(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。以下では、生体を治療する治療装置の一例として、患者眼の水晶体後嚢における後発白内障等を治療することが可能な眼科用レーザ治療装置を例示して説明を行う。しかし、本実施形態で例示する技術の少なくとも一部は、他の治療装置に適用することも可能である。例えば、患者眼の眼底に治療レーザ光を照射する治療装置、エキシマレーザによって患者眼の角膜の屈折力を矯正する治療装置、フェムト秒レーザによって患者眼の角膜または水晶体を処置する治療装置、治療レーザによって患者の皮膚を治療する治療装置、レーザ治療装置以外の治療装置等にも、本実施形態で例示する技術の少なくとも一部を適用できる。
【0011】
図1を参照して、本実施形態の治療装置1の概略構成について説明する。本実施形態の治療装置1は、一例として、レーザ照射光学系10、エイミング光学系20、照明光学系30、観察光学系40、および制御部60を備える。
【0012】
<レーザ照射光学系>
本実施形態のレーザ照射光学系10は、治療レーザ光源11、エネルギ調整部13、ビームスプリッタ17、光検出器18、安全シャッタ19、シフト調整部50、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。
【0013】
治療レーザ光源11は、患者眼Eの組織を治療するための治療レーザ光を出射する。一例として、本実施形態の治療レーザ光源11では、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶(Nd:YAG)がレーザロッドとして使用される。
【0014】
エネルギ調整部13は、患者眼Eの組織に照射される治療レーザ光のエネルギ量を調整する。本実施形態のエネルギ調整部13は、1/2波長板14および偏光板16を備える。1/2波長板14は、治療レーザ光の光軸を中心として、モータ15によって回転する。偏光板16は、ブリュースタ角で配置されている。1/2波長板14と偏光板16の組み合わせによって、治療レーザ光のエネルギ量が調整される。なお、組織に照射される治療レーザ光のエネルギを調整する方法は、変更することも可能である。例えば、治療レーザ光源11として、供給する電力量によってレーザ光のエネルギを変更可能な光源を用いる場合には、制御部60は、治療レーザ光源11に供給する電力量を調整することで、治療レーザ光のエネルギを調整してもよい。
【0015】
ビームスプリッタ17は、治療レーザ光の一部を光検出器18へ向けて反射させる。光検出器18は、ビームスプリッタ17によって反射された治療レーザ光を受光することで、治療レーザ光のエネルギ量を検出する。安全シャッタ19は、シャッタ駆動部28(例えばソレノイド)によって、治療レーザ光の光軸上と光軸外の間を移動する。安全シャッタ19は、治療レーザ光の光軸上に配置されることで、患者眼Eへの治療レーザ光の照射を遮断する。
【0016】
シフト調整部50は、基準位置に対する治療レーザ光の集光位置を変化させることができる。本実施形態では、基準位置は、治療レーザ光の光軸に沿った方向におけるエイミング光(詳細は後述する)の集光位置である。つまり、シフト調整部50は、エイミング光のフォーカス位置に対して、治療レーザ光のフォーカス位置を、治療レーザ光の光軸に沿って近方(光路の上流側)または遠方(光路の下流側)に移動させることができる。以下の説明では、治療レーザ光の集光位置と基準位置の間の距離を、フォーカスシフト量と言う場合がある。本実施形態のシフト調整部50は、凹レンズ51、凸レンズ53、およびモータ55を備える。シフト調整部50は、モータ55によって凸レンズ53を光軸に沿って移動させることでフォーカスシフト量を調整する。なお、シフト調整部50の構成を変更することも可能である。例えば、モータ55を用いずに、ユーザが手動で凸レンズ53を移動させてもよい。
【0017】
エキスパンダレンズ23は、ダイクロイックミラー22によって合波された光(治療レーザ光、および後述するエイミング光)の光束を拡大する。エキスパンダレンズ23によって拡大された光は、ダイクロイックミラー24によって反射され、対物レンズ25を透過する。本実施形態では、対物レンズ25を透過した治療レーザ光は、患者眼Eに装着されたコンタクトレンズ26を介して患者眼Eの組織に照射される。ダイクロイックミラー24は、患者眼Eによって反射された治療レーザ光の反射光が術者の眼に入射することを抑制するために、反射光の波長の光をほぼ反射させる。
