特許第6649747号(P6649747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649747
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】圧電振動片および圧電振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   H03H9/19 E
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-220788(P2015-220788)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-127594(P2016-127594A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-265919(P2014-265919)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
(72)【発明者】
【氏名】皿田 孝史
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−197620(JP,A)
【文献】 特開2014−175887(JP,A)
【文献】 特開2014−179774(JP,A)
【文献】 特開2000−031781(JP,A)
【文献】 特開昭62−219708(JP,A)
【文献】 特開2014−135534(JP,A)
【文献】 特開2013−197824(JP,A)
【文献】 特開2015−186240(JP,A)
【文献】 特開2010−109527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00− 9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏のそれぞれの主面に少なくとも一段のメサ部が形成された圧電板を有し、それぞれの前記メサ部の側面は少なくとも1つが斜面であって、かつ前記側面は、前記主面側から順に、下段側端縁と上段側端縁とを有しており、
前記圧電板を平面視した場合において、
一のメサ部の側面の前記下段側端縁と、
前記一のメサ部の裏面側において前記一のメサ部に対応して形成される他のメサ部の側面の前記下段側端縁とが、
前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されており、かつ、
前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、
前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、
前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されているか、又は同じ位置に形成され、
前記一のメサ部の頂面に形成された上段側第1メサ部の−Z´側に面する第1上段側面は、前記他のメサ部の−Z´側に面する第2下段側面よりも+Z´方向に形成され、
前記各メサ部の−Z´側に面する面は傾斜した斜面であり、
下段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角よりも上段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角の方が大きい、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記圧電板を平面視した場合において、
前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、
前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、
前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されている場合は、
前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、
前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、
前記圧電板の端部から中央部に向かう方向において5μm以上ずれている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記圧電板の長手方向において、
前記一のメサ部では、一方の側の側面が斜面に形成されており、
前記他のメサ部では、他方の側の側面が斜面に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記圧電板はATカット水晶基板より形成され、
前記圧電板の長手方向が水晶結晶軸におけるZ´軸方向となる
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記他のメサ部において一段目のメサ部の側面の前記下段側端縁と、それに対向する前記圧電板の端縁と、の間に形成されたマウント電極において基板上に実装可能に形成される
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項6】
前記圧電板の長手方向に離間した2つの角部に、前記圧電板の面方向に平行であって、かつ前記圧電板の外部方向に突出する突出部が形成されており、前記突出部に形成されたマウント電極において基板上に実装可能に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電振動片。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電振動片と、
前記圧電振動片が実装されるパッケージと、
を備えることを特徴とする圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片および圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ATカット水晶基板より形成される圧電振動片において、圧電板の表裏それぞれの主面にメサ部を形成したメサ型の圧電振動片が知られている(特許文献1)。メサ型の圧電振動片では、振動領域としての圧電板の中央領域の厚みを、圧電板の周縁部の厚みよりも厚くすることで、振動エネルギーを振動領域内に閉じ込めることが可能になる。よって、圧電振動片のクリスタルインピーダンス(以下、CI値)を低減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−197824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、圧電振動片の小型化への要求が益々高まりつつある。その結果、メサ部に形成される振動領域を狭くせざるを得なくなり、CI値の上昇を招くといった課題がある。つまり、従来技術では、メサ型を有する圧電振動片において、小型化とCI値の低減とを両立させることは困難である。
【0005】
