【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的は、請求項1に記載の装置、ならびに、請求項21に記載の骨セメントドウを生成する方法、および請求項29に記載の、PMMA骨セメントドウを混合および施用するのに適したプリパック式PMMAセメントカートリッジシステムを生産する方法によって達成される。本発明による特に有利な変更形態が従属請求項によって特許請求される。
【0023】
それゆえ、本発明の目的は、2つの出発成分から形成されるポリメチルメタクリレート骨セメントを混合し、骨セメントの出発成分を収納する、装置であって、前記装置は、筒状内部を有する管状のカートリッジを有し、カートリッジの内部の前方部分には、第1の出発成分として粉末が収容され、カートリッジの内部の後方部分には、第2の出発成分としてモノマー液を収容する容器が配置され、容器と粉末との間に排出ピストンが配置され、容器のうちの排出ピストンの反対側に搬送ピストンが配置され、排出ピストンおよび搬送ピストンは、カートリッジの内部において長手方向に移動可能なように配置され、モノマー液および気体は透過し粉末は透過しないように、カートリッジの内部の前方部分と後方部分とを互いに接続する、導管手段が設けられる、装置によって達成される。
【0024】
管状のカートリッジの内部は、筒状の形状を有するか、または筒状である。筒状の形状は、カートリッジの内部を作り出すことができる最も単純な形状であり、筒状の形状は、排出ピストンおよび/または搬送ピストンの移動をガイドするのに特に最適である。さらに、内部の前方部分および後方部分は、内部が筒状の形状を有する場合に、移動可能なピストンによって、特に任意の位置で外に向かってかつ互いに対して簡単にシールすることができる。
【0025】
筒状の形状は、形状の観点から、任意の端部面形状を有する概略的に筒状の形状、すなわち、円形の端部面を有する筒だけではないことを意味すると理解すべきである。したがって、内部の範囲を定める内壁は、任意の端部面形状を有する筒とすることができ、カートリッジの側方の面も、必要に応じて、任意の端部面形状、言い換えれば、円形でも丸形でもない端部面を有する筒とすることもできる。しかし、本発明によれば、回転対称の筒状の形状、特に円形の端部面は、第1のカートリッジの内部とって好ましい。というのは、それら形状は、製造が最も単純であり、排出ピストンおよび/または搬送ピストンが、内部を軸に沿って移動される、すなわち、内部を長手方向に移動されるときに、内部で動けなくなることがより難しいからである。ピストンの移動中の、内部の内壁と排出ピストンとの間、さらに、内部の内壁と搬送ピストンとの間から漏れる可能性は、さらに起こりにくくなる。
【0026】
排出ピストンおよび/または搬送ピストンがカートリッジの筒状内部を軸に沿って移動可能であることは、筒状内部の筒の軸に沿って軸方向に移動可能であることを意味する。
【0027】
本発明による装置は、好ましくは、混合された骨セメントドウを排出するのにも適しており、それも意図されている。
【0028】
本発明による装置は、内部の前方部分に混合ユニットが設けられないことを特徴とする。外部から操作できる混合羽根などの混合ユニットは、通常、粉末をモノマー液と混合するために必要である。本発明による装置にはこれは必要ない。特に親水性添加剤が粉末に分散される場合に混合ユニットを避けることができ、その添加剤を用いるとモノマー液も粉末に分散されることになる。
【0029】
カートリッジの前方側は、好ましくは、本発明によればカートリッジヘッドによってカバーされる。カートリッジヘッドは、内部の前方部分のうちの排出ピストンの反対側に配置される。好ましくはカートリッジヘッドに通路または施用開口部が配設され、通路または施用開口部を通して骨セメントドウを施用することができる。
【0030】
本発明によれば、粉末は、PMMA骨セメントを生成できるセメント粉末を含有する。粉末は親水性添加剤も含有し、親水性添加剤を用いるとモノマー液が粉末に分散されることになる。粉末は、さらに、X線不透過物質および/または抗生物質などの薬剤活性物質を含有することもできる。
【0031】
添加剤は、好ましくは、粒子状または繊維状の形態である。添加剤は、好ましくは、少なくとも1つのOH基を有する化学物質を含有する。添加剤は、好ましくは、添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート少なくとも0.6gの吸収能力を有する。
【0032】
本発明によれば、粉末は、ふるい分級が100μm未満の少なくとも1つの粒子状のポリメチルメタクリレートまたはポリメチルメタクリレートコポリマーと、反応開始剤と、メチルメタクリレートに溶解しない少なくとも1つの粒子状または繊維状の添加剤とを含有し、添加剤は、室温で添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート0.6g以上の吸収能力を有することを提供することができる。
【0033】
この種の粉末は、粉末内にモノマー液を分散するのに特に最適であり、したがって、装置は、カートリッジの内部の前方部分の狭い側であっても片側からモノマー液を押し込むことを可能にする構造を備えることができる。本明細書では、驚くべきことに、この種の粉末、具体的には、本明細書で以下に定める粉末を、モノマー液と、具体的には、本明細書で以下に定めるモノマー液と単に接触させることによって、セメントドウを手作業でまたは技術的な補助器具の助けを用いて混合する必要なしに、ラジカル重合によって単独で硬化する、粘着性のない塑性変形可能な骨セメントドウを生成することが可能になることが分かった。低粘度骨セメントのセメント粉末を形成するために、メチルメタクリレートに溶解せず、室温で添加剤1グラム当たりメチルメタクリレート0.6g超の吸収能力を有する、粒子状または繊維状の添加剤を加えることによって、少なくとも5cmの距離にわたってモノマー液を押し込むことが可能である、改質された粉末がセメント粉末として得られることが確認された。驚くべきことに、添加剤は、モノマー液によるセメント粉末のぬれも改善する。本明細書では、添加剤は「吸上げ効果(wick effect)」を有し、既に0.1重量%からの非常に少ない量のモノマー液を粉末中に案内する。添加剤は、粉末のポリマー粒子の凝集も遅らせ、そうすることによって、ブロックするゲル層の形成が遅れ、粉末へのモノマー液の浸透が促進される。ここで、モノマー液は、粉末に押し込むことが可能であるか、または粉末に吸引もされる。
