特許第6649372号(P6649372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649372シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジおよび製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649372
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20200210BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 43/12 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   G01R33/09
   G01R33/02 V
   H01L43/08 Z
   H01L43/12
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-516713(P2017-516713)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公表番号】特表2017-534855(P2017-534855A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】CN2015090721
(87)【国際公開番号】WO2016045614
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年9月3日
(31)【優先権主張番号】201410508055.3
(32)【優先日】2014年9月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲザ
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ、ジミン
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/089978(WO,A1)
【文献】 特表2013−522645(JP,A)
【文献】 特表2013−506141(JP,A)
【文献】 特表2001−516031(JP,A)
【文献】 特開2004−163419(JP,A)
【文献】 特開2012−063232(JP,A)
【文献】 特開2013−190345(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0309829(US,A1)
【文献】 米国特許第05247278(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/09
H01L 43/08
H01L 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X−Y平面上の基板と、
軸およびY軸に平行な側面を有する複数の軟磁性フラックスコンセントレータを有する軟磁性フラックスコンセントレータアレイと、前記軟磁性フラックスコンセントレータの4つの隅を左上の位置から時計回りに順番にA、B、CおよびDと称する、
前記軟磁性フラックスコンセントレータの複数の間隙それぞれに配置される複数の磁気抵抗センシングユニットを有する、前記基板上の磁気抵抗センシングユニットアレイとを具備し、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Aおよび隅Cに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Bおよび隅Dに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プル型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、
前記プル型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、
前記1以上のプッシュアームと前記1以上のプルアームとは電気的に相互接続され、プッシュプルセンサブリッジを構成し、
前記磁気抵抗センシングユニットアレイの各列および各行はそれぞれ前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットとが交互に配列されて構成される、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項2】
X−Y平面上の基板と、
X軸およびY軸に平行な側面を有する複数の軟磁性フラックスコンセントレータを有する軟磁性フラックスコンセントレータアレイと、前記軟磁性フラックスコンセントレータの4つの隅を左上の位置から時計回りに順番にA、B、CおよびDと称する、
前記軟磁性フラックスコンセントレータの複数の間隙それぞれに配置される複数の磁気抵抗センシングユニットを有する、前記基板上の磁気抵抗センシングユニットアレイとを具備し、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Aおよび隅Cに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Bおよび隅Dに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プル型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、
前記プル型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、
前記1以上のプッシュアームと前記1以上のプルアームとは電気的に相互接続され、プッシュプルセンサブリッジを構成し、
前記磁気抵抗センシングユニットアレイの各列は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットとが交互に配列されて構成され、且つ、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットだけで構成された行と、前記プル型磁気抵抗センシングユニットだけで構成された行とが交互に配列される、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項3】
X−Y平面上の基板と、
X軸およびY軸に平行な側面を有する複数の軟磁性フラックスコンセントレータを有する軟磁性フラックスコンセントレータアレイと、前記軟磁性フラックスコンセントレータの4つの隅を左上の位置から時計回りに順番にA、B、CおよびDと称する、
前記軟磁性フラックスコンセントレータの複数の間隙それぞれに配置される複数の磁気抵抗センシングユニットを有する、前記基板上の磁気抵抗センシングユニットアレイとを具備し、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Aおよび隅Cに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Bおよび隅Dに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プル型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、
前記プル型磁気抵抗センシングユニットの全ては、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、
前記1以上のプッシュアームと前記1以上のプルアームとは電気的に相互接続され、プッシュプルセンサブリッジを構成し、