そこで本発明は、小型化とCI値の低減とを両立可能なメサ型の圧電振動片、及び圧電振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧電振動片は、表裏のそれぞれの主面に少なくとも一段のメサ部が形成された圧電板を有し、それぞれの前記メサ部の側面は少なくとも1つが斜面であって、かつ前記側面は、前記主面側から順に、下段側端縁と上段側端縁とを有しており、前記圧電板を平面視した場合において、一のメサ部の側面の前記下段側端縁と、前記一のメサ部の裏面側において前記一のメサ部に対応して形成される他のメサ部の側面の前記下段側端縁とが、前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されており、かつ、前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されているか、又は同じ位置に形成されていることを特徴とする。
本発明者らの鋭意検討によれば、圧電振動片のCI値は、圧電振動片の厚み変化率と関連性があることが判明した。即ち、圧電振動片の厚みが急激に変化する場合(=厚み変化率が大きい場合)は、厚み変化率が小さい場合と比較すると、CI値が高いことが判明した。よって、本発明によれば、メサ部の側面の少なくとも1つが斜面であることで、メサ部における圧電振動片の厚み変化を滑らかにすることが可能になり、よって、従来と比較するとCI値を低減することが可能になる。
さらに、一のメサ部の側面の下段側端縁と、一のメサ部の裏側において一のメサ部に対応して形成される他のメサ部の側面の下段側端縁とが、圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されており、かつ一のメサ部の側面の上段側端縁と、他のメサ部の側面の上段側端縁とが、圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されているか、又は同じ位置にあることにより、メサ部における厚み変化率を低減することができる。
よって、小型化とCI値の低減を両立することが可能になる。なお、ここで「一のメサ部に対応して形成される他のメサ部」とは、例えば表面に形成された一段目のメサ部に対しては、裏面に形成された一段目のメサ部を指し、表面の二段目のメサ部に対しては、裏面の二段目のメサ部のことを指すものとする。三段目以上も同様である。
【0007】
上記の圧電振動片において、前記圧電板を平面視した場合において、前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、前記圧電板の端部から中央部に向かう方向に沿って順に形成されている場合は、前記一のメサ部の側面の前記上段側端縁と、前記他のメサ部の側面の前記上段側端縁とが、前記圧電板の端部から中央部に向かう方向において5μm以上ずれていることが望ましい。
本発明によれば、一のメサ部の側面の上段側端縁と、他のメサ部の側面の上段側端縁とが、圧電板の端部から中央部に向かう方向において5μm以上ずれていることにより、設計誤差に関わらず、確実にメサ部における厚み変化率を低減し、CI値を低減することが可能になる。
圧電板の表裏それぞれにメサ部を形成する際には、表裏それぞれに対してエッチング加工を施すことになるが、平面視においてメサ部の側面の上段側端縁はエッチング加工によって凹凸が生じる(明確な綾線が発現しにくい)。ここで、凹凸のある場合の上段側端縁は、凹凸の中心線とする。凹凸がある場合においても、一のメサ部の側面の上段側端縁と、他のメサ部の上段側端縁とをある距離ずらしておくことで、メサ部において急激に厚さが変化することを回避できるが、両者の距離が近いと、凹凸の形成具合によっては、メサ部において急激に厚さが変化する。即ち、一のメサ部の側面の上段側端縁と、他のメサ部の側面の上段側端縁とが、圧電板の端部から中央部に向かう方向において5μm以上ずれていることにより、上段側端縁に凹凸がある場合においても、確実にメサ部における厚み変化率を低減でき、小型化とCI値の低減を両立することが可能となる。
【0008】
上記の圧電振動片において、前記圧電板の長手方向において、前記一のメサ部では、一方の側の側面が斜面に形成されており、前記他のメサ部では、他方の側の側面が斜面に形成されていることが望ましい。
本発明によれば、斜面が形成された表面の、その裏側には斜面が形成されないことになる。即ち、表裏両方に斜面が形成された場合は、圧電振動片を実装する際に導電性接着剤等の接合材が斜面を伝って濡れ広がり、振動特性の低下を招く可能性があるが、圧電振動片の表裏において、一方の面で斜面が形成され、その裏側では斜面が形成されていないので、斜面が形成されていない方の面で圧電振動片を実装することで、接合材の濡れ広がりを防止することが可能になる。よって小型化とCI値低下を両立しつつ、さらに実装による電気特性低下を防止することができる。
【0009】
上記の圧電振動片において、前記主面に複数段のメサ部が形成されている場合において、下段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角よりも、上段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角の方が大きいことが望ましい。
本発明によれば、主面に複数段のメサ部が形成されている場合において、下段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角よりも、上段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角の方が大きいことにより、電気特性の向上を図ることができる。即ち、斜面における励振電極の線切れの観点からは、斜面の傾斜角は小さい(滑らか)な方が好ましいが、一方で、傾斜角を小さくすると、メサ部の頂面の面積が小さくなり、十分な励振領域を確保できない、といった課題がある。そこで本発明では、下段のメサ部の側面の傾斜角を小さくして斜面における線切れ防止を図りつつ、上段のメサ部の側面では斜面の傾斜角を大きくして、従来では狭くなりがちな上段のメサ部の頂面の面積が出来るだけ大きくなるようにしている。したがって、電気特性の向上を達成することが可能になる。
【0010】
上記の圧電振動片において、前記圧電板はATカット水晶基板より形成され、前記圧電板の長手方向が水晶結晶軸におけるZ´軸方向となることが望ましい。
本発明によれば、圧電板の長手方向をATカット水晶基板のZ´軸方向に沿うようにすることで、小型化においても低いCIを維持できる。
ATカット水晶基板はX軸とZ´軸で構成される。ここで、ATカット水晶基板が厚み滑り振動をしているとき、X軸とZ´軸では電気偏極が生じる。電気偏極は電荷の偏りであり、X軸では正弦波状、Z´軸では直線状になる。電気偏極が直線状になるZ´軸を長辺とすることで、最も強い電荷が生じる辺を長くすることができる。強い電荷が生じる領域が広がれば、よりCIは低くなる。したがって、Z´軸を長辺とすることでより低いCIを維持することが可能となる。
【0011】
