(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、例えば、電気自動車である電動車両1は、二次電池であるバッテリ2と、このバッテリ2からの電力供給により作動する駆動用モータ(回転電機)3とを備えている。駆動用モータ3は、駆動機構4を介して駆動輪(本実施形態では、前輪)5に連結されている。駆動機構4としては、例えば、CVT(無段自動変速機)、デファレンシャルギア等が挙げられる。駆動用モータ3は、駆動機構4を介して駆動輪5を駆動させる一方、いわゆる回生動作時には、駆動輪5からの回転を受けて発電し、その電力をバッテリ2に供給する。このような駆動用モータ3とバッテリ2との間の電力の受給は、ECU(電子制御ユニット)6によって制御される。
【0018】
なおECU6は、CPU(マイクロプロセッサ)やROM、RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、ソフトウェアとして、モータの制御を含む各種の制御を行うための制御プログラムを備えている。
【0019】
またECU6には、フロアシフト操作装置7と、回生レベル選択手段としてのパドルスイッチ装置8とが接続されている。そしてECU6は、電動車両1の走行状態に応じて駆動用モータ3を制御すると共に、運転者によるフロアシフト操作装置7及びパドルスイッチ装置8の操作に応じて、駆動用モータ3の出力を適宜制御する。
【0020】
フロアシフト操作装置7は、電動車両1のフロア部に設けられ、シフトレバー71を備え、シフトレバー71の操作により、シフト位置、例えば、P(パーキング),R(リバース),N(ニュートラル),D(ドライブ)レンジ等の切り換えを行う。
【0021】
パドルスイッチ装置8は、人為的な操作により、回生動作における回生レベルの選択を行う回生レベル選択手段としての機能を有するものである。ここで回生レベルとは、言い換えれば、減速度の程度のことであり、回生レベルが高いほど減速度の程度も高くなる。パドルスイッチ装置8は、本実施形態では、一対のスイッチレバー81,82を備えている。これら一対のスイッチレバー81,82は、電動車両1のステアリングホイール9の軸部に取り付けられている。また一対のスイッチレバー81,82は、それぞれ独立して操作可能に構成されている。
【0022】
そして、例えば、フロアシフト操作装置7によりシフト位置としてDレンジが設定されている状態で、これらのスイッチレバー81,82を操作することによって、回生動作時の回生レベルを選択できるようになっている。具体的には、右側のスイッチレバー81は、運転者が手前側(ステアリングホイール9の側)に引き起こすことにより、回生レベルをアップ(減速度を増加)させる指令を出力するスイッチであり、「+」の表示が設けられている。左側のスイッチレバー82は、回生レベルをダウン(減速度を減少)させる指令を出力するスイッチであり、「−」の表示が設けられている。勿論、スイッチレバー81,82は左右が逆に配置されていてもよい。
【0023】
そして本実施形態では、パドルスイッチ装置8は、スイッチレバー81,82の操作により、
図3に示すように、回生レベルをD0段階からD5段階の6段階で選択することができるように構成されている。なお回生レベルがD0段階に設定されると回生力が最も弱く、回生レベルがD5段階に設定されると回生力が最も強くなる。また本実施形態では、回生が常時実行されており、デフォルトの回生レベルはD2段階に設定されている。
【0024】
ここで、このように多段階で回生レベルを選択できる構成では、パドルスイッチ装置8の操作が煩雑になる場合がある。例えば、回生レベルがD0段階に設定された状態で、そこからD5段階まで回生レベルを遷移させたい場合には、5回ものスイッチレバー81の操作が必要であり、操作性が悪い。
【0025】
そこで、本発明に係る回生制御装置10では、以下に説明するように、パドルスイッチ装置8の特定の操作を行った際には、現在の回生レベルに拘わらず、回生レベルを最高段階に遷移させるようにすることで、操作性の向上を図っている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る回生制御装置10は、パドルスイッチ装置8と、ECU6が備えるモータ制御部60とで構成され、モータ制御部60は、駆動用モータ制御手段61と、回生レベル設定手段62と、回生実行手段63と、を備える。
【0027】
駆動用モータ制御手段61は、電動車両1の走行状態等に応じて駆動用モータ3の出力を適宜制御する。すなわち駆動用モータ制御手段61は、電動車両1の走行状態に応じてバッテリ2から駆動用モータ3への電力供給を調整することで、駆動用モータ3の動作(出力)を適宜制御する。
【0028】