【0018】
<エイミング光学系>
本実施形態のエイミング光学系20は、治療対象の部位に照準を合わせるために用いられる。詳細には、本実施形態のエイミング光学系20は、エイミング光源12、コリメータレンズ21、アパーチャ27、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。なお、ダイクロイックミラー22から対物レンズ25までのエイミング光学系20の光路は、レーザ照射光学系10の光路と共用される。
【0019】
エイミング光源12は、治療用のレーザ光が照射される位置を術者に誘導させるためのエイミング光を出射する。コリメータレンズ21は、エイミング光源12によって出射されたエイミング光を平行光束とする。アパーチャ27は、コリメータレンズ21によって平行光束とされたエイミング光の光束を、複数(例えば2つ)の光束に分離する。エイミング光のフォーカス位置(フォーカス面)では、アパーチャ27で分離した複数の光束が1つに重なる。一方、エイミング光のフォーカス位置に対する前後位置(デフォーカス面)では、複数の光束が分離したままの状態となる。よって、ユーザは、エイミング光の分離状態から照準状態を容易に判断できる。ダイクロイックミラー22は、治療レーザ光とエイミング光を合波する。
【0020】
<照明光学系>
照明光学系30は、治療対象の組織を含む観察部位を照明する。本実施形態の照明光学系30は、ランプ31、レンズ32、絞り33、レンズ群34、およびプリズム35を備える。なお、照明光学系30が、観察部位にスリット光を照明するためのスリット板等を備えていてもよい。
【0021】
<観察光学系>
観察光学系40は、ユーザ(術者)が患者眼Eの観察部位を観察するために用いられる。本実施形態の観察光学系40は、顕微鏡41に組み込まれており、変倍光学系42、術者保護フィルタ43、結像レンズ44、正立プリズム群45、視野絞り46、および接眼レンズ47を備える。
【0022】
<制御部>
制御部60は、治療装置1の動作を制御する。本実施形態の制御部60は、CPU61(プロセッサ)、ROM62、RAM63、および不揮発性メモリ(Non−volatile memory:NVM)64等を備える。CPU61は、治療装置1における各部の制御を司る。ROM62には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM63は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ64は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、本実施形態では、後述する治療装置制御処理(
図4および
図5参照)を実行するための治療装置制御プログラム等が不揮発性メモリ64に記憶される。
【0023】
制御部60には、レーザ光源11、モータ15、光検出器18、シャッタ駆動部28、モータ55、エイミング光源12、ランプ31が接続されている。さらに、制御部60には、記憶媒体インターフェース(IF)65、操作部66、およびトリガスイッチ67が接続されている。詳細は後述するが、本実施形態では、記憶媒体IF65および操作部66はコントロールボックス70(
図2参照)に設けられている。
【0024】
記憶媒体IF65は、記憶媒体71(
図2参照)から情報を読み取る。さらに、本実施形態の記憶媒体IF65は、記憶媒体71に対する情報の書き込みを行うことも可能である。記憶媒体71は、各種情報を記憶することができる。ユーザは記憶媒体71を携帯することができる。また、記憶媒体71には、治療装置1以外の外部端末(例えば、パーソナルコンピュータおよび携帯端末等)によって情報の読み取りおよび書き込みを行うことも可能である。記憶媒体71の種類は適宜選択できる。一例として、本実施形態ではSDメモリカードが記憶媒体71として用いられている。しかし、他の種類の記憶媒体(例えば、USBメモリ、RFID等)を用いることも可能である。記憶媒体71との間で情報の読み取りおよび書き込みを行う方法も適宜選択できる。例えば、無線通信によって情報が読み取られてもよい。また、携帯端末に内蔵された記憶媒体が利用されてもよい。この場合、例えば、携帯端末にインストールされたアプリケーションが起動されることで、携帯端末の記憶媒体に記憶された情報が制御部60によって取得されてもよい。
