(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記密閉容器は、前記水中カメラの光軸方向に伸縮可能な蛇腹構造と、前記密閉容器の周囲に設けられ前記密閉容器を支持しガイドするガイド部と、を有する請求項1に記載の水中検査装置。
前記第1透光部は、透光性部材と、前記透光性部材上に設けられた傷防止部材との二重構造を有し、前記傷防止部材が交換可能である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ROV等により検査対象となる水中構造物のダム堤体や港湾構造物や水路や管路などは、水(海水)で満たされている点検場所があるとともに、その水が濁っている場合が多い。ROV等に備えた水中カメラによって水中構造物を点検する際に、高濁度の条件下では構造物の様子を鮮明に撮影することができない。特許文献2の水中点検観測装置は、上述のように、混濁した水中で透明性を確保するようにカメラ前部に密閉式の容器を設けているが、この装置をROVのように遠隔操作で水中移動させる場合、その
図1からわかるように、前方に長く突き出た形状から、水中カメラ前部を覆う容器はROV本体の浮力バランスに悪影響を及ぼす。また、ROVが水中を移動する際、容器が抵抗となってROVの動作性能に支障をきたしてしまう。すなわち、ROVの前後方向の移動にはさほど問題はないが、上下左右の移動あるいは旋回に対しては思い通りの制御がしにくい懸念があり、ROVを近距離で移動させながら構造物を細かく点検するような場合には不向きと考えられる。また、水中構造物を点検する際、ROVを静止させる必要があるが、水中ではこの位置決めが困難である。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、水中カメラで水中構造物を点検する際に高濁度の条件下でも水中構造物の検査対象面を鮮明に撮影することができるとともに、水中における移動制御が容易な水中検査装置およびこの装置のための水中カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための水中検査装置は、水中構造物を検査するための水中検査装置であって、水中構造物の検査対象面を撮影する水中カメラと、前記水中カメラの前部に配置されかつ前記検査対象面側に第1透光部を有し、前記カメラ前部側に第2透光部を有する伸縮可能な密閉容器と、清水貯留部から前記密閉容器の内部に清水を供給する清水供給手段と、装置本体を水中において3次元方向に移動させるための推進機構と、を備え、前記推進機構による移動時に前記密閉容器を
前記装置本体内に縮めるとともに、前記撮影時に
前記装置本体外に伸ばす構成であり、前記水中カメラは、前記密閉容器の伸縮により前記第1透光部が前記検査対象面に接触ないし接近した状態となって前記清水貯留部からの清水で満たされた前記密閉容器を通して前記検査対象面を撮影することを特徴とする。
【0008】
この水中検査装置によれば、水中カメラの前部に配置された密閉容器の伸縮により第1透光部が水中構造物の検査対象面に接触ないし接近した状態で、水中カメラが清水貯留部からの清水で満たされた密閉容器を通して検査対象面を撮影するので、高濁度の条件下でも検査対象面を鮮明に撮影することができる。また、水中検査装置が推進機構により水中で移動する時に密閉容器を縮めるとともに、撮影時に伸ばす構成であるので、カメラ前部に密閉容器を配置しても、装置の水中移動に悪影響を及ぼすことがなく、水中における移動制御が容易となる。
【0009】
上記水中検査装置において、前記密閉容器は、前記水中カメラの光軸方向に伸縮可能な蛇腹構造と、前記密閉容器の周囲に設けられ前記密閉容器を支持しガイドするガイド部と、を有することが好ましい。密閉容器を蛇腹構造とすることで伸縮が自在になるとともに、伸縮する密閉容器をガイド部により支持するので、密閉容器がスムースに伸縮でき、また、先端側での蛇腹構造の垂れ下がり等の変形を防止できる。
【0010】
また、前記密閉容器の伸縮を、前記清水供給手段による前記密閉容器に対する清水の供給・排出によって行うように構成できる。
【0011】
また、前記ガイド部を前記伸縮方向に駆動する駆動部を有する伸縮手段を備え、
前記密閉容器の伸縮を前記伸縮手段によって行うように構成できる。
【0012】
また、前記清水貯留部が伸縮構造を有し、前記清水供給手段が前記伸縮構造を伸縮させる駆動部を有し、前記駆動部により前記伸縮構造を伸縮させて前記清水貯留部から通水路を通して清水を前記密閉容器へ供給し、また、前記密閉容器から前記通水路を通して清水を前記清水貯留部へ排出するように構成できる。
