【実施例】
【0089】
(実施例1)
遺伝子療法を使用した、糖原病Ia型の肝臓G6PC欠損の完全な正常化
この実施例では、G6PC欠損マウスにおける、G6Pase−αの肝臓遺伝子送達および発現の効率に関する、2つの異なるプロモーターによって駆動される、G6Pase−αを発現するAAVベクター2種の比較を記載する。その結果から、持続的なin vivoにおける肝臓導入遺伝子の発現を指向することに関して、G6PCプロモーター/エンハンサー(AAV−GPE)を有するAAVベクターの方が、ニワトリβ−アクチンプロモーター/CMVエンハンサー(AAV−CBA)を有するAAVベクターよりも効率的であったことが実証される。さらに、AAV−GPEを用いて処置したG6PC欠損マウスでは、正常なレベルの血中グルコース、血中代謝産物、肝臓グリコーゲンおよび肝臓脂肪が示された。
【0090】
材料および方法
pUF11−GPE−G6PCの構築およびAAVベクターの調製
ヒトG6PCプロモーター/エンハンサーの制御下にある、ヒトG6Pase−αを含有するUF11−GPE−G6PCプラスミドを、マウスG6Pase−αがCBAプロモーター/CMVエンハンサーによって駆動される(Xuら、Hum Gene Ther 12巻:563〜573頁、2001年)pUF11−mG6Pase−α−CBA(Ghoshら、Gene Ther 13巻:321〜329頁、2006年)を以下の通り改変することによって構築した:pUF11−mG6Pase−α−CBAからのTkp−neo断片をXhoI/SphI消化によって切り出し、残りのベクターをゲル精製し、T4 DNAポリメラーゼを用いてポリッシュ(polish)し、次いで、自己ライゲーションしてpUF11−mG6Pase−α−CBA−[Tkp−neo]
−/−を得た。次いで、pUF11−mG6Pase−α−CBA−[Tkp−neo]
−/−内のmG6Pase−αを、CBAプロモーター/CMVエンハンサーと一緒に、5’−SbfI部位および3’−NotI部位においてヒトG6Pase−α cDNAで置換し、pUF11−G6PCを得た。次いで、PCRを使用して、ヒトG6PCプロモーター/エンハンサーを含有するG6PC 5’−フランキング領域のヌクレオチド−2864〜−1をクローニングした。PCR鋳型は、ヒトG6PC遺伝子を含有する細菌人工染色体であり(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)、プライマー対は、5’末端および3’末端にそれぞれ追加的なKpnI部位およびXbaI部位を含有する、1S(5’−CCTTTGAGAATCCACGGTGT−3’;配列番号5)および2AS(5’−CCTCATTTCCTTGGCACCTC−3’;配列番号6)であった。次いで、G6PCプロモーター/エンハンサーを含有するKpnI−XbaI断片を、KpnI−XbaIで直鎖化したpUF11−G6PCにライゲーションして、pUF11−G6PC−GPE−1を得た。次に、5’末端および3’末端にそれぞれ追加的なSpeI部位およびSbfI部位を含有するプライマー対3S(5’−AGGTAAGTATCAAGGTTACA−3’;配列番号7)および4AS(5’−ACCTGTGGAGAGAAAGGCAA−3’;配列番号8)を使用したPCRを使用して、pCIベクター(Promega、Madison、WI)由来のキメライントロンをクローニングした。次いで、このキメライントロンをSpeI−SbfI断片として、SpeI−SbfIで直鎖化したpUF11−G6PC−GPE−Iの大きな断片にライゲーションして、pUF11−GPE−G6PC(配列番号1)を得た。全ての構築物を、DNA配列決定によって検証した。
【0091】
AAV−GPEおよびAAV−CBAを、それぞれpUF11−GPE−G6PCおよびpUF11−mG6Pase−α−CBAを使用して作製し、これは、以前に記載されている通り生成、精製、および力価測定を行った(Ghoshら、Gene Ther 13巻:321〜329頁、2006年)。ベクターゲノム定量化を、G6PCまたはCBAプロモーターを対象とするプライマーおよびプローブを用いたリアルタイムPCRを使用して実施した。
【0092】
G6pc
−/−マウスへのAAVベクターの注入
以前に記載されている通り、12時間ごとに15%グルコース25〜100μlを腹腔内注射することからなるグルコース療法をG6pc
−/−マウスに施行した(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。離乳後に残存したマウスにマウス固形飼料を無制限に与えた(Zeigler Bros., Inc.、Gardners、PA)。
【0093】
AAVベクターを、2日齢のG6pc
−/−マウスには側頭静脈を通じて注入し、2週齢または4週齢のG6pc
−/−マウスには後眼窩洞を通じて注入した。年齢を釣り合わせたG6pc
+/+/G6pc
+/−ならびに4週齢〜6週齢のG6pc
−/−マウスを対照として使用した。ウイルスの注入を受けたマウスについては、注入後すぐにグルコース療法を終了した。
【0094】
12週齢または14週齢のAAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスのグルコース負荷試験は、6時間にわたって絶食させた後に血液試料採取を行い、その後、10%デキストロース0.25mlを皮下に注射し、さらに2時間にわたって30分ごとに尾静脈を通じた血液試料採取を繰り返すことからなった。
【0095】
ホスホヒドロラーゼアッセイ
ミクロソーム単離およびホスホヒドロラーゼアッセイを基本的に以前に記載されている通り決定した(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。50mMのカコジル酸緩衝液、pH6.5、10mMのG6Pおよび適量のミクロソーム調製物を含有する反応混合物(100μl)を37℃で10分インキュベートした。インタクトな膜を0.2%デオキシコール酸中、0℃で20分インキュベートすることによって破壊ミクロソーム膜を調製した。非特異的ホスファターゼ活性を、破壊ミクロソーム調製物をpH5、37℃で10分プレインキュベートすることによって推定し、酸に不安定なG6Pase−αを不活化した。
【0096】
10μmの厚い肝組織切片を、40mMのトリスマレイン酸、pH6.5、10mMのG6P、300mMのスクロース、および3.6mMの硝酸鉛を含有する溶液中、室温で10分インキュベートすることによってG6Pase−αの酵素組織化学的分析を実施した(Teutsch、Prog Histochem Cytochem 14巻:1〜92頁、1981年)。捕捉されたリン酸鉛を、茶色の硫化鉛に変換した後に可視化した(Teutsch、Prog Histochem Cytochem 14巻:1〜92頁、1981年)。
【0097】
表現型分析
血液試料を尾静脈から採取した。血中グルコース、総コレステロール、および尿酸を、Thermo Electron(Louisville、CO)から得たキットを使用して分析した。トリグリセリドをSigma Diagnostics(St Louis、MO)からのキットを用いて測定し、乳酸をTrinity Biotech(St Louis、MO)からのキットによって測定した。
【0098】
ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色およびオイルレッドO染色のために、肝臓切片を10%中性緩衝ホルマリン中に保存し、4〜10ミクロンの厚さの薄片を作製した。染色した切片を、Axioskop2 plus microscopeおよびAxioVision 4.5 software(Carl Zeiss、Thornwood、NY)を使用して可視化した。脂質蓄積の定量的組織化学的測定のために、Adobe Photoshop CS3(Adobe System Incorporated、San Jose、CA)を使用してオイルレッドO染色を画素密度単位に変換した。
【0099】
肝臓のグリコーゲン含量を決定するために、HClを用いて組織をホモジナイズし、10分煮沸し、酢酸ナトリウムを用いて中和して最終的なpHを4.5にした(Teutsch、Prog Histochem Cytochem14巻:1〜92頁、1981年)。次いで、加水分解した組織をアミロ−α−1,4−α−1,6−グルコシダーゼで消化し、放出されたグルコースを、Sigma Diagnosticsから得たキットを使用して測定した。グリコーゲン含量は、肝臓タンパク質1mg当たりのグルコシル単位のnmol数として報告される。
【0100】
抗体アッセイ
ヒトG6Pase−αまたはマウスG6Pase−αに対する抗体をウエスタン−ブロット分析によって検出した。Ad−ヒトG6Pase−αまたはAd−マウスG6Pase−αを感染させたCOS−1細胞由来のミクロソームタンパク質(Ghoshら、J Biol Chem 277巻:32837〜32842頁、2002年)を12%ポリアクリルアミド−SDSゲルによる電気泳動によって分解し、フッ化ポリビニリデン膜にトランスブロットした(Millipore、Bedford、MA)。膜を、多数のチャネルを含有するMultiscreen Apparatus(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)に入れた。各チャネルの下の膜細片を、1:3000に希釈したウサギ抗ヒトG6Pase−α血清(Ghoshら、J Biol Chem 277巻:32837〜32842頁、2002年)、または1:200希釈した、AAV−GPEを注入した動物またはAAV−CBAを注入した動物由来の血清試料と一緒にインキュベートした。1:200に希釈した、無処置のG6pc