【0025】
操作部66は、ユーザによって操作されることで、ユーザによる各種操作指示を入力する。一例として、本実施形態の操作部66はタッチパネルであり、各種画像を表示する表示手段を兼ねる。しかし、操作部66の構成を変更することも可能である。例えば、各種スイッチ、キーボード、マウス等を操作部66に用いてもよい。操作部と表示部が別で設けられていてもよい。トリガスイッチ67は、ユーザによって操作されることで、治療レーザ光の照射実行指示を制御部60に入力する。
【0026】
<コントロールボックス>
図2を参照して、本実施形態のコントロールボックス70について説明する。本実施形態のコントロールボックス70は、タッチパネル式の操作部66を表面に備えると共に、記憶媒体IF65を側面に備える。ユーザは、自分が所有している記憶媒体71を記憶媒体IF65に装着する。その結果、記憶媒体71に記憶された情報が制御部60によって取得されると共に、記憶媒体71に情報が書き込まれる。治療装置1の使用が終了すると、ユーザは、記憶媒体IF65から記憶媒体71を取り外して持ち運ぶことができる。よって、ユーザは、自分が所有する記憶媒体71を、複数の治療装置1(例えば、異なる場所に設置された同一種類の治療装置1の各々)に使用することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、コントロールボックス70もCPU、ROM、RAM、および不揮発性メモリを備える。コントロールボックス70のCPUは、記憶媒体71からの情報の読み込み制御、記憶媒体71への情報の書き込み制御等を行うと共に、前述した本体の制御部60のCPU61との間で各種信号およびデータの送受信を行うことができる。後述する治療装置制御処理(
図4および
図5参照)は、本体の制御部60のCPU61と、コントロールボックス70のCPUとによって実行される。しかし、治療装置制御処理は、本体の制御部60のCPU61のみによって実行されてもよい。従って、説明を簡略化するために、以下の説明で「制御部60」という場合には、本体の制御部60を単独で示す場合だけでなく、コントロールボックス70の制御部も含む場合もある。また、「CPU61」という場合には、本体のCPU61を単独で示す場合だけでなく、コントロールボックス70のCPUを含む場合もある。
【0028】
<治療中画像>
図2を参照して、治療中画像の一例について説明する。治療中画像は、治療レーザ光による治療が行われる間にタッチパネル式の操作部66に表示される画像である。本実施形態における治療中画像には、バースト数表示欄73、エネルギ表示欄74、シフト量表示欄75、照射数表示欄76、およびユーザ情報表示欄77が含まれる。
【0029】
バースト数表示欄73には、設定されているバースト数と、バースト数の設定値を変更するスイッチとが表示される。バースト数とは、トリガスイッチ67が1回操作される毎に実行する治療レーザ光の照射回数である。エネルギ表示欄74には、設定されている治療レーザ光のエネルギと、エネルギの設定値を変更するスイッチとが表示される。エネルギとは、1回の照射あたりの治療レーザ光のエネルギ(1発のジャイアントパルスのエネルギ)である。シフト量表示欄75には、設定されているフォーカスシフト量と、フォーカスシフト量の設定値を変更するスイッチとが表示される。本実施形態の治療装置1における治療動作の動作条件には、バースト数、エネルギ、およびフォーカスシフト量が含まれる。
【0030】
照射数表示欄76には、患者眼Eに対して実行した治療レーザ光の照射回数が、治療記録として表示される。ユーザ情報表示欄77には、記憶媒体71から取得されたユーザ情報の少なくとも一部が表示される。一例として、本実施形態では、ユーザIDと、ユーザ名と、ユーザに適した動作条件とがユーザ情報として表示される。
【0031】
<記憶媒体に記憶される情報の構成>