【0013】
また、前記第1透光部は、透光性部材と、前記透光性部材上に設けられた傷防止部材との二重構造を有し、前記傷防止部材が交換可能であることが好ましい。
【0014】
なお、実スケール判断のために前記検査対象面に間隔が既知である2本のレーザー光を照射するレーザー光源を有することが好ましい。
【0015】
また、水中カメラ装置は、上述の水中検査装置における前記水中カメラと、前記密閉容器と、前記清水供給手段と、を備えることを特徴とする。この水中カメラ装置によれば、高濁度の条件下でも検査対象面を鮮明に撮影することができる。
【0016】
なお、別の水中カメラ装置は、水中カメラと、前記水中カメラの前部に配置されかつ撮影対象物体側に第1透光部を有し、前記カメラ前部側に第2透光部を有する伸縮可能な密閉容器と、清水貯留部を有し前記清水貯留部から前記密閉容器の内部に清水を供給する清水供給手段と、前記水中カメラは、前記密閉容器の伸縮により前記第1透光部が撮影対象物体に接触ないし接近した状態となって前記清水貯留部からの清水で満たされた前記密閉容器を通して前記撮影対象物体を撮影することを特徴とする。
【0017】
この水中カメラ装置によれば、水中カメラの前部に配置された密閉容器の伸縮により第1透光部が水中の撮影対象物体の検査対象面等に接触ないし接近した状態で、水中カメラが清水貯留部からの清水で満たされた密閉容器を通して検査対象面を撮影するので、高濁度の条件下でも検査対象面等を鮮明に撮影することができる。この水中カメラ装置は上記水中検査装置に使用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水中カメラで水中構造物を点検する際に高濁度の条件下でも水中構造物の検査対象面を鮮明に撮影することができるとともに、水中における移動制御が容易な水中検査装置およびこの装置のための水中カメラ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による水中検査装置の全体を示す斜視図である。
図2は
図1の水中検査装置の上面図(a)、正面図(b)および側面図(c)である。なお、
図2(a)〜(c)では、装置上部の浮力体33の図示を省略している。
【0021】
図1、
図2(a)〜(c)に示すように、水中検査装置10は、水中に没する装置本体10aを有し、この装置本体10aは、下面に配置された環状のフレーム31と、上面に配置された環状のフレーム32と、フレーム32の上部に配置された平板状の浮力体33と、を備える。
【0022】
さらに、装置本体10aは、フレーム31とフレーム32との間に検査機器などを搭載し、全体として略矩方体状に構成されている。浮力体33は、水中において装置本体10aに適度な浮力が作用するようにその容量が決められる。装置本体10aは、全体寸法をたとえば、長さ80cm×幅50cm×高さ60cm程度とすることができるが、これらは一例であって、適宜変更可能である。
【0023】
−
水中検査装置10の装置本体10aは、その正面側(
図2(b))に、水中構造物の検査対象面に対し打音検査を行う打音検査部11と、検査対象面に対し超音波探触子による肉厚測定を行う肉厚測定部12と、検査前に検査対象面に付着している錆、苔、ヌメリ、貝、藻などの検査障害物を除去する検査障害物除去部13と、検査対象面を撮影し画像情報を取得する計測水中カメラ14と、計測水中カメラ14の周囲に配置されて検査対象面を照明するLEDなどからなる照明部15と、を有している。
【0024】
また、装置本体10aは、水中において3次元方向に移動するためにプロペラやモータなどから構成される推進部(スラスター)17,18,19を備え、フレーム31,32の間に配置された推進部17は装置を横(X)方向に移動させ、フレーム31,32の間に配置された推進部18は前後(Y)方向に移動させ、浮力体33内に配置された推進部19は上下(Z)方向に移動させる。
【0025】