上記の圧電振動片において、前記他のメサ部において一段目のメサ部の側面の前記下段側端縁と、それに対向する前記圧電板の端縁と、の間に形成されたマウント電極において基板上に実装可能に形成されることが望ましい。
本発明によれば、一段目の他のメサ部の側面の下段側端縁と、それに対向する圧電板の端縁との間に形成されたマウント電極において実装可能に形成されることにより、圧電振動片の実装強度を確保することができる。即ち、一のメサ部のうち一段目のメサ部の側面の下段側端縁とそれに対向する圧電板の端縁との間よりも、他のメサ部のうち一段目のメサ部の側面の下段側端縁と、それに対向する圧電板の端縁との間の方が広くなるように形成されている。よって、本発明によれば、マウント電極の形成領域を充分に確保することができるので、圧電振動片の実装強度を確保することができる。
また、上記の圧電振動片において、前記圧電板の長手方向に離間した2つの角部に、前記圧電板の面方向に平行であって、かつ前記圧電板の外部方向に突出する突出部が形成されており、前記突出部に形成されたマウント電極において基板上に実装可能に形成されていることが望ましい。
これによれば、励振領域から離間した突出部において圧電振動片を基板上に実装できるので、励振領域で生じた振動エネルギーが基板上に漏れる「振動漏れ」を低減することが可能になる。
【0012】
本発明の圧電振動子によれば、上記の圧電振動片と、前記圧電振動片が実装されるパッケージと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述した圧電振動片を備えているので、小型化とCI値の低減とを両立可能な圧電振動子が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化とCI値の低減とを両立可能なメサ型の圧電振動片、及び圧電振動子を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図2】第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線における断面図であり、(b)は図1のII−II線における圧電板の厚さを示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のIII−III線における断面図であり、(b)は図1のIII−III線における圧電板の厚さを示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
図5図4のV−V線における断面図である。
図6】第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線に相当する部分における断面図であり、(b)は図1のII−II線に相当する部分における圧電板の厚さを示すグラフである。
図7】第1実施形態の第2変形例に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線に相当する部分における断面図であり、(b)は図1のII−II線に相当する部分における圧電板の厚さを示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
図9】第2実施形態に係る他の圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
図10】第2実施形態に係る他の圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図の構成を説明する際には、XY´Z´座標系を用いる。このXY´Z´座標系における各軸は、後述する水晶の結晶軸と以下の関係を有している。即ち、X軸が電気軸であり、Z´軸が光学軸であるZ軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた軸であり、Y´軸がX軸およびZ´軸に直交する軸である。また、X軸方向、Y´軸方向およびZ´軸方向は、図中矢印方向を+方向とし、矢印とは反対の方向を−方向として説明する。
【0016】
[第1実施形態]
最初に、第1実施形態の圧電振動片および圧電振動子について説明する。
図1は、第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図1に示すように、圧電振動片10は、厚みすべりモードで振動する圧電振動片であって、圧電板11と、圧電板11上に形成された電極膜50と、を備えている。
圧電板11は、ATカット水晶基板により平面視長方形状に形成されている。ここで、ATカットは、人工水晶の結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)および光学軸(Z軸)の3つの結晶軸のうち、Z軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた方向(Z´軸方向)に切り出す加工手法である。ATカットによって切り出された圧電板11を有する圧電振動片10は、周波数温度特性が安定しており、構造や形状が単純で加工が容易であり、CI値が低いという利点がある。圧電板11は、長手方向がZ´軸方向に沿うように形成されている。また、圧電板11は、Y´軸方向が厚さ方向であり、Y´軸方向の両面に第1主面11Aおよび第2主面11Bを有している。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線における断面図であり、(b)は図1のII−II線における圧電板の厚さを示すグラフである。図3は、第1実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1にIII−III線における断面図であり、(b)は図1のIII−III線における圧電板の厚さを示すグラフである。各図の(b)における横軸は、圧電板の端部からの距離を示し、縦軸は圧電板の厚さを示したものである。
圧電板11は、第1主面11Aに突出形成された第1メサ部20(一のメサ部)と、第2主面11Bに突出形成された第2メサ部30(他のメサ部)と、を有する(図2(a)および図3(a)参照)。
第1メサ部20は、第1主面11Aの略中央において、Y´軸方向に突出するように形成されている。第1メサ部20は、平面視矩形状に形成されている。第1メサ部20は、第1頂面21と、第1頂面21と第1主面11Aとを接続する第1側面22と、を有する。第1頂面21は、平面視長方形状であり、長手方向がZ´軸方向に沿うように形成されている。第1頂面21は、第1主面11Aと平行な平面となっている。第1側面22は、第1頂面21の周囲に形成されている。第1側面22は、−Z´方向に面する−Z´側第1側面23と、+Z´方向に面する+Z´側第1側面24と、−X方向に面する−X側第1側面25と、+X方向に面する+X側第1側面26と、を含んでいる。第1側面22は、Y´軸方向(板厚方向)に対して傾斜する斜面である(図2(a)および図3(a)参照)。
【0018】
