特許第6649330号(P6649330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

特許6649330熱可塑性エラストマー組成物、発泡粒子及び発泡成形体
<>
  • 特許6649330-熱可塑性エラストマー組成物、発泡粒子及び発泡成形体 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649330
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物、発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20200210BHJP
   C08L 21/00 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   C08J9/18CFG
   C08J9/18CFD
   !C08L21/00
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-173948(P2017-173948)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-48942(P2019-48942A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2019年9月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】山下 洵史
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広隆
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−076464(JP,A)
【文献】 特開2018−044042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を示し、アミド系エラストマー及びエステル系エラストマーから成る群から選択される熱可塑性エラストマーと、顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物の発泡粒子を製造するための使用。
【請求項2】
前記顔料を、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.05〜3.0質量部含む請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記発泡粒子は前記熱可塑性エラストマー組成物からなる樹脂粒子を発泡剤で発泡させたものである請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、アミド系エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマー組成物が、結晶化温度より20〜30℃高い融点を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、エステル系エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマー組成物が、結晶化温度より25〜45℃高い融点を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項6】
結晶性を示し、アミド系エラストマー及びエステル系エラストマーから成る群から選択される熱可塑性エラストマーと、顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物を含む樹脂粒子を発泡剤で発泡させた発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物、発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、優れた耐熱性を有しかつ着色された発泡成形体、その製造用の熱可塑性エラストマー組成物及び発泡粒子に関する。本発明の発泡成形体は、各種建築資材、靴の部材(例えば、インソール部材、ミッドソール部材)、スポーツ用品、緩衝材、シートクッション、自動車部材等の幅広い用途で使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材や梱包材として、ポリスチレンを基材樹脂とするポリスチレン発泡成形体が汎用されている。ここで、発泡成形体は、発泡性ポリスチレン粒子のような発泡性粒子を加熱して発泡(予備発泡)させて発泡粒子(予備発泡粒子)を得、得られた発泡粒子を金型のキャビティ内に充填した後、二次発泡させて発泡粒子同士を熱融着により一体化させることで得ることができる。
ポリスチレン発泡成形体は、原料となる単量体がスチレンであるため、剛性は高いものの、反発性が低いことが知られている。そのため、繰り返し圧縮される用途や柔軟性が求められる用途では使用し難いという課題があった。
発泡成形体の反発性を向上させるため、基材樹脂として熱可塑性エラストマーの一種であるアミド系エラストマーを使用した発泡成形体が提案されている(国際公開WO2016/052387号:特許文献1)。アミド系エラストマーは、ポリスチレンよりも高い弾性を有している。そのためアミド系エラストマーを基材樹脂とする発泡成形体の反発性を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2016/052387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、反発性が良好な発泡成形体を得ることができる。しかし、発泡成形体には、反発性以外に、耐熱性の向上も望まれている。特に、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを有するため、その耐熱性は、既存の熱可塑性樹脂と比べて、低かった。そのため、耐熱性の向上した熱可塑性エラストマー製の発泡成形体の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、熱可塑性エラストマー製の発泡成形体の耐熱性を向上させるために、各種耐熱性向上剤の添加を試みた。その結果、顔料が、熱可塑性エラストマーの結晶化温度を上昇させること、熱可塑性エラストマーと顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物から製造される発泡成形体の耐熱性を向上させ得ること、を意外にも見い出すことで本発明に至った。
かくして本発明によれば、熱可塑性エラストマーと、耐熱性向上剤としての顔料とを含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
また、本発明によれば、熱可塑性エラストマーと、耐熱性向上剤としての顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物を基材樹脂とする発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、熱可塑性エラストマーと、耐熱性向上剤としての顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物を基材樹脂とする発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い耐熱性を有する発泡成形体を提供できる。
