【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例として例えばMRI画像診断を受ける被験者の特定の体位、この実施例ではマット上に頭部と頸部をささえて一定の体位を保持させる例を説明する。
【0025】
(実施例1)
図1、
図2において、この実施例は、マット1内のカバーである気密性袋2の方形の上面材2aと下面材2bとの間にクッション層3として予め定量の粒状体Pを充填するとともに第1の芯材として板用の支え4を選定し、第2の芯材としてストッパ6を選定してこれらを上面材2aと下面材2bとに取り付け、上面材2aと下面材2bの周縁を封止した例である。脱気用の排気弁7は上面材2aの隅に装着されている。
第1の芯材として用いる板状の支え4は、
図3(a)に示すように自立可能な可撓性を有する板であり、上面材2aと下面材2bの接合面9に跨って気密性袋2の側面(内面又は外面)に接着や気密性を確保したうえで縫着によって取り付けられ、気密性袋2に一定の幅で一定の立ち上がり高さを確保させるものである。
【0026】
第1の芯材として板状の支え4を上面材2aと下面材2bの接合面9に跨って気密性袋2の側面(内面又は外面)に取り付けることによって、気密性袋2は第1の芯材に用いた板状の支え4の高さに相当する立ち上がり高さが少なくとも板状の支え4の全幅の範囲にわたって確保される。
【0027】
板状の支えは単なる板を用いる場合に限らない。たとえば
図3(b)に示すように、板状の支え5の両側縁に上向きの腕5a、5aと下向きの腕5b、5bの対を設け、上面材2aと下面材2bにそれぞれ取り付けたバンド8に板状の支え5を挿しこむとともに上向きの腕5aと下向きの腕5bの対を両バンド8、8にそれぞれひっかけることによって板状の支え5を気密性袋2の外面又は内面に脱着可能に取り付けることができる。
【0028】
第2の芯材はストッパ6である。ストッパ6は
図3(c)に示すように柔軟な一定長さのシートであり、気密性袋2の上面と下面すなわち上面材2aの生地と下面材2bの生地を連結して気密性袋2の立ち上がり高さを一定の高さ以下の範囲に制限するものである。
【0029】
図4に示すように被験者Mの頭部Hを支える部位の気密性袋2の上面と下面をストッパ6で連結して気密性袋2の立ち上がり高さを制限し、頸部Nを支える部位の気密性袋2の部分には上面材2aと下面材2bの接合面9に跨って板状の支え4(又は5)を取り付けて気密性袋2の平均的な高さより高い立ち上がり高さを確保し、これによってマット1の表面を予め人体の頭部Hを受け入れるに必要な凹部と頸部Nを支える凸部を形成する曲面に賦形しておく。
【0030】
被験者Mが上向きの姿勢で横臥したときに被験者Mの頭部Hは肩部から上傾方向に延びる頸部Nに支えられるのが無理のない姿勢である。画像診断は、被験者Mが動かないようにマット1の面に固定し、その姿勢を保たせて診断を行う。
【0031】
マット1の表面に予め形成した被験者Mの頭部Hと頸部Nを受け入れるに必要な曲面の形状はかならずしも被験者Mの頸部Nや頭部Hの形状を正確に象る必要はなく、頭部H、頸部Nの概略の形状を象った形状に曲面が形成されていればよい。
【0032】
図5において、被験者MはベッドB上に仰向けに横たわり、その枕の位置に頭部H及び頸部Nの受入に必要な曲面が形成されたマット1を置き、被験者Mの頭部Hを頭部受入用の凹部内に受け入れ、頸部Nを凸部に支え、マット1の形状を被験者の頭部H、頸部Nの形状に可能な限り沿わせ、次いで排気弁7に空気ポンプ(図示略)を差し込んで気密性袋2内を脱気する。
【0033】
気密性袋2内が減圧されると、気密性袋2内の粒状体Pの充填密度が増大し、気密性袋2の減容によってクッション層3が被験者Mの頭部Hの形状になじんで変形し、頸部Nは支え4(又は5)の高さによって決定される立ち上がり高さの凸部に支えられ、頭部Hは、ストッパ6によって形成された凹部内に受け入れられて固定される。
【0034】
被験者Mの頭部Hおよび頸部Nを固定することによって、被験者Mの体動が抑制され、頭部HのCT、MRI,PETなどの画像診断の時間中、頭部H、頸部Nを含めて被験者Mの体位を安定に保持することができる。
【0035】
以上の操作はCT、MRI,PETなどの画像診断の場合の人体の体位の安定保持に限らず、放射線治療その他外科治療を行う場合に人体の頭部をベッドに固定するための要領は同じである。勿論人体の頭部の固定に限らない。手足その他の部位を一定角度で曲げた姿勢でベッド上に安定に固定保持することができる。さらには全身の固定にも適用することもできる。
以上、実施例1では、第1の芯材および第2の芯材として板状の支え4(又は5)とストッパ6を併用する例をして説明したが、勿論板状の支え4(又は5)とストッパ6をそれぞれ単独で使用することもできる。CT、MRI,PETなどの画像診断や、放射線治療その他外科治療を行う場合の操作要領は以下の実施例についても同じである。
【0036】
(実施例2)
実施例2は、芯材に枠棒11を用いる例である。実施例2では
