特許第6649370号(P6649370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン・プラコ・エスアーエスの特許一覧

特許6649370フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法
<>
  • 特許6649370-フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法 図000019
  • 特許6649370-フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法 図000020
  • 特許6649370-フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法 図000021
  • 特許6649370-フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法 図000022
  • 特許6649370-フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649370
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】フォームを調製する装置、フォームを調製する方法及び石膏製品を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/38 20060101AFI20200210BHJP
   C04B 38/10 20060101ALI20200210BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20200210BHJP
   B01F 3/04 20060101ALN20200210BHJP
   B01F 5/06 20060101ALN20200210BHJP
   C04B 103/40 20060101ALN20200210BHJP
   C04B 103/48 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   B28C5/38
   C04B38/10 G
   C04B28/14
   !B01F3/04 E
   !B01F5/06
   C04B103:40
   C04B103:48
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-516199(P2017-516199)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公表番号】特表2017-519635(P2017-519635A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】EP2015062522
(87)【国際公開番号】WO2015185700
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】14290163.6
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516362931
【氏名又は名称】サン−ゴバン・プラコ・エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】SAINT−GOBAIN PLACO SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】ジャッフェル、ハモウダ
(72)【発明者】
【氏名】モーラ、リシャール
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0045481(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0214887(US,A1)
【文献】 特開2002−029863(JP,A)
【文献】 実開昭54−035479(JP,U)
【文献】 特開2002−326882(JP,A)
【文献】 実開昭51−105059(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3188601(JP,U)
【文献】 特開平11−157957(JP,A)
【文献】 特開平05−043286(JP,A)
【文献】 特開平06−040780(JP,A)
【文献】 特開2004−083339(JP,A)
【文献】 特開2008−074659(JP,A)
【文献】 特表2011−508720(JP,A)