以下のいずれかの場合、より高い耐熱性を有する発泡成形体を提供できる。
(1)顔料が、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.05〜3.0質量部含まれる。
(2)熱可塑性エラストマーが、結晶性を示し、アミド系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーから選択される。
(3)熱可塑性エラストマーが、アミド系エラストマーであり、熱可塑性エラストマー組成物が、結晶化温度より20〜30℃高い融点を有する。
(4)熱可塑性エラストマーが、オレフィン系エラストマーであり、熱可塑性エラストマー組成物が、結晶化温度より30〜45℃高い融点を有する。
(5)熱可塑性エラストマーが、エステル系エラストマーであり、熱可塑性エラストマー組成物が、結晶化温度より25〜45℃高い融点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】固体粘弾性の算出法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(熱可塑性エラストマー組成物)
熱可塑性エラストマー組成物(以下、単に組成物ともいう)は、熱可塑性エラストマーと、顔料とを含む。組成物は、発泡粒子及び発泡成形体の製造に好適に用いられる。顔料は、組成物中で、耐熱性向上剤としての役割を果たす。具体的には、実施例でも確認されているように、顔料は、熱可塑性エラストマーの結晶化温度を上昇させる役割を果たしている。結晶化温度が上昇することで、熱可塑性エラストマーの結晶性が高くなり、その結果、発泡成形体の耐熱性が向上する。この顔料により耐熱性が向上する現象は、熱可塑性エラストマーを発泡成形体の製造に使用する技術分野では、知られていないと発明者等は考えている。
【0009】
(1)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーは、例えば、アミド系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーから選択できる。組成物は、各種エラストマーのみを含んでいてもよく、各エラストマーの混合物を含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーは、結晶性を有していることが好ましい。結晶性の有無は、結晶化温度の存在の有無により判断できる。
(i)アミド系エラストマー
アミド系エラストマーは、架橋していてもよく、非架橋であってもよい。本明細書において、非架橋とは、発泡粒子のアルコール系溶剤への不溶なゲル分率が3.0質量%以下のものを意味する。また、架橋とはこのゲル分率が3.0質量%より多いものを意味する。
【0010】
ここで、アミド系エラストマー(発泡体)のゲル分率は下記の要領で測定される。
発泡体の質量W1を測定する。次に、130℃のアルコール系溶剤(例えば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール)100mL中に発泡体を24時間に亘って浸漬する。
次に、アルコール系溶剤の残渣を80メッシュの金網を用いて濾過し、金網上に残った残渣を130℃にて1時間に亘って乾燥させて、金網上に残った残渣の質量W2を測定し、下記式に基づいて発泡体のゲル分率を算出できる。
ゲル分率(質量%)=W2/W1×100
基材樹脂としては、非架橋のアミド系エラストマーが含まれていることが好ましい。
【0011】
非架橋のアミド系エラストマーには、ポリアミドブロック(ハードセグメント)とポリエーテルブロック(ソフトセグメント)とを有するコポリマーを使用できる。
ポリアミドブロックとしては、例えば、ポリεカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリナノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)等のポリアミド構造が挙げられる。ポリアミドブロックは、これらポリアミド構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
ポリエーテルブロックとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)等のポリエーテル構造が挙げられる。ポリエーテルブロックは、これらポリエーテル構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックはランダムに分散していてもよい。
【0012】
ポリアミドブロックの数平均分子量は300〜15000であることが好ましく、600〜5000であることがより好ましい。ポリエーテルブロックの数平均分子量Mnは100〜6000であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましい。
非架橋のアミド系エラストマーには、米国特許第4,331,786号明細書、米国特許第4,115,475号明細書、米国特許第4,195,015号明細書、米国特許第4,839,441号明細書、米国特許第4,864,014号明細書、米国特許第4,230,838号明細書及び米国特許第4,332,920号明細書に記載されたアミド系エラストマーも使用できる。
【0013】
非架橋のアミド系エラストマーは、反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られるものが好ましい。この共重縮合としては特に下記のものを挙げることができる:
(a)ジアミン鎖端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
(b)ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシ化α,ω−ポリオキシアルキレン単位のシアノエチル化及び水素化で得られるジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とジアミン鎖端を有するポリオキシアルキレン単位との共重縮合、
(c)ジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とポリエーテルジオールとの共重縮合(この場合に得られるものを特にポリエーテルエステルアミドとよんでいる)。
【0014】
ジカルボン酸鎖端を有するポリアミドブロックを与える化合物としては、例えば、α,ω−アミノカルボン酸、ラクタム又はジカルボン酸の連鎖調節剤の存在下でのジカルボン酸とジアミンの縮合で得られる化合物が挙げられる。
(a)の共重縮合の場合、非架橋のアミド系エラストマーは、例えば、ポリエーテルジオールと、ラクタム(又はα,ω−アミノ酸)と、連鎖制限剤のジアシッドとを少量の水の存在下で反応させて得ることができる。非架橋のアミド系エラストマーは、種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有していてもよく、更に各成分がランダムに反応することでポリマー鎖中に分散していてもよい。