図6(a)のようにマット1のカバーである気密性袋2の表面材2aと下面材2bの周縁を封止するとともに、その長手方向の両側縁に鞘10を形成しておき、
図6(b)に示すように鞘10の一端開口から直線状の枠棒11を差し込むことによって脱気に伴う気密性袋2の長さ方向の収縮を抑制することができる。枠棒11を
図7(a)のように長手方向に沿って上凸a1と下凸bとの湾曲形状に屈曲しておき、この屈曲した枠棒11を気密性袋2の両側縁の鞘10内に差し込むと、気密性袋2は、枠棒11の屈曲形状を倣って屈曲変形する。屈曲変形した気密性袋2内を脱気すると、そのまま固化し、気密性袋2は
図8のように枠棒11の上凸a1と下凸bの形状を象った凸部と凹部を有する湾曲形状に賦形される。
【0037】
屈曲した枠棒11の挿込によって形成される気密性袋2の凸部は、
図5に示す被験者の頸部の支持面となり、気密性袋の凹部は被験者の頭部の受入面となるが、勿論被験者の頸部、頭部の受け入れに限らず、さらに必要により
図7(b)のように立ち上がり高さがさらに高い上凸a2に屈曲変形でき、さらには人体の頭部以外の特定部位を受け入れるに必要な形状に屈曲させることもできる。
【0038】
なおこの実施例では枠棒11を気密性袋2の長手方向の両側縁に形成した鞘10内に脱着可能に差し込む例を説明したが、鞘10の形成位置は必ずしも気密性袋2の長手方向の両側縁に限るものではなく、気密性袋2の長手方向の中央部位や、気密性袋2の短辺側の縁など任意に設定し、所定形状に屈曲変形させた枠棒11を用いて気密性袋2を人体の特定部位の受け入れに適した形状に賦形することができる。さらに、枠棒11を気密性袋2に取り付けるに際しては、枠棒11に形成した鞘10内に差し込む例に限らず、接着、縫着その他の手段によって枠棒11を気密性袋2と一体にあるいは脱着可能に取り付けることができる。
【0039】
(実施例3)
実施例3に用いる芯材は、
図9のように予め所定形状に成形された弾力性を有する板状のホルダー12である。板状のホルダー12は、対の支持面部13、13と両支持面部13,13をつなぎ、両支持面部13、13を外開きの上傾姿勢に支えるヒンジ部14とからなり、ヒンジ部14の中央部分には突条14aを形成したものである。この実施例において、ホルダー12の両支持面部13、13に跨ってマット1の気密性袋2を支え、
図10のようにヒンジ部14の中央部分に頭部Hを載せると、ヒンジ部14の中央の突条14aが頭部Hの重量を受けてヒンジ部14を押し広げ、これによって外開きの上傾姿勢に保持された両支持面部13,13の間隔が狭まる。
【0040】
これによって両支持面部13,13に跨って支持された気密性袋2が頭部Hの両側面に押し付けられる。この状態で気密性袋2内を脱気すると、気密性袋2が頭部Hの両側面に押し付けられた状態で固化し、頭部Hに圧着し、頭部Hを定位置に保持する。勿論頭部Hの保持に限らず、腕、足その他人体の特定部位を支えたときに芯材としてのホルダー12の両支持面部13,13が人体の特定部位から重力を受けて弾性変形し、前記気密性袋2を圧着することによって人体の特定部位を定位置に保持することができる。
【0041】
以上実施例において、排気弁には通常逆止弁が使用される。脱気用の逆止弁は、脱気側を順方向、吸気側を逆方向とする給・排気孔を備えており、医療用体位保持具の使用時に空気ポンプを取り付けて給・排気孔を自動的に開弁し、空気ポンプの駆動により気密性袋内を脱気・減容してクッション層を固化させ、使用後は給・排気弁を手動で開弁すると、気密性袋内に外気が吸引され、前記気密性袋は元の容積に復帰するのであるが、給・排気孔は必ずしも逆止弁によらなくても、気密性袋の一部に開口した単なる通気孔であってもよい。
【0042】
すなわち、気密性袋の一部に開口した単なる通気孔であっても使用時に人体の重みを受けることによって気密性袋が加圧されると、気密性袋内の空気は通気孔を通して排気される。これによって気密性袋は減容され、クッション層の充填密度が増し、そのかぎりでクッション層を固化することができる。逆に使用後、気密性袋の加圧が解除されると、クッション層の復元力や芯材の反発力が気密性袋に作用し減容した前記気密性袋に通気孔から外気が吸引され、気密性袋は元の容積にもどる。このように、気密性袋に備える給・排気孔は逆止弁の給・排気孔に限らず、気密性袋の一部に開口した単なる通気孔であっても脱気によって気密性袋を減容させ、逆に外気の吸引によって元の容積に復帰させる機能が得られるのであって、例えば一瞬の撮影で終了する単純なレントゲン撮影のような短時間の固定であれば気密性袋の一部に通気孔を開口するだけで十分に対応することができる。
【0043】
以上のように本発明によれば、気密性袋に組み合わす芯材として種々の形態のものを用いることができ、芯材を気密性袋内に組み込み、あるいは外部から気密性袋を支え、マットを芯材に保持させるとともに芯材の形状に沿って強制的に変形させることによって、マットの表面に凹部及び凸部を含む人体の特定部位を受け入れるために必要な形状に賦形することができる。