特許第6649664号(P6649664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649664エレベータシステム、エレベータ制御装置、およびエレベータを用いた搬送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6649664
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】エレベータシステム、エレベータ制御装置、およびエレベータを用いた搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20200210BHJP
   B66B 17/16 20060101ALI20200210BHJP
   B66B 11/00 20060101ALI20200210BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B66B1/18 E
   B66B17/16 A
   B66B11/00 B
   B65G61/00 550
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-642(P2019-642)
(22)【出願日】2019年1月7日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 和洋
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−244197(JP,A)
【文献】 特開昭59−069375(JP,A)
【文献】 特開平11−130362(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00281181(EP,A1)
【文献】 特開2014−051378(JP,A)
【文献】 特開2011−152989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
B65G 61/00
B66B 11/00
B66B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基準階内の、エレベータの昇降路内のカウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に、前記基準階以外の階ごとに設置され、それぞれ該当する階床の住居宛ての配達物を収納する収納箱を保持する機構を有する基準階側箱保持装置と、
前記基準階以外の階で、前記カウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に設置され、前記収納箱を保持する機構を有する居住階側箱保持装置と、
前記エレベータのカウンタウェイトに設置され、前記収納箱を保持する機構を有する搬送側箱保持装置と、
前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置のいずれかと、これに隣接した前記搬送側箱保持装置との間で構成される、前記収納箱を移動させるための移動機構と、
前記搬送側箱保持装置が、いずれかの前記基準階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記エレベータの巻上げ機を駆動し、当該基準階側箱保持装置に保持された収納箱を、前記搬送側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させた後、前記搬送側箱保持装置が当該基準階側箱保持装置に対応する階の居住階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記巻上げ機を駆動し、前記搬送側箱保持装置に保持された収納箱を、移動先の居住階側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させることで、当該収納箱の搬送処理を行うエレベータ制御装置と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータは前記建物内に複数台設置され、
前記複数台のエレベータの中の少なくとも1台を利用者向けに待機状態にさせるとともに他のエレベータに前記搬送処理を実行させ、呼びが発生したことにより前記待機状態にしたエレベータが応答処理を開始したときには、他のエレベータの1台を待機状態に移行させる群管理装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータは前記建物内に複数台設置され、
予め設定された、前記搬送処理に用いる優先度が高い所定数のエレベータに前記搬送処理を実行させるとともに、他のエレベータに利用者向けの通常運転を実行させ、乗場における利用者の待ち時間が所定値以上になると、前記搬送処理を実行中のエレベータのうち最も前記優先度が低いエレベータを通常運転に切り替える群管理装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記群管理装置は、前記エレベータ間で前記搬送処理の実行頻度が偏らないように、前記複数台のエレベータに関する、前記搬送処理に用いる優先度を所定時間ごとに変更する
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
建物の基準階内の、エレベータの昇降路内のカウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に、前記基準階以外の階ごとに設置され、それぞれ該当する階床の住居宛ての配達物を収納する収納箱を保持する機構を有する基準階側箱保持装置と、
前記基準階以外の階で、前記カウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に設置され、前記収納箱を保持する機構を有する居住階側箱保持装置と、
前記エレベータのカウンタウェイトに設置され、前記収納箱を保持する機構を有する搬送側箱保持装置と、
前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置のいずれかと、これに隣接した前記搬送側箱保持装置との間で構成される、前記収納箱を移動させるための移動機構とに接続され、
