(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第四の貫通部は、第四の分離槽側の入口の高さと第四の分離槽外部への出口の高さが等しく、第四の分離槽側の入口と第四の分離槽外部への出口の間に前記第四の分離層側の入口の高さよりも低い貫通孔が設けられている請求項1記載の水土粒子除去装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例示に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る油水土粒子分離除去装置(以下「本装置」という。)1の上面から見た場合の概略を示す図であり、
図2は、断面における概略を示す図である。なお
図2は、第一乃至第四の分離槽の接続をわかりやすくするため、図中の点曲線A−A’に沿った断面図である。
【0014】
これらの図で示すように、まず、本装置1は、外容器2と、外容器1内に配置される内容器3と、を備えている。
【0015】
本装置1における外容器2は、土中に埋設される容器であって、底部211を備えた筒状部21と、この筒状部21の上に設けられる蓋部22と、を備えて構成されており、この内部に、浸透水槽となる空間23を有しつつ内容器3を配置する。
【0016】
また本装置1の外容器2の筒状部21においては、外側から雨水を流入させるための入口212、外側に水を排出させるための出口213、浄化水を排出する排出部214を備えている。
【0017】
また本装置1において入口212には、後述の記載から明らかとなるが、内容器3に雨水を流入させるための流入管が貫通して配置されており、雨水は内容器3に直接流入される。
【0018】
また本装置1において、浄化水を排出する排出部214は、内容器によって浄化された浄化水を後段の貯留浸透施設に排出させる部分であり、より具体的な構成としては貫通孔を有する構成となっている。
【0019】
また本装置1において、出口213は、上記排出部214よりも高い位置に備えられており、上記排出部214と同様、内容器によって浄化された浄化水を外容器外部に排出させるものではあるが、後段の貯留浸透施設への供給速度が許容範囲を超えた場合、強制的に外部に排出させるための部分である。この具体的な構成としては、貫通孔であって、この貫通孔が更に排出管に接続されていることが好ましい。
【0020】
また本装置1において、内容器3は、上記のとおり、外容器2内に設けられるものであり、筒状部材と、蓋部材とを備え、この内部に空間が形成されており、この空間が、仕切板によって少なくとも4つの空間に仕切られている。なお、この結果、内容器3は、第一の分離槽31、第二の分離槽32、第三の分離槽33、及び第四の分離槽34を備えている。
【0021】
まず内容器3の第一の分離槽31は、外部からの汚濁水を流入させる流入部311と、傾斜面を有する第一の多孔板312と、多孔板の下に配置される第二の多孔板313と、第二の多孔板より下に形成される第一の貫通部314と、を備えている。
【0022】
流入部311は、上記のとおり、外部からの汚濁水を流入させる部位であって、上記の記載からも明らかなとおり、外容器2の入口212を貫通する流入管に接続されており、流入部311から第一の分離槽31に汚濁水が流入することとなる。
【0023】
また第一の多孔板312は、上記のとおり、傾斜面を有して構成される多孔板である。ここで「多孔板」とは、多数の貫通孔が形成された板であって、その孔径は適宜調整可能であるが、第一の多孔板312の径としては、例えば1mm以上10mm以下の範囲であることが好ましい。また、第一の多孔板の材質としては、水を保持することができる限りにおいて限定されず、例えば金属(この場合は例えばパンチングメタル)、樹脂等を採用することができる。第一の多孔板312は、傾斜面を備えており、これが第一の分離槽31の中央近傍を取り囲むよう(すり鉢状)に形成されている。汚濁水は、まず、この傾斜面で囲まれる領域に供給されることになる。この結果、油や土粒子等が混入した汚濁水は、この領域で対流を起こし、結果的に攪拌されることとなる。
【0024】
また第一の多孔板312において、多孔板312における貫通孔3121は、内側から外側に行くに従い孔の位置が高くなっていること、より具体的には、内側の貫通孔の上端が外側の貫通孔の下端以下となっていることが好ましい。このようにすることで油、土粒子をこの多孔板312の中央近傍の領域に効率的に留め置くことが可能となる。より具体的には、油が付着した土粒子は水よりも軽い場合が多く、水面近傍に滞留することが多い。そのため、上記のように孔の位置を工夫することで、多孔板312の内側に油、土粒子がより多く滞留するようにする。