前記磁気抵抗センシングユニットアレイの各行は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットとが交互に配列されて構成され、且つ、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットだけで構成された列と、前記プル型磁気抵抗センシングユニットだけで構成された列とが交互に配列される、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項4】
前記磁気抵抗センシングユニットは、GMRスピンバルブまたはTMRセンシングユニットであり、
外部磁界が存在しない場合、前記全ての磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向はY軸方向に平行であり、前記全ての磁気抵抗センシングユニットの自由層の磁化方向はX軸方向に平行である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項5】
前記軟磁性フラックスコンセントレータアレイは、複数の第1の軟磁性フラックスコンセントレータと複数の第2の軟磁性フラックスコンセントレータとを有し、
前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータおよび前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは、Y軸方向に平行な列とX軸方向に平行な行とに配列され、
前記軟磁性フラックスコンセントレータのY軸方向の長さをLy、X軸方向の長さをLxと表記し、前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの前記Y軸方向に関する間隙はygapと表記し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータの列が前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータの列に対して前記Y軸方向に沿って(Ly+ygap)/2の距離だけずれている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項6】
前記磁気抵抗センシングユニットアレイの行方向は前記X軸方向に平行であり、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの列方向は前記Y軸方向に平行であり、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの列は前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータの列と前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータの列の間隙の中心に配置され、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットは前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置A、Cに対応し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータに対して正のY軸方向にずれており、前記プル型磁気抵抗センシングユニットは前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置B、Dに同時に対応し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは、前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータに対して負のY軸方向にずれている、請求項5に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項7】
プッシュプル磁界センサブリッジのバイアス電圧、接地および信号出力端は、前記基板の上部のボンディングパッドに電気的に相互接続され、又はTSVにより前記基板の底部のボンディングパッドに接続される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項8】
外部磁界が存在しない場合、前記磁気抵抗センシングユニットは、永久磁石バイアス、二重交換相互作用および形状異方性のうちの少なくとも1つにより、前記磁気抵抗センシングユニットの磁気自由層の磁化方向を、前記磁気抵抗センシングユニットの磁気ピンニング層の磁化方向に対して垂直にさせる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項9】
前記プッシュアーム上の磁気抵抗センシングユニットの数と、前記プルアーム上の磁気抵抗センシングユニットの数は同一である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項10】
前記プッシュアーム上の磁気抵抗センシングユニットおよび前記プルアーム上の磁気抵抗センシングユニットの自由層の、それぞれのピンニング層の磁化方向に対する回転角度は、振幅が同じであり、方向が反対である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項11】
前記プッシュアームおよび前記プルアームはフルブリッジ、ハーフブリッジまたは擬似ブリッジを構成する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項12】
前記基板は、ガラスまたはシリコンウエハからなり、前記基板は、ASICチップを有し、又は前記基板は別のASICチップに接続される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項13】
前記軟磁性フラックスコンセントレータは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の元素のうちの1以上を有する合金軟磁性材料である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項14】
テストコイルをさらに備え、前記テストコイルは、前記磁気抵抗センシングユニットの直上または直下にそれぞれ配置され、前記テストコイルの電流の方向は前記Y軸方向に平行であり、検査中は前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび前記プル型磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ対応する前記テストコイルを流れる電流は、方向が反対であり、絶対値は同じである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【請求項15】
