特許第6649323号(P6649323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649323
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】歩行解析システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20200210BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   A61B5/107 300
   A61B5/11 200
   A61B5/11 230
   A61B5/107ZDM
【請求項の数】22
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-150295(P2017-150295)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-69035(P2018-69035A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-211135(P2016-211135)
(32)【優先日】2016年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 将
(72)【発明者】
【氏名】武市 一成
(72)【発明者】
【氏名】田川 武弘
(72)【発明者】
【氏名】平川 菜央
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−094070(JP,A)
【文献】 特開2009−106377(JP,A)
【文献】 特開2009−148375(JP,A)
【文献】 特開2010−172394(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/129606(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0148931(US,A1)
【文献】 特開2015−066155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A63B 69/00 −69/40
A63B 71/00 −71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢との第1対応関係と、前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢と歩行年齢との第2対応関係とが予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された第1対応関係とを用いて前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を算出し、該算出した前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢と、前記予め記憶された第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する解析装置とを備え、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、歩行の接地タイミングの左右差を意味する歩行リズムの左右差と、腰の曲がりとが含まれ、
前記第1対応関係には、前記歩行速度を独立変数とし、前記速度年齢を従属変数とする第1回帰式と、少なくとも前記歩行リズムの左右差を独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする第2回帰式と、少なくとも前記腰の曲がりを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式とが含まれる、
ことを特徴とする歩行解析システム。
【請求項2】
前記第1回帰式、前記第2回帰式及び前記第3回帰式のそれぞれは、従属変数を複数の人間の実年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータとして回帰分析することにより算出されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行解析システム。
【請求項3】
前記第2対応関係は、前記歩行年齢を前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢の線形和で表わす関係である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行解析システム。
【請求項4】
前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央とが含まれ、
前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、
前記歩行リズムの左右差は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出され、
前記腰の曲がりは、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出される、
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の歩行解析システム。
【請求項5】
前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤及び左右の膝が更に含まれるか、左右の膝及び左右の足首が更に含まれるか、又は、左右の足首及び左右のつま先が更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出される歩行角の左右差が更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記歩行角の左右差とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項6】
前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤と、左右の膝とが更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出される腿の上がりの左右差が更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記腿の上がりの左右差とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項7】
前記複数の身体特徴点には、左右の肩が更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰及び前記左右の肩の3次元座標を用いて算出される肩水平角が更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記肩水平角とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項8】
前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤及び左右の膝が更に含まれるか、左右の膝及び左右の足首が更に含まれるか、又は、左右の足首及び左右のつま先が更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出される歩行角が更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記歩行角とを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項9】
前記複数の身体特徴点には、左右のつま先が更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出されるつま先の上がりが更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記つま先の上がりとを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項10】
前記複数の身体特徴点には、左右の肘と、左右の手首とが更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の肘及び前記左右の手首の3次元座標を用いて算出される肘の振りが更に含まれ、
前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記肘の振りとを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である、
ことを特徴とする請求項4に記載の歩行解析システム。
【請求項11】
前記解析装置には、前記速度年齢を補正するための速度年齢補正式と、前記バランス年齢を補正するためのバランス年齢補正式と、前記姿勢年齢を補正するための姿勢年齢補正式とが予め記憶されており、
前記速度年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出された速度年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用速度年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出された速度年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用速度年齢補正式とから構成され、
前記バランス年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出されたバランス年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用バランス年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出されたバランス年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用バランス年齢補正式とから構成され、
前記姿勢年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出された姿勢年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用姿勢年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出された姿勢年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用姿勢年齢補正式とから構成され、
前記解析装置は、
前記若年層用速度年齢補正式及び前記高年層用速度年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者の速度年齢に加算することで、前記被験者の速度年齢を補正し、
前記若年層用バランス年齢補正式及び前記高年層用バランス年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者のバランス年齢に加算することで、前記被験者のバランス年齢を補正し、
前記若年層用姿勢年齢補正式及び前記高年層用姿勢年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者の姿勢年齢に加算することで、前記被験者の姿勢年齢を補正し、
前記補正後の前記被験者の速度年齢、前記補正後の前記被験者のバランス年齢及び前記補正後の前記被験者の姿勢年齢と、前記予め記憶された第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する、
ことを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の歩行解析システム。
【請求項12】
前記解析装置には、前記複数の歩行パラメータの優劣を示す指標であるスコアを算出するためのスコア算出用基準式及びスコア算出用偏差が歩行パラメータ毎に予め記憶されており、
前記スコア算出用基準式は、独立変数を複数の人間の実年齢とし、従属変数を該複数の人間について算出された歩行パラメータとして回帰分析することにより算出された、実年齢を変数として歩行パラメータ基準値を算出するための回帰式であり、
前記スコア算出用偏差は、前記複数の人間について算出された歩行パラメータの標準偏差に所定の係数を乗算した値であり、
前記解析装置は、入力された前記被験者の実年齢を前記スコア算出用基準式に代入することで歩行パラメータ基準値を算出し、前記被験者の身体特徴点の3次元座標を用いて算出した前記被験者の歩行パラメータと前記歩行パラメータ基準値との差を、前記スコア算出用偏差と比較し、その大小に応じて予め設定されたスコアを前記被験者の歩行パラメータのスコアとして算出する、
ことを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の歩行解析システム。
【請求項13】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて、前記被験者の複数の歩行パラメータを算出する解析装置とを備え、
前記解析装置には、前記複数の歩行パラメータの優劣を示す指標であるスコアを算出するためのスコア算出用基準式及びスコア算出用偏差が歩行パラメータ毎に予め記憶されており、
前記解析装置は、入力された前記被験者の実年齢を前記スコア算出用基準式に代入することで歩行パラメータ基準値を算出し、前記被験者の身体特徴点の3次元座標を用いて算出した前記被験者の歩行パラメータと前記歩行パラメータ基準値との差を、前記スコア算出用偏差と比較し、その大小に応じて予め設定されたスコアを前記被験者の歩行パラメータのスコアとして算出する、
ことを特徴とする歩行解析システム。
