【文献】
Science,2013年 1月 3日,Vol.339,pp.823-826,[published online Jan 3, 2013]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のIn−PCRプライマーが0.05〜0.09μMの濃度を含み、前記第1のOut−PCRプライマーが少なくとも0.1μMの濃度を含む、請求項1に記載の方法。
前記第2ラウンドのPCRが、前記第1のアンプリコンのゲノムDNA標的部位と結合するように設計された第2のOut−PCRプライマーおよび前記第1のアンプリコンの組み込まれたポリヌクレオチドドナー配列と結合するように設計された第2のIn−PCRプライマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.概要
部位特異的ヌクレアーゼによってターゲッティングされた植物事象の迅速スクリーニング、同定および特性決定のための新規方法をここで開示した。この方法は、第1および第2の増幅反応によるゲノム標的遺伝子座内のドナーポリヌクレオチドの組込みを解析するために使用され得る。第1および第2の増幅反応は、ゲノム遺伝子座内にターゲッティングされたドナーDNAポリヌクレオチドの3’および/または5’接合部配列のスクリーニングのための「In−Out」PCR増幅反応である。3’および/または5’接合部配列を含有する増幅産物の存在は、ドナーDNAポリヌクレオチドが、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に存在することを示す。
【0017】
開示されるスクリーニングアッセイは、ターゲッティングされた導入遺伝子挿入事象を同定し、得るための高品質、ハイスループットプロセスを説明する。スクリーニングアッセイの展開によって、多数の植物事象が解析され、スクリーニングされて、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを有する特定の事象を選択すること、また偽陽性結果からこれらの事象を識別することが可能となる。さらに、開示された方法は、サンプルのサブセットの迅速かつ効率的な同定を可能にするハイスループットアッセイとして展開され得、サンプルのサブセットは、次いで、さらにその他の分子確認方法によって解析できる。ここで開示される主題は、新規スクリーニング方法を使用して選択されるヌクレアーゼによってターゲッティングされた植物事象を含む植物および植物細胞を含む。さらに、方法論は、任意の植物種の解析のために容易に適用可能である。
【0018】
II.用語
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本願が支配する。文脈によって別に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許およびその他の参考文献は、特許または特許公報の特定の節のみが、参照により組み込まれると示されない限り、個々の刊行物または特許出願が各々、具体的に、個別に、参照により組み込まれるよう示されるように、すべての目的のために参照によりその全文が組み込まれる。
【0019】
この開示をさらに明らかにするために、以下の用語、略語および定義を提供する。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contains)」または「含有している(containing)」またはその任意のその他の変形は、非排他的である、または制約がないものとする。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されていないか、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置に特有ではないその他の要素を含み得る。さらに、逆の意味が明確に記載されない限り、「または」とは、包含的またはを指し、排他的またはを指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれによっても満たされる:Aが真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)、Bは真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方とも真である(または存在する)。
【0021】
用語「発明」または「本発明」は、本明細書において、非制限的用語であり、特定の発明のいずれか単一の実施形態を指すものではなく、本願において開示されるようなすべての可能性ある実施形態を包含する。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「植物」は、全植物および任意の子孫、細胞、組織または植物の一部を含む。用語「植物の部分」は、例えば、限定するものではないが、種子(成熟種子、種皮を伴わない未熟種子および未熟胚を含む)、植物の切り取ったもの、植物細胞、植物細胞培養物、植物器官(例えば、花粉、胚、花、果実、シュート、葉、ルート、茎および関連外植片)を含めた植物の任意の部分を含む。植物組織または植物器官は、種子、カルスまたは構造単位もしくは機能単位に組織化される植物細胞の任意のその他の群であり得る。植物細胞または組織培養物は、細胞または組織が得られた植物の生理学的および形態学的特徴を有する植物を再生可能であり、植物と実質的に同一の遺伝子型を有する植物を再生可能であり得る。対照的に、一部の植物細胞は、再生されず植物を製造できない。植物細胞または組織培養物中の再生可能細胞は、胚、プロトプラスト、成長点細胞、カルス、花粉、葉、葯、ルート、根端、シルク、花、カーネル、穂、穂軸、穀皮または柄であり得る。
【0023】
植物の部分は、収穫可能な部分および後代植物の増殖のために有用な部分を含む。増殖のために有用な植物の部分として、例えば、限定するものではないが、種子、果実、切り取ったもの、実生、塊茎および台木が挙げられる。植物の収穫可能な部分は、例えば、限定するものではないが、花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子およびルートを含めた植物の任意の有用な部分であり得る。
【0024】
植物細胞は、植物の構造的および生理学的単位である。植物細胞は、本明細書において使用される場合、プロトプラストおよび部分的な細胞壁を有するプロトプラストを含む。植物細胞は、単離された単細胞または細胞の凝集体(例えば、脆弱なカルスおよび培養細胞)の形態であってもよく、より高度に組織化された単位(例えば、植物組織、植物器官および植物体)の部分であってもよい。したがって、植物細胞は、プロトプラスト、配偶子生成細胞または全植物体に再生できる細胞もしくは細胞の集合であり得る。そのようなものとして、複数の植物細胞を含み、全植物体に再生可能である種子は、本明細書における実施形態において「植物の部分」と考えられる。
【0025】
用語「プロトプラスト」は、本明細書において使用される場合、その細胞壁が完全にまたは部分的に除去されており、その脂質二重膜がむき出しになっている植物細胞を指す。通常、プロトプラストは、細胞培養物または全植物体に再生する能力を有する、細胞壁を有さない単離された植物細胞である。
【0026】
本明細書において使用される場合、「内因性配列」は、生物においてまたは生物のゲノムにおいて、その天然の位置におけるポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドの天然形態を規定する。
【0027】
用語「単離された」は、本明細書において使用される場合、その天然環境から取り出されたことを意味する。
【0028】
用語「精製された」は、本明細書において使用される場合、天然のまたは自然の環境において分子または化合物と普通関連している夾雑物を実質的に含まない形態の分子または化合物の単離に関し、元の組成物のその他の成分から分離されている結果として純度が増大していることを意味する。用語「精製された核酸」は、本明細書において限定されるものではないが、ポリペプチド、脂質および炭水化物を含めたその他の化合物から分離されている核酸配列を説明するために本明細書において使用される。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、同義的に使用され、単数形の核酸、複数形の核酸、核酸断片、それらの変異体または誘導体および核酸構築物(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)およびプラスミドDNA(pDNA))を包含し得る。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非翻訳5’および/または3’配列およびコード配列(単数または複数)を含めた、全長cDNA配列のヌクレオチド配列またはその断片を含有し得る。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非修飾リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドを含み得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成され得る。例えば、ポリヌクレオチドまたは核酸は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNAから構成され得る。DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子は、一本鎖、二本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得る。前記の用語はまた、ポリヌクレオチドまたは核酸の、化学的に、酵素によって、および代謝によって修飾された形態も含む。
【0030】
特定のDNAは、その配列が、デオキシリボヌクレオチド塩基対合のルールに従って決定されるその相補体を指すということが理解される。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「遺伝子」は、機能的生成物(RNAまたはポリペプチド/タンパク質)をコードする核酸を指す。遺伝子は、機能的生成物をコードする配列に先行する(5’非コード配列)および/または後続する(3’非コード配列)調節配列を含み得る。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。「調節配列」は、転写、RNAプロセシングもしくは安定性または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼす、コード配列の上流(例えば、5’非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(例えば、3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指す。調節配列として、例えば、限定するものではないが、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造が挙げられる。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、単数形のポリペプチド、複数形のポリペプチドおよびその断片を含む。この用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指すものであって、特定の長さまたは大きさの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アミノ酸鎖および2個以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される任意のその他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、以下の用語は、本明細書において「ポリペプチド」と同義的に使用される。ポリペプチドは、自然の生物学的供給源から単離される場合も、組換え技術によって製造される場合もあるが、特定のポリペプチドが特定の核酸に必ずしも翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、例えば、限定するものではないが、化学合成によってを含め、適当な方法で作製され得る。
【0034】
対照的に、用語「異種」は、参照(宿主)生物中ではその位置に普通には見られないポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを指す。例えば、異種核酸は、普通は異なるゲノム位置で参照生物中に見られる核酸であり得る。さらなる例として、異種核酸は、参照生物において普通には見られない核酸であり得る。異種ポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを含む宿主生物は、異種ポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを宿主生物中に導入することによって製造され得る。特定の例では、異種ポリヌクレオチドは、対応する天然ポリヌクレオチドとは異なる形態で供給源生物中に再導入される、天然コード配列またはその一部を含む。特定の例では、異種遺伝子は、対応する天然遺伝子とは異なる形態で供給源生物中に再導入される、天然コード配列またはその一部を含む。例えば、異種遺伝子は、天然宿主中に再導入される非天然調節領域を含むキメラ遺伝子の一部である天然コード配列を含み得る。特定の例では、異種ポリペプチドは、対応する天然ポリペプチドとは異なる形態で供給源生物中に再導入される天然ポリペプチドである。
【0035】
異種遺伝子またはポリペプチドは、キメラまたは融合ポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子を製造するよう別の遺伝子またはポリペプチドと融合している、機能的ポリペプチドまたは機能的ポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子またはポリペプチドであり得る。特定の実施形態の遺伝子およびタンパク質として、具体的に例示される全長配列およびこれらの配列の部分、セグメント、断片(連続断片ならびに全長分子と比較して内部および/または末端欠失を含む)、変異体、突然変異体、キメラおよび融合物が挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「修飾」は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの低減された、実質的に排除された、または排除された活性をもたらすポリヌクレオチドにおける変化、ならびにポリペプチドの低減された、実質的に排除された、または排除された活性をもたらす本明細書において開示されるポリペプチドにおける変化を指し得る。あるいは、用語「修飾」は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの増大または増強された活性をもたらすポリヌクレオチドにおける変化、ならびに本明細書において開示されるポリペプチドの増大または増強された活性をもたらすポリペプチドにおける変化を指し得る。このような変化は、限定するものではないが、欠失すること、突然変異させること(例えば、自発性突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、変異誘発遺伝子によって引き起こされる変異原性またはトランスポゾン突然変異誘発)、置換すること、挿入すること、下方制御すること、細胞位置を変更すること、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの状態を変更すること(例えば、メチル化、リン酸化またはユビキチン化)、補因子を除去すること、アンチセンスRNA/DNAの導入、干渉RNA/DNAの導入、化学物質修飾、共有結合修飾、UVまたはX線を用いる照射、相同組換え、有糸分裂組換え、プロモーター置換方法および/またはそれらの組み合わせを含めた、当技術分野で周知の方法によって行われ得る。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「誘導体」とは、本開示において示される配列の修飾を指す。このような修飾の例示的なものとして、作物種における、本明細書において開示されるコード配列の機能を保存するか、わずかに変更するか、または増大する、本明細書において開示されるコード配列の核酸配列に関連する、1個または複数の塩基の置換、挿入および/または欠失がある。このような誘導体は、例えば、配列構造を予測し、最適化するためのコンピュータモデリング技術を使用して、当業者によって容易に決定され得る。したがって、用語「誘導体」はまた、本開示の実施形態の製造において使用するための、開示される機能を有することができるような、本明細書において開示されるコード配列と実質的な配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0038】
用語「プロモーター」とは、核酸コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。例では、制御されたコード配列は、プロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、天然の遺伝子からその全体が導かれてもよく、プロモーターは、自然界で見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよく、またはプロモーターはさらに、合理的に設計されたDNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞型において、または発達の異なる段階で、または異なる環境もしくは生理学的条件に応じて遺伝子の発現を指示し得るということは、当業者によって理解される。前記のプロモーターのすべての例は、当技術分野で公知であり、異種核酸の発現を制御するために使用される。ほとんどの細胞型において、ほとんどの時間で遺伝子の発現を指示するプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。さらに、当業者は、調節配列の正確な境界を描こうとしてきたが(多くの場合には、不成功に)、種々の長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有し得ると理解されるようになった。特定の核酸のプロモーター活性は、当業者が精通する技術を使用してアッセイされ得る。
【0039】
用語「作動可能に連結された」は、核酸配列の一方の機能がもう一方によって影響を受ける、単一の核酸断片での核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターがそのコード配列の発現を達成できる(例えば、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合に、プロモーターは、コード配列と作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で調節配列と作動可能に連結され得る。
【0040】
用語「発現」は、本明細書において使用される場合、DNAに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指し得る。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指し得る。本明細書において使用される場合、用語「過剰発現」は、同一遺伝子または関連遺伝子の内因性発現より高い発現を指す。したがって、その発現が、匹敵する内因性遺伝子のものよりも高い場合に、異種遺伝子は「過剰発現」される。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「形質転換」または「形質転換する」は、遺伝的に安定な継承をもたらす、宿主生物への核酸またはその断片の転移および組込みを指す。形質転換核酸を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」、「組換え」または「形質転換された」生物と呼ばれる。形質転換の既知方法として、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはA.リゾゲネス(rhizogenes)媒介性形質転換、リン酸カルシウム形質転換、ポリブレン形質転換、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム形質転換、マイクロインジェクション、裸のDNAを用いる形質転換、プラスミドベクターを用いる形質転換、ウイルスベクターを用いる形質転換、微粒子銃(biolistic)形質転換(微粒子銃(microparticle bombardment))、シリコンカーバイドWHISKERS媒介性形質転換、エアゾールビーミングおよびPEG媒介性形質転換が挙げられる。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「導入された」(核酸を細胞中に導入することに関連して)は、細胞の形質転換および従来の植物育種技術を利用して実施され得るように第2の植物が核酸を含有するよう核酸を含む植物を第2の植物と交配することを含む。このような育種技術は、当技術分野で公知である。植物育種技術の考察については、Poehlman (1995) Breeding Field Crops, 4th Edition, AVI Publication Co., Westport CTを参照のこと。
【0043】
戻し交配法を使用して、植物に核酸を導入してもよい。この技術は、植物中に形質を導入するために数十年使用されてきた。戻し交配(およびその他の植物育種方法論)の説明の一例は、例えば、Poelman (1995)、前掲;およびJensen (1988) Plant Breeding Methodology, Wiley, New York, NYに見出すことができる。例示的戻し交雑プロトコールでは、対象とする元の植物(「反復親」)は、導入されるべき核酸を保持する第2の植物(「非反復親」)に交配される。この交配から得られた後代は、次いで、反復親に再度交配され、変換された植物が得られるまでこのプロセスが反復され、非反復親に由来する核酸に加えて、反復親の所望の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが変換された植物において回収される。
【0044】
「結合」は、高分子間(例えば、タンパク質および核酸間)の配列特異的、非共有結合的相互作用を指す。全体としての相互作用が配列特異的である限り、結合相互作用のすべてではない構成成分が、配列特異的である必要である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)。このような相互作用は、一般に、10
−6M
−1以下の解離定数(K
d)を特徴とする。「親和性」は、結合の強度を指し、結合親和性の増大は、低いK
dと相関している。
【0045】
「結合タンパク質」は、別の分子と非共有結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)と結合し得る。タンパク質結合タンパク質の場合には、自身と結合し(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成し)得、および/または異なるタンパク質(単数または複数)の1種または複数の分子と結合し得る。結合タンパク質は、2種以上の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合およびタンパク質結合活性を有する。
【0046】
「組換え」は、限定されるものではないが、非相同末端結合(NHEJ)および相同組換えによるドナー捕捉を含めた、2種のポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを指す。この開示の目的のために、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性によって指示される修復機序によって細胞中の二本鎖破壊の修復の間に起こるこのような交換の特殊化された形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖破壊をうけたもの)を鋳型修復するために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の転移につながるので、「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」としてさまざまに知られる。いずれか特定の理論に拘束されようとは思わないが、このような転移は、破壊された標的およびドナー間に形成するヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正および/またはドナーが、標的の一部となる遺伝情報を再合成するために使用される「合成依存性鎖アニーリング」および/または関連プロセスを含み得る。このような特殊化されたHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部またはすべてが標的ポリヌクレオチド中に組み込まれるような標的分子の配列の変更をもたらすことが多い。HRによって指示される組込みのために、ドナー分子は、少なくとも50〜100塩基対の長さのゲノムに対して相同性の少なくとも1つの領域(「相同性アーム」)を含有する。例えば、米国特許公開第20110281361号を参照のこと。
【0047】
本開示の方法では、本明細書において記載されたような1種または複数のターゲッティングされたヌクレアーゼは、所定の部位で標的配列(例えば、細胞クロマチン)中に二本鎖破壊を作製し、破壊の領域中のヌクレオチド配列に対して相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得る。二本鎖破壊の存在は、ドナー配列の組込みを促進することがわかった。ドナー配列は、物理的に組み込まれ、あるいは、ドナーポリヌクレオチドは、ドナー中にあるようなヌクレオチド配列のすべてまたは一部の細胞クロマチンへの導入をもたらす、相同組換えによる破壊の修復のための鋳型として使用される。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列は変更され得、特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列に変換され得る。したがって、用語「置き換える」または「置換え」の使用は、あるヌクレオチド配列の別のものによる置換え(すなわち、情報の意味での配列の置換え)を表すと理解され得、あるポリヌクレオチドの別のものによる物理的または化学的置換えを必ずしも必要としない。
【0048】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の破損を指す。切断は、限定されるものではないが、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含めた種々の方法によって開始され得る。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの生成をもたらし得る。特定の実施形態では、ターゲッティングされた二本鎖DNA切断のために融合ポリペプチドが使用される。
【0049】
用語「プラスミド」および「ベクター」は、本明細書において使用される場合、細胞の中央代謝の一部ではない1種または複数の遺伝子を保持し得る余分の染色体要素を指す。プラスミドおよびベクターは、通常、環状二本鎖DNA分子である。しかし、プラスミドおよびベクターは、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの直鎖状核酸であっても、環状核酸であってもよく、任意の供給源に本質的に由来するDNAを保持し得、いくつかのヌクレオチド配列が、プロモーター断片およびコーディングDNA配列を、任意の適当な3’非翻訳配列とともに細胞中に導入可能である独特の構築物に接続されるか、または組換えられている。例では、プラスミドおよびベクターは、細菌宿主において増殖するための自立複製配列を含み得る。
【0050】
ポリペプチドおよび「タンパク質」は、本明細書において同義的に使用され、ペプチド結合によって連結している2個以上のアミノ酸の分子鎖を含む。この用語は、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異タンパク質または変異体タンパク質、融合タンパク質などは、ポリペプチドの意味内に含まれる。この用語はまた、公知のタンパク質遺伝子操作技術を使用して組換えによって合成または発現され得るような、1種または複数のアミノ酸類似体または非標準または非天然アミノ酸が含まれる分子を含む。さらに、本発明の融合タンパク質は、周知の有機化学技術によって本明細書において記載されたように誘導体化され得る。
【0051】
用語「融合タンパク質」は、タンパク質が、2種以上の親のタンパク質またはポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むことを示す。通常、融合タンパク質は、1種のタンパク質に由来するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質に由来するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列とインフレームで付加され、任意選択でリンカーによってそれから分離されている融合遺伝子から発現される。次いで、融合遺伝子が、単一タンパク質として組換え宿主細胞によって発現され得る。