図3を参照して、記憶媒体71に記憶される情報の構成の一例について説明する。本実施形態では、記憶媒体71に記憶される情報の種別として、鍵情報、ユーザ情報、治療外設定情報、治療記録情報、およびエラーログ情報が含まれる。
【0032】
鍵情報は、治療装置1が治療動作の実行の可否を判断するために用いられる。詳細は後述するが、治療装置1は、記憶媒体71から取得した鍵情報が適切である場合に治療動作の実行を許容する。従って、記憶媒体71は、治療装置1による治療動作を起動させるためのメモリキーとして用いられる。なお、ユーザは、治療装置1以外の外部端末(例えば、パーソナルコンピュータ、および携帯端末等)を用いる場合でも、通常の操作では、記憶媒体71に記憶されている鍵情報を読み出して表示させることも、コピーすることも、書き換えることもできない。例えば、記憶媒体71では鍵情報がロックされていてもよい。
【0033】
ユーザ情報は、記憶媒体71を所有しているユーザを特定する情報である。本実施形態では、ユーザ情報として、ユーザID、ユーザ名、および動作条件が記憶媒体71に記憶されている。動作条件とは、治療装置1が治療動作を行う際の条件である。前述したように、本実施形態における動作条件には、バースト数、エネルギ、およびフォーカスシフト量が含まれる。記憶媒体71は、1組または複数組の動作条件を記憶することができる。また、前述したように、本実施形態では、治療装置1以外の外部端末によって記憶媒体71に情報を書き込むことも可能である。よって、ユーザは、パーソナルコンピュータおよび携帯端末等の外部端末を用いて動作条件を決定し、決定した動作条件を、外部端末から記憶媒体71に書き込ませることも可能である。
【0034】
治療外設定情報は、治療装置1における治療動作以外の動作の基本設定を示す情報である。一例として、本実施形態では、使用言語、音量、および画面の明るさの設定情報が、治療外設定情報として記憶される。例えば、治療装置1におけるプログラムのアップデート、治療装置の修理、入れ替え等を行った場合でも、記憶媒体71が記憶媒体IF65に装着されることで、従来の基本設定がそのまま適用される。
【0035】
治療記録情報は、ユーザが患者に対して過去に行った治療の記録を示す情報である。一例として、本実施形態では、治療が行われた日時、動作条件、および治療レーザ光の照射数が、治療記録情報として記憶媒体71に記憶される。従って、ユーザは過去の治療記録を容易に確認することができる。また、ユーザは、記憶媒体71を治療装置1から取り外すことで、治療装置1以外の外部端末で過去の治療記録を確認することも可能である。
【0036】
エラーログ情報は、治療装置1において過去に生じたエラーの日時とエラー内容を示す情報である。一例として、本実施形態では、エラーが生じた治療装置1のデバイスIDと、エラーが生じた日時と、エラー内容とがエラーログ情報として記憶される。従って、ユーザおよびメーカーは、過去に生じたエラーを容易に把握することができる。また、ユーザおよびメーカーは、記憶媒体71を治療装置1から取り外すことで、治療装置1以外のデバイスで過去のエラーを把握することも可能である。なお、本実施形態では、エラーが発生すると、本体の制御部60からコントロールボックス70の制御部にエラーログ情報が送信され、コントロールボックス70の制御部によって記憶媒体71にエラーログ情報が書き込まれる。
【0037】
<治療装置制御処理>
図4および
図5を参照して、本実施形態の治療装置1が実行する治療装置制御処理について説明する。治療装置制御処理は、治療装置1に電源が投入された場合に、制御部60のCPU61(詳細には、本実施形態では、本体の制御部60のCPU61と、コントロールボックス70の制御部のCPU)によって実行される。CPU61は、不揮発性メモリ(本実施形態では、本体の不揮発性メモリ64およびコントロールボックス70の不揮発性メモリ)に記憶された治療装置制御プログラムに従って、
図4および
図5に示す治療装置制御処理を実行する。
【0038】
図4に示すように、CPU61は、治療装置制御処理を開始すると、起動処理を実行する(S1)。起動処理は、一定の条件に基づいて治療装置1を起動させる処理である。
【0039】
図5に示すように、CPU61は、記憶媒体IF65に記憶媒体(メモリ)71がセットされているか否かを判断する(S30)。記憶媒体71がセットされていれば(S30:YES)、CPU61は、鍵情報、ユーザ情報、および治療外設定情報(