【文献】 英国特許第00466574(GB,B)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0193245(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0013062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 3/04
B01F 5/06
B28C 5/38
C04B 28/14
C04B 38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスフィード及び界面活性剤フィードを受け取るための入口と、フォームの抜き出しを可能にするための出口とを有する導管を含む、セメント系スラリーに添合するためのフォームを調製する装置であって、
前記導管は該導管に沿った流体の流れに対する部分的障壁を提供する多孔質プラグを格納し、該多孔質プラグは規則的な配列で充填される複数の粒子を含み、該粒子はそれらの間に延在する細孔の3次元網目構造を画成し、
前記装置は、前記多孔質プラグと前記導管との間に位置する弾性部品を含む、フォームを調する装置。
【請求項2】
前記弾性部品は、前記導管の径方向内側に配設されるスリーブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スリーブが前記粒子のプラグを押圧するように、前記スリーブに対して該スリーブの径方向内向きに圧力を加える手段をさらに含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記出口はシーブを含み、該シーブは前記多孔質プラグの下流端に向けられる突起の配列を含み、該突起がそれらの間に対応する開口部の配列を提供し、それにより、フォームが前記多孔質プラグを抜け出ることを可能にするように配置される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記突起は半球状である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記突起の直径は、前記粒子の直径の1〜4倍である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記出口は前記導管の下流に向かって縮径し、及び/又は前記入口は前記導管の下流に向かって外側に広がっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
石膏スラリーに添合するためのフォームを調製する方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置を提供するステップと;
第1のフィード及び第2のフィードを前記導管の前記入口から前記導管に供給するステップであって、前記第1のフィードがガスを含むと共に前記第2のフィードが界面活性剤を含む、ステップと;
前記第1、第2のフィードを前記複数の粒子を通して送り込んでフォームを形成するステップと
を含む、フォームを調製する方法。
【請求項9】
前記弾性部材が請求項2に記載の前記導管の径方向内側に配設されるスリーブを含む場合には、前記スリーブが前記ビーズのプラグを押圧するように、前記スリーブに対して該スリーブの径方向内向きに圧力を加えるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧力は3〜9バールの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記導管の前記出口におけるガス圧は、1〜3バールの範囲にある、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フォームに安定化添加剤を加えるステップをさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フォームを石膏スラリーなどの水硬結合剤スラリーに添合するさらなるステップを含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
石膏スタッコスラリーを提供するステップと、該スラリーに請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法を用いてフォームを添合するステップとを含む、石膏製品を調製する方法であって、
前記フォームの気泡径分散度指数は1.4未満であり、かつ前記フォームの平均気泡径は少なくとも100μmである、石膏製品を調する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォームの作製、特に石膏ボードの製造に使用される水性フォームの作製のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏(硫酸カルシウム)は、天然に見られるが、合成的に誘導することもできる鉱物である。石膏は、硫酸カルシウム化合物の水和度に応じて、幾つもの形態で存在することができる。すなわち、石膏は、例えば二水和物形態(CaSO・2HO)、半水和物形態(スタッコとしても知られる)、又は無水石膏形態として存在することができる。石膏は、脱水又は再水和によってその種々の形態間で変化することができる。