【0052】
III.本発明の実施形態
一実施形態では、本開示は、ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みを検出するためのアッセイに関する。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みを検出するためにアッセイされる。実施形態の態様では、ゲノムDNAは、染色体ゲノムDNA、ミトコンドリアゲノムDNA、転位性要素ゲノムDNA、ウイルス組込みに由来するゲノムDNA、人工染色体ゲノムDNA(限定されない例として本明細書に含まれる、PCT/US2002/017451およびPCT/US2008/056993を参照のこと)およびゲノムDNAのその他の供給源を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅される。実施形態の態様では、PCRは、一般に、クローニングまたは精製を伴わずに、ゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントの濃度を高めるための方法を指す(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,195号、同4,683,202号および同4,965,188号)。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、所望の標的配列を含有するDNA混合物に過剰の2種のオリゴヌクレオチドプライマーを導入するステップと、それに続くDNAポリメラーゼの存在下での正確な順序の熱サイクルを含む。2種のプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖と相補的である。増幅を達成するために、混合物を変性し、次いで、プライマーを、標的分子内のその相補配列とアニーリングする。アニーリング後、相補鎖の新規対を形成するためにプライマーをポリメラーゼを用いて伸長する。所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得るために、変性、プライマーアニーリングおよびポリメラーゼ伸長の段階を多数回反復してもよい(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は、1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」があり得る)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、互いに対するプライマーの相対位置によって決定され、したがって、この長さは、制御可能なパラメータである。このプロセスの反復態様のために、この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」と呼ばれる(本明細書において以下、「PCR」)。標的配列の所望の増幅されたセグメントが、混合物中の主な配列となるので(濃度の点で)、それらは、「PCR増幅された」と呼ばれる。
【0055】
その他の実施形態では、PCR反応は、アンプリコンを生成する。実施形態の一態様として、アンプリコンは、増幅プライマーの対のいずれかまたは両方の伸長によって作製された増幅反応の生成物を指す。利用される両プライマーが標的配列とハイブリダイズする場合には、アンプリコンは、指数関数的に増幅された核酸を含有し得る。あるいは、利用されるプライマーの一方が、標的配列とハイブリダイズしない場合には、アンプリコンは、線形増幅によって作製され得る。したがって、この用語は、本明細書において一般的に使用され、必ずしも、指数関数的に増幅された核酸の存在を暗示する必要はない。
【0056】
選択された、または標的、核酸配列の増幅は、任意の適した方法によって実施され得る。全般的に、Kwoh et al., Am. Biotechnol. Lab. 8, 14-25(1990)を参照のこと。適した増幅技術の例として、それだけには限らないが、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅(全般的に、G. Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 392-396 (1992);G. Walker et al., Nucleic Acid Res. 20, 1691-1696 (1992)を参照のこと)、転写ベースの増幅(D. Kwoh et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 86, 1173-1177 (1989)を参照のこと)、自家持続配列複製法(または「3SR」)(J. Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874-1878 (1990)を参照のこと)、Qβレプリカーゼ系(P. Lizardi et al., BioTechnology 6, 1197-1202 (1988)を参照のこと)、核酸配列ベースの増幅(または「NASBA」)(R. Lewis, Genetic Engineering News 12 (9), 1 (1992)を参照のこと)、修復連鎖反応(または「RCR」)(R. Lewis、前掲を参照のこと)およびブーメランDNA増幅(または「BDA」)(R. Lewis、前掲を参照のこと)が挙げられる。ポリメラーゼ連鎖反応が一般的に好ましい。
【0057】
別の実施形態では、ゲノムDNAの増幅は、プライマーを使用するPCR反応によって完了される。実施形態の一態様では、プライマーは、第1セットのプライマー、第2セットのプライマー、第3セットのプライマーなどを含み得る。そのようなものとして、名称「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、ネステッドPCR反応においてプライマーセットが使用される順序を示す。例えば、「第1の」セットのプライマーは、第1のPCR反応においてポリヌクレオチド配列を増幅するために最初に使用される。次に、「第2の」セットのプライマーが、第1のPCR反応の生成物を増幅するために第2のPCR反応において使用される。次いで、「第3の」セットのプライマーが、第2のPCR反応の生成物を増幅するために第3のPCR反応において使用され、以下同様に続く。実施形態のその他の態様では、プライマーは、ゲノムDNA標的部位と結合するように設計されている「Out」プライマーであり得るか、または生物のゲノム内に組み込まれているポリヌクレオチドドナー配列と結合するように設計されている「In」プライマーであり得る。その他の実施形態では、第1のセットのプライマーは、InおよびOutプライマーを含んでなり得るか、または2種の別個のInプライマーもしくは2種の別個のOutプライマーを含むように設計され得る。一実施形態では、用語プライマーとは、適当な増幅バッファー中で増幅されるべきDNA鋳型と相補的であるオリゴヌクレオチドを指す。特定の実施形態では、プライマーは、10Bp〜100Bp、10Bp〜50Bpまたは10Bp〜25Bpの長さであり得る。
【0058】
本開示内容の一実施形態では、Inプライマーは、Outプライマーよりも低い濃度で提供される。実施形態の一態様は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1または2:1のOutプライマー対Inプライマーの相対濃度を含む。別の態様では、実施形態は、Inプライマーが、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08または0.09μMの濃度を含み、Outプライマーが少なくとも0.1μMの濃度を含む場合を含む。さらなる態様において、実施形態は、Inプライマーが、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18または0.19μMの濃度を含み、Outプライマーが、少なくとも0.2μMの濃度を含む場合を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ゲノム組込み部位は、植物ゲノムDNAである。一態様では、本開示に従って形質転換される植物細胞として、それだけには限らないが、双子葉および単子葉植物を含めた任意の高等植物、特に、作物植物を含めた消費可能な植物が挙げられる。このような植物として、それだけには限らないが、例えば、アルファルファ、ダイズ、ワタ、ナタネ(セイヨウアブラナとも呼ばれる)、亜麻仁、トウモロコシ、イネ、ビロードキビ、コムギ、ベニバナ、ソルガム、サトウダイコン、ヒマワリ、タバコおよび芝草を挙げることができる。したがって、任意の植物種または植物細胞が選択され得る。実施形態では、本明細書において使用される植物細胞およびそれから成長したか、またはそれに由来する植物として、それだけには限らないが、ナタネ(セイヨウアブラナ(Brassica napus))、カラシナ(ブラシカ・ジュンセア(Brassica juncea));エチオピアンマスタード(ブラシカ・カリナタ(Brassica carinata));カブ(ブラシカ・ラパ(Brassica rapa));キャベツ(ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea));ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max));アマ(リナム・ウシタティシマム(Linum usitatissimum));トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn)とも呼ばれる)(ゼア・メイズ(Zea mays));ベニバナ(カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius));ヒマワリ(ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus));タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum));シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブラジルナッツ(バーソレチア・エクセルサ(Betholettia excelsa);トウゴマ(リシナス・コミュニス(Riccinus communis));ココナッツ(ココス・ヌシフェラ(Cocus nucifera));コリアンダー(コリアンドラム・サティバム(Coriandrum sativum));ワタ(ゴシピウム属種(Gossypium spp.));ラッカセイ(アラキス・ヒポゲア(Arachis Hypogaea));ホホバ(シモンドシダ・キネンシス(Simmondsia chinensis));アブラヤシ(エライズ・グイネーイス(Elaeis guineeis));オリーブ(オレア・ユーパエア(Olea eurpaea));イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa));カボチャ(ククルビタ・マキシマ(Cucurbita maxima));オオムギ(ホルデウム・ウルガレ(Hordeum vulgare));サトウキビ(サッカルム・オフィシナルム(Saccharum officinarum));イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa));コムギ(トリチカム・デュラム(Triticum durum)およびトリチカム・アスティバム(Triticum aestivum)を含むコムギ属種(Triticum spp.))およびダックウィード(レムナセアエ属種(Lemnaceae sp.))から得られる細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、植物種内の遺伝的背景は、変わり得る。
【0060】
遺伝的に修飾された植物の生産に関して、植物の遺伝子工学のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、双子葉植物および単子葉植物のための植物形質転換のために、生物学的および物理的形質転換プロトコールを含めた多数の方法が開発されている(例えば、Goto-Fumiyuki et al., Nature Biotech 17:282-286 (1999);Miki et al., Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B. R. and Thompson、J. E.、Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, pp. 67-88 (1993))。さらに、植物細胞または組織形質転換および植物の再生のためのベクターおよびin vitro培養法は、例えば、Gruber et al., Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B. R. and Thompson, J. E. Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, pp. 89-119 (1993)において入手可能である。
【0061】
DNAを植物宿主細胞中に挿入するために多数の技術が利用可能である。それらの技術は、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を使用する武装解除したT−DNAを用いる形質転換、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン形質転換、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム形質転換、マイクロインジェクション、裸のDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、微粒子銃(biolistic)(微粒子銃(microparticle bombardment))、シリコンカーバイドWHISKERS媒介性形質転換、エアゾールビーミングまたはPEGおよびその他の可能性ある方法を含む。
【0062】
例えば、DNA構築物は、植物細胞プロトプラストのエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの技術を使用して、植物細胞のゲノムDNA中に直接的に導入され得るか、またはDNA構築物は、DNA微粒子銃(particle bombardment)などの微粒子銃(biolistic)法を使用して植物組織に直接的に導入され得る(例えば、Klein et al. (1987) Nature 327:70-73を参照のこと)。植物細胞形質転換のためのさらなる方法として、シリコンカーバイドWHISKERS媒介性DNA取り込みによるマイクロインジェクション(Kaeppler et al. (1990) Plant Cell Reporter 9:415-418)が挙げられる。あるいは、DNA構築物は、ナノ粒子形質転換によって植物細胞中に導入され得る(例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第12/245,685号を参照のこと)。
【0063】
植物形質転換の別の公知の方法として、DNAが微粒子(microprojectile)の表面に保持される微粒子(microprojectile)媒介性形質転換がある。この方法では、ベクターは、微粒子(microprojectiles)を、植物細胞壁および細胞膜を透過するのに十分な速度に加速させる微粒子銃(biolistic)装置を用いて、植物組織中に導入される。Sanford et al., Part. Sci. Technol. 5:27 (1987), Sanford, J. C., Trends Biotech. 6:299 (1988), Sanford, J. C., Physiol. Plant 79:206 (1990), Klein et al., Biotechnology 10:268 (1992)。
【0064】
あるいは、遺伝子導入および形質転換法として、それだけには限らないが、塩化カルシウム沈殿によるプロトプラスト形質転換、裸のDNAのポリエチレングリコール(PEG)またはエレクトロポレーション媒介性取り込み(Paszkowski et al. (1984) EMBO J 3:2717-2722, Potrykus et al. (1985) Molec. Gen. Genet. 199:169-177; Fromm et al. (1985) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 82:5824-5828;およびShimamoto (1989) Nature 338:274-276を参照のこと)および植物組織のエレクトロポレーション(D’Halluin et al. (1992) Plant Cell 4:1495-1505)が挙げられる。
【0065】
発現ベクターを植物中に導入するために利用されている方法は、アグロバクテリウムの天然形質転換システムに基づいている。Horsch et al. Science 227:1229 (1985)。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A. rhizogenes)は、植物細胞を遺伝的に形質転換するのに有用であることが知られている植物病原性土壌細菌である。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A. rhizogenes)のTiおよびRiプラスミドは、それぞれ、植物の遺伝子形質転換に関与する遺伝子を保持する。Kado, C. I., Crit. Rev. Plant. Sci. 10:1 (1991)。アグロバクテリウムベクター系およびアグロバクテリウム媒介性遺伝子導入のための方法の記載はまた、例えば、Gruber et al., 前掲、Miki et al., 前掲、Moloney et al., Plant Cell Reports 8:238 (1989)および米国特許第4,940,838号および同5,464,763号において入手可能である。
【0066】
形質転換にアグロバクテリウムが使用される場合には、挿入されるべきDNAは、特定のプラスミドに、すなわち、中間体ベクターまたはバイナリーベクターのいずれかにクローニングされるべきである。中間体ベクターは、アグロバクテリウム中では自身で複製できない。中間体ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)の使用によってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に転移され得る。日本たばこスーパーバイナリー系は、このような系の一例である(Komari et al., (2006) In: Methods in Molecular Biology (K. Wang、ed.) No. 343: Agrobacterium Protocols (2nd Edition, Vol. 1) Humana Press Inc., Totowa, NJ, pp.15-41;およびKomori et al. (2007) Plant Physiol. 145:1155-60に総説されている)。バイナリーベクターは、大腸菌(e. coli)およびアグロバクテリウムの両方において自身を複製できる。バイナリーベクターは、右および左のT−DNA境界領域によって囲まれている、選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは、アグロバクテリウム中に直接、形質転換され得る(Holsters、1978)。宿主として使用されるアグロバクテリウムは、vir領域を保持するプラスミドを含むこととなる。TiまたはRiプラスミドはまた、T−DNAの転移に必要なvir領域を含む。vir領域は、T−DNAの、植物細胞への転移にとって必要である。さらなるT−DNAが含有される場合もある。
【0067】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主の病原性機能は、細胞が、バイナリーT DNAベクター(Bevan (1984) Nuc. Acid Res. 12:8711-8721)または非バイナリーT DNAベクター手順(Horsch et al. (1985) Science 227:1229-1231)を使用して細菌に感染すると、構築物および隣接するマーカーを含有するT−鎖の、植物細胞DNAへの挿入を指示する。一般に、アグロバクテリウム形質転換系は、双子葉植物を操作するために使用される(Bevan et al. (1982) Ann. Rev. Genet 16:357-384;Rogers et al. (1986) Methods Enzymol. 118:627-641)。アグロバクテリウム形質転換系はまた、単子葉植物および植物細胞を形質転換するため、ならびに単子葉植物および植物細胞にDNAを転移するために使用され得る。米国特許第5,591,616号;Hernalsteen et al. (1984) EMBO J 3:3039-3041;Hooykass-Van Slogteren et al. (1984) Nature 311:763-764; Grimsley et al. (1987) Nature 325:1677-179;Boulton et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:31-40;およびGould et al. (1991) Plant Physiol. 95:426-434を参照のこと。遺伝構築物の特定の植物細胞への導入後に、植物細胞を成長させてもよく、シュートおよび根などの組織の分化が出現すると、成熟した植物が生成され得る。いくつかの実施形態では、複数の植物が生成され得る。植物を再生するための方法論は、当業者に公知であり、例えば、Plant Cell and Tissue Culture, 1994, Vasil and Thorpe Eds. Kluwer Academic Publishersにおいて、およびPlant Cell Culture Protocols (Methods in Molecular Biology 111, 1999 Hall Eds Humana Press)において見出すことができる。一般に、本明細書において記載される修飾された植物は、発酵培地において培養し、土壌などの適した培地において成長させてもよい。いくつかの実施形態では、高等植物の適した成長培地は、それだけには限らないが、土壌、砂、根成長または水耕培養を支持する任意のその他の粒状培地(例えば、バーミキュライト、パーライトなど)ならびに高等植物の成長を最適化する適した光、水および栄養補助物質を含めた、植物のための任意の成長培地を含み得る。
【0068】
上記の形質転換技術のいずれかによって製造される形質転換された植物細胞を、培養して、形質転換された遺伝子型、ひいては、所望の表現型を有する全植物体を再生できる。このような再生技術は、組織培養成長培地中の特定の植物ホルモンの操作に頼るものであり、通常、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入されている殺生物剤および/または除草剤マーカーに頼る。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evans, et al., "Protoplast Isolation and Culture" in Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, Macmillian Publishing Company, New York, 1983;およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記載されている。再生はまた、植物カルス、外植片、器官、花粉、胚またはその一部からも得られ得る。このような再生技術は、Klee et al. (1987) Ann. Rev. of Plant Phys. 38:467-486に全般的に記載されている。
【0069】
その他の実施形態では、形質転換される植物細胞は、植物体を生成するよう再生可能ではない。このような細胞は、一過性に形質転換されるといわれる。一過性に形質転換される細胞は、特定の導入遺伝子の発現および/または機能性をアッセイするために製造され得る。一過性形質転換技術は、当技術分野で公知であり、上記の形質転換技術にわずかな修飾を含む。一過性形質転換は、迅速に完了され、安定な形質転換技術ほど多くの資源(例えば、全植物を発達させるための植物の培養、導入遺伝子をゲノム内に固定させるための植物の自家受粉または交配など)を必要としないので、当業者は、特定の導入遺伝子の発現および/または機能性を迅速にアッセイするために、一過性形質転換を利用するよう選択(elect)してもよい。
【0070】
一実施形態では、ドナーポリヌクレオチドは、本質的に任意の植物中に導入され得る。さまざまな植物および植物細胞系を、本開示のドナーポリヌクレオチドの部位特異的組込みおよび上記の種々の形質転換法のために遺伝子操作してもよい。一実施形態では、遺伝子操作するための標的植物および植物細胞として、それだけには限らないが、穀類作物(例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、アワ、オオムギ)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、セイヨウナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えば、アルファルファ)、根菜作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、サトウダイコン、ヤムイモ)、葉菜作物(例えば、レタス、ホウレンソウ)、開花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹およびマツ(例えば、マツ、モミ、トウヒ);ファイトレメディエーションにおいて使用される植物(例えば、重金属蓄積植物);油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ)および実験目的のために使用される植物(例えば、アラビドプシス)を含めた作物などの単子葉および双子葉植物のものが挙げられる。
【0071】
その他の実施形態では、ポリヌクレオチドドナー配列は、ゲノム標的部位内の部位特異的ターゲッティングのために植物細胞中に導入される。このような実施形態では、植物細胞は、プロトプラスト植物細胞であり得る。プロトプラストは、種々の種類の植物細胞から製造され得る。したがって、当業者は、プロトプラスト植物細胞を製造するための種々の技術または方法論を利用してもよい。例えば、プロトプラストの作製および製造は、Green and Phillips, Crop Sc., 15 (1975) 417-421;Harms et al. Z. Pflanzenzuechtg., 77 (1976) 347-351;欧州特許出願EP0,160,390、Lowe and Smith (1985);EP0176,162、Cheng (1985)およびEP0,177,738、Close (1985);Cell Genetics in Higher Plants,Dudits et al.,(eds), Akademiai Kiado, Budapest (1976) 129-140およびその中の参考文献;Harms, "Maize and Cereal protoplasts-Facts and Perspectives," Maize for Biological Resaerch, W. F. Sheridan,ed. (1982);Dale,in: Protoplasts (1983);Potrykus et al (eds.) Lecture Proceedings,Experientia Supplementum 46,Potrykus et al., eds,Birkhauser, Basel (1983) 31-41およびその中の参考文献によって提供されている。培養プロトプラストからの植物再生は、Evans et al. (1983) "Protoplast Isolation and Culture", Handbook of Plant Cell Cultures 1,124-176 (MacMillan Publishing Co., New York; Davey (1983) "Recent Developments in the Culture and Regeneration of Plant Protoplasts." Protoplasts, pp. 12-29, (Birkhauser、Basel);Dale (1983) "Protoplast Culture and Plant Regeneration of Cereals and Other Recalcitrant Crops," Protoplasts pp. 31-41,(Birkhauser,Basel);Binding (1985) "Regeneration of Plants," Plant Protoplasts, pp. 21-73,(CRC Press、Boca Raton、FL)に記載されている。
【0072】