前記搬送側箱保持装置が、いずれかの前記基準階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記エレベータの巻上げ機を駆動し、当該基準階側箱保持装置に保持された収納箱を、前記搬送側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させた後、前記搬送側箱保持装置が当該基準階側箱保持装置に対応する階の居住階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記巻上げ機を駆動し、前記搬送側箱保持装置に保持された収納箱を、移動先の居住階側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させることで、当該収納箱の搬送処理を行う搬送制御部を有する
ことを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記基準階側箱保持装置および前記居住階側箱保持装置はそれぞれ、前記カウンタウェイトが所定の位置にあるか否かを検知するためのカウンタウェイト検知センサをさらに有し、
前記移動機構は、前記カウンタウェイトが所定位置にあることを検知したカウンタウェイト検知センサを有する前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置と、前記搬送側箱保持装置との間で構成される
ことを特徴とする請求項5に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記基準階側箱保持装置および前記居住階側箱保持装置はそれぞれ、
前記収納箱を保持しているか否かを検知するための第1箱保持検知センサと、
保持した収納箱の荷重量を検知する荷重検知装置と、
前記収納箱内への収納物の搬入または取り出し作業を行うための扉に設けられた電子錠とを有し
前記搬送制御部は、前記第1箱保持検知センサで前記収納箱を保持していることが検知され、且つ、前記荷重検知装置で、保持された収納箱の重量として所定値以上の荷重が検知されているときに、前記扉の電子錠を開錠する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
前記搬送側箱保持装置は、前記収納箱を正常に保持しているか否かを検知するための第2箱保持検知センサをさらに有し、
前記搬送制御部は、前記搬送側箱保持装置に前記収納箱を移動させた後、前記第2箱保持検知センサで前記収納箱を正常に保持していることが検知されていないときには異常が発生したと判断し、前記エレベータを停止状態にする
ことを特徴とする請求項5〜7いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項9】
前記搬送制御部は、前記搬送処理を、予め設定された時間帯であり、乗りかごに利用者がおらず且つ乗場呼びが登録されていないときに実行し、実行中に呼びが登録されたときには前記搬送処理を中断して当該呼びに応答し、当該呼びへの応答後、前記搬送処理を再開する
ことを特徴とする請求項5〜8いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項10】
前記移動機構は、
前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置内に設置された第1励磁コイルと、
前記搬送側箱保持装置内に設置された第2励磁コイルと、
前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置と前記搬送側箱保持装置との間に形成される可動空間に設置され、前記収納箱を連結可能な可動子とを有したソレノイドで構成され、
前記搬送制御部は、前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置に保持された収納箱を前記搬送側箱保持装置に移動させるときには、前記収納箱を連結させた可動子が前記第2励磁コイルに吸引されるように前記第1励磁コイルおよび前記第2励磁コイルをそれぞれ所定方向に励磁し、前記搬送側箱保持装置に保持された収納箱を前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置に移動させるときには、前記収納箱を連結させた可動子が前記第1励磁コイルに吸引されるように前記第1励磁コイルおよび前記第2励磁コイルの励磁方向を切り替える
ことを特徴とする請求項5〜9いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項11】
前記建物のいずれかの階で、前記カウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に設置され、前記カウンタウェイトに追加する追加ウェイトを保持する機構を有する追加ウェイト保持装置をさらに備え、
前記移動機構は、前記追加ウェイト保持装置と、隣接した前記搬送側箱保持装置との間で構成され、前記追加ウェイトを移動させ、
前記搬送制御部は、前記建物内で上方向に移動する乗りかごを利用する利用者が多い時間帯が到来したときに、前記搬送側箱保持装置が、前記追加ウェイト保持装置に隣接した位置にくるように前記エレベータの巻上げ機を駆動し、当該追加ウェイト保持装置に保持された追加ウェイトを、前記搬送側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させ、前記建物内で下方向に移動する乗りかごを利用する利用者が多い時間帯が到来したときに前記搬送側箱保持装置に前記収納箱または前記追加ウェイトが保持されていた場合には、当該収納箱または追加ウェイトを前記搬送側箱保持装置から取り外す処理を行う
ことを特徴とする請求項5〜10いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項12】
建物の基準階内の、エレベータの昇降路内のカウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に、前記基準階以外の階ごとに設置され、それぞれ該当する階床の住居宛ての配達物を収納する収納箱を保持する機構を有する基準階側箱保持装置と、