【0015】
上記共重縮合時において、ポリエーテルジオールのブロックはそのまま用いてもよく、その水酸基とカルボキシ末端基を有するポリアミドブロックとを共重合して用いてもよく、その水酸基をアミノ化してポリエーテルジアミンに変換した後にカルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合して用いてもよい。また、ポリエーテルジオールのブロックをポリアミド前駆体及び連鎖制限剤と混合して共重縮合させることで、ランダムに分散させたポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むポリマーを得ることも可能である。
【0016】
(ii)オレフィン系エラストマー
オレフィン系エラストマーは、架橋していてもよく、非架橋であってもよい。非架橋とは、発泡体のキシレンへの不溶なゲル分率が3.0質量%以下のものを意味する。また、架橋とはこのゲル分率が3.0質量%より多いものを意味する。
ここで、オレフィン系エラストマー(発泡体)のゲル分率は下記の要領で測定される。
発泡体の質量W1を測定する。次に沸騰キシレン80ミリリットル中に発泡体を3時間還流加熱する。次にキシレン中の残渣を80メッシュの金網を用いてろ過し、金網上に残った残渣を130℃にて1時間に亘って乾燥させて、金網上に残った残渣の質量W2を測定し、下記式に基づいて発泡体のゲル分率を算出できる。
ゲル分率(質量%)=W2/W1×100
基材樹脂としては、非架橋のオレフィン系エラストマーが含まれていることが好ましい。
非架橋のオレフィン系エラストマーは、鉱物性油非含有下で、発泡体に所定の密度と圧縮永久ひずみを与え得るものが好ましい。非架橋のオレフィン系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントを組み合わせた構造を有するものが挙げられる。このような構造は、常温でゴム弾性を示し、高温では可塑化され成形可能となるという性質を与える。
例えば、ハードセグメントがポリプロピレン系樹脂であり、ソフトセグメントがポリエチレン系樹脂である非架橋のオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0017】
前者のポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンを主成分とする樹脂が使用できる。ポリプロピレンとしては、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチック等から選択される立体規則性を有していてもよい。
後者のポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレンを主成分とする樹脂が使用できる。ポリエチレン以外の成分としてはポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0018】
非架橋のオレフィン系エラストマーには、潤滑油、パラフィン、ヤシ油、ステアリン酸、脂肪酸等の軟化剤が含まれていてもよい。
非架橋のオレフィン系エラストマーとしては、ハードセグメントとなるモノマーとソフトセグメントとなるモノマーの重合を行い、重合反応容器内において直接製造される重合タイプのエラストマー;バンバリーミキサーや二軸押出機等の混練機を用いてハードセグメントとなるポリプロピレン系樹脂と、ソフトセグメントとなるポリエチレン系樹脂とを物理的に分散させて製造されたブレンドタイプのエラストマーが挙げられる。
【0019】
非架橋のオレフィン系エラストマーは、ショアA硬度が30〜100であることが好ましく、40〜90であることがより好ましい。非架橋のオレフィン系エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さ試験(JIS K6253:97)に準拠して測定される。
また非架橋のオレフィン系エラストマーは、ショアD硬度が10〜70であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。非架橋のオレフィン系エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さ試験(ASTM D2240:95)に準拠して測定される。
【0020】
(iii)エステル系エラストマー
エステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとを含むエステル系エラストマーが挙げられる。
ハードセグメントは、例えば、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分から構成される。ジカルボン酸成分と、ジカルボン酸成分及びジオール成分との2成分から構成されていてもよい。
ジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体に由来する成分が挙げられる。
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール(例えば、1,4−ブタンジオール)等のC2−10アルキレングリコール、(ポリ)オキシC2−10アルキレングリコール、C5−12シクロアルカンジオール、ビスフェノール類又はこれらのアルキレンオキサイド付加体等が挙げられる。ハードセグメントは、結晶性を有していてもよい。
【0021】
ソフトセグメントは、ポリエステルタイプ及び/又はポリエーテルタイプのセグメントを使用できる。
ポリエステルタイプのソフトセグメントとしては、ジカルボン酸類(アジピン酸のような脂肪族C4−12ジカルボン酸)とジオール類(1,4−ブタンジオールのようなC2−10アルキレングリコール、エチレングリコールのような(ポリ)オキシC2−10ルキレングリコール)との重縮合体、オキシカルボン酸の重縮合体やラクトン(ε−カプロラクトンのようなC3−12ラクトン)の開環重合体等の脂肪族ポリエステルが挙げられる。ポリエステルタイプのソフトセグメントは、非晶性であってもよい。ソフトセグメントとしてのポリエステルの具体例としては、カプロラクトン重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等のC2−6アルキレングリコールとC6−12アルカンジカルボン酸とのポリエステルが挙げられる。このポリエステルの数平均分子量は、200〜15000の範囲であってもよく、200〜10000の範囲であってもよく、300〜8000の範囲であってもよい。
ポリエーテルタイプのソフトセグメントとしては、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)のような脂肪族ポリエーテルに由来するセグメントが挙げられる。
ポリエーテルの数平均分子量は、200〜10000の範囲であってもよく、200〜6000の範囲であってもよく、300〜5000の範囲であってもよい。
【0022】