標的部位;ZFPの選択ならびに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計および構築するための方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号;同5,789,538号;同6,453,242号;同6,534,261号;同5,925,523号;同6,007,988号;同6,013,453号;同6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 ;WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0073】
その後の実施形態では、1種または複数のDNA結合配列を含むDNA結合ドメインは、ジンクフィンガー結合タンパク質、メガヌクレアーゼ結合タンパク質、CRIPSRまたはTALEN結合タンパク質によって結合される。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法は、ドナー分子との結合および/または細胞のゲノム中の対象の領域との結合のためにメガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)結合タンパク質またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインを使用する。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の切断部位を認識し、通常、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CystボックスファミリーおよびHNHファミリーにグループ化される。例示的ホーミングエンドヌクレアーゼとして、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが挙げられる。その認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号、同6,833,252号、Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびthe New England Biolabs catalogueも参照のこと。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法および組成物は、遺伝子操作された(天然に存在しない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを使用する。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列も公知である。米国特許第5,420,032号、同6,833,252号、Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163−180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびthe New England Biolabs catalogueも参照のこと。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非自然の標的部位と結合するよう遺伝子操作され得る。例えば、Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公開第20070117128号を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてヌクレアーゼとの関連で変更され得る(すなわち、ヌクレアーゼが、同族の切断ドメインを含むように)。
【0076】
その他の実施形態では、本明細書において記載される方法および組成物において使用される1種または複数のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然に存在するまたは遺伝子操作された(天然に存在しない)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、本明細書にその全文が参照により組み込まれる米国特許公開第20110301073号を参照のこと。ザントモナス(Xanthomonas)属の植物病原菌は、重要な作物植物において多数の疾患を引き起こすと知られている。ザントモナス(Xanthomonas)属の病原性は、25種を超える異なるエフェクタータンパク質を植物細胞中に注入する保存されたIII型分泌(T3S)系に応じて変わる。これらの注入されるタンパク質の中に、植物転写アクチベーターを模倣し、植物トランスクリプトームを操作する転写アクチベーター様(TAL)エフェクターがある(Kay et al (2007) Science 318:648-651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も十分に特性決定されたTAL−エフェクターの1種として、ザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestgris)病原型ベシカトリア(Vesicatoria)由来のAvrBs3がある(Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136およびWO2010079430を参照のこと)。TAL−エフェクターは、各リピートが、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要であるおよそ34個のアミノ酸を含有するタンデムリピートの集中ドメインを含有する。さらに、それらは、核局在性配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S、et al (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照のこと)。さらに、植物病原菌青枯病菌(Ralstonia solanacearum)では、青枯病菌(R.solanacearum)次亜種1株GMI1000において、および次亜種4株RS1000において、ザントモナス属(Xanthomonas)のAvrBs3ファミリーと相同である、brg11およびhpx17と表される2種の遺伝子が見出されている(Heuer et al (2007) Appl and Envir Micro 73(13): 4379-4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列では互いに98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメイン中の1,575bpの欠失によって異なる。しかし、両遺伝子産物は、ザントモナス属(Xanthomonas)のAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20110239315号、同20110145940号および同20110301073号を参照のこと。
【0077】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピート中に見られる配列に応じて変わる。反復される配列は、およそ102bpを含み、リピートは、通常、互いに91〜100%相同である(Bonas et al、同書)。リピートの多型性は、普通、12および13位に局在し、12および13位の超可変二残基の同一性と、TAL−エフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの同一性の間の1対1の対応があると思われる(Moscou and Bogdanove, (2009) Science 326:1501およびBoch et al (2009) Science 326:1509-1512を参照のこと)。実験的に、これらのTAL−エフェクターのDNA認識に対する天然のコードは、12および13位のHD配列が、シトシン(C)との結合につながり、NGがTと、NIがA、C、GまたはTと結合し、NNが、AまたはGと結合し、INGがTと結合するように決定された。これらのDNA結合リピートは、リピートの新規組合せおよび数を有するタンパク質にアセンブルされ、植物細胞において、新規配列と相互作用し、非内因性リポーター遺伝子の発現を活性化できる人工転写因子が作製された(Boch et al、同書)。遺伝子操作されたTALタンパク質は、FokI切断ハーフドメインと連結され、酵母リポーターアッセイ(プラスミドベースの標的)において活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)が得られた。例えば、米国特許公開第20110301073号;Christian et al ((2010)<Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照のこと。
【0078】
その他の実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文反復配列/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系を含む系である。CRISPR/Casは、ゲノムエンジニアリングに使用され得る細菌系をベースとする最近遺伝子操作されたヌクレアーゼ系である。それは多数の細菌および古細菌の適応免疫応答の部分をベースとする。ウイルスまたはプラスミドが細菌に侵入する場合に、「免疫」応答によって侵入者のDNAのセグメントが、CRISPR RNA(crRNA)に変換される。このcrRNAは、次いで、部分相補性の領域によって、tracrRNAと呼ばれる別の種類のRNAと会合し、Cas9ヌクレアーゼを、フォトスペーサー隣接モチーフ(PAM)NGGの隣の標的DNA中のcrRNAと相同な領域に案内する。Cas9は、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドのガイド配列によって特定される部位のDSBで平滑末端を作製する。Cas9は、部位特異的DNA認識および切断のためにcrRNAおよびtracrRNAの両方を必要とする。この系は、ここで、crRNAおよびtracrRNAが1分子(「単一ガイドRNA」)に組み合わされ得るよう遺伝子操作され、単一ガイドRNAのcrRNA相当部分は、Cas9ヌクレアーゼを、PAMに隣接する標的の任意の望ましい配列に案内するよう遺伝子操作され得る(Jinek et al (2012) Science 337, p. 816-821, Jinek et al, (2013), eLife 2:e00471およびDavid Segal, (2013) eLife 2:e00563を参照のこと)。したがって、CRISPR/Cas系は、ゲノム中の所望の標的でDSBを作製するよう遺伝子操作され得、DSBの修復は、エラープローン修復の増大を引き起こす修復阻害剤の使用によって影響を受け得る。
【0079】
特定の実施形態では、細胞のゲノムのin vivo切断および/またはターゲッティングされた切断のために使用される1種または複数のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。ジンクフィンガータンパク質は、選択の標的部位と結合するよう遺伝子操作されるものには天然に存在しないことが好ましい。例えば、参照によってその全文が、すべて本明細書に組み込まれる、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416;米国特許第6,453,242号;同6,534,261号;同6,599,692号;同6,503,717号;同6,689,558号;同7,030,215号;同6,794,136号;同7,067,317号;同7,262,054号;同7,070,934号;同7,361,635号;同7,253,273号;および米国特許公開第2005/0064474号;同2007/0218528号;同2005/0267061号を参照のこと。
【0080】
遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。遺伝子操作する方法は、それだけには限らないが、合理的設計および種々の種類の選択を含む。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、これでは、各トリプレットまたはクアドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列と結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合される。例えば、その全文が参照によって本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第6,453,242号および同6,534,261号を参照のこと。
【0081】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含めた例示的選択方法は、米国特許第5,789,538号;同5,925,523号;同6,007,988号;同6,013,453号;同6,410,248号;同6,140,466号;同6,200,759号;および同6,242,568号ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、例えば、共有のWO02/077227には、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強が記載されている。
【0082】
さらに、これらおよびその他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガー型ジンクフィンガータンパク質は、例えば、5個以上のアミノ酸の長さのリンカーを含めた任意の適したリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6個以上のアミノ酸の長さの例示的リンカー配列については、米国特許第6,479,626号;同6,903,185号;および同7,153,949号も参照のこと。本明細書において記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間に適したリンカーの任意の組合せを含み得る。
【0083】
導入遺伝子がターゲッティングされた方法でゲノム中に組み込まれるように、導入遺伝子と、細胞のゲノムの切断のためのヌクレアーゼとを保持するドナー分子のin vivo切断にとって有用である組成物、特に、ヌクレアーゼが本明細書において記載される。特定の実施形態では、1種または複数のヌクレアーゼは、天然に存在する。その他の実施形態では、1種または複数のヌクレアーゼは、天然に存在しない、すなわち、DNA結合ドメインおよび/または切断ドメインにおいて遺伝子操作される。例えば、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインが、選択された標的部位と結合するよう変更され得る(例えば、同族の結合部位とは異なる部位と結合するよう遺伝子操作されたメガヌクレアーゼ)。その他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種DNA結合および切断ドメインを含む(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TAL−エフェクタードメインDNA結合タンパク質;異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)。
【0084】
ヌクレアーゼを形成するために、任意の適した切断ドメインをDNA結合ドメインと作動可能に連結してもよい。例えば、ZFN−その遺伝子操作された(ZFP)DNA結合ドメインによって、その意図される核酸標的を認識でき、DNAを、ヌクレアーゼ活性によってZFP結合部位の近くで切断されるようにする機能的実体を作製するために、ZFP DNA結合ドメインがヌクレアーゼドメインと融合されている。例えば、Kim et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照のこと。より最近は、ZFNは、種々の生物におけるゲノム修飾のために使用された。例えば、米国特許公開第20030232410号;同20050208489号;同20050026157号;同20050064474号;同20060188987号;同20060063231号;および国際公開公報WO07/014275を参照のこと。同様に、TALE DNA結合ドメインが、TALENを作製するためにヌクレアーゼドメインと融合された。例えば、米国特許公開第20110301073号を参照のこと。
【0085】
上記のように、切断ドメインは、DNA結合ドメインにとって異種であり得る、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼに由来する切断ドメインまたはTALEN DNA結合ドメインおよび切断ドメインまたはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメイン。異種切断ドメインは、特定のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。切断ドメインが由来し得る例示的エンドヌクレアーゼとして、それだけには限らないが、特定の制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、2002-2003 Catalogue, New England Biolabs, Beverly, MAおよびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素は、公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al. (eds.) Nuclease, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうち1種または複数が、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用され得る。
【0086】
同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量化を必要とする、上記で示されるような、任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合には、切断のために2種の融合タンパク質が必要である。あるいは、2種の切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。2種の切断ハーフドメインは、同一エンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得るか、または各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2種の融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、切断ハーフドメインが、例えば、二量化によって機能的切断ドメインを形成するのを可能にする互いに対する空間的方向に、切断ハーフドメインを置くよう、2種の融合タンパク質の、そのそれぞれの標的部位との結合が、互いに関して配置される。したがって、特定の実施形態では、標的部位の近位端部が、5〜8ヌクレオチド、または15〜18ヌクレオチドだけ離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2種の標的部位の間に介在し得る(例えば、2〜50ヌクレオチド対またはそれ以上)。一般に、切断部位は、標的部位の間にある。
【0087】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多数の種に存在し、DNAと配列特異的に(認識部位で)結合でき、結合の部位で、または結合の付近でDNAを切断できる。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、DNAを、認識部位から除かれた部位で切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖の認識部位から9ヌクレオチドで、またもう一方の鎖の認識部位から13ヌクレオチドでDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同5,436,150号および同5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768;Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照のこと。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、遺伝子操作されている場合も、遺伝子操作されていない場合もある、少なくとも1種のIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)および1種または複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0088】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的IIS型制限酵素として、FokIがある。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575。したがって、本開示の目的上、開示される融合タンパク質において使用されるFokI酵素の一部は、切断ハーフドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー−FokI融合物を使用するDNA配列のターゲッティングされた二本鎖切断および/またはターゲッティングされた置換えについて、触媒的に活性な切断ドメインを再構築するために、各々、FokI切断ハーフドメインを含む2種の融合タンパク質が使用され得る。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2種のFokI切断ハーフドメインを含有する単一のポリペプチド分子も使用され得る。ジンクフィンガー−FokI融合物を使用するターゲッティングされた切断およびターゲッティングされた配列変更のパラメータは、本開示中の別の場所に提供されている。
【0089】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または多量化(例えば、二量化)して、機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の一部であり得る。
【0090】
例示的IIS型制限酵素は、その全文が本明細書に組み込まれる国際公開WO07/014275に記載されている。さらなる制限酵素も、分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらは、本開示によって考慮される。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照のこと。
【0091】
特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、そのすべての開示内容が参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20050064474号;同20060188987号;同20070305346号および同20080131962号に記載されるように、ホモ二量体化を最小化する、または妨げる、1種または複数の遺伝子操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538位のアミノ酸残基は、すべてFokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。
【0092】
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な遺伝子操作された切断ハーフドメインは、第1の切断ハーフドメインが、FokIの490および538位にアミノ酸残基の突然変異を含み、第2の切断ハーフドメインがアミノ酸残基486および499に突然変異を含む対を含む。
【0093】
したがって、一実施形態では、490での突然変異は、Glu(E)をLys(K)で置き換え;538での突然変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換え;486での突然変異は、Gln(Q)をGlu(E)で置き換え;499位での突然変異は、Iso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書に記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、一方の切断ハーフドメイン中で490位(E→K)および538位(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と表される遺伝子操作された切断ハーフドメインを製造することによって、および別の切断ハーフドメイン中で486位(Q→E)および499位(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と表される遺伝子操作された切断ハーフドメインを製造することによって調製された。本明細書において記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化または消滅される偏性ヘテロ二量体突然変異体である。例えば、その開示内容が、すべての目的のために参照によりその全文が組み込まれる米国特許公開第2008/0131962号を参照のこと。特定の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、486、499および496位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で(それぞれ、「ELD」および「ELE」ドメインと呼ばれる)置き換える突然変異を含む。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490、538および537位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で(それぞれ、「KKK」および「KKR」ドメインとも呼ばれる)置き換える突然変異を含む。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、490および537位(野生型FokIに対して番号付けされた)に突然変異を、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で(それぞれ、「KIK」および「KIR」ドメインとも呼ばれる)置き換える突然変異を含む(米国特許公開第20110201055号を参照のこと)。その他の実施形態では、遺伝子操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」突然変異を含む(Guo et al, (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96-107を参照のこと)。
【0094】
本明細書において記載された遺伝子操作された切断ハーフドメインは、任意の適した方法を使用して、例えば、米国特許公開第20050064474号;同20080131962号;および同20110201055号に記載されるような、野生型切断ハーフドメイン(FokI)の部位特異的突然変異誘発によって調製され得る。
【0095】
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術(例えば、米国特許公開第20090068164号を参照のこと)を使用して、核酸標的部位でin vivoでアセンブルされ得る。このようなスプリット酵素の構成成分は、別個の発現構築物で発現され得るか、または個々の構成成分が、例えば、自己切断性2AペプチドまたはIRES配列によって分かれている1つのオープンリーディングフレームに連結され得る。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0096】
ヌクレアーゼは、例えば、WO2009/042163および20090068164に記載されるような酵母ベースの染色体系において、使用に先立って活性についてスクリーニングされ得る。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で公知の方法を使用して容易に設計され得る。例えば、米国特許公開第20030232410号;同20050208489号;同20050026157号;同20050064474号;同20060188987号;同20060063231号;および国際公開WO07/014275を参照のこと。ヌクレアーゼの発現は、構成性プロモーターまたは誘導プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化され(抑制解除され)、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下であり得る。
【0097】