前記基準階以外の階で、前記カウンタウェイトが走行する箇所に隣接する位置に設置され、前記収納箱を保持する機構を有する居住階側箱保持装置と、
前記エレベータのカウンタウェイトに設置され、前記収納箱を保持する機構を有する搬送側箱保持装置と、
前記基準階側箱保持装置または前記居住階側箱保持装置のいずれかと、これに隣接した前記搬送側箱保持装置との間で構成される、前記収納箱を移動させるための移動機構とに接続されたエレベータ制御装置が、
前記搬送側箱保持装置が、いずれかの前記基準階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記エレベータの巻上げ機を駆動し、当該基準階側箱保持装置に保持された収納箱を、前記搬送側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させた後、前記搬送側箱保持装置が当該基準階側箱保持装置に対応する階の居住階側箱保持装置に隣接した位置にくるように前記巻上げ機を駆動し、前記搬送側箱保持装置に保持された収納箱を、移動先の居住階側箱保持装置に保持させるように前記移動機構を駆動して移動させることで、当該収納箱の搬送処理を行う
ことを特徴とするエレベータを用いた搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステム、エレベータ制御装置、およびエレベータを用いた搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅向けの建物では、基準階となるエントランス階に住居ごとの郵便箱が設置されていることが一般的である。近年は高層の住居向け建物もあり、このような建物では住居数が多いため、郵便箱の設置スペースおよび郵便物の搬入および取り出しを行う受け入れスペースが広く必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4089457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、居住者は、郵便箱内の郵便物を受け取る際に、居住スペースがある階からエントランス階まで往復移動する。そのため、住居数が多い建物では郵便を受け取りに行くためのエレベータの利用が多く発生し、エレベータの運転効率が悪くなる。
【0005】
これに鑑み、各階に該当する住居の郵便箱を設置し、エレベータの乗りかごで郵便物を各階の郵便箱に搬送するようにすることで、エントランス階の郵便物の受け入れのためのスペースを減らすことができるとともに、居住者による郵便物の受け取りのためのエレベータの利用を減らすことができる。
【0006】
しかし、エレベータの乗りかご内に郵便物を搬送するためのスペースを設けると、一般利用者が乗り込むことができるスペースが制限され、サービスが低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、建物内で、エレベータの運転効率および利用者へのサービスを低下させずに、エレベータを利用して配達物を各階に搬送することが可能なエレベータシステム、エレベータ制御装置、およびエレベータを用いた搬送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、巻上げ機を駆動することで、カウンタウェイトに設置された搬送側箱保持装置を、基準階に設置された基準階側箱保持装置に隣接させ、基準階側箱保持装置に保持された収納箱を搬送側箱保持装置に移動させ、その後搬送側箱保持装置を搬送先の階に設置された居住階側箱保持装置に隣接させ、搬送側箱保持装置に保持された収納箱を当該居住階側箱保持装置に移動させることで、当該収納箱の搬送処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】第1実施形態によるエレベータシステムに用いるエントランス階側箱保持装置と搬送側箱保持装置とで構成される移動機構を示す横断面図。
図3】第1実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図5】第2実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図6】第2実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図7】第3および第4実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図8】第3実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図9】第4実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態として、建物の基準階であるエントランス階に階床ごとの収納箱を設置し、各収納箱には該当する階床の住居ごとの配達物である郵便物を搬入し、この収納箱を、エレベータを利用して各階に搬送するエレベータシステムについて説明する。
【0011】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。本発明の第1実施形態によるエレベータシステム1Aは、4階建ての建物の昇降路2の上部に設置された巻上げ機3およびそらせシーブ4と、これらの巻上げ機3およびそらせシーブ4に掛け渡されたメインロープ5と、メインロープ5の一端に吊り下げられた乗りかご6と、他端に吊り下げられたカウンタウェイト7と、巻上げ機3に信号線で接続されるとともに、乗りかご6にテールコード8を介して接続されたエレベータ制御装置10と備えたエレベータEを有する。
【0012】
またこのエレベータシステム1A内には、建物の基準階である1階(エントランス階)の乗場9−1とは異なる位置にあり、昇降路2内のカウンタウェイト7が走行する箇所に隣接する搬送エリア(1階)11に、エントランス階以外の各階(2階〜4階)に対応する基準階側箱保持装置として、エントランス階側箱保持装置(2階用)111、エントランス階側箱保持装置(2階用)112、および、エントランス階側箱保持装置(4階用)113が設置されるとともに、操作盤114が設置されている。操作盤114は、エントランス階側箱保持装置111〜113に郵便物を搬入した配達員が、搬送処理を開始させるための操作を行うものである。
【0013】