【請求項14】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢との第1対応関係と、前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢と歩行年齢との第2対応関係とを予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した第1対応関係とを用いて前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を算出し、該算出した前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢と、前記予め記憶した第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する解析工程とを含み、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、歩行の接地タイミングの左右差を意味する歩行リズムの左右差と、腰の曲がりとが含まれ、
前記第1対応関係には、前記歩行速度を独立変数とし、前記速度年齢を従属変数とする第1回帰式と、少なくとも前記歩行リズムの左右差を独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする第2回帰式と、少なくとも前記腰の曲がりを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式とが含まれる、
ことを特徴とする歩行解析方法。
【請求項15】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと見た目年齢との対応関係が予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された対応関係とを用いて前記被験者の見た目年齢を算出する解析装置とを備え、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、腰の曲がりと、腰の回転とが含まれ、
前記対応関係は、少なくとも、前記歩行速度と、前記腰の曲がりと、前記腰の回転とを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする歩行解析システム。
【請求項16】
前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央と、左右の骨盤とが含まれ、
前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、
前記腰の曲がりは、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出され、
前記腰の回転は、前記胸腰及び前記左右の骨盤の3次元座標を用いて算出される、
ことを特徴とする請求項15に記載の歩行解析システム。
【請求項17】
前記複数の身体特徴点には、左右の膝と、左右の足首と、左右のつま先と、頭とが更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、歩行角の左右差と、頭の前後方向の揺れと、歩行角と、頭の横方向の揺れとのうち、少なくとも何れか1つが更に含まれ、
前記歩行角の左右差は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、
前記頭の前後方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、
前記歩行角は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、
前記頭の横方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、
前記対応関係は、前記歩行速度、前記腰の曲がり及び前記腰の回転と、前記歩行角の左右差、前記頭の前後方向の揺れ、前記歩行角及び前記頭の横方向の揺れのうち少なくとも何れか1つとを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする請求項16に記載の歩行解析システム。
【請求項18】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと見た目年齢との対応関係を予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した対応関係とを用いて前記被験者の見た目年齢を算出する解析工程とを含み、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、腰の曲がりと、腰の回転とが含まれ、
前記対応関係は、少なくとも、前記歩行速度と、前記腰の曲がりと、前記腰の回転とを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする歩行解析方法。
【請求項19】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと、歩行姿勢の美しさを表す指標である美姿勢評価値との対応関係が予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された対応関係とを用いて前記被験者の美姿勢評価値を算出する解析装置とを備え、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、前傾姿勢と、歩行速度と、肘の振りとが含まれ、
前記対応関係は、少なくとも、前記前傾姿勢と、前記歩行速度と、前記肘の振りとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする歩行解析システム。
【請求項20】
前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央と、頭と、左右の肘と、左右の手首とが含まれ、
前記前傾姿勢は、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、
前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、
前記肘の振りは、前記胸腰、前記左右の肘及び前記左右の手首の3次元座標を用いて算出される、
ことを特徴とする請求項19に記載の歩行解析システム。
【請求項21】
前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤と、左右の膝と、左右の足首と、左右のつま先と、左右の肩とが更に含まれ、
前記複数の歩行パラメータには、歩行角の左右差と、歩行角と、歩行リズムの左右差と、頭の横方向の揺れと、腰の回転と、頭の横方向の傾きと、すねの倒れと、腿の上がりと、つま先の上がりと、歩隔と、肩前額面角とのうち、少なくとも何れか1つが更に含まれ、
前記歩行角の左右差及び前記歩行角は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、
前記歩行リズムの左右差は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出され、
前記頭の横方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、
前記腰の回転は、前記胸腰及び前記左右の骨盤の3次元座標を用いて算出され、
前記頭の横方向の傾きは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、
前記すねの倒れは、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出され、
前記腿の上がりは、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出され、
前記つま先の上がりは、前記胸腰及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、
前記歩隔は、前記胸腰及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出され、
前記肩前額面角は、前記胸腰、前記左右の肩及び前記左右の肘の3次元座標を用いて算出され、
前記対応関係は、前記前傾姿勢、前記歩行速度及び前記肘の振りと、前記歩行角の左右差、前記歩行角、前記歩行リズムの左右差、前記頭の横方向の揺れ、前記腰の回転、前記頭の横方向の傾き、前記すねの倒れ、前記腿の上がり、前記つま先の上がり、前記歩隔及び前記肩前額面角のうち少なくとも何れか1つとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする請求項20に記載の歩行解析システム。
【請求項22】
被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、
前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと、歩行姿勢の美しさを表す指標である美姿勢評価値との対応関係を予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した対応関係とを用いて前記被験者の美姿勢評価値を算出する解析工程とを含み、
前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、前傾姿勢と、歩行速度と、肘の振りとが含まれ、
前記対応関係は、少なくとも、前記前傾姿勢と、前記歩行速度と、前記肘の振りとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される、
ことを特徴とする歩行解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の歩行に関する評価基準(歩行年齢、見た目年齢、美姿勢評価値)を算出する歩行解析システム及び歩行解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の増加に伴い、健康寿命、とりわけ生活行動範囲に影響を及ぼす歩行能力に対する意識が高まっている。そのため、自分の歩行能力がどの年齢の平均レベル(歩行年齢)にあるのかという客観的な評価基準を知りたいというニーズが高齢者を中心に高い。
【0003】
また、高齢者は、実年齢よりも若く見られたいという欲求を持っている場合が多い。このため、自分の歩行姿勢が周りからどのような年齢として見られているのか(見た目年齢)や、自分の歩行姿勢がどの程度美しいと思われているのか(美姿勢評価値)という主観的な評価基準を知りたいというニーズも高い。
【0004】
客観的な評価基準である歩行年齢を評価する方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が提案されている。
特許文献1に記載の方法は、被験者がシート式圧力センサの上を歩行することで検出される圧力分布画像を解析することで、歩行パラメータとして、左右の歩行角度、歩行周期、両脚支持期時間及び歩幅を算出し、これらの歩行パラメータを用いて歩行年齢を評価する方法である。
【0005】
特許文献1に記載の方法では、圧力センサの検出結果、すなわち足底の動きを用いて歩行パラメータを算出しているだけであるため、歩行状態を被験者の全身に亘って包括的に評価することができず、歩行能力に合致した歩行年齢を算出できないという問題がある。
【0006】
主観的な評価基準である見た目年齢を評価する方法として、特に有効な方法は提案されていない。
また、主観的な評価基準である美姿勢評価値を評価する方法としては、例えば、特許文献2に記載の方法が提案されている。
特許文献2に記載の方法は、歩行者の足圧分布を動作状態として計測し、足圧分布を足底の各部位に分類して、分類した足底部位毎の荷重値を時空間歩行特徴量として算出し、この時空間歩行特徴量から歩行の美しさを定量的に解析する方法である。
【0007】
特許文献2に記載の方法では、足圧分布を歩行パラメータ(時空間歩行特徴量)として用いるだけであるため、歩行状態を被験者の全身に亘って包括的に評価することができず、歩行姿勢に合致した美姿勢評価値を算出できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−94070号公報
【特許文献2】特開2001−218754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、全身の歩行状態を包括的に評価可能とすることで、歩行能力に合致した歩行年齢を算出可能な歩行解析システム及び歩行解析方法を提供することを課題とする。同様に、本発明は、歩行姿勢に合致した見た目年齢を算出可能な歩行解析システム及び歩行解析方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、歩行姿勢に合致した美姿勢評価値を算出可能な歩行解析システム及び歩行解析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢との第1対応関係と、前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢と歩行年齢との第2対応関係とが予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された第1対応関係とを用いて前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を算出し、該算出した前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢と、前記予め記憶された第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する解析装置とを備え、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、歩行の接地タイミングの左右差を意味する歩行リズムの左右差と、腰の曲がりとが含まれ、前記第1対応関係には、前記歩行速度を独立変数とし、前記速度年齢を従属変数とする第1回帰式と、少なくとも前記歩行リズムの左右差を独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする第2回帰式と、少なくとも前記腰の曲がりを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式とが含まれる、歩行解析システムを提供する。
【0011】