−/−およびG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔由来の血清試料を対照として使用した。一晩インキュベートした後、膜細片を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgGまたはヤギ抗マウスIgG(Kirkegarrd & Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)と一緒にインキュベートした。免疫複合体を、Pierce(Rockford、IL)からのSuperSignal(商標)West Pico Chemiluminescent substrateを使用した化学発光系によって可視化した。
【0101】
CD8+リンパ球免疫検出
マウス肝臓を急速凍結させ、O.C.T.(Sakura Finetek、Terrance、CA)に包埋し、8ミクロンの厚さの薄片を作製した。切片をアセトン中に−20℃で10分にわたって固定し、乾燥させ、PBSで洗浄し、2%のBSAを含有するPBSを用いて30分にわたってブロッキングし、1%BSAを補充したPBS中、CD8(Abcam Inc.、Cambridge、MA)に対するウサギポリクローナル抗体と一緒に4℃で一晩インキュベートした。PBSで洗浄した後、切片を、Alexa Fluor(登録商標)488(Invitrogen)色素とコンジュゲートしたヤギ抗ラットIgG抗体と一緒に、25℃で1時間、暗所でインキュベートした。PBSで洗浄した後、標識した細胞を、DAPI(Vector Laboratories、Burlingame、CA)を含有する退色防止水性封入剤を用いて封入し、Axioskop2 plus fluorescence microscope(Carl Zeiss、Thornwood、NY)を使用して可視化した。200倍拡大率で、ランダムに選択した10視野でCD8+細胞を計数し、平均(mean average)として報告した。
【0102】
統計分析
独立t検定を、GraphPad Prism(登録商標)Program、version 4(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用して実施した。値は、p<0.05であれば統計学的に有意とみなした。
【0103】
結果
AAV−GPE注入により、長期間の肝臓G6Pase−α発現が指向される
以前に試験された(Koeberlら、Mol Ther 16巻:665〜672頁、2008年)ヒトG6PCプロモーターエレメントのヌクレオチド−298の上流の配列のin vivoにおける影響を調査するために、ヒトG6PC 5’−フランキング領域のヌクレオチド−2864〜−1の制御下でヒトG6Pase−αを発現するAAV8ベクターであるAAV−GPEを構築した。マウスにおいてAAV−媒介性遺伝子療法を開始する標準の年齢はなく(Ghoshら、Gene Ther 13巻:321〜329頁、2006年;Koeberlら、Gene Ther 13巻:1281〜1289頁、2006年;Koeberlら、Mol Ther 16巻:665〜672頁、2008年)、また、遺伝子移入の効率および持続の損失は肝臓の成長に伴う肝細胞増殖の速度の増大に影響されるという証拠があるので(Cunninghamら、Mol Ther 16巻:1081〜1088頁、2008年)、G6pc
−/−マウスに、3つの異なる年齢、2日齢、2週齢、または4週齢の時点で注入し、肝臓G6Pase−α発現を24週齢まで調査した。年齢の違いにかかわらず、マウスの各群に同じ用量のAAV−GPE(1.2×10
11ウイルスゲノム(vg)/マウス)を注入した。注入を受けた動物の代謝プロファイルを24週間の試験の間モニターし、全ての測定値を、それらのG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔および4〜6週齢の無処置のG6pc
−/−マウスの測定値と比較した。GSD−Iaは、常染色体劣性障害であり、以前の試験では、G6pc
+/+同腹仔およびG6pc
+/−同腹仔の表現型は野生型と区別できないことが示されている(Leiら、Nat Genet13巻:203〜209頁、1996年)。
【0104】
注入を受けたG6pc
−/−動物の中で、注入時の年齢にかかわらず、24週間の試験の持続時間にわたって、早期死亡は認められなかった。2日齢時にAAV−GPE(1.2×10
11vg/マウス、6×10
13vg/kgと同等である)の注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓G6Pase−α活性は2週齢時には対照活性の77.6%であり、4週齢の時点では、16.2%まで低下し、6週齢時には対照活性の6.5%であった(表1)。しかし、6週間を超えると、肝臓G6Pase−α活性のレベルは24週間まで安定化した(表1)。したがって、発現は、24週間の試験全体にわたって11.9分の1に降下し、この降下の大部分は最初の6週間以内に起こった。
【0105】
対照的に、2週齢時にAAV−GPE(1.2×10
11vg/マウス、1.5×10
13vg/kgと同等である)の注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、注入の2週間後(4週齢時)の肝臓G6Pase−α活性は、それらのG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔における活性の2.4倍であり(表1)、433.4±11.1nmol/mg/分に達した。肝臓G6Pase−α活性はその後、4週齢から6週齢の間に2.6分の1に低下したが、24週間の試験の持続時間で、6週齢からほぼ正常な肝臓G6Pase−α活性(174.0±22.4nmol/mg/分)が維持された(表1)。同様に、4週齢時に同じ投与量(1.2×10
11vg/マウス、1×10
13vg/kgと同等である)のAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、24週齢時の肝臓G6Pase−α活性は335.6±40.2nmol/分/mgであり、これは対照同腹仔における活性の1.9倍であった(表1)。これらの所見は、遺伝子移入の効率および持続の損失は肝臓の成長に伴う肝細胞増殖の速度の増大に影響されるという以前の提唱と一致した(Cunninghamら、Mol Ther16巻:1081〜1088頁、2008年)。肝臓の成長の速度が低下する発達後期における注射では、遺伝子発現の損失が少ない。
【0106】
肝臓におけるG6Pase−α導入遺伝子の発現の分布を精査した。予測通り、無処置のG6pc
−/−マウスの肝臓切片において染色可能なG6Pase−α活性は認められなかった。G6pc
+/+/G6pc
+/−マウスでは、酵素組織化学的分析により、G6Pase−αが肝臓全体を通して分布するが、血管の近傍におけるレベルが有意に高いことが示された。
【0107】
2日齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓G6Pase−α活性は、2週齢時に肝臓全体を通して分布した。野生型マウスとは異なり、対照肝臓よりも強力に染色される病巣(foci)を伴い、発現は不均等であった。染色されたG6Pase−α活性は2週齢から4週齢までに著しく低下し、これは、ホスホヒドロラーゼ活性が4.8分の1に低下したことと一貫した(表1)。重ねて、染色されたG6Pase活性は減少し、6週齢以降安定化した。
【0108】
2週齢時または4週齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、酵素組織化学的分析により、G6Pase−α導入遺伝子は、酵素活性のレベルが有意に高い病巣を伴って肝臓全体を通して分布していることが再度示された。重ねて、組織化学的分析により推定されるG6Pase−α活性は、定量的ホスホヒドロラーゼアッセイと一致した(表1)。2週齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓内に、野生型肝臓内の細胞よりも低い強度で染色される細胞が存在した。したがって、AAV−GPEの注入を受けたマウスでは、野生型G6Pase−α活性が示されるにもかかわらず、肝臓G6Pase−α発現の正常なパターンは回復しなかった。
【表1】
「材料および方法」の下で記載されている通り、G6pc
-/-(-/-)マウスに、2日齢時、2週齢時、または4週齢時に1.2×10
11vg/マウスのAAV-GPEを注入した。年齢を釣り合わせたG6pc
+/+/G6pc
+/-(+/+&+/-)マウスを陽性対照として使用し、4週齢〜6週齢のG6pc
-/-(-/-)マウスを陰性対照として使用した。表中の値は、無処置のG6pc
-/-マウスの肝臓ミクロソームにおけるG6Pase-α活性(1.8±0.2nmol/分/mg)をそれぞれの結果から引くことによってバックグラウンドに対して補正したものである。データは、平均±SEMとして示されている。
【0109】
AAV−CBA注入により、より低いレベルの肝臓G6Pase−α発現が導かれる
高レベルの肝臓導入遺伝子の発現を指向するために、CBAプロモーター/CMVエンハンサーが広く使用されている(Xuら、Hum Gene Ther 12巻:563〜573頁、2001年)。しかし、CMVエンハンサーは、広範囲にわたるCpGおよび非CpGメチル化によってサイレンシングされることが知られている(Brooksら、J Gene Med 6巻:395〜404頁、2004年;Mehtaら、Gene 428巻:20〜24頁、2009年)。ハイブリッドCBAプロモーター/CMVエンハンサーの制御下でマウスG6Pase−αを発現するAAV8ベクターであるAAV−CBAを使用した以前のin vivoでの実験では、乏しい発現が示され(Ghoshら、Gene Ther 13巻:321〜329頁、2006年)、これは、おそらく、CMVプロモーターのメチル化に関連する。肝臓の遺伝子移入のin vivoにおける有効性をAAV−CBAとAAV−GPEの間で比較するために、G6pc