【0025】
また第一の分離槽31において、第二の多孔板313は、上記のとおり、第一の多孔板312の下に配置されるものである。第二の多孔板313によって、第一の多孔板312によってろ過された水を更にろ過することができる。また、第二の多孔板313を設けることで、第一の多孔板312によって激しく行われる対流による水の「暴れ」を抑えることができるようになる。なお第二の多孔板313は、水平面に対し略平行な方向となるよう配置されていることが好ましい。なお第二の多孔板の孔径としては、特に限定されるわけではないが、上記第一の多孔板312の孔径と同様の範囲を採用することができる。
【0026】
なお、本図では、第一の多孔板312の多孔板の底部と第二の多孔板313とは重複して設けられているが、これらは共通の部分を備えて一体として構成されていてもよい。
【0027】
また上記のとおり、第一の分離槽31では、第二の多孔板より下に形成される第一の貫通部314を備えている。第一の貫通部314は、第一の分離槽31と第二の分離槽32を仕切る仕切板315に形成されている。
【0028】
第一の貫通部314の具体的な構成については、限定されるわけではないが、貫通孔を備えていることはもちろんであるが、第一の分離槽側の入口の高さが第二の分離槽側の出口の高さよりも低くなるよう形成されていることが好ましい。このようにすることで、油や土粒子が第一の分離槽側に滞留することを促す効果がある。なお、この貫通部314の構成としては、特に限定されるわけではないが、例えば
図3で示すように、いわゆるパイプダクトを採用することが好ましい。
【0029】
また内容器3の第二の分離槽32は、上記のとおり、第一の貫通部314の上側に配置される第三の多孔板321と、第三の多孔板321の上に間隙を置いて配置される第四の多孔板322と、第四の多孔板の上に形成される第二の貫通部323と、を備えている。また本実施形態では、更に、第三の多孔板321と第四の多孔板322の間にろ過材324を備えている。
【0030】
まず、第二の分離槽32は、上記の記載から明らかなとおり、第一の貫通部314によって第一の分離槽31と接続されている。
【0031】
そして、第二の分離槽32の第三の多孔板321は、上記第二の多孔板313と同様の構成を採用することができ、その径も同様のものを採用することができる。この板の面も上記と同様、水平面に略平行であることが好ましい。
【0032】
また、第二の分離槽32の第四の多孔板322は、上記第三の多孔板321と同様の構成を採用することができ
る。このようにすることで、より水の流れを乱流から静流に近い状態に確保することができる。
【0033】
ところで、本図の例では、上記のとおり、第三の多孔板321と第四の多孔板322の間にろ過材324を備えている。ろ過材324を配置することで、第一の分離槽31において取りきれていない油や土粒子を捕獲することができる。
【0034】
ここでろ過材324としては、上記機能を満たすことができるものである限りにおいて限定されるわけではないが、例えばガラスカレットを用いることが好ましい。ガラスカレットを用いることで水のpHを調整し、より油、土粒子を捕獲しやすくなるといった利点があるだけでなく、多孔板の孔径よりもより小さな油、土粒子を捕獲しやすくなるといった効果もある。なお、ろ過材に適しているガラスカラットは、限定されるわけではないが、色つき瓶を破砕、粒径1mm〜3mm程度にしたものを使用することが好ましい。この粒径の締め固め時の間隙率は1mm43.6%、3mm32.6%程度であることが好ましく、その飽和透水係数は1mmでは1.14×10
−2cm/s程度、3mmでは1.30cm/s程度である。粒径1mm以下は、水と長時間接触するとアルカリ物質が溶出pH10超となってしまう場合があるためできる限り使用しないことが好ましい。粒径1mm〜3mm程度であれば、pH7〜8と安定しており酸性雨の中和能力も備えている観点から好ましい。
【0035】
また、第二の分離槽32の第二の貫通部323は、上記のとおり、第四の多孔板の上に形成されている。第二の貫通部323は、第二の分離槽32と第三の分離槽33を仕切る仕切板325に形成されている。
【0036】
第二の貫通部323の具体的な構成については、限定されるわけではないが、貫通孔を備えていることはもちろんであるが、第二の分離槽32側の入口の高さが第三の分離槽33側の出口の高さよりも低くなるよう形成されていることが好ましい。このようにすることで、油や土粒子が第二の分離槽側に滞留することを促す効果がある。なお、この第二の貫通部323の構成としては、特に限定されるわけではないが、例えば