【0034】
本明細書では、好ましくは、添加剤がその表面で共有結合したヒドロキシル基を有することを提供することができる。本発明によれば、添加剤は、好ましくは、微結晶性セルロース、オキシセルロース、デンプン、二酸化チタン、および二酸化ケイ素からなる群から選択することができ、発熱性二酸化ケイ素が特に好ましい。添加剤は、ふるい分級が100μm未満、好ましくは、ふるい分級が50μm未満、非常に特に好ましくはふるい分級が10μm未満の粒子サイズを有する。粉末の全重量に対して0.1から2.5重量%の量の添加剤が粉末に含有されることも可能なことが好ましい。ポリマー粉末が反応開始剤として過酸化ジベンゾイルを含有することも可能である。
【0035】
モノマー液が少なくとも1つのメチルメタクリレートおよび活性化剤を含有することが可能である。さらに、モノマー液が、芳香族アミンの群から活性化剤を少なくとも1つ含有することが可能である。モノマー液が、キノンまたは立体障害フェノールの群からラジカル安定剤を少なくとも1つ含有することも可能である。
【0036】
添加剤がその表面に共有結合したヒドロキシル基を有する場合が有利である。本明細書で、Si‐OH基およびアルコールのOH基が具体的には特に有利である。OH基が表面に配置されるので、添加剤は高い表面エネルギーを有し、そうすることで、メチルメタクリレートによる添加剤の良好なぬれ性が達成される。焼成シリカAerosil(登録商標)380およびAerosil(登録商標)300が特に適している。さらに、ゾルゲル法によって添加剤として生成される二酸化ケイ素を用いることも可能である。
【0037】
モノマー液の必要体積に応じてカートリッジの内部の前方部分に2つ以上の容器を配置することも可能である。
【0038】
排出ピストンは、カートリッジの内部において軸に沿って移動可能なピストンであり、そのピストンによって、骨セメントドウを内部の前方部分からカートリッジの外に押しやることが可能である。骨セメントドウは、モノマー液を粉末と混合することによって生成される。
【0039】
排出ピストンにおよび/または排出ピストンと内部の内壁との間に、導管手段として少なくとも1つの供給孔が設けられ、その供給孔によって、内部の前方部分と内部の後方部分とが互いに接続されることも可能である。本明細書では、粉末は透過せずモノマー液および気体は透過するフィルタを、少なくとも1つの供給孔に配置することができる。
【0040】
本明細書では、搬送ピストンを排出ピストンの方向に押すことによって、カートリッジの閉止された内部のモノマー液を内部の後方部分から、粉末が配設される内部の前方部分に移すことが可能であることが達成される。
【0041】
あるいは、導管手段は1つまたは複数のラインとすることもでき、ラインは、カートリッジの外部にまたはカートリッジ壁内に配置され、カートリッジ壁の供給孔または開口部によってカートリッジの内部の前方部分を内部の後方部分に接続する。この場合、排出ピストンは通らない。その場合、モノマー液は、これらラインを通して内部の後方部分から前方部分に押すことが可能であり、エチレンオキシドなどの気体は、これらラインを通って内部の前方部分から後方部分に(またはその逆に)流れることができる。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つの供給孔が粉末は透過しないがモノマー液は透過するフィルタによってカバーされることが可能である。こうしたフィルタは有孔フィルタとも称される。したがって、粉末が内部の後方部分に入ることを防止でき、そのため、モノマー液との粉末の早まった反応を防止することができる。粉末は透過せずモノマー液は透過するフィルタは、特に好ましくは、排出ピストンと粉末との間に配置され、そうすることで、粉末は少なくとも1つの供給孔に入ることができず、その供給孔はモノマー液との早まった反応の後に詰まることがない。
【0043】
さらに、搬送ピストンを排出ピストンの方向に進めることによって、容器を開口することが可能であり、モノマー液を粉末に押し込むことが可能であり、その後、排出ピストンを搬送ピストンによってカートリッジの前方側の方向に押すことが可能である。
【0044】
本明細書では、骨セメントを混合および排出するために必要なプロセスステップ全てを、搬送ピストンの単方向の移動だけで既に引き起こすことができることが達成される。このように、容器を開口すること、粉末にモノマー液を押し込むこと、粉末とモノマー液から混合された骨セメントドウをカートリッジから排出することなどのプロセス全てを引き起こすかまたは行うために、線形の推進力が搬送ピストンに作用できるだけで十分である。本明細書では非常に単純な装置が提供され、その装置を用いると、骨セメントを生成および施用でき、同時に、骨セメントの出発成分、具体的には、セメント粉末を含有する粉末およびモノマー液を収納することができる。カートリッジの前方側はカートリッジベースの反対側である。
【0045】
本明細書では、搬送ピストンをカートリッジの前方側の方向に押すことによって、排出ピストンをカートリッジヘッドの方向に押圧することが可能であり、このことによって、そのように内部の前方部分において粉末およびモノマー液から生成される骨セメントドウを、開口部を通して押出し可能である。
【0046】
本明細書では、容器を開口しモノマー液に押し込むためにも使用されるのと同じ推進力を用いて、具体的には、単方向に押しやられる搬送ピストンを用いて、骨セメントドウをカートリッジから外に押しやることができることが単純な方式で達成される。
【0047】
好ましい発展形態によれば、モノマー液用の容器は、搬送ピストンの移動によって壊して開口できるガラスアンプルもしくはプラスチックアンプルであるか、またはモノマー液用の容器は、搬送ピストンの移動によって破ることが可能、もしくは刺すことが可能、もしくは裂くことが可能なフィルムバッグであることが可能である。
【0048】