回生レベル設定手段62は、パドルスイッチ装置(回生レベル選択手段)8の操作に応じて回生動作時の回生レベルを所定段階に適宜変更する。すなわち、回生レベル設定手段62は、現状の回生レベルを、パドルスイッチ装置8によって選択されたD0段階からD5段階までの何れかの段階に遷移させる。なお現在の回生レベルが何れの段階であるかは、例えば、図示しないインストゥルメントパネルに各種メータ類と共に設けられるインジケータ部等に表示される。
【0029】
本実施形態では、運転者がパドルスイッチ装置8のスイッチレバー81,82を一度操作すると、回生レベル設定手段62は、回生レベルを一段階遷移させる。例えば、回生レベルがD0段階に設定されている状態で、運転者がスイッチレバー(+)81を一度操作すると、回生レベル設定手段62は、回生レベルを一段階アップさせてD1段階に設定する(
図3参照)。そして、運転者がスイッチレバー81を再度操作すると、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD1段階からD2段階にさらに一段階アップさせる。その後も、運転者がスイッチレバー81を一度操作する毎に、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD3段階からD5段階まで順次アップさせる。
【0030】
また例えば、回生レベルがD5段階に設定されている状態で、運転者がスイッチレバー(−)82を一度操作すると、回生レベル設定手段62は、回生レベルを一段階ダウンさせてD4段階に設定する。そして、運転者がスイッチレバー82を再度操作すると、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD4段階からD3段階に一段階ダウンさせる。その後も、運転者がスイッチレバー82を一度操作する毎に、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD2段階からD0段階まで順次ダウンさせる。
【0031】
さらに本発明では、パドルスイッチ装置(回生レベル選択手段)8が所定時間内に特定の操作がされた場合には、回生レベル設定手段62は、上記一方向側の最高段階に回生レベルを遷移させる。本実施形態では、パドルスイッチ装置8が所定時間内に回生レベルをアップさせる方向(以下、アップ方向という)又はダウンさせる方向(以下、ダウン方向という)の一方向に二度以上操作された場合に、回生レベル設定手段62が、上記一方向側の最高段階に回生レベルを遷移させる。例えば、回生レベルがD0段階に設定された状態で、運転者がスイッチレバー81を、所定時間(本実施形態では、500ms程度)内に二度以上操作すると、回生レベル設定手段62は、アップ方向の最高段階であるD5段階まで回生レベルを遷移させる。つまり運転者がスイッチレバー81を、ごく短時間の間に二度以上操作すると、回生レベル設定手段62は、現在の回生レベルに拘わらず、D5段階まで回生レベルを遷移させる。
【0032】
より詳細には、回生レベルがD0段階に設定された状態で、運転者がスイッチレバー81を一度操作すると、回生レベル設定手段62は、まずは回生レベルをD0段階からD1段階まで一段階アップさせる。その後、所定期間内に、運転者がスイッチレバー81の二度目の操作を行うと、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD1段階から最高段階であるD5段階までアップさせる。
【0033】
このように本実施形態では、運転者がスイッチレバー81を、所定時間内に二度以上操作すると、回生レベル設定手段62が、回生レベルを二段階で最高段階であるD5段階までアップさせるようにしているが、勿論、一段階でアップさせるようにしてもよい。例えば、回生レベルがD0段階に設定された状態で、運転者がスイッチレバー81を、所定期間内に二度以上操作したことを検出した後に、回生レベル設定手段62が、D0段階からD5段階まで回生レベルを一度に遷移させるようにしてもよい。
【0034】
また回生レベルがD1段階又はD2段階に設定された状態で、運転者がスイッチレバー81を、所定時間内に二度以上操作した場合にも、回生レベル設定手段62は、アップ方向の最高段階であるD5段階まで回生レベルを遷移させる。一方、回生レベルがD3段階からD5段階の何れかに設定された状態で、運転者がスイッチレバー(−)82を所定期間内に二度以上操作した場合には、回生レベル設定手段62は、ダウン方向の最高段階であるD0段階まで回生レベルを遷移させる(
図3参照)。つまり、運転者がスイッチレバー81,82を所定時間内に二度以上操作した際、現在の回生レベルの段階から最高段階まで二段階以上あれば、回生レベル設定手段62は、現在の段階から最高段階まで回生レベルを遷移させる。
【0035】
これにより、運転者が回生レベルとして最高段階を選択しようとする際、スイッチレバー81,82の操作回数を減らすことができ、操作性が大きく向上する。
【0036】
なお本実施形態では、回生レベルがD0段階からD5段階の何れの段階に設定されていても、運転者がスイッチレバー81,82の一方を長押しした場合、回生レベル設定手段62は、デフォルトであるD2段階に回生レベルを遷移させる。