図4で示すように、いわゆるパイプダクトを採用することが好ましい。
【0037】
また、本装置1において、第三の分離槽33は、上記のとおり、第二の貫通部323の下に形成される第五の多孔板331と、第五の多孔板331の下側に形成される第三の貫通部332と、を備えている。また、本装置1では、更に、第六の多孔板333を、第三の貫通部332と第五の多孔板331の間に設けている。
【0038】
まず、第三の分離槽33は、上記の記載から明らかなとおり、第二の貫通部323によって第二の分離槽32と接続されている。
【0039】
そして、第三の分離槽33における第五の多孔板331は、上記第四の多孔板322と同様の構成を採用することができるが、その径は、第四の多孔板322よりも小さい径であることが好ましい。このようにすることで、第四の多孔板322をすり抜けた油、土粒子を捕捉することが可能となる。なお、この板の面も上記と同様、水平面に略平行であることが好ましい。
【0040】
また、第三の分離槽33の第六の多孔板333は、第五の多孔板331と略平行に間隙をおいて配置されている。第六の多孔板333の材質については、上記五の多孔板331と同様のものを採用することができるが、第五の多孔板331の孔径以下となっていることが好ましい。このようにすることで、上記第五の多孔板331をすり抜けた油、土粒子を捕捉することが可能となるとともに、より静流を形成することができる。
【0041】
また、第三の分離槽33の第三の貫通部332は、上記のとおり、第五の多孔板331の下側、より具体的には第六の多孔板333の下側に形成されている。第三の貫通部332は、第三の分離槽33と第四の分離槽34を仕切る仕切板334に形成されている。
【0042】
第三の貫通部332の具体的な構成については、限定されるわけではないが、貫通孔を備えていることはもちろんであるが、第三の分離槽側の入口の高さが第四の分離側の出口の高さよりも低くなるよう形成されていることが好ましい。このようにすることで、油や土粒子が第二の分離槽側に滞留することを促す効果がある。なお、この貫通部332の構成としては、特に限定されるわけではないが、例えば
図5で示すように、いわゆるパイプダクトを採用することが好ましい。
【0043】
また、本装置1において、第四の分離槽34は、第三の貫通部332の上に形成される第七の多孔板341と、第七の多孔板341の上側に形成される第四の貫通部342と、を備えている。また、第四の分離槽34では、第七の多孔板341と第四の貫通部342の間に、第八の多孔板343を、第七の多孔板341と間隙を置いて略平行に配置されている。
【0044】
まず、第四の分離槽34は、上記の記載から明らかなとおり、第三の貫通部332によって第三の分離槽33と接続されている。
【0045】
そして、第四の分離槽34の第七の多孔板341は、上記第六の多孔板333と同様の材質、構成を採用することができるが、その径は、第六の多孔板333の孔径よりも小さな孔径を有していることが好ましい。このようにすることで、第五の多孔板331、第六の多孔板333をすり抜けた油、土粒子を捕捉することが可能となるとともに、水面をより静かな状態とすることができる。なお、第七の多孔板341の面も上記と同様、水平面に略平行であることが好ましい。
【0046】
また、第四の分離槽34の第八の多孔板343は、第七の多孔板341と略平行に間隙をおいて配置されている。第八の多孔板343の材質については、上記第七の多孔板341と同様のものを採用することができるが、第七の多孔板341の孔径以下となっていることが好ましい。このようにすることで、上記第七の多孔板341をすり抜けた油、土粒子を補足することが可能となるとともに、より静かな状態を維持することができる。
【0047】
また、第四の分離槽34の第四の貫通部342は、上記のとおり、第七の多孔板341の上側、より具体的には第八の多孔板343の上側に形成されている。第四の貫通部342は、内容器3の筒状部分に形成されている。
【0048】
第四の貫通部342の具体的な構成については、限定されるわけではないが、貫通孔を備えていることはもちろんであるが、第四の分離槽側の入口の高さと第四の分離槽外部への出口の高さが等しく、第四の分離槽側の入口と第四の分離槽外部への出口の間に第四の分離層側の入口の高さよりも低い貫通孔が設けられていることが好ましい。この場合の例を
図6に示しておく。なお、この貫通部314の構成としては、特に限定されるわけではないが、本図で示すように、いわゆるパイプダクトを採用することが好ましい。
【0049】