この利点は、装置においてこの種の容器に特に長期間にわたってモノマー液を収納できることである。同じ目的で、フィルムバッグを金属コーティングで、具体的には、アルミニウムで被覆することが可能である。ガラスアンプルには特に長い時間モノマー液を収納できるので、容器は、特に好ましくは、ガラスアンプルである。
【0049】
排出ピストンが内部の前方部分と後方部分との間でカートリッジと係止できるように、排出ピストンにデテント手段が配置され、この係止は、容器が開口されるときに生じる力および搬送ピストンによってモノマー液に加えられる圧力によって解除することができないが、搬送ピストンから直接的に排出ピストンに作用する圧力によって解除可能であることも可能である。
【0050】
本明細書では、前方に進めることができるラムを有する従来の押出し器具によって、搬送ピストンが押しやられることと、モノマー液を介して衝撃の形態で排出ピストンに伝達されることがある異常な圧力衝撃が搬送ピストンに加えられないことが想定される。この種の衝撃の際には、排出ピストンは内部から外れることもある。本発明による方策の結果、まず、搬送ピストンを進めることによって容器を開口可能であり、その後、流出するモノマー液を搬送ピストンによって、カートリッジの内部の前方部分に、すなわち、粉末に押し込むことができ、排出ピストンがカートリッジおよび内部に対してその位置を維持することが達成される。搬送ピストンが排出ピストンを直接的に(すなわち、容器の各部分または充填材など、それらの間に残る固体から離れる方に)押して前記排出ピストンを押しやることで、モノマー液の大部分が粉末に押し込まれ、したがって、カートリッジの内部の前方部分に骨セメントドウが存在するときに初めて、そのときに排出ピストンによってカートリッジの前方部分から骨セメントドウを押すことができる。このように、係止を解除する力は、開口に必要な力よりも大きく、モノマー液の容器を破壊する必要がある場合は、やはりその破壊する力よりも大きい。例えば、容器が、押出し動作のためにその体積を十分に有意に低減するために大幅に圧縮し、したがって、破砕しなければならないガラスアンプルの場合、容器の破壊が好都合なことがある。つまり、モノマー液用の容器全体が、搬送ピストンの軸に沿った移動によって圧縮され、同時に、モノマー液がカートリッジの内部の前方部分または粉末に押し込まれ、そのときに初めて、排出ピストンのデテント要素が、排出ピストンへの搬送ピストンの圧力によって解除され、排出ピストンは、形成された骨セメントドウをカートリッジの前方側または排出開口部の方向に押圧する。モノマー液用の容器としてプラスチックバッグが用いられる場合は、デテント手段を省略することができる。
【0051】
カートリッジは、互いに固定して連結される、具体的には、互いにねじ込まれる、前方カートリッジ部分および後方カートリッジ部分から構成され、好ましくは、前方カートリッジ部分にカートリッジヘッドが締結されることも可能である。
【0052】
本明細書では、本発明によれば、カートリッジの内部の前方部分は、前方カートリッジ部分およびカートリッジヘッドによって、または場合によってはヘッド部分および前方カートリッジ部分によって、範囲が定められることと、モノマー液用の容器が配置される内部の後方部分は、後方カートリッジ部分およびカートリッジベースまたは搬送ピストンによって範囲が定められることとが可能であることが好ましい。
【0053】
カートリッジが2つまたは3つの部分から構成されるので、装置を組み立てること、および粉末およびモノマー液を収容する容器でカートリッジを満たすことも単純化される。したがって、生産コストを削減することもできる。
【0054】
粉末の漏出、開口した容器から出るモノマー液の漏出、および連結部における骨セメントドウの漏出を防止するために、2つのカートリッジ部分、および該当する場合にヘッド部分は、好ましくは、周囲シールによって互いに対してシールされる。
【0055】
本発明の好ましい発展形態によれば、内部の後方部分のうちの容器の隣に少なくとも1つの充填材が配置され、具体的には、容器と排出ピストンとの間の領域に少なくとも1つの充填材が配置され、充填材は、好ましくは、発泡材料でありかつ/またはプラスチックビーズによって形成されることを提供することができる。
【0056】
充填材は、容器から流出するモノマー液に取って代わるために用いられる。このように、内部の後方部分のまたは容器と排出ピストンとの間の空の体積は、充填材によって低減される。モノマー液が押し出されると、こうした空の体積は、モノマー液で満たさなければならず、カートリッジの内部の後方部分に残る。この領域の空の体積を低減することで、このようにより少量のモノマー液を使用することが可能になる。これは、コストおよびモノマー液の化学的特性が理由で望ましい。発泡材料の使用は、ガラスアンプルが搬送ピストンによって開口されるときに生成されるガラス破片を発泡材料中に押すことが可能であり、そのときに搬送ピストンの移動がブロックされないので、具体的には、モノマー液用の容器としてガラスアンプルを使用する場合に特に好ましい。
【0057】
本発明によれば、ガラスアンプルと排出ピストンとの間の空の体積においてモノマー液用の容器としてのガラスアンプルのヘッドの周りに配置される発泡材料リングが充填材として使用される場合が特に好ましい。さらに、発泡材料リングだけでなく、充填材としての別の発泡材料も、ガラスアンプルのための輸送保護材として使用することもできる。あるいは、弾性プラスチックから形成される機械的に変形可能なスペーサを輸送保護材として用いることもできる。
【0058】
本発明によれば、網、ふるい、または破片シールドが、粉末とモノマー液用の容器との間に、好ましくは、排出ピストンと容器との間に配置されるか、または排出ピストンの供給孔に配置されることがさらに可能である。
【0059】
そのために、網、ふるい、または破片シールドは、排出ピストンと容器との間もしくは排出ピストンと粉末との間、または、排出ピストンの少なくとも1つの開口部にもしくは排出ピストンと内部の内壁との間の少なくとも1つの開口部に配置可能である。
【0060】
容器の壊された断片または容器の破片は、網、ふるい、または破片シールドによって保持することが可能である。モノマー液用の容器の材料による骨セメントドウの汚染は本明細書では防止される。
【0061】