−/−マウスに、AAV−GPE実験と同様に、AAV−CBAを、用量を増やし、4.8×10
11vg/マウスで2日齢時および2週齢時に注入し、24週齢まで追跡した。
【0110】
2日齢時に注入を受けたG6pc
−/−マウスについては、2週齢時の肝臓G6Pase−α活性は、AAV−CBAの注入を受けたマウスにおいてAAV−GPEの注入を受けたマウスと比較して2.8倍であり(表1および2)、これは、注入したAAV−CBAの投与量が4倍であることを反映するものである。しかし、新生児期にAAV−CBAの注入を受けた動物における肝臓G6Pase−α活性は4週齢時に20.6±1.1nmol/mg/分まで急速に低下し(表2)、AAV−GPEの注入を受けた新生児G6pc
−/−マウスでは4.8分の1の低下であったのと比較して、2週齢時では18.6分の1の低下であった(表1)。CBAとGPEはベクターバックグラウンドが同一であるので、この所見により、持続的なin vivoにおける肝臓導入遺伝子の発現の指向に関して、CBAプロモーター/CMVエンハンサーの方がG6PCプロモーター/エンハンサーよりも効率が低いことが示唆される。
【0111】
2週齢時に4.8×10
11vg/マウスのAAV−CBAの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓G6Pase−α活性は、4週齢時に236.9±64.7であり(表2)、これは、2週齢時に1.2×10
11vg/マウスのAAV−GPEの注入を受けた4週齢のG6pc
−/−マウスの1.83分の1であった(表1)。さらに、CBAベクターを用いると、肝臓G6Pase−α活性は、6週齢時の55.7±2.7nmol/mg/分から24週齢時の38.1±1.7nmol/mg/分まで低下し続けた(表2)。これは、この期間にわたってほぼ野生型レベルに安定化していた、GPEベクターを用いた場合の発現レベルとは対照的であった(表1)。
【0112】
AAV−CBAの注入を受けた動物の酵素組織化学的分析により、活性染色が、GPEベクターの活性染色と同様であり、対照肝臓におけるものよりも強力に染色された多数の病巣を伴って不均等に分布することが示された。しかし、定量的ホスホヒドロラーゼアッセイと一致して(表2)、全体的な染色強度は注入を受けるマウスの年齢が増すにつれて有意に低くなった。
【表2】
「材料および方法」の下で記載されている通り、G6pc
-/-(-/-)マウスに、2日齢時および2週齢時に4.8×10
11vg/マウスのAAV-CBAを注入した。年齢を釣り合わせたG6pc
+/+/G6pc
+/-(+/+&+/-)マウスを陽性対照として使用し、4週齢〜6週齢のG6pc
-/-(-/-)マウスを陰性対照として使用した。表中の値は、無処置のG6pc
-/-マウスの肝臓ミクロソームにおけるG6Pase-α活性(1.8±0.2nmol/分/mg)をそれぞれの結果から引くことによってバックグラウンドに対して補正したものである。データは、平均±SEMとして示されている。
【0113】
AAV−GPE注入により、GSD−Iaの病理学的顕在化が修正される
グルコース療法下にあるG6pc
−/−マウスは成長が遅延し、2週齢までそれらの平均体重はそれらのG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔のおよそ60%であった(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。AAV−GPEの注入を受けた新生児G6pc
−/−マウスは成長速度が著しく改善され、注入を受けた動物の体重は、対照マウスに匹敵した(
図1A)。2週齢時または4週齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、それらのG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔と平行するが値が低い成長曲線が示され、これは、遺伝子療法を始める前のG6pc
−/−マウスの開始時の体重が低いことと一貫している(
図1A)。
【0114】
グルコース療法下で、G6pc
−/−マウスでは低血糖症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高尿酸血症、および乳酸血症が顕在化し続ける(Leiら、Nat Genet13巻:203〜209頁、1996年;Kimら、J Hepatol 48巻:479〜485頁、2008年)。対照的に、AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスは正常な血中グルコースプロファイルを有し(
図1B)、注入を受けた動物の中で、無処置のG6pc
−/−マウス(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)およびヒトGSD−Ia患者(Chouら、Curr Mol Med 2巻:121〜143頁、2002年)に典型的である頻繁な低血糖発作を患う動物は認められなかった。新生児期に注入を受けたG6pc
−/−マウスにおける血中グルコースレベルは、それらの対照同腹仔よりも有意に低く(
図1B)、これにより、正常な血中グルコースプロファイルを維持するためには、肝臓G6Pase−α活性が対照レベルの6.5%まで回復することでは不十分であることが示唆される。対照的に、2週齢時または4週齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスにおける血中グルコースレベルは、それらの対照同腹仔におけるレベルと区別できなかった(
図1B)。AAV−GPE注入により、血清コレステロール、トリグリセリド、尿酸、および乳酸レベルも正常化したが、新生児期に注入を受けたG6pc
−/−マウスでは血中コレステロールおよび乳酸のレベルがわずかに高かった(
図1B)。
【0115】
肝腫大は、GSD−Iaの別の臨床症状であり、過剰なグリコーゲンおよび脂質の沈着によって主に引き起こされる(Chouら、Curr Mol Med 2巻:121〜143頁、2002年)。影響を受けておらず、AAV−GPEを形質導入したマウスの24週齢時の肝組織切片では、組織学的異常は観察されなかった。24週齢のG6pc
+/+/G6pc
+/−マウスの肝臓内のグリコーゲン含量は、平均でタンパク質1mg当たりグルコシル単位1.89±0.17nmolであった。新生児期にAAV−GPEを注入した動物では、24週齢時のグリコーゲン含量は有意に高く、タンパク質1mg当たりグルコシル単位4.65±0.19nmolであり、これは、GSD−Iaマウスにおいて観察されるグリコーゲン貯蔵欠損を示す。対照的に、2週齢時または4週齢時に注入を受けたマウスでは、24週齢時に野生型レベルのグリコーゲン、すなわち、それぞれタンパク質1mg当たりグルコシル単位1.61±0.39nmol、および1.65±0.19nmolであり、これは、発達のこの段階ではGSD−Ia疾患の特徴的な組織像が存在しないことを示す。
【0116】
オイルレッドO染色により、24週齢時に、AAV−GPEを注入した動物における脂質含量がG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔における脂質含量と同様であることが示された。定量的組織化学的測定のために、Adobe Photoshopを使用して、オイルレッドO染色を用いて画像処理した脂質を画素密度単位に変換した。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスの肝臓における密度単位は、対照マウスにおける密度単位よりも低かったが(およそ150画素密度単位/μm
2、およそ300画素密度単位/μm
2と比較して)、差異は統計学的に有意ではなかった。総合すると、これらの結果から、AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスが組織学的異常を示さず、肝臓内のグリコーゲンおよび脂肪含量が正常であることが示される。
【0117】
AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスは、正常な空腹時血糖および耐糖能プロファイルを示す
それぞれ2週齢時および4週齢時にAAV−GPEの注入を受けた、12週齢および14週齢のG6pc
−/−マウスにおける空腹時血中グルコースレベルを調査した。G6pc
+/+/G6pc
+/−マウスにおける血中グルコースレベルは6時間の絶食後に変化しなかった。重要なことに、2週齢時または4週齢時のいずれかにAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスにおける血中グルコースレベルも6時間の絶食後に変化せず、これにより、注入を受けたG6pc
−/−マウスがもはやGSD−Iaの特徴である空腹時低血糖を患っていないことが実証される(Chouら、Curr Mol Med 2巻:121〜143頁、2002年)。無処置のG6pc
−/−マウスを用いた同様の絶食実験により、急速な低血糖症が生じ、その後、ほんの短時間の絶食後に低血糖発作が生じた。
【0118】
肝臓G6Pase−αの過剰発現によって糖尿病が誘導され得ることが複数の試験によって示されている(Liuら、Biochem Biophys Res Commun 205巻:680〜686頁、1994年;Antinozziら、Annu Rev Nutr 19巻:511〜544頁、1999年;Cloreら、Diabetes 49巻:969〜974頁、2000年)。4週齢時にAAV−GPEの注入を受けた24週齢のG6pc
−/−マウスにおける肝臓G6Pase−α活性は、それらのG6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔における活性のほぼ2倍であったので、本発明者らは、4週齢時にAAV−GPEの注入を受けた14週齢のG6pc