ここで、本装置の油水土粒子分離除去の機能について説明しておく。まず、本除去装置に流入した汚濁雨水において、第一分離槽の多孔板の孔径より大きな汚濁物質は、分離され槽内に留まる。このとき、土粒子や、粉塵に付着している油脂分は、雨水の流入落下地点を中心に発生する2つの縦対流と共に雨水の流入が止むまで、第一の分離槽内を循環する。この対流に揉まれることで多くの油脂分は剥離される。なお、雨水の流入が止まると共に、対流が静止、油脂分や、比重の軽い物質は、水面にとどまり、重い物質は自然沈下する。完全に油脂分が剥離しない土粒子は貯留水位の中間を浮遊し槽内に留まる。
【0050】
そして、その他の微細物質は、降雨中、雨水と共に第二の分離槽に進入するが、第二の分離槽のろ過材を通過するときに、ろ過材にホールドされ間隙中に留まる。この時点で多くの物質は分離されるが、さらに、第二の分離槽を通過した物質は第三の分離槽に取り付けられた2枚の多孔板により阻害される。第四の分離槽の出口の底部まで水位上昇すると、排出部から流出土壌浸透により処理される。浸透処理能力が流入水量に追いつかないときは、水位上昇、装置上部の出口から流出する。この時、吐出される水は、流入時の物質が分離されており土壌特性を阻害することはなく、浸透能力は継続する。浸透時、時間経過とともに、浸透により第四の分離槽の水位が低下すると、第一乃至第三の分離槽の中間水位(設定水位)までの雨水も移動、吐出される。第四の分離槽からの吐出が止んだ時点で、第一乃至第四の分離槽の槽内水位は、等しくなる。そして第一から第四の分離槽までの水位が等しくなった時点から、次の降雨までの間、各槽の水面も静止するので、進入した物質は、沈殿、浮遊して各槽に留まる。
【0051】
そして次の降雨時、第一の分離槽の水面は流入に伴い攪乱され水位も上昇、順次第二乃至第四の分離槽の水位も静かに上昇するが、浮遊物の巻き込み、沈殿物質の巻き上げ現象は、多孔板により阻止される。またこの装置の各槽、及び、蓋、多孔板、ろ過材は、簡単に維持管理ができるよう引き抜き、又は、自在に取り外しができるように構成されていることが好ましい。
【0052】
また、本装置の形状は丸型を基本とするが正方形、矩形であってもよい。また、装置規模は集水面積、確立年別降雨強度、その他、外的条件により自在に変更できる。また、材質は問わない。
【0053】
また、本装置において、第四の分離槽に取り付けられた2枚の多孔板の間に、指定された物質の削減を望む場合は、その物質に効果的な濾過材を不織布に包み装着できる構造としてもよい。
【0054】
また、本装置は、大型装置を必要とする場合は、維持管理用のマンホール蓋を取り付けできる。
【0055】
以上、本実施形態によると、いわゆるファーストフラッシュ現象にも対応することができる信頼性の高い油水土粒子分離除去装置を提供することができる。
【0056】
なお本装置の結果、大型の施設(行政の管理する浄水場、企業の大型プラント等)においては、沈殿槽、凝固材、濾過材、膜濾過、オゾンなどを利用、汚濁物質の分離殺菌装置を備えている施設はあるが、施設設置面積や、多額の維持管理費を必要とし、住宅開発や、小規模、中規模の多い一般商業施設、既存道路、駐車場などへの設置は、制限がある。最近は、大気も汚染が進み、晴天時、各種の浮遊粉塵が建物屋根面、道路、駐車場に堆積しており、初期降雨時(10mm程度)、その物質移動は、ピークとなる。特に土壌浸透施設においては、屋根面に堆積した浮遊粉塵や、道路、駐車場から流入する土粒子には、油脂分が付着しており、この流入汚濁物質を分離、削減しないと河川湖沼の水質悪化や、自然土壌の間隙中に進入、土壌特性や土壌浸透能力が阻害されるなど、環境悪化要因となっていることが判明している。
【0057】
他方、従来洪水対策施設の主流は、調整池方式であるが、近年、貯留浸透施設が多く設置されている。初期降雨時、ファーストフラッシュ現象により調整池や、貯留浸透施設に流入する雨水は移動物質により汚濁されている。これまでの調査から、ファーストフラッシュ対策を講じていないこれらの施設は、流入水濁度よりも、流出雨水の方が濁度は高い。原因は、流入堆積した汚濁物質の適切な維持管理がされておらず降雨時、堆積物を巻き上げて流出するからである。
【0058】
それに対し、本発明では、外容器及び内容器を設け、更に内容器を複数の分離槽、少なくとも4以上の分離槽に分けることで捕捉し多段に分離、静水処理を施すことで油脂分や土粒子を各槽に滞留させるとともに浄化された水を容器外に排出することができる。特に本装置では一度水面に滞留した油や沈殿した土粒子は次の分離槽に行かないよう構成されているため、上記のとおりファーストフラッシュにも十分対応できる。