一実施形態では、ポリヌクレオチドドナーカセットは、ペプチドをコードする配列を含む。ペプチドを発現させるために、通常、ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を、転写を指示するプロモーターを含有する発現ベクター中にサブクローニングする。適した細菌および真核細胞プロモーターは、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed. 1989; 3rd ed., 2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual (1990); and Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., 前掲)に記載されている。ペプチドを発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌(E. coli)、バチルス属種(Bacillus sp.)およびサルモネラ(salmonella)において入手可能である(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983))。このような発現系のキットは、市販されている。哺乳類細胞、酵母および昆虫細胞のための真核生物発現系は、当業者には周知であり、同様に市販されている。
【0098】
一実施形態では、ポリヌクレオチドドナーカセットは、導入遺伝子を含む遺伝子発現カセットを含む。遺伝子発現カセットは、通常、原核生物または真核生物のいずれかの宿主細胞における核酸の発現に必要なすべてのさらなる要素を含有する転写ユニットまたは発現カセットを含有する。したがって、通常の遺伝子発現カセットは、例えば、タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター、転写物の効率的なポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位または翻訳終結に必要なシグナルを含有する。カセットのさらなる要素として、例えば、エンハンサーおよび異種スプライシングシグナルを挙げることができる。
【0099】
一実施形態では、遺伝子発現カセットはまた、対象の異種ヌクレオチド配列の3’末端に、植物において機能的な、転写および翻訳終結領域を含む。終結領域は、本開示の実施形態のプロモーターヌクレオチド配列について天然であってもよく、対象のDNA配列について天然であってもよく、別の供給源に由来するものであってもよい。オクトピンシンターゼおよびノパリンシンターゼ(nos)終結領域などの好都合な終結領域は、A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)のTi−プラスミドから入手可能である(Depicker et al., Mol. and Appl.Genet. 1:561-573 (1982)およびShaw et al. (1984) Nucleic Acids Research vol. 12, No. 20 pp7831-7846(nos));Guerineau et al. Mol. Gen. Genet. 262:141-144 (1991);Proudfoot, Cell 64:671-674 (1991);Sanfacon et al. Genes Dev. 5:141-149 (1991);Mogen et al. Plant Cell 2:1261-1272 (1990);Munroe et al. Gene 91:151-158 (1990);Ballas et al. Nucleic Acids Res. 17:7891-7903 (1989);Joshi et al. Nucleic Acid Res. 15:9627-9639 (1987)も参照のこと。
【0100】
その他の実施形態では、遺伝子発現カセットは、5’リーダー配列をさらに含有し得る。このようなリーダー配列は、翻訳を増強するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当技術分野で公知であり、例として、ピコルナウイルスリーダー、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コーディング領域)、Elroy-Stein et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:6126-6130 (1989);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス)Carrington and Freed Journal of Virology, 64:1590-1597 (1990)、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)、Allison et al., Virology 154:9-20 (1986);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、Macejak et al. Nature 353:90-94 (1991);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNAに由来する非翻訳リーダー(AMV RNA 4)、Jobling et al. Nature 325:622-625 (1987);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)、Gallie et al. (1989) Molecular Biology of RNA, pages 237-256;およびトウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(MCMV)Lommel et al. Virology 81:382-385 (1991)が挙げられる。Della-Cioppa et al. Plant Physiology 84:965-968 (1987)も参照のこと。構築物はまた、イントロンなどの翻訳および/またはmRNA安定性を増強する配列を含有し得る。1つのこのようなイントロンの一例として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のヒストンH3.III変異体の遺伝子IIの第1のイントロンがある。Chaubet et al. Journal of Molecular Biology, 225:569-574 (1992)。
【0101】
一実施形態では、ポリヌクレオチドドナー配列の遺伝子発現カセットは、プロモーターを含む。ペプチドをコードする核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターは、個々の適用に応じて変わる。例えば、宿主細胞に適している強力な構成的プロモーターが、タンパク質の発現および精製のために通常使用される。好ましい植物プロモーターの限定されない例として、シロイヌナズナ(A.thaliana)ユビキチン−10(ubi-10)(Callis, et al., 1990, J. Biol. Chem., 265:12486-12493);A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)マンノピンシンターゼ(Δmas)(Petolino et al.、米国特許第6,730,824号);および/またはキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)(Verdaguer et al., 1996, Plant Molecular Biology 31:1129-1139)に由来するプロモーター配列が挙げられる。
【0102】
本明細書において開示される方法では、植物における遺伝子の発現を指示するいくつかのプロモーターが使用され得る。このようなプロモーターは、構成的プロモーター、化学調節性プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーターおよび種子優先(seed-preferred)プロモーターから選択され得る。
【0103】
構成的プロモーターとして、例えば、コアカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812);イネアクチンプロモーター(McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171);トウモロコシユビキチンプロモーター(米国特許第5,510,474号;Christensen et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:619-632およびChristensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689);pEMUプロモーター(Last et al. (1991) Theor. Appl. Genet. 81:581-588);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号);トウモロコシヒストンプロモーター(Chaboute et al. Plant Molecular Biology, 8:179-191 (1987))などが挙げられる。
【0104】
利用可能な植物適合プロモーターの範囲は、組織特異的および誘導性プロモーターを含む。誘導性調節エレメントは、誘導物質に応じて1種または複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接的または間接的に活性化できるものである。誘導物質の不在下で、DNA配列または遺伝子は転写されない。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導物質は、熱、冷温、塩または毒性要素によって直接的に、またはウイルスなどの病原体もしくは病因物質の作用によって間接的に課せられる、タンパク質、代謝生成物、成長調節物質、除草剤またはフェノール系化合物などの化学物質または生理学的ストレスであり得る。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して、転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導性調節エレメントを含有する植物細胞は、噴霧、灌水、加熱または同様の方法によってなど、細胞または植物に誘導物質を外的に適用することによって誘導物質に曝露され得る。
【0105】
本開示の実施形態では、任意の誘導プロモーターが使用され得る。Ward et al. Plant Mol. Biol. 22: 361-366 (1993)を参照のこと。例示的な誘導プロモーターとして、エクジソン受容体プロモーター(米国特許第6,504,082号);銅に反応するACE1系に由来するプロモーター(Mett et al. PNAS 90: 4567-4571 (1993));ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に反応するトウモロコシ由来のIn2−1およびIn2−2遺伝子(米国特許第5,364,780号;Hershey et al., Mol. Gen. Genetics 227: 229-237 (1991)およびGatz et al., Mol. Gen. Genetics 243: 32-38 (1994));Tn10由来のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227: 229-237 (1991);転写活性が糖質コルチコステロイドホルモンによって誘導される、ステロイドホルモン遺伝子に由来するプロモーター、Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 10421 (1991)およびMcNellis et al., (1998) Plant J. 14(2):247-257;発芽前除草剤として使用される疎水性求電子性化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター(米国特許第5,965,387号および国際特許出願公開番号WO93/001294);およびサリチル酸によって活性化されるタバコPR−1aプロモーター(Ono S, Kusama M, Ogura R, Hiratsuka K., "Evaluation of the Use of the Tobacco PR-1a Promoter to Monitor Defense Gene Expression by the Luciferase Bioluminescence Reporter System", Biosci Biotechnol Biochem. 2011 Sep 23;75(9):1796-800)が挙げられる。その他の化学物質によって調節される対象とするプロモーターとして、テトラサイクリン誘導性およびテトラサイクリン抑制性プロモーター(例えば、Gatz et al., (1991) Mol. Gen. Genet. 227:229-237および米国特許第5,814,618号および同5,789,156号を参照のこと)が挙げられる。
【0106】
対象とするその他の調節可能なプロモーターとして、転写が、それぞれ、冷温または熱に対する曝露に応じて達成され得る、冷温反応性調節エレメントまたは熱ショック調節エレメント(Takahashi et al., Plant Physiol. 99:383-390, 1992);嫌気性条件によって誘導可能な、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Gerlach et al., PNAS USA 79:2981-2985 (1982);Walker et al., PNAS 84(19):6624-6628 (1987));エンドウマメrbcS遺伝子またはエンドウマメpsaDb遺伝子に由来する光誘導性プロモーター(Yamamoto et al. (1997) Plant J. 12(2):255-265);光誘導性調節エレメント(Feinbaum et al., Mol. Gen. Genet. 226:449, 1991;Lam and Chua, Science 248:471, 1990;Matsuoka et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(20):9586-9590;Orozco et al. (1993) Plant Mol. Bio. 23(6):1129-1138);植物ホルモン誘導性調節エレメント(Yamaguchi-Shinozaki et al., Plant Mol. Biol. 15:905, 1990; Kares et al., Plant Mol. Biol. 15:225, 1990)などが挙げられる。誘導性調節エレメントはまた、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に応答するトウモロコシIn2−1またはIn2−2遺伝子のプロモーター(Hershey et al., Mol. Gen. Gene 227:229-237, 1991; Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 243:32-38, 1994)およびトランスポゾンTn10のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227:229-237, 1991)であり得る。ストレス誘導性プロモーターとして、P5CSなどの塩/水ストレス誘導性プロモーター(Zang et al. (1997) Plant Sciences 129:81-89);cor15aなどの冷温誘導性プロモーター(Hajela et al. (1990) Plant Physiol. 93:1246-1252)、cor15b(Wilhelm et al. (1993) Plant Mol Biol 23:1073-1077)、wsc120(Ouellet et al. (1998) FEBS Lett. 423-324-328)、ci7(Kirch et al. (1997) Plant Mol Biol. 33:897-909)およびci21A(Schneider et al. (1997) Plant Physiol. 113:335-45);Trg−31(Chaudhary et al. (1996) Plant Mol. Biol. 30:1247-57)およびrd29(Kasuga et al. (1999) Nature Biotechnology 18:287-291)などの乾燥誘導性プロモーター;Rab17などの浸透圧誘導性プロモーター(Vilardell et al. (1991) Plant Mol. Biol. 17:985-93)およびオスモチン(Raghothama et al. (1993) Plant Mol Biol 23:1117-28);熱ショックタンパク質などの熱誘導性プロモーター(Barros et al. (1992) Plant Mol. 19:665-75;Marrs et al. (1993) Dev. Genet. 14:27-41)、smHSP(Waters et al. (1996) J. Experimental Botany 47:325-338);およびパセリユビキチンプロモーターに由来する熱ショック誘導性エレメント(WO03/102198)が挙げられる。その他のストレス誘導性プロモーターとして、rip2(米国特許第5,332,808号および米国特許公開第2003/0217393号)およびrd29a(Yamaguchi-Shinozaki et al. (1993) Mol. Gen. Genetics 236:331-340)が挙げられる。アグロバクテリウムpMASプロモーター(Guevara-Garcia et al. (1993) Plant J. 4(3):495-505)およびアグロバクテリウムORF13プロモーター(Hansen et al., (1997) Mol. Gen. Genet. 254(3):337-343)を含めた特定のプロモーターは、創傷によって誘導可能である。
【0107】
組織優先プロモーターは、特定の植物組織内での増強された転写および/または発現を標的とするために利用され得る。優先発現を指す場合には、意味されることは、特定の植物組織における、その他の植物組織においてよりも高レベルでの発現である。これらの種のプロモーターの例として、ファゼオリンプロモーターによって提供されるものなどの種子優先発現(Bustos et al. 1989. The Plant Cell Vol. 1, 839-853)およびトウモロコシグロブリン−1遺伝子、Belanger, et al. 1991 Genetics 129:863-972が挙げられる。双子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、マメβ−ファゼオリン、ナピン(napin)、β−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリンなどが挙げられる。単子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDゼイン、27kDaゼイン、γ−ゼイン、ワキシー(waxy)、シュランケン(shrunken)1、シュランケン(shrunken)2、グロブリン1などが挙げられる。種子優先プロモーターとしてまた、例えば、γ−ゼインの胚乳優先プロモーターなどの種子内の特定の組織に遺伝子発現を主に向けるプロモーター、タバコ由来の隠れた(cryptic)プロモーター(Fobert et al. 1994. T-DNA tagging of a seed coat-specific cryptic promoter in tobacco. Plant J. 4: 567-577)、トウモロコシ由来のP遺伝子プロモーター(Chopra et al. 1996. Alleles of the maize P gene with distinct tissue specificities encode Myb-homologous proteinss with C-terminal replacements.Plant Cell 7:1149-1158, Erratum in Plant Cell.1997, 1:109)、トウモロコシ由来のグロブリン−1プロモーター(Belenger and Kriz.1991. Molecular basis for Allelic Polymorphism of the maize Globulin-1 gene. Genetics 129: 863-972)および種子皮またはトウモロコシ穀粒の殻に発現を向けるプロモーター、例えば、果皮特異的グルタミンシンセターゼプロモーター(Muhitch et al., 2002. Isolation of a Promoter Sequence From the Glutamine Synthetase1-2 Gene Capable of Conferring Tissue-Specific Gene Expression in Transgenic Maize. Plant Science 163:865-872)が挙げられる。
【0108】
遺伝子発現カセットは、5’リーダー配列を含有し得る。このようなリーダー配列は、翻訳を増強するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当技術分野で公知であり、例として、ピコルナウイルスリーダー、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コーディング領域)、Elroy-Stein et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:6126-6130 (1989);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス)Carrington and Freed Journal of Virology, 64:1590-1597 (1990)、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)、Allison et al.、Virology 154:9-20 (1986);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、Macejak et al. Nature 353:90-94 (1991);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)、Jobling et al. Nature 325:622-625 (1987);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)、Gallie et al. (1989) Molecular Biology of RNA、237-256頁;およびトウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(Maize chlorotic mottle virus leader)(MCMV)Lommel et al. Virology 81:382-385 (1991)が挙げられる。Della-Cioppa et al. Plant Physiology 84:965-968 (1987)も参照のこと。
【0109】
構築物はまた、イントロンなどの翻訳および/またはmRNA安定性を増強する配列を含有し得る。1種のこのようなイントロンの例として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のヒストンH3.III変異体の遺伝子IIの第1のイントロンがある。Chaubet et al. Journal of Molecular Biology, 225:569-574 (1992)。
【0110】
特定のオルガネラ、特に、プラスチド、アミロプラストに、または小胞体に向けられるか、または細胞の表面もしくは細胞外に分泌される異種核酸配列の発現生成物を有することが望ましい場合には、発現カセットは、輸送ペプチドのコード配列をさらに含み得る。このような輸送ペプチドは、当技術分野で周知であり、それだけには限らないが、アシル担体タンパク質の輸送ペプチド、RUBISCO、植物EPSPシンターゼおよびヒマワリ(Helianthus annuus)の小サブユニット(Lebrun et al.米国特許第5,510,417号)、トウモロコシBrittle−1葉緑体輸送ペプチド(Nelson et al. Plant Physiol 117(4):1235-1252 (1998); Sullivan et al.Plant Cell 3(12):1337-48; Sullivan et al., Planta (1995) 196(3):477-84; Sullivan et al., J. Biol. Chem. (1992) 267(26):18999-9004)などが挙げられる。さらに、最適化された輸送ペプチドなどのキメラ葉緑体輸送ペプチドは、当技術分野で公知である(米国特許第5,510,471号を参照のこと)。さらなる葉緑体輸送ペプチドが、米国特許第5,717,084号、同5,728,925号において、これまでに記載されている。当業者ならば、特定のオルガネラへ産物を発現させることにおいて利用可能な多数の選択肢を容易に理解する。例えば、オオムギアルファアミラーゼ配列は、発現を小胞体に向けるために使用されることが多い(Rogers, J. Biol. Chem. 260:3731-3738 (1985))。
【0111】
一実施形態では、ポリヌクレオチドドナーカセットは、導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態は、本明細書において、遺伝子発現カセットを含むポリペプチドをコードする導入遺伝子を提供する。このような導入遺伝子は、トランスジェニック植物を製造するためのさまざまな適用のいずれかにおいて有用であり得る。遺伝子発現カセットを含む導入遺伝子の特定の例は、本明細書において例示目的で提供され、形質遺伝子、RNAi遺伝子またはリポーター/選択マーカー遺伝子を含む遺伝子発現を含む。
【0112】
植物における発現のための遺伝子の遺伝子操作では、予定される宿主植物(単数または複数)のコドンバイアスは、例えば、植物ゲノムのコドン分布または種々の植物遺伝子のタンパク質コーディング領域に関する情報を見出すための公的に入手可能なDNA配列データベースの使用によって決定され得る。ひとたび最適化された(例えば、植物に最適化された)DNA配列が、紙上で、またはコンピュータで設計されると、設計された配列に正確に配列で対応するよう、実験室において実際のDNA分子が合成され得る。このような合成核酸分子は、クローニングされ得、そうでなければ、自然のまたは天然の供給源に由来するかのように正確に操作され得る。
【0113】
一実施形態では、発現されるべき導入遺伝子が、本願において開示される。遺伝子発現カセットは、リポーター/選択マーカー遺伝子、形質遺伝子またはRNAi遺伝子を含み得る。選択マーカー遺伝子、形質遺伝子およびRNAi遺伝子の例が以下にさらに提供される。本願に開示される方法は、それらが、導入遺伝子のタンパク質産物の特定の機能またはその他の機能に依存しない生殖系列形質転換体を選択するための方法を提供する点で有利である。
【0114】
有害生物または疾患に対して抵抗性を付与する導入遺伝子またはコード配列
(A)植物疾患抵抗性遺伝子。植物防御は、植物中の疾患抵抗性遺伝子(R)の生成物と、病原体中の対応する病原性(Avr)遺伝子の生成物間の特定の相互作用によって活性化されることが多い。ある植物の種類が、クローニングされた抵抗性遺伝子を用いて形質転換され、特定の病原体株に対して抵抗性である植物に操作できる。このような遺伝子の例として、クラドスポリウム・フルブム(Cladosporium fulvu)に対する抵抗性のための、トマトCf−9遺伝子(Jones et al., 1994 Science 266:789)、トマト斑葉細菌病に対する抵抗性のためのプロテインキナーゼをコードする、トマトPto遺伝子(Martin et al., 1993 Science 262:1432)およびシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)に対する抵抗性のための、アラビドプシス属(Arabidopsis)RSSP2遺伝子(Mindrinos et al.、1994 Cell 78:1089)が挙げられる。
【0115】
(B)Bt δ−エンドトキシン遺伝子のヌクレオチド配列などの、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体またはそれをモデルにした合成ポリペプチド(Geiser et al., 1986 Gene 48:109)および栄養型殺虫性(VIP)遺伝子(例えば、Estruch et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:5389-94を参照のこと)。さらに、δ−エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子は、American Type Culture collection (Rockville、Md.)からATCC受託番号40098、67136、31995および31998の下で購入できる。
【0116】