また、装置本体10aは、その正面側から検査対象面側へ突き出し可能に設けられ長さ変更可能な複数本の検査対象面対応ロッド35a〜35dを有している。上側の検査対象面対応ロッド35a,35bは、装置本体10aの上面側のフレーム32の左右端部近傍に固定され、下側の検査対象面対応ロッド35c,35dは、装置下面側のフレーム31の左右端部近傍に固定されている。検査対象面対応ロッド35a〜35dは、伸縮機構を有して長さを伸縮自在に調整可能な伸縮棒から構成できる。このような伸縮棒は、公知の構造から構成可能で、たとえば、入れ子構造の一対の鋼管から構成でき、入れ子部分において管長手方向に所定ピッチで孔を管の径方向に貫通させて設け、手動により一対の鋼管を出し入れして目標長さに決めてから孔にロックピンを差し込むことで棒全体の長さを調整することができる。
【0026】
水中構造物の検査対象面が水平位置にある装置本体10aに対し傾斜している場合、その傾斜に対応して、予め検査対象面対応ロッド35a、35bを長めに調整し、検査対象面対応ロッド35c、35dを短めに調整しておくことで、装置本体10aを傾斜した検査対象面に対応して押し付け、装置本体10aの姿勢を水平に保持することができる(特許文献1の
図8参照)。
【0027】
また、水中構造物の検査対象面が直立面である場合、検査対象面対応ロッド35a〜35dを同じ長さに調整しておくことで、装置本体10aを直立面である検査対象面に押し付け、装置本体10aの姿勢を水平に保持することができる。
【0028】
また、装置本体10aは、装置本体10aをワイヤやロープで水中に吊り下げるための吊りクランプ36と、浮力体33の上面端部に設けられて装置本体10aの水中位置を測定するための応答器21と、装置側面から光を照射するためのLEDなどからなる照明部23と、超音波カメラ16と、操縦用カメラ20と、を備える。
【0029】
図1,
図2(a)〜(c)のように、計測水中カメラ(水中カメラ)14の前部には密閉容器50を設けているが、次に、かかる密閉容器について
図3を参照して説明する。
図3は、
図1,
図2の水中検査装置の水中カメラ14およびその前部に配置した密閉容器50を示す要部側面図である。
【0030】
図3のように、密閉容器50は、撮影対象の検査対象面側に配置される第1透光部51と、水中カメラ14の前部14b側に配置される第2透光部52と、第1透光部51と第2透光部52との間に配置される伸縮自在な筒状の蛇腹構造の伸縮部53と、を有し、内部が密閉されるようにシール構造となっている。
【0031】
密閉容器50の第1透光部51は、透光性板51aと、透光性板51a上に設けられた傷防止板51bとの二重構造を有し、透光性板51aと傷防止板51bとがリング状部材51cに密着してシールされるように取り付けられている。水中撮影時に第1透光部51が検査対象面に当接することで、その前面の傷防止板51bに傷がついても、透光性板51aには傷がつかず、また、傷防止板51bが交換可能であるので、傷ついた場合でも、対処可能である。透光性板51aは、透光性のある樹脂材料から構成でき、たとえば、アクリルやポリカーボネイト等を用いることができる。傷防止板51bは、透光性のあるフィルム状材料から構成でき、たとえば、PET等を用いることができる。
【0032】
密閉容器50の第2透光部52は、透光性板52aがリング状部材52bに密着してシールされるように取り付けられている。透光性板52aは、透光性のある樹脂材料から構成でき、たとえば、アクリルやポリカーボネイト等を用いることができる。水中カメラ14は、その前部14bが第2透光部52の透光性板52aに密着するように配置される。
【0033】
図3のように、蛇腹構造の伸縮部53は、その一端がリング状部材51cに、その他端がリング状部材52bにそれぞれ配置されて、シールされるように取り付けられている。また、伸縮部53の蛇腹構造は、たとえば、シリコンゴムやクロロプレンゴム等の可撓性を有する材質を用いて構成することができる。
【0034】
また、伸縮部53をガイドするガイドロッド54が密閉容器50の周囲に水中カメラ14の光軸cに略平行に設けられている。すなわち、ガイドロッド54は、その一端側が第1透光部51のリング状部材51cの外周面51e側に固定され、その他端側が水中カメラ14の張り出し部14aに貫通して摺動可能に取り付けられている。なお、張り出し部14aは、水中カメラ14の外周面を包囲し水中カメラ14を保持するように設けられて装置本体10a側に支持される。
【0035】
ガイドロッド54は、伸縮する蛇腹構造の伸縮部53を支持しガイドするので、密閉容器50がスムースに伸縮でき、また、伸縮部53の垂れ下がり等の変形を防止できる。なお、ガイドロッド54は、密閉容器50の周囲に複数本設けることが好ましい。また、密閉容器50には、水中カメラ14の周囲に設けた照明部15とは別に、検査対象面を照明するためにLED等からなる別の照明部を設けることが好ましい。
