特許第6649581号(P6649581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649581低粘度の可塑剤を配合した塩化ビニル系ペーストゾル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649581
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】低粘度の可塑剤を配合した塩化ビニル系ペーストゾル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20200210BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08K5/12
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-18194(P2016-18194)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-137391(P2017-137391A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上貴博
(72)【発明者】
【氏名】吉近匠生
(72)【発明者】
【氏名】辻泰樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎謙一
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007184(JP,A)
【文献】 特開2014−189688(JP,A)
【文献】 特開平06−279642(JP,A)
【文献】 特表2009−504851(JP,A)
【文献】 特開2000−178394(JP,A)
【文献】 特公昭48−032767(JP,B1)
【文献】 特開2015−193817(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/045928(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト用塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含有する塩化ビニル系ペーストゾル組成物であって、前記可塑剤が、20℃で測定した粘度が70mPa・s以下であるフタル酸ジエステル及び/又は20℃で測定した粘度が200mPa・s以下であるトリメリット酸トリエステルからなる低粘度の可塑剤であることを特徴とする塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【請求項2】
前記可塑剤が、下記一般式(1)で示されるフタル酸ジエステル及び/又は下記一般式(2)で示されるトリメリット酸トリエステルである、請求項1に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【化1】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【化2】

[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【請求項3】
前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である、請求項2に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【請求項4】
前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%である、請求項3に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【請求項5】
前記フタル酸ジエステルの20℃における粘度が、40〜70mPa・sの範囲である、請求項1〜4の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【請求項6】
前記トリメリット酸トリエステルの20℃における粘度が、100〜200mPa・sの範囲である、請求項1〜4の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物を用いて成形された塩化ビニル系樹脂成形体。
【請求項8】
下記一般式(1)で示されるフタル酸ジエステル及び/又は下記一般式(2)で示されるトリメリット酸トリエステルからなる塩化ビニル系ペーストゾル用の可塑剤。
【化3】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【化4】

[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーストゾルに必要なゾル特性、即ち粘度が低く、保存安定性にも優れた特性を有し、かつ耐熱性、耐寒性や柔軟性などの成形体の特性も良好な塩化ビニル系ペーストゾル組成物及びその成形体に関し、詳しくは、低粘度のフタル酸ジエステル及び/又はトリメリット酸トリエステルを含むペーストゾル用可塑剤を含有してなる塩化ビニル系ペーストゾル組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、ペーストゾル用の塩化ビニル系樹脂を充填剤等やその他の配合剤とともに可塑剤を主成分とする液状成分中に分散し、ペーストゾルを形成することにより得られる。得られたペーストゾルは、コーティング成形、スプレー成形、浸漬成形、回転成形、スラッシュ成形、スプレッド成形、カレンダー成形、押し出し成形などの方法により成形した後、加熱溶融することにより、目的とする成形体を得ることができる。上記ペースト加工法は、加工の容易さから、広く使われている。
【0003】
ペーストゾルには、大きく分けて2つの性能、即ちペーストゾルとしての性能とそれを加工した後の成形体としての性能が要求される。1つ目のペーストゾルとしての性能としては、加工性に優れること、即ち適度な粘度特性(低粘度)と、ペーストゾルとしての保存安定性、即ち沈降性や粘度安定性に優れることが求められる。また、2つ目の成形体としての性能としては、柔軟性だけでなく、自動車部材や電材関係での耐熱性、更に寒冷地等の使用に耐える耐寒性等、様々な特性を満足するものが求められている。
【0004】
前述の配合剤の中でも、特に可塑剤は、ゾルの流動特性や粘度の安定性などのペーストゾルとしての性能、更には得られた成形体の耐熱性、耐寒性や柔軟性などの基本的な特性に大きな影響を及ぼし、その選択は非常に重要である。
【0005】
代表的なペーストゾル用可塑剤としては、例えばフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)及びフタル酸ジイソノニル(DINP)に代表されるフタル酸エステル系の塩化ビニル用可塑剤が知られており、汎用的に使用されている。また、耐熱性の要求される用途では、例えばトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(以下、「TOTM」という)に代表されるトリメリット酸エステル系の塩化ビニル用可塑剤が知られており、広く使用されている(特許文献1)
【0006】
上記汎用のフタル酸エステルやトリメリット酸エステルは安価であり、また成形後にバランスの良い性能が得られることより他の可塑剤では代替し難いのが現状であるが、もう1つの要求性能である粘度等のゾル特性の面で必ずしも十分であるとは言えず、その改善が望まれてきた。
【0007】
これまでにも、ゾル特性の改善、即ち粘度の低減方法として様々な方法が検討されてきた。例えば、アルキルベンゼン、ミネラルスピリット、パラフィンなどの炭化水素系化合物、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルなどに代表される減粘剤を配合する方法などが既に実用化されているが、その多くは揮発性が高く、最近の壁紙・床材等のインテリア材料用途を始めとした有機化合物が室内で揮発しにくい低VOC(揮発性有機化合物、Volataile Organic Compaounds)化の流れに対応できなくなっており、その対応策が求められている(特許文献2〜5)。また、安息香酸エステルなどの比較的粘度の低い可塑剤を使う方法なども提案されているが、成形後の性能面で上記フタル酸エステルやトリメリット酸エステルと比較すると、満足する性能とは言えないのが現状である。従って、成形後の性能面での低下がないペーストゾルに適した低粘度なフタル酸エステルやトリメリット酸エステルの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−279485号公報