【0003】
石膏は、その特性により、工業用及び建築用プラスター、並びに他の建材、例えば石膏壁ボードにおける使用に極めて好適となる。石膏は豊富にあり、かつ概して安価な原材料であり、脱水と再水和との連続的な工程によって、キャストし、成形し、又は他の方法で形成して有用な形状にすることができる。例えば、プラスターボード又はドライウォールとしても知られる石膏壁ボードは、硬化した石膏芯材を表面紙の間に挟み込んだものとして形成される。
【0004】
石膏は、概して、プラスターとしての使用向けに、一般に大気圧下において比較的低温(約120〜170℃など)で、粉砕及びか焼することによって調製される。これにより、部分的に脱水した石膏、典型的にはβ結晶形態の半水和物が生じる。このβ半水和物は、それを水と混合して水性スタッコスラリー、ペースト又は分散体を形成し、次にそのスラリーを水性媒体からの再結晶化によって硬化させることにより、建築又は建設材料として用いることができる。
【0005】
石膏製品の製造において、フォームを使用することは公知である。フォームによって提供される空気体積分が石膏製品の重量の低減を促進し、製品の輸送及び取り扱いにおける費用効率が高まる。
【0006】
フォームは、通常、エアフィードと界面活性剤フィードとが供給されるフォームジェネレータによって作製される。典型的なフォームジェネレータは、水と界面活性剤発泡剤とを徹底的に混合してフォームを作製するための内部回転機構を含む。幾つかの場合には、回転ブレードが混合チャンバを備え、フォーム気泡の核形成を可能にする。そのようなフォームジェネレータは、一般的な動的フォームジェネレータとして公知である。米国特許4057443号には、典型的な動的フォームジェネレータが記載されている。これは本明細書によって参照により援用される。
【0007】
他のフォームジェネレータは、透過性多孔質媒体、例えばフリットガラス又はセラミックの充填ビーズが制御された孔隙で詰め込まれたチューブを含む。界面活性剤発泡剤と空気とを同時にチューブに入れることにより、フォームが作製される。この場合、作製されたフォームの構造が、チューブに加える背圧を調節することによって制御される。そのようなフォームジェネレータは、静的フォームジェネレータとして公知である。
【0008】
プラスターボードの生産に使用される標準的なフォームは、通常、動力型/高剪断フォームジェネレータを使用して作製される。この技術を用いると、発泡剤の化学的不安定性を利用することによって、最終製品における発泡形態及び細孔径分布の大まかな操作を実現することができる。そのような不安定性を得るための典型的な方法は、異なる化学組成の種々の発泡剤を共にブレンドすることによる。その場合、フォームは一般に「活性」と呼ばれる。それにより、小さい気泡(50μm〜100μm)が発生し、それらの気泡が次第に合体して大きい気泡と小さい気泡との多分散分布を生じる。この種の急速な合体動態をもたらすことができる典型的な活性発泡剤は、GEO SPeciality Chemicalsから商標名HYONIC(登録商標)PFM(8、10、15及び33)で供給されているものである。これらの発泡剤の典型的な化学組成は、米国特許5714001号に記載されている。これは本明細書によって参照により援用される。
【0009】
しかしながら、フォーム気泡が過度に大きいと、石膏ボード原紙との接着が不良となり(一般に「ブリスタリング」として知られる)、機械的性能が低下し、さらに製品の外観が許容できないものとなることに起因して、生産ラインが不安定になりえる。
【0010】
意外にも、単分散気泡径分布を有するフォームから調製される石膏製品は(多分散フォームよりむしろ)、重量比強度がより良好となりえることが分かっている。
【0011】
「分散度」という用語は高分子科学で知られ、そこでは分散度は、混合物中の分子径又は粒子径の不均一性を表すために用いられる。
【0012】
物体の集まりは、それらの物体が実質的に同じサイズ、形状、又は質量を有する場合に「単分散」として知られる。一貫性のないサイズ、形状及び/又は質量を有する物体の集合は、「多分散」として知られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、最も一般的には、本発明は、軽量建築材料における単分散フォームの使用、及び/又は、そのような単分散水性フォームを調製するための方法及び装置に関する。
【0014】
第1の態様において、本発明は石膏製品を調製する方法を提供することができ、この方法は、石膏スタッコスラリーを提供するステップと、スラリーにフォームを添合するステップとを含み、ここでフォームの気泡径分散度指数は1.4未満である。
【0015】
気泡径分散度指数(bubble size dispersity index)