−/−マウスにおいてグルコース負荷試験を行った。対照として、2週齢時にAAV−GPEの注入を受けた12週齢のG6pc
−/−マウスにおいてもグルコース負荷試験を実施した。これらの動物では野生型の肝臓G6Pase−α活性のレベルが示された。注入を受けたG6pc
−/−マウスにおける耐糖能プロファイルは、対照同腹仔の耐糖能プロファイルと区別できなかった。
【0119】
ヒトG6Pase−αに対する免疫応答の非存在
注入を受けたG6pc
−/−マウスにおいて、ヒトG6Pase−αに対する液性応答が生じるかどうかを決定するために、AAV−GPEまたはAAV−CBAの注入を受けたマウス由来の血清を使用してウエスタンブロット分析を実施した。陽性対照として、同じくマウスG6Pase−αを認識するウサギ抗ヒトG6Pase−α抗血清を使用した(Ghoshら、J Biol Chem 277巻:32837〜32842頁、2002年)。24週齢まで生存した、AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスまたはAAV−CBAを注入したG6pc
−/−マウスのいずれにおいてもG6Pase−αに対する抗体は検出されなかった。さらに、G6pc
+/+/G6pc
+/−同腹仔または無処置のG6pc
−/−マウスの血清においてG6Pase−αに対する内在性抗体は存在しなかった。
【0120】
AAV−CBA注入により、肝臓CD8+リンパ球浸潤の増加が誘発される
AAV−CBAを注入したG6pc
−/−マウスの肝臓内にG6Pase−αに対する検出可能な抗体が存在しないことにより、G6Pase−α導入遺伝子に対する細胞性免疫応答はこのベクターによって指向される導入遺伝子の発現の急速な低下の原因ではないことが示唆される。別の可能性は、AAV−CBAベクターによって誘発される炎症性免疫応答である。したがって、G6pc
−/−マウスにAAV−CBAまたはAAV−GPEを注入後2週間の肝臓CD8+リンパ球浸潤を調査した。2週齢および4週齢の野生型またはG6pc
−/−マウスでは、肝臓CD8+リンパ球数は少なかった。2日齢時にAAV−CBAまたはAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、2週齢時の肝臓CD8+リンパ球数は、ベクターの種類のそれぞれについて同様であり、無処置の2週齢の野生型またはG6pc
−/−動物における数に匹敵した。2週齢時にAAV−GPEの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓CD8+リンパ球数は4週齢時に少ないままであった。対照的に、2週齢時にAAV−CBAの注入を受けたG6pc
−/−マウスでは、肝臓CD8+リンパ球数は4週齢時に著しく増加した。その結果から、AAV−CBAによって誘発される炎症応答により、少なくとも一部において、CBAプロモーター/CMVエンハンサーによって指向される肝臓G6Pase−α発現の急速な低下および有効性の低さを説明することができることが示唆される。
【0121】
(実施例2)
遺伝子療法を使用した糖原病Ia型における肝細胞腺腫の予防および代謝異常の修正
この実施例では、長期試験においてAAV−GPEベクターの有効性を評価するための試験を記載している。G6pc
−/−マウスにおけるAAV−GPEベクターによって媒介される遺伝子療法は、野生型肝臓G6Pase−αの3%超を発現するマウスにおいて少なくとも70〜90週間にわたって効果的であった。その結果から、AAV−GPEで処置したマウスでは、正常な肝臓脂肪の貯蔵、正常な血中代謝産物および耐糖能プロファイル、空腹時血中インスリンレベルの低下が示され、肝臓の異常の証拠は示されないことが実証された。
【0122】
材料および方法
G6pc
−/−マウスへのAAV−GPEの注入
AAV−GPEベクター(実施例1およびYiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年に記載されている)を、G6pc
−/−マウス(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)に後眼窩洞を通じて注入した。年齢を釣り合わせたG6pc
+/+/G6pc
+/−ならびに6〜10週齢のG6pc
−/−マウスを対照として使用した。ウイルスの注入を受けたマウスについては、注入後すぐにグルコース療法(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)を終了した。
【0123】
マウスのグルコース負荷試験は、6時間にわたる絶食後に血液試料採取し、その後、グルコース溶液を体重1g当たり2mgで腹腔内注射し、尾静脈を通じた血液試料採取を2時間にわたって繰り返すことからなった。
【0124】
ホスホヒドロラーゼおよびミクロソームG6P取り込みアッセイ
ミクロソームの単離、ホスホヒドロラーゼアッセイ、G6Pase−αの酵素組織化学的分析、およびミクロソームG6P取り込みアッセイを以前に記載されている通り実施した(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年;Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。
【0125】
表現型分析
マウスを、まず、肝臓小結節についてVevo2100 system(VisualSonics、Ontario、Canada)を使用した超音波によって検査し、血液試料を尾静脈から採取した。血中グルコース、総コレステロール、および尿酸をThermo Electron(Louisville、CO)から入手したキットを使用して分析し、トリグリセリドをSigma Diagnostics(St Louis、MO)からのキットによって分析し、乳酸をTrinity Biotech(St Louis、MO)からのキットによって分析し、インスリンをCrystal Chem(Downers Grove、IL)からの超高感度マウスインスリンELISAキットによって分析した。肝臓グリコーゲン含量を以前に記載されている通り測定した(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年)。肝臓トリグリセリド、グルコース、およびG6Pの含量を決定するために、肝組織をRIPA緩衝液(50mMのTris HCl、pH8.0、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、0.5%Na−デオキシコール酸、および0.1%SDS)(Thermo Scientific、Rockford、IL)中でホモジナイズし、トリグリセリドをSigma Diagnosticsからキットを使用して測定し、グルコースをThermo Electronからのキットによって測定し、G6PをBioVision(Mountain View、CA)からのキットによって測定した。
【0126】
ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色およびオイルレッドO染色(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年)のために、肝臓切片を10%中性緩衝ホルマリン中に保存し、4〜10ミクロンの厚さの薄片を作製した。染色した切片を、Axioskop2 plus microscopeおよびAxioVision 4.5 software(Carl Zeiss、Thornwood、NY)を使用して可視化した。
【0127】
定量的リアルタイムRT−PCRおよび抗体分析
全RNAを肝組織からTRIzol(商標)Reagent(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して単離した。mRNA発現をApplied Biosystems TaqManプローブを使用したApplied Biosystems 7300 Real−Time PCR System(Foster City、CA)におけるリアルタイムRT−PCRによって定量化した。データを、Applied Biosystems SDS v1.3 softwareを使用して分析し、β−アクチンRNAに対して正規化した。ヒトG6Pase−αに対する抗体を以前に記載されている通りウエスタン−ブロット分析によって検出した(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年)。
【0128】
統計分析
GraphPad Prism(登録商標)Program、 version 4(San Diego、CA)を使用して独立t検定を実施した。値は、P<0.05で統計学的に有意であるとみなした。
【0129】
結果
AAV−GPE注入により、長期間の肝臓G6Pase−α発現が指向される
AAV−GPEを、用量を変動させて(5×10
12〜3×10
13ウイルス粒子(vp)/kg)注入した2週齢または4週齢のG6pc
−/−マウス(n=18)では、野生型肝臓G6Pase−α活性の3%から100%に回復し、維持されると予測された。15週齢のG6pc
−/−マウス1匹(5×10
12vp/kg)および30週齢のG6pc
−/−マウス1匹(1×10
13vp/kg)にも注入を行った。グルコース療法下のGSD−Iaマウスの低い生存率により、試験のために入手可能な成体マウスの数が重度に制限された(Leiら、Nat Genet13巻:203〜209頁、1996年)。注入を受けた動物20匹の代謝プロファイルおよび組織学的プロファイルを70〜90週間にわたってモニターし、全ての測定値をそれらのG6pc
+/+同腹仔およびG6pc
+/−同腹仔の測定値と比較した。G6pc
+/+マウスおよびG6pc
+/−マウスの表現型はどちらも野生型と区別できない(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。
【0130】
AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスの早期死亡は認められなかった。肝臓G6Pase−α活性およびグリコーゲン含量を、24時間の絶食後に屠殺したマウスにおいて評価した。70〜90週齢の野生型マウス(n=20)の平均空腹時肝臓G6Pase−α活性は185.8±12.7nmol/mg/分であった(
図2A)。計画の通り、処置を受けたマウスにおいて様々な肝臓G6Pase−α活性が回復した。70〜90週齢時に屠殺した、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウス20匹のうち、6匹のマウスが低レベル(野生型活性の3%〜9%)の肝臓G6Pase−α活性を有し、これらをAAV−Lと称し、9匹のマウスが中間のレベル(野生型活性の22%〜63%)の肝臓G6Pase−α活性を有し、これらをAAV−Mと称し、5匹のマウスが高レベル(野生型活性の81%〜128%)の肝臓G6Pase−α活性を有し、これらをAAV−Hと称した(
図2A)。リアルタイムRT−PCR分析により、肝臓G6Pase−α mRNA発現とG6Pase−α活性の間の直線関係が示された(
図2B)。
【0131】
酵素組織化学的分析により、野生型マウスにおけるG6Pase−αは肝臓全体を通して分布し、血管の近傍におけるレベルが有意に高いことが示された。無処置のG6pc
−/−マウスの肝臓切片では染色可能なG6Pase−α活性は認められなかった。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスでもG6Pase−αは肝臓全体を通して分布したが、血管に関連するものではない病巣に著しく高レベルの酵素活性が含有された。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける肝臓G6Pase−αの分布が不均等であることにより、野生型G6Pase−α活性の81〜128%を発現するAAV−H肝臓を含め、かなりの割合の肝細胞が少ないまたはわずかなG6Pase−αを有することが示唆される。GSD−Ia表現型のレスキューのために均一な肝臓G6Pase−α発現は必要ない。
【0132】
AAV−GPE注入によりGSD−Iaにおける代謝異常が修正される
GSD−Iaは、低血糖症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高尿酸血症、および乳酸血症を特徴とする(Chouら、Nat Rev Endocrinol 6巻:676〜688頁、2010年)。野生型肝臓G6Pase−α活性を発現するAAV−Hマウスにおける血中グルコースレベルは対照同腹仔におけるレベルと区別できなかった(
図3A)。それぞれ正常な肝臓G6Pase−α活性の22〜63%および3〜9%を発現するAAV−MおよびAAV−Lでも、正常血糖(約100mg/dl)の状態が維持されたが(Yoshizawaら、J Clin Invest 119巻:2807〜2817頁、2009年)、それらの血中グルコースレベルは一貫して対照同腹仔よりも低かった(
図3A)。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスの全てでコレステロールおよびトリグリセリドの正常な血清プロファイルが示されたが、処置を受けたG6pc
−/−マウスにおける尿酸および乳酸の血清中レベルは、対照同腹仔におけるレベルよりも低かった(
図3A)。
【0133】
AAV−GPEで処置した雌性マウスおよび雄性マウスの70週齢〜90週齢時の平均体重は、それぞれ、それらの年齢および性別を釣り合わせた対照マウスの70%および62%であった(
図3B)。しかし、処置を受けたG6pc
−/−マウスの平均体長は対照の90%であった(
図3B)。したがって、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスの肥満度指数(BMI)値(Baharyら、Proc Natl Acad Sci USA 87巻:8642〜8646頁、1990年)は、対照同腹仔の値よりも有意に低かった(
図3B)。どちらのマウス群のBMI値も正常な成長を示すものであるが(Baharyら、Proc Natl Acad Sci USA 87巻:8642〜8646頁、1990年)、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスは相当に痩せていた。野生型マウスにおける肝臓重量は比較的一定であった(
図3C)。AAV−GPEの注入を受けたマウスでは、肝臓重量は肝臓G6Pase−αの活性の回復と逆相関した(
図3C)。肝臓重量を体重に対するパーセントで表した場合、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスは体重が少ないので、有意に高い値になる。しかし、絶対的な肝臓重量を直接比較した場合、AAV−M、AAV−H、および対照同腹仔の間で有意な差異は認められなかった(
図3C)。しかし、AAV−Lマウスでは肝腫大が継続して示された。AAV−GPEによる腎臓への導入遺伝子の送達はわずかであるか全くなかった(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年)。しかし、高い肝臓G6Pase−α活性を発現する、注入を受けたマウスの腎臓重量は少なく、これにより、良好な肝臓の代謝制御によって腎肥大症が正常化したことが示唆される。
【0134】
AAV−GPEを注入したG6pc
−/−肝臓における組織学的異常、脂肪症、またはHCAの非存在
AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおけるHCA小結節の存在を決定するために、肝臓当たり5つまたはそれ超の別々の切片を使用して、超音波分析を行い、その後、広範囲にわたる肝臓の検査および肝臓生検試料の組織学的分析を行った。超音波および形態学的分析により、70週齢〜90週齢まで生存した野生型マウス(n=20)およびAAV−GPEを形質導入したG6pc
−/−マウス(n=20)において肝臓小結節は検出されなかった。2週齢時または4週齢時に注入を受けた、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウス(n=18)では、グリコーゲン貯蔵が増加した以外は肝臓の組織学的異常は示されなかった。正常な肝臓G6Pase−α活性の6%を発現した、15週齢時に注入を受けた84週齢のマウスでは、1つの肝臓切片においてグリコーゲン貯蔵の上昇およびわずかな壊死性病巣が示された。正常な肝臓G6Pase−α活性の38%を発現した、30週齢時に注入を受けた90週齢のマウスの肝組織切片の大部分では、組織学的異常は示されず、1つの肝臓切片が多くの壊死性病巣を有した。壊死性病巣は、6週齢以降の無処置のGSD−Iaマウスにおいて見られる特徴的な肝臓病態であるので(Kimら、J Hepatol 48巻:479〜485頁、2008年)、これらの壊死性病巣は、15週齢時または30週齢時の遺伝子療法を開始する前に発生した可能性がかなり高い。
【0135】
肝臓特異的G6pc−ヌルマウスの肝臓では顕著な脂肪症を伴ってHCAを発生することが報告された(Mutelら、J Hepatol 54巻:529〜537頁、2011年)。数匹の野生型マウスで肝臓脂肪の貯蔵が増加し、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスの肝臓における脂肪の貯蔵はわずかであったか、全くなかった。さらに、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウス(n=20)における肝臓トリグリセリド含量は、野生型マウスにおける肝臓トリグリセリド含量と統計学的に異ならなかった。オイルレッドO染色により、AAV−GPEで処置した動物(n=20)における脂質含量が対照における脂質含量と同様であることが確認された。
【0136】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、HCCを含めた多くの前悪性のがん状態および悪性のがんにおいて過剰発現するマーカーであることが十分に確立されている(Wu、Cancer Treat Rev 32巻:28〜44頁、2006年)。定量的RT−PCR分析により、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−および対照同腹仔において同様のレベルの肝臓COX−2メッセージが発現したことが示された。
【0137】
AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスでは正常な空腹時血糖および耐糖能プロファイルが示される
絶食を始める前の野生型マウス(n=20)の平均血中グルコースレベルは165.0±3.0mg/dl(ゼロ時間)であり、これは24時間の絶食後には113.3±6.5mg/dlに減少した(
図4A)。AAV−LマウスとAAV−Mマウスの空腹時血中グルコースプロファイルは対照マウスのプロファイルと平行したが、血中グルコースレベルは一貫して低く(
図4A)、一方、AAV−Hマウスの空腹時血糖プロファイルは対照マウスのプロファイルと区別できなかった。著しく異なり、無処置のG6pc
−/−マウスは、絶食60〜75分以内にGSD−Iaの特質である顕著な低血糖症を示した(
図4B)(Chouら、Nat Rev Endocrinol 6巻:676〜688頁、2010年)。要約すると、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスは、もはやGSD−Iaの空腹時低血糖特性を患っていない(Chouら、Nat Rev Endocrinol 6巻:676〜688頁、2010年)。
【0138】
AAV−MマウスおよびAAV−Hマウスにおける血中耐糖能プロファイルは野生型同腹仔のプロファイルと区別できなかった(