さらに、搬送ピストンがカートリッジベースにおいてカートリッジの内部を、具体的には耐圧かつ液密になるように閉止することを提供することができる。
【0062】
このように、モノマー液が、粉末に押し込まれるときに、カートリッジの後方側で漏出できないことが達成される。そのために、例えば、排出ピストンをカートリッジの内壁に対してシールする周囲シールが2つ使用される。例えば、シールはゴム製とすることができる。
【0063】
排出ピストンがカートリッジの内部の内壁に対してシールされることを提供することもできる。ゴム製の周囲シールはそのために使用することもできる。
【0064】
好ましくは、排出ピストンが穿孔プレートまたは網スクリーンとして形成され、気体透過性であるが粉末粒子は透過しない少なくとも1つの通気孔プラスチック層が、気体透過性であり粉末粒子は透過しないように孔または網の開口部を閉止することを提供することもできる。
【0065】
したがって、粉末粒子が内部の後方部分に入り、そこで、モノマー液と早まって反応できないことが達成される。
【0066】
発展形態によれば、モノマー液用の容器を開口するための少なくとも1つの開口補助具が、排出ピストンのうちの容器を向く側に配置され、少なくとも1つの開口補助具は、好ましくは、少なくとも1つの鋭利なブレードまたは少なくとも1つのピンであることを提供することもできる。
【0067】
本明細書では、容器は、単純な手法かつ搬送ピストンによる定められた力の適用によって開口することができる。
【0068】
本発明によれば、容器のモノマー液の体積は、内部の前方部分の粉末粒子間の空気で満たされた隙間の体積と少なくとも同じ程度の大きさであり、好ましくは、内部の前方部分の粉末粒子間の空気で満たされる隙間および搬送ピストンが排出ピストンに当たるときの内部の後方部分の体積から、容器の材料の体積および当てはまる場合は内部の後方部分の充填材の体積を引いた体積と少なくとも同じ程度の大きさであるかまたは全く同じ大きさであることを提供することもできる。
【0069】
このように、所望の粘度の骨セメントを生成するために正確な量のモノマー液が装置に確実に準備して保持される。このように、粉末は全て、必要な体積のモノマー液で確実に濡れ、均質なセメントドウを確実に生成できる。
【0070】
「全く同じ大きさ(exactly the same size as)」という表現は、この文脈では、好ましくは、差が最大10%以内にあるという意味である。
【0071】
内部の前方部分の体積が、粉末粒子および内部の後方部分から射出されるモノマー液の全体積に少なくとも等しいことも可能である。
【0072】
余分のモノマー液のための受液部が、カートリッジの前方端部に、またはカートリッジの前方側のカートリッジヘッドに設けられ、粉末は受液部に入ることができず、受液部は、好ましくは、親水性のスポンジ構造であることを提供することもできる。
【0073】
したがって、骨セメントドウが所望の粘度に達し、収容するモノマー液が過剰にならないことが達成される。このように、モノマー液は、粉末中に導入されるモノマー液の量に関する不確実性を補償するために、わずかに余分に用いることができる。
【0074】
粉末は、内部の前方部分に押し込まれ、好ましくは、内部の前方部分で圧力下にあることも可能である。
【0075】
粉末のセメント粒子間の隙間が押し込まれた粉末の25体積%と40体積%との間に相当することが可能である。
【0076】
粉末を押し込むことによって、粉末粒子の配置は非常に密度が高くなるので、粉末に分散される親水性添加剤が低濃度であってもモノマー液を粉末に案内し分散し、したがって、モノマー液が粉末に片側からのみ押し込まれるだけで十分になる。
【0077】
本発明の好ましい発展形態によれば、通気用開口部が、カートリッジの壁のうちの搬送ピストンのすぐ上方に配置され、内部の後方部分を周囲の外気に接続することも可能である。
【0078】
こうした通気用開口部は、搬送ピストンが排出ピストンの方向に十分に遠くに移動されるとすぐに搬送ピストンによって閉止される。通気用開口部は、好ましくは、モノマー液が内部の後方部分から漏出することを防止するように、搬送ピストンの移動によってモノマー液用の容器が開口される前に閉止される。カートリッジの内部および内容物は、通気用開口部を用いてエチレンオキシドによって殺菌することができる。エチレンオキシドは、一方でカートリッジヘッドを介して、他方で通気用開口部を介して、カートリッジ中に導入することが可能である。
【0079】
カートリッジの後方側に連結要素が設けられ、その連結要素によって、装置は押出し器具に連結可能であることも可能である。押出し器具は、前方に進むことが可能なラムまたは前方に進むことが可能なロッドを有し、ラムまたはロッドによって、搬送ピストンをカートリッジの内部においてカートリッジの前方側の方向に押しやることができる。
【0080】
さらに、排出チューブが、カートリッジの前方側に、該当する場合は、カートリッジヘッドに、配置され、その排出チューブによって骨セメントドウが施用可能であることも可能である。
【0081】
排出開口部を含む複部構成の閉止システムが、カートリッジの前方側に配置されるカートリッジヘッドに配置され、閉止システムの少なくとも2つの部分が、混合された骨セメントドウの移動によって押しやられることによって、互いに対して移動可能であり、閉止システムの少なくとも2つの部分が互いに移動することで排出開口部が開口し、混合された骨セメントドウの移動は、骨セメントドウへの排出ピストンの圧力によって引き起こすことができ、好ましくは、閉止システムの部分、具体的には、ストッパが、カートリッジの内部の前方部分と、装置の周囲環境との間の接続部を備え、その接続部は、気体は透過するが粉末およびモノマー液は透過しないことが可能であることが好ましい。
【0082】
カートリッジまたはカートリッジの内部は、本明細書では、粉末が外に向かって出ることができないように閉止することができる。したがって、装置は出発成分の収納により適している。同時に、閉止システムは、排出ピストンを押しやることによって開口することが可能であり、その結果、閉止を開くために追加の推進力が必要ない。好ましい発展形態によって、装置の内容物、したがって、モノマー液容器の内容物、特に、粉末は、外部からエチレンオキシドなどの殺菌ガスを用いて殺菌できることを保証することができる。