【数1】
は、面積加重平均気泡径(area-weighted average bubble size)
【数2】
の、数平均気泡径(number average bubble size)
【数3】
に対する比として計算される。
【0016】
従って、
【数4】
である。
【0017】
好ましくは、気泡径分散度は1.2未満である。
【0018】
通常、フォーム気泡径分布の定量化は、2次元画像解析法に頼る。この種の技法を2進形式の画像に適用すると、気泡直径に対する累積面積の曲線及び気泡直径に対する累積個数の曲線を得ることができる。これらの曲線の変曲点から、重量平均気泡径及び数平均気泡径がそれぞれ求まる。
【0019】
フォームは、典型的にはミキサー、例えば高剪断ミキサーにおいて石膏スタッコスラリーに添合される。当該技術分野において周知のとおり、続いてスラリーはミキサーから抜き取られ、硬化を生じさせて乾燥させる。このスラリーから形成される石膏製品の例は、石膏プラスターボードである。好ましくは、プラスターボードは、密度が800kg/m未満、好ましくは560kg/m未満の軽量製品である。
【0020】
フォームを使用して調製される石膏製品は、フォームが有する気泡径が大きいほど、強度重量比が改善されることが分かっている。従って、フォームは、少なくとも100μmの平均気泡径を有することが好ましい。また、石膏にフォームを添合することによって生じる細孔が少なくとも300μm、より好ましくは少なくとも400μmの平均直径を有することが好ましい。
【0021】
フォームは、ガス及び界面活性剤フィードを、導管に沿って内部3次元多孔質網目構造を含むプラグに通過させることによって作製される。プラグは、規則的な配列で配置された複数の粒子、例えば球状ビーズによって構成される。
【0022】
3次元多孔質網目構造を設けることは、フォームがプラグを通過するときにフォームが極めて多くの回数にわたり精製されることを確実にするのを促進し、従ってフォーム気泡径の高度な均一性の実現を促進する。これは、公知の静的フォーム生成装置(米国特許第6,422,734号に開示されるもの等)と比べて著しい改善に相当するものである。公知の装置は、パイプの長径に沿って配設された複数の有孔ディスクを含む。そのような構成は、3次元多孔質網目構造の使用によって可能となりえる多数の精製サイクル回数を提供することができない。
【0023】
従って、第2の態様において、本発明は、フォームを調製する装置を提供することができる。この装置は、ガスフィード及び界面活性剤フィードを受け取るための入口と、フォームの抜き出しを可能にするための出口とを有する導管を含む。導管は、当該導管に沿った流体の流れに対する部分的障壁を提供するプラグを格納し、プラグは、規則的な配列で充填される複数の粒子を含む。これらの粒子は、それらの間に延在する細孔の3次元網目構造を画成する。ここで、この装置はプラグと導管との間に位置する弾性部品を含む。
【0024】
典型的には、プラグは、実質的に同一の直径を有する複数の球状粒子を含む。
【0025】
球状粒子は、概して規則的に充填される傾向を自然に有し、例えば各球状粒子がその最近接粒子として12個の他の球状粒子を有するような結晶状の配列に充填される。事実上、球状粒子は、例えば六方最密充填構造又は立方最密充填構造の金属における原子と類似した方式で共に充填される。そのような規則的な配列が局所的な不規則性を含むこともあり、例えば異なる配向の個々の部分配列がぶつかり合うが、しかしこれらの不規則性は粒子の全体的な配置のごく一部に相当するに過ぎない。
【0026】
この配置により、球状粒子間の空隙はサイズのばらつきが少なくなる。従って、プラグは、十分に定義付けられた気泡径を有する概して単分散フォームの形成を促進する傾向を有する。
【0027】
石膏スラリーに添合するフォームの気泡径が大きいほど、得られる石膏製品の重量比強度が改善されることが分かっている。従って、ビーズの直径は0.5mmより大きく、好ましくは1mmより大きく、かつ3mmより小さいことが好ましい。
【0028】
粒子充填理論を参照すると、球状粒子の規則的配置は結晶学的最密充填モデルによって記述することができ、ここでは4つの同一の粒子の充填によって残る最小間隙を以下の関係によって定量化することができる:
=0.225D
ここで、D:粒子の直径であり、D:観念上の四面体の角に配置された4つの粒子間の間隙に嵌まる概念上の球の直径である。例えば、1mm径の球状粒子の規則的な配列において、求められる最小間隙は225μmである。
【0029】
プラグの外側面では、導管の内表面によって課される制約に起因して、粒子の充填は規則性が低くなりやすいことが分かっている。これらの「エッジ効果」は、プラグと導管との間に位置する弾性部品を設けることによって軽減することができる。この弾性部品は、粒子の規則的配置の乱れが低減されるように、プラグの外側の粒子に適合する役割を果たす。さらに、弾性部品はプラグに圧縮力を加え、ひいては粒子の規則的な充填をさらに促進し、粒子配置に間隙が生じる可能性を低減する役割を果たすことができる。