【0037】
回生実行手段63は、例えば、減速時等に、駆動輪5の回転エネルギを駆動用モータ3によって電気エネルギに変換して回生する、いわゆる回生動作を実行する。回生動作においては、駆動輪5の回転を利用して駆動用モータ3で発電し、その電力によってバッテリ2を充電する。その際、回生実行手段63は、上述のように回生レベル設定手段62によって設定されたD0段階からD5段階の何れかの回生レベルに応じた所定の回生力(回生制動力)を発生させるように、駆動用モータ3を適宜制御する。
【0038】
以下、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る回生レベルの変更動作についてさらに説明する。
図4に示すフローチャートは、回生レベルをアップ方向に変更する場合の例であり、まずステップS1で運転者によってスイッチレバー81が一度操作されると(ステップS1:Yes)、ステップS3で回生レベルを一段階アップさせる。例えば、回生レベルがデフォルトであるD2段階であれば、回生レベルを一段階アップしてD3段階に設定する。次いで、ステップS5で所定時間(本実施形態では500ms)が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間を経過していない場合には(ステップS5:No)、ステップS7に進み、現在の回生レベルの段階から最高段階まで二段階以上あるか否かを判定する。言い換えれば、本実施形態の場合、現在の回生レベルの段階がD1段階からD3段階の何れかの段階であるか否かを判定する。
【0039】
そして、現在の回生レベルの段階から最高段階まで二段階以上ない場合には(ステップS7:No)、ステップS1に戻り、最高段階まで二段階以上ある場合には(ステップS7:Yes)、ステップS9に進む。そして、運転者によってスイッチレバー81の二度目の操作が行われた場合には(ステップS9:Yes)、アップ方向の最高段階であるD5段階に回生レベルを設定する(ステップS11)。一方、運転者によってスイッチレバー81の二度目の操作が行われない場合(ステップS9:No)、ステップS5に戻り、所定期間が経過した場合には(ステップS5:Yes)、ステップS1に戻る。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態は、スイッチレバー81が所定時間内に二度以上操作された場合であっても、所定の回生レベル制限条件が成立している場合には、回生レベルを遷移させる段階を制限するようにした例である。
【0041】
図5に示すように、実施形態2に係る回生制御装置10を構成するモータ制御部60は、駆動用モータ制御手段61、回生レベル設定手段62及び回生実行手段63を備えると共に、充電状態検出手段64、走行路情報検出手段65及び条件成立判定手段66をさらに備えている。
【0042】
充電状態検出手段64は、電動車両1が備えるバッテリ2の充電率(SOC)を検出する。例えば、充電状態検出手段64は、バッテリ2に設けられた電圧センサ21で検出された電圧情報及び電流センサ22で検出された電流情報に基づいて、予め記憶されているマップからバッテリ2のSOCを演算する。
【0043】
走行路情報検出手段65は、電動車両1が走行している走行路の情報を検出する。例えば、本実施形態では、電動車両1が、車両の傾斜状態を検出する傾斜センサ31を備え、走行路情報検出手段65は、この傾斜センサ31からの情報に基づいて、走行路が所定勾配以上の上り坂又は下り坂であることを、走行路の情報の一つとして検出する。なお、走行路情報検出手段65は、傾斜センサ31からの情報に基づいて走行路の状態を検出するものに限定されず、例えば、車載カメラ等の情報から走行路の状態を検出するものであってもよい。
【0044】
条件成立判定手段66は、所定のタイミング、例えば、運転者によってパドルスイッチ装置8が所定時間内に二度以上操作された際に、所定の回生レベル制限条件が成立しているか否かを判定する。本実施形態では、条件成立判定手段66は、充電状態検出手段64によって検出されるバッテリ2の充電状態(SOC)に基づくバッテリ2に入力可能な電力が、回生レベルを最高段階に遷移後に駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも小さくなる場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定する。
【0045】
回生レベル制限条件が成立しているか否かの判定方法は、特に限定されないが、本実施形態では、次のように判定している。本実施形態に係る回生制御装置10は、
図6に示すようなモータ回転数と回生力(トルク)との関係を規定したマップを備えており、条件成立判定手段66は、そのマップに基づいて回生レベル制限条件が成立しているか否かを判定する。
【0046】