ソフトセグメントは、脂肪族のポリエステルとポリエーテルとの共重合体(ポリエーテル−ポリエステル)のようなポリエーテル単位を有するポリエステル、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール)のようなポリエーテルと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルに由来するセグメントであってもよい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの質量割合は、20:80〜90:10であってもよく、30:70〜90:10であってもよく、30:70〜80:20であってもよく、40:60〜80:20であってもよく、40:60〜75:25であってもよい。
また、ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分とそれ以外のジカルボン酸成分である場合、エステル系エラストマーが、ハードセグメントを30〜80質量%の割合で含み、かつテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分を5〜30質量%の割合で含んでいてもよい。テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分の割合は5〜25質量%であってもよく、5〜20質量%でもよく、10〜20質量%でもよい。なお、ジカルボン酸成分の割合は、樹脂のNMRスペクトルを定量評価することにより入手できる。
テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分が、イソフタル酸成分であることが好ましい。イソフタル酸成分を含むことで、エラストマーの結晶化度が下がる傾向があり、発泡成形性が向上してより低密度の発泡成形体を得ることができる。
エステル系エラストマーには、東洋紡社製ペルプレン(PELPRENE)シリーズ、バイロン(VYLON)シリーズが好適に使用できる。特に、ペルプレンシリーズを使用することが好ましい。
【0023】
(iv)ウレタン系エラストマー
ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、長鎖ポリオール、短鎖グリコール、ジイソシアナート等を原料として、重付加反応により、分子内にウレタン結合を介して得られるエラストマーを使用できる
長鎖ポリオールとしては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンアジペート)、ポリラクトンジオール、ポリカプロラトンジオール、ポリエナントラクトンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(プロピレングリコール/エチレングリコール)、ポリ(1,6−ヘキサメチレングリコールカーボネート)等が挙げられる。長鎖ポリオールの分子量は100〜10000であってもよく、500〜5000であってもよい。
【0024】
短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−キシリレングリコール、ビスフェノールA、ハイドロキノンジエチロールエーテル、フェニレンビス−(β−ヒドロキシエチルエーテル)等が挙げられる。
ジイソシアナートとしては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、o−キシレンジイソシアナート、m−キシレンジイソシアナート、p−キシレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等が挙げられる。
【0025】
ポリウレタン系エラストマー、長鎖ポリオールとジイソシアナートでソフトセグメントを、短鎖グリコールとジイソシアナートでハードセグメントを構成していてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、必要に応じて、マレイン化、カルボキシル化、水酸化、エポキシ化、ハロゲン化、スルホン化等の変性処理や、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、電子線架橋、シラン架橋等の架橋処理に付されていてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、成型体としての強靱性や屈曲性の点から、5000〜300000の、10000〜100000の粘度分子量を有していてもよい。
ポリウレタン系エラストマーは、3000〜200000の、5000〜180000の、8000〜150000の数平均分子量を有していてもよい。
【0026】
(2)顔料
耐熱性向上剤としての顔料は、発泡成形体の耐熱性を向上できさえすれば特に限定されない。ここで、顔料は、組成物の結晶化温度を、熱可塑性エラストマーの結晶化温度より10℃以上高くし得る機能を有し得る。なお、顔料は、顔料としての通常の着色機能も有している。そのため、発泡粒子や発泡成形体を所望の色に着色可能である。
顔料としては、例えば、炭素系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピンネル系、クロム酸鉛系、クロム酸バーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、炭酸カルシウム系、硫酸バリウム系、酸化硅素系、水酸化アルミニウム系、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アントラキノン系、アジン系、キノリン系、キナクドリン系、ぺリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジコ系、イソインドリンノン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系等の顔料が挙げられる。顔料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
炭素系顔料としては、カーボンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、黒鉛等が挙げられる。
他の顔料としては、
銅フタロシアニン、イソインドリン、ジクロロキナクリドン、ジケトピロロピロール、
C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド60、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントヴァイオレット19、
【0028】
C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー28、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー66、
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン26、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン50、