【0030】
弾性部品は、導管の内部に位置するスリーブであってもよい。
【0031】
好ましくは、本装置は、スリーブに対してその径方向内向きに圧力を加える手段を含む。これは、スリーブがプラグを押圧することを確実にするのを促進し、ひいてはプラグの表面における過度に大きい空隙の発生の低減をさらに促進する。この場合、導管は、好ましくは空気圧ピンチ弁を含むことができる。市販のピンチ弁の典型的なモデルは、AKO Innovations SAS, 5Rue Gilardoni,68210,Retzwiller,Franceによって製造されるものである。
【0032】
好ましくは、粒子をプラグ内に保持するため、導管の出口にシーブが位置決めされる。しかしながら、粒子がシーブの開口部に詰まり、ひいてはフォームが導管から抜け出るのを妨げることがありえる。従って、好ましい実施形態では、シーブはプラグの下流端に向けられる突起の配列を含む。これらの突起は、それらの間に対応する開口部の配列を提供し、それにより、フォームがプラグを抜け出ることを可能にするように配置される。このように提供されるシーブの3次元表面は、粒子によるシーブ開口部の詰まりの低減を促進する。
【0033】
典型的には、突起はプラグ方向内側に縮径している。例えば、突起は半球形であってもよい。この場合、半球状突起は、典型的には2次元最密充填配列で配置される。
【0034】
好ましくは、半球状突起の直径はプラグ粒子の直径の1〜4倍である。
【0035】
典型的には、入口は、導管の下流に向かって外側に広がっている。典型的には、出口は、導管の下流に向かって縮径している。従って、入口及び出口の一方又は両方が、例えば円錐形であってもよい。これは概して、導管に入るガス及び界面活性剤の流れを改善し、及び/又は導管から出るフォームの流れの改善を促進する。
【0036】
特定の実施形態において、本装置は、フォームに発泡添加剤を導入するためのダクトを含むことができる。
【0037】
第3の態様において、本発明はフォームを調製する方法を提供することができる。この方法は:
本発明の第2の態様に係る装置を提供するステップと;
第1のフィード及び第2のフィードを導管入口から導管に供給するステップであって、第1のフィードはガスを含み、第2のフィードは界面活性剤溶液を含む、ステップと;
第1、第2のフィードをプラグを通して送り込み、フォームを形成するステップと
を含む。
【0038】
典型的には、本装置は、導管の径方向内側に配設されたスリーブを含む。また、本方法は、スリーブが粒子のプラグを押圧するように、スリーブに対してその径方向内向きに圧力を加えるさらなるステップを含む。この場合、圧力は典型的には3バールより高い。一般的には、圧力は9バール未満である。
【0039】
一般に、本装置は導管が直立するように位置決めされる。この場合、入口は典型的には出口より上に位置する。これにより、導管内での流れの分布を良好にすることができ、重力に起因する任意の有害な影響を低減することができる。
【0040】
一般に、導管の出口におけるガス圧は1バールより高い。典型的には、圧力は8バール未満、好ましくは3バール未満である。
【0041】
一般に、本方法は、フォームに安定化添加剤を加えるステップを含む。例えば、安定化添加剤は、ゼラチン及び穀粉様ペースト(例えばデンプン糊)の群から選択されるコロイド剤;レオロジー改質剤;又は増粘剤(増粘剤の好ましい例は、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸塩、セルロースエーテル及びデンプンエーテルである)とすることができる。
【0042】
典型的には、添加剤は、フォームが導管を出た後にフォームに加えられる。
【0043】
好ましくは、本方法は、フォームを水硬結合剤スラリー(例えば石膏スタッコスラリー)に添合するさらなるステップを含む。このスラリーは、当該技術分野において周知のとおり付形し、硬化及び乾燥させることができる。
【0044】
第4の態様において、本発明は、セメント系製品を提供することができる。ここで、コア多孔度の分散度は1.4未満である。
【0045】
細孔径分散度指数(pore size dispersity index)
【数5】
は、面積加重平均細孔径(area-weighted average pore size)
【数6】
の、数平均細孔径(number average pore size)
【数7】
に対する比として計算される。
【0046】
従って、
【数8】
である。
【0047】
好ましくは、細孔径分散度は1.2未満である。
【0048】
コア多孔度とは、セメント系製品の内部領域(ここでは細孔径及び分布は実質的に規則的である)の多孔度に関する。コア多孔度では、セメント系製品の表面領域の多孔度を除外する。事実上、コア多孔度は、セメント系製品の硬化時の表面から少なくとも5mmの深さで計測される。