本発明に係る歩行解析システムによれば、速度年齢に関わる歩行速度、バランス年齢に関わる歩行リズムの左右差に加え、特許文献1に記載の方法では評価することができない、姿勢年齢に関わる腰の曲がりを歩行パラメータとして用いて歩行年齢が算出される。このため、特許文献1に記載の方法に比べ、歩行状態を包括的に評価可能であり、歩行能力に合致した歩行年齢を算出可能である。
【0012】
前記第1回帰式、前記第2回帰式及び前記第3回帰式のそれぞれは、従属変数を複数の人間の実年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータとして回帰分析することにより算出することが可能である。
【0013】
前記第2対応関係は、例えば、前記歩行年齢を前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢の線形和で表わす関係とすることができる。
【0014】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央とが含まれ、前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、前記歩行リズムの左右差は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出され、前記腰の曲がりは、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出される。
【0015】
上記の好ましい構成で用いる身体特徴点の胸腰及び骨盤の中央は、例えば、市販装置の一つである米国マイクロソフト社製Kinect(登録商標)を用いることで、マーカレスで3次元座標を測定可能であるため、測定が容易であるという利点を有する。
【0016】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤及び左右の膝が更に含まれるか、左右の膝及び左右の足首が更に含まれるか、又は、左右の足首及び左右のつま先が更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出される歩行角の左右差が更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記歩行角の左右差とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0017】
本発明者らが検討したところによれば、バランス年齢を従属変数とする第2回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、歩行リズムの左右差が最も寄与度が高いものの、歩行角の左右差も寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第2回帰式は、最も寄与度の高い歩行リズムの左右差を独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い歩行角の左右差も独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0018】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤と、左右の膝とが更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出される腿の上がりの左右差が更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記腿の上がりの左右差とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0019】
本発明者らが検討したところによれば、バランス年齢を従属変数とする第2回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、歩行リズムの左右差が最も寄与度が高いものの、腿の上がりの左右差も寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第2回帰式は、最も寄与度の高い歩行リズムの左右差を独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い腿の上がりの左右差も独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0020】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の肩が更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰及び前記左右の肩の3次元座標を用いて算出される肩水平角が更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第2回帰式は、少なくとも、前記歩行リズムの左右差と、前記肩水平角とを独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0021】
本発明者らが検討したところによれば、バランス年齢を従属変数とする第2回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、歩行リズムの左右差が最も寄与度が高いものの、肩水平角も寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第2回帰式は、最も寄与度の高い歩行リズムの左右差を独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い肩水平角も独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0022】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤及び左右の膝が更に含まれるか、左右の膝及び左右の足首が更に含まれるか、又は、左右の足首及び左右のつま先が更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出される歩行角が更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記歩行角とを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0023】
本発明者らが検討したところによれば、姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、腰の曲がりが最も寄与度が高いものの、歩行角も寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第3回帰式は、最も寄与度の高い腰の曲がりを独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い歩行角も独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0024】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右のつま先が更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出されるつま先の上がりが更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記つま先の上がりとを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0025】
本発明者らが検討したところによれば、姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、腰の曲がりが最も寄与度が高いものの、つま先の上がりも寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第3回帰式は、最も寄与度の高い腰の曲がりを独立変数にすると共に、寄与度の比較的高いつま先の上がりも独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0026】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の肘と、左右の手首とが更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、前記胸腰、前記左右の肘及び前記左右の手首の3次元座標を用いて算出される肘の振りが更に含まれ、前記第1対応関係に含まれる前記第3回帰式は、少なくとも、前記腰の曲がりと、前記肘の振りとを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする重回帰式である。
【0027】
本発明者らが検討したところによれば、姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、腰の曲がりが最も寄与度が高いものの、肘の振りも寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、第3回帰式は、最も寄与度の高い腰の曲がりを独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い肘の振りも独立変数とする重回帰式とされるため、歩行能力により一層合致した歩行年齢を算出可能である。
【0028】
好ましくは、前記解析装置には、前記速度年齢を補正するための速度年齢補正式と、前記バランス年齢を補正するためのバランス年齢補正式と、前記姿勢年齢を補正するための姿勢年齢補正式とが予め記憶されており、前記速度年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出された速度年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用速度年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出された速度年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用速度年齢補正式とから構成され、前記バランス年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出されたバランス年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用バランス年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出されたバランス年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用バランス年齢補正式とから構成され、前記姿勢年齢補正式は、複数の人間の実年齢を若年層と該若年層よりも年齢の高い高年層とに区分し、前記若年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記若年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記若年層に属する人間について算出された姿勢年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための若年層用姿勢年齢補正式と、前記高年層に属する人間の実年齢と、独立変数を前記高年層に属する人間の実年齢とし、従属変数を前記高年層に属する人間について算出された姿勢年齢として回帰分析することにより算出された回帰直線との差によって求められた、実年齢を変数として補正項を算出するための高年層用姿勢年齢補正式とから構成され、前記解析装置は、前記若年層用速度年齢補正式及び前記高年層用速度年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者の速度年齢に加算することで、前記被験者の速度年齢を補正し、前記若年層用バランス年齢補正式及び前記高年層用バランス年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者のバランス年齢に加算することで、前記被験者のバランス年齢を補正し、前記若年層用姿勢年齢補正式及び前記高年層用姿勢年齢補正式のうち、入力された前記被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、前記被験者の実年齢を前記選択した補正式に代入して得られる補正項を前記算出した前記被験者の姿勢年齢に加算することで、前記被験者の姿勢年齢を補正し、前記補正後の前記被験者の速度年齢、前記補正後の前記被験者のバランス年齢及び前記補正後の前記被験者の姿勢年齢と、前記予め記憶された第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する。
【0029】
本発明者らが検討したところによれば、複数の人間の実年齢と、速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢との相関は、若年層と、該若年層よりも年齢の高い高年層とでは異なる傾向になることが分かった。したがい、複数の人間の平均的な速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢が実年齢に近づくように補正する場合、歩行パラメータによって算出した速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢を一律に補正するのではなく、若年層と高年層とに区分してそれぞれ別個に補正することが好ましい。
上記の好ましい構成によれば、解析装置が、若年層用速度年齢補正式及び高年層用速度年齢補正式のうち、入力された被験者の実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、被験者の実年齢を選択した補正式に代入して得られる補正項を、算出した被験者の速度年齢に加算することで、被験者の速度年齢を補正する。被験者のバランス年齢及び姿勢年齢についても同様である。このため、若年層及び高年層の双方について、複数の人間の平均的な速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢が実年齢に近づくように補正することが可能となる結果、補正後の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢によって算出される被験者の歩行年齢は、歩行能力により一層合致したものとなる。
