(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)において、m及びnがそれぞれ1〜219の整数であって、且つm+nが70〜220を満足する整数である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の収縮低減剤。
酸化防止剤がフェノール系の酸化防止剤であり、更に、酸化防止剤の含有割合が前記式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物に対して20質量ppm〜0.5質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の収縮低減剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3の水硬性組成物用収縮低減剤を用いた場合に、水硬性組成物の硬化体の凍結融解抵抗性が低下するという問題については未だ十分に解決されていない。そのため、寒冷地では、特許文献1〜3の水硬性組成物用収縮低減剤の使用が制限されるという問題が生じている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、水硬性組成物に使用したとき、その硬化体の収縮を低減するだけでなく、優れた凍結融解抵抗性を付与し、且つ所望の性能を安定して発揮することができる収縮低減剤及び水硬性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の化合物を収縮低減剤に使用することによって上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
本発明によれば、以下に示す、収縮低減剤及び水硬性組成物が提供される。
【0010】
[1] セメントを含有した水硬性結合材、骨材、及び、水を含む水硬性組成物に使用する収縮低減剤であって、
下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物と酸化防止剤とを含
み、更に溶媒を含み、液状である、収縮低減剤。
【0011】
【化1】
R
1:炭素数6〜25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基
X,Y:それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基
OR
2,R
3O:それぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基
m,n:1〜299の整数であって、且つm+n=60〜300を満足する整数
【0012】
[2] 前記式(1)において、R
1が、下記式(2)で示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)骨格を有する基である、前記[1]に記載の収縮低減剤。
【0013】
【化2】
但し、式(2)において、Zは、炭素数1〜13の直鎖状または分岐状のアルキレン基、或いは、スルホニル基である。
【0014】
[3] 前記式(1)において、R
1が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、又は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンから2個の水酸基を除いた残基である、前記[1]又は[2]に記載の収縮低減剤。
【0015】
[4] 前記式(1)において、X及びYが水素原子である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の収縮低減剤。
【0016】
[5] 前記式(1)において、OR
2及びR
3Oの全オキシアルキレン基中の90モル%以上がオキシエチレン基である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の収縮低減剤。
【0017】
[6] 前記式(1)において、m及びnがそれぞれ1〜219の整数であって、且つm+nが70〜220を満足する整数である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の収縮低減剤。
【0018】
[7] 酸化防止剤がフェノール系の酸化防止剤であり、更に、酸化防止剤の含有割合が前記式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物に対して20質量ppm〜0.5質量%である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の収縮低減剤。
【0019】
(削除)
【0020】
[
8] セメントを含有した水硬性結合材、骨材、及び、水を含む水硬性組成物であって、
前記水硬性結合材100質量部当たり前記[1]〜[
7]のいずれかに記載の収縮低減剤を0.2〜10質量部の割合で含有している水硬性組成物。
【0021】
[
9] 更に、分散剤及び空気連行剤を含むものである前記[
8]に記載の水硬性組成物。
【0022】
[
10] 練り混ぜ直後の連行空気量が3〜7容量%の範囲のものである、前記[
8]又は[
9]に記載の水硬性組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の収縮低減剤は、得られる水硬性組成物の乾燥収縮によるひび割れを低減するとともに凍結融解抵抗性が高く、水硬性組成物の硬化体の高耐久化を図ることができるという効果を奏するものである。
【0024】
本発明の水硬性組成物は、本発明の収縮低減剤を含むものであるため、乾燥収縮によるひび割れが低減されるとともに凍結融解抵抗性が高く、その硬化体が高耐久化されるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0026】
[1]収縮低減剤:
本発明は、セメントを含有した水硬性結合材、骨材、及び、水を含む水硬性組成物に使用する収縮低減剤であって、下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物と酸化防止剤とを含
み、更に溶媒を含み、液状の収縮低減剤である。
【0027】
【化3】
R
1:炭素数6〜25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基
X,Y:それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基
OR
2,R
3O:それぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基
m,n:1〜299の整数であって、且つm+n=60〜300を満足する整数
【0028】
[1−1]式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
本発明の収縮低減剤(以下、本発明の収縮低減剤という)において式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物におけるR