図6に示すように、回生レベルが高いほど回生力(トルク)は高くなる。例えば、回生レベルが「低」(例えば、D0段階)である場合の回生力(トルク)の最高値が最も低く、回生レベル「中」(例えば、D3段階)、回生レベル「高」(例えば、D5段階)の順で、回生力の最高値は高くなる。また
図6中の点線は、バッテリ2に入力可能な電力が、駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも小さいか否かを判定するための判定閾値であり、バッテリ2のSOCの大きさに応じて設定されている。この例では、判定閾値は、SOC高、SOC中、SOC低の三段階で設定されている。
【0047】
そして、モータ回転数、現在の回生レベル等から演算される回生力(トルク)が、この判定閾値よりも高い場合、バッテリ2に入力可能な電力は、駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも小さいと判定される。つまり条件成立判定手段66は、回生力(トルク)が、この判定閾値よりも高い場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定する。
【0048】
図6の例では、例えば、バッテリ2の充電状態が「SOC中」である状態で、モータ回転数がR1である場合には、回生レベル「高」(例えば、D5段階)であっても、回生力(トルク)は判定閾値よりも低くなる。したがって、運転者によってパドルスイッチ装置8が所定時間内に二度以上操作された際、条件成立判定手段66は、回生レベル制限条件が成立していないと判定する。
【0049】
一方、モータ回転数がR2である場合には、回生レベルが「高」(例えば、D5段階)になると、回生力(トルク)は判定閾値よりも高くなる。したがって、運転者によってパドルスイッチ装置8が所定時間内に二度以上操作された際、条件成立判定手段66は、回生レベル制限条件が成立していると判定する。
【0050】
このように条件成立判定手段66によって回生レベル制限条件が成立していると判定されると、回生レベル設定手段62は、スイッチレバー81が所定時間内に二度以上操作された場合でも、回生レベルを遷移させる段階を制限し、最高段階であるD5段階までは遷移させないようにする。すなわち回生レベル設定手段62は、この条件成立判定手段66の判定結果に応じて、回生レベルを所定の段階に設定する(遷移させる)。
【0051】
条件成立判定手段66によって回生レベル制限条件が成立していると判定された場合には、回生レベル設定手段62は、回生レベル制限条件が成立しない範囲で最も高い段階に回生レベルを遷移させる。例えば、モータ回転数がR2である場合、回生レベルが「中」であれば、回生レベル制限条件は成立しない。したがって、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD3段階まで遷移させる。
【0052】
このように回生レベル制限条件が成立している場合に、遷移させる回生レベルを制限することで、電動車両1の走行状態に応じて回生レベルを適切に変更することができる。
【0053】
ただし、本実施形態では、回生レベル制限条件が成立している場合であっても、走行路情報検出手段65によって電動車両1が走行している走行路が所定勾配以上の上り坂であることが検出された場合には、回生レベル設定手段62は、回生レベルの制限を弱めるようにしている。走行路が所定勾配以上の上り坂である場合、バッテリ2の電力消費が大きいため、回生レベルの制限を弱めても、回生動作時に所望の回生力が得られると考えられるからである。
【0054】
例えば、上述のように回生レベル制限条件が成立し、回生レベルをD3段階まで遷移させる状態であった場合でも、走行路が所定勾配以上の上り坂であれば、回生レベル設定手段62は、回生レベルをD4段階まで遷移させる。
【0055】
なお回生レベル設定手段62が、回生レベルの制限を弱める方法として、
図6に示した判定閾値を、バッテリ2に入力可能な電力が回生レベルを最高段階に遷移後に駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも小さくなる範囲が狭まるように、補正するようにしてもよい。
【0056】
一方、走行路情報検出手段65によって電動車両1が走行している走行路が所定勾配以上の下り坂であることが検出された場合には、回生レベル設定手段62は、回生レベルの制限を強めるようにしてもよい。走行路が所定勾配以上の下り坂である場合、バッテリ2の電力消費が比較的小さいため、回生レベルの制限を強めなければ、回生動作時に所望の回生力が短時間しか得られないと考えられるからである。
【0057】
なお条件成立判定手段66によって回生レベル制限条件が成立していないと判定された場合には、回生レベル設定手段62は、実施形態1で説明したように、回生レベルを最高段階であるD5段階に遷移させる。
【0058】
以下、