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー11、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー21、C.I.ピグメントイエロー35、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー76、C.I.ピグメントイエロー82、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー102、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー157、C.I.ピグメントイエロー161、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー184
等が挙げられる。
【0029】
(3)熱可塑性エラストマーと顔料との含有割合
顔料は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.05〜3.0質量部含まれることが好ましい。0.05質量部未満の場合、耐熱性の向上効果が十分でないことがある。3.0質量部より多い場合、発泡を阻害することがある。顔料の含有割合は、0.1〜2.0質量部であることがより好ましく、0.2〜1.0質量部であることが更に好ましい。
【0030】
(4)添加剤
基材樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、添加剤や、アミド系樹脂(エラストマーを除く)、オレフィン系樹脂(エラストマーを除く)、エステル系樹脂(エラストマーを除く)、ウレタン系樹脂(エラストマーを除く)、ポリエーテル樹脂等の他の樹脂が含まれていてもよい。他の樹脂は、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0031】
(5)組成物の結晶化温度及び融点
熱可塑性エラストマーが、アミド系エラストマーである場合、組成物は、結晶化温度より20〜30℃高い融点を有することが好ましい。
熱可塑性エラストマーが、オレフィン系エラストマーである場合、組成物は、結晶化温度より30〜45℃高い融点を有することが好ましい。
熱可塑性エラストマーが、エステル系エラストマーである場合、組成物は、結晶化温度より25〜45℃高い融点を有することが好ましい。
組成物が上記結晶化温度と融点の関係を有することで、より耐熱性の高い発泡成形体を製造し得る組成物を提供できる。
組成物の融点は、
アミド系エラストマーについては、結晶化温度より20〜25℃高い、
オレフィン系エラストマーについては、結晶化温度より30〜35℃高い、
エステル系エラストマーについては、結晶化温度より25〜35℃高い
ことがより好ましい。
【0032】
(発泡粒子)
発泡粒子は、熱可塑性エラストマーと、耐熱性向上剤としての顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物を基材樹脂とする。発泡粒子は、顔料を含むことにより、高い耐熱性を有している。
発泡粒子における熱可塑性エラストマー、顔料及びそれらの含有割合は、上記熱可塑性エラストマー組成物と同様である。
発泡粒子は、0.05〜0.5g/cmの嵩密度を有することが好ましい。嵩密度は、0.10〜0.25g/cmであることがより好ましい。
発泡粒子は、10%以下の連続気泡率を有することが好ましい。連続気泡率は、5%以下であることがより好ましい。下限は0%である。
発泡粒子は、1〜10mmの平均粒子径を有することが好ましい。平均粒子径は、2〜5mmであることがより好ましい。
発泡粒子は、樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程(含浸工程)、発泡性粒子を発泡させる発泡工程を経て得ることができる。
【0033】
(1)含浸工程
(a)樹脂粒子
樹脂粒子は、公知の製造方法及び製造設備を使用して得ることができる。
例えば、押出機から押し出された樹脂と顔料の溶融混練物を、水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。溶融混練時の温度、時間、圧力等は、使用原料及び製造設備に合わせて適宜設定できる。
溶融混練時の押出機内の溶融混練温度は、樹脂が十分に軟化する温度である、170〜250℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱電対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。
顔料は、マスターバッチの形態で押出機に供給されてもよい。マスターバッチを構成する樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂が挙げられる。これらの中でも熱可塑性エラストマー樹脂であることが好ましい。
樹脂粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。
樹脂粒子は、0.5〜3.5mmの平均粒子径を有することが好ましい。平均粒子径が0.5mm未満の場合、発泡剤の保持力が低下して発泡性が低下することがある。3.5mmより大きい場合、成形型内への充填性が低下することがある。
樹脂粒子は、その長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.5〜3であることが好ましい。樹脂粒子のL/Dが0.5未満や3を超えている場合、金型内への充填性が低下することがある。なお、樹脂粒子の長さLは、押出方向の長さをいい、平均径Dは長さLの方向に実質的に直交する樹脂粒子の切断面の直径をいう。
樹脂粒子の平均径Dは0.5〜3.5mmが好ましい。平均径が0.5mm未満の場合、発泡剤の保持性が低下して発泡性粒子の発泡性が低下することがある。3.5mmより大きいと、金型内への発泡粒子の充填性が低下すると共に、板状の発泡体を製造する場合に発泡体の厚みを薄くできないことがある。
【0034】
樹脂粒子には、気泡調整剤が含まれていてもよい。
気泡調整剤としては、重曹クエン酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸塩、無機気泡核剤等が挙げられる。これら気泡調整剤は、複数種組み合わせてもよい。
高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸塩としては、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
無機気泡核剤としては、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
樹脂粒子は、他に、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤を含んでいてもよい。
【0035】
(b)発泡性粒子
樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造する。なお、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる要領としては、公知の要領を用い得る。例えば、密閉可能なオートクレーブ内に、樹脂粒子、分散剤及び水を供給して撹拌することによって、樹脂粒子を水中に分散させて分散液を製造し、この分散液中に発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法(湿式含浸)が挙げられる。水を使用せずに発泡剤を含浸させてもよい(乾式含浸)。