図4C)。AAV−Lマウスでは、腹腔内グルコース注射後に、血中グルコースレベルが野生型対照よりも速い速度で低下した。
【0139】
AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける空腹時血中インスリンレベルの低下
インスリンシグナル伝達により、肝臓のグルコース代謝および脂質代謝が調節される(LeavensおよびBirnbaum、Crit Rev Biochem Mol Biol 46巻:200〜215頁、2011年)。24時間の絶食後に、70〜90週齢の野生型マウス(n=20)およびAAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウス(n=20)における血中インスリンレベルは、それぞれ1.84±0.29および0.56±0.09ng/mlであった(
図5A)。どちらも正常範囲内であったが(de Lucaら、J Clin Invest 115巻:3484〜3493頁、2005年)、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける空腹時血中インスリンレベルの方が正常な平均値に近かった(de Lucaら、J Clin Invest 115巻:3484〜3493頁、2005年)。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける空腹時血中インスリンレベルは肝臓G6Pase−αの回復と相関しなかったが、野生型マウスおよび処置を受けたG6pc
−/−マウスにおけるインスリンレベルは、それらの体重と直線関係を示した(
図5A)。
【0140】
インスリンの転写効果は、ステロール調節エレメント結合タンパク質−1c(SREBP−1c)によって媒介される(LeavensおよびBirnbaum、Crit Rev Biochem Mol Biol 46巻:200〜215頁、2011年)。定量的RT−PCR分析により、24時間絶食させた、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスおよび対照マウスにおいて同様のレベルの肝臓SREBP−1c転写物が発現したことが示された(
図5B)。グルコキナーゼはグルコースセンサーである(Massaら、IUBMB Life 63巻:1〜6頁、2011年)。肝臓グルコキナーゼ活性は、空腹時など、血中インスリンレベルが低いと低下する(Massaら、IUBMB Life 63巻:1〜6頁、2011年)。血中インスリンで見られたのと同様に、AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける24時間の絶食後の肝臓グルコキナーゼ転写物は、対照同腹仔における転写物よりも有意に少なかった(
図5C)。興味深いことに、肝臓グルコキナーゼmRNAと空腹時血中インスリンのレベルは、野生型マウスとAAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスのどちらにおいても直線関係を示した(
図5C)。
【0141】
AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスの肝臓におけるグルコース恒常性
絶食中、血中グルコース恒常性は、肝臓において糖新生およびグリコーゲン分解の最終ステップにおけるG6PT/G6Pase−α複合体によるG6Pの加水分解によって産生される内在性グルコースによって維持される(Chouら、Nat Rev Endocrinol 6巻:676〜688頁、2010年)。機能的なG6Pase−αを欠くG6pc
−/−マウスは、肝臓、腎臓、または腸において内在性グルコースを産生することができない。24時間の絶食後の肝臓の遊離のグルコースレベルは、野生型マウス(n=20)ではタンパク質1mg当たり389±17nmolであり、AAV−Lマウス(n=6)、AAV−Mマウス(n=9)、およびAAV−Hマウス(n=5)では、それぞれ野生型マウスの61%、68%および90%であった。絶食させたAAV−L肝臓およびAAV−M肝臓における細胞内G6Pレベルは、それぞれ野生型肝臓の2.9倍および1.6倍であったが、絶食させたAAV−H肝臓における細胞内G6Pレベルは野生型肝臓のレベルと統計学的に同様であった。
【0142】
肝臓のG6Pは、細胞質における、グリコーゲン合成、解糖、ペントース−リン酸経路を含めたいくつかの代謝経路、およびER内腔における内在性グルコース産生に関与する。上記の経路に関与するいくつかの重要な酵素の肝臓での発現を、24時間の絶食後のマウスにおいて調査した。これらの酵素として、肝臓の糖新生における最初の重要なステップ(committed step)を触媒するサイトゾルホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK−C)(HansonおよびReshef、Biochimie 85巻:1199〜1205頁、2003年);フルクトース−1,6−二リン酸をフルクトース−6−リン酸に変換するフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ(FBPase−1)(Hers、J Inherit Metab Dis 13巻:395〜410頁、1990年);グリコーゲン分解およびグリコーゲン合成におけるグルコース−6−Pおよびグルコース−1−Pの可逆的変換を触媒するホスホグルコムターゼ(PGMase)(Hers、J Inherit Metab Dis 13巻:395〜410頁、1990年);フルクトース−6−Pをフルクトース−1,6−二リン酸に変換することによって解糖における不可逆的な律速ステップを触媒するホスホフルクトキナーゼ−1(phosphofructokianse-1)(PFK−1)(Hers、J Inherit Metab Dis13巻:395〜410頁、1990年);G6Pを6−ホスホグルコノラクトンに変換することによってペントース−リン酸経路における第1の反応を触媒するG6Pデヒドロゲナーゼ(G6PDH)(Wamelinkら、J Inherit Metab Dis31巻:703〜717頁、2008年);および細胞質内G6PをER内腔に輸送するG6PT(Chouら、Nat Rev Endocrinol6巻:676〜688頁、2010年)が含まれる。
【0143】
定量的リアルタイムRT−PCR分析により、絶食させた肝臓では、PEPCK−CおよびPGMase転写物は変化しなかったが、FBPase−1転写物はAAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおいて対照と比較して増加したことが示された。AAL−L肝臓におけるPFK−1およびG6PDH転写物はどちらも増加したが、AAV−M肝臓およびAAV−H肝臓ではなお統計学的に野生型肝臓と同様であった。AAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスにおける肝臓G6PT mRNAレベルは、肝臓G6Pase−α活性のレベルの回復にかかわらず、野生型対照の2.2倍であった。G6PTに媒介性される肝臓ミクロソームG6P取り込み活性は、内在性グルコース産生を律速するものであるが(Arionら、J Biol Chem 251巻:6784〜690頁、1976年)、G6Pase−α活性と共依存性である(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)。インタクトなG6PTを用いてG6pc
−/−マウスから調製した肝臓ミクロソームでは、野生型肝臓ミクロソームと比較して著しく低いG6P取り込み活性が示され(Leiら、Nat Genet 13巻:203〜209頁、1996年)、これは、遺伝子移入によってG6Pase−α活性を回復させると、逆転させることができる(Zingoneら、J Biol Chem 275巻:828〜832頁、2000年)。AAV−L肝臓、AAV−M肝臓、およびAAV−H肝臓では、ミクロソームG6P取り込み活性は、それぞれ野生型活性の43%、50%、および72%であり、これは、肝臓の遊離のグルコースレベルと平行した肝臓G6Pase−α活性の上昇を反映する(
図2A)。
【0144】
ヒトG6Pase−αに対する免疫応答の非存在
注入を受けたマウスにおいてヒトG6Pase−αに対する液性応答が生じるかどうかを決定するために、70〜90週齢の対照マウスおよびAAV−GPEで処置したG6pc
−/−マウスから得た血清を使用してウエスタンブロット分析を実施した。マウスG6Pase−αも認識する、ヒトG6Pase−αに対するモノクローナル抗体(Yiuら、Mol Ther 18巻:1076〜1084頁、2010年)を陽性対照として使用した。70〜90週齢まで生存した、AAV−GPEを注入したG6pc
−/−マウスまたは野生型対照マウスのいずれにおいてもG6Pase−αに対する抗体は検出されなかった。
【0145】
(実施例3)
G6PCプロモーターの上流エンハンサーエレメントは糖原病Ia型における最適なG6PC発現に極めて重要である
この実施例では、AAV−GPEベクターの有効性をさらに評価するための試験を記載している。2684bpのG6PCプロモーター/エンハンサーを含む一本鎖ベクターであるAAV−GPEを、382bpの最小G6PCプロモーター/エンハンサーを含有する二本鎖ベクターであるAAV−miGPEと比較した。この実施例に記載されている結果は、AAV−GPEベクターにより、GSD−Iaマウスにおいて、AAV−miGPEベクターと比較して有意に高いレベルの肝臓G6Pase−α発現が指向され、肝臓グリコーゲン蓄積のより大きな減少が実現され、また、より良好な絶食耐性につながったことを示すものである。
【0146】
材料および方法
G6pc−/−マウスへのrAAVベクターの注入