図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る回生レベルの変更動作についてさらに説明する。なお、ステップS1〜ステップS9までは、実施形態1と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0059】
図7に示すように、ステップS9でスイッチレバー81が操作されると(ステップS9:Yes)、次いでステップS10で、所定の回生レベル制限条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、上述したように、バッテリ2に入力可能な電力が、回生レベルを最高段階(D5段階)に遷移後に駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも小さくなるか否かを判定する。そして、バッテリ2に入力可能な電力が、回生レベルを最高段階(D5段階)に遷移後に駆動用モータ3が出力し得る回生力よりも大きい、つまり回生レベル制限条件が成立していないと判定した場合には(ステップS10:No)、ステップS11に進み、アップ方向の最高段階であるD5段階に回生レベルを設定する。一方、回生レベル制限条件が成立している場合には(ステップS10:Yes)、ステップS12に進み、回生レベル制限条件が成立しない範囲で最も高い段階に回生レベルを遷移させる。その際、電動車両1が走行している走行路が所定勾配以上の上り坂である場合には、上述のように回生レベルの制限を弱めるようにしてもよい。
【0060】
このように回生レベル制限条件が成立している場合に、遷移させる回生レベルを適宜制限することで、電動車両1の走行状態に応じて回生レベルを適切に変更することができる。
【0061】
なお本実施形態では、ステップS9でスイッチレバー81が操作された際に、所定の回生レベル制限条件が成立しているか否かを判定するようにしたが(ステップS10)、さらに、ステップS1でスイッチレバー81が操作された際にも、所定の回生レベル制限条件が成立しているか否かを判定するようにしてもよい。この場合、ステップS1後の判定で、回生レベル制限条件が成立していると判定すると、回生レベルを一段階アップすることなく、そのまま処理を終了する。これにより、回生レベルをより適切に変更することができる。
【0062】
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態2の変形例であり、具体的には、電動車両がカーブを走行中である場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定するようにした例である。
【0063】
図8に示すように、実施形態3に係る回生制御装置10を構成するモータ制御部60は、駆動用モータ制御手段61、回生レベル設定手段62、回生実行手段63及び条件成立判定手段66を備えると共に、走行状態検出手段67を備えている。
【0064】
走行状態検出手段67は、電動車両1の走行状態を検出する。例えば、本実施形態では、電動車両1が、車速を検出する車速センサ32、ステアリングホイール9の角度を検出するステアリング角度センサ33等の各種センサを備えており、走行状態検出手段67は、これらセンサ類からの情報に基づいて電動車両1の走行状態を検出する。具体的には、走行状態検出手段67は、電動車両1の走行状態一つとして、例えば、電動車両1が所定値以上の曲率半径のカーブを走行中であるか否かを、ステアリング角度センサ33からの情報に基づいて検出する。勿論、電動車両1がカーブを走行中であるか否かの検出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、電動車両1が横方向の加速度センサを備える場合には、横方向の加速度センサの検出結果に基づくものであってもよい。
【0065】
そして条件成立判定手段66は、走行状態検出手段67によって電動車両1がカーブを走行中であることが検出された場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定する。
【0066】
このように条件成立判定手段66によって回生レベル制限条件が成立していると判定されると、回生レベル設定手段62は、スイッチレバー81が所定時間内に二度以上操作された場合でも、回生レベルを遷移させる段階を制限する。
【0067】
例えば、本実施形態に係る回生制御装置10は、
図9に示すような車速とステアリング角度とで遷移可能な回生レベルを規定したものをマップとして備えており、回生レベル設定手段62は、そのマップに基づいて遷移可能な回生レベルを決定する。
図9に示す例は、スイッチレバー81を操作した際、つまり回生レベルの段階をアップさせる際に対応するものであり、車速が速くなるほど遷移可能な回生レベルは低くなり、またステアリング角度が大きくなるほど遷移可能な回生レベルは低くなる。
【0068】