図2(a)および図3(a)に示すように、第2メサ部30は、第2主面11Bの略中央において、Y´軸方向に突出するように形成されている。第2メサ部30は、平面視矩形状に形成されている。第2メサ部30は、第2頂面31と、第2頂面31と第2主面11Bとを接続する第2側面32と、を有する。第2頂面31は、平面視長方形状であり、長手方向がZ´軸方向に沿うように形成されている。第2頂面31は、第2主面11Bと平行な平面となっている。第2側面32は、第2頂面31の周囲に形成されている。第2側面32は、−Z´方向に面する−Z´側第2側面33と、+Z´方向に面する+Z´側第2側面(不図示)と、−X方向に面する−X側第2側面(不図示)と、+X方向に面する+X側第2側面36と、を含んでいる。第2側面32は、Y´軸方向に対して傾斜する斜面である。
【0019】
図2(a)に示すように、−Z´側第1側面23は、第1主面11Aと下段側端縁23aにおいて接続し、第1頂面21と上段側端縁23bにおいて接続している。また、−Z´側第2側面33は、第2主面11Bと下段側端縁33aにおいて接続し、第2頂面31と上段側端縁33bにおいて接続している。
このとき、平面視において、−Z´側第2側面33の下段側端縁33aは、−Z´側第1側面23の下段側端縁23aよりも第1頂面21側(+Z´方向)であって、−Z´側第1側面23の上段側端縁23bよりも下段側端縁23a側(−Z´方向)に配置されている。また、平面視において、−Z´側第2側面33の上段側端縁33bは、−Z´側第1側面23の上段側端縁23bよりも第1頂面21側(+Z´方向)に配置されている。即ち、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の下段側端縁23aと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aとは、圧電板11の−Z´方向に面する端縁11Cから、圧電板11の中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されている。また、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の上段側端縁23bと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の上段側端縁33bとは、圧電板11の端縁11Cから圧電板11の中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されている。
【0020】
これにより、−Z´側第1側面23および−Z´側第2側面33には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。このため、圧電板11は、−Z´側第1側面および−Z´側第2側面のうち少なくとも一方の側面が他方の側面に対して平面視で完全に重なる構成と比較して、第1メサ部20および第2メサ部30から−Z´方向に向かうにしたがい厚さが滑らかに減少する(図2(b)参照)。また、圧電板11の端縁11Cから第2メサ部30までの距離は、端縁11Cから第1メサ部20までの距離よりも長くなっている。
【0021】
また、図1および図3(a)に示すように、+X側第1側面26は、第1主面11Aと下段側端縁26aにおいて接続し、第1頂面21と上段側端縁26bにおいて接続している。また、+X側第2側面36は、第2主面11Bと下段側端縁36aにおいて接続し、第2頂面31と上段側端縁36bにおいて接続している。
このとき、平面視において、+X側第2側面36の下段側端縁36aは、+X側第1側面26の下段側端縁26aよりも第1頂面21側(−X方向)であって、+X側第1側面26の上段側端縁26bよりも下段側端縁26a側(+X方向)に配置されている。また、平面視において、+X側第2側面36の上段側端縁36bは、+X側第1側面26の上段側端縁26bよりも第1頂面21側(−X方向)に配置されている。
これにより、+X側第1側面26および+X側第2側面36には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。このため、圧電板11は、第1メサ部20および第2メサ部30から+X方向に向かうにしたがい厚さが滑らかに減少する(図3(b)参照)。
【0022】
図1および図2(a)に示すように、電極膜50は、金等の金属の単層膜や、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜などで形成されている。電極膜50は、一対の励振電極51A,51Bと、一対のマウント電極52,53と、一対の引き回し配線54A,54Bと、を有する。
第1励振電極51Aは、Y´軸方向視矩形状で、第1頂面21に形成されている。第2励振電極51Bは、第2頂面31に形成されている。第2励振電極51Bは、平面視において第1励振電極51Aと重なるように形成されている。
【0023】
第1マウント電極52は、圧電板11の平面視略中央から見て(+X,−Z´)方向に位置する角部に形成されている。第1マウント電極52は、第1主面11A上における端縁11Cと−Z´側第1側面23との間から、端縁11Cを介して、第2主面11B上における端縁11Cと−Z´側第2側面33との間に亘って形成されている。第1マウント電極52は、第1主面11A上において、第1励振電極51Aに対して引き回し配線54Aを介して接続されている。
【0024】
第2マウント電極53は、圧電板11の平面視略中央から見て(−X,−Z´)方向に位置する角部に形成されている。第2マウント電極53は、第1主面11A上における端縁11Cと−Z´側第1側面23との間から、端縁11Cを介して、第2主面11B上における端縁11Cと−Z´側第2側面33との間に亘って形成されている。第2マウント電極53は、第2主面11B上において、第2励振電極51Bに対して引き回し配線54Bを介して接続されている。
【0025】
次いで、圧電振動片10を備える圧電振動子1について説明する。
図4は、第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。図5は、図4のV−V線における断面図である。なお、図5では、わかりやすくするために電極膜50の膜厚を誇張して図示している。
図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、パッケージ5のキャビティCの内部に圧電振動片10を収容したものである。パッケージ5は、ベース基板2とリッド基板3とを重ね合わせて形成されている。
【0026】
ベース基板2は、矩形板状に形成された底壁部2aと、底壁部2aの周縁部から立設された側壁部2bと、を備えている。底壁部2aおよび側壁部2bは、セラミック材料等により形成されている。
キャビティCの内部における底壁部2aの表面には、一対の内部電極7が形成されている。一対の内部電極7は、所定方向に離間して形成されている。また、キャビティCの外部における底壁部2aの表面には、一対の外部電極(不図示)が形成されている。そして、底壁部2aを厚さ方向に貫通する貫通電極(不図示)により、内部電極7と外部電極とが接続されている。なお、貫通電極で接続するのではなく、セラミック層の層間に形成される層間電極によって、内部電極と外部電極とを接続する構成であってもよい。