(C)いくつかのクンシラン(Clivia miniata)マンノース結合レクチン遺伝子のヌクレオチド配列などの、レクチン(Van Damme et al., 1994 Plant Molec. Biol. 24:825)。
【0117】
(D)昆虫有害生物に対する殺うじ剤として有用であるアビジンおよびアビジン相同体などの、ビタミン結合タンパク質。米国特許第5,659,026号を参照のこと。
【0118】
(E)酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼ阻害剤またはアミラーゼ阻害剤。
このような遺伝子の例として、イネシステインプロテイナーゼ阻害剤(Abe et al., 1987 J. Biol. Chem. 262:16793)、タバコプロテイナーゼ阻害剤I(Huub et al., 1993 Plant Molec. Biol. 21:985)およびα−アミラーゼ阻害剤(Sumitani et al., 1993 Biosci. Biotech. Biochem. 57:1243)が挙げられる。
【0119】
(F)昆虫特異的ホルモンまたはフェロモン、例えば、エクジステロイドおよび幼若ホルモンその変異体、それをベースとしたミメティックまたはそのアンタゴニストもしくはアゴニスト、例えば、クローニングされた幼若ホルモンエステラーゼのバキュロウイルス発現、幼若ホルモンの不活化(Hammock et al., 1990 Nature 344:458)。
【0120】
(G)発現すると、影響を受ける有害生物の生理学を撹乱する、昆虫特異的ペプチドまたはニューロペプチド(J. Biol. Chem. 269:9)。このような遺伝子の例として、昆虫利尿ホルモン受容体(Regan, 1994)、ディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera punctata)において同定されたアロスタチン(allostatin)(Pratt,1989)および昆虫特異的、麻痺性神経毒(米国特許第5,266,361号)が挙げられる。
【0121】
(H)蛇、スズメバチなどによって天然に産生される昆虫特異的毒液、例えば、サソリ昆虫毒ペプチド(Pang, 1992 Gene 116:165)。
【0122】
(I)モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体または殺虫活性を有する別の非タンパク質分子の高度集積に関与している酵素。
【0123】
(J)生物学的に活性な分子の翻訳後修飾を含めた、修飾に関与している酵素、例えば、天然または合成にかかわらず、解糖酵素、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼおよびエステラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼおよびグルカナーゼ。このような遺伝子の例として、callas遺伝子(PCT公開出願WO93/02197)、キチナーゼをコードする配列(例えば、ATCCから受託番号3999637および67152の下で入手できる)、タバコ鉤虫キチナーゼ(Kramer et al., 1993 Insect Molec. Biol. 23:691)およびパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子(Kawalleck et al., 1993 Plant Molec. Biol. 21:673)が挙げられる。
【0124】
(K)シグナル変換をシミュレートする分子。このような分子の例として、リョクトウカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Botella et al., 1994 Plant Molec. Biol. 24:757)およびトウモロコシカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Griess et al., 1994 Plant Physiol. 104:1467)が挙げられる。
【0125】
(L)疎水性モーメントペプチド。米国特許第5,659,026号および同5,607,914号を参照のこと;後者は、疾患抵抗性を付与する合成抗菌ペプチドを教示している。
【0126】
(M)膜透過酵素、チャネル形成剤またはチャネル遮断剤、例えば、トランスジェニックタバコ植物をシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対して抵抗性にする、セクロピン−ベータ溶菌性ペプチド類似体(Jaynes et al., 1993 Plant Sci. 89:43)。
【0127】
(N)ウイルス侵襲性タンパク質またはそれに由来する複合毒素。例えば、形質転換植物細胞におけるウイルスコートタンパク質の蓄積は、ウイルス感染および/またはコートタンパク質遺伝子が由来するウイルスによって、ならびに関連ウイルスによって達成される疾患発生に対する抵抗性を与える。アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎えそウイルスおよびタバコモザイクウイルスに対して、コートタンパク質媒介性抵抗性が形質転換植物に付与されている。例えば、Beachy et al. (1990) Ann. Rev. Phytopathol. 28:451を参照のこと。
【0128】
(O)昆虫特異的抗体またはそれに由来する免疫毒素。したがって、昆虫腸において重大な代謝機能にターゲッティングされる抗体は、影響を受ける酵素を不活化し、昆虫を死滅させる。例えば、Taylor et al. (1994) Abstract #497、Seventh Intl. Symposium on Molecular Plant-Microbe Interactionsは、一本鎖抗体断片の製造によるトランスジェニックタバコにおける酵素性不活性化を示す。
【0129】
(P)ウイルス特異的抗体。例えば、組換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物は、ウイルス攻撃から保護されるということを示すTavladoraki et al. (1993) Nature 266:469を参照のこと。
【0130】
(Q)病原体または寄生生物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質。したがって、真菌エンドα−1,4−Dポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−α−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することによって、真菌コロニー形成および植物栄養放出を促進する(Lamb et al., 1992) Biotechnology 10:1436。マメエンドポリガラクツロナーゼ阻害性タンパク質をコードする遺伝子のクローニングおよび特性決定が、Toubart et al. (1992 Plant J. 2:367)に記載されている。
【0131】
(R)植物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質、例えば、真菌疾患に対する増大した抵抗性を提供するオオムギリボソーム不活化遺伝子(Longemann et al., 1992). Biotechnology 10:3305。
【0132】
(S)RNA分子が、標的遺伝子の発現を阻害するために使用される、RNA干渉。一例では、RNA分子は、部分的または完全に二本鎖であり、サイレンシング反応を引き起こし、dsRNAの低分子干渉RNAへの切断をもたらし、次いで、これが、相同mRNAを破壊するターゲッティング複合体中に組み込まれる。例えば、Fire et al.、米国特許第6,506,559号;Graham et al.同6,573,099号を参照のこと。
【0133】
除草剤に対する抵抗性を付与する遺伝子
(A)成長点または分裂組織を阻害する除草剤、例えば、イミダザリノン(imidazalinone)、スルホンアニリドまたはスルホニル尿素除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。このカテゴリー中の例示的遺伝子は、突然変異体ALS酵素をコードし(Lee et al., 1988 EMBOJ. 7:1241)、これは、AHAS酵素としても知られている(Miki et al., 1990 Theor. Appl. Genet. 80:449)。
【0134】
(B)突然変異体EPSPシンターゼおよびaroA遺伝子によって、またはGAT(グリホサートアセチルトランスフェラーゼ)もしくはGOX(グリホサートオキシダーゼ)などの遺伝子およびグルホシネート(patおよびbar遺伝子;DSM−2)などのその他のホスホノ化合物ならびにアリールオキシフェノキシプロピオン酸およびシクロヘキサンジオン(ACCアーゼ阻害剤をコードする遺伝子)による代謝不活性化によって与えられる、グリホサートに対する抵抗性または耐性をコードする1種または複数のさらなる遺伝子。例えば、グリホサート抵抗性を付与できるEPSPの形態のヌクレオチド配列を開示する米国特許第4,940,835号を参照のこと。突然変異体aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCC受託番号39256の下で得ることができ、突然変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,769,061号に開示されている。欧州特許出願番号0333033および米国特許第4,975,374号には、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する抵抗性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、欧州特許出願0242246に提供されている。De Greef et al. (1989) Biotechnology 7:61には、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ活性のためにキメラbar遺伝子コーディングを発現するトランスジェニック植物の製造が記載されている。アリールオキシフェノキシプロピオン酸およびセトキシジムおよびハロキシフォップなどのシクロヘキサンジオンに対する抵抗性を付与する遺伝子の例示的なものとして、Marshall et al. (1992) Theor. Appl. Genet. 83:435に記載される、Accl−S1、Accl−S2およびAccl−S3遺伝子がある。
【0135】
(C)光合成を阻害する除草剤、例えば、トリアジンに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(psbAおよびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)。Przibilla et al. (1991) Plant Cell 3:169には、クラミドモナス(Chlamydomonas)を形質転換するための突然変異体psbA遺伝子をコードするプラスミドの使用が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,810,648号に開示されており、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCC受託番号53435、67441および67442の下で入手可能である。グルタチオンS−トランスフェラーゼのDNAコーディングのクローニングおよび発現は、Hayes et al. (1992) Biochem. J. 285:173に記載されている。
【0136】
(D)ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、パラ−ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)がホモゲンチジン酸に形質転換される反応を触媒する酵素と結合する除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。これは、イソキサゾール(EP418175、EP470856、EP487352、EP527036、EP560482、EP682659、米国特許第5,424,276号)、特に、トウモロコシの選択的除草剤であるイソキサフルトール、ジケトニトリル(EP496630、EP496631)、特に、2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−CF3フェニル)プロパン−1,3−ジオンおよび2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−2,3Cl2フェニル)プロパン−1,3−ジオン、トリケトン(EP625505、EP625508、米国特許第5,506,195号)、特に、スルコトリオンおよびピラゾリネートなどの除草剤を含む。例えば、米国特許第6,268,549号および同6,245,968号および米国特許出願公開第20030066102号に記載される遺伝子を含めた、植物において過剰量のHPPDを生成する遺伝子は、このような除草剤に対する耐性または抵抗性を提供し得る。
【0137】
(E)遺伝子。フェノキシオーキシン除草剤、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)に対する抵抗性または耐性をコードし、アリールオキシフェノキシプロピオネート(AOPP)除草剤に対する抵抗性または耐性も付与する遺伝子。このような遺伝子の例として、米国特許第7,838,733号に記載される、α−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素(aad−1)遺伝子が挙げられる。
【0138】
(F)2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)などのフェノキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性をコードし、フルロキシピルまたはトリクロピルなどのピリジルオキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性も付与し得る遺伝子。このような遺伝子の例として、WO2007/053482 A2に記載されるα−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素遺伝子(aad−12)が挙げられる。
【0139】
(G)ジカンバに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(例えば、米国特許公開第20030135879号を参照のこと)。
【0140】
(H)プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)を阻害する除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(米国特許第5,767,373号を参照のこと)。
【0141】
(I)光化学系II反応中心(PS II)のコアタンパク質と結合する、トリアジン除草剤(アトラジンなど)および尿素誘導体(ジウロンなど)除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(Brussian et al., (1989) EMBO J. 1989, 8(4): 1237-1245を参照のこと。
【0142】
価値が付加された形質を付与するか、またはそれに貢献する遺伝子
(A)植物のステアリン酸含量を増大させるために、例えば、アンチセンス遺伝子またはステアロイル−ACP不飽和化酵素を用いて、トウモロコシまたはアブラナ属(Brassica)を形質転換することによって修飾された脂肪酸代謝(Knultzon et al., 1992) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:2624。
【0143】
(B)減少したフィチン酸含量
(1)クロコウジカビ(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子などのフィターゼをコードする遺伝子の導入(Van Hartingsveldt et al., 1993 Gene 127:87)は、フィチン酸の分解を増強し、より多くの遊離リン酸を形質転換植物に付加する。
(2)フィチン酸含量を低下させる遺伝子は、導入され得る。トウモロコシでは、これは、例えば、クローニングすることおよび次いで、低レベルのフィチン酸を特徴とするトウモロコシ突然変異体と関連している単一の対立遺伝子と関連しているDNAを再導入することによって達成され得る(Raboy et al., 1990 Maydica 35:383)。
【0144】
(C)例えば、植物を、デンプンの分岐パターンを変更する酵素の遺伝子コーディングを用いて形質転換することによって達成される修飾された炭水化物組成物。このような酵素の例として、ストレプトコッカス・ミューカス(Streptococcus mucus)フルクトース転移酵素遺伝子(Shiroza et al., 1988) J. Bacteriol. 170:810、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子(Steinmetz et al., 1985 Mol. Gen. Genel. 200:220)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ(Pen et al., 1992 Biotechnology 10:292)、トマトインベルターゼ遺伝子(Elliot et al.、1993)、オオムギアミラーゼ遺伝子(Sogaard et al., 1993 J. Biol. Chem. 268:22480)およびトウモロコシ胚乳デンプン分岐酵素II(Fisher et al., 1993 Plant Physiol. 102:10450)が挙げられる。
【0145】
その後の実施形態では、導入遺伝子は、リポーター遺伝子を含む。種々の実施形態では、リポーター遺伝子は、yfp遺伝子、gus遺伝子、rfp遺伝子、gfp遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、aad−1遺伝子、aad−12遺伝子、pat遺伝子およびグリホサート耐性遺伝子からなる群から選択される。形質転換された細胞または組織または植物の部分または植物体の選択のためのリポーターまたはマーカー遺伝子が、形質転換ベクター中に含まれ得る。選択マーカーの例として、除草剤または抗生物質などの代謝拮抗剤に対する抵抗性を付与するもの、例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13:143-149, 1994;Herrera Estrella et al., Nature 303:209-213, 1983;Meijer et al., Plant Mol. Biol. 16:807-820, 1991);アミノグリコシドネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシン(paromycin)に対する抵抗性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Herrera-Estrella, EMBO J. 2:987-995, 1983およびFraley et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 80:4803 (1983))およびハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(Marsh, Gene 32:481-485, 1984;Waldron et al.,Plant Mol. Biol. 5:103-108, 1985;Zhijian et al., Plant Science 108:219-227, 1995も参照のこと);細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:8047, 1988);細胞がマンノースを利用することを可能にするマンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(WO94/20627);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチンに対する抵抗性を付与するオルニチンデカルボキシラーゼ(DFMO; McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.);およびブラストサイジンSに対する抵抗性を付与する、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59:2336-2338, 1995)が挙げられる。
【0146】
さらなる選択マーカーとして、例えば、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素抵抗性を付与する突然変異体アセト乳酸シンターゼ(Lee et al., EMBO J. 7:1241-1248, 1988)、アトラジンに対する抵抗性を付与する突然変異体psbA(Smeda et al., Plant Physiol. 103:911-917, 1993)または突然変異体プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(米国特許第5,767,373号を参照のこと)またはグルホシネートなどの除草剤に対する抵抗性を付与するその他のマーカーが挙げられる。適した選択マーカー遺伝子の例として、それだけには限らないが、クロラムフェニコール(Herrera Estrella et al., EMBO J. 2:987-992, 1983);ストレプトマイシン(Jones et al., Mol. Gen. Genet. 210:86-91, 1987);スペクチノマイシン(Bretagne-Sagnard et al., Transgenic Res. 5:131-137, 1996);ブレオマイシン(Hille et al., Plant Mol. Biol. 7:171-176, 1990);スルホンアミド(Guerineau et al., Plant Mol. Biol. 15:127-136, 1990);ブロモキシニル(Stalker et al., Science 242:419-423, 1988);グリホサート(Shaw et al., Science 233:478-481, 1986);ホスフィノトリシン(DeBlock et al., EMBO J. 6:2513-2518, 1987)に対する抵抗性をコードする遺伝子などが挙げられる。
【0147】
選択遺伝子の使用のための1つの選択肢は、グルホシネート抵抗性をコードするDNAであり、一実施形態では、キャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーターの制御下の、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(pat)、トウモロコシ最適化pat遺伝子またはbar遺伝子である。これらの遺伝子は、ビアラホスに対する抵抗性を付与する(Wohlleben et al., (1988) Gene 70: 25-37);Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2:603; 1990; Uchimiya et al., Biotechnology 11:835, 1993;White et al., Nucl. Acids Res. 18:1062、1990; Spencer et al., Theor. Appl. Genet. 79:625-631, 1990;およびAnzai et al.、Mol. Gen. Gen. 219:492、1989を参照のこと)を参照。pat遺伝子の1つのバージョンとして、トウモロコシ最適化pat遺伝子があり、米国特許第6,096,947号に記載されている。
【0148】
さらに、ポリヌクレオチドをコードするマーカーを含有する植物細胞の同定を容易にするマーカーが使用され得る。配列の存在が、測定可能な産物をもたらし、植物細胞の破壊を伴わずに産物をもたらし得る場合には、スコア化可能なまたはスクリーニング可能なマーカーは有用である。例として、種々の発色基質が公知である酵素をコードするβ−グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)(例えば、米国特許第5,268,463号および同5,599,670号);クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Jefferson et al. The EMBO Journal vol. 6 No. 13 pp. 3901-3907);およびアルカリホスファターゼが挙げられる。好ましい実施形態では、使用されるマーカーは、ベータ−カロテンまたはプロビタミンA(Ye et al., Science 287:303-305-(2000))である。この遺伝子は、イネの栄養を増強するために使用されてきたが、この例では、代わりに、スクリーニング可能なマーカーとしてとして使用され、対象とする遺伝子と連結している遺伝子の存在は、提供される金色によって検出される。遺伝子が、植物へのその栄養的な貢献のために使用される状況とは異なり、マーキング目的には、少量のタンパク質で十分である。その他のスクリーニング可能なマーカーとして、例えば、中でも、植物組織におけるアントシアニン色素(赤色)の製造を調節する生成物をコードする、R−遺伝子座遺伝子(Dellaporta et al., in Chromosome Structure and Function, Kluwer Academic Publishers, Appels and Gustafson eds., pp. 263-282 (1988));トウモロコシC1遺伝子(Kao et al., Plant Cell (1996) 8: 1171-1179;Scheffler et al., Mol. Gen. Genet. (1994) 242:40-48)およびトウモロコシC2(Wienand et al., Mol. Gen. Genet. (1986) 203:202-207)などのフラボノイド色素の生合成を制御する遺伝子;B遺伝子(Chandler et al., Plant Cell(1989) 1:1175-1183)、p1遺伝子(Grotewold et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA (1991) 88:4587-4591;Grotewold et al., Cell (1994) 76:543-553;Sidorenko et al., Plant Mol. Biol. (1999)39:11-19);bronze遺伝子座遺伝子(Ralston et al., Genetics (1988) 119:185-197;Nash et al., Plant Cell (1990) 2(11): 1039-1049)を含めた、全般的に、アントシアニン/フラボノイド遺伝子が挙げられる(Taylor and Briggs, The Plant Cell (1990)2:115-127での考察を参照のこと)。
【0149】
適したマーカーのさらなる例として、シアン蛍光タンパク質(CYP)遺伝子(Bolte et al. (2004) J. Cell Science 117: 943-54およびKato et al. (2002) Plant Physiol 129: 913-42)、黄色蛍光タンパク質遺伝子(Evrogen製のPHIYFP(商標);Bolte et al. (2004) J. Cell Science 117: 943-54を参照のこと);ルシフェラーゼをコードし、例えば、X線フィルム、シンチレーション計数、蛍光分光光度測定、微光ビデオカメラ、光子計数カメラまたはマルチウェルルミノメトリーを使用してその存在が検出され得る、lux遺伝子(Teeri et al. (1989) EMBO J. 8:343);緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(Sheen et al., Plant J. (1995) 8(5):777-84);およびマーカー遺伝子で形質転換された植物細胞が、赤色であり、したがって、視覚的に選択可能である、DsRed2(Dietrich et al. (2002) Biotechnologys 2(2):286-293)が挙げられる。さらなる例として、種々の発色基質(例えば、PADAC、発色性セファロスポリン)が公知である酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(Sutcliffe, Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1978) 75:3737);発色性カテコールを変換できるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(Zukowsky et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:1101);α−アミラーゼ遺伝子(Ikuta et al., Biotech. (1990) 8:241)およびチロシンをDOPAおよびドーパキノンに酸化でき、順に、これが縮合して、容易に検出可能な化合物メラニンを形成する酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(Katz et al., J. Gen. Microbiol. (1983) 129:2703)が挙げられる。明確に、多数のこのようなマーカーが利用可能であり、当業者に公知である。