1としては、例えば、ハイドロキノン、カテコール、ビナフトール、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−オール]プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから、水酸基を除いた残基などが挙げられる。R
1としては、下記式(2)で示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)骨格を有する基(残基)とすることでもよい。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンから、2個の水酸基を除いた残基であることが好ましい。これらの残基であると、収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、優れた凍結融解抵抗性を発揮する。
【0029】
【化4】
式(2)において、Zは、炭素数1〜13の直鎖状または分岐状のアルキレン基、或いは、スルホニル基である。
【0030】
式(1)におけるXとしては、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、2−メチル−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、2−プロピル−ヘプチル基、2−ブチル−オクチル基、2−ペンチル−ノニル基、2−ヘキシル−デシル基、2−ヘプチル−ウンデシル基、2−オクチル−ドデシル基、2−ノニル−トリデシル基等が挙げられる。なかでもXとしては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0031】
また、式(1)におけるYについては、Xと同様のものを挙げることができる。
【0032】
ここで、X及びYが水素原子であると、該化合物の合成の容易さ、原料入手、経済性の面から好ましい。
【0033】
式(1)においてOR
2は、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。OR
2が複数存在する場合には、2種類以上のオキシアルキレン基を使用してもよい。OR
2としては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が含まれることが好ましく、より好ましくはオキシエチレン基を50モル%以上含有し、更に好ましくはオキシエチレン基を90モル%以上含有するものである。なお、2種類以上のオキシアルキレン基が付加した場合、結合の順には特に制限はなく、ランダム結合でも良いし、ブロック結合でも良い。
【0034】
また、式(1)におけるR
3Oについても、OR
2について述べたことと同様である。
【0035】
OR
2及びR
3Oにおいて、OR
2とR
3Oを合計した全オキシアルキレン基中の90モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましい。収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、優れた凍結融解抵抗性を発揮する。
【0036】
式(1)において、m、nは、ポリオキシアルキレン基の付加モル数を示し、m+nはポリオキシアルキレン基の総付加モル数を示す。m及びnはそれぞれ1〜299の整数であり、好ましくは1〜219の整数である。また、m+nは、60≦m+n≦300であり、好ましくは70≦m+n≦220である。m+nが60より小さいと、凍結融解抵抗性が著しく低下し、m+nが大きすぎても製造コストがかかり現実的ではない。
【0037】
式(1)におけるX及びYが水素原子であるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法で製造することができる。
【0038】
例えば、R
1にフェノール性の2つの水酸基を有する化合物にアルキレンオキシドを付加することで得られる。アルキレンオキシドを付加する際には、触媒を用いることができる。アルキレンオキシドを付加重合する際の触媒としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属やそれらの水酸化物、アルコラート等のアルカリ触媒やルイス酸触媒、複合金属触媒を用いることができ、好ましくはアルカリ触媒である。
【0039】
アルカリ触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド等を挙げることができる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムブトキシドである。
【0040】
ルイス酸触媒としては、例えば、四塩化錫、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体等の三フッ化ホウ素化合物などが挙げられる。
【0041】
[1−2]酸化防止剤:
本発明の収縮低減剤における酸化防止剤としては、以下のフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。
【0042】
[1−2a]フェノール系化合物:
(1)フェノール系化合物としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−アニリノ)−2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール)、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、1,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が挙げられる。
【0043】
[1−2b]亜リン酸エステル系化合物:
(2)亜リン酸エステル系化合物としては、例えば、亜リン酸塩、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホネート、ジエチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホネート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0044】
[1−2c]アミン系化合物:
(3)アミン系化合物としては、例えば、n−ブチル−p−アミノフェノール、4,4’−ジメチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ビス−α、α’−ジメチルベンジルジフェニルアミン等が挙げられる。
【0045】
なお、これらの酸化防止剤は、単独、もしくは2種類以上併用してもよい。中でも、フェノール系の酸化防止剤がより好ましい。フェノール系の酸化防止剤を用いると、着色や析出がなく、水硬性組成物への影響がほとんど無いという利点がある。中でも、酸化防止効果が発揮されること及び経済性の面から、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールが好ましい。