【0036】
また、密閉容器50の第2透光部52には、所定間隔で2本の平行なライン光を出射するレーザー光源55,56が設けられている。レーザー光源55からの2本のライン光55a,55bが検査対象面に間隔aで照射され(
図8)、レーザー光源56からの2本のライン光が検査対象面に間隔bで照射される。ライン光は、水中カメラ14が検査対象面を撮影する撮影範囲内に照射されるが、間隔a,bは、a≧bに設定され、たとえば、a=100mm、b=50mmに設定できるが、適宜変更可能である。通常、レーザー光源55,56のいずれか一方が使用され、撮影範囲内に照射された2本のライン光の間隔a(またはb)が実スケール(実寸法)の判断に用いられる。
【0037】
図3の密閉容器50は、その内部に清水が満たされるが、かかる清水の供給装置について
図1,
図2(a)〜(c)、
図4,
図5を参照して説明する。
図4は、
図1〜3の水中検査装置が移動する場合の水中カメラ、密閉容器および清水供給装置を概略的に示す要部側面図である。
図5は、
図1〜3の水中検査装置が検査を行う場合の水中カメラ、密閉容器および清水供給装置を概略的に示す要部側面図である。なお、
図4,
図5では、水中カメラや密閉容器等を、説明の便宜上、誇張して図示している。
【0038】
図4,
図5のように、清水供給装置60は、清水を内部に貯留する清水貯留部61と、清水貯留部61と密閉容器50との間で清水を送るように作動する駆動部65と、清水貯留部61と密閉容器50との間に設けられて通水路を構成する可撓性のホース63と、を有する。
【0039】
清水貯留部61は蛇腹構造を有する伸縮可能な伸縮体61aを有し、駆動部65は複数の駆動軸65aを
図4,
図5の横方向h1,その反対方向h2に駆動することで、伸縮体61aの蛇腹構造を伸縮させる。駆動部65は、電動モータとボールねじ等から構成される電動アクチュエータから構成できる。また、
図1,
図2(a)〜(c)のように、清水供給装置60の清水貯留部61と駆動部65は、装置本体10aの上部に配置されている。
【0040】
清水供給装置60は、
図4の清水貯留部61が清水を貯留した状態で、駆動部65を作動させて駆動軸65aを横方向h1へ駆動して、伸縮体61aを
図5のように圧縮することで、清水貯留部61から清水をホース63を通して密閉容器50内へ供給することができる。これにより、密閉容器50が清水で満たされて
図5のように伸びる。
【0041】
また、
図5の状態から駆動軸65aを反対方向h2に駆動して、伸縮体61aを
図4のように伸張させることで、密閉容器50から清水を清水貯留部61に排出し戻すことができる。これにより、密閉容器50から清水が排出されて密閉容器50が
図4のように縮む。
【0042】
上述のように、本実施形態では、密閉容器50の前後に第1透光部51,第2透光部52を配置し、密閉容器50の内部を清水で満たすことで、水中カメラ14の撮影前方の透明度を確保する構造としている。すなわち、
図3〜
図5のように、水中カメラ14の前部14bに配置された密閉容器50が伸縮することで第1透光部51が水中構造物の検査対象面Sに接触ないし接近した状態とし、水中カメラ14が清水貯留部61からの清水で満たされた密閉容器50を通して検査対象面を撮影するので、高濁度の条件下でも検査対象面Sを鮮明に撮影することができる。
【0043】
図4,
図5の清水供給装置60の別の例について
図9を参照して説明する。
図9の清水供給装置60Aは、清水貯留部61の伸縮体61aと密閉容器50との間に清水を送るポンプ62を配置し、
図4,
図5の駆動部65を省略したものである。
【0044】
図9の清水供給装置60Aは、ポンプ62を作動させることで清水を清水貯留部61からホース63を通して密閉容器50内へ供給することで、密閉容器50が
図5のように伸張する。また、ポンプ62の逆回転により、密閉容器50から清水を清水貯留部61に排出し戻すことで、密閉容器50が縮む(
図4)。
【0045】
次に、水中検査装置10の操作系・制御系について
図6のブロック図を参照して説明する。
図6のように、水中検査装置10は、装置本体10aに搭載された各部11〜23,55,56,65を遠隔操作するための操作部1と、装置本体10aを操縦するときに周囲の画像を表示させる液晶パネルなどからなる操作表示部5と、各部11〜23,55,56,65を制御するためのパソコンなどからなる制御部2と、各種画像信号や検査データや測定データなどを画面表示するための液晶パネルなどからなる表示部3と、を備える。装置本体10aの各部11〜23,55,56,65に対し必要な電力を供給し、また、必要に応じて電気信号を送受信するためのケーブルCBが操作部1に接続されている。なお、