【特許文献2】特開2005−232381号公報
【特許文献3】特開2007−31664号公報
【特許文献4】特表2010−536991号公報
【特許文献5】特開2011−79935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を解決できる、即ち耐熱性、耐寒性や柔軟性等の成形後の性能を損なうことなく、ゾル特性の改善された低粘度なフタル酸ジエステル及び/又はトリメリット酸トリエステルを含む塩化ビニル系ペーストゾル用可塑剤、及び該可塑剤を含有してなるゾル特性に優れ、かつ耐熱性、耐寒性や柔軟性が良好な塩化ビニル系成形体の得られる塩化ビニル系ペーストゾル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、特定の構造の飽和アルコールとのエステルから構成されるフタル酸ジエステル及びトリメリット酸トリエステルが、従来のフタル酸ジエステルやトリメリット酸トリエステルと比較して低粘度であることを見出し、その結果、その低粘度なフタル酸ジエステルやトリメリット酸トリエステルを含む可塑剤を含有することによりゾル特性に優れ、かつ耐熱性、耐寒性や柔軟性が良好な塩化ビニル系成形体及びその原料である塩化ビニル樹脂系ペーストゾル組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の低粘度の塩化ビニル系ペーストゾル用可塑剤及び該可塑剤を含有してなる塩化ビニル系ペーストゾル組成物並びにその塩化ビニル系ペーストゾル成形体を提供するものである。
【0012】
[項1] ペースト用塩化ビニル系樹脂及び可塑剤を含有する塩化ビニル系ペーストゾル組成物であって、前記可塑剤が、20℃で測定した粘度が70mPa・s以下であるフタル酸ジエステル及び/又は20℃で測定した粘度が200mPa・s以下であるトリメリット酸トリエステルからなる低粘度の可塑剤であることを特徴とする塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【0013】
[項2] 前記可塑剤が、下記一般式(1)で示されるフタル酸ジエステル及び/又は下記一般式(2)で示されるトリメリット酸トリエステルである、[項1]に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【化1】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【化2】

[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【0014】
[項3] 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である、[項2]に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【0015】
[項4] 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%である、[項3]に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【0016】
[項5] 前記フタル酸ジエステルの20℃における粘度が、40〜70mPa・sの範囲である、[項1]〜[項4]の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【0017】
[項6] 前記トリメリット酸トリエステルの20℃における粘度が、100〜200mPa・sの範囲である、[項1]〜[項4]の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
【0018】
[項7] [項1]〜[項6]の何れかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物を用いて成形された塩化ビニル系樹脂成形体。
【0019】
[項8] 下記一般式(1)で示されるフタル酸ジエステル及び/又は下記一般式(2)で示されるトリメリット酸トリエステルからなる塩化ビニル系ペーストゾル用の可塑剤。
【化3】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【化4】

[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【発明の効果】
【0020】
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、特定の構造を有するフタル酸ジエステルまたはトリメリット酸トリエステルからなる低粘度の可塑剤を含有することを特徴とする、ゾル特性に優れ、かつ耐熱性、耐寒性や柔軟性が良好な塩化ビニル系成形体の得られる塩化ビニル系ペーストゾル組成物であり、その塩化ビニル系ペーストゾル組成物を使うことにより、成形加工性が大きく向上し、耐熱性、耐寒性や柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂成形体を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<塩化ビニル系ペーストゾル組成物>
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、下記に示す構造のエステルからなる成形後の性能面にも優れている低粘度の可塑剤をペーストゾル用塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
【0022】
[可塑剤]
本発明に係る上記可塑剤は、従来のフタル酸ジエステルやトリメリット酸トリエステルと比較して粘度が低いことが特徴であり、具体的には、20℃で測定した粘度が、フタル酸ジエステルの場合には70mPa・s以下であり、トリメリット酸トリエステルの場合には200mPa・s以下であることを特徴とする。
【0023】
20℃で測定した粘度が、上記の範囲にあれば、上述の様な減粘剤を配合しないか、配合しても成形後の性能に影響がない程度に少量の配合で、加工性に優れた良好なゾル特性が得られる。
【0024】
より具体的には、本発明に係る上記可塑剤は、下記一般式(1)で示されるフタル酸ジエステル(以下、「本エステル1」という。)または下記一般式(2)で示されるトリメリット酸トリエステル(以下、本エステル2)という。)からなることを最大の特徴としている。
【化5】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【化6】

[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつその飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
【0025】
上記本エステル1及び本エステル2は、特定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。また、公知の方法を用いてエステル交換反応により製造することも可能であるが、後述ではエステル1及びエステル2の製造方法の一例としてエステル化反応を説明する。
【0026】
[アルコール成分]
上記本発明で用いる特定のアルコール成分は、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールであり、主成分である炭素数9の飽和脂肪族アルコールの割合が、本発明で用いる飽和脂肪族アルコール中に、好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)、より好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、特に好ましくは80%重量以上(80〜100重量%)であることが推奨される。
【0027】