【0083】
本明細書では、骨セメントドウはその後、閉止システムを開口するために加えられる圧力と同じ圧力を骨セメントドウに用いることで、開口された排出開口部を通して排出可能になることが可能である。
【0084】
したがって、閉止システムを開口可能にし、完成した骨セメントドウをカートリッジから外に押しやることができ、出発成分の混合および容器の開口を引き起こすこともできる推進力を、装置が1つだけ備えることで十分である。
【0085】
このタイプの装置では、閉止システムは、排出開口部を有する壁およびストッパを有し、排出開口部はカートリッジの周囲環境に接続され、ストッパは、カートリッジが閉止されているときに排出開口部を閉止し、排出開口部を有する壁が骨セメントドウの圧力によって移動可能であり、ストッパがカートリッジに対して固定されるか、または、ストッパが骨セメントドウの圧力によって移動可能であり、壁がカートリッジに対して固定されるかもしくは固定可能であることも可能である。
【0086】
ストッパおよび壁は、そのときに、閉止システムの2つまたは少なくとも2つの部分を形成する。本明細書では、簡単に経済的に実現でき不具合が比較的生じにくい閉止システムが提供される。さらに、骨セメントドウを外に押しやるために使用される力は、カートリッジを開口するためにこのタイプの閉止システムと共に効果的に使用することもできる。
【0087】
さらに、排出開口部を有する排出チューブが、カートリッジに対して移動可能なように装着され、排出チューブを閉止するストッパが、カートリッジに固定して連結され、排出チューブは、骨セメントドウへの圧力によってストッパに対して移動可能であり、したがって、開口可能であることも可能である。
【0088】
本明細書ではまた、骨セメントドウのうちのカートリッジベースを向く側への圧力によって、排出チューブをカートリッジベースから離れる方向に押すことが可能であり、そうする際に、ストッパは、排出チューブから解除され、したがって、カートリッジを開口することも可能である。
【0089】
両対策によって、特に良好に使用できる装置が提供され、その装置は、排出チューブの移動に基づいて、装置の使用の準備ができたこと、および排出チューブから骨セメントドウが排出されつつあることを、ユーザが明確に視認できるという利点を有する。後者は、排出チューブの移動が再び終了したという事実に基づいて確認することもできる。排出チューブおよびストッパは、これら事例では、閉止システムの一部である。したがって、崩壊しにくい単純な閉止システムを構築することができ、この閉止システムではストッパは装置から外に落ちることがない。したがって、閉止システムには装置から切り離される部分がない。
【0090】
閉止システムは、気体透過性であるが粉末および液体は透過しない壁を備え、その壁は、骨セメントドウの圧力が壁に作用するようにカートリッジ内に配置され、したがって、ストッパもしくはカバーを壁と共にカートリッジに対して移動し、そうすることで、カートリッジを開口するか、または、したがって、排出開口部を壁と共に、カートリッジに対して移動し、そうすることで、カートリッジに固定して連結されるストッパを排出開口部から外し、壁は好ましくは孔を有するプレートを備えることも可能である。
【0091】
この構造の結果、カートリッジの内部は、閉止システムが閉止されている場合でも、カートリッジの内部から空気を抜き、その後、殺菌ガスを供給することによって、装置の使用前にエチレンオキシドなどの殺菌ガスで殺菌することができる。
【0092】
さらに、粉末には親水性添加剤が分散され、添加剤を用いると、好ましくは、骨セメントが事前に重合して粉末にモノマー液をさらに分散させるのを妨害することなく、モノマー液が粉末全体にわたって分散可能であることも可能である。
【0093】
本明細書では、モノマー液は、粉末に含有されるセメント粉末とモノマー液との重合が起きてモノマー液のさらなる分散が抑制される前に、粉末内に急速に分散することができる。詳細には、本発明による構造だけが、モノマー液が片側から粉末に押し込まれ、それにもかかわらず、重合によって粉末内のモノマー液のさらなる分散が抑制される前に粉末全体にわたって分散できることを現実に可能にする。
【0094】
本発明の特に好ましい発展形態によれば、カートリッジの内部の前方部分は、気体は透過するが粉末およびモノマー液は透過しない接続部によって、装置の周囲環境に接続され、接続部は、好ましくは、排出開口部を閉止するための閉止システムまたはストッパに配置されることが可能である。
【0095】
したがって、装置の内容物は、前記ガスを加える間に粉末もモノマー液も漏出できない状態で、エチレンオキシドなどの殺菌ガスを用いて殺菌することができる。閉止システムの一部として、気体は透過し粉末およびモノマー液は透過しない接続部が設けられる場合は、同時に、カートリッジの内容物に気体を供給するために排出開口部を使用することもできる。さらに、カートリッジには開口部を追加して設ける必要がない。
【0096】
本発明によって対処される目的は、この種の装置を用いて骨セメントを混合および施用する方法であって、カートリッジの前方側に配置されるカートリッジヘッドの方向に搬送ピストンを押すステップと、カートリッジの内部において搬送ピストンが移動することによって容器を開口し、その後、モノマー液を粉末に押し込み、したがって、骨セメントドウを形成するステップと、その後、排出ピストンをカートリッジヘッドの方向に押し、そうすることで、排出ピストンの移動によってカートリッジヘッドを通してカートリッジから外に骨セメントドウを押しやるステップとを含む、方法によっても達成される。
【0097】
モノマー液に加えて、カートリッジの内部の後方部分に収容される空気も、カートリッジの内部の後方部分から前方部分に押される。カートリッジの内部の前方部分の粉末粒子間に収容される空気も、浸透するモノマー液によってカートリッジの前方部分から置き換えられる。空気は、粉末は透過しないが気体は透過するフィルタを通して外に向かって出ることができ、その結果、空気によって内部の前方部分に超過圧力が発生することがない。
【0098】