【0049】
好ましくは、セメント系製品のコアにおける平均細孔径は少なくとも300μm、より好ましくは少なくとも400μmである。
【0050】
典型的には、セメント系製品は石膏製品である。
【0051】
ここで、以下の図を参照して本発明を例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第2の態様のある実施形態に係る導管の概略断面図である。
図2】(2a)は、図1の実施形態のシーブの1つの概略平面図である。(2b)は、(2a)のシーブの概略断面図である。
図3】(3a)は、図1の実施形態のプラグ及びスリーブの概略断面図である。(3b)は、本発明の一部を成すものでない説明のための例に係る、剛性スリーブ内に保持される粒子のプラグの断面図である。
図4】比較例1及び実施例1により作製されたフォームに関して累積面積及び累積個数で見たときの気泡径分布を示すグラフである。
図5】比較例1及び実施例1により作製された石膏供試体に関して累積面積及び累積個数で見たときの細孔径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1を参照すると、空気圧ピンチ弁10が流体の流れ用のチャネルを提供する。ピンチ弁は、剛性アウターシェル12と可撓性インナースリーブ14とを含む。剛性アウターシェル12及び可撓性インナースリーブ14は各々がほぼシリンダ形であり、可撓性インナースリーブ14は剛性アウターシェル12の径方向内側に設けられる。
【0054】
アウターシェル12は、それぞれの端部にボルト締めされたフランジ13a、bを有する。インナースリーブ14は、それぞれの端部において、アウターシェル12と各フランジ13a、bとの間に固定される。
【0055】
インナースリーブ14は、エラストマー材料、例えばゴムで形成されてもよい。
【0056】
アウターシェル12は、インナースリーブの各端部においてインナースリーブ14に接触しているが、アウターシェル12の中央部は、インナースリーブ14から突き出て位置する。従って、アウターシェル12とインナースリーブ14との間にほぼ環形状の間隙16がもたらされる。
【0057】
アウターシェル12は、環形状の間隙16に空気を入り込ませるための空気入口12aを有する。
【0058】
インナースリーブ14は、3次元最密充填配列で配置された複数の球状ビーズを格納してプラグ18を形成している。例えば、ビーズは、3次元六方最密充填配列、3次元立方最密充填配列、又はこれらの2つの充填構成の混合で配置されることができる。局所的な充填不規則性が、例えば異なる配向を有する部分配列がぶつかり合うところで生じるかもしれないが、全体としては、ビーズの充填は概して規則的である。
【0059】
ビーズ直径は、一般に1〜5mmの範囲、好ましくは1〜3mmの範囲である。
【0060】
複数のビーズは、プラグ18の上流端及びプラグ18の下流端にそれぞれ設けられる2つの支持シーブ20a、bによって、ピンチ弁10内に支持される。
【0061】
図2a及び図2bを参照すると、各支持シーブ20は、片側に配置された半球状突起23を有するベースディスク21を有する。半球状突起は最密充填配列で配置され、シーブの中央領域では各突起が6つの他の突起と接触する(エッジ効果に起因して、シーブの縁部に近い突起が各々接触する他の突起はそれより少ない)。突起の間の間隙は、ベースディスクの厚さにわたって延在する開口部を画成する。
【0062】
半球状突起は、ビーズがベースディスクの開口部に詰まることがないよう、球状ビーズをベースディスク21から離して保持する役割を果たす。典型的には、半球状突起はビーズの半径の1〜4倍の半径を有する。
【0063】
ピンチ弁の上流端には、入口導管22aが設けられる。入口導管22aは、ピンチ弁の下流に向かって外側に広がっている。
【0064】
ピンチ弁の下流端には、出口導管22bが設けられる。出口導管は、ピンチ弁の下流に向かって縮径している。
【0065】
使用時には、環形状の間隙16に空気が供給され、間隙内の空気圧が例えば約6バールに増加する。圧力の増加によってインナースリーブ14が径方向内向きに変形し、プラグ18の表面を押圧する。これは、プラグとインナースリーブとの間の空いたスペースの低減を促進し、ビーズの充填規則性が低下するなどのエッジ効果が低減されることを確実にするのを促進する。従って、インナースリーブを設けることは、プラグ全体にわたるビーズの規則的な充填を促進することを助ける。
【0066】
プラグ18の周りに弾性スリーブを設け、それを使用してプラグに圧縮力を伝える効果を図3に示す。図3bは、粒子のプラグ18’が剛性スリーブ14’に保持される比較例を示している。剛性スリーブが粒子に適合できないことによって生じる充填不規則性に起因して、プラグの縁部に拡大した空隙が存在する。さらに、粒子の配列に間隙があることに起因して、プラグ本体に欠陥が存在する。図3aは、いかにして弾性スリーブ14がプラグ18の縁部で粒子に適合することを促進しながら、プラグに圧縮力が加わることがプラグ内の欠陥の低減に役立つかを示している。