図9の清水供給装置60Aを用いる場合は、ポンプ62が制御部2により同様に制御される。
【0046】
操作部1,操作表示部5,制御部2および表示部3は、船上、水上または陸上側に設置され、装置本体10aの各部11〜23,55,56,65を遠隔操作し制御し画報情報を表示する。制御部2は、ハードディスクやRAMなどからなるメモリを有し、画像情報を含む検査結果・測定結果をメモリに記録する。すなわち、打音検査部11による打音がメモリに記録され、再生されることで、その検査位置におけるコンクリート構造物の内部・表面の空洞や剥離やジャンカや亀裂などの欠陥の有無が判定される。かかる判定は、制御部2がインストールされたプログラムにより自動的に行うことができ、また、熟練者が実際に再生音を聴いて行うようにしてもよい。また、肉厚測定部12により測定された肉厚測定値がメモリに記録される。また、水中カメラ14により撮影された検査対象面の画像情報がメモリに記録される。
【0047】
また、制御部2は、水中位置測定装置4を有し、水中位置測定装置4は、水中の所定位置に設置された基準となる送受波器(図示省略)により装置本体10aの応答器21からの超音波信号の伝搬時間を計測し、距離換算情報より座標計算を行い、装置本体10aの水中位置をほぼリアルタイムに測定する。かかる水中位置情報により構造物の検査対象面における検査位置情報を得ることができる。
【0048】
図1〜
図6の水中検査装置10の動作について
図7,
図8を参照して説明する。
図7は
図1〜
図6の水中検査装置10による検査時の工程S01〜S09を説明するためのフローチャートである。
図8は
図1〜
図6の水中検査装置10の水中カメラにより撮影された、ライン光が写り込んだ検査対象面の撮影画像を概略的に示す図である。
【0049】
まず、検査前の調査により得た検査対象面Sの傾斜角度に対応して、たとえば、検査対象面対応ロッド35a、35bを長めにし、検査対象面対応ロッド35c、35dを短めに調整するとともに、検査障害物除去部13の回転部13aの先端面、打音検査部11の先端面、および肉厚測定部12の前面の角度を検査対象面S(
図5)に対応して調整しておく(S01)。また、水中カメラ14の光軸c(
図3)位置も調整しておく。
【0050】
次に、吊りクランプ36に掛けられたロープで支持された装置本体10aを水中に投入する(S02)。操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動しながら装置本体10aを検査対象面Sの目標位置近傍まで水中を移動させる(S03)。このとき、操縦用カメラ20からの画像を操作表示部5に表示させながら操作し、水中位置測定装置4で得た水中位置データにより装置本体10aの位置を最終的に確認することができる。
【0051】
装置本体10aの移動前には、
図4のように、駆動部65の作動により密閉容器50を縮めておく。これにより、水中カメラ14の前部14bに密閉容器50を配置しても、装置本体10aが水中移動する時、密閉容器50が縮んだ状態であるため、装置本体10a自体の動作性能に支障がなく、密閉容器50が水中検査装置10の水中移動に悪影響を及ぼすことがなく、水中における移動制御が容易となる。なお、
図4の密閉容器50内には適切な量の清水を充填し、また、清水貯留部61にも適切な量の水を充填しておく。
【0052】
次に、操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動することで、装置本体10aを検査対象面Sに向けて駆動し、検査対象面対応ロッド35a〜35dを検査対象面Sに当てることにより、装置本体10aを傾斜した検査対象面Sに対応して水平に押し付け、装置本体10aを静止させ、装置本体10aの姿勢を確実に水平に保持することができる(S04)。このとき、検査障害物除去部13の先端面は検査対象面Sとほぼ平行である。
【0053】
次に、操作部1の操作により、検査障害物除去部13の回転部13aを回転駆動し、カップブラシが検査対象面Sに押しつけられて回転することで、検査対象面Sの一部から検査障害物を除去する(S05)。
【0054】