これにより、車速が速くなるほど、またステアリング角度が大きくなるほど、回生動作時の急激な減速が抑制される。したがって、電動車両1がカーブを走行中に回生レベルを遷移させた場合であっても、走行安全性を確保することができる。
【0069】
なお、遷移可能な回生レベルを規定するマップは、上述した車速や、ステアリング角度だけでなく、車重等の他の条件を考慮したものであってもよい。
【0070】
(実施形態4)
本実施形態は、実施形態2の変形例であり、具体的には、電動車両1が備える高電圧機器の温度が所定温度以上である場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定するようにした例である。
【0071】
図10に示すように、実施形態4に係る回生制御装置10を構成するモータ制御部60は、駆動用モータ制御手段61、回生レベル設定手段62、回生実行手段63及び条件成立判定手段66を備えると共に、機器温度検出手段68を備えている。
【0072】
機器温度検出手段68は、電動車両1が備える高電圧機器、例えば、駆動用モータ3、駆動用モータ3を作動させるためのインバータ、駆動用モータ3を制御するためのCPU等の温度を検出する。例えば、本実施形態では、電動車両1が、これら高電圧機器類の温度を検出する温度センサ35を備えており、機器温度検出手段68は、温度センサ35からの情報に基づいて電動車両1が備える高電圧機器の温度を検出する。
【0073】
そして条件成立判定手段66は、機器温度検出手段68によって検出された電動車両1が備える高電圧機器の温度が所定温度以上である場合に、回生レベル制限条件が成立していると判定する。
【0074】
このように条件成立判定手段66によって回生レベル制限条件が成立していると判定されると、回生レベル設定手段62は、スイッチレバー81が所定時間内に二度以上操作された場合でも、実施形態2等で説明したように、回生レベルを遷移させる段階を適宜制限する。
【0075】
なお、回生制御装置10は、高電圧機器類の温度と遷移可能な回生レベルとの関係を規定したマップを備えており、回生レベル設定手段62は、このマップを参照して回生レベルを適宜変更する。具体的には、高電圧機器の温度が高いほど、回生レベルが低くなるようにしている。
【0076】
これにより、電動車両1の高電圧機器類の故障を抑制することができる。回生レベルの段階をアップさせると、それに伴い回生動作時の高電圧機器類の発熱量が大きくなる。このため、高電圧機器類の温度が比較的高い状態で、回生レベルをあまり高くしてしまうと、高温になることに起因する高電圧機器類の故障が発生する虞がある。しかしながら、本実施形態のように高電圧機器の温度に応じて、回生レベルを遷移させる段階を適宜制限することで、高電圧機器類の故障を抑制することができる。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、回生レベル選択手段の特定の操作の例として、パドルスイッチ装置を構成するスイッチレバーを二度以上操作する場合について説明したが、回生選択手段の特定の操作は、これに限定されるものではない。「特定の操作」としては、例えば、スイッチレバーを通常の長さでクリックする操作と、スイッチレバーを通常よりも長くクリックする長押し操作との組合せとしてもよい。
【0078】
また「特定の操作」は、スイッチレバーの長押し操作としてもよい。なお上述の実施形態では、運転者がスイッチレバーを長押した場合、回生レベルをデフォルトであるD2段階に遷移させているため、「特定の操作」をスイッチレバーの長押し操作とする場合、回生レベルをデフォルトに遷移させるための操作は他の操作に変更する必要がある。
【0079】
さらに例えば、パドルスイッチ装置を二段階スイッチとして、スイッチレバーの操作量に応じて、通常の回生レベルを遷移させる操作と、回生レベルをアップ方向側又はダウン方向側のいずれかの最高段階に遷移させる操作と、を切り分けてもよい。また上述の実施形態では、「特定の操作」としてスイッチレバーを手前に引き起こす例を説明したが、「特定の操作」はスイッチレバーを前方に押し倒す操作としてもよい。
【0080】
また上述の実施形態では、基本的に、回生レベルをアップさせる例を示して、本発明を説明したが、勿論、本発明は、回生レベルをダウンさせる際にも適用可能なものである。
【0081】
また例えば、上述の実施形態では、回生レベル選択手段の一例としてパドルスイッチ装置8を例示したが、回生レベル選択手段の構成は特に限定されず、例えば、フロアシフト操作装置7が、回生レベル選択手段としての機能を備えるようにしてもよい。さらに、回生レベル選択手段は、例えば、コラムシフトやインパネシフト、或いはモーメンタリスイッチ等で構成されていてもよい。
【0082】
また上述の実施形態では、電動車両として電気自動車を一例として本発明を説明したが、勿論、本発明は、駆動用モータと共にエンジン(内燃機関)を備えるハイブリッド自動車等にも適用可能なものである。