特許第6649777号(P6649777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649777
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20200210BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200210BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20200210BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20200210BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20200210BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20200210BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301D
   B01D53/94ZAB
   B01D53/86
   B01D46/00 302
   B01D39/20 D
   F01N3/022 B
   F01N3/28 301P
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-7765(P2016-7765)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-127802(P2017-127802A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】松矢 淳宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆宏
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−104952(JP,A)
【文献】 特開2004−130229(JP,A)
【文献】 特開2010−104955(JP,A)
【文献】 特開2002−256842(JP,A)
【文献】 特開2015−131255(JP,A)
【文献】 特開2009−154148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 39/20;46/00;53/86;53/94
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部、及び、前記ハニカム構造部の外周を囲繞するように形成された多孔質の外周壁、を備え、
前記複数のセルは、最外周に形成されたセルを除き、その断面形状が四角形であり、
前記複数のセルのうちの、前記ハニカム構造部の前記第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルが、特定開口セルであり、
前記特定開口セルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記セルの前記第一端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D1とが、1≦|(1−(D1/D2))×100|≦80の関係を満たし、且つ、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向に直交する断面における前記セルの周縁に接する内接円の直径D3とが、前記第一端面から20mm以下の一部の範囲において、1≦|(1−(D3/D2))×100|≦80の関係を満たす、開口変化部を有し、
前記特定開口セルの前記開口変化部が、当該特定開口セルの前記第一端面から20mm以下の範囲のみに存在し、
前記複数のセルのうちの、前記特定開口セル以外のセルは、前記開口変化部を有しておらず、当該セルの開口部の大きさが変化していない、又は、前記開口変化部よりも当該セルの開口部における変化率が小さい、非特定開口セルである、ハニカム構造体であって、
前記特定開口セルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向の直交する断面における、前記第一端面から20mmを超える範囲の前記セルの周縁に接する内接円の直径D3Xとが、|(1−(D3X/D2))×100|<1の関係を満たし、
前記セルのうち、前記特定開口セル以外のセルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記セルの前記第一端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D1とが、|(1−(D1/D2))×100|<1の関係を満たし、且つ、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向の直交する断面における前記セルの周縁に接する内接円の直径D3とが、|(1−(D3/D2))×100|<1の関係を満たす、通常セルであり、
前記ハニカム構造部を構成する前記複数のセルを区画形成している前記隔壁が一体成形品である、ハニカム構造体
【請求項2】
前記複数のセルのうち、前記ハニカム構造部の前記第一端面の面積の3〜70%の範囲に開口部を有するセルが、前記特定開口セルである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記特定開口セルは、前記内接円の直径D2と、前記内接円の直径D1とが、3≦|(1−(D1/D2))×100|≦70の関係を満たし、且つ、
前記内接円の直径D2と、前記開口変化部における前記内接円の直径D3とが、3≦|(1−(D3/D2))×100|≦70の関係を満たす、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記内接円の直径D2が、0.5〜2.2mmである、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記隔壁の厚さが、40〜350μmである、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造部のセル密度が、30〜200個/cmである、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記隔壁が、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、コージェライト化原料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群より選択される少なくとも1種を含む材料からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、ハニカム構造体を排ガス浄化用の触媒担体やフィルターとして用いた際に、圧力損失の上昇を抑制しつつ、浄化性能を向上させることが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造体は、触媒担体やフィルター等に広く用いられており、特にガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関や燃焼装置の排ガス浄化用又は排ガス処理用の触媒担体やフィルター等として広く用いられている。ここで、ハニカム構造体とは、第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、外周壁とを備えた、ハニカム形状の構造体のことをいう。
【0003】
ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車等の排ガス浄化用触媒担体やフィルター等に用いられるハニカム構造体には、環境問題への配慮から、年々強化される排ガス規制対応すべく、浄化性能の向上が求められている。また、従来、このようなハニカム構造体においては、圧力損失を低減するために、第一端面から第二端面まで延びる複数のセルが、第一端面から第二端面に向かって、それぞれ平行に延びるものが好ましいとされていた。
【0004】
ここで、近年、隔壁の表面積を増大させつつ、セル通路内での流体の流れを複雑なものとして、流体と隔壁との相互作用を増大させたハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/015877号
【特許文献2】特開2012−115744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された波壁ハニカム構造体、及び特許文献2に記載されたハニカムフィルタは、隔壁の側面部が波状に形成されている。このため、排ガスと隔壁との相互作用により浄化性能を向上させることができるものの、圧力損失の上昇が極めて大きいという問題があった。また、上述した波壁ハニカム構造体等は、隔壁の壁面部が、ハニカム構造体の全面及び全長に亘って波状に形成されているため、強度面の低下を引き起こすことがあるという懸念があった。