【0030】
好ましくは、前記解析装置には、前記複数の歩行パラメータの優劣を示す指標であるスコアを算出するためのスコア算出用基準式及びスコア算出用偏差が歩行パラメータ毎に予め記憶されており、前記スコア算出用基準式は、独立変数を複数の人間の実年齢とし、従属変数を該複数の人間について算出された歩行パラメータとして回帰分析することにより算出された、実年齢を変数として歩行パラメータ基準値を算出するための回帰式であり、前記スコア算出用偏差は、前記複数の人間について算出された歩行パラメータの標準偏差に所定の係数を乗算した値であり、前記解析装置は、入力された前記被験者の実年齢を前記スコア算出用基準式に代入することで歩行パラメータ基準値を算出し、前記被験者の身体特徴点の3次元座標を用いて算出した前記被験者の歩行パラメータと前記歩行パラメータ基準値との差を、前記スコア算出用偏差と比較し、その大小に応じて予め設定されたスコアを前記被験者の歩行パラメータのスコアとして算出する。
【0031】
上記の好ましい構成によれば、複数の人間の実年齢に応じた平均的な各歩行パラメータの値(歩行パラメータ基準値)を算出するためのスコア算出用基準式と、複数の人間についての各歩行パラメータの標準偏差に関係する値(スコア算出用偏差)とを用いて、被験者の各歩行パラメータの値が、被験者の実年齢に応じた平均的な各歩行パラメータに対してどの程度のレベルにあるのかを示すスコアが算出されるため、歩行能力の向上に対する被験者の意識向上に通じることが期待できる。
【0032】
また、本発明は、解析装置が歩行年齢を算出することなく、上記歩行パラメータのスコアのみを算出する構成としても提供される。
すなわち、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて、前記被験者の複数の歩行パラメータを算出する解析装置とを備え、前記解析装置には、前記複数の歩行パラメータの優劣を示す指標であるスコアを算出するためのスコア算出用基準式及びスコア算出用偏差が歩行パラメータ毎に予め記憶されており、前記解析装置は、入力された前記被験者の実年齢を前記スコア算出用基準式に代入することで歩行パラメータ基準値を算出し、前記被験者の身体特徴点の3次元座標を用いて算出した前記被験者の歩行パラメータと前記歩行パラメータ基準値との差を、前記スコア算出用偏差と比較し、その大小に応じて予め設定されたスコアを前記被験者の歩行パラメータのスコアとして算出する、ことを特徴とする歩行解析システムとしても提供される。
【0033】
さらに、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢との第1対応関係と、前記速度年齢、前記バランス年齢及び前記姿勢年齢と歩行年齢との第2対応関係とを予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した第1対応関係とを用いて前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を算出し、該算出した前記被験者の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢と、前記予め記憶した第2対応関係とを用いて、前記被験者の歩行年齢を算出する解析工程とを含み、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、歩行の接地タイミングの左右差を意味する歩行リズムの左右差と、腰の曲がりとが含まれ、前記第1対応関係には、前記歩行速度を独立変数とし、前記速度年齢を従属変数とする第1回帰式と、少なくとも前記歩行リズムの左右差を独立変数とし、前記バランス年齢を従属変数とする第2回帰式と、少なくとも前記腰の曲がりを独立変数とし、前記姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式とが含まれる、ことを特徴とする歩行解析方法としても提供される。
【0034】
また、前記課題を解決するため、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと見た目年齢との対応関係が予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された対応関係とを用いて前記被験者の見た目年齢を算出する解析装置とを備え、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、腰の曲がりと、腰の回転とが含まれ、前記対応関係は、少なくとも、前記歩行速度と、前記腰の曲がりと、前記腰の回転とを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される、ことを特徴とする歩行解析システムを提供する。
【0035】
本発明に係る歩行解析システムによれば、歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転を歩行パラメータとして用いて見た目年齢が算出される。このため、歩行状態を包括的に評価可能であり、歩行姿勢に合致した見た目年齢を算出可能である。
前記重回帰式は、従属変数を複数の人間について第三者が判定した見た目年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータとして回帰分析することにより算出することが可能である。
【0036】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央と、左右の骨盤とが含まれ、前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、前記腰の曲がりは、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出され、前記腰の回転は、前記胸腰及び前記左右の骨盤の3次元座標を用いて算出される。
【0037】
上記の好ましい構成で用いる身体特徴点の胸腰、骨盤の中央及び左右の骨盤は、例えば、市販装置の一つである米国マイクロソフト社製Kinect(登録商標)を用いることで、マーカレスで3次元座標を測定可能であるため、測定が容易であるという利点を有する。
【0038】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の膝と、左右の足首と、左右のつま先と、頭とが更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、歩行角の左右差と、頭の前後方向の揺れと、歩行角と、頭の横方向の揺れとのうち、少なくとも何れか1つが更に含まれ、前記歩行角の左右差は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、前記頭の前後方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、前記歩行角は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、前記頭の横方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、前記対応関係は、前記歩行速度、前記腰の曲がり及び前記腰の回転と、前記歩行角の左右差、前記頭の前後方向の揺れ、前記歩行角及び前記頭の横方向の揺れのうち少なくとも何れか1つとを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される。
【0039】
本発明者らが検討したところによれば、見た目年齢を従属変数とする重回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転の寄与度が高いものの、次いで、歩行角の左右差、頭の前後方向の揺れ、歩行角及び頭の横方向の揺れも寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、重回帰式は、寄与度の高い歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転を独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い歩行角の左右差、頭の前後方向の揺れ、歩行角及び頭の横方向の揺れのうち少なくとも何れか1つをも独立変数とする重回帰式とされるため、歩行姿勢により一層合致した見た目年齢を算出可能である。
【0040】
また、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと見た目年齢との対応関係を予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した対応関係とを用いて前記被験者の見た目年齢を算出する解析工程とを含み、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、歩行速度と、腰の曲がりと、腰の回転とが含まれ、前記対応関係は、少なくとも、前記歩行速度と、前記腰の曲がりと、前記腰の回転とを独立変数とし、前記見た目年齢を従属変数とする重回帰式で表される、ことを特徴とする歩行解析方法としても提供される。
【0041】
また、前記課題を解決するため、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定装置と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと、歩行姿勢の美しさを表す指標である美姿勢評価値との対応関係が予め記憶され、前記3次元測定装置によって測定された前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶された対応関係とを用いて前記被験者の美姿勢評価値を算出する解析装置とを備え、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、前傾姿勢と、歩行速度と、肘の振りとが含まれ、前記対応関係は、少なくとも、前記前傾姿勢と、前記歩行速度と、前記肘の振りとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される、ことを特徴とする歩行解析システムとしても提供される。
【0042】
本発明に係る歩行解析システムによれば、前傾姿勢、歩行速度及び肘の振りを歩行パラメータとして用いて美姿勢評価値が算出される。このため、歩行状態を包括的に評価可能であり、歩行姿勢に合致した美姿勢評価値を算出可能である。
前記重回帰式は、従属変数を複数の人間について第三者が判定した美姿勢評価値とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータとして回帰分析することにより算出することが可能である。
【0043】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰と、骨盤の中央と、頭と、左右の肘と、左右の手首とが含まれ、前記前傾姿勢は、前記胸腰及び前記骨盤の中央の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、前記歩行速度は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出され、前記肘の振りは、前記胸腰、前記左右の肘及び前記左右の手首の3次元座標を用いて算出される。
【0044】
上記の好ましい構成で用いる身体特徴点の胸腰、骨盤の中央、頭、左右の肘及び左右の手首は、例えば、市販装置の一つである米国マイクロソフト社製Kinect(登録商標)を用いることで、マーカレスで3次元座標を測定可能であるため、測定が容易であるという利点を有する。
【0045】
好ましくは、前記複数の身体特徴点には、左右の骨盤と、左右の膝と、左右の足首と、左右のつま先と、左右の肩とが更に含まれ、前記複数の歩行パラメータには、歩行角の左右差と、歩行角と、歩行リズムの左右差と、頭の横方向の揺れと、腰の回転と、頭の横方向の傾きと、すねの倒れと、腿の上がりと、つま先の上がりと、歩隔と、肩前額面角とのうち、少なくとも何れか1つが更に含まれ、前記歩行角の左右差及び前記歩行角は、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出されるか、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出されるか、又は、前記胸腰、前記左右の足首及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、前記歩行リズムの左右差は、前記胸腰の3次元座標を用いて算出され、前記頭の横方向の揺れは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、前記腰の回転は、前記胸腰及び前記左右の骨盤の3次元座標を用いて算出され、前記頭の横方向の傾きは、前記胸腰、前記骨盤の中央及び前記頭の3次元座標を用いて算出され、前記すねの倒れは、前記胸腰、前記左右の膝及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出され、前記腿の上がりは、前記胸腰、前記左右の骨盤及び前記左右の膝の3次元座標を用いて算出され、前記つま先の上がりは、前記胸腰及び前記左右のつま先の3次元座標を用いて算出され、前記歩隔は、前記胸腰及び前記左右の足首の3次元座標を用いて算出され、前記肩前額面角は、前記胸腰、前記左右の肩及び前記左右の肘の3次元座標を用いて算出され、前記対応関係は、前記前傾姿勢、前記歩行速度及び前記肘の振りと、前記歩行角の左右差、前記歩行角、前記歩行リズムの左右差、前記頭の横方向の揺れ、前記腰の回転、前記頭の横方向の傾き、前記すねの倒れ、前記腿の上がり、前記つま先の上がり、前記歩隔及び前記肩前額面角のうち少なくとも何れか1つとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される。
【0046】
本発明者らが検討したところによれば、美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式を算出するための回帰分析において、独立変数として種々の歩行パラメータを用いたところ、前傾姿勢、歩行速度及び肘の振りの寄与度が高いものの、次いで、歩行角の左右差、歩行角、歩行リズムの左右差、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角も寄与度が比較的高いことが分かった。