【0150】
当技術分野において公知の用語「同一性パーセント」(または「同一性%」)とは、配列を比較することによって決定されるような、2種以上のポリペプチド配列または2種以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、一続きのこのような配列間のマッチによって決定されるような、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」および「類似性」は、それだけには限らないが、以下に開示されるものを含めた公知の方法によって容易に算出され得る。1)Computational Molecular Biology (Lesk、A. M., Ed.) Oxford University: NY (1988);2)Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith、D. W., Ed.) Academic, NY (1993);3)Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., Eds.) Humania: NJ (1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje, G., Ed.) Academic (1987);および5)Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., Eds.) Stockton, NY (1991)。
【0151】
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための技術は、当技術分野で公知である。通常、このような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定することおよび/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定することおよびこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列はまた、この様式で決定および比較され得る。一般に、同一性とは、それぞれ、2種のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2種以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、その同一性パーセントを決定することによって比較され得る。2種の配列の同一性パーセントは、核酸であるか、アミノ酸配列であるかにかかわらず、2種のアラインされた配列間の正確なマッチの数を短い方の配列の長さで除し、100を乗じたものである。参照によりその全文が本明細書に組み込まれるRussell, R., and Barton, G.,「Structural Features can be Unconserved in Proteins with Similar Folds」, J. Mol. Biol. 244, 332-350 (1994), at p. 337を参照のこと。
【0152】
さらに、同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アラインメントおよび同一性パーセント算出は、例えば、ベクターNTI(登録商標)一式のAlignXプログラム(Invitrogen、Carlsbad、CA)またはLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティング一式のMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.、Madison、WI)を使用して実施され得る。配列の複数のアラインメントが、Clustal Vと標識されたアラインメント法(Higgins and Sharp, CABIOS. 5:151-153 (1989); Higgins, D.G. et al., Comput. Appl. Biosci., 8:189-191 (1992)によって開示される)に対応し、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティング一式のMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される「アラインメントのClustal V法」を含めた、アルゴリズムのいくつかの変法を包含する「アラインメントのClustal法」を使用して実施される。マルチプルアラインメントのために、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に相当する。Clustal法を使用するタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性パーセントの算出のデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸については、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4であり得る。Clustal Vプログラムを使用する配列のアラインメント後、同一プログラム中の「配列距離」表を見ることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。さらに、「アラインメントのClustal W法」が入手可能であり、Clustal Wと標識されたアラインメント法(Higgins and Sharp, CABIOS. 5:151-153 (1989); Higgins, D.G. et al., Comput. Appl. Biosci. 8:189-191(1992)によって記載される)に対応し、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティング一式のMegAlign(商標)v6.1プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される。マルチプルアラインメントのデフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergen Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUB)。Clustal Wプログラムを使用する配列のアラインメント後、同一プログラム中の「配列距離」表を見ることによって、「同一性パーセント」を得ることが可能である。
【0153】
多数のレベルの配列同一性が、その他の種に由来するポリペプチドを同定することにおいて有用であるということは、当業者によって十分に理解されており、このようなポリペプチドは、同一または同様の機能または活性を有する。同一性パーセントの有用な例として、それだけには限らないが、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%または55%〜100%の任意の整数パーセンテージ、例えば、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が、本開示の実施形態の記載において有用であり得る。適した核酸断片は、上記の相同性だけではなく、通常、少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも100個のアミノ酸、より好ましくは、少なくとも150個のアミノ酸、さらにより好ましくは、少なくとも200個のアミノ酸、最も好ましくは、少なくとも250個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0154】
用語「配列解析ソフトウェア」とは、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析にとって有用である任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列解析ソフトウェア」は、市販のものである場合も、独立に開発されたものである場合もある。典型的な配列解析ソフトウェアとして、限定するものではないが、1)GCG一式のプログラム(Wisconsinパッケージバージョン9.0、Genetics Computer Group (GCG)、Madison、WI);2)BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al. J.Mol. Biol., 215:403-10 (1990));3)DNASTAR(DNASTAR,Inc. Madison、WI);4)Sequencher(Gene Codes Corporation、Ann Arbor、MI);および5)Smith−Watermanアルゴリズムを組み込んでいるFASTAプログラム(W. R. Pearson, Comput. Methods Genome Res. [Proc. Int. Symp.], (1994), Meeting Date 1992, 111-20. Suhai, Sandor(編) Plenum: New York, NY)が挙げられる。本願の文脈内で、分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合には、特に断りのない限り、分析の結果は、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくということが理解される。本明細書において使用される場合、「デフォルト値」とは、最初に初期化される際に配列解析ソフトウェアとともに元々ロードされる任意の一連の値またはパラメータを意味する。
【0155】
ハイブリダイゼーションに言及する場合、公知のヌクレオチド配列のすべてまたは一部を含む核酸が、プローブ配列に対して相当な量の配列同一性を有する、クローニングされたゲノムDNA断片またはcDNA断片の集団(すなわち、ゲノムまたはcDNAライブラリー)中に存在する他の対応するヌクレオチド配列と選択的にハイブリダイズするプローブとして使用され得る。ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、プラスミドDNA断片、cDNA断片、RNA断片、PCR増幅されたDNA断片、オリゴヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドであり得、
32Pなどの検出可能な基、または任意のその他の検出可能なマーカーで標識され得る。したがって、例えば、ハイブリダイゼーションのプローブは、本開示の実施形態のDNA配列に基づいて合成オリゴヌクレオチドを標識することによって作製され得る。ハイブリダイゼーションのプローブを調製する方法およびcDNAおよびゲノムライブラリーを構築する方法は、当技術分野で公知であり、開示されている(Sambrook et al., 1989)。
【0156】
本開示の実施形態の核酸プローブおよびプライマーは、ストリンジェントな条件下で標的DNA配列とハイブリダイズする。サンプルにおいてトランスジェニック事象に由来するDNAの存在を同定するために、任意の従来の核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅法が使用され得る。核酸分子またはその断片は、特定の状況下で他の核酸分子と「特異的にハイブリダイズ」できる。本明細書において使用される場合、2種の核酸分子は、2種の分子が、逆平行の、二本鎖核酸構造を形成できる場合に、互いに特異的にハイブリダイズすると言われる。核酸分子は、2種の核酸分子が、完全な相補性を示す場合に、別の核酸分子の「相補体」であるといわれる。本明細書において使用される場合、分子は、分子の一方のどのヌクレオチドも、もう一方のヌクレオチドと相補的である場合に「完全な相補性」を示すといわれる。完全な相補性を示す分子は、一般に、従来の「高ストリンジェンシー」条件下で、十分な安定性をもって互いにハイブリダイズし、互いにアニーリングされたままであることを可能にする。
【0157】
2種の分子は、少なくとも従来の「低ストリンジェンシー」条件下で、十分な安定性をもって互いにハイブリダイズでき、互いにアニーリングされたままであることを可能にする場合に「最少の相補性」を示すといわれる。従来の低ストリンジェンシー条件は、Sambrook et al. (1989)によって記載されている。核酸分子について、プライマーまたはプローブとして働くためには、使用される特定の溶媒および塩濃度下で、安定な二本鎖構造を形成できるよう配列の最少の相補性示すことのみが必要である。
【0158】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす因子は、当業者に周知であり、これとして、限定するものではないが、温度、pH、イオン強度、ならびに、例えばホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの有機溶媒の濃度が挙げられる。当業者には公知であるように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、高温、低イオン強度および低溶媒濃度によって増大される。
【0159】
用語「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェンシー条件」は、Sambrook et al. (1989)(9.52〜9.55)で論じられた特定のハイブリダイゼーション手順による、核酸プローブの、標的核酸との(すなわち、対象とする特定の核酸配列を含む核酸分子との)ハイブリダイゼーションに関して機能的に定義される。Sambrook et al. (1989)(9.47〜9.52および9.56〜9.58)も参照のこと。
【0160】
通常、ストリンジェント条件とは、塩濃度が、pH7.0〜8.3および短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)については、少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)については、少なくとも約60℃である温度で、約1.5M Na
+イオン未満、通常、約0.01〜1.0M Na
+イオン濃度(またはその他の塩)であるものとなる。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加でも達成され得る。例示的な低ストリンジェンシー条件として、37℃の、30〜35%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いるハイブリダイゼーションおよび50〜55℃の、1X〜2X SSC(20X SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸三ナトリウム)での洗浄が挙げられる。例示的な中程度のストリンジェンシー条件として、37℃の、40〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1% SDSでのハイブリダイゼーションおよび55℃〜60℃の0.5X〜1X SSCでの洗浄が挙げられる。例示的な高ストリンジェンシー条件として、約37℃の、約50%ホルムアミド、1.0M NaCl、0.1% SDSでのハイブリダイゼーションおよび60〜65℃の0.1X SSCでの洗浄が挙げられる。
【0161】
特異性は通常、ハイブリダイゼーション後洗浄の関数であり、重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッドについて、T
mは、方程式T
m=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form.)−500/L(式中、Mは、一価カチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%form.は、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは、塩基対でのハイブリッドの長さである)から概算され得る(Meinkoth and Wahl, 1984)。T
mは、相補的標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする温度である(特定のイオン強度およびpH下で)。T
mは、ミスマッチの各1%について約1℃低下する;したがって、T
m、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、ハイブリダイズする所望の同一性の配列のために調整され得る。例えば、90%の同一性を有する配列が求められる場合には、T
mは、10℃低下され得る。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHでの特定の配列およびその相補体の融解点(T
m)よりも約5℃低いものであるよう選択される。しかし、激しくストリンジェントな条件は、融解点(T
m)より1、2、3または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用でき;中程度にストリンジェントな条件は、融解点(T
m)よりも6、7、8、9または10低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用でき;低ストリンジェンシー条件は、融解点(T
m)よりも11〜20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用できる。方程式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成物および所望のTmを使用することで、当業者ならば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーの変動は、本質的に記載されているということは理解される。所望の程度のミスマッチが、45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のT
mをもたらす場合には、より高い温度が使用され得るようSSC濃度を高めることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションの詳細な指針は、(1997) Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, pages 2-40, Third Edit. (1997) and Sambrook et al. (1989)に見出される。
【0162】
本開示の別の実施形態では、植物細胞のゲノム内のポリヌクレオチドドナーカセットのターゲッティングされた組込みのための方法が開示される。特定の実施形態では、少なくとも1つのDNA結合ドメインおよび少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含む部位特異的DNA結合ヌクレアーゼであって、少なくとも1つのDNA結合ドメインが、植物細胞のゲノム内の標的部位と結合する部位特異的DNA結合ヌクレアーゼが発現される。その他の実施形態では、植物細胞は、ポリヌクレオチドドナーカセットと接触される。さらなる実施形態では、植物細胞のゲノム内の標的部位は、部位特異的DNA結合ヌクレアーゼで切断される。さらに別の実施形態では、ポリヌクレオチドドナーカセットは、植物細胞のゲノム内の標的部位中に組み込まれる。
【0163】
一実施形態では、相同性によって指示される修復機序による、植物細胞のゲノム内のポリヌクレオチドドナーカセットのターゲッティングされた組込みが開示される。別の実施形態では、非相同末端結合によって指示される修復機序による、植物細胞のゲノム内のポリヌクレオチドドナーカセットのターゲッティングされた組込みが開示される。
【0164】
本明細書において開示されるドナー分子は、ターゲッティングされた、相同性非依存方法によって、細胞のゲノム中に組み込まれる。このようなターゲッティングされた組込みのために、ゲノムは、ヌクレアーゼ、例えば、DNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガー結合ドメインまたはTALエフェクタードメインが、所定の切断部位でまたはその付近で標的部位と結合するよう遺伝子操作される)とヌクレアーゼドメイン(例えば、切断ドメインまたは切断ハーフドメイン)の間の融合物を使用して所望の位置(単数または複数)で切断される。特定の実施形態では、各々、DNA結合ドメインおよび切断ハーフドメインを含む2種の融合タンパク質が、細胞中で発現され、機能的切断ドメインが再構築され、DNAが標的部位の近くで切断されるような方法で並べられた標的部位と結合する。一実施形態では、切断は、2つのDNA結合ドメインの標的部位間で起こる。DNA結合ドメインの一方または両方が遺伝子操作され得る。米国特許第7,888,121号;米国特許公開第20050064474号および国際特許公開WO05/084190、WO05/014791およびWO03/080809も参照のこと。
【0165】
本明細書において記載されるようなヌクレアーゼは、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドとして導入され得る。例えば、各々、前記のポリペプチドの1種をコードする配列を含む2種のポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得、ポリペプチドが発現され、各々がその標的配列と結合する場合には、標的配列でまたはその付近で切断が起こる。あるいは、両融合ポリペプチドをコードする配列を含む単一ポリヌクレオチドが、細胞中に導入される。ポリヌクレオチドは、DNA、RNAまたはDNAおよび/もしくはRNAの任意の修飾形態もしくは類似体であり得る。
【0166】
対象の領域中に二本鎖破壊を導入した後に、導入遺伝子は、本明細書において記載されるような二本鎖ドナー分子の直線化後に非相同性依存方法(例えば、非相同末端結合(NHEJ))によってターゲッティングされた方法で対象の領域中に組み込まれる。二本鎖ドナーは、ヌクレアーゼを用いて、例えば、ゲノム中に二本鎖破壊を導入するために使用される同一または異なるヌクレアーゼのうち1種または複数を用いてin vivoで直線化されることが好ましい。細胞中の染色体およびドナーの同調切断は、ドナーDNA分解を制限し得る(細胞中への導入に先立つドナー分子の直線化と比較して)。ドナーの直線化のために使用されるヌクレアーゼ標的部位は、導入遺伝子(単数または複数)配列(単数または複数)を破壊しないことが好ましい。
【0167】
導入遺伝子は、ヌクレアーゼオーバーハングの簡単な連結によって予測される方向で(「フォワード」または「AB」方向と表される)または別の方向で(「リバース」または「BA」方向と表される)ゲノム中に組み込まれ得る。特定の実施形態では、導入遺伝子は、ドナーおよび染色体オーバーハングの正確な連結後に組み込まれる。その他の実施形態では、BAまたはAB方向のいずれかでの導入遺伝子の組込みは、いくつかのヌクレオチドの欠失をもたらす。
【0168】
IV.ドナーポリヌクレオチドの部位特異的組込みの検出のためのアッセイ
一実施形態では、増幅反応は、定量化される。その他の実施形態では、増幅反応は、検出される。種々の実施形態では、検出は、アガロースまたはアクリルアミドゲルでの可視化、アンプリコンの配列決定またはシグネチャープロファイルを使用することを含み得、これでは、シグネチャープロファイルは、融解温度または蛍光シグネチャープロファイルからなる群から選択される。
【0169】
本開示の実施形態の核酸分子またはそのセグメントは、PCR増幅のためのプライマーとして使用され得る。PCR増幅の実施では、プライマーおよび鋳型間で特定のミスマッチ度が許容され得る。したがって、例示されたプライマーの突然変異、欠失および挿入(特に、5’または3’末端へのヌクレオチドの付加)は、本開示の範囲内に入る。当技術分野に公知の方法によって、所与のプライマー中に突然変異誘発、挿入および欠失が生じ得る。
【0170】
検出の別の例として、Winge (Innov. Pharma. Tech. 00:18-24, 2000)によって記載されるピロシーケンス技術がある。この方法では、隣接するゲノムDNAおよび挿入部分DNA接合部分と重なるオリゴヌクレオチドが、設計される。オリゴヌクレオチドは、対象とする領域に由来する一本鎖PCR産物(挿入された配列中の1種のプライマーおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中の1種)とハイブリダイズされ、DNAポリメラーゼ、ATP、スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン5’ホスホスルフェートおよびルシフェリンの存在下でインキュベートされる。dNTPが個別に添加され、組込みが光シグナルをもたらし、これが測定される。光シグナルは、成功した増幅、ハイブリダイゼーションおよび単一または複数塩基伸長によって、導入遺伝子挿入部分/それぞれの両端に位置する配列の存在を示す。(この技術は、特定の遺伝子の、既知である場合の検出にではなく、最初の配列決定に使用される。)
【0171】
分子ビーコン(Molecular Beacons)は、配列検出における使用のために記載されている。手短には、それぞれの両端に位置するゲノムおよび挿入部分DNA接合部分と重なるFRETオリゴヌクレオチドプローブが、設計される。FRETプローブの独特の構造が、蛍光および消光部分を極近接して維持する二次構造を含有するものをもたらす。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入部分DNA配列中の1種のプライマーおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中の1種)が、熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。成功したPCR増幅後、FRETプローブ(複数可)の標的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブ二次構造の除去および蛍光および消光部分の空間的分離をもたらす。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションによって、それぞれの両端に位置するゲノム/導入遺伝子挿入部分配列の存在を示す。
【0172】
加水分解プローブアッセイは、別に、TAQMAN(登録商標)(Life Technologies、Foster City、Calif.)としても知られる、DNA配列の存在を検出および定量化する方法である。手短には、事象特異的検出のために導入遺伝子内に1つのオリゴおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中に1つを有するFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブおよびPCRプライマー(挿入部分DNA配列中の1種のプライマーおよびそれぞれの両端に位置するゲノム配列中の1種)が、熱安定性ポリメラーゼおよびdNTPの存在下で循環される。FRETプローブのハイブリダイゼーションが、FRETプローブ上の消光部分から蛍光部分の切断および放出をもたらす。蛍光シグナルは、成功した増幅およびハイブリダイゼーションによって、それぞれの両端に位置する/導入遺伝子挿入部分配列の存在を示す。
【0173】
KASParアッセイは、DNA配列の存在を検出および定量化する方法である。手短には、ターゲッティングされたゲノム遺伝子座を含むゲノムDNAサンプルが、KASPar(登録商標)アッセイ系として知られるアッセイに基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してスクリーニングされる。本開示内容の実施において使用されるKASPar(登録商標)アッセイは、複数のプライマーを含有するKASPar(登録商標)PCRアッセイ混合物を利用し得る。PCRアッセイ混合物中に使用されるプライマーは、少なくとも1種の正方向プライマーおよび少なくとも1種のリバースプライマーを含み得る。正方向プライマーは、ドナーDNAポリヌクレオチドの特定の領域に対応する配列を含有し、リバースプライマーは、ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。さらに、PCRアッセイ混合物において使用されるプライマーは、少なくとも1種の正方向プライマーおよび少なくとも1種のリバースプライマーを含み得る。例えば、KASPar(登録商標)PCRアッセイ混合物は、2種の異なる対立遺伝子に対応する2種の正方向プライマーおよび1種のリバースプライマーを使用し得る。正方向プライマーの一方は、内因性ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。第2の正方向プライマーは、ドナーDNAポリヌクレオチドの特定の領域に対応する配列を含有する。リバースプライマーは、ゲノム配列の特定の領域に対応する配列を含有する。増幅反応の検出のためのこのようなKASPar(登録商標)アッセイは、本開示内容の一実施形態である。