【0046】
酸化防止剤の含有割合は、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物に対して、20〜5000質量ppm(20質量ppm〜0.5質量%)とすることができ、好ましくは40〜3000質量ppm、より好ましくは40〜1000質量ppmの割合で使用することができる。酸化防止剤を上記の含有割合で加えることで、ポリオキシアルキレン化合物が分解することなく、所望の性能が発揮されることになる。酸化防止剤の含有割合が少ない場合には、上記効果が少なく、また、酸化防止剤の含有割合が多くなりすぎても効果の影響はそれほど増加しない。
【0047】
本発明の収縮低減剤は、溶媒を含み、液状であ
る。つまり、本発明の収縮低減剤は、適宜、溶媒などで希釈し、液状として用い
る。液状とすることで、収縮低減剤を水硬性組成物に添加するときに、練り混ぜに用いる水と収縮低減剤を同時に添加することができ、収縮低減剤が均一に混合しやすい。また、練り混ぜた後、未だ固まっていない水硬性組成物をアジテータトラックで運搬する場合には、収縮低減剤をアジテータ内に添加することもあるが、液状の収縮低減剤とすることでアジテータ内に添加したとき、均一に混ざりやすいという長所を有する。
【0048】
[1−3]溶媒:
本発明の収縮低減剤を希釈する溶媒は、収縮低減剤を使用する温度範囲内で液状であるものなら特に制限されない。水硬性組成物に使用することから、水溶性の高いものが好ましい。具体的には、水やエタノール等のアルコール類、エチレングリコールやプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、また、収縮低減効果を有する、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献2参照)を用いても良い。中でも、コストや安全性の面からは溶媒として水を用いることが好ましい。
【0049】
本発明の収縮低減剤は、土木、建築、二次製品(例えば、プレキャスト部材など)等に用いられるセメントを含有する水硬性組成物に添加して使用するものであるが、その用途は特に限定されるものではない。なお、本発明の収縮低減剤が良好に機能する水硬性組成物は、少なくとも水、セメントを含有するペースト、モルタル、又はコンクリートである。
【0050】
本発明の収縮低減剤は、公知の添加剤(添加材)と併用することができる。一例を挙げれば、AE(Air Entraining)減水剤、高性能AE減水剤等の各種分散剤、空気量調整剤としてAE剤、消泡剤、他の収縮低減剤、増粘剤、硬化促進剤、硬化遅延剤や高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石微粉末、膨張材等が挙げられる。
【0051】
本発明の収縮低減剤の使用量は特に制限はないが、セメントを含む水硬性結合材100質量部あたり0.2〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部である。本発明の収縮低減剤の使用量は、コンクリートに適用する場合、単位容積当たりの使用量で示すこともできる。その場合、セメントの量を300kg/m
3とした場合は、0.6〜30kg/m
3とすることができ、好ましくは1.5〜24kg/m
3である。
【0052】
[2]水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物の調製に用いる水硬性結合材としては、セメントを含有するものである。このセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。
【0053】
また、本発明の水硬性組成物は、骨材を含有する。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、スラグ細骨材等が挙げられ、粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
【0054】
本発明の水硬性組成物において、水/水硬性結合材の割合(組成物中の水硬性結合材に対する水の百分率(質量%))は、10〜70質量%が好ましく、20〜60質量%が更に好ましく、30〜55質量%が特に好ましく、35〜55質量%が最も好ましい。
【0055】
本発明の水硬性組成物は、水硬性結合材100質量部当たり、本発明の収縮低減剤を0.2〜10質量部の割合で含有することが好ましい。このような割合で本発明の収縮低減剤を含有すると、収縮低減効果が良好になり更に凍結融解抵抗性が高くなる。
【0056】
また、本発明の水硬性組成物としては、セメントを含有した水硬性結合材、骨材、水、本発明の収縮低減剤、分散剤及び空気連行剤を用いて調製したものが好ましい。この場合にも、水硬性結合材100質量部当たり、本発明の収縮低減剤を0.2〜10質量部の割合で含有することが好ましい。なお、分散剤と空気連行剤とは、それぞれ従来公知のものを適宜採用することができる。
【0057】
また、本発明の水硬性組成物は、練り混ぜ直後の連行空気量が3〜7容量%の範囲のもの(特にコンクリート)であることが好ましい。この場合には、収縮低減効果及び凍結融解抵抗性が高くなり、顕著な所望の効果を発揮することになる。「練り混ぜ直後の連行空気量」とは、JIS−A1128に準拠して測定される連行空気量の値をいう。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また、%は質量%、ppmは質量ppmを意味する。
【0059】
実施例1
・収縮低減剤(EX−1)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」257.3g及び水酸化カリウム1.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド(表1中、「EO」と記す)1242.7gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和し、ろ過を行った後、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(表1中、「OX1」と記す)をろ過回収物に対して添加した。更に、溶媒としてイオン交換水を加えて、200ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−1)を得た。
【0060】
実施例2
・収縮低減剤(EX−2)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」318.9g及び水酸化カリウム3.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド2681.1gを0.4MPaのゲージ圧にて6時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。酸化防止剤としてハイドロキノン(表1中、「OX2」と記す)を回収物に対して添加した。更に、溶媒として上水道水を加えて、500ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−2)を得た。