上記の好ましい構成によれば、重回帰式は、寄与度の高い前傾姿勢、歩行速度及び肘の振りを独立変数にすると共に、寄与度の比較的高い歩行角の左右差、歩行角、歩行リズムの左右差、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角のうち少なくとも何れか1つをも独立変数とする重回帰式とされるため、歩行姿勢により一層合致した美姿勢評価値を算出可能である。
【0047】
また、本発明は、被験者の予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を該被験者の歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程と、前記身体特徴点の3次元座標を用いて算出されるか又は他の手法を用いて算出される複数の歩行パラメータと、歩行姿勢の美しさを表す指標である美姿勢評価値との対応関係を予め記憶しておき、前記3次元測定工程によって測定した前記被験者の複数の身体特徴点の3次元座標を用いて算出された又は他の手法を用いて算出された前記被験者の複数の歩行パラメータと、前記予め記憶した対応関係とを用いて前記被験者の美姿勢評価値を算出する解析工程とを含み、前記複数の歩行パラメータには、少なくとも、前傾姿勢と、歩行速度と、肘の振りとが含まれ、前記対応関係は、少なくとも、前記前傾姿勢と、前記歩行速度と、前記肘の振りとを独立変数とし、前記美姿勢評価値を従属変数とする重回帰式で表される、ことを特徴とする歩行解析方法としても提供される。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、全身の歩行状態を包括的に評価可能とすることで、歩行能力に合致した歩行年齢を算出可能である。また、本発明によれば、歩行姿勢に合致した見た目年齢を算出可能である。さらに、本発明によれば、歩行姿勢に合致した美姿勢評価値を算出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の第1実施形態に係る歩行解析システムの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る歩行解析システムの概略動作を示すフロー図である。
図3】第1実施形態における補正式の導出を説明するための説明図である。
図4】第1実施形態における歩行パラメータの一つである歩行速度のスコア算出手順を説明するための説明図である。
図5】第2実施形態に係る歩行解析システムによって見た目年齢を算出した結果の一例を示す図である。
図6】第3実施形態に係る歩行解析システムによって美姿勢評価値を算出した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[第1実施形態]
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る歩行解析システムについて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る歩行解析システムの概略構成を示す図である。図1(a)は概略構成を示す図であり、図1(b)は第1実施形態に係る歩行解析システムで用いる座標系を説明する図であり、図1(c)は第1実施形態に係る歩行解析システムで測定する身体特徴点の例を説明する図である。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係る歩行解析システム100は、3次元測定装置1と、解析装置2とを備える。まず、歩行解析システム100の概略構成について説明する。
【0051】
<歩行解析システム100の概略構成>
3次元測定装置1は、赤外線照射部やカメラ等を具備する光学系11と、該光学系で得られた信号を処理するプログラム(解析装置2にインストールされたプログラム)とから構成され、被験者Hの予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を被験者Hの歩行に伴って逐次測定する装置である。3次元測定装置1としては、上記の光学系11を用いた三角測量やTime of flightを測定原理として、マーカレスで身体特徴点の3次元座標を測定する光学式の3次元測定装置や、身体特徴点にマーカを付けて、マーカの3次元座標を測定することで身体特徴点の3次元座標を算出する光学式の3次元測定装置など、種々の市販装置を適用可能である。マーカレスで3次元座標を測定可能であるため、測定が容易であるという利点を有する点で、3次元測定装置1として、市販装置の一つである米国マイクロソフト社製Kinect(登録商標)を用いることが好ましい。
なお、3次元座標を算出する具体的な手順については、種々の公知の手順を適用可能であるため、本明細書ではその具体的な内容の記述は省略する。また、第1実施形態では、身体特徴点の3次元座標を算出するためのプログラムを解析装置2にインストールした形態を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではなく、3次元座標を算出するためのプログラムをインストールする装置(パーソナルコンピュータ等)と、解析装置2とを別体とすることも可能である。
【0052】
図1(c)に示すように、本発明における身体特徴点は、四股の関節と、頭・肩・体幹・骨盤・足・かかと・肋骨・上前腸骨棘の中央と、足のつま先とを意味する。ただし、第1実施形態の3次元測定装置1によって測定する身体特徴点としては、これら全ての部位である必要はなく、予め定めた複数の身体特徴点であればよい。例えば、第1実施形態に係る3次元測定装置1によって測定する複数の身体特徴点には、少なくとも、胸腰(体幹の中央)と、骨盤の中央とが含まれることが好ましい。
【0053】
第1実施形態の解析装置2は、3次元測定装置1で測定した被験者Hの複数の身体特徴点の3次元座標を用いて、被験者Hの歩行年齢を算出する。具体的には、解析装置2は、例えば、複数の身体特徴点の3次元座標を用いて歩行年齢を算出するためのプログラムがインストールされた汎用のパーソナルコンピュータから構成されている。
【0054】
<歩行解析システム100の動作>
以下、図2図4も適宜参照しつつ、上記の概略構成を有する歩行解析システム100の動作(歩行解析方法)について説明する。
図2は、第1実施形態に係る歩行解析システム100の概略動作を示すフロー図である。
図2に示すように、被験者Hの歩行解析を行うに際しては、まず被験者Hの実年齢等の情報を解析装置2に入力する(図2のS1)。入力された被験者Hの情報は解析装置2に搭載された半導体メモリやハードディスクドライブといった記憶装置に記憶される。あるいは、クラウドストレージサービスなどを利用して解析装置2とは別の場所に被験者Hの情報を保存するようにしてもよい。
【0055】
次いで、被験者Hが歩行を開始(図2のS2)することで、3次元測定装置1が被験者Hの予め定めた複数の身体特徴点の3次元座標を被験者Hの歩行に伴って逐次測定する3次元測定工程を実行する(図2のS3)。被験者Hが予め定めた距離を歩行し終える(図2のS4)と測定は終了し、測定結果が解析装置2に記憶される。
【0056】
次いで、解析装置2は記憶した測定結果、すなわち、被験者Hについて逐次測定した複数の身体特徴点の3次元座標を用いて解析工程を実行する(図2のS5)。以下、解析工程S5の具体的内容について、順次説明する。
【0057】
解析工程S5において、第1実施形態の解析装置2は、まず、被験者Hの複数の身体特徴点の3次元座標を用いて、歩行パラメータとして、少なくとも、歩行速度と、歩行リズムの左右差と、腰の曲がりとを算出する(図2のS51)。
【0058】
歩行速度は、被験者Hが歩行したときの速度を意味し、例えば、予め定めた距離を所定の向きに歩行するのに要した時間で除した値から算出する。第1実施形態においては、3次元測定装置1の測定周期毎の一の身体特徴点の前方変位を測定周期で除した値の1歩行周期における平均値を歩行速度として算出している。例えば、この一の身体特徴点を胸腰とする場合、歩行速度は、1歩行周期における胸腰の前方変位を測定周期で除した値の平均値となり、3次元測定装置1で測定した胸腰の3次元座標を用いて算出可能である。なお、3次元測定装置1の測定周期とは、例えば、3次元測定装置1としてKinect(登録商標)を用いている場合にはフレームレートの逆数であり、1/30秒程度である。
「1歩行周期」は、一の身体特徴点の鉛直方向変位の1つ目の極小値から3つ目の極小値までの時間間隔を意味する。この一の身体特徴点を胸腰とする場合、1歩行周期は、胸腰の鉛直方向変位の1つ目の極小値から3つ目の極小値までの時間間隔となる。「前方」は、例えば、3次元測定装置1に向って被験者Hが歩行すべき向きを予め一意に決定し、この決定した向きとすればよい(図1(b)参照)。なお、上記の例では、歩行速度を算出するための一の身体特徴点の前方変位を胸腰の前方変位としたが、本発明はこれに限るものではなく、骨盤の中央の前方変位や、足の中央(図1(c)では、「右足」及び「左足」と記述)の前方変位とすることも可能である。また、上記の例では、1歩行周期を算出するための一の身体特徴点の鉛直方向変位の極小値を胸腰の鉛直方向変位の極小値としたが、本発明はこれに限るものではなく、足の中央の鉛直方向変位の極小値、足首の鉛直方向変位の極小値、骨盤の中央の鉛直方向変位の極小値、かかとの鉛直方向変位の極小値などにすることも可能である。なお、胸腰、骨盤の中央、足の中央、足首の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。また、かかとの3次元座標は、3次元測定装置1としてマーカを利用する光学式モーションキャプチャシステム(例えば、VICON社製Vicon(登録商標))などを用い、マーカをかかとに付け、このマーカの3次元座標を測定することで測定可能である。
【0059】
歩行リズムの左右差は、歩行の接地タイミングの左右差を意味し、例えば、左足が接地してから右足が接地するまで時間間隔(以下、「左右接地時間間隔」という)と、右足が接地してから左足が接地するまでの時間間隔(以下、「右左接地時間間隔」という)との差の絶対値で定義し、3次元測定装置1で測定した一の身体特徴点の3次元座標を用いて算出可能である。例えば、この一の身体特徴点を胸腰とする場合、胸腰の鉛直方向変位(鉛直方向上方が正の値)が極小値となったときに左右の足が交互に床面に接地したと考え、左右接地時間間隔及び右左接地時間間隔の何れか一方は、測定開始から1つ目の極小値から2つ目の極小値までの時間間隔によって算出し、左右接地時間間隔及び右左接地時間間隔の何れか他方は、2つ目の極小値から3つ目の極小値までの時間間隔によって算出すればよい。なお、上記の例では、左右の足が床面に接地したことの判断に胸腰の鉛直方向変位の極小値を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、足の中央の鉛直方向変位の極小値、足首の鉛直方向変位の極小値、骨盤の中央の鉛直方向変位の極小値、かかとの鉛直方向変位の極小値などにすることも可能である。
【0060】
腰の曲がりは、歩行中の腰の曲がり具合を意味し、例えば、1歩行周期における、矢状面に投影した胸腰と骨盤の中央とを結ぶ直線と鉛直軸との成す角度の平均値、又は、矢状面に投影した肋骨の中央と上前腸骨棘の中央とを結ぶ直線と鉛直軸との成す角度の平均値で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰及び骨盤の中央の3次元座標、又は、肋骨の中央及び上前腸骨棘の中央の3次元座標を用いて算出可能である。矢状面は、図1(b)に示すように、前後軸(前方・後方に延びる軸)と鉛直軸とを含む平面を意味する。なお、肋骨の中央の3次元座標は、3次元測定装置1として、例えば、Vicon(登録商標)を用い、図1(c)に示すように、マーカを肋骨の左右の下縁に付け、各マーカの3次元座標を測定することで測定(演算)可能である。同様に、上前腸骨棘の中央の3次元座標は、3次元測定装置1として、例えば、Vicon(登録商標)を用い、図1(c)に示すように、マーカを上前腸骨棘の左右の端に付け、各マーカの3次元座標を測定することで測定(演算)可能である。
【0061】
以上の説明では、3次元測定装置1で測定した身体特徴点の3次元座標を用いて歩行パラメータ(歩行速度、歩行リズムの左右差、腰の曲がり)を算出する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、他の手法を用いて歩行パラメータを算出することも可能である。
例えば、歩行速度を算出するには、被験者Hが予め定めた距離を所定の向きに歩行するのに要した時間を、ストップウォッチで手動計測したり、歩行開始点・終了点に設置された光電スイッチを横切るタイミングに基づき自動計測すればよい。この手動計測又は自動計測した時間を解析装置2に入力し、解析装置2が前記予め定めた距離を入力された時間で除することで歩行速度を算出することも可能である。
また、例えば、スマートフォンなどの携帯情報端末を被験者Hに携帯させ、携帯情報端末で起動したGPS追跡アプリを利用して計測した被験者Hの移動距離及び移動時間を解析装置2に入力し、解析装置2が入力された移動距離を移動時間で除することで歩行速度を算出することも可能である。
さらに、例えば、モーションセンサなどの加速度を計測可能なセンサを被験者Hに携帯させ又は取り付け、センサで計測した加速度を解析装置2に入力し、解析装置2が入力された加速度を積分することで歩行速度を算出することも可能である。
【0062】
第1実施形態の解析装置2は、歩行パラメータとして、上述した歩行速度、歩行リズムの左右差及び腰の曲がりの3つのパラメータに加え、歩行角の左右差、腿の上がりの左右差、肩水平角、歩行角、つま先の上がり、肘の振りを更に算出する(図2のS51)。
【0063】
歩行角の左右差は、歩行中の脚の向きの左右差を意味し、例えば、歩行角膝の左右差、歩行角すねの左右差及び歩行角つま先の左右差のうちの何れかで表現される。