【0174】
いくつかの実施形態では、蛍光シグナルまたは蛍光色素は、HEX蛍光色素、FAM蛍光色素、JOE蛍光色素、TET蛍光色素、Cy3蛍光色素、Cy3.5蛍光色素、Cy5蛍光色素、Cy5.5蛍光色素、Cy7蛍光色素およびROX蛍光色素からなる群から選択される。
【0175】
その他の実施形態では、増幅反応は、フローサイトメトリーによって検出可能な濃度範囲で細胞DNAを染色可能である適した第2の蛍光DNA色素を使用して実施され、リアルタイムサーモサイクラーによって検出可能である蛍光発光スペクトルを有する。その他の核酸色素が公知であり、継続的に同定されているということは当業者によって理解されなければならない。YO−PRO−1(登録商標)、SYTOX Green(登録商標)、SYBR Green I(登録商標)、SYTO11(登録商標)、SYTO12(登録商標)、SYTO13(登録商標)、BOBO(登録商標)、YOYO(登録商標)およびTOTO(登録商標)などの適当な励起および発光スペクトルを有する任意の適した核酸色素が使用され得、一実施形態では、第2の蛍光DNA色素は、10μM未満、4μM未満または2.7μM未満で使用されるSYTO13(登録商標)である。
【0176】
開示される主題の実施形態は、以下の実施例においてさらに例示される。これらの実施例は、単に例示目的で与えられるということは理解されなくてはならない。上記の実施形態および以下の実施例から、当業者ならば、本開示の本質的な特徴を確認でき、その趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適応させるために本開示の実施形態の種々の変法および修飾を行うことができる。したがって、本明細書において示され、記載されるものに加えて、本開示の実施形態の種々の修飾は、以下の記載から当業者に明らかとなる。このような修飾はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。以下は、例示として提供され、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0177】
[実施例1]
トウモロコシ(Zea mays)中のゲノム遺伝子座と結合するジンクフィンガーの設計
ターゲッティング可能なトウモロコシ(Zea mays)ゲノム遺伝子座の同定されたDNA配列に対して向けられるジンクフィンガータンパク質を、以前に記載されたように設計した。例えば、Urnov et al.,(2005) Nature 435:646-551を参照のこと。例示的標的配列および認識へリックスが、表1(認識ヘリックス領域設計)および表2(標的部位)に示されている。表2には、ZFP認識へリックスによって接触される標的部位中のヌクレオチドが、大文字で示されており、接触されないヌクレオチドは、小文字で示されている。トウモロコシ(Zea mays)中の72種の選択されたゲノム遺伝子座のすべてについて、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)標的部位を設計した。多数のZFP設計を開発し、試験して、トウモロコシ(Zea mays)において同定および選択された72種の異なる代表的なゲノム遺伝子座標的部位を用いる酵母プロキシ系において最高レベルの効率で結合するフィンガーを同定した。ジンクフィンガー認識配列と最高レベルの効率で結合した特定のZFP認識へリックス(表1)を、トウモロコシ(Zea mays)ゲノム内のドナー配列のターゲッティングおよび組込みのために使用した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
トウモロコシ(Zea mays)の代表的なゲノム遺伝子座ジンクフィンガー設計を、CCHC構造を有する少なくとも1つのフィンガーを有するタンパク質をコードするジンクフィンガー発現ベクター中に組み込んだ。米国特許公開第2008/0182332号を参照のこと。特に、各タンパク質中の最後のフィンガーは、認識ヘリックスのためのCCHC骨格を有していた。非標準ジンクフィンガーコード配列を、トウモロコシ(Zea mays)に由来する4種のアミノ酸リンカーおよびopaque−2核局在性シグナルを介してIIS型制限酵素FokIのヌクレアーゼドメイン(Wah et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10564-10569の配列のアミノ酸384〜579)と融合して、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成した。米国特許第7,888,121号を参照のこと。種々の機能性ドメインのジンクフィンガーを、in vivo使用のために選択した。推定ゲノム標的部位と結合するように設計し、製造し、試験した多数のZFNのうち、上記の表2に記載されたZFNを、in vivo 活性を有すると同定し、効率的に結合可能であり、植物体において独特のトウモロコシ(Zea mays)ゲノムポリヌクレオチド標的部位を切断すると特性決定した。
【0181】
ZFN構築物アセンブリー
以前に記載されたように同定されたZFN遺伝子発現構築物を含有するプラスミドベクターを設計し、当技術分野で一般的に知られている技能および技術を使用して完成した(例えば、AusubelまたはManiatisを参照のこと)。各ZFNコード配列を、ジンクフィンガーヌクレアーゼの上流に位置するopaque−2核局在性シグナル(Maddaloni et al., (1989) Nuc. Acids Res. 17:7532)をコードする配列と融合した。非標準ジンクフィンガーコード配列を、IIS型制限酵素FokIのヌクレアーゼドメイン(Wah et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10564-10569の配列のの配列のアミノ酸384〜579)と融合した。融合タンパク質の発現は、5’非翻訳領域(UTR)を含むトウモロコシ(Zea mays)ユビキチン遺伝子に由来する強力な構成的プロモーターによって駆動された(Toki et al., (1992) Plant Physiology 100;1503-07)。発現カセットはまた、トウモロコシ(Zea mays)ペルオキシダーゼ5遺伝子(Per5)遺伝子に由来する3’UTRも含んでいた(転写ターミネーターおよびポリアデニル化部位を含む)(米国特許公開第2004/0158887号)。トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来のヌクレオチド配列をコードする自己加水分解性2A(Szymczak et al., (2004) Nat Biotechnol. 22:760-760)を、構築物中にクローニングされた2種のジンクフィンガーヌクレアーゼ融合タンパク質の間に加えた。
【0182】
プラスミドベクターを、IN−FUSION(商標)Advantage Technology(Clontech、Mountain View、CA)を使用してアセンブルした。制限エンドヌクレアーゼは、New England BioLabs(Ipswich、MA)から入手し、DNAライゲーションのためにT4 DNAリガーゼ(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用した。プラスミド調製は、NUCLEOSPIN(登録商標)プラスミドキット(Macherey−Nagel Inc.、Bethlehem、PA)またはプラスミドMidiキット(Qiagen)を使用し、供給業者の使用説明書に従って実施した。DNA断片は、アガローストリス−酢酸ゲル電気泳動後にQIAQUICK GEL EXTRACTION KIT(商標)(Qiagen)を使用して単離した。すべてのライゲーション反応のコロニーをminiprep DNAの制限消化によって最初にスクリーニングした。選択されたクローンのプラスミドDNAを、市販のシークエンシングベクター(Eurofins MWG Operon、Huntsville、AL)によって配列決定した。配列データを、SEQUENCHER(商標)ソフトウェア(Gene Codes Corp.、Ann Arbor、MI)を使用してアセンブルし、解析した。
【0183】
ユニバーサルドナー構築物アセンブリー
多数の標的遺伝子座の迅速試験を支援するために、新規の可動性のユニバーサルドナー系配列を設計し、構築した。ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、ハイスループットベクター構築方法論および解析と適合する。ユニバーサルドナー系は、少なくとも3つのモジュラードメイン:非可変性ZFN結合ドメイン、解析によっておよびユーザーによって規定される特徴のドメインならびにベクタースケールアップのための簡単なプラスミド骨格から構成されていた。非可変性ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、すべてのドナーに共通しており、トウモロコシ(Zea mays)標的部位のすべてにわたって使用され得る有限のセットのアッセイの設計を可能にし、したがって、ターゲッティング評価の均一性を提供し、解析サイクル時間を低減した。これらのドメインのモジュラー性が、ハイスループットドナーアセンブリーを可能にした。さらに、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、下流の解析を簡単にすることおよび結果の解釈を増強することを目的としたその他の独特の特徴を有していた。PCR産物の診断上予測される大きさへの消化を可能にする非対称の制限部位配列を含有していた。PCR増幅において問題になると予測された第2の構造を含む配列を除去した。ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列の大きさは小さかった(3.0Kb未満)。最後に、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、多量の試験DNAが適時にかさ高くなることを可能にする高コピーpUC19骨格の上に成り立っていた。
【0184】
一実施形態として、例として、ユニバーサルポリヌクレオチドドナーカセット配列を含むプラスミドが、配列番号132および
図1として提供される。さらなる一実施形態では、ポリヌクレオチドドナーカセット配列が、pDAB111846、配列番号133、
図2;pDAB117415、配列番号134、
図3;pDAB117416、配列番号135、
図4;pDAB117417、配列番号136、
図5;pDAB117419、配列番号137、
図6;pDAB117434、配列番号138、
図7;pDAB117418、配列番号139、
図8;pDAB117420、配列番号140、
図9;およびpDAB117421、配列番号141、
図10として提供される。別の実施形態では、コード配列を発現する機能性を有するか、またはコード配列を発現する非機能性(プロモーターなし)のユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列を含むさらなる配列が構築され得る。ユニバーサルドナー系を作り上げる種々のドメイン(非可変性ZFN結合ドメイン、解析によっておよびユーザーによって規定される特徴のドメインおよび簡単なプラスミド骨格)が、表3において上記のように構築物について注釈を付けられている。
【0185】
【表3】
【0186】
別の実施形態では、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、プラスミドとして送達される小さい2〜3Kbのモジュラードナー系である。これは、制限部位およびプライマー設計のためのDNA配列(プライマーは、任意の算出された第2の構造よりも10℃高いTmで設計される)またはコード配列および簡単なプラスミド骨格を保持する、「DNA X」または「UZI配列」または「解析ドメイン」(配列番号142および配列番号143)と呼ばれる、任意の数のZFN結合部位、短い100〜150bpの鋳型領域を含む最小のドナーである(
図11)。一実施形態では、解析ドメインは、40〜60%のグアニンおよびシトシン塩基対パーセンテージを含有するよう、9Bpを超える繰り返し配列(例えば、5’−gtatttcatgtatttcat−3’)を含有しないよう、9Bpを超える一連の同一の塩基対を含有しないように設計され、二次構造を含まず、これでは、二次構造は、Markham, N. R. & Zuker, M. (2008) UNAFold:核酸フォールディングおよびハイブリダイゼーションのためのソフトウェアによって算出されるように、−18kcal/mol未満の自由エネルギーである。Keith, J. M., editor, Bioinformatics, Volume II. Structure, Function and Applications, number 453 in Methods in Molecular Biology, chapter 1、pages 3-31. Humana Press、Totowa、NJ. ISBN 978-1-60327-428-9中、表4を参照のこと。全プラスミドが、適当なZFN結合部位でのDNA二本鎖破壊後にNHEJによって挿入され、ZFN結合部位は、直列に組み込まれ得る。ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列のこの実施形態は、標的部位およびZFNの迅速スクリーニングに最も適しており、ドナーにおいて増幅することが困難である配列が最小化される。
【0187】
【表4】
【0188】
さらなる実施形態では、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、少なくとも4つのモジュールで構成されており、部分ZFN結合部位、相同性アーム、およそ100bpの解析片またはコード配列のいずれかを有するDNA Xを保持する。ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列のこの実施形態は、いくつかのZFNを有する種々のポリヌクレオチド標的部位でのNHEJ媒介性遺伝子挿入物を調べるのに適している(
図12)。
【0189】
ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列は、規定のDNA結合ドメインを有するすべてのターゲッティング分子とともに、2つの様式のターゲッティングされたドナー挿入(NHEJ/HDR)を用いて使用され得る。そのようなものとして、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列が適当なZFN発現構築物と同時送達される場合には、ドナーベクターおよびトウモロコシゲノムは、特定のZFNの結合によって決定される1つの特定の位置で両方切断される。ひとたび直線化されると、ドナーは、NHEJまたはHDRによってゲノム中に組み込まれ得る。ターゲッティングされた組込みの効率的な送達を最大化するジンクフィンガーを決定するために、ベクター設計において種々の解析上の検討事項が利用され得る(
図13)。
【0190】
[実施例2]
トウモロコシ(Zea mays)形質転換手順
トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−IIプロトプラストに送達する前に、各ZFN構築物のプラスミドDNAを、PURE YIELD PLASMID MAXIPREP SYSTEM(登録商標)(Promega Corporation、Madison、WI)またはPLASMID MAXI KIT(登録商標)(Qiagen、Valencia、CA)を使用し、供給業者の使用説明書に従って大腸菌(E. coli)の培養物から調製した。
【0191】
プロトプラスト単離
トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−II懸濁液細胞を、3.5日の維持スケジュールで維持し、4mLの血中血球容積(PCV)の細胞を回収し、20mLの酵素溶液(0.6%PECTOLYASE(商標)、6%CELLULASE(商標)(「Onozuka」R10;Yakult Pharmaceuticals、Japan)、4mM MES(pH5.7)、0.6Mマンニトール、15mM MgCl
2)を含有する50mLの滅菌コニカルチューブ(Fisher Scientific)に移した。培養物をキャップし、PARAFILM(商標)で巻き、プロトプラストが放出されるまで室温で16〜18時間のインキュベーションのために速度設定10のプラットフォームロッカー(Thermo Scientific、Vari Mix platform Rocker)に置いた。インキュベーション後、細胞を、消化の品質について顕微鏡によって評価した。消化された細胞を100μmのセルストレーナーを通して濾過し、10mLのW5培地[2mM MES(pH5.7)、205mM NaCl、167mM CaCl
2、6.7mM KCl]ですすぎ、続いて、70μmおよび40μmセルストレーナーを通して濾過した。100μmおよび40μmストレーナーを10mLのW5培地ですすいだ。濾過したプロトプラストをすすいだ培地とともに50mlの遠心管に回収し、最終容量は、およそ40mLであった。次いで、8mLの「Heavy Gradient溶液」[500mMスクロース、1mM CaCl
2、5mM MES(pH6.0)]を、プロトプラスト/酵素溶液の底にゆっくりと添加し、スイングアームバケットローターを備えた遠心機中、300〜350×gで15分間遠心分離した。遠心分離後、約7〜8mLのプロトプラストバンドを回収し、25mLのW5で洗浄し、180〜200×gで15分間遠心分離した。次いで、プロトプラストを10mLのMMG溶液[4mM MES(pH5.7)、0.6Mマンニトール、15mM MgCl
2]に再懸濁した。血球計算器またはフローサイトメーターを使用してプロトプラストをカウントし、MMGを使用して1mlあたり167万個に希釈した。
【0192】
PEGを使用するトウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−II懸濁培養物に由来するプロトプラストの形質転換
およそ50万個プロトプラスト(MMG溶液中300μL)を、2mLの試験管に移し、40μLのDNAと混合し、室温で5〜10分間インキュベートした。次いで、300μLの新たに調製されたPEG溶液(36%PEG4000、0.3Mマンニトール、0.4M CaCl
2)を添加し、混合物を、反転によって周期的に混合しながら室温で15〜20分間インキュベートした。インキュベートした後、1mLのW5洗浄液をゆっくりと添加し、細胞を穏やかに混合し、プロトプラストを180〜200×gで15分間の遠心分離によってペレットにした。ペレットを1mlのWI培地[4mM MES(pH5.7)、0.6Mマンニトール、20mM KCl]に再懸濁し、試験管にアルミニウムホイルを巻き、室温で一晩、約16時間インキュベートした。
【0193】
ZFNおよびドナーの形質転換
選択されたゲノム遺伝子座の各々について、トウモロコシ(Zea mays)プロトプラストを、yfp遺伝子発現対照、ZFN単独、ドナー単独およびZFNとドナーの1:10比(重量で)の混合物を用いてトランスフェクトした。50万個プロトプラストのトランスフェクションのためのDNAの総量を80μgとした。すべての処理は、3または6個のいずれかの複製物で実施した。使用したyfp遺伝子発現対照は、トウモロコシ(Zea mays)ユビキチン1プロモーター−黄色蛍光タンパク質コード配列−トウモロコシ(Zea mays)Per5 3’UTRおよびRice Actin1プロモーター−patコード配列−トウモロコシ(Zea mays)リパーゼ3’UTR遺伝子発現カセットを含有するpDAB8393(
図14)であった。通常のターゲッティング実験では、4μgのZFNを、単独でまたは36μgのドナーとともに同時トランスフェクトし、各処理に40μgのYFPリポーター遺伝子構築物を添加した。増量剤として一貫した量のyfp遺伝子発現プラスミドを含めることによって、複数の遺伝子座および複製物処理にわたってトランスフェクション品質の評価が可能となる。さらに、一貫した量のyfp遺伝子発現プラスミドの使用によって、ドナー挿入の迅速なターゲッティング解析での任意の技術的問題の迅速なトラブルシューティングが可能となる。
【0194】
[実施例3]
ジンクフィンガーヌクレアーゼによるトウモロコシ(Zea mays)中のゲノム遺伝子座の切断
ZFNをトランスフェクトされたトウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−IIプロトプラストを、2mL EPPENDORF(商標)試験管中での1600rpmでの遠心分離によってトランスフェクションの24時間後に回収し、上清を除去した。QIAGEN PLANT DNA EXTRACTION KIT(商標)(Qiagen、Valencia、CA)を使用してゲノムDNAをプロトプラストペレットから抽出した。単離されたDNAを50μLの水に再懸濁し、NANODROP(登録商標)(Invitrogen、Grand Island、NY)によって濃度を決定した。DNAの完全性は、0.8%アガロースゲル電気泳動でサンプルを流すことによって推定した。すべてのサンプルは、PCR増幅のために正規化して(20〜25ng/μL)、配列決定のためにアンプリコンを作製した(Illumina,Inc.、San Diego、CA)。処理されたサンプルおよび対照サンプルから得られた各試験ZFN認識配列を包含する領域を増幅するためのバーコード付きPCRプライマーを設計し、IDT(Coralville、IA、HPLC purified)から購入した。最適増幅条件は、23.5μLの反応物で、0.2μMの適当なバーコード付きプライマー、ACCUPRIME PFX SUPERMIX(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)および100ngの鋳型ゲノムDNAを使用して勾配PCRによって同定した。サイクリングパラメータは、95℃(5分)の最初の変性と、それに続く、変性(95℃、15秒)、アニーリング(55〜72℃、30秒)、伸長(68℃、1分)の35サイクルおよび最終伸長(68℃、7分)とした。増幅産物を、3.5%TAEアガロースゲルで解析し、各プライマーの組合せの適当なアニーリング温度を決定し、上記のような対照およびZFN処理されたサンプルからアンプリコンを増幅するために使用した。すべてのアンプリコンは、3.5%アガロースゲルで精製し、水に溶出し、NANODROP(商標)によって濃度を決定した。次の作製、配列決定のために、ZFN処理されたおよび対応するトウモロコシプロトプラスト対照から得られたおよそ100ngのPCRアンプリコンを一緒にプールし、Illumina Next Generation Sequencing(NGS)を使用して配列決定した。
【0195】
各トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座での適当なZFNの切断活性をアッセイした。ZFN処理されたプロトプラストおよび対照プロトプラストから、ゲノムDNAからZFN切断部位を包含する短いアンプリコンを増幅し、Illumina NGSに付した。ZFNによって誘導された切断またはDNA二本鎖破壊は、切断部位でのヌクレオチドの挿入または欠失(挿入欠失)による細胞性NHEJ修復経路によって解決され、したがって、切断部位での挿入欠失の存在は、ZFN活性の尺度であり、NGSによって判定された。標的特異的ZFNの切断活性は、NGS解析ソフトウェアを使用して、100万の高品質配列あたりの挿入欠失を有する配列の数として推定した(特許公開2012−0173,153、data Analysis of DNA sequences)(
図15)。トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的について対照を上回る5〜100倍の範囲の活性が観察され、各ZFN切断部位で挿入欠失の多様なフットプリントを示した配列アラインメントによってさらに確認された。このデータは、トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座が、ZFNによる切断の影響を受けやすいことを示唆する。各標的での差示的活性は、そのクロマチン状態、切断に対する従順さならびに各ZFNの発現の効率性を反映するものである。
【0196】
[実施例4]
ポリヌクレオチドドナーの組込みの迅速ターゲッティング解析
ジンクフィンガーヌクレアーゼによるトウモロコシ(Zea mays)中のゲノム遺伝子座内の配列
非相同末端結合(NHEJ)媒介性ドナー挿入による、トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的内のユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列のターゲッティングの検証を、半スループットプロトプラストベースの迅速ターゲッティング解析方法を使用して実施した。各トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的について、Next Generation Sequencing方法(
図15)および接合部In−Out PCRによるドナー挿入(
図16)によって、3〜6種のZFN設計を試験し、ZFN媒介性切断を測定することによってターゲッティングを評価した。両アッセイにおいて陽性であったトウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座をターゲッティング可能な遺伝子座として同定した。
【0197】
ZFNドナー挿入迅速ターゲッティング解析
トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的が、ドナー挿入のためにターゲッティングされ得るかどうかを判定するために、ZFN構築物およびユニバーサルドナーポリヌクレオチド構築物を、トウモロコシプロトプラストに同時送達し、これを24時間インキュベートし、その後、解析のためにゲノムDNAを抽出した。発現されたZFNが、トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的で、およびドナーにおいての両方で標的結合部位を切断できた場合、非相同末端結合(NHEJ)経路によってトウモロコシゲノム中の切断された標的部位中に直線化されたドナーを挿入した。トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的でのターゲッティングされた組込みの確認は、「Out」プライマーが天然のゲノム遺伝子座の配列を認識し、「In」プライマーがドナーDNA内の配列と結合する「In−Out」PCR戦略に基づいて完了した。プライマーは、ドナーDNAが、トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的で挿入される場合にのみ、PCRアッセイが予測された大きさの増幅産物を生成するような方法で設計した。In−Out PCRアッセイは、挿入接合部の5’および3’末端の両方で実施される。組み込まれたポリヌクレオチドドナー配列の解析に使用されるプライマーは、表5に提供されている。
【0198】
ネステッド「In−Out」PCRを使用する標的遺伝子座でのZFNドナー挿入
すべてのPCR増幅を、TAKARA EX TAQ HS(商標)キット(Clonetech、Mountain View、CA)を使用して実施した。第1のIn−Out PCRは、1× TAKARA EX TAQ HS(商標)バッファー、0.2mM dNTP、0.2μM「Out」プライマー(表5)、0.05μM「In」プライマー(上記のユニバーサルドナーカセットから設計された)、0.75ユニットのTAKARA EX TAQ HS(商標)ポリメラーゼおよび10ngの抽出されたトウモロコシプロトプラストDNAを含有する20μLの最終反応容量で実施した。次いで、反応を、94℃で2分、98℃で12秒および68℃で2分と、それに続く72℃で10分の20サイクルからなるPCRプログラムを使用して実施し、4℃で保持した。最終PCR産物を、アガロースゲルで、可視化のために1KB PLUS DNA LADDER(商標)(Life Technologies、Grand Island、NY)とともに泳動した。
【0199】
ネステッドIn−Out PCRは、1×TAKARA EX TAQ HS(商標)バッファー、0.2mM dNTP、0.2μM「Out」プライマー(表5)、0.1μM「In」プライマー(上記のユニバーサルドナーカセットから設計した、表6)、0.75ユニットのTAKARA EX TAQ HS(商標)ポリメラーゼおよび1μLの第1のPCR産物を含有する20μLの最終反応容量で実施した。次いで、反応を、94℃で2分、98℃で12秒および66℃で30秒および68℃で45秒と、それに続く72℃で10分の31サイクルからなるPCRプログラムを使用して実施し、4℃で保持した。最終PCR産物を、アガロースゲルで、可視化のために1KB PLUS DNA LADDER(商標)(Life Technologies、Grand Island、NY)とともに泳動した。
【0200】
【表5】
【0201】
【表6】
【0202】
【表7】
【0203】