図3参照)を、記憶媒体IF65を介して記憶媒体71から取得する(S31)。
【0040】
CPU61は、記憶媒体71から取得した鍵情報が適切な鍵情報であるか否かを判断する(S32)。例えば、CPU61は、不揮発性メモリ64等に予め記憶された適切な鍵情報と、記憶媒体71から取得した鍵情報とが一致するか否かに基づいて、取得した鍵情報が適切であるか否かを判断してもよい。鍵情報が適切でなければ(S32:NO)、治療動作の実行は許容されずに(つまり、治療動作の実行が禁止された状態のまま)エラー表示が行われて停止状態とし(S35)、処理は終了する。鍵情報が適切であれば(S32:YES)、CPU61は、治療動作の実行を禁止する状態を、治療動作の実行を許容する状態に移行させて(S34)、処理は治療装置制御処理(
図4参照)に戻る。
【0041】
記憶媒体IF65に記憶媒体71がセットされていない場合(S30:NO)、CPU61は、パスワード入力画面を操作部66に表示させて、ユーザにパスワードの入力を促す(S37)。適切なパスワードが入力されなければ(S38:NO)、装置の電源がOFFとされて(S39)、処理は終了する。適切なパスワードが入力されると(S38:YES)、CPU61は、治療動作の実行を許容する状態として(S34)、処理は治療装置制御処理に戻る。従って、本実施形態では、ユーザが記憶媒体71を一時的に紛失した場合、または所持し忘れた場合等でも、治療を実行できなくなるリスクが低減される。
【0042】
図4の説明に戻る。起動処理(S1)が正常に終了すると、CPU61は、記憶媒体71から動作条件が取得されたか否かを判断する(S6)。例えば、記憶媒体71に動作条件が1組も記憶されていない場合、または記憶媒体71がセットされずに起動された場合等には、動作条件は取得されない。この場合(S6:NO)、CPU61は、予め定められているデフォルトの動作条件を設定する(S7)。デフォルトの動作条件は、本体のROM62またはコントロールボックス70のROM等に記憶されていてもよい。記憶媒体71から動作条件が取得された場合(S6:YES)、取得された動作条件が1つ(1組)であるか否かが判断される(S9)。取得された動作条件が1つである場合(S9:YES)、CPU61は、取得された動作条件を設定する(S10)。取得された動作条件が複数である場合(S9:NO)、CPU61は、複数の動作条件のうちのいずれかをユーザに選択させるための動作条件選択画面を操作部66に表示させて、動作条件の選択をユーザに促す(S11)。CPU61は、動作条件選択画面上で選択された動作条件を設定する(S12)。
【0043】
なお、前述したように、本実施形態では、本体のCPU61およびコントロールボックス70のCPUによって治療装置制御処理が行われる。例えば、S10,S12では、コントロールボックス70のCPUによって記憶媒体71から取得された動作条件が、本体のCPU61に送信されることで、本体の動作条件が設定されてもよい。また、CPU(詳細には、本実施形態ではコントロールボックス70のCPU)は、S7,S10,S12において動作条件を設定すると、設定した動作条件を治療中画像(
図2参照)に表示させる。
【0044】
CPU61は、動作条件の変更指示が入力されたか否かを判断する(S14)。換言すると、CPU61は、治療動作の動作条件を設定するための操作指示が操作部66に入力されたか否かを判断する。前述したように、ユーザは、治療中画像(
図2参照)が表示されているタッチパネルを操作することで、各動作条件のパラメータを設定(変更)することができる。動作条件の変更指示が入力されると(S14:YES)、CPU61は、ユーザによって指示された動作条件を設定する(S15)。記憶媒体71がセットされている場合には、CPU61は、指示された動作条件を記憶媒体71に記憶させる(S16)。トリガスイッチ67が操作されると、CPU61は、その時点で設定されている動作条件に従って、治療動作(本実施形態では治療レーザ光の照射)を実行する(S18)。
【0045】