分散剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の難水溶性無機物や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤が挙げられる。
発泡剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、空気、窒素、二酸化炭素(炭酸ガス)等の無機ガス;プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;ハロゲン化炭化水素が挙げられ、脂肪族炭化水素、無機ガスが好ましい。なお、発泡剤は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0036】
樹脂粒子に含浸させる発泡剤の量は、樹脂粒子100質量部に対して、1〜12質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が1質量部未満であると、発泡力が低くなり、高い発泡倍率では、良好に発泡させ難いことがある。12質量部を超えると、気泡膜の破れが生じやすくなり、可塑化効果が大きくなりすぎて、発泡時の粘度が低下しやすくなり、かつ収縮が起こりやすくなる。脂肪族炭化水素を発泡剤として用いる場合、より好ましい発泡剤の量は6〜8質量部である。この範囲内であれば、発泡力を十分に高めることができ、高い発泡倍率であっても、より一層良好に発泡できる。発泡剤の含有量が8質量部以下であると、気泡膜の破れが抑えられ、可塑化効果が大きくなりすぎないために、発泡時の粘度の過度の低下が抑えられ、かつ収縮が抑えられる。
【0037】
樹脂粒子100質量部に対して含浸された発泡剤の含有量(含浸量)は、以下のようにして測定される。
樹脂粒子を圧力容器に入れる前の質量Xgを測定する。圧力容器内で、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、圧力容器から含浸物を取り出した後の質量Ygを測定する。下記式により、樹脂粒子100質量部に対して含浸された発泡剤の含有量(含浸量)が求められる。
発泡剤の含有量(質量部)=((Y−X)/X)×100
脂肪族炭化水素を発泡剤として用いる場合、樹脂粒子への発泡剤の含浸温度は、低いと樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。含浸温度は、常温(25℃)〜120℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。発泡助剤(可塑剤)を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤(可塑剤)としては、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0038】
(2)発泡工程
発泡工程では、発泡性粒子を発泡させて、発泡粒子を得ることができれば発泡温度、加熱媒体は特に限定されない。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ポリアミドパウダーや界面活性剤等の合着防止剤、帯電防止剤を塗布してもよい。帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、及びステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0039】
(発泡成形体)
発泡成形体は、熱可塑性エラストマーと、耐熱性向上剤としての顔料とを含む熱可塑性エラストマー組成物を基材樹脂とする。発泡成形体は、顔料を含むことにより、高い耐熱性を有している。また、発泡成形体は、複数の発泡粒子の融着体から構成される。
発泡成形体における熱可塑性エラストマー、顔料及びそれらの含有割合は、上記熱可塑性エラストマー組成物と同様である。
発泡成形体は、0.05〜0.25g/cmの密度を有することが好ましい。密度は、0.10〜0.20g/cmであることがより好ましい。
発泡成型体は、各種建築資材、靴の部材(例えば、インソール部材、ミッドソール部材)、スポーツ用品、緩衝材、シートクッション、自動車部材等の幅広い用途で使用できる。
発泡成形体は、発泡粒子が型内に複数充填された一対の金型を加熱媒体により加熱成形することで製造できる。例えば、多数の小孔を有する金型により構成された型内に発泡粒子を充填し、加圧水蒸気で発泡粒子を加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させ、一体化させることにより得ることができる。
【0040】
発泡粒子に不活性ガス又は空気(以下、不活性ガス等と称する)を含浸させて、発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。発泡力を向上させることにより、加熱発泡時に発泡粒子同士の融着性が向上し、発泡体は更に優れた発泡性を有する。なお、不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
発泡粒子に不活性ガス等を含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス等の雰囲気下に発泡粒子を置くことによって、発泡粒子中に不活性ガス等を含浸させる方法が挙げられる。発泡粒子は、金型内に充填する前に不活性ガス等が含浸されてもよいが、発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス等の雰囲気下に置くことで含浸されてもよい。なお、不活性ガスが窒素である場合、0.1〜2.0MPa(ゲージ圧)の窒素雰囲気中に発泡粒子を20分〜24時間に亘って放置することが好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<エラストマー及び組成物の融点及び結晶化温度>
JIS K7121:1987、2012「プラスチックの転移温度測定方法」及び、JIS K7122:1987、2012「プラスチックの転移熱測定方法」に準拠した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては次のように行った。エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DSC6220、ASD−2」示差走査熱量計又は日立ハイテクサイエンス社製「DSC7000X、AS−3」示差走査熱量計を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充填して、窒素ガス流量20mL/minのもと、30℃から−70℃まで降温した後10分間保持し、−70℃から220℃まで昇温(1st Heating)、10分間保持後220℃から−70℃まで降温(Cooling)、10分間保持後−70℃から220℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温・降温は速度10℃/minで行い、基準物質としてアルミナを用いた。本発明において、融点とは、装置付属の解析ソフトを用いて、2nd Heating過程にみられる最も大きな融解ピークのトップの温度を読み取った値とした。また、結晶化温度は、装置付属の解析ソフトを用いて、Cooling過程にみられる、3mJ/mg以上の熱量を有する最も高温側の結晶化ピークのトップ温度を読み取った値とした。