リッド基板3は、セラミック材料や金属材料等により、矩形板状に形成されている。リッド基板3の周縁部は、ベース基板2の側壁部2bの端面に接着されている。そして、ベース基板2の底壁部2aおよび側壁部2bとリッド基板3とで囲まれた領域に、キャビティCが形成されている。
【0027】
図5に示すように、キャビティCの内部には、圧電振動片10が収容されている。圧電振動片10は、導電性接着剤等の実装部材9を利用して、ベース基板2の底壁部2aに実装される。より具体的には、ベース基板2の底壁部2aに形成された一対の内部電極7に対して、圧電振動片10の第1マウント電極52および第2マウント電極53が実装部材9を介して実装される。これにより、圧電振動片10は、パッケージ5に機械的に保持されると共に、第1マウント電極52および第2マウント電極53と内部電極7とがそれぞれ導通された状態となっている。
【0028】
このとき、圧電振動片10は、第2主面11Bをベース基板2の底壁部2aに対向させた状態で実装され、実装部材9が、第2主面11B上におけるマウント電極52,53に接触している。ここで、圧電板11の端縁11Cから第2メサ部30までの距離は、端縁11Cから第1メサ部20までの距離よりも長い。このため、実装部材9を、端縁11Cと第2メサ部30との間に形成された第2主面11B上のマウント電極52,53上に接触させることで、実装部材9と第2メサ部30との距離を長く確保することができる。
【0029】
このように、本実施形態の圧電振動片10は、表裏のそれぞれの主面11A,11Bに一段のメサ部20,30が形成された圧電板11を有する。第1メサ部20の第1側面22は、−Z´側第1側面23が斜面であって、−Z´側第1側面23は、第1主面11A側から順に、下段側端縁23aと上段側端縁23bとを有している。第2メサ部30の第2側面32は、−Z´側第1側面23に対応して形成される−Z´側第2側面33が斜面であって、−Z´側第2側面33は、第2主面11B側から順に、下段側端縁33aと上段側端縁33bとを有している。圧電板11を平面視した場合において、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の下段側端縁23aと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aとが、圧電板11の端部(端縁11C)から中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されており、かつ、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の上段側端縁23bと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の上段側端縁33bとが、圧電板11の端部(端縁11C)から中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されている。
【0030】
この構成によれば、第1メサ部20の第1側面22の少なくとも1つ、および第2メサ部30の第2側面32の少なくとも1つが斜面であることで、第1メサ部20および第2メサ部30における圧電振動片10の厚み変化を滑らかにすることが可能になる。よって、従来と比較するとCI値を低減することが可能になる。
さらに、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の下段側端縁23aと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aとが、圧電板11の端部から中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されており、かつ、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の上段側端縁23bと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の上段側端縁33bとが、圧電板11の端部から中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されている。これにより、第1メサ部20および第2メサ部30における厚み変化率を低減することができる。
【0031】
また、圧電板11は、ATカット水晶基板より形成され、圧電板11の長手方向が水晶結晶軸におけるZ´軸方向となっている。
ここで、ATカット水晶基板が厚み滑り振動をしているとき、X軸とZ´軸では電気偏極が生じる。電気偏極は電荷の偏りであり、X軸では正弦波状、Z´軸では直線状になる。電気偏極が直線状になるZ´軸を長辺とすることで、最も強い電荷が生じる辺を長くすることができる。強い電荷が生じる領域が広がれば、よりCIは低くなる。したがって、Z´軸を長辺とすることでより低いCIを維持することが可能となる。
本実施形態では、圧電板11の長手方向をATカット水晶基板のZ´軸方向に沿うようにすることで、小型化においても低いCIを維持できる。
【0032】
また、第2メサ部30において、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aと、それに対向する圧電板11の端縁11Cと、の間に形成されたマウント電極52,53においてパッケージ5の基板上に実装可能に形成されている。
ここで、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の下段側端縁23aと、圧電板11の端縁11Cとの間よりも、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aと、圧電板11の端縁11Cとの間の方が広くなっている。
本実施形態によれば、圧電振動片10は、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の下段側端縁33aと、圧電板11の端縁11Cとの間に形成されたマウント電極52,53において実装可能に形成されている。このため、マウント電極52,53の形成領域を充分に確保することができるので、圧電振動片10の実装強度を確保することができる。
【0033】
本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片10と、圧電振動片10が実装されるパッケージ5と、を備えているため、小型化しつつCI値を低減できる圧電振動子1が得られる。
【0034】
なお、本実施形態では、平面視において、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の上段側端縁23bと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の上段側端縁33bとが、圧電板11の端部から中央部に向かう方向(+Z´方向)に沿って順に形成されている。しかしながらこれに限定されず、平面視において、第1メサ部20の−Z´側第1側面23の上段側端縁23bと、第2メサ部30の−Z´側第2側面33の上段側端縁33bとが、同じ位置に形成されている場合であっても、上記の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、図1に示すように、第1メサ部20の+Z´側第1側面24および第2メサ部30の+Z´側第2側面(不図示)には、−Z´側第1側面23および−Z´側第2側面33と同様に、平面視において互いに重ならない領域が形成されていてもよい。