また、上記飽和脂肪族アルコールは、その直鎖率が、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であることが推奨される。また、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が、本発明に用いる飽和脂肪族アルコール中に、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であることが推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール(例えば、2−メチルオクタノール等)の含有量が、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であることが推奨される。
【0028】
本発明で用いる飽和脂肪族アルコールの態様の詳細として、該飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールが主成分(好ましくは60重量%以上)であり、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。より好ましい態様としては、該飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは70重量%以上)とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である態様が推奨され、特に好ましい態様としては、飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは80重量%以上)とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が80重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと20重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が80%以上である態様が推奨される。
【0029】
直鎖率が60%以上であり、かつ炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%以上であれば、良好な耐熱性、耐寒性や柔軟性を保持しつつ、ゾル特性の向上が可能である。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において、飽和脂肪族アルコールの直鎖率とは、該飽和脂肪族アルコール中に占める直鎖アルコールの割合(重量比)であり、本発明の効果の観点から、実質的には炭素数7〜11の直鎖アルコールが占める割合とも言え、具体的にはガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
【0031】
上記の炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの具体例(市販品)としては、約80重量%以上の直鎖状のノナノールと約20重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるシェルケミカルズ社製のリネボール9(商品名)や約90重量%以上の直鎖状のノナノールと約10重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるオクセア社製のn−Nonanol等が挙げられる。
【0032】
また、上記の炭素数9の飽和脂肪族アルコールは、例えば、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造することができる。
【0033】
(1)の工程であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0034】
(2)の工程である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
【0035】
[エステル化反応]
本発明に係るエステル化反応とは、上記アルコール成分とフタル酸若しくはその無水物、またはトリメリット酸若しくはその無水物とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、フタル酸若しくはその無水物1モルに対して、好ましくは2.05モル〜4.00モル、より好ましくは2.10モル〜3.00モル、特に2.15〜2.50モル、トリメリット酸若しくはその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。
【0036】
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0037】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
【0038】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0039】
本エステルの原料の酸成分である、フタル酸若しくはその無水物及びトリメリット酸若しくはその無水物は、特に制約はなく、通常使用されている市販のものを使用することができる。また、エステル化反応の観点から、上記フタル酸無水物やトリメリット酸無水物を使用することが最も推奨される。
【0040】
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0041】
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0042】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着処理等により精製してもよい。
【0043】
吸着処理に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0044】
上記エステル化後の精製処理は、常温で行っても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0045】
<塩化ビニル系ペーストゾル組成物>
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、上述した本エステル1及び/又は本エステル2(以下、まとめて「本エステル」と総称する)を、可塑剤としてペースト用塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
【0046】
[ペースト用塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられるペースト用塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、例えば、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法や、水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜6000であり、好ましくは400〜5000、さらに好ましくは700〜4500である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
【0047】
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
【0048】
[塩化ビニル系ペーストゾル組成物]
塩化ビニル系ペーストゾル組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜300重量部であり、好ましくは5〜200重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、300重量部を越えて配合した場合には、成形体表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系ペーストゾル組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、本エステルを1〜500重量部程度配合することができる。
【0049】
塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、本エステルと共に他の公知の可塑剤を本発明の効果を奏する範囲で併用することができる。又、必要に応じてプラスチック用として通常使用されている公知の安定剤、安定化助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、充填剤、着色剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、希釈剤、減粘剤、増粘剤、発泡剤あるいは接着剤等の添加剤を本発明の効果を奏する範囲で配合することができる。
【0050】
上記本エステル以外の他の可塑剤、添加剤は、1種でまたは2種以上適宜組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。
【0051】
本エステルと併用することができる公知の可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、本発明の範囲外のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、本発明の範囲外のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の二塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)等の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸1.4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる可塑剤を配合する場合、その配合量は、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜300重量部程度が推奨される。
【0052】
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。又、安定剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0053】
安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。又、安定化助剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0054】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。又、酸化防止剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
【0055】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。又、紫外線吸収剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0056】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。又、光安定剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0057】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライトなどの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。又、充填剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜150重量部程度が推奨される。
【0058】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、フタロシアニン緑、コバルト青、フタロシアニン青、モリブデン橙などが例示される。又、着色剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0059】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。又、加工助剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0060】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。又、滑剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0061】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。又、難燃剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0062】
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。又、帯電防止剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0063】
希釈剤としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートや低沸点の脂肪族系、芳香族系の炭化水素などが例示される。又、希釈剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する希釈剤の配合量は1〜50重量部程度が推奨される。
【0064】
減粘剤としては、各種非イオン系界面活性剤、スルフォサクシネート系アニオン界面活性剤、界面活性をもったシリコーン系化合物、大豆油レシチン、一価アルコール類、グリコールエーテル類、ポリエチレングリコール類などが例示される。又、減粘剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する減粘剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0065】
増粘剤としては、合成微粉シリカ系、ベントナイト系、極微細沈降炭酸カルシウム、金属石鹸系、水素添加ひまし油、ポリアミドワックス、酸化ポリエチレン系、植物油系、粒酸エステル系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが例示される。又、増粘剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する増粘剤の配合量は1〜50重量部程度が推奨される。
【0066】
発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機発泡剤、重曹等の無機発泡剤などが例示される。又、発泡剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する発泡剤の配合量は0.1〜30重量部程度が推奨される。
【0067】
接着剤としては、ウレタン系、アクリレート系、イミド系、アミド系、エポキシ系、シリコーン系などの市販の接着剤が例示される。又、接着剤を配合する場合、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対する接着剤の配合量は0.05〜50重量部程度が推奨される。
【0068】
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、本エステル、ペースト用塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバ、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の高速ミキサー、三本ロールミル等の混合・混練り機により撹拌することで、塩化ビニル系ペーストゾル組成物とすることができる。
【0069】
<塩化ビニル系ペーストゾル成形体>
本発明に係る塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、コーティング成形、スプレー成形、浸漬成形、回転成形、スラッシュ成形、スプレッド成形、カレンダー成形、押し出し成形などの方法により成形した後、加熱溶融することにより、所望の形状の成形体に成形することができる。
【0070】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0071】