リセットコイルをさらに備え、前記リセットコイルは、前記磁気抵抗センシングユニットの直上または直下に配置され、前記リセットコイルの電流の方向は前記X軸方向に平行であり、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび前記プル型磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ対応する前記リセットコイルを流れる電流は絶対値が同じであり、方向も同じである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの分野、特に、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2軸および3軸の磁気コンパスチップを設計する過程で、X軸の磁気センサとY軸の磁気センサを同時に利用する必要がある。通常、磁気抵抗センシングユニットは、単一の磁界感度軸を有し、例えば、X軸方向に磁気感度軸を有する。Y軸方向に磁気感度軸を設けるためには、X軸方向の磁界センシングユニットを90度回転させ、それによりY軸方向の磁界センシングユニットを得ることが一般的である。次に、X軸およびY軸の磁気抵抗センサの磁界感度を改善するために、概して、プッシュプルブリッジが用いられるが、プッシュアームとプルアームは別々の方法で、すなわち、プッシュアームおよびプルアームのうちの一方を、もう一方に対して180度回転させることで、製造される。このように、プッシュアームとプルアームのピンニング層の磁化方向は反対方向である一方、自由層の磁化方向は同じである。例えば、図2Aは、プッシュアームチップとプルアームチップがワイヤボンドを利用して接続されているような、ワイヤボンディングタイプのピンニング層を有する磁気抵抗センシングユニットの磁化状態の概略図である。
【0003】
先に提示したY軸の磁気抵抗センサは、主に以下の問題を有する。
【0004】
1) X軸およびY軸の磁気抵抗センサが同一平面に同時に製造されるとき、X軸およびY軸の磁気抵抗センサは双方ともディスクリート素子であるため、集積製造することは不可能である。これにより、製造過程の複雑性が増すことで、2軸または3軸のセンサの測定精度に影響を与える。
【0005】
2) プッシュアームおよびプルアームは、同一チップに集積できないため、過程の複雑性が増し、センサの測定精度に影響を与えるディスクリートチップをワイヤボンドを利用して接続させる必要がある。
【発明の概要】
【0006】
先に挙げた既存の問題を解決するために、本発明は、負のX軸方向およびX軸方向の磁界成分を得るため、Y磁界の方向を歪めるフラックスコンセントレータを利用した、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジおよびその製造方法を提示する。このように、全ての磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向は同じであり、プッシュアームおよびプルアームは、反対方向への自由層の偏向により実現される。図2Aは、このような差動自由層タイプの磁気抵抗ユニットの磁化状態の概略図である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジは、
X−Y平面上の基板と、
スタガード状に配列される、X軸およびY軸に平行な側面を有する複数の軟磁性フラックスコンセントレータを有するスタガード型軟磁性フラックスコンセントレータアレイと、前記軟磁性フラックスコンセントレータの4つの隅を左上の位置から時計回りに順番にA、B、CおよびDと称する、
前記軟磁性フラックスコンセントレータの複数の間隙それぞれに配置される複数の磁気抵抗センシングユニットを有する、前記基板上の磁気抵抗センシングユニットアレイとを具備し、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Aおよび隅Cに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記磁気抵抗センシングユニットのうち、前記軟磁性フラックスコンセントレータの隅Bおよび隅Dに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プル型磁気抵抗センシングユニットであり、
前記全てのプッシュ型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、
前記全てのプル型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、
前記全てのプッシュアームと前記全てのプルアームは電気的に相互接続され、プッシュプルセンサブリッジを構成する。
【0008】
好ましくは、前記磁気抵抗センシングユニットは、GMRスピンバルブまたはTMRセンシングユニットであり、
外部磁界が存在しない場合、前記全ての磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向はY軸方向に平行であり、前記全ての磁気抵抗センシングユニットの自由層の磁化方向はX軸方向に平行である。
【0009】
好ましくは、前記スタガード型軟磁性フラックスコンセントレータアレイは、第1の軟磁性フラックスコンセントレータと第2の軟磁性フラックスコンセントレータとを有し、
前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータおよび前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは、Y軸方向に平行な列とX軸方向に平行な行とに配列され、
前記軟磁性フラックスコンセントレータのY軸方向の長さをLy、X軸方向の長さをLxと表記し、前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの前記Y軸方向に関する間隙はygapと表記し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータの列が前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータの列に対して前記Y軸方向に沿って(Ly+ygap)/2の距離だけずれている。
【0010】
好ましくは、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの行方向は前記X軸方向に平行であり、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの列方向は前記Y軸方向に平行であり、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの列は前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータの列と前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータの列の間隙の中心に配置され、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットは前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置A、Cに対応し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータに対して正のY軸方向にずれており、前記プル型磁気抵抗センシングユニットは前記第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置B、Dに同時に対応し、前記第2の軟磁性フラックスコンセントレータは、前記第1の軟磁性フラックスコンセントレータに対して負のY軸方向にずれている。
【0011】
好ましくは、前記磁気センシングユニットアレイの各列および各行はそれぞれ前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットの交互配列により形成される。
【0012】
好ましくは、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの各列は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットとの交互配列を有し、