プロトプラストターゲッティング系中にIn−Out PCRアッセイを配置することは、トランスフェクションのために多量のプラスミドDNAが使用され、プロトプラストターゲッティング系中に多量のプラスミドDNAが残り、細胞ゲノムDNAとともにその後抽出されるので、特に挑戦的なことであった。残存するプラスミドDNAは、ゲノムDNAの相対濃度を希釈し、検出の全体的な感度を低下させる可能性があり、また非特異的な異常なPCR反応の大きな原因であり得る。ZFNによって誘導されたNHEJをベースとするドナー挿入は、通常、フォワードまたはリバース方向のいずれかで起こる。フォワード方向挿入についてのDNAのIn−Out PCR解析は、おそらくは、標的およびドナー中のZFN結合部位の周囲の共有される相同性の領域のために偽陽性バンドを示すことが多かったが、これは、増幅プロセスの間に組み込まれていないドナーDNAのプライミングおよび伸長をもたらし得る。リバース方向挿入産物についてプローブした解析では偽陽性は見られず、したがって、すべてのターゲッティングされたドナー組込み解析は、迅速ターゲッティング解析においてリバースドナー挿入を判定するために実施した。特異性をさらに増大し、バックグラウンドを低下させるために、ネステッドPCR戦略も使用した。ネステッドPCR戦略は、第1のPCR反応の第1の増幅産物内に短い領域を増幅する第2のPCR増幅反応を使用した。非対称の量の「In」および「Out」プライマーの使用は、接合部PCRを、選択されたゲノム遺伝子座での迅速ターゲッティング解析のためにさらに最適化した。
【0204】
In−Out PCR解析結果をアガロースゲルで可視化した。すべてのトウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座について、「ZFN+ドナー処理」は、5’および3’末端で予測されたものに近い大きさのバンドを生成した。対照ZFNまたはドナー単独処理は、PCRにおいて陰性であり、これは、方法が標的部位でのドナー組込みを特異的にスコア化していたことを示唆する。すべての処理は、3〜6個の複製物で実施し、複数の複製物における(両末端で≧2)予想されたPCR産物の存在を使用してターゲッティングを確認した。NHEJによるドナー挿入は、標的および/またはドナーZFN部位での直線化末端のプロセシングのために生じる低い強度の副生成物を生成することが多い。さらに、種々のZFNが、ターゲッティングされた組込みの種々のレベルの効率性をもたらし、一部のZFNは、一貫して高レベルのドナー組込みをもたらし、一部のZFNは、あまり一貫しないレベルのドナー組込みをもたらし、その他のZFNは、組込みをもたらさないと観察された。全体として、試験されたトウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的の各々について、1種または複数のZFNによって、トウモロコシ(Zea mays)の代表的なゲノム遺伝子座標的内にターゲッティングされた組込みが実証され、これによって、これらの遺伝子座の各々がターゲッティング可能であることが確認される。さらに、トウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的の各々は、正確な遺伝子形質転換に適している。これらのトウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的の検証を、複数回反復し、毎回同様の結果が得られ、したがって、プラスミド設計および構築、プロトプラスト形質転換、サンプル処理およびサンプル解析を含む検証プロセスの再現性が確認された。
【0205】
結論
ドナープラスミドおよびトウモロコシ(Zea mays)の選択されたゲノム遺伝子座標的を特異的に切断するように設計された1種のZFNを、トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−IIプロトプラスト中にトランスフェクトし、細胞を24時間後に回収した。In−Out接合部PCRによる、対照、ZFN処理されたおよびドナーとともにZFN処理されたプロトプラストから単離されたゲノムDNAの解析は、ZFNによるゲノムDNA切断の結果としてのユニバーサルドナーポリヌクレオチドのターゲッティングされた挿入を示した(表8)。これらの研究は、ユニバーサルドナーポリヌクレオチド系は、候補ZFNをスクリーニングするために内因性部位でのターゲッティングを評価するために使用され得ることを示す。最後に、プロトプラストベースの迅速ターゲッティング解析および新規ユニバーサルドナーポリヌクレオチド配列系は、植物における正確なゲノムエンジニアリング取り組みのためにゲノム標的およびZFNをスクリーニングするための改善された系を提供する。方法は、DNA二本鎖または一本鎖破壊を導入する任意のヌクレアーゼを使用する対象の任意の系において、ゲノム標的での部位特異的切断およびドナー挿入を評価するよう拡張できる。
【0206】
【表8】
【0207】
[実施例5]
トウモロコシプロトプラスト作製およびトランスフェクション
細胞壁消化酵素(セルラーゼ、「Onozuka」R10−Yakult Pharmaceuticals、Japan;およびペクトリアーゼ、320952−MP Biomedicals、Santa Ana、CAとともにインキュベートすることによって、トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−II懸濁液細胞からプロトプラストを導き、スクロース勾配を使用して精製した。トランスフェクションのために、MMG(MES pH6.0、0.6Mマンニトール、15mM MgCl
2)を使用してプロトプラストを167万個/mlの濃度に希釈し、300μLのプロトプラスト(約500,000個)を滅菌した2mlの試験管に分注し、プラスミドDNA(YFP導入遺伝子発現カセット、組み合わせたZFN/ポリヌクレオチドドナー導入遺伝子発現カセットの、ZFN導入遺伝子発現カセット、ポリヌクレオチドドナー導入遺伝子発現カセットを含む)を、各2ml試験管に40μgの総濃度で添加し、穏やかに混合し、室温で5〜10分間インキュベートした。次いで、300μLのPEG4000をプロトプラスト/DNA溶液に添加し、PEG4000がプロトプラスト/DNA溶液と完全に混合されるまで混合物を反転した。次いで、プロトプラスト/DNA/PEG混合物を、室温で15〜20分間インキュベートした。インキュベート後、プロトプラスト/DNA/PEG混合物を1mlのW5(2mM MES pH6.0、205mM NaCl、167mM CaCl
2、6.7mM KCl)で洗浄し、180〜200×gで15分間遠心分離した。上清を除去した後、1mlのWI培地(4mM MES pH6.0、0.6Mマンニトール、20mM KCl)を添加し、細胞プロトプラストペレットを再懸濁するために使用した。再懸濁されたペレットをアルミニウムホイルで覆い、一晩インキュベートした。Beckman−Coulter Inc(Brea、CA)製のQuanta Flowcytometer(商標)を使用して、プロトプラストトランスフェクション効率を算出し、トランスフェクション効率は、10〜50%の範囲内で算出された。すべてのトランスフェクション処理は、6個の複製物で行った。
【0208】
トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−II由来プロトプラストについてこれまでに記載されたものと同様のトランスフェクションプロトコールを、トウモロコシ(Zea mays)栽培種B104プロトプラストの単離のために配置した。プロトプラストは、手作業で穀皮を、薄い(約0.5mm)ストリップにスライスし、次いで、横方向にスライスすることによって幼若な穀皮組織から入手した。スライスされた組織を25mlの酵素溶液を入れた滅菌エルレンマイヤーフラスコ中に移し、フラスコを、乾燥チャンバー中に15分間入れた。次いで、フラスコにキャップし、アルミニウムホイルで覆い、オービタルシェーカーの最低速度、室温で一晩振盪した。
【0209】
[実施例6]
遺伝子操作されたランディングパッドゲノム部位内に組み込まれたドナーポリヌクレオチドの迅速なターゲッティング解析
トウモロコシにおける遺伝子操作された遺伝子座でのドナー挿入:米国特許出願第2011/0191899号に記載されるように、遺伝子操作されたランディングパッド1(ELP1)ゲノム標的内の5Kbのドナーの挿入を実証するために解析を使用した。ドナーDNAを、NHEJ組込み方法によって、トウモロコシ(Zea mays)栽培種Hi−II株プロトプラスト(この株、「106685[1]−007」は、pDAB106685の形質転換および組込みから製造した)のゲノム内に挿入した。ドナーは、ZFN1およびZFN3ジンクフィンガー結合部位内に組み込まれた(
図18)。ELP1ゲノム標的内のNHEJ媒介性組込みのために使用されたアプローチは、ELP1標的およびドナープラスミドが、同一ZFN部位(ZFN1またはZFN3)を含有することを必要とした。ドナーポリヌクレオチド配列およびZFNが、プロトプラスト細胞中にトランスフェクトされるので、ZFNがELP1ゲノム標的およびプラスミドドナーDNAを切断し、それによって、同一末端が生じた。得られた同一末端が、NHEJ媒介性細胞修復によってライゲーションされ、ELP1ゲノム標的内のプラスミドドナーDNAのターゲッティングされた挿入をもたらす。ELP1ゲノム標的のターゲッティングを、2種の異なるZFN対ドナーモル比(1:1および1:10)を用いて実証した。ドナー組込みの結果は、遺伝子座破壊アッセイおよびIn−Out PCRを使用して確認したが、非対称のPCRプライマー濃度は含まれなかった。ドナーポリヌクレオチド配列の挿入は、2方向で起こり得、In−Out PCRは、両方向の検出のために設計した。
【0210】
破壊アッセイ:破壊アッセイは、ゲノムDNA配列ZFN結合部位が、修飾または再編成されているかどうかを測定する加水分解プローブアッセイ(Taqman(商標)に類似)である。したがって、ZFN結合部位が損なわれていないことがアッセイされる。NHEJ修復がその後続くZFN媒介性ドナー挿入また切断は、ZFN結合部位の喪失および検出可能なqPCRシグナルの低減をもたらす(参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0173783号を参照のこと)。ZFN1およびZFN3部位でのELP1切断ならびに部位内のドナー配列のターゲッティングされた組込みの結果が、
図19に提供される。ZFN1部位は、1:1および1:10比のZFNおよびドナーポリヌクレオチドとともに、ZFNポリヌクレオチドの送達を用いてアッセイした。結果は、ELP1のZFN1部位が破壊されたことを示し、それによって、この部位での可能性あるターゲッティングを示唆する。同様に、ELP1のZFN3部位が破壊され、それによって、この部位での可能性あるターゲッティングを示唆する。すべての処理は、この実験のために6個の複製物において実施し、データは、平均結果として示されている。
【0211】
In−Out PCRアッセイ:ELP1のZFN1およびZFN3でのターゲッティングされたドナー挿入を確認するために、In−Out PCRを、対照プロトプラストサンプル(例えば、ZFNポリヌクレオチドまたはドナーポリヌクレオチド単独で処理されたもの)ならびにZFNおよびドナーポリヌクレオチドで処理されたプロトプラストサンプルから単離されたゲノムDNAで実施した。PCRプライマーは、いずれかの方向のドナー挿入を増幅し、検出するように設計した。In−Out PCRの結果は、試験されたすべてのサンプル(例えば、ドナー対ZFNの1:1および1:10比)について、ELP1のZFN1およびZFN3部位の両方でのターゲッティングされたドナー挿入を示した。ZFN1部位は、6回のうち4回ターゲッティングされ、ZFN3部位は、6回のうち3回ターゲッティングされた。In−Out PCRアッセイによって、フォワードおよびリバース方向の両方でのドナー挿入が検出された。PCR材料の配列決定は、予測された標的−ドナー接合部配列ならびにドナー/標的のいずれかまたは両方が、連結の前にプロセシングされた接合部を示した(
図20)。
【0212】
[実施例7]
内因性トウモロコシ遺伝子座内に組み込まれたドナーポリヌクレオチドの迅速なターゲッティング解析
参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0173783号に記載されるようなトウモロコシ事象DAS−59132のゲノム遺伝子座(本明細書においてE32と呼ばれる)が、ポリヌクレオチドドナー挿入のためにターゲッティングされた。E32ZFN 6(pDAB 105906)を使用して、5Kbのaad−1導入遺伝子(pDAB100651)を含有するドナーポリヌクレオチドがトウモロコシ中の内因性遺伝子座(E32)にターゲッティングされた。ドナーが挿入されたポリヌクレオチドの5’末端3’末端で、新規In−Out PCRアッセイによって、トウモロコシゲノム内のドナーポリヌクレオチド配列の部位特異的組込みが、迅速ターゲッティング解析を使用して確認された(
図21)。
【0213】
プロトプラストトランスフェクション系のIn−Out PCRアッセイとしての迅速ターゲッティング解析の適用は、プロトプラストトランスフェクション系が、一過性形質転換プロセスであるので特に挑戦的なことであった。そのようなものとして、プロトプラスト細胞に送達される大過剰のプラスミドDNAは、系中にとどまり、細胞ゲノムDNAとともに抽出され得る。多量のプラスミドDNAの送達は、ゲノムDNAの有効な濃度を希釈し、それによってゲノムターゲッティングの検出を困難にするだけでなく、偽陽性を生じさせる非特異的PCR反応ももたらす。
【0214】
迅速なターゲッティング解析In−Out PCRアッセイの開発の間に、プロトプラスト系において偽陽性の1つの主要な供給源が同定された。これらの研究の間に証明されたように、NHEJベースのドナー挿入は、2つの異なる方向で起こり得、ドナーはゲノム中にフォワードまたはリバース方向で挿入され得る。フォワード方向挿入のIn−Out PCR増幅および解析は、偽陽性である強力な強いアンプリコンをもたらすことが多い。逆に、リバース方向挿入のIn−Out PCR増幅および解析は、多数の偽陽性アンプリコンをもたらさなかった。ドナーポリヌクレオチドおよび内因性E32遺伝子座は、PCR交差反応を引き起こし得る同一のZFN結合部位を共有する(
図22に示されるように)ということは留意されなければならない。偽陽性は、ZFN結合部位を組み込む延長されて増幅された鎖を製造する鋳型の複製によって引き起こされる交差反応に起因する副生成物である可能性が高い。次いで、得られた増幅された鎖は、PCR反応によって増幅される偽陽性鋳型をもたらすPCRサイクル後に、内因性ゲノム配列のZFN結合部位と、またはポリヌクレオチドドナー配列と結合し得る。
【0215】
非対称のネステッドIn−Out(ANIO)PCR:非特異的PCR増幅をさらに低減するために、第1のIn−Out PCRアンプリコン内の領域を増幅するために第2のIn−Out PCR増幅が利用され得るようネステッドIn−Out PCR戦略を設計した。その後のPCR増幅は、ドナーターゲッティングの特異性および検出ならびにゲノム遺伝子座内の組込みさらに増大した。ネステッドPCR反応の設計および実施の際に、非特異的増幅を低減するための別の新規改善が同定された。多量のドナープラスミドDNAの存在のために、ドナーDNAと結合する「In」プライマーが、偽陽性に対して大きく貢献し得ると疑われた。「Out」プライマーの濃度と比較して「In」プライマーの濃度を低減することによって、偽陽性が大幅に低減された。得られた非対称のネステッドIn−Out(ANIO)PCRを使用して、プロトプラスト細胞におけるトウモロコシ(Zea mays)E32遺伝子座でのドナーポリヌクレオチドのターゲッティングを実証した。すべてのPCRプライマーは、E32遺伝子座でのターゲッティングされた挿入をシミュレートするよう構築された陽性対照プラスミドに基づいて設計した(表9)。
【0216】
【表9】
【0217】
具体的には、第1のIn−Out PCRを、1×TaKaRa Ex Taq HSバッファー(商標)、0.2mM dNTP、0.2μM 「Out」プライマー、0.05μM「In」プライマー、0.75ユニットのTaKaRa Ex Taq HS(商標)ポリメラーゼおよび10ngの抽出されたトウモロコシプロトプラストDNAを含有する20μLの最終反応容量で実施した。PCR反応は、94℃で2分、98℃で12秒および68℃で2分と、それに続く72℃で10分の20サイクルからなるPCRプログラムを使用して完了し、4℃で保持した。
【0218】
ネステッド(または第2の)In−Out PCRは、1×TaKaRa Ex Taq HSバッファー(商標)、0.2mM dNTP、0.2μM「Out」プライマー、0.1μM「In」プライマー、0.75ユニットのTaKaRa Ex Taq HSポリメラーゼ(商標)および1μLの第1のPCR産物を含有する20μLの最終反応容量で実施した。次いで、反応を、94℃で2分、98℃で12秒および66℃で30秒および68℃で45秒と、それに続く72℃で10分の31サイクルからなるPCRプログラムを使用して完了し、4℃で保持した。最終PCR産物を、アガロースゲルで、可視化のために1Kb Plus DNA Ladder(商標)(Life Technologies、Grand Island、NY)とともに泳動した。
【0219】
迅速なターゲッティング解析は、リバース方向でE32ゲノム標的遺伝子座内にドナーポリヌクレオチド挿入を検出した。ZFNおよびドナーの組合せを用いて処理されたサンプルのうち、6種の反応物のうち6種が、5’および3’末端の両方について予測された大きさの(ドナーポリヌクレオチド配列の部位特異的組込みをもたらさなかった対照と比較して)アンプリコンをもたらした。3’末端の増幅について、アガロースゲルで少量のスメアリングまたはラダリングが観察された。この観察結果は、NHEJ修復に先立って生じたDNA破壊の末端のプロセシングによる可能性がある。さらに、3’末端の増幅のための「ドナー単独」からなる対照サンプルにおいて、非特異的アンプリコンの増幅が見られた。この非特異的アンプリコンは、陽性対照の予測された大きさのアンプリコンと比較して、より小さい分子量の大きさであった。それにもかかわらず、ドナーポリヌクレオチドドナーは、E32ゲノム標的遺伝子座内に成功裏に組み込まれ、部位特異的組込み体を効率的に同定および検出するよう迅速なターゲッティング解析が配置された。
【0220】
[実施例8]
内因性ダイズ遺伝子座内に組み込まれたドナーポリヌクレオチドのターゲッティング解析
設計されたZFNを、上記の形質転換方法論を使用してダイズプロトプラスト中に形質転換した。FAD2遺伝子座の切断効率を、米国特許公開第2014/0173783号に記載されるような遺伝子座破壊アッセイによって種々のZFNについて評価した。さらに、FAD2遺伝子座内のドナー配列のジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介性組込みを、In−Out PCRアッセイを使用して評価し、ダイズゲノム内のドナー組込みを特性決定するために、得られたPCRアンプリコンを配列決定した。
【0221】
実施形態は、ドナーベクター単独、ZFNベクター単独または組み合わされたZFNおよびドナー(表10)を含有する処理群を含んでなる。さらに、実施形態は、非形質転換細胞または高コピー数のプラスミド内に、AtuORF24 3’−UTRが両側に位置する、CsVMVプロモーターによって駆動される緑色蛍光タンパク質発現カセットを含む対照ベクター、pDAB7221(
図23)を用いて形質転換された細胞の陰性対照処理群を含んでいた。トランスフェクションのおよそ18〜24時間後に形質転換されたサンプルを回収した。予備データは、プラスミド、pDAB115601中に含有されるF2、ZFNの高活性を実証し、結果として、このZFNプラスミドを、すべてのその後の実験において陽性対照として使用した。
【0222】
表10に詳述されるように、形質転換実験は、合計80μgのDNAを含有しており、DNAの総量を80μgにするよう必要に応じてプラスミドpDAB7221が添加された。ドナーベクター対ZFNを発現するプラスミドの比は、およそ10:1であった。各実験または処理は、独立に処理され、分析される6回の実験複製物からなっていた。ZFNを評価する実験は、2セットの実験で行った。
【0223】
【表10】
【0224】
ターゲッティングの解析:ターゲッティング実験から得たDNAサンプルを、遺伝子座破壊アッセイを使用して解析して、NHEJによるFAD2 ZFN切断部位での修飾を検出し、ターゲッティングを評価した。FAD2標的において無傷のZFN結合部位を測定するようqPCRアッセイを設計した。ZFN媒介性ドナー挿入または切断と、それに続くNHEJ修復は、ZFN結合部位の喪失およびその後の検出可能なqPCRシグナルの低減をもたらす。相当な切断活性を有するZFNは、ドナー単独処理と比較してシグナルが低減したアンプリコンの製造をもたらした。遺伝子座破壊アッセイにおいて使用されたプライマーおよびプローブが、表11に示されており、FAD2遺伝子座上のその相対位置が
図24に示されている。
【0225】
適当なドナーベクターの存在下でのFAD2 2.3 ZFN2_WT ZFN(両実験)およびFAD2 2.6 ZFNs ZFN4_HF(一方の実験)およびF2 ZFN5_HF(両実験)でのプロトプラストの処理は、無傷の配列からえられたもの(ドナー単独)と比較して統計的に有意に小さいシグナルをもたらした。
【0226】
【表11】
【0227】
遺伝子座特異的In−Out PCR:ターゲッティングされたドナー挿入を確認するために、すべての処理から得られたDNAを、遺伝子座特異的In−Out PCRアッセイに付した。実験におけるドナーベクターは、FAD2遺伝子座内のターゲッティングされた組込みについて試験されているすべてのZFNの結合部位を含有するように設計した。ZFNおよびドナーのダイズ細胞への同時送達は、ドナーベクター中の標的でのZFN結合部位の切断および非相同末端結合機序によるドナーの切断されたFAD2遺伝子座へのその後の組込みをもたらす。ZFN切断によって作製された、FAD2染色体部位および直線化されたドナーベクターの末端は、FAD2遺伝子座内の組込みに先立ってプロセシングを受け、不完全な、接続産物をもたらし得る。標的でのターゲッティングされた組込みの確認は、「In−Out」PCR戦略に基づいて実施し、これでは、「Out」プライマーは、天然のゲノム遺伝子座の配列を認識し、「In」プライマーは、ドナーDNA内の配列と結合する。In−Out PCRアッセイは、挿入接合部の5’および3’末端の両方で実施した。
【0228】
ドナーおよびZFNサンプルにおいてPCR産物によって決定されるように、試験したZFNのすべてが、少なくとも1つの実験においてドナー断片のFAD2ダイズ遺伝子座へのターゲッティングおよび組込みの何らかの証拠を示した。以下のZFN;F2 ZFN2_WT、F2 ZFN2_HFおよびF2 ZFN4_HFを使用するドナーが組み込まれるターゲッティングの結果は、PCR産物が、5’および3’末端の両方で6個の実験複製物のうち少なくとも2個で製造されたように再現性があった(表12)。
【0229】
【表12】
【0230】
In−Out PCR産物の配列決定:pDAB1115620およびF2 ZFN2_WTまたはpDAB1115620およびF2 ZFN2_HFを用いて完了したIn−Out PCRターゲッティング実験の各々から得たアンプリコン(予測される大きさの)のうち2種を、プラスミドにクローニングした。サンガー配列決定法を使用して、得られたプラスミドを配列決定した。配列を、FokI切断に起因すると予測される一本鎖の4bp末端を、末端のすべての可能性ある組み合わせに相当するよう複製した参照配列に対してアラインした。得られた23種のクローニングされた配列から10種の独特の配列パターンが見出された(
図25)。すべての配列パターンが、ZFN結合部位(GAAATTTC)の間に位置するFAD2ゲノム参照配列の一部を保持していたが、配列パターンはまた、FAD2ゲノム参照配列に対して欠失も保持する。配列4WT1および4WT4は、GAAATTTC配列の3’末端でZFN結合部位中に伸びる欠失を含有していた。2種の配列、1HF4および6HF4は、一塩基挿入物を有していた。観察されたDNA配列パターンは、ドナーDNAのダイズFAD2遺伝子座へのターゲッティングが生じたことを実証する。
【0231】
本発明の態様は、特定の実施形態において説明されてきたが、それらは、本開示の精神および範囲内でさらに変更されてもよい。したがって、本出願は、その一般原理を用いた本発明の実施形態の任意のバリエーション、用途、または適応をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、これらの実施形態が関与し、添付の特許請求の範囲の限定に含まれる当該技術分野における公知または慣行に含まれるように本開示からのこのような逸脱をカバーすることを意図している。
本発明は以下を提供する。
[1]ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みを検出するための方法であって、
a.ゲノムDNA標的部位と結合するように設計された第1のOut−PCRプライマーおよび組み込まれたポリヌクレオチドドナー配列と結合するように設計された第1のIn−PCRプライマーを使用して、第1ラウンドのPCRによってゲノムDNAを増幅して、第1のアンプリコンを製造するステップと、
b.前記第1のアンプリコン内に位置する配列に特異的なプライマーを使用して、第2のラウンドのPCRによって前記第1のアンプリコンを増幅して、第2のアンプリコンを製造するステップと、
c.前記第2のアンプリコンの存在を検出するステップであって、前記第2のアンプリコンの製造が部位特異的組込み事象の存在を示すステップと
を含む、方法。
[2]前記ゲノム標的部位が、内因性または遺伝子操作されたゲノム標的部位を含む、上記[1]に記載の方法。
[3]前記第1のIn−PCRプライマーが、前記第1のOut−PCRプライマーよりも低い濃度で提供される、上記[1]に記載の方法。
[4]前記第1ラウンドのPCRが、約4:1、3:1または2:1の第1のOut−PCRプライマー対第1のIn−PCRプライマーの相対濃度を使用して実施される、上記[1]に記載の方法。
[5]前記第1のIn−PCRプライマーが0.05〜0.09μMの濃度を含み、前記第1のOut−PCRプライマーが少なくとも0.1μMの濃度を含む、上記[1]に記載の方法。
[6]前記第2ラウンドのPCRが、前記第1のアンプリコンのゲノムDNA標的部位と結合するように設計された第2のOut−PCRプライマーおよび前記第1のアンプリコンの組み込まれたポリヌクレオチドドナー配列と結合するように設計された第2のIn−PCRプライマーを含む、上記[1]から上記[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記第2のIn−PCRプライマーが、前記第2のOut−PCRプライマーよりも低い濃度で提供される、上記[6]に記載の方法。
[8]前記第2ラウンドのPCRが、約4:1、3:1または2:1の第2のOut−PCRプライマー対第2のIn−PCRプライマーの相対濃度を使用して実施される、上記[6]に記載の方法。
[9]前記第2のIn−PCRプライマーが0.05〜0.1μMの濃度を含み、前記第2のOut−PCRプライマーが0.2μMの濃度を含む、上記[6]に記載の方法。
[10]前記ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みを含むゲノムDNAが、植物ゲノムDNAである、上記[1]に記載の方法。
[11]前記植物ゲノムDNAが、単子葉植物から単離されている、上記[10]に記載の方法。
[12]前記植物ゲノムDNAが、双子葉植物から単離されている、上記[10]に記載の方法。
[13]前記ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みが、部位特異的ヌクレアーゼによる前記ゲノムDNA標的部位の切断によってもたらされる、上記[10]に記載の方法。
[14]前記部位特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALENヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼからなる群から選択される、上記[13]に記載の方法。
[15]前記ゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みが、非相同末端結合機序によって起こる、上記[13]に記載の方法。
[16]前記検出ステップが、第2のアンプリコンのゲルでの電気泳動を含む、上記[1]に記載の方法。
[17]前記検出ステップが、前記第2のアンプリコンを配列決定するステップを含む、上記[1]に記載の方法。
[18]トランスフェクトされた植物細胞のゲノム標的部位内のポリヌクレオチドドナー配列の部位特異的組込みを検出するための方法であって、
a.第1ラウンドのPCRによってゲノムDNAを増幅して、第1のアンプリコンを製造するステップであって、前記PCRが、前記ゲノム標的部位と結合するように設計された第1のOut−PCRプライマーおよび前記ポリヌクレオチドドナー配列と結合するように設計された第1のIn−PCRプライマーを使用して実施され、さらに、前記第1のIn−PCRプライマーが前記第1のOut−PCRプライマーよりも低い濃度で提供されるステップと、
b.前記第1のアンプリコン内に位置する配列に特異的なプライマーを使用して、第2ラウンドのPCRによって前記第1のアンプリコンを増幅して、第2のアンプリコンを製造するステップと、
c.第2のアンプリコンの存在を検出するステップであって、第2のアンプリコンの製造が部位特異的組込み事象の存在を示すステップと、
を含む、方法。