスによって均一に分配された、またはカプセル化された活性剤または薬剤を有するものであってもよい。そしてそこで活性剤の蓄積がポリマーマトリックスによってカプセル化される。製造の容易さのために、微小球はカプセル化された形態を超える利点を示すことができる。しかし、カプセル化された微小球によって得られる更に優れた制御はいくつかの状況において有益であり得る。そしてその状況下では薬剤の治療レベルは狭いウィンドウ内にある。更に、タンパク質成分を含む治療成分はマトリックス中に不均質なパターンで分布されてもよい。例えば、微小球は、微小球の第2部分と比較してタンパク質成分のより高い濃度を有する部分を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示された微小球は針で投与するように約5μmと約1mmとの間、または約10μmと約0.2mmとの間のサイズを有することができる。実施形態によれば、微小球は約0.15mmのサイズを有することができる。針で注入される微小球の場合、微小球の最大寸法が微小球に、針のような投与装置、例えば22ゲージ針、25ゲージ針、27ゲージ針などを通って移動することを可能にする限り、微小球は任意の適切な寸法を有することができる。
【0071】
結膜下空間の体積及びタンパク質の活性または溶解度の量に応じた1回の投与における微小球の総重量、最適な量。いくつかの実施形態によれば、投与量は、用量当たり微小球の約1mgから約40mgである。いくつかの実施形態において、投与量は、0.1mg〜1mg、10mg〜30mg、10mg〜20mgなどの間である。実施形態では、1回の注射は約1mg、または約5mg、または約10mg、または約15mg、または約17mgまたは約20mg、または約30mg、または約35mgの含有された治療成分を含む微小球を含有することができる。非ヒト個体の場合、微小球の寸法及び総重量は個体の種類に依存してより大きくてもより小さくてもよい。
【0072】
タンパク質のポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLGA」)ベースの微小球製剤が従来の溶液製剤以上に有する利点は、微小球製剤はより長い期間に渡って、いくつかの場合では数週間または数ヶ月に渡って、活性タンパク質を送達することができることである。
【実施例】
【0073】
本開示の範囲を限定するものではないが、例示的な実施形態は、以下の実施例により記載される。
実施例1
【0074】
賦形剤の含有により高度に濃縮されたタンパク質溶液の安定化。
【0075】
一実施例によれば、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に賦形剤を含み及び賦形剤を含まないで配合された100mg/mlのアンチカリンの例示的な実施形態の溶液の可溶性タンパク質の回収率は、37℃で1ヶ月後に、試験された。最初の製剤によれば、アンチカリンの100mg/mL溶液は6mMのモル濃度を有するSBE−CDを含むPBS中で調製された。6mMのSBE−CDは、製剤の総重量に基づいて10.6重量%の量で製剤中に存在した。第2の製剤によれば、アンチカリンの100mg/mL溶液は、60mMのSBE−CDを含むPBS中で調製された。60mMのSBE−CDは、製剤の総重量に基づいて54.1重量%の量で製剤中に存在した。第3の製剤によれば、アンチカリンの100mg/mLの溶液は、120mMのSBD−CDを含むPBS中で調製された。120mMのSBE−CDは、製剤の総重量に基づいて製剤中に70.2重量%の量で存在した。第1の比較製剤によれば、アンチカリンの100mg/mL溶液は、SBE−CDを含まずにPBS中で調製された。溶液は37℃で1ヶ月間保存され、溶液中で回収可能な可溶性タンパク質の割合を決定するために分析された。その結果は
図1に示される。
【0076】
図1に示すように、第1の比較製剤は37℃で1ヶ月の恒温放置の後、可溶性タンパク質の回収率39%の低下を示した。可溶性タンパク質の回収率の低下は不溶性微粒子の形成をもたらすタンパク質凝集に起因しているであろう。しかし、
図1に示されるように、6mM及び60mM濃度のSBE−CDをアンチカリン100mg/mLのPBS溶液へ添加することにより、37℃で1ヶ月間の恒温放置後に可溶性タンパク質の回収率はそれぞれ19%及び23%向上した。試験された120mMの最高SBE−CD濃度では、SBE−CDを含まない第1の比較製剤と比較して、可溶性タンパク質の回収率の改善は僅か10%である。驚くべきことに、可溶性タンパク質回収率の最も高い割合は、60mMのSBE−CDのモル濃度で生じ、SBE−CDの最高モル濃度でテストされた製剤ではなかった。第1、第2、第3、及び第4の製剤は、PBS中に追加の賦形剤を含まない製剤と比較して改善されたタンパク質の回収率を示した。