次に、操作部1の操作により、ターレットモータ22を駆動し、打音検査部11を検査障害物除去部13が直前まで位置した位置まで回動させてから、操作部1の操作により、打音検査部11が検査障害物除去領域で打音検査を行い(S06)、続いて、照明部15からの光で照明しながら水中カメラ14により検査障害物除去領域を含む検査対象面Sを撮影する(S07)。この撮影前に、
図5のように、清水供給装置60の駆動部65の作動により、密閉容器50を伸張させて第1透光部51を検査対象面Sに近づけて(または接触させて)から、水中カメラ14で密閉容器50を通して検査対象面Sの撮影を行う。これより、水が混濁していても検査対象面Sを鮮明に撮影できる。なお、撮影のとき検査対象面Sは照明部15等により照明される。
【0055】
上述の水中カメラ14による撮影は、検査障害物除去後で打音検査前に行ってもよく、また、検査障害物除去の前後に行ってもよく、かかる水中カメラ14による検査対象面Sの撮影により水中における構造物の状態や清掃状態の把握を行うことができる。
【0056】
上述のようにして取得した打音検査結果および検査対象面Sの画像情報は、水中位置測定装置4で得た水中位置データ(検査位置データ)とともに制御部2へ送信され、制御部2のメモリに記録される(S08)。
【0057】
さらに検査を続ける場合には(S09)、工程S03に戻り、操作部1の操作により、推進部17〜19を駆動して装置本体10aを、次の検査対象面位置まで移動させる。
【0058】
なお、検査対象物が水中の鉄鋼構造物などの場合、打音検査工程S06で肉厚測定部12により鋼板などの肉厚を測定するようにしてもよい。
【0059】
また、撮影工程S07において、操作部1の操作によりレーザー光源55をオンすることで、
図8のように、2本の平行なライン光55a,55bを検査対象面Sに照射した状態で撮影する。ライン光55a,55bの間隔a(100mm)により、実スケール(実寸法)を判断できる。また、間隔aが長すぎる場合、レーザ光源56をオンし、間隔b(50mm)の2本のライン光を照射する。
【0060】
従来、水中において検査対象面の近傍が濁っている場合、水中カメラの前部から検査対象面までの距離が長いと、その撮影画像は不鮮明になったが、本実施形態の水中検査装置10によれば、
図5のように、水中カメラ14の前部14bに配置し清水を満たした密閉容器50の前部の第1透光部51を検査対象面Sに接近(または接触)させて撮影することで、検査対象面Sの撮影画像が鮮明になる。
【0061】
また、詳細な点検・検査を行うため、密閉容器50の第1透光部51を検査対象面Sに極力近づけることが好ましいが、このとき、密閉容器50の蛇腹構造による可撓性によって、検査対象面Sの多少の不陸に対応することができる。また、検査対象面Sに接触する可能性のある第1透光部51は、透光性板51aと傷防止板51bとの二重構造を有するため、万が一検査対象面Sとの接触により傷ついても、傷防止板51bが交換可能であり、装置の繰り返し使用に支障は生じない。
【0062】
また、水中検査装置10によれば、水中にある構造物に対し打音検査や肉厚測定や画像取得による外観検査が可能な遠隔操作による水中調査ロボット方式の検査システム(遠隔操作無人探査機)を実現することができる。
【0063】
なお、本実施形態の水中検査装置により検査が可能な水中にある構造物として、ダム、護岸構造物、岸壁構造物、海域制御構造物、海洋構造物などのコンクリート構造物や鉄鋼構造物があるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では密閉容器を蛇腹構造にしたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、入れ子構造としてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、密閉容器50の伸縮部53の伸縮は、密閉容器50内に清水を送り込んで水の力で展張させる構成とし、具体的には、清水貯留部61を駆動部65により伸縮させることにより(
図4,
図5)、または清水貯留部61と密閉容器50との間に配置したポンプ62の作動により(
図9)、清水を密閉容器50内に供給するように構成したが、本発明は、これに限定されず、密閉容器50に駆動部を設けてガイドロッド54を駆動することによって伸縮部53の蛇腹構造を強制的に伸縮させるようにしてもよい。かかる駆動部としては、水圧式のアクチュエータや電動アクチュエータなどを用いることができ、操作部1の操作により駆動制御できる。