歩行角膝の左右差は、歩行中の膝の向きの左右差を意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の骨盤と左の膝とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の骨盤と右の膝とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との差の絶対値(ただし、各角度は、前後軸に対して膝側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の骨盤及び左右の膝の3次元座標を用いて算出可能である。水平面は、図1(b)に示すように、前後軸を含み、鉛直軸に直交する平面を意味する。なお、左右の骨盤及び左右の膝の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。
歩行角すねの左右差は、歩行中のすねの向きの左右差を意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の膝と左の足首とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の膝と右の足首とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との差の絶対値(ただし、各角度は、前後軸に対して足首側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の膝及び左右の足首の3次元座標を用いて算出可能である。
歩行角つま先の左右差は、歩行中の足のつま先の向きの左右差を意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の足首と左のつま先とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の足首と右のつま先とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との差の絶対値(ただし、各角度は、前後軸に対してつま先側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の足首及び左右のつま先の3次元座標を用いて算出可能である。なお、左右のつま先の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。
【0064】
腿の上がりの左右差は、歩行中の腿の上がり具合の左右差を意味し、例えば、1歩行周期における、矢状面に投影した左の骨盤と左の膝とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)と、矢状面に投影した右の骨盤と右の膝とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)との差の絶対値(ただし、各角度は、骨盤と膝とを結ぶ直線の膝側が前方側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の骨盤及び左右の膝の3次元座標を用いて算出可能である。
【0065】
肩水平角は、歩行中の左右の肩の落ち具合を意味し、例えば、1歩行周期における、前額面に投影した左右の肩を結ぶ直線と左右軸とが成す角度の平均値の絶対値(ただし、角度は、左右の肩を結ぶ直線の右肩側が左右軸に対して鉛直下方に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰及び左右の肩の3次元座標を用いて算出可能である。左右軸は、図1(b)に示すように、水平面に含まれ、前後軸に直交する軸を意味する。前額面は、図1(b)に示すように、前後軸と鉛直軸とを含む平面を意味する。なお、左右の肩の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。
【0066】
歩行角は、歩行中の脚の向きを意味し、例えば、歩行角膝、歩行角すね及び歩行角つま先のうちの何れかで表現される。
歩行角膝は、歩行中の膝の向きを意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の骨盤と左の膝とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の骨盤と右の膝とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との平均値(ただし、各角度は、前後軸に対して膝側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の骨盤及び左右の膝の3次元座標を用いて算出可能である。
歩行角すねは、歩行中のすねの向きを意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の膝と左の足首とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の膝と右の足首とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との平均値(ただし、各角度は、前後軸に対して足首側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の膝及び左右の足首の3次元座標を用いて算出可能である。
歩行角つま先は、歩行中の足のつま先の向きを意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の水平面に投影した左の足首と左のつま先とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度と、右足接地時の水平面に投影した右の足首と右のつま先とを結ぶ直線と前後軸とが成す角度との平均値(ただし、各角度は、前後軸に対してつま先側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の足首及び左右のつま先の3次元座標を用いて算出可能である。
【0067】
つま先の上がりは、歩行中のつま先の上がり具合を意味し、例えば、1歩行周期における、前方に位置する左のつま先の床面からの高さ(鉛直方向の距離)の最大値と、前方に位置する右のつま先の床面からの高さの最大値との平均値で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰及び左右のつま先の3次元座標を用いて算出可能である。なお、床面は水平面と平行な面であり、その鉛直方向の位置を予め解析装置2に記憶しておけばよい。
【0068】
肘の振りは、歩行中の腕振り具合を意味し、例えば、肘矢状面角及び肘前額面角のうちの何れかで表現される。
肘矢状面角は、例えば、1歩行周期における、矢状面に投影した左の肘と左の手首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)と、矢状面に投影した右の肘と右の手首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)との平均値(ただし、各角度は、肘と手首とを結ぶ直線の手首側が前方に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の肘及び左右の手首の3次元座標を用いて算出可能である。
肘前額面角は、例えば、1歩行周期における、前額面に投影した左の肘と左の手首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)と、前額面に投影した右の肘と右の手首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)との平均値(ただし、各角度は、肘と手首とを結ぶ直線の手首側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の肘及び左右の手首の3次元座標を用いて算出可能である。
なお、左右の肘及び左右の手首の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。
【0069】
次いで、解析工程S5において、第1実施形態の解析装置2は、少なくとも、歩行パラメータである歩行速度、歩行リズムの左右差及び腰の曲がりと、予め記憶された第1対応関係とを用いて、被験者Hの速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を算出する(図2のS52)。
ここで、「第1対応関係」とは、複数の歩行パラメータと、速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢との対応関係のことである。「速度年齢」とは、歩行時の速度を評価した際に、何歳に相当するのかを表す歩行能力の一つの評価指標である。「バランス年齢」とは、歩行時の左右のバランスを評価した際に、何歳に相当するのかを表す歩行能力の一つの評価指標である。「姿勢年齢」とは、歩行時の姿勢を評価した際に、何歳に相当するのかを表す歩行能力の一つの評価指標である。
第1対応関係には、歩行速度を独立変数とし、速度年齢を従属変数とする第1回帰式と、少なくとも歩行リズムの左右差を独立変数とし、バランス年齢を従属変数とする第2回帰式と、少なくとも腰の曲がりを独立変数とし、姿勢年齢を従属変数とする第3回帰式とが含まれる。そして、解析装置2は、歩行速度と第1回帰式とを用いて速度年齢を算出し、少なくとも歩行リズムの左右差と第2回帰式とを用いてバランス年齢を算出し、少なくとも腰の曲がりと第3回帰式とを用いて姿勢年齢を算出する。
【0070】
第1実施形態の第1回帰式は、歩行速度を独立変数とする1次回帰式とされている。すなわち、独立変数である歩行速度をX、従属変数である速度年齢をYとすると、第1回帰式は、Y=aX+b(a、bは所定の定数)で表わされる。第1回帰式の定数a、bは、従属変数を複数の人間の実年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された歩行速度として回帰分析することにより算出可能である。第1回帰式を算出するための回帰分析で用いる複数の人間(母集団)は、10〜90代の男女など、広範囲の年代に亘る男女から選択することが好ましい。なお、第1実施形態では、歩行解析システム100を用いて100人以上に対して計測を行い、第1回帰式を算出している。
なお、第1実施形態では、第1回帰式を1次回帰式としたが、本発明はこれに限るものではなく、2次回帰式や3次回帰式などの多次回帰式を採用することも可能である。
【0071】
第1実施形態の第2回帰式は、少なくとも歩行リズムの左右差を独立変数とする1次回帰式とされている。より具体的には、第1実施形態の第2回帰式は、歩行リズムの左右差に加え、歩行角の左右差(具体的には、歩行角つま先の左右差)、腿の上がりの左右差及び肩水平角の計4つのパラメータを独立変数とする1次重回帰式とされている。すなわち、独立変数である歩行リズムの左右差、歩行角の左右差(歩行角つま先の左右差)、腿の上がりの左右差及び肩水平角をそれぞれX1、X2、X3及びX4とし、従属変数であるバランス年齢をYとすると、第2回帰式は、Y=a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+b(a1〜a4、bは所定の定数)で表わされる。第2回帰式の定数a1〜a4及びbは、第1回帰式と同様に、従属変数を複数の人間の実年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された歩行リズムの左右差、歩行角の左右差(歩行角つま先の左右差)、腿の上がりの左右差及び肩水平角として回帰分析することにより算出可能である。
なお、第1実施形態では、第2回帰式を1次回帰式としたが、本発明はこれに限るものではなく、2次回帰式や3次回帰式などの多次回帰式を採用することも可能である。
【0072】
第1実施形態の第3回帰式は、少なくとも腰の曲がりを独立変数とする1次回帰式とされている。より具体的には、第1実施形態の第3回帰式は、腰の曲がりに加え、歩行角(具体的には、歩行角つま先)、つま先の上がり及び肘の振り(具体的には、肘矢状面角)の計4つのパラメータを独立変数とする1次重回帰式とされている。すなわち、独立変数である腰の曲がり、歩行角(歩行角つま先)、つま先の上がり及び肘の振り(肘矢状面角)をそれぞれX1、X2、X3及びX4とし、従属変数である姿勢年齢をYとすると、第3回帰式は、Y=a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+b(a1〜a4、bは所定の定数)で表わされる。第3回帰式の定数a1〜a4及びbは、第1回帰式や第2回帰式と同様に、従属変数を複数の人間の実年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された腰の曲がり、歩行角(歩行角つま先)、つま先の上がり及び肘の振り(肘矢状面角)として回帰分析することにより算出可能である。
なお、第1実施形態では、第3回帰式を1次回帰式としたが、本発明はこれに限るものではなく、2次回帰式や3次回帰式などの多次回帰式を採用することも可能である。
【0073】
次いで、解析工程S5において、第1実施形態の解析装置2は、好ましい構成として、算出した速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を補正する(図2のS53)。以下、速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の補正について具体的に説明する。
【0074】
第1実施形態の解析装置2には、速度年齢を補正するための速度年齢補正式と、バランス年齢を補正するためのバランス年齢補正式と、姿勢年齢を補正するための姿勢年齢補正式とが予め記憶されている。