実施例2
【0077】
賦形剤の含有による加速温度でのアンチカリン溶液の安定化。
【0078】
別の例示的な実施形態によれば、アンチカリンタンパク質の安定性は50℃の加速温度で評価された。この実施例によれば、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に賦形剤を含み及び含まないで配合された10mg/mlのアンチカリンの例示的な実施形態の溶液の可溶性タンパク質の回収率は、50℃で2日後に試験された。第4の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液はSBE−CDを含むPBS中で調製された。SBE−CDは、製剤の総重量に基づいて、46.0重量%の量で製剤中に存在した。第5の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mLの溶液はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(「HP−β−CD」)を含むPBS中で調製された。HP−β−CDは、製剤の総重量に基づいて、35.2重量%の量で製剤中に存在した。第6の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mLの溶液は、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(「HP−γ−CD」)を含むPBS中で調製された。HP−γ−CDは、製剤の総重量に基づいて、38.4重量%の量で製剤中に存在した。第7の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液はトレハロースを含むPBS中で調製された。トレハロースは、製剤の総重量に基づいて、35.2重量%の量で製剤中に存在した。第2の比較処方によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液は、賦形剤を加えないPBS中で調製された。溶液は50℃に保持されたオーブン内に2日間保存された後、溶液中の回収可能な可溶性タンパク質の割合を決定するために分析された。その結果を
図2に示す。
【0079】
図2はPBS中に賦形剤を加えて及び加えずに配合された10mg/mLのアンチカリン溶液を50℃のオーブン内で2日間恒温放置した後の可溶性タンパク質の回収率を示す。
図2に示されるように、比較製剤2の可溶性タンパク質の回収率は約66%であった。示されるように、(第4製剤中の)SBE−CDまたは(第7製剤中の)トレハロースのいずれかの添加は、可溶性タンパク質の回収率を約18%改善し、一方(第5製剤中の)HP−β−CDまたは(第6製剤中の)HP−γ−CDの添加は可溶性タンパク質の回収率を12%改善させた。驚くべきことに、炭水化物トレハロースを含む製剤はSBE−CDを含む製剤と同様に高い可溶性タンパク質回収率を示した。第4、第5、第6、及び第7の製剤は全てがPBS中に追加の賦形剤を含有しない製剤と比較して改善されたタンパク質の回収率を示した。
【0080】
更に別の例示的な実施形態によれば、アンチカリンタンパク質の安定性は、50℃の加速温度で評価された。この実施例によれば、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に賦形剤を含み及び賦形剤を含まないで配合された10mg/mlのアンチカリンの例示的な実施形態の溶液の可溶性タンパク質の回収率は、50℃で5日後に試験された。第8の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液はPEG400を含むPBS中で調製された。PEG400は、製剤の総重量に基づいて54.6重量%の量で製剤中に存在した。第9の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液はデキストランを含むPBS中で調製された。デキストランは、製剤の総重量に基づいて63.7重量%の量で製剤中に存在した。第10の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液は、グリシンを含むPBS中で調製された。グリシンは、製剤の総重量に基づいて4.8重量%の量で製剤中に存在した。第11の製剤によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液はプロリンを含むPBS中で調製された。プロリンは、製剤の総重量に基づいて、7.1重量%の量で製剤中に存在した。第3の比較処方によれば、アンチカリンの10mg/mL溶液は賦形剤を含まないPBS中で調製された。溶液は50℃に保持されたオーブン内に5日間保存された後、溶液中の回収可能な可溶性タンパク質の割合を決定するために分析された。その結果は