例えば、+Z´側第2側面が、平面視において+Z´側第1側面24よりも−Z´方向に配置されていてもよい。具体的には、平面視において、+Z´側第2側面における第2主面11B側の下段側端縁が、+Z´側第1側面24における第1主面11A側の下段側端縁24aよりも、第1頂面21側に配置されている。さらに、平面視において、+Z´側第2側面における第2頂面31側の上段側端縁が、+Z´側第1側面24における第1頂面21側の上段側端縁24bよりも、第1頂面21側に配置されている。これにより、+Z´側第1側面24および+Z´側第2側面には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。
【0036】
また、+Z´側第1側面24が、平面視において+Z´側第2側面よりも−Z´方向に配置されていてもよい。具体的には、平面視において、+Z´側第1側面24の下段側端縁24aが、+Z´側第2側面の下段側端縁よりも、第2頂面31側に配置されている。さらに、平面視において、+Z´側第1側面24の上段側端縁24bが、+Z´側第2側面の上段側端縁よりも、第2頂面31側に配置されている。これにより、+Z´側第1側面24および+Z´側第2側面には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。
【0037】
また、第1メサ部20の−X側第1側面25および第2メサ部30の−X側第2側面(不図示)には、+X側第1側面26および+X側第2側面36と同様に、平面視において互いに重ならない領域が形成されていてもよい。
例えば、−X側第2側面が、平面視において−X側第1側面25よりも+X方向に配置されていてもよい。具体的には、平面視において、−X側第2側面における第2主面11B側の下段側端縁が、−X側第1側面25における第1主面11A側の下段側端縁25aよりも、第1頂面21側に配置されている。さらに、平面視において、−X側第2側面における第2頂面31側の上段側端縁が、−X側第1側面25における第1頂面21側の上段側端縁25bよりも、第1頂面21側に配置されている。これにより、−X側第1側面25および−X側第2側面には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。
【0038】
また、−X側第1側面25が、平面視において−X側第2側面よりも+X方向に配置されていてもよい。具体的には、平面視において、−X側第1側面25の下段側端縁25aが、−X側第2側面の下段側端縁よりも、第2頂面31側に配置されている。さらに、平面視において、−X側第1側面25の上段側端縁25bが、−X側第2側面の上段側端縁よりも、第2頂面31側に配置されている。これにより、−X側第1側面25および−X側第2側面には、平面視において互いに重ならない領域が形成される。
【0039】
[第1実施形態の第1変形例]
次に、第1実施形態の第1変形例の圧電振動片について説明する。
図6は、第1実施形態の第1変形例に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線に相当する部分における断面図であり、(b)は図1のII−II線に相当する部分における圧電板の厚さを示すグラフである。(b)における横軸は、圧電板の端部からの距離を示し、縦軸は圧電板の厚さを示したものである。
図2(a)に示す第1実施形態では、−Z´側第1側面23および−Z´側第2側面33には、平面視において互いに重なる領域が形成されていた。これに対して、図6(a)に示す第1変形例では、第1メサ部120の−Z´側第1側面123および第2メサ部130の−Z´側第2側面133は、平面視において互いに重ならないように形成されている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する(以下の変形例についても同様)。
【0040】
図6(a)に示すように、圧電振動片110の圧電板111は、第1主面111Aに突出形成された第1メサ部120と、第2主面111Bに突出形成された第2メサ部130と、を有する。
第1メサ部120は、−Z´方向に面する−Z´側第1側面123を有する。−Z´側第1側面123は、第1主面111Aと下段側端縁123aにおいて接続し、第1頂面121と上段側端縁123bにおいて接続している。
第2メサ部130は、−Z´方向に面する−Z´側第2側面133を有する。−Z´側第2側面133は、第2主面111Bと下段側端縁133aにおいて接続し、第2頂面131と上段側端縁133bにおいて接続している。
【0041】
平面視において、−Z´側第2側面133の下段側端縁133aは、−Z´側第1側面123の下段側端縁123aおよび上段側端縁123bよりも第1頂面121側(+Z´方向)に配置されている。また、平面視において、−Z´側第2側面133の上段側端縁133bは、−Z´側第1側面123の上段側端縁123bよりも第1頂面121側(+Z´方向)に配置されている。
これにより、−Z´側第1側面123および−Z´側第2側面133は、平面視において互いに重ならないように形成される。このため、圧電板111は、第1メサ部120および第2メサ部130から−Z´方向に向かうにしたがい厚さが滑らかに減少する(図6(b)参照)。
【0042】
このとき、平面視において、−Z´側第2側面133と−Z´側第1側面123との間には、間隙Gが設けられている。即ち、平面視において、−Z´側第2側面133の下段側端縁133aは、−Z´側第1側面123の上段側端縁123bに対して、間隙Gを設けて、第1頂面121側(+Z´方向)に形成されている。間隙GのZ´軸方向における距離は、5μm以上となっている。
【0043】
このように、本変形例の圧電振動片110では、平面視した場合において、第1メサ部120の−Z´側第1側面123の上段側端縁123bと、第2メサ部130の−Z´側第2側面133の上段側端縁133bとが、圧電板111の端部から中央部に向かう方向において5μm以上ずれている。
圧電板111の表裏それぞれに第1メサ部120および第2メサ部130を形成する際には、表裏それぞれに対してエッチング加工を施すことになるが、平面視において第1メサ部120の−Z´側第1側面123の上段側端縁123bおよび第2メサ部130の−Z´側第2側面133の上段側端縁133bには、エッチング加工によって凹凸が生じる(明確な綾線が発現しにくい)。ここで、凹凸のある場合の上段側端縁123b,133bは、凹凸の中心線とする。凹凸がある場合においても、第1メサ部120の−Z´側第1側面123の上段側端縁123bと、第2メサ部130の−Z´側第2側面133の上段側端縁133bとをある距離ずらしておくことで、第1メサ部120および第2メサ部130において急激に厚さが変化することを回避できるが、両者の距離が近いと、凹凸の形成具合によっては、第1メサ部120および第2メサ部130において急激に厚さが変化する。