【0067】
エアフィード28と界面活性剤溶液フィード30が入口導管22aに供給され、圧力下で支持シーブ20a、プラグ18、及び支持シーブ20bを通して送り込まれると、フォームフィード32がもたらされ、フォームフィード32は出口22bからピンチ弁10を出る。典型的には、出口におけるフォーム圧力は約2バールである。
【0068】
ピンチ弁10は、アウターシェル12及びインナースリーブ14が直立し、かつ入口導管22aが出口導管22bより上となるように位置決めされる。
【0069】
以下の実施例は、あくまでも例示として提供される。
【0070】
・比較例1
ロータ/ステータ部品を備えたフォームジェネレータ、すなわち動的フォームジェネレータに空気及び発泡剤溶液の一定の流れを送り込むことにより、フォームを生成した。フォーム生成条件は以下のとおり設定した。
− フォームジェネレータスピード:約2900rpm
− ロータ/ステータ間隙:約0.5mm
− 発泡剤:GEO Speciality ChemicalsのHyonic PFM10発泡剤(これは不安定発泡剤である)
− 発泡剤濃度:約0.5wt%
− フォーム密度:約91g/l
【0071】
・実施例1
図1に示すタイプの静的フォーム生成装置に空気及び発泡剤溶液を通過させることにより、フォームを生成した。この場合、フォーム生成条件は以下のとおり設定した。
− 充填粒子:直径約1mmの球状粒子
− フォームジェネレータ逆圧:約2バール
− ピンチ弁内圧:約6バール
− 発泡剤:Stepan CompanyのSTEOL DES32i(これは、C8〜C12の範囲の平均炭素鎖長を有するアルキルエーテル硫酸塩ベースの発泡剤である)
− 発泡剤濃度:約1wt%
− フォーム密度:約91g/l
【0072】
・発泡スラリー調製
次に、予備生成したフォームをプレミックス石膏スタッコスラリーと種々の比率で穏やかにブレンドし、種々の密度レベル(0.5〜最大0.8g/cm)を有する複数の石膏供試体を作製した。典型的なスラリー組成を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
・結果:石膏供試体の発泡形態及び微細構造の定量分析
光学顕微鏡機器とImageJ(登録商標)ソフトウェアを使用して、石膏供試体の発泡形態及びコア構造を分析した。
【0075】
図3(a)の曲線1と2は、それぞれ比較例1と実施例1で生成されたフォーム気泡の累積体積分布を示す。曲線1’と2’は、累積体積分布のそれぞれの一次導関数を示す。比較例1と実施例1の体積平均気泡径(volume average bubble size)
【数9】
は、それぞれ曲線1’と曲線2’のピークの位置によって定義される。
【0076】
同様に、図3(b)の曲線3と4は、それぞれ比較例1と実施例1で生成されたフォーム気泡の累積個数分布を示す。曲線3’と4’は、累積個数分布のそれぞれの一次導関数を示す。比較例1と実施例1の数平均気泡径(number average bubble size)
【数10】
は、それぞれ曲線3’と曲線4’のピークの位置によって定義される。
【0077】
気泡径分散度(bubble size dispersity)
【数11】
は、数平均気泡径に対する体積平均気泡径の比として計算される。
【0078】
図4(a)の曲線5と6は、それぞれ比較例1と実施例1で調製した石膏供試体のコアに存在する細孔の累積体積分布を示す。曲線5’と6’は、累積体積分布のそれぞれの一次導関数を示す。比較例1と実施例1の石膏供試体の体積平均細孔径(volume average core size)
【数12】
は、それぞれ曲線5’と曲線6’のピークの位置によって定義される。
【0079】
同様に、図4(b)の曲線7と8は、それぞれ比較例1と実施例1で調製した石膏供試体のコアに存在する細孔の累積個数分布を示す。曲線7’と8’は、累積個数分布のそれぞれの一次導関数を示す。比較例1と実施例1の石膏供試体の数平均細孔径(number average pore size)
【数13】
は、それぞれ曲線7’と曲線8’のピークの位置によって定義される。
【0080】
細孔径分散度(pore size dispersity)
【数14】
は、数平均細孔径に対する体積平均細孔径の比として計算される。
【0081】
【表2】
【0082】
・結果:機械的試験
比較例1と実施例1に関する押し込み強度の結果を表3に示す。この試験は、約8mm直径の球形ヘッド圧子を使用した押し込み強度の計測からなる。押し込み強度(剛性とも呼ばれる)は、変形(mm)に対する歪み(N)に関する曲線の傾きに対応する。
【0083】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5