また、当該建物のエントランス階以外の各階(2階〜4階)のカウンタウェイト7が走行する箇所に隣接する搬送エリア12〜14にはそれぞれ、居住階側箱保持装置(2階用)121、居住階側箱保持装置(3階用)131、居住階側箱保持装置(4階用)141が設置されている。カウンタウェイト7の下部には、搬送側箱保持装置20が設置されている。エントランス階側箱保持装置111〜113、居住階側箱保持装置121、131、141、および搬送側箱保持装置20はそれぞれ、収納箱を保持する機構を有するとともに、エレベータ制御装置10に信号線で接続されている。また、操作盤114も、エレベータ制御装置10に信号線で接続されている。
【0014】
また、エントランス階側箱保持装置111〜113、居住階側箱保持装置121、131、141のいずれかと、搬送側箱保持装置20とが隣接したときに、これらの装置間で収納箱を移動させるための移動機構30が構成される。
【0015】
一例として、エントランス階側箱保持装置111に、搬送側箱保持装置20が隣接した位置で巻上げ機3の回転動作が停止されたときに構成される移動機構30と、エントランス階側箱保持装置111および搬送側箱保持装置20それぞれの箱保持機構とについて、図2を参照して説明する。
【0016】
エントランス階側箱保持装置111は、外枠111aと、外枠111a上部に設置され、カウンタウェイト7の下端が隣接したときにこれを検知するカウンタウェイト検知センサ111bと、収納箱Bを保持可能な箱保持空間111cと、箱保持空間111cに収納箱Bが保持されているときにこれを検知する第1箱保持検知センサ111dと、箱保持空間111cに収納箱Bが保持されているときに収納箱Bの荷重量を検知する荷重検知装置111eと、隣接する搬送側箱保持装置20側に開口部を有するコの字型の第1筐体111fと、第1筐体111f内に設置された第1励磁コイル111gと、第1筐体111fを外枠111aの天井部に接続する第1バネ部111hとを有する。
【0017】
搬送側箱保持装置20は、隣接するエントランス階側箱保持装置111側に開口部を有するコの字型の第2筐体21と、第2筐体21内に設置された第2励磁コイル22と、第2筐体21をカウンタウェイト7の下部に接続する第2バネ部23とを有する。第2筐体21は、カウンタウェイト検知センサ111bでカウンタウェイト7の下端が検知されたときに、第1筐体111fに対応する高さ位置になるように構成されている。これにより、第1筐体111fのコの字型の内部と、第2筐体21のコの字型の内部とで可動空間31が形成される。形成された可動空間31には、T字型の可動子32が設置される。このように構成されたエントランス階側箱保持装置111と搬送側箱保持装置20とにより、移動機構30としてのソレノイドアクチュエータが構成される。
【0018】
可動子32のT字の下部には、収納箱Bを連結させる連結機構33が設けられている。第2筐体21の縦軸内には、連結機構33に収納箱Bが連結されているときに、収納物Bの重みで発生する第2筐体21のたわみを検知する第2箱保持検知センサ24が設置されている。
【0019】
第1励磁コイル111gおよび第2励磁コイル22はエレベータ制御装置10に接続され、エレベータ制御装置10からの指示に基づいて励磁方向を切り替えることで、可動空間31内で可動子32を第1筐体111f側から第2筐体21側、または第2筐体1側から第1筐体111f側に移動させる。第1励磁コイル111gとエレベータ制御装置10との接続、および第2励磁コイル22とエレベータ制御装置10との接続は、有線でも無線でもよい。
【0020】
また、エントランス階側箱保持装置111の外枠111aの所定方向の側面には、保持された収納箱内への郵便物の搬入または取り出し作業を行うための扉111iが設置され、当該扉111iには、エレベータ制御装置10からの指示で施錠/開錠状態が切り替えられる電子錠111jが設けられている。
【0021】
居住階側箱保持装置121、131、141も上述したエントランス階側箱保持装置111と同様の構成を有し、搬送側箱保持装置20との間で同様に、収納箱の移動処理が実行可能である。
【0022】
エレベータ制御装置10は、図3に示すように、操作情報取得部10aと、かご内利用者情報取得部10bと、呼び登録部10cと、検知情報取得部10dと、運転制御部10eと、搬送制御部10fとを有する。操作情報取得部10aは、郵便配達員による操作盤114の操作情報を取得する。かご内利用者情報取得部10bは、乗りかご6内に利用者がいるか否かを示すかご内利用者情報を取得する。かご内利用者情報は、乗りかご6内に設置されたカメラ装置(図示せず)の撮像情報の解析情報、乗りかご6内に設置された荷重検知装置(図示せず)による検知情報、または乗りかご6内に設置された人感センサ(図示せず)の検知情報等に基づいて生成される。
【0023】
呼び登録部10cは、各乗場9−1〜9−4に設置された乗場操作盤(図示せず)で操作された乗場呼び操作に基づいて乗場呼びを登録するとともに、乗りかご6内に設置されたかご内操作盤(図示せず)で操作された行先階指定操作に基づいてかご呼びを登録する。検知情報取得部10dは、エントランス階側箱保持装置111〜113内のカウンタウェイト検知センサ111b〜113bによるカウンタウェイト7の検知情報、第1箱保持検知センサ111d〜113dによる収納箱の検知情報、荷重検知装置111e〜113eによる検知情報、および、搬送側箱保持装置20内の第2箱保持検知センサ24の検知情報を取得する。
【0024】
運転制御部10eは、呼び登録部10cに登録された呼びに応答するように、エレベータ内の各機器の動作を制御する。また運転制御部10eは、後述する搬送制御部10fの指示に従って、巻上げ機3の動作を制御する。
【0025】
搬送制御部10fは、搬送側箱保持装置20が、いずれかのエントランス階側箱保持装置111〜113に隣接した位置にくるように巻上げ機3を駆動させ、当該エントランス階側箱保持装置111〜113に保持された収納箱を、搬送側箱保持装置20に保持させるように移動機構30を駆動して移動させる。その後、搬送側箱保持装置20が当該エントランス階側箱保持装置111〜113に対応する階の居住階側箱保持装置121〜141に隣接した位置にくるように巻上げ機3を駆動させ、搬送側箱保持装置20に保持された収納箱を、移動先の居住階側箱保持装置121〜141に保持させるように移動機構30を駆動して移動させることで、当該収納箱を所定階に搬送する処理を行う。