図3を用いて、それらの補正式の導出について説明する。図3(a)は、実年齢と、補正前の速度年齢との対応関係の一例を示す図である。図3(b)は、実年齢と、補正後の速度年齢との対応関係の一例を示す図である。図3(c)は、実年齢と、補正後の速度年齢、補正後のバランス年齢及び補正後の姿勢年齢を用いて算出した歩行年齢との対応関係の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、所定の年齢を基準として、複数の人間の実年齢を若年層(図3において「〇」でプロットしたデータに相当)と該若年層よりも年齢の高い高年層(図3において「△」でプロットしたデータに相当)とに区分する。若年層に属する人間の実年齢(X)を独立変数とし、若年層に属する人間について算出された速度年齢(Y)を従属変数として回帰分析することにより算出された回帰直線をY=a1X+b1(a1及びb1は所定の定数)とする。そして、若年層に属する人間の実年齢(Y=X)と上記の回帰直線(Y=a1X+b1)の差によって、実年齢(X)を変数として補正項を算出するための若年層用速度年齢補正式(ΔY1(X)=X−(a1X+b1))を求める。一方、高年層に属する人間の実年齢(X)を独立変数とし、高年層に属する人間について算出された速度年齢(Y)を従属変数として回帰分析することにより算出された回帰直線をY=a2X+b2(a2及びb2は所定の定数)とする。そして、高年層に属する人間の実年齢(Y=X)と上記の回帰直線(Y=a2X+b2)の差によって、実年齢(X)を変数として補正項を算出するための高年層用速度年齢補正式(ΔY2(X)=X−(a2X+b2))を求める。速度年齢補正式は、上記の若年層用速度年齢補正式と、高年層用速度年齢補正式とから構成され、解析装置2に予め記憶される。
【0075】
解析装置2は、若年層用速度年齢補正式及び高年層用速度年齢補正式のうち、図2のS1で入力された被験者Hの実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、被験者Hの実年齢を選択した補正式に代入して得られる補正項を、図2のS52で算出した被験者Hの速度年齢に加算することで、被験者Hの速度年齢を補正する。例えば、被験者Hの実年齢がX1(例えば30歳)であり、図2のS52で算出した被験者Hの速度年齢がY1であるとすれば、解析装置2は、若年層用速度年齢補正式を選択し、被験者Hの速度年齢Y1に補正項ΔY1(X1)=X1−(a1X1+b1)を加算したY1+ΔY1(X1)=Y1+X1−(a1X1+b1)を補正後の被験者Hの速度年齢とする。一方、例えば、被験者Hの実年齢がX2(例えば60歳)であり、図2のS52で算出した被験者Hの速度年齢がY2であるとすれば、解析装置2は、高年層用速度年齢補正式を選択し、被験者Hの速度年齢Y2に補正項ΔY2(X2)=X2−(a2X2+b2)を加算したY2+ΔY2(X2)=Y2+X2−(a2X2+b2)を補正後の被験者Hの速度年齢とする。
【0076】
以上では、速度年齢について説明したが、バランス年齢及び姿勢年齢についても同様である。すなわち、バランス年齢補正式は、若年層用バランス年齢補正式と高年層用バランス年齢補正式とから構成され、解析装置2は、若年層用バランス年齢補正式及び高年層用バランス年齢補正式のうち、図2のS1で入力された被験者Hの実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、被験者Hの実年齢を選択した補正式に代入して得られる補正項を、図2のS52で算出した被験者Hのバランス年齢に加算することで、被験者Hのバランス年齢を補正する。同様に、姿勢年齢補正式は、若年層用姿勢年齢補正式と高年層用姿勢年齢補正式とから構成され、解析装置2は、若年層用姿勢年齢補正式及び高年層用姿勢年齢補正式のうち、図2のS1で入力された被験者Hの実年齢に応じた何れか一方の補正式を選択し、被験者Hの実年齢を選択した補正式に代入して得られる補正項を、図2のS52で算出した被験者Hの姿勢年齢に加算することで、被験者Hの姿勢年齢を補正する。
【0077】
図3(a)に速度年齢の例を示すように、本発明者らが検討したところによれば、複数の人間の実年齢と、速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢との相関は、若年層と高年層とでは異なる傾向になることが分かった。したがい、第1実施形態のように、複数の人間の平均的な速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢が実年齢に近づくように補正する場合、歩行パラメータによって算出した速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢を一律に補正するのではなく、若年層と高年層とに区分してそれぞれ別個に補正することが好ましい。第1実施形態の補正によれば、若年層及び高年層の双方について、複数の人間の平均的な速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢が実年齢に近づくように補正することが可能となる(図3(b)参照)。その結果、後述のように、補正後の速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢によって算出される被験者Hの平均的な歩行年齢も、実年齢に近いものとなる(図3(c)参照)。
【0078】
なお、第1実施形態では、若年層と高年層との区分を以下のようにして行っている。すなわち、速度年齢については、区分する前の複数の人間の実年齢(X)を独立変数とし、該複数の人間について算出された速度年齢(Y)を従属変数として回帰分析することにより算出された回帰直線をY=a0X+b0(a0及びb0は所定の定数)とする。そして、この回帰直線と、速度年齢=実年齢の直線(Y=X)との交点の実年齢(X座標)を基準年齢Xcとする。若年層はX<Xcとされ、高年層はX≧Xcとされる。バランス年齢及び姿勢年齢についても同様である。なお、基準年齢Xcは、例えば、40〜60歳の所定の年齢である。ただし、本発明はこれに限るものではなく、回帰直線Y=a0X+b0に関わりなく、予め定めた固定の実年齢との大小に応じて若年層と高年層とを区分してもよい。
【0079】
次いで、解析工程S5において、第1実施形態の解析装置2は、補正後の被験者Hの速度年齢、補正後の被験者Hのバランス年齢及び補正後の被験者Hの姿勢年齢と、予め記憶された第2対応関係とを用いて、図3(c)に示すような被験者Hの歩行年齢を算出する(図2のS54)。ここで、第2対応関係とは、速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の各年齢と、歩行年齢との対応関係である。
第1実施形態の第2対応関係は、歩行年齢を速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の線形和で表わす関係とされている。すなわち、速度年齢をY1、バランス年齢をY2、姿勢年齢をY3、歩行年齢をZとすると、第2対応関係は、Z=n1X1+n2X2+n3X3+n4(n1〜n4は所定の定数)で表わされる。ただし、本発明は、これに限るものではなく、歩行年齢を速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢の2次式の和で表わしたり、3次式の和で表わすなど、各年齢の非線形和で表わす関係とすることも可能である。
【0080】
最後に、解析工程S5において、第1実施形態の解析装置2は、好ましい構成として、複数の歩行パラメータの優劣を示す指標であるスコアを算出する(図2のS55)。以下、スコアの算出手順について具体的に説明する。
【0081】
第1実施形態の解析装置2には、複数の歩行パラメータ(歩行速度、歩行リズムの左右差、腰の曲がりなど)の優劣を示す指標であるスコアを算出するためのスコア算出用基準式及びスコア算出用偏差が歩行パラメータ毎に予め記憶されている。
図4は、歩行パラメータの一つである歩行速度のスコア算出手順を説明するための説明図である。図4に示すように、スコア算出用基準式は、独立変数を複数の人間の実年齢とし、従属変数を該複数の人間について算出された歩行パラメータ(図4に示す例では歩行速度)として回帰分析することにより算出された、実年齢Xを変数として歩行パラメータ基準値Eを算出するための回帰式である。第1実施形態のスコア算出用基準式は、実年齢Xの2次回帰式とされている。すなわち、スコア算出用基準式は、E=m1X+m2X+m3(m1〜m3は所定の定数)で表わされる。ただし、本発明はこれに限るものではなく、1次回帰式や3次回帰式など、他の回帰式を用いることも可能である。スコア算出用偏差は、複数の人間について算出された歩行パラメータ(図4に示す例では歩行速度)の標準偏差SDに所定の係数を乗算した値である。第1実施形態では、所定の係数として2種類(l、l)使用しており、スコア算出用偏差は、lSD及びlSD(l及びlは、l<l、0<l、0<lを満足する所定の定数)となる。
【0082】
解析装置2は、図2のS1で入力された被験者Hの実年齢Xをスコア算出用基準式に代入することで、被験者Hの歩行パラメータ基準値Eを算出する。また、被験者Hの身体特徴点(胸腰など)の3次元座標を用いて算出した被験者Hの歩行パラメータ(図4に示す例では歩行速度)と歩行パラメータ基準値Eとの差を、スコア算出用偏差lSD及びlSDと比較し、その大小に応じて予め設定されたスコアを被験者Hの歩行パラメータ(図4に示す例では歩行速度)のスコアとして算出する。
【0083】
図4に示す例では、被験者Hについて算出された歩行速度をPとすると、PとEとの差がlSDよりも大きい場合、すなわち、P>(E+lSD)である場合に、最も優れていることを示すスコア「5」が算出されるように、スコアが予め設定されている。同様に、(E+lSD)≧P>(E+lSD)である場合にスコア「4」が算出され、(E+lSD)≧P>(E−lSD)である場合にスコア「3」が算出され、(E−lSD)≧P>(E−lSD)である場合にスコア「2」が算出され、(E−lSD)>Pである場合に、最も劣っていることを示すスコア「1」が算出されるように設定されている。
図4に示す例では、歩行パラメータとして歩行速度を例に挙げて説明したが、第1実施形態の解析装置2は、他の歩行パラメータについても同様に、被験者Hのスコアを算出可能である。なお、歩行速度の場合は、その値が大きい方が高スコアの判定になるように設定しているが、例えば、腰の曲がりの場合は、その値が小さい方が高スコアの判定(「4」又は「5」)になるように設定するなど、各歩行パラメータの特性に応じて、その値が大きい方と小さい方のどちらの方を高スコアとするかが予め設定されている。
【0084】
上記のように、第1実施形態においては、複数の人間の実年齢に応じた平均的な各歩行パラメータの値(歩行パラメータ基準値E)を算出するためのスコア算出用基準式と、複数の人間についての各歩行パラメータの標準偏差SDに関係するスコア算出用偏差とを用いて、被験者Hの各歩行パラメータの値が、被験者Hの実年齢に応じた平均的な各歩行パラメータに対してどの程度のレベルにあるのかを示すスコアが算出されることになる。このため、歩行能力の向上に対する被験者Hの意識向上に通じることが期待できる。
【0085】
第1実施形態の解析装置2は、以上に説明した解析工程S5を実行した後、解析結果(被験者Hの速度年齢、バランス年齢、姿勢年齢、歩行年齢、歩行パラメータスコアなど)を出力し(図2のS6)、動作を終了する。解析結果の出力は、解析装置2に搭載されているモニタへの表示の他、解析装置2に接続されたプリンターから印刷するようにしてもよい。また、インターネットを介して被験者Hが所有しているパソコンやスマートフォンなどの情報端末に解析結果を送信するようにしてもよい。その他、クラウドストレージサービスなどを利用して解析結果をインターネット上に保存しておき、被験者Hが自身の端末からインターネットを介して解析結果が保存された場所にアクセスして好きなときに結果を見られるようにしてもよい。
【0086】
以上に説明した第1実施形態に係る歩行解析システム100によれば、速度年齢に関わる歩行速度、バランス年齢に関わる歩行リズムの左右差に加え、従来の方法では評価することができない、姿勢年齢に関わる腰の曲がりを歩行パラメータとして用いて歩行年齢が算出される。このため、従来の方法に比べ、歩行能力を全身の歩行状態から包括的に評価可能であり、被験者Hの歩行能力に合致した歩行年齢を算出可能である。
【0087】
なお、第1実施形態では、図2のS52で算出した被験者Hの速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢を補正(図2のS53)し、該補正後の各年齢を用いて歩行年齢を算出する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、図2のS52で算出した被験者Hの速度年齢、バランス年齢及び姿勢年齢をそのまま用いて歩行年齢を算出する構成とすることも可能である。
【0088】
また、第1実施形態では、被験者Hの歩行年齢を算出(図2のS54)した後に、被験者Hの歩行パラメータのスコアを算出(図2のS55)する手順を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、被験者Hの歩行パラメータのスコアを算出した後に、被験者Hの歩行年齢を算出する手順とすることも可能であるし、被験者Hの歩行年齢の算出と歩行パラメータのスコアの算出とを並列的に行うことも可能である。また、歩行パラメータのスコアを算出することなく歩行年齢のみを算出する構成や、逆に歩行年齢を算出することなく歩行パラメータのスコアのみを算出する構成とすることも可能である。
【0089】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る歩行解析システムについて説明する。
第2実施形態に係る歩行解析システムも、図1に示す第1実施形態に係る歩行解析システム100と同じ概略構成を有し、図2に示す第1実施形態に係る歩行解析システム100と同様の概略動作を実行する。このため、第2実施形態に係る歩行解析システムについても、図1図2を適宜参照し、第1実施形態と同じ構成要素や同様の工程については、第1実施形態で用いたものと同じ符号を用いて説明する。以下、第2実施形態に係る歩行解析システムについて、主として第1実施形態と異なる点を説明し、同様の点については説明を省略する。
【0090】
第2実施形態に係る歩行解析システムでは、解析装置2で実行する解析工程S5の内容が第1実施形態と異なり、被験者Hの見た目年齢を算出するように動作する。これに応じて、解析工程S5で算出する歩行パラメータの内容も第1実施形態と異なる。以下、具体的に説明する。
【0091】
解析工程S5において、第2実施形態の解析装置2は、被験者Hの複数の身体特徴点の3次元座標を用いて、歩行パラメータとして、少なくとも、歩行速度と、腰の曲がりと、腰の回転とを算出する。
歩行速度及び腰の曲がりについては、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