【0042】
<樹脂粒子の長さL及び平均径D>
ノギスを用いて樹脂粒子の長さLと平均径Dを測った。樹脂粒子を製造する際の押出方向の長さをL、押出方向に対して垂直方向の長さを平均径Dとした。
【0043】
<発泡粒子の嵩密度>
まず、発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後、メスシリンダーの底をたたいて試料の見掛け体積(V)cmを一定にし、その質量と体積を測定し、次式に基づいて発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0044】
<発泡粒子の平均粒子径>
発泡粒子約50gをロータップ型篩振とう機(飯田製作所社製)を用いて、篩目開き16.00mm、13.20mm、11.20mm、9.50mm、8.00mm、6.70mm、5.60mm、4.75mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mmのJIS標準篩で5分間分級した。篩網上の試料質量を測定し、その結果から得られた累積質量分布曲線を元にして累積質量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とした。
【0045】
<発泡粒子の連続気泡率>
まず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の発泡粒子の全質量A(g)を測定した。次に、発泡粒子全体の体積B(cm)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定した。比重計は、例えば、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されているものを用いた。続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の質量C(g)を測定した。次に、この金網製の容器内に前記発泡粒子を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた発泡粒子の全量とを併せた質量D(g)を測定した。そして、下記式に基づいて発泡粒子の見掛け体積E(cm)を算出し、この見掛け体積Eと上記発泡粒子全体の体積B(cm)とに基づいて下記式により発泡粒子の連続気泡率を算出した。なお、連続気泡率の算出においては水1gの体積を1cmとした。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0046】
<発泡成形体の密度>
発泡成形体の密度はJIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」記載の方法で測定した。即ち、100cm以上の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
測定用の試験片は、成形後72時間以上経過した試料から100mm×100mm×元の成形体厚みに切り取り、温度23±2℃、湿度50±5%又は、温度27±2℃、湿度65±5%の雰囲気条件に16時問以上放置したものを使用した。
【0047】
<発泡成形体の固体粘弾性>
固体粘弾性測定装置には、(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)粘弾性スペクトロメータEXSTAR DMS6100を用いた。まず、発泡成形体をオーブンにて100℃、3時間乾燥させた。その後、熱プレス機にて200℃、5分間プレスを行い、長さ40mm、幅10mm、厚み0.7mmの測定試料を得た。固体粘弾性測定装置を用い、引張制御モードにて窒素雰囲気下で周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定温度30℃〜220℃、チャック間隔20mm、歪振幅5μm、最小張力/圧縮力20mN、張力/圧縮力ゲイン1.2、力振幅初期値20mNの条件で固体粘弾性を測定した。測定より得られた固体粘弾性のグラフの変曲点の接線の交点が示す温度の値を算出した。接線の引き方の例を図1に示す。
【0048】
実施例1
(1)樹脂粒子
ナイロン12をハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールをソフトセグメントとするアミド系エラストマー(商品名「PEBAX5533」、融点160.1℃、結晶化温度124.5℃、アルケマ社製)100質量部と、顔料としてのカーボンブラックのアミド系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PEBAX5533」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)を2.0質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、アミド系エラストマー組成物を得た。なお、単軸押出機内において、組成物を始めは180℃にて溶融混練した後に220℃まで昇温させながら溶融混練した。
続いて、溶融状態の組成物を冷却した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルからアミド系エラストマーを押出した。なお、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型(直径1.3mmのノズルを8穴有する)の各ノズルから樹脂を押し出し、30〜50℃の水中でカットした。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.0〜1.4mmで、粒子の平均径Dが1.0〜1.4mmであった。樹脂粒子(組成物)の融点は160.5℃、結晶化温度136.3℃であった。
【0049】
(2)発泡性粒子
樹脂粒子(平均粒子径1.2mm)15kg(100質量部)を加温密閉可能な内容積43リットルの耐圧回転式混合機に投入した。更に、合着防止剤としてエパン450(第一工業製薬社製)0.5質量部を投入し撹拌した。樹脂粒子を撹拌させながら、発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3)12質量部を圧入し、内部温度を70℃に昇温させ2時間撹拌を続けたその後、20℃まで冷却して混合機から除圧後すぐに取り出すことで、発泡性粒子を得た。
(3)発泡粒子
内容積50Lの撹拌機付き円筒型予備発泡機に発泡性粒子を2kg投入し、0.21MPaの水蒸気で撹拌しながら、発泡させ、嵩密度0.09g/cm3の発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に窒素を0.5MPaの圧力で圧入して常温にて18時間に亘って放置して発泡粒子に窒素を含浸した。
(4)発泡成形体
発泡粒子を密閉容器から取り出し、400mm×300mm×厚み11.0mmの大きさのキャビティを有する成形型のキャビティ内に充填し、0.25MPaの水蒸気で35秒間加熱し成形を行い、発泡成形体を得た。