かくして得られた成形体は、自動車の内装材やボディーシーラー、アンダーボディコート等の自動車部材、壁紙、クッションフロア、タイルカーペット、その他床材、塩ビ鋼板、マーキングフィルム、帆布、防水シート、缶コート、缶シール、シーラ、シールテープ、玩具、ブーツ、手袋、食品模型、レザー、字消し、医療用手袋、医療用チューブ、血液バック、輸液バック、擬似餌、漁網用フロート等に有用である。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0073】
(1)飽和脂肪族アルコールの組成と直鎖率
本発明の実施例及び比較例で用いる可塑剤中及びエステル化反応の原料アルコール成分である飽和脂肪族アルコールの組成と直鎖率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコールである飽和脂肪族アルコールの組成比と本エステル中の飽和脂肪族アルコールの組成比に差異がないことは、予め確認している。
【0074】
(2)エステルの物性評価
下記の製造例で得られたエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色数:JIS K−0071(Hazen)(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
粘度:JIS Z−8803(2011)に準拠して、(株)東京計器製B形粘度計を用いて20℃における粘度(mPa・s)を60rpmにて測定した。ローターはNo.2(B8L型)を用いた。
【0075】
(3)塩化ビニルペースト組成物のゾル粘度
ペースト用塩化ビニル樹脂(重合度1100、商品名「Zest P22」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に可塑剤70重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニルペーストゾル組成物とした。得られた塩化ビニル系ペーストゾル組成物のゾル粘度(Ps・s)をB型粘度計(ローターNo.4(B8H形)、5rpm、1分後の値)で測定した。このペーストゾル組成物を温度25℃、湿度60%の条件で7日間熟成し、調整直後(ゾル粘度初期)と7日間熟成後(ゾル粘度7日後)のゾル粘度(Pa・s)を測定した。
【0076】
(4)塩化ビニルペーストゾル組成物の調製及びそれからなる塩化ビニルシートの作製
ペースト用塩化ビニル樹脂(重合度1100、商品名「Zest P22」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.9及び0.6重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤70重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニルペーストゾル組成物とした。調製したペーストゾル組成物をステンレス板上に約1mm厚でコーティングし、185℃のオーブン中で15分間加熱してゲル化させ、冷却後得られた塩化ビニルシート(塩化ビニル系ペーストゾル成形体)を用いて測定した。
【0077】
[樹脂の物性評価]
(4)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、シートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
【0078】
(5)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×103kg/cm2)を示す低温限界の温度を指す。
【0079】
(6)耐熱性:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、シートを150℃で30分、60分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記(式2)により重量減少率(重量%)を算出し、その重量減少率を以て揮発減量とした。揮発減量の値が小さいほど、耐熱性が高いと言える。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100 (式2)
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、シートを150℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により4段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 △:着色、 ×:強い着色
【0080】
[製造例1]
温度計、デカンター、撹拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、無水フタル酸74.1g(0.5モル)、飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)173.1g(1.2モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.2gを加え、反応温度を190℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするフタル酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)178gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:267mgKOH/g、酸価:0.07mgKOH/g、色数:10、粘度(20℃):58mPa・sであった。
【0081】
[製造例2]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)173.1gの代わりにn−ノニルアルコール164.4g(1.14モル)とイソノニルアルコール8.7g(0.06モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、フタル酸ジエステル(以下、「エステル2」という。)180gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:267mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色数:20、粘度(20℃):50mPa・sであった。
【0082】
[製造例3]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)173.1gの代わりにn−ノニルアルコール121.2g(0.84モル)とイソノニルアルコール51.9g(0.36 モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、フタル酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)174gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色数:20、粘度(20℃):63mPa・sであった。
【0083】
[製造例4]
温度計、デカンター、撹拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、無水トリメリット酸96.1g(0.5モル)、飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを加え、反応温度を190℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「エステル4」という。)245gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色数:10、粘度(20℃):150mPa・sであった。
【0084】
[製造例5]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール245g(1.7モル)とイソノニルアルコール14g(0.1モル)を加えた以外は製造例4と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル5」という。)242gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:20、粘度(20℃):150mPa・sであった。