骨セメントドウは、粉末に含有されるセメント粉末粒子の、モノマー液によるぬれによって形成される。その後、セメント粉末粒子は、モノマー液によって膨張し、反応開始剤との促進剤の反応によってモノマー液のラジカル重合が開始される。促進剤および反応開始剤は、粉末‐モノマー液システムの一部である。骨セメントドウはこれら化学反応によって形成される。
【0099】
本発明によれば、骨セメントドウがせん断力の適用なしで混合されることが可能である。このことは、添加剤と共に粉末を用いることで達成することができる。
【0100】
本発明によれば、粉末中に移されるモノマー液の質量は粉末の質量の1.5倍と2.5倍との間にあることが可能である。
【0101】
骨セメントドウの粉末とモノマー液との所望の混合比を得るために、本発明によれば、カートリッジの前方側で壁の多孔性フィルタとカートリッジヘッドとの間に余分のモノマー液が受けられることが可能である。そのために、モノマー液は、粉末および骨セメントドウを透過しない多孔性フィルタを通して押される。モノマー液が粉末を通り抜けて壁の位置に至るときに余分のモノマー液を受けることによって、骨セメントドウが軟らかくなり過ぎること、したがって、望ましくない粘度に達することを防止することが可能である。さらに、骨セメントドウの粘度が高くなり過ぎるのを避けるために、排出ピストンと搬送ピストンとの間に残る、さらに排出ピストンの通路に残る、モノマー液の残渣によるロスを補償するために、モノマー液が余分に存在することが可能である。
【0102】
容器が開口されるときおよびモノマー液が粉末に押し込まれるときは、排出ピストンがカートリッジの内壁と係止され、カートリッジの内壁との排出ピストンの係止は、排出ピストンへの搬送ピストンの圧力によって解除され、その後、搬送ピストンは、排出ピストンをカートリッジヘッドの方向に押すことが可能である。
【0103】
このように、カートリッジから骨セメントドウを押し出すために排出ピストンが搬送ピストンによってカートリッジヘッドの方向に押される前に、モノマー液用の容器がまず開口され、その後、モノマー液が完全にまたは少なくとも所望の量だけ粉末に押し込まれることを保証することができる。
【0104】
装置が押出し器具に挿入され、押出し器具のラムが前方に進められ、ラムによって、搬送ピストンがカートリッジヘッドの方向に押しやられることも可能である。
【0105】
発展形態によれば、モノマー液が親水性添加剤を用いて粉末に分散され、粉末は、好ましくは、内部の前方部分において機械的圧力下で圧縮されるかまたは収容されることが可能である。
【0106】
本発明によれば、粉末がカートリッジの内部の前方部分に押し込まれ、カートリッジの内部の前方部分は、好ましくは、内部の前方部分の粉末が機械的圧力下にあり、したがって、圧縮状態に保持されるように、閉止されることが可能である。機械的圧力は、そのようにストレスをかけられたカートリッジ、排出ピストン、およびカートリッジヘッドによって維持される。したがって、圧力を適用する力は、カートリッジ、排出ピストン、およびカートリッジヘッドの弾性または弾性的変形によって加えられる。
【0107】
さらに、容器は、搬送ピストンの移動によって圧縮され、好ましくは、その結果破壊されることも可能である。
【0108】
容器は、ガラスアンプルまたはプラスチックアンプルの場合に、好ましくは、破砕される。
【0109】
本発明による方法の発展形態によれば、カートリッジヘッドの排出開口部が、初期段階で、閉止システムを用いて閉止されており、閉止システムは、搬送ピストンによって排出ピストンを介して骨セメントドウに加えられる圧力によって開口され、その後、骨セメントドウは、同じ圧力を用いて、排出開口部を通して押し出されることが可能である。
【0110】
排出開口部は、好ましくは、排出チューブによって実現される。
【0111】
本明細書では、閉止システムの一部分が、排出開口部を閉止するストッパであり、ストッパが、セメントドウと共に排出開口部から外に押されるか、または壁が、カートリッジに対して、排出開口部と共に、骨セメントドウによってカートリッジの前方側の方向に押され、したがって、カートリッジに固定されるストッパまたはカバーを排出開口部から解除することが可能である。
【0112】
壁は、好ましくは、カートリッジの内部で軸に沿って移動可能である。
【0113】
本発明によって達成される目的は、PMMA骨セメントドウを混合および施用するのに適しており、骨セメントの出発成分として粉末が収納される、プリパック式PMMAセメントカートリッジシステムを生産する方法であって、
A)筒状内部を有するカートリッジおよび筒状内部に適合する外周を有する排出ピストンを用意するステップと、
B)粉末をカートリッジの内部に充填するステップであって、粉末は、PMMA骨セメントドウを生成するための主成分としてセメント粉末を含み、さらにセメント粉末に分散される親水性添加剤を含む、ステップと、
C)排出ピストンと内部の壁との間の距離を低減することによって、カートリッジの内部において、排出ピストンと、前方側で筒状内部の範囲を定める壁との間で粉末を圧縮するステップと、
D)粉末を収納する間に、壁および排出ピストンによって粉末に機械的圧力が加えられるように、壁および/または排出ピストンをロックするか、支持するか、または締結するステップであって、粉末は締め固められたままである、ステップと、
を有する方法によっても達成される。
【0114】
粉末を圧縮すると、粉末は互いに押圧され、その際に、粉末粒子の互いからの平均距離が低減される。粒子は、このプロセスの間に弾性的に変形することもできる。
【0115】
本明細書では、排出ピストンは、プレス嵌め、デテント手段、および/もしくは支持されることによって、カートリッジに対して保持され、壁は、カートリッジと一体になるように形成されるか、または壁は、カートリッジの内面に当たるか、または壁は、ロックされることによってまたはプレス嵌めによってカートリッジ内に保持されることが可能である。
【0116】
さらに、骨セメントの別の出発成分としてモノマー液を収容する少なくとも1つの容器が、カートリッジの内部に配置され、搬送ピストンが、カートリッジのカートリッジベースに配置され、少なくとも1つの容器は、搬送ピストンと排出ピストンとの間に配置され、充填材、具体的には、少なくとも1つの発泡材料本体および/またはプラスチック粒が、好ましくは、少なくとも1つの容器が配置されるカートリッジの内部の後方部分にさらに配置されることが可能である。