次いで、CPU61は、治療を終了する指示(例えば、電源をOFFとする指示)が入力されたか否かを判断する(S19)。終了指示が入力されていなければ(S19:NO)、処理はS14へ戻り、動作条件を変更する処理、または治療動作が継続される。治療の終了指示が入力されると(S19:YES)、CPU61は、治療動作の実行を許容する状態を、実行を禁止する状態に移行させる(S20)。さらに、記憶媒体71がセットされている場合には、治療記録、エラーログ、治療外設定等の情報が記憶媒体71に記憶されて(S21)、治療装置制御処理は終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態における治療装置1の制御部60は、ユーザが携帯可能な記憶媒体71から鍵情報とユーザ情報を取得する。制御部60は、適切な鍵情報が取得された場合に、治療動作の実行を禁止する状態を、実行を許容する状態に移行させる。また、制御部60は、取得されたユーザ情報に基づいて、治療動作の動作条件を設定することができる。従って、本実施形態の治療装置1は、携帯可能な記憶媒体71を利用することで、装置の誤使用の抑制と、動作条件設定の容易化を共に適切に実現することができる。つまり、ユーザは、記憶媒体71に記憶されている情報を治療装置1に読み込ませるだけで、治療動作の禁止解除と、動作条件の設定とを共に容易に行うことができる。
【0047】
本実施形態では、治療動作の動作条件がユーザ情報として記憶媒体71に記憶されている。制御部60は、記憶媒体71から取得した動作条件を治療装置1において設定する。この場合、ユーザが治療装置1を初めて使用する場合であっても、ユーザに適した動作条件が容易に設定される。例えば、ユーザが普段勤務している病院で使用している治療装置1と同じ種類の治療装置1が出張先の病院に設定されている場合等に、ユーザが所持している記憶媒体71を出張先の治療装置1に対して使用してもよい。この場合、ユーザは、普段使用している動作条件を、出張先の治療装置でも容易に設定することができる。
【0048】
本実施形態の制御部60は、操作部66を介して入力された操作指示に従って動作条件を設定することも可能である。制御部60は、操作指示に従って設定した動作条件を、記憶媒体71に記憶させることができる。従って、ユーザは、治療装置1の操作部66を操作して設定した動作条件を、次回以降の治療時にも容易に設定することができる。
【0049】
本実施形態の記憶媒体71は、治療装置1以外の外部端末による動作条件の書き込みが可能な記憶媒体である。従って、ユーザは、治療装置1を用いずに、外部端末によって動作条件を決定し、記憶媒体71に記憶させることも可能である。また、本実施形態の治療装置1は、発生したエラーのログを記憶媒体71に記憶させるエラー記憶処理手段を備える。従って、ユーザ等は、エラーの内容を容易に把握できる。
【0050】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、記憶媒体71に動作条件が記憶されている。制御部60は、記憶媒体71から取得した動作条件を、治療装置1の動作条件として設定する。しかし、動作条件は記憶媒体71に記憶されていなくてもよい。この場合、例えば、治療装置1の不揮発性メモリ64等に複数の動作条件が記憶されていてもよい。制御部60は、記憶媒体71から取得した情報のうち、動作条件以外のユーザ情報(例えば、ユーザIDまたはユーザ名等)に基づいて、複数の動作条件の中からユーザに応じた動作条件を設定してもよい。この場合、治療装置1は、複数の動作条件の各々と複数のユーザの各々とを対応付ける対応情報(例えばテーブルデータ等)を記憶しておき、ユーザID等によって特定されるユーザに対応する動作条件を、対応情報に基づいて設定してもよい。
【0051】
治療装置が設定する動作条件(動作パラメータ)の種類および数も変更できる。例えば、治療装置は、組織に照射する治療レーザ光の照射時間(パルス幅という場合もある)を変更する構成を備えていてもよい。この場合、治療装置は、治療レーザ光の照射時間を動作条件として設定してもよい。治療レーザ光のパワー(単位時間あたりの出力)を動作条件として設定してもよい。また、治療装置は、組織に集光される治療レーザ光の大きさ(スポットサイズ)を変更するスポットサイズ変更部を備えていてもよい。この場合、治療装置は、治療レーザ光のスポットサイズを動作条件として設定してもよい。