【0026】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aの動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4は、当該エレベータシステム1Aの動作中にエレベータ制御装置で実行される処理を示す。
【0027】
まず、当該エレベータEの通常運転中に(S1)、エントランス階のエントランス階側箱保持装置(2階用)111内に2階の住居ごとのスペースを有する収納箱B1が保持され、エントランス階側箱保持装置(3階用)112内に3階の住居ごとのスペースを有する収納箱B2が保持され、エントランス階側箱保持装置(4階用)113内に4階の住居ごとのスペースを有する収納箱B3が保持される。また、移動機構30の可動子32は、搬送側箱保持装置20の第2筐体21にあり、収納箱は保持されていない状態である。
【0028】
各エントランス階側箱保持装置111、112、113内に収納箱B1、B2、B3が保持されることで、各第1箱保持検知センサ111dで収納箱が検知されるとともに荷重検知装置111eで収納箱の重量分として所定値以上の荷重が検知され、これらの検知情報がエレベータ制御装置10の検知情報取得部10dを介して搬送制御部10fで取得される。搬送制御部10fでは、これらの検知情報が取得されたことにより、各エントランス階側箱保持装置111、112、113に収納箱B1、B2、B3が正常に設置されたことが認識され、それぞれの扉111iの電子錠111jが開錠される。
【0029】
そして、郵便配達員が各収納箱B1〜B3の扉111iを開け、各スペースに該当する郵便物を搬入する。搬入作業が終わると、配達員は操作盤114で収納箱B1〜B3を各階へ搬送する処理を開始させるための操作を行う。
【0030】
操作盤114で行われた操作の情報はエレベータ制御装置10に送信され、操作情報取得部10aで取得される。エレベータ制御装置10では、操作盤114での操作情報が取得されると(S2の「YES」)、搬送制御部10fにより、かご内利用者情報取得部10bで乗りかご6から取得される情報に基づいて、乗りかご6内に利用者がいるか否かが判定される(S3)。ここで、乗りかご6内に利用者がいると判定されたときにはいなくなるまで監視され(S3の「YES」)、利用者がいなくなると(S3の「NO」)、さらに、呼び登録部10cに乗場呼びが登録されているか否かが判定される(S4)。
【0031】
ここで、乗場呼びが登録されていると判定されたときには(S4の「YES」)、ステップS3に戻り、乗りかご6内に利用者がおらず乗場呼びが登録されていない状態になるまで監視される。そして、乗りかご6内に利用者がおらず、且つ乗場呼びが登録されていない状況になると(S4の「NO」)、まずエントランス階側箱保持装置(2階用)111内の収納箱B1を、2階の居住階側箱保持装置(2階用)121に搬送するための処理が開始される。
【0032】
当該処理が開始されると、搬送制御部10fから運転制御部10eに、搬送側箱保持装置20がエントランス階側箱保持装置111に隣接した位置にくるように、巻上げ機3の動作指示が送出される。運転制御部10eは、搬送制御部10fから取得した指示に基づいて、巻上げ機3を動作させる(S5)。
【0033】
巻上げ機3が動作したことにより、カウンタウェイト7が上階から下方向に移動し、エントランス階側箱保持装置111のカウンタウェイト検知センサ111bでカウンタウェイト7の下端が検知されると、運転制御部10eにおいて、搬送側箱保持装置20がエントランス階側箱保持装置111に隣接した位置にきたと判断され、巻上げ機3の動作が停止される。
【0034】
そして、搬送制御部10fの制御により、可動子32が第1励磁コイル111gに吸引されるように、第1励磁コイル111gおよび第2励磁コイル22がそれぞれ所定方向に励磁される。これにより可動子32が第1励磁コイル111gに吸引されて第1筐体111f内に移動し、箱保持空間111c内の収納箱B1が連結機構33により可動子32に連結される。
【0035】
その後、搬送制御部10fの制御により、可動子32が第2励磁コイル22に吸引されるように、第1励磁コイル111gおよび第2励磁コイル22の励磁方向が切り替えられる。これにより可動子32が第2励磁コイル22に吸引された第2筐体21内に移動し、可動子32に連結された収納箱B1も箱保持空間111c外に移動され、搬送側箱保持装置20に保持された状態になる(S6)。
【0036】
収納箱B1が箱保持空間111c外に移動すると、第1箱保持検知センサ111dで収納箱B1が検知されない状態になるとともに、荷重検知装置111eで荷重が検知されない状態になる。これらの状態は、検知情報に基づいてエレベータ制御装置10の搬送制御部10fで認識される。また、収納箱B1が搬送側箱保持装置20に保持された状態になると、第2箱保持検知センサ24において、第2筐体21内に移動してきた可動子32に連結されている収納箱B1の重みで第2筐体21に発生したたわみが検知され、当該検知情報がエレベータ制御装置10に送信される。これらの検知情報は、エレベータ制御装置10の検知情報取得部10dを介して搬送制御部10fで取得される。
【0037】
ここで、第1箱保持検知センサ111dで収納箱B1が検知されない状態になるとともに、荷重検知装置111eで荷重が検知されない状態になったにもかかわらず、第2箱保持検知センサ24において収納箱B1が検知されないときには、異常が発生したと判断し、搬送制御部10fから運転制御部10eに対しエレベータの運転を停止させる指示が送出される。
【0038】
搬送制御部10fでは、第1箱保持検知センサ111dおよび荷重検知装置111eで検知情報が取得されなくなり、第2箱保持検知センサ24で検知情報が取得されると、収納箱B1がエントランス階側箱保持装置111側から搬送側箱保持装置20側に正常に移動されたことが認識され、収納箱B1の扉111iの電子錠111jが施錠される。
【0039】
収納箱B1が正常に搬送側箱保持装置20側に移動されたことが検知されると、搬送制御部10fから運転制御部10eに、搬送側箱保持装置20が居住階側箱保持装置(2階用)121に隣接した位置にくるように、巻上げ機3の動作指示が送出される。運転制御部10eは、搬送制御部10fから取得した指示に基づいて、巻上げ機3を動作させる(S7)。