全てのG6pc−/−マウスをグルコース療法で生存維持させた(Leiら、Nat. Genet.13巻:203〜209頁、1996年)。2週齢のG6pc−/−マウスに後眼窩洞を通じてrAAVベクターを注入した。年齢を釣り合わせたG6pc+/+/G6pc+/−マウスを対照として使用した。rAAVベクターの注入を受けたマウスについては、注入後すぐにグルコース療法を終了した。全てのウイルス形質導入を2週齢のG6pc−/−マウスに実施し、12週齢時に有効性を評価した。
【0147】
ホスホヒドロラーゼアッセイ
ミクロソームの単離およびホスホヒドロラーゼアッセイを基本的に以前に記載されている通り決定した(Leiら、Nat. Genet.13巻:203〜209頁、1996年)。ホスホヒドロラーゼアッセイに関しては、50mMのカコジル酸緩衝液、pH6.5、10mMのG6Pおよび適量のミクロソーム調製物を含有する反応混合物(100μl)を30℃で10分インキュベートした。インタクトな膜を0.2%デオキシコール酸中、0℃で20分インキュベートすることによって破壊ミクロソーム膜を調製した。非特異的ホスファターゼ活性を、破壊ミクロソーム調製物をpH5、37℃で10分プレインキュベートすることによって推定し、酸に不安定なG6Pase−αを不活化した。
【0148】
ベクターDNAおよびmRNAの定量化
GenElute(商標)Mammalian Genomic DNA Miniprep Kit(Sigma−Aldrich、St Louis、MO)を使用してマウス組織由来の総DNAを単離し、TRIzol(商標)Reagent(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して全RNAをマウス組織から単離した。ベクターゲノム数およびmRNA発現を、Applied Biosystems TaqManプローブを使用したApplied Biosystems 7300 Real−Time PCR System(Applied Biosystems、Foster City、CA)でそれぞれPCRおよびリアルタイムRT−PCRによって定量化した。G6PCについてはTaqManプローブセットHs00609178_m1、およびβ−アクチンについてはMm00607939_s1を使用してヒトG6PC遺伝子のベクターゲノム数をマウスβ−アクチンに対して正規化した。ヒトG6PC遺伝子の0.01〜100コピーに対応するプラスミドDNAを標準曲線に使用した。ベクターゲノムコピー数を決定するために、試料のCt値を標準曲線と比較した。G6PCについてはTaqMan(登録商標)プローブセットHs00609178_m1およびRpl19についてはMm02601633_g1を使用してG6PC mRNA発現をRpl19 RNAに対して正規化した。
【0149】
表現型分析
Thermo Electron(Louisville、CO)から入手したキットを使用して血中グルコースを分析した。肝臓グリコーゲンおよびトリグリセリド含量を以前に記載されている通り測定した(実施例1および2、ならびにYiuら、Mol. Ther.18巻:1076〜1084頁、2010年;Leeら、Hepatology 56巻:1719〜1729頁、2012年)。肝臓トリグリセリドを決定するために、肝組織をRIPA緩衝液(50mMのTris HCl、pH8.0、150mMのNaCl、1%トリトンX−100、0.5%Na−デオキシコール酸、および0.1%SDS)(Thermo Scientific、Rockford、IL)中にホモジナイズし、Sigma Diagnostics(St Louis、MO)からのキットを使用してトリグリセリドを測定した。
【0150】
マウスのグルコース負荷試験は、6時間にわたる絶食後に血液試料採取し、その後、グルコース溶液を体重1g当たり2mgで腹腔内注射し、2時間にわたって尾静脈を通じた血液試料採取を繰り返すことからなった。
【0151】
統計分析
GraphPad Prism(登録商標)Program、version 4(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)を使用して独立t検定を実施した。値は、p<0.05であれば統計学的に有意とみなした。
【0152】
結果
rAAV−GPEまたはrAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスにおける肝臓G6Pase−α発現
12週間にわたるG6pc−/−マウスの処置におけるrAAV−GPEベクター(実施例1およびYiuら、Mol. Ther.18巻:1076〜1084頁、2010年を参照されたい)およびrAAV−miGPEベクター(Koeberlら、Mol. Ther.16巻:665〜672頁、2008年)の有効性を調査するための試験を行った。各ベクターを、2つの異なる研究センターにおいて、群当たりマウス6匹のマウスを用い、2種類の用量、1×10
13ウイルス粒子(vp)/kg(高用量)および2×10
12vp/kg(低用量)で使用した。どちらのセンターでも同様の結果が得られた。形質導入されたG6pc−/−マウスにおける肝臓G6Pase−α活性は、2つのセンターからの統合データを表すが、他の報告データは単一の試験からのものである。rAAVに媒介される肝臓の遺伝子移入の効率および持続が、初期発生の間は、肝臓の成長に伴う肝細胞増殖の速度が大きく、それによりrAAVが有効に感染した細胞の数が希薄化することに起因して少ないことが複数の試験によって示されている(Yiuら、Mol. Ther.18巻:1076〜1084頁、2010年;Cunningham、Mol. Ther.16巻:1081〜1088頁、2008年)。この試験では、rAAVベクターを、肝細胞増殖が高いままである2週齢のG6pc−/−マウスに投与した。したがって、12週齢時に検査した肝臓G6Pase−α発現は、同じベクター投与量の注入を受けた成体マウスにおいて見られる発現よりも有意に低い。ヒト疾患における最良の介入の時期はまだ確立されていない。
【0153】
どちらのセンターにおいても、処置を受けたG6pc−/−マウスの全てが12週齢まで生存し、早期死亡は見られなかった。12週齢の野生型マウスの肝臓では、ミクロソームG6Pase−α活性は203.5±10.3nmol/分/mg(n=24)であった。2つのセンターにおいて独立に決定された統合データ(処置当たりn=12)により、12週齢時に、高用量rAAV−GPE療法では、rAAV−miGPEの活性の3.5倍である、野生型肝臓G6Pase−α活性の約18%が再構成され、低用量rAAV−GPE療法では、rAAV−miGPEの3.6倍超の活性が生じたことが示された(
図6A)。肝臓G6Pase−α活性は肝臓のベクターゲノムコピー数と共に直線的に上昇し、rAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウス(n=6)のコピー数はrAAV−miGPEで処置したマウス(n=6)よりも有意に多かった(
図6A)。
【0154】
rAAV−GPEまたはrAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスの代謝プロファイル
rAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウスおよびrAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスは全て、体重は少なかったが、それらの野生型同腹仔と平行する成長曲線を示した(
図6B)。処置を受けたマウスの肥満度指数(BMI)値は、ベクターまたは用量レベルに関係なく、野生型マウスの値と区別できなかった(
図6C)。処置を受けたG6pc−/−マウスの全てで、血中グルコースレベルは一貫して野生型対照よりも低かったが、それでも正常範囲の下限は上回り(
図6D)、注入を受けた動物の中で、GSD−Iaに典型的である頻繁な低血糖発作を患ったものはなかった(Chouら、Curr. Mol. Med.2巻:121〜143頁、2002年;Chouら、Nat. Rev. Endocrinol.6巻:676〜688頁、2010年;Leeら、Hepatology56巻:1719〜1729頁、2012年)。
【0155】
肝臓グリコーゲンおよび/または中性脂肪蓄積の1つの尺度である、身体に対する肝臓の相対的な重量(Chouら、Curr. Mol. Med.2巻:121〜143頁、2002年;Chouら、Nat. Rev. Endocrinol.6巻:676〜688頁、2010年)は、処置を受けたG6pc−/−マウス群4つ全てにおいて野生型マウスよりも高かったが、高用量のrAAV−GPEで処置したマウスでは、他の群よりも有意に正常に近かった(
図7A)。これと一貫して、rAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウスおよびrAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスにおけるグリコーゲン含量は、それらの野生型対照よりも著しく高く(
図7B)、ベクター用量が高い方が、低ベクター用量よりもグリコーゲンが良好に低減し、これにより、肝臓G6Pase−α発現がより大きく回復することにより肝腫大が改善されることが実証される。しかし、単に高用量療法を比較すると、rAAV−miGPEで処置したマウスは、rAAV−GPEで処置したマウスよりも43%多くのグリコーゲンを有した。肝臓グリコーゲンが継続して上昇したにもかかわらず、rAAVで処置したG6pc−/−マウスのいずれの肝組織切片においても12週齢時に組織学的異常は観察されなかった。低用量のrAAV−miGPEで処置したマウスを例外として、肝臓トリグリセリド含量は野生型と他のrAAVで処置したG6pc−/−マウス3群の間で統計学的に異ならなかった(
図7C)。
【0156】
rAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウスまたはrAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスにおける空腹時血糖および耐糖能プロファイル
野生型マウス(n=24)については、絶食前の平均血中グルコースレベルは172.2±2.6mg/dl(ゼロ時間)であり、これは、絶食8時間後には134.6±3.8mg/dlに低下した(
図8A)。高用量療法マウス(処置当たりn=6)の空腹時血中グルコースプロファイルは、低用量療法マウス(処置当たりn=6)よりも有意に良好であったが、高用量であっても、rAAV−GPEで処置したマウスでは有意に高いグルコースレベルが持続し、6時間の絶食中、野生型レベルで安定化し、一方、rAAV−miGPEで処置したマウスでは、はるかに低い、野生型レベルの60%でプラトーに達した(
図8A)。高用量のrAAV−GPEで処置したマウスおよびrAAV−miGPEで処置したマウスは同様に24時間の絶食を持続させることができたが、空腹時血中グルコースレベルは、rAAV−GPEで処置したマウスにおいて、rAAV−miGPEで処置したマウスよりも有意に高かった(
図8B)。要約すると、rAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウスは、rAAV−miGPEで処置したG6pc−/−マウスよりも野生型に近く、より絶食に耐えることができた。
【0157】
腹腔内グルコース注射後、処置を受けたG6pc−/−マウス(処置当たりn=6)の血中耐糖能プロファイルをモニターした。一般に、プロファイルは野生型マウスのプロファイルと平行し(
図8C)、高用量で処置したマウスは低用量で処置したマウスよりも良好に応答した。
【0158】
12週齢の、高用量のrAAV−GPEで処置したG6pc−/−マウスの肝臓、腎臓、腸、脳、精巣、および卵巣におけるヒトG6PC導入遺伝子の生体内分布を定量的PCRによって分析した(表1)。形質導入を受けた肝臓では、DNA1μg当たりのベクターゲノムコピー数は、94,440±7,624(または0.51±0.04ベクターコピー/二倍体ゲノム)であった。形質導入を受けた腎臓および腸では、数は劇的に減少し、平均で、それぞれ肝臓コピー数のたった2.57%および0.64%であり、これにより、rAAV8ウイルスは腎臓および腸には効率的に形質導入されなかったことが示される。脳および精巣におけるDNA1μg当たりのゲノムコピー数はさらに少なく、それぞれ肝臓コピー数の0.12%および0.02%であった。卵巣ではバックグラウンドレベルのヒトG6PCゲノムのみが検出された。
【0159】
rAAV−GPEベクターは、主に肝臓、腎臓内の近位尿細管、および腸において発現する組織特異的プロモーター/エンハンサーエレメントを含有する(Chouら、Curr. Mol. Med.2巻:121〜143頁、2002年;Chouら、Nat. Rev. Endocrinol.6巻:676〜688頁、2010年)。ヒトG6PC転写物の定量的リアルタイムRT−PCR分析では、ゲノムコピー数と遺伝子発現の間の相関が示された(表3)。肝臓では、Rpl19転写物に対するヒトG6PC mRNAのレベルは0.62740±0.04445であった。ゲノムコピー分析から予測された通り、腎臓では肝臓ヒトG6PC mRNAの0.03%のみが発現し、腸、脳、精巣、および卵巣ではバックグラウンドレベルのヒトG6PC mRNAのみが検出された。
【表3】
【0160】
データは平均±SEMである。導入遺伝子を含有しない野生型組織の値は、肝臓、腎臓、腸、脳、精巣、および卵巣の平均±SEMである。括弧内の数は肝臓値に対する%である。
【0161】
(実施例4)
スタッファー配列を有するAAVベクターとスタッファー配列を有さないAAVベクターの比較
この実施例では、G6Pase−αを発現するAAVベクターにおけるイントロンに隣接するスタッファーヌクレオチド配列が効率的な肝臓の形質導入のために重要であるという所見を記載している。
【0162】
G6Pase−αの導入遺伝子送達および肝臓での発現に対するスタッファー配列の寄与を評価するために、プラスミドUF11−K29−G6PCを構築した。UF11−K29−G6PC(配列番号2)は、UF11−GPE−G6PC(配列番号1)とは、イントロンの周囲のスタッファー配列を欠くことが異なる。G6PCプロモーター/エンハンサー(GPE)およびG6PCコード配列は各プラスミドで同一である。
【0163】
G6pc−/−マウスに、組換えAAV−K29−G6PCまたは組換えAAV−GPE−G6PCのいずれかを1×10
13vp/kgで投与した。その結果から、AAV−K29−G6PCでは、AAV−GPE−G6PCと比較して、GSD−Iaマウスにおける肝臓の形質導入効率が著しく低下することが示された。AAV−K29−G6PCを形質導入した肝臓およびAAV−GPE−G6PCを形質導入した肝臓におけるG6Pase活性は、それぞれ7.3nmol/分/mgおよび33.0nmol/分/mgであった。これらの結果は、イントロンに隣接するスタッファー配列が効率的な肝臓の形質導入のために重要であることを実証するものである。
【0164】
(実施例5)
コドン最適化されたG6PCをコードするAAVベクターの生成
この実施例では、コドン最適化されたG6PCを含有するAAVベクターの構築および特徴付けを記載している。
【0165】
UF11−GPE−co−G6PCプラスミド(コドン最適化されたG6PCを含む;配列番号3)は、UF11−GPE−G6PCプラスミド(配列番号1)に由来するが、AAV−GPE−G6PCの野生型G6Paseコード配列が合成のコドン最適化されたG6Pase(配列番号3のヌクレオチド3368〜4441)で置き換えられている。
【0166】
一過性in vitro発現アッセイにより、co−G6Paseが野生型ヒトG6Paseの1.9倍の酵素活性を示すことが示された。さらに、組換えAAV−GPE−co−G6PCの2つのバッチをin vivo活性について評価し、GSD−Iaマウスにおける組換えAAV−GPE−G6PCの活性と比較した。AAV−GPE−co−G6PCの第1のバッチは、肝臓への形質導入に関して、AAV−GPE−G6PCよりも50%効率的であった。AAV−GPE−co−G6PCの第2のバッチは、肝臓への形質導入に関して、組換えAAV−GPE−G6PCよりも2.5倍効率的であった。
【0167】
これらの結果は、G6PCのコドン最適化により、G6Pase−αを発現する組換えAAVの肝臓形質導入能力が増大することを実証するものである。
【0168】
(実施例6)
コドン最適化されたヒトG6Paseを発現する組換えAAVベクターの有効性の評価
本実施例では、GSD−IaマウスにおけるrAAV8−GPE−G6Paseによって媒介される遺伝子送達の有効性とrAAV8−GPE−co−G6Paseによって媒介される遺伝子送達の有効性を比較するための試験を記載する。
【0169】
GSD−Iaマウスにおける遺伝子送達の有効性を、2種のAAVベクター:1)rAAV8−GPE−G6Pase(約3kbのヒトG6PCプロモーター/エンハンサー(GPE)によって指向される、ヒトG6Pase−αを発現するrAAV8ベクター);および2)rAAV8−GPE−co−G6Pase(GPEによって指向される、コドン最適化された(co)ヒトG6Pase−αを発現するrAAV8ベクター)の2〜3個の独立したバッチを使用して比較した。
図11の結果から、4週齢の、および12週齢の、rAAV8−GPE−co−hG6Paseで処置したGSD−Iaマウスのどちらの肝臓G6Pase活性も、rAAV8−GPE−G6Paseベクターによって回復したそれぞれの活性の1.9倍であったことが示される。
【0170】
処置を受けたGSD−Iaマウスの全てで、コレステロール、トリグリセリド、尿酸および乳酸の正常な血清プロファイルならびに肝臓脂肪の正常なレベルが示された。rAAVの注入を受けたマウスでは、肝臓重量は肝臓G6Pase活性の回復と逆相関した。rAAV−GPE−G6Paseで処置したマウスでは、rAAV−GPE−co−G6Paseで処置したマウスと比較して有意に重症度の高い肝腫大が示された(
図12)。
【0171】
機能的に、12週齢時に、rAAV8−GPE−co−G6Paseで処置したGSD−Iaマウスでは正常な耐糖能プロファイルが示され(
図13A)、24時間の絶食にわたって正常血糖が維持された(
図13B)。
【0172】
(実施例7)
AAVベースの遺伝子療法を使用したヒトGSD−Iaの処置
この実施例では、G6PCをコードするAAVベクターをGSD−Iaの処置のために臨床使用する例示的な方法を記載している。
【0173】
GSD−Iaと診断された患者を処置のために選択する。一般には、患者は少なくとも18歳であり、免疫調節に前曝露したことがあってもよくまたはなくてもよい。患者に、本明細書に開示されているAAV−GPE−G6PCまたはAAV−GPE−co−G6PCなどの、G6PCを発現する組換えAAVを治療有効量で投与する。組換えAAVは、静脈内に投与することができる。適切な治療量は、医師が選択することができる。いくつかの場合には、治療有効用量は、1×10
11〜1×10
14ウイルス粒子(vp)/kgの範囲、例えば、約1×10
12vp/kgなどである。ほとんどの場合、単回用量を患者に投与する。免疫調節の非存在下では、患者はrAAVの単回注入のみを許容する可能性がある。対象が免疫調節に前曝露したことがある場合、2またはそれ超の用量を投与することができる。処置の有効性を決定するために対象の健康を経時的にモニターすることができる。
【0174】
開示されている発明の原理を適用することができる多くの可能性のある実施形態を考慮して、例示されている実施形態は単に本発明の好ましい例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。したがって、これらの請求項の範囲および精神の範囲内に入る発明の全てを特許請求する。