前記磁気抵抗センシングユニットアレイは、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの行と前記プル型磁気抵抗センシングユニットの行との交互配列を有し、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの行は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットにより形成され、
前記プル型磁気抵抗センシングユニットの行は、前記プル型磁気抵抗センシングユニットにより形成される。
【0013】
好ましくは、前記磁気抵抗センシングユニットアレイの各行は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットと前記プル型磁気抵抗センシングユニットとの交互配列を有し、
前記磁気抵抗センシングユニットアレイの列は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの列と前記プル型磁気抵抗センシングユニットの列との交互配列を有し、
前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの列は、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットにより形成され、
前記プル型磁気抵抗センシングユニットの列は、前記プル型磁気抵抗センシングユニットにより形成される。
【0014】
好ましくは、プッシュプル磁界センサブリッジのバイアス電圧、接地および信号出力端は、前記基板の上部のボンディングパッドに電気的に相互接続され、又はTSVにより前記基板の底部のボンディングパッドに接続される。
【0015】
好ましくは、外部磁界が存在しない場合、前記磁気抵抗センシングユニットは、永久磁石バイアス、二重交換相互作用および形状異方性のうちの少なくとも1つにより、前記磁気抵抗センシングユニットの磁気自由層の磁化方向を、前記磁気抵抗センシングユニットの磁気ピンニング層の磁化方向に対して垂直にさせる。
【0016】
好ましくは、前記プッシュアーム上の磁気抵抗センシングユニットの数と、前記プルアーム上の磁気抵抗センシングユニットの数は同一である。
【0017】
好ましくは、前記プッシュアーム上の磁気抵抗センシングユニットおよび前記プルアーム上の磁気抵抗センシングユニットの自由層の、それぞれのピンニング層の磁化方向に対する回転角度は、振幅が同じであり、方向が反対である。
【0018】
好ましくは、前記プッシュプル磁界センサブリッジは、ハーフブリッジ、フルブリッジまたは擬似ブリッジである。
【0019】
好ましくは、前記基板は、ガラスまたはシリコンウエハからなり、前記基板は、ASICチップを有し、又は前記基板は別のASICチップに接続される。
【0020】
好ましくは、前記軟磁性フラックスコンセントレータは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の元素のうちの1以上を有する合金軟磁性材料である。
【0021】
好ましくは、テストコイルをさらに備え、前記テストコイルは、前記磁気抵抗センシングユニットの直上または直下にそれぞれ配置され、前記テストコイルの電流の方向は前記Y軸方向に平行であり、検査中は前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび前記プル型磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ対応する前記テストコイルを流れる電流は、方向が反対であり、絶対値は同じである。
【0022】
好ましくは、リセットコイルをさらに備え、前記リセットコイルは、前記磁気抵抗センサの直上または直下に配置され、前記リセットコイルの電流の方向は前記X軸方向に平行であり、前記プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび前記プル型磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ対応する前記リセットコイルを流れる電流は絶対値が同じであり、方向も同じである。
【0023】
本発明に係るシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジの製造方法において、前記方法は、
1) ウエハ表面に磁気抵抗センシングユニットの薄膜材料の積層を堆積し、前記薄膜材料のピンニング層の磁化方向を設定するステップと、
2) 底部電極を確立し、第1の関連過程の利用により前記磁気抵抗センシングユニットの薄膜材料に前記磁気抵抗センシングユニットをパターニングするステップと、
3) 前記磁気抵抗センシングユニットの上方に第2の絶縁層を堆積し、第2の関連過程を利用することにより、前記磁気抵抗センシングユニットを電気的に相互接続するためのスルーホールを構成するステップと、
4) 前記スルーホールの上方に上部メタル層を堆積し、前記第1の関連過程により上部電極を形成し、前記磁気抵抗センシングユニット間をワイヤ配線するステップと、
5) 前記上部メタル層の上方に第3の絶縁層を堆積するステップと、
6) 前記第3の絶縁層の上方に軟磁性フラックスコンセントレータをパターニングするステップと、
7) 前記軟磁性フラックスコンセントレータの上方に保護層を堆積し、前記底部電極および前記上部電極に対応する位置の上方の保護層をエッチングし、前記スルーホールを形成し、前記基板の上部に外部接続用のボンディングパッドを形成するステップとを有する。
【0024】
好ましくは、前記ステップ1)の前に、前記ウエハの表面にリセットコイルコンダクタをパターニングし、前記リセットコイルコンダクタの表面に第1の絶縁層を堆積するステップをさらに有し、
前記ステップ1)は、前記第1の絶縁層の表面に前記磁気抵抗センシングユニットの薄膜材料の積層を堆積し、前記磁気抵抗センシングユニットの薄膜材料のピンニング層の磁化方向を設定するステップである。
【0025】
好ましくは、前記ステップ5)の前に、前記第3の絶縁層の上方にテストコイルコンダクタをパターニングするステップをさらに有し、
前記ステップ7)は、前記軟磁性フラックスコンセントレータの上方に前記保護層を堆積し、その後、前記底部電極および前記上部電極とともにリセットコイル電極およびテストコイル電極に対応する位置の上の前記保護層をエッチングし、前記スルーホールを形成し、前記外部接続用のボンディングパッドを構成するステップである。
【0026】
本発明に係るシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジの製造方法において、前記方法は、
1) DRIE過程により基板にディープTSVホールを形成するステップと、
2) 前記ディープホールにTSV Cuピラーを電気めっきするステップと、
3) 前記基板の表面より高い、前記電気めっきされたTSV Cuピラーを平坦化するステップと、
4) 電極の位置がエッチングされた窓の前記TSV Cuピラーに接続されるように、前記基板に磁気抵抗薄膜材料の積層を堆積し、前記磁気抵抗薄膜材料のピンニング層の磁化方向を設定するステップと、
5) 底部電極を確立し、第1の関連過程の利用により前記磁気抵抗薄膜材料に磁気抵抗センシングユニットのパターンを確立するステップと、
6) 前記磁気抵抗センシングユニットの上方に第2の絶縁層を堆積し、第2の関連過程により前記磁気抵抗センシングユニットを電気的に相互接続するためのスルーホールを形成するステップと、
7) 前記スルーホールの上方に上部メタル層を堆積し、前記第1の関連過程により上部電極を形成し、前記磁気抵抗センシングユニット間を配線するステップと、
8) 前記上部メタル層の上方に第3の絶縁層を堆積するステップと、
9) 前記第3の絶縁層の上方に軟磁性フラックスコンセントレータを形成するステップと、