【0040】
巻上げ機3が動作したことにより、カウンタウェイト7が上方向に移動し、居住階側箱保持装置(2階用)121のカウンタウェイト検知センサ111bでカウンタウェイト7の下端が検知されると、運転制御部10eにおいて、搬送側箱保持装置20が居住階側箱保持装置(2階用)121に隣接した位置にきたと判断され、巻上げ機3の動作が停止される。そして、搬送制御部10fの制御により、搬送側箱保持装置20がエントランス階側箱保持装置(2階用)111に隣接した位置にきたときと同様の処理が実行され、収納箱B1が搬送側箱保持装置20側から居住階側箱保持装置(2階用)121側に移動され、箱保持空間111cに保持された状態になる(S8)。
【0041】
収納箱B1が居住階側箱保持装置(2階用)121の箱保持空間111cに保持されると、第1箱保持検知センサ111dで収納箱B1が検知された状態になるとともに、荷重検知装置111eで、収納箱B1の重量分として所定値以上の荷重が検知された状態になる。これらの検知情報は、エレベータ制御装置10の検知情報取得部10dを介して搬送制御部10fで取得される。搬送制御部10fでは、居住階側箱保持装置(2階用)121の第1箱保持検知センサ111dおよび荷重検知装置111eからの検知情報が取得されたことから、収納箱B1が搬送側箱保持装置20側から居住階側箱保持装置(2階用)121側に正常に移動されたことが認識され、収納箱B1の扉111iの電子錠111jが開錠される。これにより、2階の居住者が収納箱B1から郵便物を取り出すことができる状態になる。以上で、エントランス階から2階への収納箱B1の搬送処理が終了する。
【0042】
そして、エントランス階から3階への収納箱B2の搬送処理、およびエントランス階から4階への収納箱B3の搬送処理も同様に実行される(S9の「NO」)。
【0043】
以上の第1実施形態によれば、エレベータのカウンタウェイトの昇降を利用することで、エレベータの運転効率および利用者へのサービスを低下させずに、配達物を居住階まで搬送することができる。
【0044】
上述した第1実施形態において説明した搬送処理を、予め設定された時間帯、例えばエレベータの利用が少ない夜間時間帯に実行させるように設定することで、さらに効率よく搬送処理を実行させることができる。また、搬送処理の実行中に利用者の操作により呼びが発生したときには搬送処理を中断して当該呼びに応答し、当該呼びへの応答後に搬送処理を再開するようにしてもよい。このように処理を行うことにより、利用者へのサービスを低下させずに搬送処理を実行させることができる。
【0045】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータシステム1Bの構成について説明する。本実施形態においてエレベータシステム1Bは、建物のいずれかの階の、カウンタウェイト7が走行する箇所に隣接する位置に設置された追加ウェイト保持装置101を有する他は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分は詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態において追加ウェイト保持装置101は、図5に示すように1階フロア下部に設置され、追加ウェイト保持装置101には、カウンタウェイト7に追加する追加ウェイトWが保持されている。また、移動機構30は、エントランス階側箱保持装置と搬送側箱保持装置との間で構成される移動機構、および、居住階側箱保持装置と搬送側箱保持装置との間で構成される移動機構と同様に、追加ウェイト保持装置101と、隣接した搬送側箱保持装置20との間で構成され、追加ウェイトを移動させる。
【0047】
また、搬送制御部10fは、建物内で上方向に移動する乗りかご6を利用する利用者が多い時間帯が到来したときに、搬送側箱保持装置20が、追加ウェイト保持装置101に隣接した位置にくるようにエレベータEの巻上げ機を駆動し、当該追加ウェイト保持装置101に保持された追加ウェイトWを、搬送側箱保持装置20に保持させるように移動機構30を駆動して移動させ、建物内で下方向に移動する乗りかご6を利用する利用者が多い時間帯が到来したときに搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されていた場合には、当該収納箱Bまたは追加ウェイトWを搬送側箱保持装置20から取り外す処理を行う。
【0048】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1Bの動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、エレベータの利用頻度が高い時間帯として予め設定された、朝の出勤時間帯と、夕方の帰宅時間帯以外の時間帯に実行される処理は、第1実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する(S11)。
【0049】
第1実施形態で説明した処理が実行されているときに、エレベータ制御装置10において予め設定された出勤時間帯が到来したことが検知されると(S12の「YES」)、検知情報取得部10dで取得される情報に基づいて、搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されているか否かが搬送制御部10fで判定される(S13)。一般的に住居用の建物では、朝の出勤時間帯は乗りかご6に利用者が多く乗車した状態で下方向に移動する運転が多く発生する。この場合、カウンタウェイト7の重量が少ないほうが、エレベータEにおける消費エネルギーが少なくなる。
【0050】
そのため、出勤時間帯が到来したときに搬送処理の実行により搬送側箱保持装置20に収納箱Bが保持されているときには(S16の「YES」)、当該収納箱Bが、該当する居住階側箱保持装置に移動されて搬送側箱保持装置20から取り外されたのち、搬送処理が中断される(S14)。そして、出勤時間帯が終了したことが検知されると(S15の「YES」)、中断した搬送処理を再開させる(S16)。また、ステップS13において、搬送側箱保持装置20に追加ウェイトWが保持されているときには、当該追加ウェイトWが追加ウェイト保持装置101に戻されて搬送側箱保持装置20から取り外される。