発泡成形体の密度は0.10g/cm、固体粘弾性は152.3℃であった。
【0050】
実施例2
顔料を銅フタロシアニンのアミド系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PEBAX5533」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は161.1℃、結晶化温度136.4℃であった。発泡成形体の密度は0.10g/cm、固体粘弾性は153.1℃であった。
実施例3
エステル系エラストマー(商品名「PELPRENE GP−475」、融点147.9℃、結晶化温度96.7℃、東洋紡社製)100質量部と、顔料としてのイソインドリンのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10%、彩華化学社製)5.0質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、エステル系エラストマー組成物を得た。以降は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は153.7℃、結晶化温度116.5℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は150.8℃であった。
実施例4
顔料をジケトピロロピロール(DPP)のエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は153.5℃、結晶化温度116.8℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は150.5℃であった。
【0051】
実施例5
顔料をジクロロキナクリドンのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は154.1℃、結晶化温度122.7℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は150.8℃であった。
実施例6
顔料をカーボンブラックのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)5質量部に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は153.2℃、結晶化温度115.0℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は148.3℃であった。
実施例7
顔料をカーボンブラックのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)10質量部に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は153.9℃、結晶化温度119.3℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は149.5℃であった。
実施例8
顔料を銅フタロシアニンのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)5質量部に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は152.8℃、結晶化温度121.9℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は148.8℃であった。
実施例9
顔料を銅フタロシアニンのエステル系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:「PELPRENE GP−475」、顔料濃度10質量%、彩華化学社製)10質量部に変更すること以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は151.2℃、結晶化温度122.8℃であった。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は149.3℃であった。
実施例10
オレフィン系エラストマー(商品名「R110E」、融点155.6℃、結晶化温度101.6℃、プライムポリマー社製)100質量部と、顔料としてのカーボンブラックのオレフィン系エラストマー樹脂マスターバッチ(構成する樹脂:ポリプロピレン、顔料濃度20質量%、トーヨーカラー社製)2.5質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、オレフィン系エラストマー組成物を得た。以降は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。組成物の融点は153.6℃、結晶化温度116.3℃であった。発泡成形体の密度は0.10g/cm、固体粘弾性は150.3℃であった。
【0052】
比較例1
ナイロン12をハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールをソフトセグメントとするアミド系エラストマー(商品名「PEBAX5533」、融点160.1℃、結晶化温度124.5℃、アルケマ社製)100質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、アミド系エラストマー組成物を得た。以降は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。発泡成形体の密度は0.10g/cm、固体粘弾性は146.0℃であった。
比較例2
エステル系エラストマー(商品名「PELPRENE GP−475」、融点147.9℃、結晶化温度96.7℃、東洋紡社製)100質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、エステル系エラストマー組成物を得た。以降は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。発泡成形体の密度は0.13g/cm、固体粘弾性は146.6℃であった。
比較例3
オレフィン系エラストマー(商品名「R110E」、融点155.6℃、結晶化温度101.6℃、プライムポリマー社製)100質量部と、有機系気泡調整剤(商品名「花王ワックスEBFF」、花王社製)0.3質量部を単軸押出機に供給して溶融混練することで、オレフィン系エラストマー組成物を得た。以降は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。発泡成形体の密度は0.10g/cm、固体粘弾性は146.2℃であった。
実施例1〜10及び比較例1〜4の製造条件及び各種物性を表1に示す。表中、AEはアミド系エラストマー、EEはエステル系エラストマー、OEはオレフィン系エラストマー、CBはカーボンブラック、CuPは銅フタロシアニン、イソIはイソインドリン、DPPはジケトピロロピロール、ジClQはジクロロキナクリドンを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、顔料を含む組成物から得られた発泡成形体は、顔料未含有の発泡成形体より、向上した耐熱性(固体粘弾性)を示すことが分かる。
図1