図3に図示されている。
【0081】
図3はPBS中に賦形剤を含み及び賦形剤を含まないで配合された10mg/mLのアンチカリン溶液を50℃のオーブン内で5日間恒温放置した後の可溶性タンパク質の回収率を示す。ここで、結果は、追加の賦形剤を含まないタンパク質溶液と比較した場合、全ての賦形剤で、可溶性タンパク質の回収が改善する訳ではないことを示している。例えば、それぞれアミノ酸グリシン及びプロリンの添加を含む第10及び第11の製剤は、アンチカリンの可溶性回収率を増加させた。第8及び第9の製剤では、それぞれPEG400及びデキストランの添加はアンチカリンの可溶性回収率を7%〜11%減少させた。
実施例3
【0082】
PLGA系アンチカリンの微小球の製造及び試験
【0083】
例示的な実施形態によると、PLGA系アンチカリンの微小球は、ダブルエマルジョン溶媒蒸発法を用いて製造した。これらの微小球を製造する方法は、ウォーター−イン−オイル−イン−ウォーター(W/O/W)プロセスとして知られており、開示されている。例えば、PCT公報第2011/041642号において、そこに開示されている微小球を製造する方法は、参照され本明細書に明確に盛り込まれている。この例によれば、プロセスは4℃〜10℃付近の温度で実行され、バッチ間再現性が向上し、及びアンチカリンの安定性が増大する。
【0084】
PLGAポリマーネットワーク内にタンパク質の実験的添加及びタンパク質の質を決定するために、カプセル化されたタンパク質、及びその可溶性分解物は二段階抽出法を用いて乾燥微小球から抽出され、続いてSEC分析された。アンチカリンの分解生成物は2つのカテゴリー、高分子量(「HMW」)種及び低分子量(「LMW」)種に分類された。HMW種は、アンチカリンのモノマーの分子量よりも高い分子量を有するアンチカリンの凝集体であり、一方LMW種はアンチカリンモノマーの分子量よりも低い分子量を有するアンチカリンのフラグメントである。
【0085】
調製された微小球の放出プロファイルは、100mMのリン酸塩、37℃の温度でpH7.4から成る放出媒体を用いて撹拌しないで生体外で評価された。全ての試料は2組調製された。それぞれ予め設定された時点で、溶液の90%は分析用にサンプリングされ、サンプリングされた体積は新しい放出媒体の同じ体積で置換された。
実施例4
【0086】
PLGA系微小球におけるアンチカリンのカプセル化
【0087】
以下の表Bは、PLGA系微小球中のアンチカリンのいくつかの製剤の実施例を示す。表Bに示されるように、いかなる賦形剤も含まないPLGA系微小球製剤は約78.6%のカプセル化効率を有し、11.4%の可溶性凝集体を含む。表に示されるように、選択の賦形剤の添加は、有利に可溶性凝集組成物を11.4%から3.9%へと低くに減少させた。
【0088】
表Bに示されるように、SBE−CDを含有した製剤は、3.9%〜4.7%[凝集体の3倍の減少]の範囲の可溶性凝集体の最低量であった。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、この結果は、微小球のプロセス条件及び放出条件からタンパク質を保護するSBE−CDの能力を示すことができる。興味深いことに、アルギニン単独の添加は、可溶性凝集体を減少させる効果をほとんど有していないが、単独またはSBE−CDと組み合わせて使用される場合、それはタンパク質のカプセル化効率を向上させた。トレハロースはまた、微小球製剤中の凝集体の減少を示した。驚くべきことに、SBE−CDとアルギニンとの組合せは、凝集物を減少させること、及びPLGA微小球の調製方法におけるカプセル化効率を最大化することとに相乗効果があった。
【0089】
凝集物を最小限にすることにおいて、表Cはこの組合せのより広い適用を示す。他のPLGAポリマーの組合せ中にこれらの賦形剤を含有させると、約5%の凝集体濃度を有する微小球が生成する。
実施例5
【0090】
PLGA系微小球からのアンチカリンの徐放性
【0091】
実施例3に記載したようにPLGA系の微小球が製造され、試験された。
図4及び
図5はアンチカリンの異なる放出プロファイルを表示し、微小球組成物及び製造プロセスの変更によって異なるバースト、放出速度、及び持続時間を目標にするようにアンチカリンの放出を調節する能力を示す。