【0117】
排出ピストンは、少なくとも1つの容器と、カートリッジの内部においてカートリッジベースに配置される搬送ピストンとによって支持されることも可能である。
【0118】
本発明は、本発明による装置を用いると、直線的に進められるラムを有する従来の押出し器具によって供給されるような線形の推進力を用いることと、互いに別々に収納される出発成分、具体的には、モノマー液とセメント粉末を含有する粉末とを互いに混合することと、その後、そのように混合された骨セメントドウを装置から排出することが可能になるという驚くべき発見に基づく。本明細書では、装置の使用は最大限に単純化される。さらに、粉末が収容されるカートリッジの内部を閉止するために使用される閉止システムも、同じ推進力を用いて開口することが可能である。全てのプロセスステップが、特に好ましくは、たった1回の連続した力の適用によって行われる。粉末に分散される親水性添加剤によって、および/または圧縮された粉末の使用によって、モノマー液は、小さい面積にだけ粉末に押し込まれる場合にも、膨張する骨セメントドウが粉末にモノマー液をさらに分散させるのを妨害することなく、粉末に良好に分散することが可能である。
【0119】
本発明は、知られているような手動操作式の押出し器具のラムが直線的に前方に移動することを利用し、そうすることで、ラムが直線的に前方に移動するときの圧縮力を連続して適用することによって、モノマー液用の容器がまず開口され、その後容器が圧縮され、圧縮されることでモノマー液が容器を出て、締め固められたセメント粉末に押し込まれ、押し込まれたモノマー液によって、セメント粉末粒子間に設けられる空気が置き換えられ、セメント粉末粒子がモノマー液によってぬれるとセメントドウが生成されるという考えに基づく。そのための必須条件は、モノマー液によって非常に効果的にぬれると共に毛管効果によって前記液体を吸収できるように設計されたセメント粉末の使用である。
【0120】
本装置の考えは、セメント粉末を含有する粉末のリザーバの後ろに少なくともモノマー液用の容器を配置し、そうすることで、その容器の後ろには、軸に沿って移動可能な搬送ピストンが配置され、容器とセメント粉末用リザーバとの間には、液体および気体に対してのみ透過性である排出ピストンが配置されることにある。セメント粉末のリザーバの前方には、気体および液体に対してのみ透過性である軸に沿って移動可能な殺菌ピストン(粉末は透過しないが気体は透過するフィルタを有する可動壁)を配置することができる。殺菌ピストンは排出チューブに連結される。
【0121】
排出開口部が、好ましくは、第1の実施形態ではストッパによって閉止され、そのストッパは、軸に沿って移動不能であり、リブによってカートリッジに連結される。径方向のリブはリングに接続されており、リングは、カートリッジヘッドとカートリッジとの間に締め付けることができるか、またはその代わりに、カートリッジにくさび留めすることができる。本明細書で、リングの外径はカートリッジの内径よりもわずかに大きい。セメント粉末がモノマー液と混合されると、排出ピストンが直線的に前方に移動することによって、セメントドウは殺菌ピストンまたは壁をカートリッジヘッドの方向にずらす。このように、排出チューブはストッパから取り外され、排出開口部は解除され、形成されたセメントドウを開口された排出チューブを通して外に向かって押圧することが可能である。
【0122】
代替の実施形態では、排出チューブは、排出チューブ内に配置される、軸に沿って変位可能なストッパによって閉止される。排出チューブ内の軸に沿って変位可能なピストンは、壁と一緒になって、軸に沿った圧力によって開口されることになるカートリッジの閉止システムを形成する。つまり、セメント粉末とのモノマー液の混合の後に生成されるセメントドウは、ストッパを排出チューブから外に押す。このように、排出チューブは空になり、セメントドウは、搬送ピストンおよび排出ピストンの軸方向の移動によって放出することができ、施用することができる。
【0123】
本発明によれば、気体透過性であるが粉末粒子は透過しない通気孔プラスチック層が、殺菌ピストンまたは壁に配置され、殺菌ピストンの上側を殺菌ピストンの下側に気体透過するように接続し、プラスチック層は好ましくはプレートとして形成される。気体のエチレンオキシドは、殺菌のためにカートリッジヘッドの供給孔を通り抜けて殺菌ピストンに到達でき、その後、通気孔プラスチック層を通ってカートリッジの内部の前方部分に入ることができ、セメント粉末を殺菌することができる。粒子は透過しない殺菌ピストンの通気孔プラスチック層によって、または壁もしくはシールによって、粉末の粒子は、装置を殺菌および収納する間に、さらに輸送する間にも、内部の前方部分から出口を通り抜けることが防止される。殺菌が行われると、エチレンオキシドは、脱気中に、内部から殺菌ピストンの通気孔プラスチック層または壁もしくはシールを通って、当てはまる場合はさらにカートリッジヘッドの供給孔を通って、周囲環境に出ることができる。
【0124】
本発明による装置の特別な利点は、単純化された取扱いにある。ユーザは、第1のステップで、粉末およびモノマー液で満たされた装置を手動の押出し器具に連結し、第2のステップで、セメントドウが排出チューブから出るまで、カートリッジヘッドを上に向けて押出し器具を起動するだけでよい。その後、セメントドウは、以前の従来の混合システムの場合と同様に押出し器具をさらに起動することで押し出すことができる。混合システムまたは装置は、すぐに使えるシステムとして適切なセメント粉末を用いて使用できるフルプリパック式混合システムである。
【0125】
以前のフルプリパック式混合システムとは異なり、複雑な組立てステップおよび混合要素が固定された混合ロッドを用いる手作業の混合が必要なくなる。したがって、不正確な組立てステップおよび不正確な手作業による混合によって起こるユーザエラーは、その設計の結果なくなる。
【0126】
モノマー液用の容器を開口するための少なくとも1つの開口補助具が、排出ピストンのうちのカートリッジベースを向く側に配置され、開口補助具は、好ましくは、鋭利なブレードまたはピンから構成される場合が有利である。したがって、モノマー液容器の開口が容易になる。