10) 前記軟磁性フラックスコンセントレータの上方に保護層を堆積するステップと、
11) 前記基板の背部を薄くし、前記TSV Cuピラーを露出させるステップと、
12) 前記基板の底部にTSVボンディングパッドを形成し、前記TSV Cuピラーに前記TSVボンディングパッドを接続するステップとを有する。
【0027】
好ましくは、前記ステップ3)と前記ステップ4)の間に、前記基板に前記リセットコイルコンダクタをパターニングして前記リセットコイルコンダクタの電極の出力端と入力端とを前記TSV Cuピラーに接続し、前記リセットコイルコンダクタの表面に第1の絶縁層を堆積するステップをさらに有し、
前記ステップ4)は、
前記第1の絶縁層の窓をエッチングし、前記エッチングされた窓の前記TSV Cuピラーに電極の位置が接続されるように前記第1の絶縁層の表面における基板に前記磁気抵抗薄膜材料の積層を堆積し、前記磁気抵抗薄膜材料のピンニング層の磁化方向を設定するステップである。
【0028】
好ましくは、前記ステップ8)は、前記上部メタル層の上に前記第3の絶縁層を堆積し、前記第3の絶縁層の窓を開け、前記テストコイルコンダクタの入力電極および出力電極が前記TSV Cuピラーに接続されるように前記第3の絶縁層の上にテストコイルコンダクタを形成し、パターニングするステップである。
【0029】
好ましくは、前記絶縁層は、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素、ポリイミドまたはフォトレジストである。
【0030】
好ましくは、前記保護層は、ダイアモンドライクカーボン、窒化ケイ素、酸化アルミニウムまたは金からなる。
【0031】
好ましくは、前記磁気抵抗薄膜材料のピンニング層の磁化方向は、磁界において高温焼鈍により設定される。
【0032】
好ましくは、前記第1の関連過程は、フォトエッチング、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチング、ストリッピングまたはハードマスキングを有する。
【0033】
好ましくは、前記第2の関連過程は、フォトエッチング、イオンエッチング、反応性イオンエッチングまたはウェットエッチングを有する。
【0034】
好ましくは、前記スルーホールは、自己整合されたコンタクトホールであり、前記自己整合されたコンタクトホールは、前記磁気抵抗薄膜材料のストリッピングにより形成され、イオンエッチング過程を利用することにより、または、ハードマスキングおよび化学的機械研磨過程を利用することにより、形成される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】プッシュプル型磁気抵抗センサブリッジの構造図である。
図2A】差動自由層のプッシュプル型磁気抵抗センサの磁化状態の図である。
図2B】フリッピングされたピンニング層のプッシュプル型磁気抵抗センサの磁化状態の図である。
図3】軟磁性フラックスコンセントレータのY軸方向の磁界の分布の特徴および磁気抵抗センシングユニットの相対的な位置の図である。
図4】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサのY軸方向の磁界測定の図である。
図5】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサのX軸方向の磁界測定の図である。
図6】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造の図である。
図7】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第2の構造の図である。
図8】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のY軸方向の磁界測定の図である。
図9】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のX軸方向の磁界測定の図である。
図10】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のセンサの位置のY軸方向の磁界分布の図である。
図11】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のセンサの位置のX軸方向の磁界分布の図である。
図12】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のブリッジ接続の図である。
図13】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のテストコイルの配列図である。
図14】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造のリセットコイルの配列図である。
図15】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの各層の構造図である。
図16】テストコイルおよびリセットコイルを有するシングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの各層の構造図である。
図17】TSVシングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの各層の構造図である。
図18】テストコイルおよびリセットコイルを有するTSVシングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの各層の構造図である。
図19】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサのマクロ製造過程の図である。
図20】シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサのマイクロ製造過程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明について、添付の図面を参照し、実施形態を組み合わせて、以下に詳細に説明する。
【0037】
実施形態1
図1は、4つのブリッジアームR1、R2、R3、R4を備える、プッシュプル型磁気抵抗センサのフルブリッジ構造図であり、R1およびR4はプッシュアーム、R2およびR3はプルアームである。磁気抵抗センサに対して、プッシュアームおよびプルアームは、外部磁界の作用下では、反対方向の磁界変化を特徴とし、GMRスピンバルブおよびTMR型の磁気抵抗センシングユニットに対しては、自由層の磁化方向とピンニング層の磁化方向との間の刃先角は、それぞれ増加(減少)および減少(増加)し、同じような振幅で変化する。
【0038】
図2Aおよび図2Bは、GMRスピンバルブまたはTMR型のプッシュプル型磁気抵抗センサにおける磁化状態の2つの可能性ある状況を示す。図2Bは、プッシュアーム磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向と、プルアーム磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向とが反対方向である一方、自由層の磁化方向は同じである、フリッピングされたピンニング層の状況を示す。このように、外部磁界が作用する際、プルアーム磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の自由層の磁化方向は同じように変化するが、ピンニング層の磁化方向は反対向きであるため、ピンニング層に対する刃先角の変化は、反対になる。図2B中のフリッピングされたピンニング層は、最も一般的なプッシュプル型磁気抵抗センサ構造であり、その実現方法は、プッシュアームを有するチップを180度フリッピングさせて、プルアームのチップを得て、ワイヤボンドによりチップを接続し、同じチップに共にパッケージ化することである。