【0061】
実施例3
・収縮低減剤(EX−3)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」338.5g及びtert−ブトキシカリウム10.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4661.5gを0.4MPaのゲージ圧にて7時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和し、ろ過を行った後に、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(OX1)をろ過回収物に対して添加した。更に、溶媒として上水道水を加えて、200ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−3)を得た。
【0062】
実施例4
・収縮低減剤(EX−4)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」272.5g及び水酸化カリウム5.0gを仕込んだ。次いで、反応系を130℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4727.5gを0.4MPaのゲージ圧にて8時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。85%リン酸(キシダ化学社製 試薬)を加えてpH6になるよう中和し、これに、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(OX1)を添加した。更に、イオン交換水を加えて、1000ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−4)を得た。
【0063】
実施例5
・収縮低減剤(EX−5)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン250.3g及びtert−ブトキシカリウム8.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、エチレンオキシドを176g仕込み、反応を開始した。圧力が低下することを確認後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4224.0gを0.4MPaのゲージ圧にて8時間かけて添加した。反応温度で1時間保持し、その後、回収した。キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和し、ろ過を行った後に、酸化防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(OX3)をろ過処理物に対して添加した。更に、溶媒としてイオン交換水を加えて、150ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−5)を得た。
【0064】
実施例6
・収縮低減剤(EX−6)の製造
収縮低減剤(EX−6)は、表1に示すように、実施例5において使用したビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンに代えて、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンを使用し、更に、エチレンオキシドの量を変化させたこと以外は、実施例5と同様にして製造した。
【0065】
実施例7
・収縮低減剤(ポリオキシアルキレン化合物)(EX−7)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」700.3g及び水酸化カリウム5.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4634gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した。更に同温度にてプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)を165g添加し、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和し、ろ過を行った後に、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(OX1)を添加した。更に、イオン交換水を加えて、200ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−7)を得た。
【0066】
実施例8
・収縮低減剤(ポリオキシアルキレン化合物)(EX−8)の製造
収縮低減剤(EX−8)は、表1に示すように、エチレンオキシド(表1中、「EO」と記す)及びプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)の量を変化させたこと以外は、実施例7と同様にして製造した。
【0067】
実施例9
・収縮低減剤(ポリオキシアルキレン化合物)(EX−9)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−60(三洋化成社製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」628.4g及び水酸化カリウム4.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド3371.7gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(150±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和し、ろ過を行った後に、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(OX1)を添加した。更に、イオン交換水を加えて、200ppmの酸化防止剤を含有し、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の質量濃度が50%の液状の収縮低減剤(EX−9)を得た。
【0068】
比較例1
・収縮低減剤(RE−1)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のジエチレングリコール106g及び水酸化カリウム4.4gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド4312gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和し、ろ過を行った後に、イオン交換水を加えて、濃度50%の液状の収縮低減剤(RE−1)を得た。
【0069】
比較例2