腰の回転は、歩行中の腰の回転具合を意味し、例えば、1歩行周期における、水平面に投影した左右の骨盤を結ぶ直線と左右軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差。ただし、角度は、左右の骨盤を結ぶ直線の右腰側が左右軸に対して前方に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰及び左右の骨盤の3次元座標を用いて算出可能である。
【0092】
第2実施形態の解析装置2は、歩行パラメータとして、上述した歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転の3つのパラメータに加え、歩行角の左右差、頭の前後方向の揺れ、歩行角及び頭の横方向の揺れの4つのパラメータを更に算出する。
歩行角の左右差及び歩行角については、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0093】
頭の前後方向の揺れは、歩行中の頭の前後方向の揺れを意味し、例えば、1歩行周期における、頭が骨盤中央から前後にずれる位置の振れ幅(最大値と最小値との差。ただし、値は、頭が骨盤中央に対して前方に位置している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、骨盤の中央及び頭の3次元座標を用いて算出可能である。なお、頭の3次元座標は、Kinect(登録商標)を用いてマーカレスで測定可能である。
【0094】
頭の横方向の揺れは、歩行中の頭の左右方向の揺れを意味し、例えば、1歩行周期における、頭が骨盤中央から左右にずれる位置の振れ幅(最大値と最小値との差。ただし、値は、頭が骨盤中央に対して右足側に位置している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、骨盤の中央及び頭の3次元座標を用いて算出可能である。
【0095】
次いで、解析工程S5において、第2実施形態の解析装置2は、少なくとも、歩行パラメータである歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転と、予め記憶された対応関係とを用いて、被験者Hの見た目年齢を算出する。より具体的には、第2実施形態の解析装置2は、歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転に加え、歩行角の左右差(具体的には、歩行角膝の左右差)、頭の前後方向の揺れ、歩行角(具体的には、歩行角つま先)及び頭の横方向の揺れと、予め記憶された対応関係とを用いて、被験者Hの見た目年齢を算出する。
第2実施形態の解析装置2に予め記憶された対応関係は、歩行速度、腰の曲がり及び腰の回転と、歩行角の左右差(歩行角膝の左右差)、頭の前後方向の揺れ、歩行角(歩行角つま先)及び頭の横方向の揺れのうち少なくとも何れか1つ(第2実施形態では全て)とを独立変数とし、見た目年齢を従属変数とする1次重回帰式で表されている。すなわち、独立変数である歩行速度、腰の曲がり、腰の回転、歩行角の左右差(歩行角膝の左右差)、頭の前後方向の揺れ、歩行角(歩行角つま先)及び頭の横方向の揺れをそれぞれX1、X2、X3、X4、X5、X6及びX7とし、従属変数である見た目年齢をYとすると、対応関係は、Y=a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+a5X5+a6X6+a7X7+b(a1〜a7、bは所定の定数)で表わされる。定数a1〜a7及びbは、従属変数を複数の人間について第三者が判定した見た目年齢とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータX1〜X7として回帰分析することにより算出可能である。なお、対応関係を表わす重回帰式は1次に限るものではなく、2次重回帰式や3次重回帰式などの多次重回帰式を採用することも可能である。
【0096】
図5は、第2実施形態に係る歩行解析システムによって見た目年齢を算出した結果の一例を示す図である。図5の横軸に示す算出値は、第2実施形態に係る歩行解析システムによって算出した見た目年齢を意味し、図5の縦軸に示す実測値は、第三者が判定した見た目年齢を意味する。図5に示す結果は、100人以上の被験者Hの歩行を解析することで算出された見た目年齢を横軸にプロットし、各被験者Hの歩行を被験者Hとは別の20人の第三者が観察して判定した見た目年齢の平均値を縦軸にプロットしたものである。
図5に示す結果から分かるように、第2実施形態に係る歩行解析システムによれば、第三者が観察して判定した結果に良く近似した見た目年齢を算出可能である。
【0097】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る歩行解析システムについて説明する。
第3実施形態に係る歩行解析システムも、図1に示す第1実施形態に係る歩行解析システム100と同じ概略構成を有し、図2に示す第1実施形態に係る歩行解析システム100と同様の概略動作を実行する。このため、第3実施形態に係る歩行解析システムについても、図1図2を適宜参照し、第1実施形態と同じ構成要素や同様の工程については、第1実施形態で用いたものと同じ符号を用いて説明する。以下、第3実施形態に係る歩行解析システムについて、主として第1実施形態及び第2実施形態と異なる点を説明し、同様の点については説明を省略する。
【0098】
第3実施形態に係る歩行解析システムでは、解析装置2で実行する解析工程S5の内容が第1実施形態と異なり、被験者Hの歩行姿勢の美しさを表す指標である美姿勢評価値を算出するように動作する。これに応じて、解析工程S5で算出する歩行パラメータの内容も第1実施形態と異なる。以下、具体的に説明する。
【0099】
解析工程S5において、第3実施形態の解析装置2は、被験者Hの複数の身体特徴点の3次元座標を用いて、歩行パラメータとして、少なくとも、前傾姿勢と、歩行速度と、肘の振り(具体的には、肘矢状面角及び肘前額面角)とを算出する。
歩行速度及び肘の振りについては、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0100】
前傾姿勢は、歩行中の姿勢の前傾具合を意味し、例えば、腰の曲がり、頭の前後方向の傾き及び肩の前後方向の傾きのうちの何れかで表現される。
腰の曲がりは、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
頭の前後方向の傾きは、歩行中の頭の前後方向の傾き具合を意味し、例えば、1歩行周期における、頭が骨盤中央から前後にずれる位置の平均値(ただし、値は、頭が骨盤中央に対して後方に位置している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、骨盤の中央及び頭の3次元座標を用いて算出可能である。
肩の前後方向の傾きは、歩行中の肩の前後方向の傾き具合を意味し、例えば、1歩行周期における、肩が骨盤中央から前後にずれる位置の平均値(ただし、値は、肩が骨盤中央に対して後方に位置している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、骨盤の中央及び頭の3次元座標を用いて算出可能である。
【0101】
第3実施形態の解析装置2は、歩行パラメータとして、上述した前傾姿勢、歩行速度及び肘の振りの3つのパラメータに加え、歩行角の左右差、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角の9つのパラメータを算出する。第3実施形態では算出しないが、第1実施形態と同様に、歩行角や歩行リズムの左右差を更に算出してもよい。
歩行角の左右差及びつま先の上がりについては、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。また、頭の横方向の揺れ及び腰の回転については、第2実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0102】
頭の横方向の傾きは、歩行中の頭の左右方向の傾き具合を意味し、例えば、1歩行周期における、頭が骨盤中央から左右にずれる位置の平均の絶対値(ただし、値は、頭が骨盤中央に対して右側に位置している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、骨盤の中央及び頭の3次元座標を用いて算出可能である。
【0103】
すねの倒れは、歩行中のすねの倒れ具合を意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の前額面に投影した左の膝と左の足首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度と、右足接地時の前額面に投影した右の膝と右の足首とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度との平均値(ただし、各角度は、膝と足首とを結ぶ直線の膝側が外側に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の膝及び左右の足首の3次元座標を用いて算出可能である。
【0104】
腿の上がりは、歩行中の腿の上がり具合を意味し、例えば、1歩行周期における、矢状面に投影した右の骨盤と右の膝とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の最大値と、矢状面に投影した左の骨盤と左の膝とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の最大値との平均値(ただし、各角度は、骨盤と膝とを結ぶ直線の膝側が前方に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の骨盤及び左右の膝の3次元座標を用いて算出可能である。
【0105】
歩隔は、歩行中の両足間の左右の距離を意味し、例えば、1歩行周期における、左足接地時の左の足首と右の足首間の左右距離と、右足接地時の右の足首と左の足首間の左右距離との平均値で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の足首の3次元座標を用いて算出可能である。
【0106】
肩前額面角は、歩行中の腕振り具合を意味し、例えば、1歩行周期における、前額面に投影した左の肩と左の肘とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)と、前額面に投影した右の肩と右の肘とを結ぶ直線と鉛直軸とが成す角度の振れ幅(最大値と最小値との差)との平均値(ただし、各角度は、肩と肘とを結ぶ直線の肘側が前方に傾斜している場合が正の値)で定義し、3次元測定装置1で測定した胸腰、左右の肩及び左右の肘の3次元座標を用いて算出可能である。
【0107】
次いで、解析工程S5において、第3実施形態の解析装置2は、少なくとも、歩行パラメータである前傾姿勢(具体的には、頭の前後方向の傾き)、歩行速度、肘の振り(具体的には、肘矢状面角及び肘前額面角)と、予め記憶された対応関係とを用いて、被験者Hの美姿勢評価値を算出する。より具体的には、第3実施形態の解析装置2は、前傾姿勢(頭の前後方向の傾き)、歩行速度、肘の振り(肘矢状面角及び肘前額面角)に加え、歩行角の左右差(具体的には、歩行角膝の左右差及び歩行角つま先の左右差)、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角と、予め記憶された対応関係とを用いて、被験者Hの美姿勢評価値を算出する。
第3実施形態の解析装置2に予め記憶された対応関係は、前傾姿勢(頭の前後方向の傾き)、歩行速度、肘の振り(肘矢状面角及び肘前額面角)と、歩行角の左右差(歩行角膝の左右差及び歩行角つま先の左右差)、歩行角、歩行リズムの左右差、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角のうち少なくとも何れか1つ(第3実施形態では歩行角及び歩行リズムの左右差を除く全て)とを独立変数とし、美姿勢評価値を従属変数とする1次重回帰式で表されている。すなわち、独立変数である前傾姿勢(頭の前後方向の傾き)、歩行速度、肘の振りのうち肘矢状面角、肘の振りのうち肘前額面角、歩行角の左右差(歩行角膝の左右差)、歩行角の左右差(歩行角つま先の左右差)、頭の横方向の揺れ、腰の回転、頭の横方向の傾き、すねの倒れ、腿の上がり、つま先の上がり、歩隔及び肩前額面角をそれぞれX1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14とし、従属変数である美姿勢評価値をYとすると、対応関係は、Y=a1X1+a2X2+a3X3+a4X4+a5X5+a6X6+a7X7+a8X8+a9X9+a10X10+a11X11+a12X12+a13X13+a14X14+b(a1〜a14、bは所定の定数)で表わされる。定数a1〜a14及びbは、従属変数を複数の人間について第三者が判定した美姿勢評価値とし、独立変数を該複数の人間について算出された各歩行パラメータX1〜X14として回帰分析することにより算出可能である。なお、対応関係を表わす重回帰式は1次に限るものではなく、2次重回帰式や3次重回帰式などの多次重回帰式を採用することも可能である。
【0108】
図6は、第3実施形態に係る歩行解析システムによって美姿勢評価値を算出した結果の一例を示す図である。図6の横軸に示す算出値は、第3実施形態に係る歩行解析システムによって算出した美姿勢評価値を意味し、図6の縦軸に示す実測値は、第三者が判定した美姿勢評価値を意味する。図6に示す例では、美姿勢評価値「1」は「美しくない」、美姿勢評価値「2」は「やや美しくない」、美姿勢評価値「3」は「普通」、美姿勢評価値「4」は「やや美しい」、美姿勢評価値「5」は「美しい」を意味する。図6に示す結果は、100人以上の被験者Hの歩行を解析することで算出された美姿勢評価値を横軸にプロットし、各被験者Hの歩行を被験者Hとは別の20人の第三者が観察して判定した美姿勢評価値の平均値を縦軸にプロットしたものである。
図6に示す結果から分かるように、第3実施形態に係る歩行解析システムによれば、第三者が観察して判定した結果に良く近似した美姿勢評価値を算出可能である。
【符号の説明】
【0109】
1・・・3次元測定装置
2・・・解析装置
100・・・歩行解析システム
H・・・被験者
図1
図2
図3
図4
図5
図6