【0051】
ステップS13において、出勤時間帯が到来したときに搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されていないときには(S13の「NO」)、ステップS11に戻り、そのまま第1実施形態と同様の処理が実行される。
【0052】
また、エレベータ制御装置10において予め設定された帰宅時間帯が到来したことが検知されると(S12の「NO」→S17の「YES」)、検知情報取得部10dで取得される情報に基づいて、搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されているか否かが搬送制御部10fで判定される(S18)。一般的に住居用の建物では、夕方の帰宅時間帯は乗りかご6に利用者が多く乗車した状態で上方向に移動する運転が多く発生する。この場合、カウンタウェイト7の重量が多いほうが、エレベータEにおける消費エネルギーが少なくなる。
【0053】
そのため、帰宅時間帯が到来したときに搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されていないときには(S18の「NO」)、搬送側箱保持装置20が、追加ウェイト保持装置101に隣接した位置にくるようにエレベータの巻上げ機3が駆動され、当該追加ウェイト保持装置101に保持された追加ウェイトWを搬送側箱保持装置20に保持させるように、移動機構30が駆動されて移動される(S19)。
【0054】
ステップS18において、帰宅時間帯が到来したときに搬送側箱保持装置20に収納箱Bまたは追加ウェイトWが保持されているときには(S18の「YES」)、ステップS111に戻り、そのまま第1実施形態と同様の処理が実行される。
【0055】
以上の第2実施形態によれば、所定方向へのエレベータ利用が多い時間帯に、収納箱または追加ウェイトを意図的にカウンタウェイト側から取り外すかまたは取り付けるようにすることで、エレベータの省エネ効果を高めることができる。
【0056】
《第3実施形態》
〈第3実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第3実施形態によるエレベータシステム1Cの構成について、図7を参照して説明する。本実施形態によるエレベータシステム1Cは、建物内に設置された3台のエレベータ(第1エレベータE1、第2エレベータE2、および第3エレベータE3)と、各階の搬送エリアに設置された箱保持装置移動機構40と、これらの3台のエレベータE1、E2、E3、箱保持装置移動機構40、およびエントランス階の操作盤114に接続された群管理装置50とを備える。エレベータE1、E2、E3の構成は、第1実施形態で説明したエレベータEの構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
箱保持装置移動機構40はそれぞれ、該当する階に設置された居住階側箱保持装置またはエントランス階側箱保持装置を、第1エレベータE1のカウンタウェイト7に隣接する位置、第2エレベータE2のカウンタウェイト7に隣接する位置、第3エレベータE3のカウンタウェイト7に隣接する位置間で移動させる。
【0058】
群管理装置50は、3台のエレベータE1、E2、E3の中の少なくとも1台を利用者向けに待機状態にさせるとともに他のエレベータに搬送処理を実行させ、呼びが発生したことにより待機状態にしたエレベータが応答処理を開始したときには、他のエレベータの1台を待機状態に移行させるように、該当するエレベータの制御装置10−1、10−2、10−3に指示を送信する。また群管理装置50は、搬送処理を実行する階の箱保持装置移動機構40に対し、居住階側箱保持装置またはエントランス階側箱保持装置を、搬送処理を行うエレベータのカウンタウェイト7−1、7−2、または7−3に隣接する位置に移動させる指示を送信する。
【0059】
〈第3実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1Cの動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。まず、各エレベータE1、E2、E3において通常運転が実行されているときに(S21)、エントランス階の操作盤114での操作情報が群管理装置50で取得されると(S22の「YES」)、3台のエレベータE1、E2、E3の中の1台を利用者向けに待機状態にさせるとともに、他の2台のエレベータに搬送処理を実行させるように、各エレベータの制御装置10−1〜10−3に指示が送信される(S23)。2台のエレベータで搬送処理を実行するように指示されることにより、異なる階への搬送処理を並行して実施させることができる。
【0060】
送信した指示に基づいて各エレベータが動作しているときに、いずれかの階で乗場呼びが発生すると(S24の「YES」)、群管理装置50の指示により、待機状態のエレベータが当該乗場呼びに応答される(S25)。乗場呼びへの応答が開始されたことにより待機情報のエレベータがなくなると(S26の「YES」)、群管理装置50により、搬送処理を実行させるエレベータとして設定されているエレベータの中の1台を待機状態に移行させるように、該当するエレベータ制御装置に指示が送信される(S27)。待機状態に移行させる指示を受けたエレベータでは、搬送処理の実行中であれば、搬送処理が終了し次第、または実行中の搬送処理が中断され、利用者向けに待機状態に移行される。上述したステップS24〜S27の処理は、すべての階床への搬送処理が終了するまで繰り返される(S28の「NO」)。
【0061】
また上述したステップS23〜S27の処理中、群管理装置50により、搬送処理を実行する階の箱保持装置移動機構40に対し、居住階側箱保持装置またはエントランス階側箱保持装置を、搬送処理を行うエレベータのカウンタウェイト7−1、7−2、または7−3に隣接する位置に移動させる指示が送信される。これにより、搬送処理を行う階の該当するエレベータにおいて、正常に搬送処理が実行される。
【0062】
以上の第3実施形態によれば、複数台のエレベータが設置された建物内において、複数台のエレベータを用いて複数階への搬送処理を並行して実行する場合に、利用者向けに待機状態のエレベータを1台は確保することで、利用者へのサービスを低下させずに効率よく搬送処理を行うことができる。