【0127】
ポリメチルメタクリレート骨セメントを収納、混合、および排出する例示的な装置は、
a)カートリッジを押出し器具に連結するための、カートリッジ端部に配置される連結要素を有する、中空筒状カートリッジと、
b)中空筒状カートリッジを閉止するカートリッジヘッドであって、カートリッジヘッドには排出チューブを受けるための供給孔が配置され、少なくとも1つの供給孔が、カートリッジヘッドの外側をカートリッジヘッドの内側に気体透過性になるように接続する、カートリッジヘッドと、
c)排出チューブと、
d)カートリッジヘッドにおいて軸に沿って移動可能であり、気体透過性であるが粉末粒子は透過しない、(壁の形態の)殺菌ピストンであって、殺菌ピストンまたは壁は、上側で排出チューブに液体透過性になるように接続される供給孔を有する、殺菌ピストンと、
e)軸方向の圧力の適用によって開口されることになり、セメント粉末粒子のために排出チューブを閉止する、排出チューブの閉止具と、
f)カートリッジ内に軸に沿って移動可能なように配置され、液体不透過になるようにカートリッジベースを閉止する、搬送ピストンと、
g)カートリッジにおいて殺菌ピストンと搬送ピストンとの間に軸に沿って移動可能なように配置される、排出ピストンであって、2つの端部面の間に液体透過性であり粉末粒子は透過しない供給孔を少なくとも1つ有する、排出ピストンと、
h)少なくとも1つのモノマー液容器と、
i)カートリッジの内壁、搬送ピストン、および排出ピストンによって範囲が定められる、モノマー液容器を収納するための後方の空所と、
j)セメント粉末を含有する粉末と、
k)粉末が配置される前方の空所であって、カートリッジの内壁、殺菌ピストン、および排出ピストンによって範囲が定められる、前方の空所と、
から構成される。
【0128】
本明細書では、殺菌ピストンの供給孔は、本発明の意味では壁の排出開口部を形成する。
【0129】
一例として、この種の装置を用いることで、骨セメントドウを形成するために粉末をモノマー液と混合する本発明による方法を、以下の連続するステップ、
a)押出し器具をカートリッジの連結要素に連結するステップと、
b)押出し器具のラムを進めるステップと、
c)搬送ピストンをカートリッジヘッドの方向に変位するステップと、
d)モノマー液用の少なくとも1つの容器を搬送ピストンと排出ピストンとの間で圧縮するステップと、
e)容器を壊して開口するステップと、
f)容器を圧縮して後方の空所から空気を押し出し、搬送ピストンによってモノマー液を押し出して、排出ピストンの少なくとも1つの供給孔を通して前方の空所の粉末に押し込むステップと、
g)モノマー液を粉末全体に広げ、同時に、粉末粒子間の隙間の空気を置き換えるステップと、
h)セメント粉末粒子をモノマー液でぬらすステップと、
i)粉末からの空気が殺菌ピストンまたは壁を通って出ることを可能にするステップと、
j)モノマー液によってセメント粉末粒子を膨張し、反応開始剤との促進剤の反応によってモノマー液のラジカル重合を開始するステップと、
k)セメント粉末およびモノマー液からセメントドウを形成するステップと、
l)軸に沿ってカートリッジヘッドの方向に押圧されるセメントドウによって軸方向の圧力を適用することによって、排出開口部において閉止具を開口するステップと、
m)搬送ピストンおよび排出ピストンが前方に移動することによって、排出チューブを通してセメントドウを押し出すステップと、
によって実行することができる。
【0130】
添加剤の吸収能力を測定するために、薬学分野で知られるエンスリン装置(Enslin apparatus)(C.‐D.Herzfeldt、J.Kreuter(Hrsg.):Grundlagen der Arzneiformenlehre.Galenik 2、Springer Verlag Berlin Heidelberg New York、1999年、p.79〜80)を単純化した。Schott社の1D3ガラスフィルタるつぼを使用した。まず、ガラスフィルタるつぼの風袋重量を測定した。次いで、添加剤3,000gと1,000gを計量して別々のガラスフィルタるつぼに入れた。ガラスフィルタるつぼはそれぞれ吸引フラスコに嵌めた。添加剤を十分に覆うようにメチルメタクリレート20mlを添加剤に加えた。添加剤に吸収されなかったメチルメタクリレートがガラスフィルタるつぼを通って下に流れた。15分後に、添加剤および吸収されたメチルメタクリレートを含むガラスフィルタるつぼを計量し、吸収されたメチルメタクリレートの質量を測定した。測定はそれぞれ3回繰り返し、平均値を判定した。添加剤を加えないメチルメタクリレートに関してガラスフィルタるつぼを参照として同じように処理した。
【0131】
例1:添加剤の吸収能力の測定
以下の開始材料を用いて添加剤の吸収能力を測定した。
メチルメタクリレート(Sigma‐Aldrich社)
デンプン(Sigma‐Aldrich社、ふるい分級<100μm)
セルロース(Sigma‐Aldrich社、ふるい分級<100μm)
Aerosil(登録商標)380(Evonik社、粒子サイズ約7nm)
【0132】
デンプン、セルロース、およびAerosil(登録商標)380から構成される添加剤の吸収能力を測定するために、Schott Mainz社の1D3ガラスフィルタるつぼを使用した。まず、ガラスフィルタるつぼの風袋重量を測定した。次いで、添加剤3,000g、Aerosil(登録商標)の場合は添加剤1,000gを計量してガラスフィルタるつぼに入れた。計量した添加剤を入れたガラスフィルタるつぼを吸引フラスコに嵌めた。添加剤を十分に覆うようにメチルメタクリレート10mlを添加剤に加えた。添加剤によって吸収されなかったメチルメタクリレートはガラスフィルタるつぼを通って下に流れた。15分後に、添加剤および吸収されたメチルメタクリレートを含むガラスフィルタるつぼを計量し、吸収されたメチルメタクリレートの質量を測定した。測定は各事例について3回繰り返し、平均値を判定した。添加剤を加えないメチルメタクリレートに関してガラスフィルタるつぼを参照として同じように処理した。
【0133】
【表1】
【0134】
本発明の他の例示的実施形態を、概略的に示す21の図に基づいて、本発明を限定することなく本明細書で以下に説明する。