【0039】
図2Aは、プッシュアームの磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向と、プルアームの磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の磁化方向が同じである、本発明で提示した差動自由層の状況を示す。しかしながら、同一の外部磁界の作用下では、磁気回路の効果により、プッシュアームおよびプルアームの自由層の磁界方向は反対向きとなり、そのため、同一の外部磁界の作用下では、自由層の磁化方向とピンニング層の磁化方向との間の刃先角も、逆向きに変化する。プッシュアームの磁気抵抗センシングユニットおよびプルアームの磁気抵抗センシングユニットにおけるピンニング層の磁化状態と自由層の磁化状態は同一であることから、プッシュアームの磁気抵抗センシングユニットおよびプルアームの磁気抵抗センシングユニットは同一チップに集積できる。
【0040】
実施形態2
図3は、本発明で提示した軟磁性フラックスコンセントレータを利用することにより、同じY軸方向の測定の外部磁界Hから変換された2つの反対方向のX成分を有する磁界の磁界分布および対応するプッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットの位置の図である。軟磁性フラックスコンセントレータ1は、X軸およびY軸に平行な側面を有し、左上の位置から時計回りにA、B、CおよびDと順番にラベル付けされた4つの隅を有する。Y軸方向の外部磁界Hが、フラックスコンセントレータ1を通過する際、フラックスコンセントレータ1近傍で歪み、Y軸磁界成分に加えて、X軸磁界成分も存在する。ここで、隅の位置Dおよび隅の位置B近傍の磁界は正のX軸磁界成分を有し、隅の位置Aおよび隅の位置C近傍の磁界は、負のX軸磁界成分を有するため、隅Aおよび隅Cに近傍の磁気抵抗センシングユニット31、33は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットとして機能し、隅Bおよび隅Dに近傍の磁気抵抗センシングユニット32、34は、プル型磁気抵抗センシングユニットとして機能する。4つの磁気抵抗センシングユニット31、32、33および34のピンニング層の方向はX軸方向であり、自由層の磁化方向はY軸方向である。本実施形態は、以下のものを備えるシングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジを開示する。
【0041】
シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサブリッジは、X−Y平面上の基板と、X軸およびY軸に平行な側面を有する複数の軟磁性フラックスコンセントレータがスタガード状(ジグザグ状)に配列されてなるスタガード型軟磁性フラックスコンセントレータアレイと、基板上の軟磁性フラックスコンセントレータの間隙に配置された磁気抵抗センシングユニットを有する磁気抵抗センシングユニットアレイとを備える。軟磁性フラックスコンセントレータの4つの隅を。左上から時計回りに順番にA、B、CおよびCと称するものとする。軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置AおよびCに近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットであり、軟磁性フラックスコンセントレータの隅の位置BおよびD近傍の磁気抵抗センシングユニットは、プル型磁気抵抗センシングユニットであり、全てのプッシュ型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、全てのプル型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、全てのプッシュアームおよび全てのプルアームは電気的に相互接続され、プッシュプルセンサブリッジを構成する。
【0042】
スタガード型軟磁性フラックスコンセントレータアレイは、2つの軟磁性フラックスコンセントレータアレイからなり、2つの軟磁性フラックスコンセントレータアレイの軟磁性フラックスコンセントレータは、2つの軟磁性フラックスコンセントレータアレイの軟磁性フラックスコンセントレータ間に磁気フラックスループを形成できるように、スタガード状に配列されている。複数の特定の構造を以下に示す。
【0043】
実施形態3
図4は、本発明で提示したシングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの構造図であり、図5は、X軸方向およびY軸方向での外部磁界の測定原理の図であり、X−Y平面上の基板と、軟磁性フラックスコンセントレータ1がスタガード状に配列されてなる第1、第2の軟磁性フラックスコンセントレータアレイ11、12と、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットにより形成される磁気抵抗センサアレイ35とを備える。軟磁性フラックスコンセントレータアレイの行の方向はX軸に平行であり、軟磁性フラックスコンセントレータアレイの列の方向はY軸に平行であり、軟磁性フラックスコンセントレータ1のY軸方向の間隙はygapであり、X軸方向の間隙はxgapおよびrgapであり、すなわち、正のX軸方向に沿っており、第1の軟磁性フラックスコンセントレータの第1の列と、第1の軟磁性フラックスコンセントレータに隣接する第2の軟磁性フラックスコンセントレータの第1の列との間のX軸方向の間隙は、xgapである一方、第2の軟磁性フラックスコンセントレータの第1の列と、第1の軟磁性フラックスコンセントレータの第2の列との間のX軸方向の間隙はrgapである。本実施形態では、xgapおよびrgapに同じ値を与える。軟磁性フラックスコンセントレータのY軸方向の長さはLyであり、X軸方向の長さはLxであり、軟磁性フラックスコンセントレータの列11,12は、正または負の(Ly+ygap)/2の距離だけY軸方向に沿って相対的にずれている。磁気抵抗センサアレイ35は、軟磁性フラックスコンセントレータの列11と軟磁性フラックスコンセントレータの列12との間隙に配置され、磁気抵抗センサアレイ35の行の方向はX軸方向に平行であり、列の方向はY軸方向に平行であり、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットは、隅Aおよび隅C近傍に同時に配置され、プル型磁気抵抗センシングユニットは、隅Bおよび隅D近傍に同時に配置される。プッシュ型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプッシュアームに電気的に相互接続され、プル型磁気抵抗センシングユニットは、1以上のプルアームに電気的に相互接続され、プッシュアームおよびプルアームは電気的に相互接続され、プッシュプル電気抵抗センサブリッジを構成する。先の構造では、第1の列および第1の行における軟磁性フラックスコンセントレータのBおよびCと、第2の列ならびに第1および第2の行における軟磁性フラックスコンセントレータのDおよびAは、連続的な磁気フラックスパスを構成する。
【0044】
図4はまた、Y軸方向の磁界の作用下での、磁気抵抗センサの位置における、感度方向での磁界成分の方向を示す。図2Aに従い、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットの自由層の方向は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の方向に対して、反対方向の磁界方向を有し、Y軸方向の磁界で効果測定を実行できることを示す。