【0063】
《第4実施形態》
〈第4実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第4実施形態によるエレベータシステム1Dの構成は、第3実施形態で説明したエレベータシステム1Cの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態において群管理装置50は、いずれかの階で操作された乗場呼びが登録されたときに、当該乗場呼びが登録されてから、応答して乗りかご6が該当する乗場に着床するまでにかかった時間を、当該乗場呼び操作を行った利用者の待ち時間として算出する。
【0065】
また群管理装置50は、建物内の3台のエレベータE1、E2、E3それぞれに関し、予め設定された、搬送処理に用いる優先度の情報を保持する。そして、当該優先度が高い所定数のエレベータに搬送処理を実行させるとともに、他のエレベータに利用者向けの通常運転を実行させ、乗場における利用者の待ち時間が所定値以上になると、搬送処理を実行中のエレベータのうち最も優先度が低いエレベータを通常運転に切り替えるように、該当するエレベータの制御装置10−1、10−2、10−3に指示を送信する。
【0066】
〈第4実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1Dの動作について、図9のフローチャートを参照して説明する。まず、各エレベータE1、E2、E3において通常運転が実行されているときに(S21)、エントランス階の操作盤114での操作情報が群管理装置50で取得されると(S22の「YES」)、予め設定された、搬送処理に用いる優先度が高い所定数(例えば2台)のエレベータに搬送処理を実行させるとともに、他のエレベータ(例えば1台)に利用者向けの通常運転を実行させるように、各エレベータの制御装置10−1〜10−3に指示が送信される(S33)。
【0067】
送信した指示に基づいて各エレベータが動作しているときに、いずれかの階で乗場呼び操作を行った利用者の待ち時間が、予め設定された第1時間以上になったか否かが監視される(S34)。そして、エレベータの利用者が増加し、待ち時間が第1時間以上になったと判定されると(S34の「YES」)、群管理装置50により、搬送処理を実行中のエレベータのうち最も優先度が低いエレベータを通常運転に切り替えるように、該当するエレベータの制御装置10−1、10−2、または10−3に指示が送信される(S35)。通常運転に切り替える指示を受けたエレベータでは、搬送処理の実行中であれば、搬送処理が終了し次第、または実行中の搬送処理が中断され、通常運転に切り替えられる。
【0068】
その後、利用者の待ち時間が、第1時間よりも短い時間で予め設定された第2時間以下になったか否かが監視される(S36)。そして、エレベータの利用者が減少し、待ち時間が第2時間以下になったと判定されると(S36の「YES」)、ステップS35で通常運転に切り替えたエレベータが搬送処理用に戻される(S37)。上述したステップS34〜S37の処理は、すべての階床への搬送処理が終了するまで繰り返される(S38の「NO」)。
【0069】
また上述したステップS23〜S38の処理中、群管理装置50により、第3実施形態と同様に、搬送処理を実行する階の箱保持装置移動機構40に対し、居住階側箱保持装置またはエントランス階側箱保持装置を、搬送処理を行うエレベータのカウンタウェイト7−1、7−2、または7−3に隣接する位置に移動させる指示が送信される。これにより、搬送処理を行う階の該当するエレベータにおいて、正常に搬送処理が実行される。
【0070】
以上の第4実施形態によれば、複数台のエレベータが設置された建物内において、複数台のエレベータを用いて複数階への搬送処理を並行して実行する場合に、利用者へのサービスが低下しないようにしつつ、搬送処理を行うことができる。
【0071】
上述した第4実施形態において、エレベータ間で搬送処理の実行頻度が偏らないように、群管理装置50に保持した3台のエレベータに関する優先度を、所定時間ごとに変更するようにしてもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1A,1B,1C,1D…エレベータシステム、2…昇降路、3…巻上げ機、4…そらせシーブ、5…メインロープ、6,6−1〜6−3…乗りかご、7,7−1〜7−3…カウンタウェイト、8…テールコード、9−1〜9−4…乗場、10,10−1〜10−3…エレベータ制御装置、10a…操作情報取得部、10b…かご内利用者情報取得部、10c…呼び登録部、10d…検知情報取得部、10e…運転制御部、10f…搬送制御部、11〜14…搬送エリア、20…搬送側箱保持装置、21…第2筐体、22…第2励磁コイル、23…第2バネ部、24…第2箱保持検知センサ、30…移動機構、31…可動空間、32…可動子、33…連結機構、40…箱保持装置移動機構、50…群管理装置、101…追加ウェイト保持装置、111〜113…エントランス階側箱保持装置、111a…外枠、111b…カウンタウェイト検知センサ、111c…箱保持空間、111d…第1箱保持検知センサ、111e…荷重検知装置、111f…第1筐体、111g…第1励磁コイル、111h…第1バネ部、111i…扉、111j…電子錠、114…操作盤、121,131,141…居住階側箱保持装置
【要約】
【課題】エレベータの運転効率および利用者へのサービスを低下させずに、エレベータを利用して配達物を各階に搬送することが可能なエレベータシステム、エレベータ制御装置、およびエレベータを用いた搬送方法を提供する。
【解決手段】実施形態によればエレベータ制御装置は、巻上げ機を駆動することで、カウンタウェイトに設置された搬送側箱保持装置を、基準階に設置された基準階側箱保持装置に隣接させ、基準階側箱保持装置に保持された収納箱を搬送側箱保持装置に移動させ、その後搬送側箱保持装置を搬送先の階に設置された居住階側箱保持装置に隣接させ、搬送側箱保持装置に保持された収納箱を当該居住階側箱保持装置に移動させることで、当該収納箱の搬送処理を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9