【0044】
本変形例によれば、第1メサ部120の−Z´側第1側面123の上段側端縁123bと、第2メサ部130の−Z´側第2側面133の上段側端縁133bとが、圧電板111の端部から中央部に向かう方向(Z´方向)において5μm以上ずれている。これにより、設計誤差に関わらず、確実に第1メサ部120および第2メサ部130における厚み変化率を低減し、CI値を低減することが可能になる。
【0045】
[第1実施形態の第2変形例]
次に、第1実施形態の第2変形例の圧電振動片について説明する。
図7は、第1実施形態の第2変形例に係る圧電振動片の説明図であり、(a)は図1のII−II線に相当する部分における断面図であり、(b)は図1のII−II線に相当する部分における圧電板の厚さを示すグラフである。(b)における横軸は、圧電板の端部からの距離を示し、縦軸は圧電板の厚さを示したものである。
図2(a)に示す第1実施形態では、−Z´側第2側面33がY´軸方向に対して傾斜した斜面となっていた。これに対して、図7(a)に示す第2変形例では、第2メサ部230の−Z´側第2側面233がY´軸方向に沿う垂直面となっている点で、第1実施形態と異なっている。
【0046】
図7(a)に示すように、圧電振動片210の圧電板211は、第1主面211Aに突出形成された第1メサ部220と、第2主面211Bに突出形成された第2メサ部230と、を有する。
第1メサ部220は、−Z´方向に面する−Z´側第1側面223を有する。−Z´側第1側面223は、第1主面211Aと下段側端縁223aにおいて接続し、第1頂面221と上段側端縁223bにおいて接続している。
第2メサ部230は、−Z´方向に面する−Z´側第2側面233を有する。−Z´側第2側面233は、第2主面211Bと下段側端縁233aにおいて接続し、第2頂面231と上段側端縁233bにおいて接続している。
【0047】
−Z´側第2側面233は、Y´軸方向に沿って形成されている。−Z´側第2側面233の下段側端縁233aおよび上段側端縁233bは、−Z´側第1側面223の上段側端縁223bよりも第1頂面221側(+Z´方向)に配置されている。
これにより、−Z´側第1側面223および−Z´側第2側面233は、平面視において互いに重ならないように形成される。
【0048】
このように、−Z´側第2側面233がY´軸方向に沿い、第2主面211Bに対して垂直に形成された構成であっても、−Z´側第2側面233の上段側端縁233bが、−Z´側第1側面223の上段側端縁223bよりも第1頂面221側(+Z´方向)に配置されることで、圧電板211の厚み変化を滑らかにすることができる(図7(b)参照)。したがって、圧電振動片210のCI値を低減させることができる。
【0049】
また、−Z´側第1側面および−Z´側第2側面の両方に斜面が形成された場合は、圧電振動片を実装する際に導電性接着剤等の接合材が斜面を伝って濡れ広がり、振動特性の低下を招く可能性がある。これに対して、圧電振動片210の表裏において、−Z´側第1側面223に斜面が形成され、−Z´側第2側面233には斜面が形成されていないので、−Z´側第2側面233が形成された第2主面211Bで圧電振動片210を実装することで、接合材の濡れ広がりを防止することが可能になる。よって小型化とCI値低下を両立しつつ、さらに実装による電気特性低下を防止することができる。
なお、本変形例では、−Z´側第2側面233がY´軸方向に沿う垂直面として形成されているが、−Z´側第1側面223がY´軸方向に沿う垂直面として形成されてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に第2実施形態の圧電振動片について説明する。
図8は、第2実施形態に係る圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
図2(a)に示す第1実施形態では、第1メサ部20および第2メサ部30は、一段に形成されていた。これに対して、図8に示す第2実施形態では、第1メサ部320および第2メサ部330は、二段に形成されている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、圧電振動片310の圧電板311は、第1主面311Aに突出形成された第1メサ部320と、第2主面311Bに突出形成された第2メサ部330と、を有する。
第1メサ部320は、下段側第1メサ部320Aと、上段側第1メサ部320Bと、を有する。下段側第1メサ部320Aは、第1主面311Aの略中央において、Y´軸方向に突出するように形成されている。下段側第1メサ部320Aは、平面視矩形状に形成されている。下段側第1メサ部320Aは、第1頂面321Aと、第1頂面321Aと第1主面311Aとを接続する第1下段側面322と、を有する。上段側第1メサ部320Bは、下段側第1メサ部320Aの第1頂面321Aの内側において、Y´軸方向に突出するように形成されている。上段側第1メサ部320Bは、平面視矩形状に形成されている。上段側第1メサ部320Bは、第1頂面321Bと、上段側第1メサ部320Bの第1頂面321Bと下段側第1メサ部320Aの第1頂面321Aとを接続する第1上段側面327と、を有する。第1上段側面327のうち、−Z´方向に面する−Z´側第1上段側面327aの、第1主面311Aに対する傾斜角は、第1下段側面322のうち、−Z´方向に面する−Z´側第1下段側面323の、第1主面311Aに対する傾斜角よりも大きくなるように形成されている。
【0052】
第2メサ部330は、下段側第2メサ部330Aと、上段側第2メサ部330Bと、を有する。下段側第2メサ部330Aは、第2主面311Bの略中央において、Y´軸方向に突出するように形成されている。下段側第2メサ部330Aは、平面視矩形状に形成されている。下段側第2メサ部330Aは、第2頂面331Aと、第2頂面331Aと第2主面311Bとを接続する第2下段側面332と、を有する。上段側第2メサ部330Bは、下段側第2メサ部330Aの第2頂面331の内側において、Y´軸方向に突出するように形成されている。上段側第2メサ部330Bは、平面視矩形状に形成されている。上段側第2メサ部330Bは、第2頂面331Bと、上段側第2メサ部330Bの第2頂面331Bと下段側第2メサ部330Aの第2頂面331Aとを接続する第2上段側面337と、を有する。第2上段側面337のうち、−Z´方向に面する−Z´側第2上段側面337aの、第2主面311Bに対する傾斜角は、第2下段側面332のうち、−Z´方向に面する−Z´側第2下段側面333の、第2主面311Bに対する傾斜角よりも大きくなるように形成されている。
【0053】
このとき、−Z´側第2下段側面333は、−Z´側第1下段側面323よりも+Z´方向に形成されている。また、−Z´側第2上段側面337aは、−Z´側第1上段側面327aよりも+Z´方向に形成されている。さらに、−Z´側第1上段側面327aは、−Z´側第2下段側面333よりも+Z´方向に形成されている。これにより、圧電板311の厚み変化が滑らかになる。