【0045】
図5は、X軸方向の磁界の作用下での、磁気抵抗センサの位置における、磁界感度軸での磁界成分の方向を示す。図2Aに従い、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットの自由層の方向は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットのピンニング層の方向に対して、同じ磁界方向を有することが理解できる。この時点で、プッシュアームおよびプルアームは、抵抗の変化が同じであるため、プッシュプル型磁気抵抗センサブリッジの出力は0である。従って、図4および図5は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの磁界感度方向がY軸方向であり、シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサは、Y軸磁界センサである。
【0046】
実施形態4
図6は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第1の構造図であり、図6は、実際には、図4および図5における特殊な例であり、Y軸方向の磁気抵抗センサの各列は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび交互に配列されるプル型磁気抵抗センシングユニットから構成される一方、X軸方向の各行は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットまたはプル型磁気抵抗センシングユニットから完全に構成され、プッシュ型磁気抵抗行センシングユニット35およびプル型磁気抵抗行センシングユニット36は交互に配列されることを特徴とする。この時点で、xgapおよびrgapは異なっていてもよい。本実施形態では、磁気抵抗センシングユニットが配置されるxgapに磁界が可能な限り集中することを確実にするために、xgapはrgapより少ない。
【0047】
実施形態5
図7は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの第2の構造図であり、図7は、実際には、図4および図5における別の特殊な例でもあり、X軸方向の磁気抵抗センサの各行は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび交互に配列されるプル型磁気抵抗センシングユニットから構成される一方、Y軸方向の各列は、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットまたはプル型磁気抵抗センシングユニットから完全に構成され、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの列37およびプル型磁気抵抗センシングユニットの列38は交互に配列されることを特徴とする。この時点で、磁気抵抗センサの行が確実に同じ磁界強度を有するように、xgapはrgapに等しい。
【0048】
実施形態6
図8および図10は、n1〜n8が各行の8つの磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ対応し、4つのプッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよび4つのプル型磁気抵抗センシングユニットを有する、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサがY磁界を検査するときの、Y軸方向に沿った磁気抵抗センサアレイの列No.1から列No.5までのX軸方向の磁界成分分布図である。反対方向のX軸方向の磁界方向が、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットが配置される位置にあり、加えて、振幅がほぼ同じであることから、プッシュプルブリッジが形成されることが、図10から理解できる。
【0049】
図9および図11は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサがX磁界を検査するときの、Y軸方向に沿った磁気抵抗センサアレイの行No.1から行No.5までのX軸方向の磁界成分分布図である。各行における対応する磁気抵抗センシングユニットm1〜m8は、X軸方向の同じ磁界方向を有することが図11から理解でき、本構造のブリッジがX軸方向の磁界に応答しなくてもよいことが示される。
実施形態7
図12は、第1の構造に対応するシングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサの電気的接続の図であり、図12から、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットはプッシュアームおよびプルアームに電気的に相互接続され、プッシュアームおよびプルアームは、コンダクタメタル41を通じてフルブリッジ構造のプッシュプル型磁気抵抗センサブリッジを構成するように電気的に相互接続され、バイアス電極8、接地電極7ならびに出力電極5および出力電極6にそれぞれ接続されることが理解できる。フルブリッジに加えて、プッシュプルブリッジも、ハーフブリッジまたは擬似ブリッジの一種であってもよい。
実施形態8
図13は、テストコイルが、2つのセグメント91および92を有し、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットにそれぞれ配置される、シングルチップ型差動自由層プッシュプル型磁気抵抗センサがテストコイルを備える状況でのチップ上のテストコイルの分布図であり、電流の流れる方向はY軸方向であり、反対方向である。プッシュ型磁気抵抗センシングユニットの上を流れるテストコイルセグメントが確実に平行であり、プル型磁気抵抗センシングユニットの上を流れるテストコイルセグメントも互いに確実に平行であるように、テストコイルはジグザグ状の幾何学形に並ぶ。電流がテストコイルを通るとき、セグメント9における電流およびセグメント92における電流は大きさが同じであり、方向が反対であることから、セグメント91はプッシュ型磁気抵抗センシングユニットにおいてX軸方向の磁界H1を生成させ、セグメント92はプル型磁気抵抗センシングユニットにおいてX軸方向の磁界H1を生成させ、これらは同じ大きさであり、磁界の絶対値は磁界を流れる電流Iに直接比例する。このように、外部磁界がY軸方向に沿っている状況では、テストコイルを流れる電流Iを用いることで、軟磁性フラックスコンセントレータを通してプッシュ電気抵抗センシングユニットおよびプル電気抵抗センシングユニットにおいて外部磁界により生成される磁界を刺激できる。このように、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサは、テストコイルにより、すなわち、一定の電流により較正できる。このケースでは、チップの出力端における信号の変化を直接測定し、出力電圧が一定の範囲内にある場合には、チップは正常に利用可能なチップであり、出力電圧が範囲内にない場合には、チップは欠陥チップである。
【0050】
実施形態9