【0085】
[製造例6]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール173g(1.2モル)とイソノニルアルコール87g(0.6モル)を加えた以外は製造例4と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル6」という。)240gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:282mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色数:20、粘度(20℃):180mPa・sであった。
【0086】
[製造例7]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりに2−エチルヘキサノール234.4g(1.8モル)を加えた以外は製造例4と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル7」という。)204gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:10、粘度(20℃):310mPa・sであった。
【0087】
[製造例8]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソノニルアルコール259.7g(1.8モル)を加えた以外は製造例4と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル8」という。)236gを得た。
得られたエステル8は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色数:10、粘度(20℃):310mPa・sであった。
【0088】
[製造例9]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソデシルアルコール285g(1.8モル)を加えた以外は製造例4と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル9」という。)250gを得た。
得られたエステル9は、エステル価:264mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色数:20、粘度(20℃):610mPa・sであった。
【0089】
[実施例1]
製造例1で得られたフタル酸ジエステル(エステル1)を用いて、上記「(3)塩化ビニル系ペーストゾル組成物のゾル粘度」及び「(4)塩化ビニル系ペーストゾル組成物の調製及びそれからなる塩化ビニルシートの作製」の記載に従って、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて得られた塩化ビニルペーストゾル組成物より塩化ビニルシートを作製し、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
【0090】
[実施例2]
エステル1の代わりにエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0091】
[実施例3]
エステル1の代わりにエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0092】
[実施例4]
エステル1の代わりにエステル4を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0093】
[実施例5]
エステル1の代わりにエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0094】
[実施例6]
エステル1の代わりにエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0095】
[比較例1]
エステル1の代わりにフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP、粘度(20℃):77mPa・s)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0096】
[比較例2]
エステル1の代わりにフタル酸ジイソノニル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDINP、粘度(20℃):84mPa・s)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0097】
[比較例3]
エステル1の代わりにフタル酸ジイソデシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDIDP、粘度(20℃):140mPa・s)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0098】
[比較例4]
エステル1の代わりにエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0099】
[比較例5]
エステル1の代わりにエステル8を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0100】
[比較例6]
エステル1の代わりにエステル9を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調整し、続いて塩化ビニルシートを作成して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1の結果より、本発明のフタル酸ジエステルを含む塩化ビニル系ペーストゾル組成物(実施例)は、現在使われている汎用のフタル酸ジエステルを含む塩化ビニル系ペーストゾル組成物(比較例)と比べて、低粘度であることがわかる。この結果は、本発明のフタル酸ジエステルを使うことにより、ゾル特性、即ち得られたペーストゾル組成物の加工性に優れていることを示して
いる。また、この結果は、上記エステルそのものの粘度と相関しており、即ちエステルそのものの粘度が低いことが得られたペーストゾルの特性、即ち加工性の向上に寄与していることを示している。更に、本発明のフタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系ペーストゾルより得られた塩化ビニル系ペーストゾル成形体が、柔軟性が良好であり、かつ優れた耐寒性、耐熱性を有していることがわかる。この結果が、本発明のフタル酸ジエステルを用いることが、成形後の性能面でも非常に優位であることを示している。同様に、本発明のトリメリット酸トリエステルを含む塩化ビニル系ペーストゾル組成物(実施例)は、現在使われている汎用のトリメリット酸トリエステルを含む塩化ビニル系ペーストゾル組成物(比較例)と比べて、低粘度であることがわかる。この結果は、本発明のトリメリット酸トリエステルを使うことにより、ゾル特性、即ち得られたペーストゾル組成物の加工性に優れていることを示している。また、この結果は、上記エステルそのものの粘度と相関しており、即ちエステルそのものの粘度が低いことが得られたペーストゾルの特性、即ち加工性の向上に寄与していることを示している。更に、本発明のトリメリット酸トリエステルを含有する塩化ビニル系ペーストゾルより得られた塩化ビニル系ペーストゾル成形体が、柔軟性が良好であり、かつ優れた耐寒性、耐熱性を有していることがわかる。この結果が、本発明のトリメリット酸トリエステルを用いることが、成形後の性能面でも非常に優位であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、ゾル特性に優れ、かつ耐熱性、耐寒性や柔軟性が良好な塩化ビニルペーストゾルとして使うことができ、その塩化ビニルペーストゾルから得られた成形体は、レザーなどの自動車用部材や壁紙、床材などの建築材料、更にはシーリング材、アンダコート材、玩具、手袋、履物、医療用途など、様々な用途において非常に有用である。