「ニューポールBPE−100(三洋化成社製)」をそのまま用いたものを収縮低減剤(RE−2)とした。
【0070】
比較例3
・収縮低減剤(RE−3)の製造
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE−40(三洋化成製、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計4モル付加物)」451.1g及び水酸化カリウム1.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、150±5℃に維持しながらエチレンオキシド1048.9gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(150±5℃)で1時間保持し、その後、回収した。キョーワード600(協和化学工業社製)を用いて中和し、ろ過を行った後に、これにイオン交換水を加えて、濃度50%の液状収縮低減剤(RE−3)を得た。
【0071】
比較例4
・収縮低減剤(RE−4)の製造
収縮低減剤(RE−4)は、水酸化カリウムの量を3.0gとし、更に表1に示すようにエチレンオキシドの量を変化させたこと以外は、比較例3と同様にして製造した。
【0072】
比較例5
・収縮低減剤(RE−5)の製造
収縮低減剤(RE−5)は、エチレンオキシドの付加及び水酸化カリウムの中和、ろ過を行い、酸化防止剤を加えないとしたこと以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0073】
以上で調製した各収縮低減剤の内容を表1にまとめて示した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の記載について以下に説明する。
※1 式(1)中の「R
1」は、この欄に記載された化合物から水酸基を除いた残基である。
※2 RE−2は、「ニューポールBPE−100(三洋化成社製)」をそのまま用いた。
※3 式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物に対する酸化防止剤の量(ppm)である。具体的には、酸化防止剤/ポリオキシアルキレン化合物×106により算出される値である。
OX1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
OX2:ハイドロキノン
OX3:ハイドロキノンモノメチルエーテル
m+n(平均総付加モル数)は、「EOモル数」と「POモル数」との和の値である。
【0076】
実施例10〜20、比較例6〜11
表1で示した収縮低減剤(水硬性組成物用収縮低減剤)をコンクリートに添加して以下の評価を行った。
【0077】
具体的には、表2に示した配合条件で、20℃の試験室内で50Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm
3)からなる水硬性結合材と、骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm
3)及び砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm
3)とを添加し、更に、AE減水剤として「チューポールEX60(竹本油脂社製)」をセメントに対して0.7〜1.0%と、更に表3に示した添加量で、収縮低減剤(表1参照)及び空気連行剤「AE−300(竹本油脂社製)」を、それぞれ所定量と、消泡剤である「AFK−2(竹本油脂社製)」を上記セメントに対して0.002%として練り混ぜ水(上水道水)の一部として計量し、ミキサーに投入して90秒間練混ぜた。スランプが15±1cm、連行空気量が4.5±0.5%の範囲となるよう、AE減水剤、空気連行剤の量を調整し、コンクリート組成物(水硬性組成物)を調製した。
【0078】
調製したコンクリート組成物について、スランプ、連行空気量、圧縮強度、乾燥収縮率、及び、凍結融解抵抗性の指標としての凍結融解耐久性の評価を行い、結果を表3にまとめて示した。
【0079】
・スランプ(cm):
連行空気量の測定と同時にJIS−A1101に準拠して測定した。
【0080】
・連行空気量(容量%):
練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
【0081】
・耐久性指数(凍結融解耐久性):
各コンクリート組成物の硬化体を作製し、この硬化体についてJIS−A1148に準拠して測定した値を用いてASTM−C−666−75の耐久性指数で計算した値を求めた。この数値は、最大値が100であり、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
【0082】
・長さ変化率(乾燥収縮率):
JIS−A1129に準拠し、各コンクリート組成物を20℃×60%RHの条件下で保存した材齢26週の供試体について、コンパレータ法により乾燥収縮ひずみを測定し、乾燥収縮率を求めた。この数値は小さいほど、乾燥収縮が小さいことを示す。
【0083】
・圧縮強度(N/mm
2)
JIS−A1108に準拠して試験を行った。20℃×80%RHの恒温室で鋼製型枠に充填し硬化させ、材齢1日で脱型し、水温20℃の養生槽にて所定の材齢まで養生した。
【0084】
【表2】
【0085】
表2中、「セメント」は、上述した普通ポルトランドセメントを示す。「細骨材」は、上述した陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm
3)を示し、「粗骨材」は、砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm
3)を示す。また、「細骨材率(%)」は、式:細骨材/粗骨材×100により算出した値を示す。また、「水/セメントの割合(%)」は、式:水/セメント×100により算出した値を示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3の記載について以下に説明する。
添加量:コンクリートの単位容積あたりの収縮低減剤の添加量(kg/m
3)
※1:製造後、空気穴を開けた容器に20℃で1年間保管した収縮低減剤を用いた。保管中、揮発分の水は適宜補った。
「セメントに対する%」は、セメント(水硬性結合材)100質量部に対する質量部を意味する。
【0088】
以上に示すように、本発明の収縮低減剤は、得られる水硬性組成物の乾燥収縮を低減するとともに凍結融解抵抗性が高く、水硬性組成物の硬化体の高耐久化を図ることができることが分かった。そして、本発明の収縮低減剤は、酸化防止剤を用いることで収縮低減剤の製造から期間が経過した後でも所望の性能を安定して得ることができることが分かった。
水硬性組成物に使用したとき、その硬化体の収縮を低減するだけでなく、優れた凍結融解抵抗性を付与し、且つ所望の性能を安定して発揮することができる収縮低減剤を提供する。セメントを含有した水硬性結合材、骨材、及び、水を含む水硬性組成物に使用する収縮低減剤であって、所定のポリオキシアルキレン化合物と酸化防止剤とを含む、収縮低減剤。