図14は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサがリセットコイル93を備える状況でのチップ上のリセットコイル93の分布図であり、図14から、リセットコイル93はジグザグ状に並び、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットにより形成される列の上をそれぞれ通る直線のセグメントを備え、直線のセグメントはX軸方向に平行であり、同じ電流の方向を有することが理解できる。リセットコイル93の目的は以下の通りである。シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサが強磁界に位置付けられるときに、自由層に含まれる磁区の、磁化過程で生じる、不可逆的な磁壁運動過程が理由で、自由層は、外部磁界の作用下で巨大な磁気ヒステリシスを有し、当初の標準テスト曲線から外れる。このケースでは、リセットコイル93により作られる電流の磁界方向により、プッシュ型磁気抵抗センシングユニットおよびプル型磁気抵抗センシングユニットにおいて生成される磁界はY軸方向である。この時点では、ピンニング層の磁化方向はX軸方向であり、自由層の磁化方向はY軸方向であるため、リセットコイル中の電流の周期的な変化および生成されるY磁界の周期的な変化を調整することにより、自由層の磁化方向および磁化状態は適切な状態に調整され、これにより、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサは正常な動作を再開する。
【0051】
実施形態10
図15は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサがテストコイルおよびリセットコイルを備えないケースでの、チップの断面図であり、図16は、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサがテストコイルおよびリセットコイルを備えるケースでの、チップの断面図である。図15では、チップは、底部から上部まで、順番に、基板4と、シード層および底部の電導電極310と、マルチ層の薄膜材料の積層311と、マルチ層の薄膜材料の積層311が埋め込まれた絶縁層600および上部の電導電極312を有する、基板4に配置される磁気抵抗センサ3と、さらに、上部の電導電極312と軟磁性フラックスコンセントレータ1との間に配置される絶縁層410と、さらに、上部電極312の上および軟磁性フラックスコンセントレータ1の上に配置される保護層500と、上部電極層312の上に配置されるボンディングパッド700とを備える。
【0052】
図16は、基板4にリセットコイル93を配置し、リセットコイル93および底部電極310は、絶縁層911を利用することにより絶縁される点で、図15とは異なる。加えて、テストコイルは、磁気抵抗センシングユニット3の上に配置される91および92を有し、反対方向の電流方向をそれぞれ有する。
先のものは、チップの前部ボンディングパッドを利用した形であったが、図17および図18に示すように、実際にはシリコン貫通電極(TSV)背部のボンディングパッドを利用する状況では、先のものもさらに備えられ、基板4の底部に、TSV Cuピラー800およびボンディングパッド900が備わっている点で異なっている。
【0053】
実施形態11
図19は、以下のステップを有する、ボンディングパッドがチップの上部に配置される状況に対応する、シングルチップ型差動自由層プッシュプル磁界センサの製造過程の図である。
1) ブランクウエハ4を平坦化する。
2) ウエハの表面にリセットコイルコンダクタ93を形成し、確定させる。
3) リセットコイルコンダクタの表面に第1の絶縁層911を堆積する。
4) 第1の絶縁層の表面に、シード層、底部電極310および磁気抵抗のマルチ層の薄膜材料の積層311を堆積する。
5) 磁気抵抗のマルチ層の薄膜材料のピンニング層の磁化方向を得るために、磁気的焼鈍を行う。
6) 関連過程を利用することにより、底部電極310および磁気抵抗センシングユニット311のパターンを確立する。
7) 特定の過程を利用することにより、磁気抵抗センシングユニットの上に第2の絶縁層600を堆積し、第2の絶縁層600にスルーホールを作り、上部電極に対応する、磁気抵抗のマルチ層の薄膜材料の積層を露出させる。
8) 上部電極312を確立し、配線する。
9) 上部電極の上に第3の絶縁層410を堆積する。
10) 第3の絶縁層の上にテストコイルコンダクタ91および92を形成し、確立させる。
11) 第3の絶縁層の上に軟磁性フラックスコンセントレータ1を形成し、確立させる。
12) 軟磁性フラックスコンセントレータの上に保護層500を堆積する。
13) 特定の機械加工過程を利用することにより、ボンディングパッドエリアを形成するために保護層を除去し、ボンディングパッドエリア700を形成する。
【0054】
TSV過程を利用することにより、ボンディングパッドが基板の底部に配置されるとき、図20に示すような機械加工ステップが用いられる。
1) DRIE過程を利用することにより、基板4にディープTSVホールを形成する。
2) ディープTSVホールにTSV Cuピラー800を電気めっきする。
3) 基板の表面より高い、電気めっきされたCuピラー800を平坦化する。
4) リセットコイルコンダクタ93の電極の出力端および入力端がTSV Cuピラー800に接続されるように、リセットコイルコンダクタ93を形成し、パターニングする(任意選択)。
5) リセットコイルコンダクタ93の表面に第1の絶縁層911を堆積する(任意選択)。
6) 第1の絶縁層911の窓をエッチングし、エッチングされた窓のCuピラー800に底部電極310の位置が接続されるように、第1の絶縁層911の表面に磁気抵抗薄膜材料の積層311を形成し、磁気抵抗薄膜材料311のピンニング層の磁化方向を設定する。
7) 関連過程を利用することにより、底部電極310を確立し、磁気抵抗薄膜材料311において磁気抵抗センシングユニットのパターンを確立する。
8) 磁気抵抗センシングユニットの上に第2の絶縁層600を堆積し、関連過程により磁気抵抗センシングユニット311に電気的に相互接続されたスルーホールを形成する
9) スルーホールの上に上部メタル層312を形成し、関連過程により上部電極を形成し、磁気抵抗センシングユニット間を配線する。
10) 上部メタル層312の上に第3の絶縁層410を堆積し、絶縁層の窓を開け、その後、テストコイルコンダクタ91および92の入力電極および出力電極がCuピラー800に接続されるように第3の絶縁層の上にテストコイルコンダクタ91、92を形成し、パターニングする(任意選択)。
11) 第3の絶縁層の上に軟磁性フラックスコンセントレータ1を形成する。
12) 軟磁性フラックスコンセントレータ1の上に保護層500を堆積する。
13) 基板4の背部を薄くし、Cuピラー800を露出させる。
14) TSVボンディングパッド900を形成し、TSV Cuピラー800にTSVボンディングパッドを接続する。
【0055】
絶縁層を堆積するための絶縁材料は、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ケイ素、ポリイミドおよびフォトレジストであってもよい。
【0056】
保護層を構成するための材料は、DC、窒化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金である。
【0057】
磁気抵抗薄膜材料におけるピンニング層の磁化方向は、磁界において高温焼鈍により設定される。
【0058】
ステップ中の関連過程は、フォトエッチング、イオンエッチング、反応性イオンエッチング、ウェットエッチング、ストリッピングまたはハードマスキングを有する。
【0059】
ステップ中のスルーホールは、自己整合されたコンタクトホールであり、自己整合されたコンタクトホールは、磁気抵抗薄膜材料をストリッピングすることにより堆積され、イオンエッチング過程を利用することにより、または、ハードマスキングおよび化学的機械研磨過程を利用することにより、形成される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20