【0054】
このように、本実施形態では、第1メサ部320において、下段側第1メサ部320Aの−Z´側第1下段側面323の傾斜角よりも、上段側第1メサ部320Bの−Z´側第1上段側面327aの傾斜角の方が大きい。また、第2メサ部330において、下段側第2メサ部330Aの−Z´側第2下段側面333の傾斜角よりも、上段側第2メサ部330Bの−Z´側第2上段側面337aの傾斜角の方が大きい。
斜面における励振電極の線切れの観点からは、斜面の傾斜角は小さい(滑らか)な方が好ましいが、一方で、傾斜角を小さくすると、メサ部の頂面の面積が小さくなり、十分な励振領域を確保できない、といった課題がある。そこで本実施形態では、下段側第1メサ部320Aの第1下段側面322、および下段側第2メサ部330Aの第2下段側面332の傾斜角を小さくして斜面における線切れ防止を図りつつ、上段側第1メサ部320Bの第1上段側面327、および上段側第2メサ部330Bの第2上段側面337の傾斜角を大きくして、従来では狭くなりがちな上段側第1メサ部320Bの第1頂面321B、および上段側第2メサ部330Bの第2頂面331Bの面積が出来るだけ大きくなるようにしている。したがって、圧電振動片310の電気特性の向上を達成することが可能になる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1メサ部320および第2メサ部330は、それぞれ二段に形成されていたが、三段以上に形成されていてもよい。即ち、第1メサ部および第2メサ部が複数段に形成されている場合において、下段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角よりも、上段のメサ部の側面が有する斜面の傾斜角の方が大きくなるように設定することで、上記の作用効果を得ることができる。
【0056】
図9および図10は、第2実施形態に係る他の圧電振動片の説明図であり、図1のII−II線に相当する部分における断面図である。
また、第1上段側面327および第2上段側面337の両方がY´軸方向に対して傾斜した斜面であることに限定されない。例えば、図9に示すように、上段側第2メサ部330Bの−Z´側第2上段側面337aがY´軸方向に沿うように形成された垂直面であってもよい。さらに、図10に示すように、下段側第2メサ部330Aの−Z´側第2下段側面333も、Y´軸方向に沿うように形成された垂直面であってもよい。
【0057】
[第3実施形態]
次に第3実施形態の圧電振動片について説明する。
上記第1、第2実施形態では、圧電板11の平面視略中央から見て(+X,−Z´)方向に位置する角部に第1マウント電極52を設け、平面視略中央から見て(−X,−Z´)方向に位置する角部に第2マウント電極53を設ける構成について説明した。しかしながら、本発明に係る圧電振動片の形態はこれに限られるものではない。
【0058】
即ち、圧電板11の平面視略中央からみて(−X、−Z´)の角部と、(−X、+Z´)の角部のそれぞれから、圧電板11の外部方向に突出する第1突出部、第2突出部を形成し、それぞれの突出部に第1マウント電極52、第2マウント電極53を形成する構成であってもよい。
【0059】
第1突出部、第2突出部の厚さは、メサ部の厚さと同等であってもよいし、メサ部を除く圧電板11の厚さと同等であってもよい。また、第1突出部、第2突出部が突出する方向は、圧電板11の面方向と平行であって、X軸及びZ´軸と略45度をなす方向であると好適である。しかしながら、例えばX軸と平行な方向、又はZ´軸と平行な方向に突出していてもよいし、さらには、(+X、−Z´)の角部、(+X、+Z´)の角部から突出する構成であってもよい。また、第1突出部、第2突出部の長さは、圧電板11の短辺方向の長さ(X軸に沿った長さ)の半分以下であってもよい。
【0060】
このように、圧電板11の角部に第1突出部、第2突出部を設け、これらの突出部に第1マウント電極52、第2マウント電極53を形成することで、励振領域であるメサ部から離れた領域で圧電板11を実装することが可能になる。その結果、励振領域で生じた振動が第1マウント電極52、第2マウント電極53に伝達し、そこから圧電板11の外部に漏れてしまう、所謂「振動漏れ」の課題を低減することができるので、CI値の低減を図ることができる。
【0061】
また、圧電板11を小型化すると、導電性接着剤の濡れ広がりにより、導電性接着剤が励振領域に接触し、圧電板11の振動が阻害される虞があるが、本実施形態のように、圧電板11の外部方向に突出する第1突出部、第2突出部で圧電板11を実装することにより、濡れ広がった導電性接着剤が励振領域に接触することを回避することができる。
【0062】
また、圧電板11の長手方向に離間した角部に第1突出部、第2突出部を設け、それらの突出部で圧電板11を実装しているので、短辺方向に離間した2点で圧電板11を実装する場合と比較すると、圧電板11をバランスよく支持することが可能になる。よって、外部衝撃等を受けた際の圧電板11の傾きを低減したり、さらには実装強度を向上させることも可能になる。
【0063】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態では、第1メサ部の側面(第1側面)および第2メサ部の側面(第2側面)のうち、−Z´方向に面する側面、および+X´方向に面する側面について主に詳述した。しかしながらこれに限定されるものではなく、第1側面および第2側面のうち、XZ´平面内における同一方向に面する一対の側面に、平面視において互いに重ならない領域が形成されることで、上述の作用効果を得ることができる。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…圧電振動子 5…パッケージ 10,110,210,310…圧電振動片 11,111,211,311…圧電板 11A,111A,211A,311A…第1主面 11B,111B,211B,311B…第2主面 11C…圧電板の端縁 20,120,220,320…第1メサ部(一のメサ部) 23,123,223,323…−Z´側第1側面(一のメサ部の側面) 23a,123a,223a…−Z´側第1側面の下段側端縁(一のメサ部の側面の下段側端縁) 23b,123b,223b…−Z´側第1側面の上段側端縁(一のメサ部の側面の上段側端縁) 30,130,230,330…第2メサ部(他のメサ部) 33,133,233,333…−Z´側第2側面(他のメサ部の側面) 33a,133a,233a…−Z´側第2側面の下段側端縁(一のメサ部の側面の上段側端縁) 33b,133b,233b…−Z´側第2側面の上段側端縁(他のメサ部の側面の上段側端縁) 52…第1マウント電極(マウント電極) 53…第2マウント電極(マウント電極) 323…−Z´側第1下段側面(下段のメサ部の側面) 327a…−Z´側第1上段側面(上段のメサ部の側面) 333…−Z´側第2下段側面(下段のメサ部の側面) 337a…−Z´側第2上段側面(上段のメサ部の側面)
図1
図2
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図9
図10