【0092】
図4及び
図5は特定の賦形剤のPLGA系微小球への含有の結果生じるいくつかの有益な特性、例えば2〜3ヶ月間の徐放ができる製剤の能力を示す。
図4に示すように、賦形剤を有する微小球製剤は安定した連続的な放出を示したが、一方、賦形剤なしの微小球製剤の放出速度は7日後に急に減速した。賦形剤を含むPLGA系微小球は、約77%の累積放出とほぼ完全な回収率を示したが、賦形剤を含まないPLGA系微小球は、約47%の累積放出を示した。
図5は、同じプロセスパラメータで異なる賦形剤を使用してバースト及び放出速度を調節する能力を示す。
実施例6
【0093】
PLGA系微小球からのアンチカリンの放出に及ぼすポリマーの影響
【0094】
ポリマー特性、例えば固有粘度(「IV」)、ガラス転移温度、及び分子量は、タンパク質のカプセル化及び放出の度合いを促進することができる。異なるIVを有する3ポリマー(Resomer(登録商標)RG 755S、RG 753S、及びRG 752S)では、微小球製剤で評価された。表Dは、カプセル化及びバーストに及ぼすポリマーの固有粘度の効果を示す。表は、同じプロセスと同じの賦形剤組成物を用いたが、RG755Sを含む微小球製剤は最高のカプセル化効率、最高のタンパク質品質(例えば可溶性凝集体の最低割合)、及び最低バーストを有することが示されたことを示す。
【0095】
【0096】
図6は異なるIVを有するポリマーから製造された微小球からのアンチカリンの放出を示す。最高のIVを有するRG755Sから製造された微小球は徐放性を示し、一方、RG753S及びRG752Sから生成された微小球は7日後に平坦化された放出曲線を示した。
【0097】
ポリマーブレンドは、PLGA系微小球からのアンチカリンのバースト及び放出速度に影響を与えることができる。
図7に示すようにRG755Sは、微小球からのアンチカリンのバーストを低下させ、放出速度を増大させるように、より親水性のポリマーとブレンドされることができる。13対1の割合でRG755SとRG502Hのポリマーをブレンドすることにより、主にRG755Sを有する微小球製剤よりも低いバースト及びより速い放出速度を有する微小球製剤を得た。しかし、放出期間は1ヶ月に減少した。
実施例7
【0098】
PLGA系微小球から放出されたアンチカリンの結合活性
【0099】
選択PLGA系の微小球から放出されたアンチカリンの結合活性は、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)により測定された。活性は、ELISA濃度のSEC濃度に対する比によって決定された濃度の割合として定義される。
図8は2ヶ月間PLGA系微小球から放出されたアンチカリンの結合活性を示す。放出タンパク質は、賦形剤を有する微小球製剤の場合70%より高い、及び賦形剤を含まない微小球製剤の場合50%より高い結合活性を有して放出期間全体に渡って活性である。
実施例8
【0100】
抗体含有PLGA系微小球の製造、試験、及び放出
【0101】
更に別の実施例によれば、PLGA系微小球は実施例3に記載されたように抗VEGFタンパク質、アンチカリンの代わりに抗体、ベバシズマブを用いて製造され、試験された。
図9はアンチカリンを含むPLGA系微小球製剤及びベバシズマブを含むPLGA系微小球製剤との放出プロファイルを比較する。データは、アンチカリンを送達するための徐放性製剤を開発するのに利用されたプロセス及び製剤が、持続期間中に渡り活性タンパク質を送達するように149kDaの分子量を有する完全長モノクローナル抗体に適用されることができることを示している。
【0102】
本発明は特定の好ましい実施形態及び実施例の文脈で開示されてきたが、本発明は、具体的に開示された実施形態を越えて、他の代替実施形態及び/または本発明の使用、並びに明らかな変更、並びにそれらの等価物にまで拡大解釈されることは当業者によって理解されるであろう。また、本発明のバリエーションの数を示し詳細に説明してきたが、本発明の範囲内にある他の変更は、本開示に基づいて当業者には容易に明らかであろう。また、実施形態の特定の特徴及び態様の様々な組合せまたは部分的組合せが行われ、そして更に、本発明の範囲内に入ることができると考えられる。したがって、開示された実施形態の様々な特徴及び態様は、開示された発明の異なるモードを実行するために互いに組み合わせ、または置換できることは言うまでもない。従って、本明細書に開示される本発明の範囲は上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきものではなく、特許請求の範囲の公正な解釈によってのみ決定されるべきであることが意図される。