また、このような波壁ハニカム構造体等は、その製造方法が煩雑であるため、生産性が低く、また、製造コストも大きく上昇してしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、排ガス浄化用の触媒担体やフィルターとして用いた際に、圧力損失の上昇を抑制しつつ、浄化性能を向上させることが可能なハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部、及び、前記ハニカム構造部の外周を囲繞するように形成された多孔質の外周壁、を備え、前記複数のセルは、最外周に形成されたセルを除き、その断面形状が四角形であり、前記複数のセルのうちの、前記ハニカム構造部の前記第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルが、特定開口セルであり、前記特定開口セルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記セルの前記第一端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D1とが、1≦|(1−(D1/D2))×100|≦80の関係を満たし、且つ、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向に直交する断面における前記セルの周縁に接する内接円の直径D3とが、前記第一端面から20mm以下の一部の範囲において、1≦|(1−(D3/D2))×100|≦80の関係を満たす、開口変化部を有し、前記特定開口セルの前記開口変化部が、当該特定開口セルの前記第一端面から20mm以下の範囲のみに存在し、前記複数のセルのうちの、前記特定開口セル以外のセルは、前記開口変化部を有しておらず、当該セルの開口部の大きさが変化していない、又は、前記開口変化部よりも当該セルの開口部における変化率が小さい、非特定開口セルである、ハニカム構造体であって、前記特定開口セルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向の直交する断面における、前記第一端面から20mmを超える範囲の前記セルの周縁に接する内接円の直径D3Xとが、|(1−(D3X/D2))×100|<1の関係を満たし、前記セルのうち、前記特定開口セル以外のセルは、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記セルの前記第一端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D1とが、|(1−(D1/D2))×100|<1の関係を満たし、且つ、前記セルの前記第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、前記第一端面から前記第二端面に向かう方向の直交する断面における前記セルの周縁に接する内接円の直径D3とが、|(1−(D3/D2))×100|<1の関係を満たす、通常セルであり、前記ハニカム構造部を構成する前記複数のセルを区画形成している前記隔壁が一体成形品である、ハニカム構造体
【0012】
] 前記複数のセルのうち、前記ハニカム構造部の前記第一端面の面積の3〜70%の範囲に開口部を有するセルが、前記特定開口セルである、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
] 前記特定開口セルは、前記内接円の直径D2と、前記内接円の直径D1とが、3≦|(1−(D1/D2))×100|≦70の関係を満たし、且つ、前記内接円の直径D2と、前記開口変化部における前記内接円の直径D3とが、3≦|(1−(D3/D2))×100|≦70の関係を満たす、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
] 前記内接円の直径D2が、0.5〜2.2mmである、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
] 前記隔壁の厚さが、40〜350μmである、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
] 前記ハニカム構造部のセル密度が、30〜200個/cmである、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
] 前記隔壁が、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、コージェライト化原料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群より選択される少なくとも1種を含む材料からなる、前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0018】
本発明のハニカム構造体は、複数のセルのうちの、ハニカム構造部の第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルが、以下のような開口変化部を有する特定開口セルとなっている。なお、複数のセルは、最外周に形成されたセルを除き、その断面形状が四角形である。特定開口セルの開口変化部は、第二端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D2と、第一端面における開口部の周縁に接する内接円の直径D1とが、1≦|(1−(D1/D2))×100|≦80の関係を満たす。また、この特定開口セルの開口変化部は、上記内接円の直径D2と、第一端面から第二端面に向かう方向の直交する断面におけるセルの周縁に接する内接円の直径D3とが、第一端面から20mm以下の一部の範囲において、1≦|(1−(D3/D2))×100|≦80の関係を満たす。そして、この特定開口セルの開口変化部が、当該特定開口セルの第一端面から20mm以下の範囲のみに存在する。このように構成された本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒担体やフィルターとして用いた際に、圧力損失の上昇を抑制しつつ、浄化性能を向上させることができる。また、本発明のハニカム構造体は、第一端面から20mm以下の範囲のみについて、特定開口セルの開口部の大きさが変化する開口変化部が存在するため、圧力損失の上昇を極めて有効に抑制しつつ、浄化性能を向上させることができる。また、本発明のハニカム構造体は、その製造も比較的に簡便であり、生産性の向上に資する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、第一端面側からみた斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体を、第一端面側からみた平面図である。
図3図1に示すハニカム構造体を、第二端面側からみた平面図である。
図4図2のA−A’断面を模式的に示す、断面図である。
図5図2の符号Pに示す破線で囲われた範囲を拡大して示す、拡大模式図である。
図6図3の符号Pに示す破線で囲われた範囲を拡大して示す、拡大模式図である。
図7図4のB−B’断面における、符号Pに示す範囲を拡大して示す、拡大模式図である。
図8A】特定開口セルが形成される範囲の一例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。
図8B】特定開口セルが形成される範囲の他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。
図8C】特定開口セルが形成される範囲の更に他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。
図8D】特定開口セルが形成される範囲の更に他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。
図8E】特定開口セルが形成される範囲の更に他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。
図9A】特定開口セルの一例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9B】特定開口セルの他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9C】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9D】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9E】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9F】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9G】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9H】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9I】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9J】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9K】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9L】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9M】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9N】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図9O】特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
図10A】ハニカム成形体を載置する栃を模式的に示す図である。
図10B】ハニカム成形体を載置する栃を模式的に示す図である。
図10C】ハニカム成形体を載置する栃を模式的に示す図である。
図10D】ハニカム成形体を載置する栃を模式的に示す図である。
図10E】ハニカム成形体を載置する栃を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、図1図4に示すようなハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム構造部4、及び、ハニカム構造部4の外周を囲繞するように形成された多孔質の外周壁3、を備えたものである。複数のセル2は、最外周に形成されたセルを除き、その断面形状が四角形であり、図面では、四角形の例を示している。ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、第一端面側からみた斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体を、第一端面側からみた平面図である。図3は、図1に示すハニカム構造体を、第二端面側からみた平面図である。図4は、図2のA−A’断面を模式的に示す、断面図である。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体100は、複数のセル2のうちの、ハニカム構造部4の第一端面11の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセル2が、以下に示すように構成された特定開口セル2xとなっている。ここで、図1図3においては、特定開口セル2xが形成される範囲を、符号Pに示す破線によって示している。また、図4においては、特定開口セル2xが形成される範囲を、第一端面11側の符号Pに示す括弧によって示している。
【0023】
特定開口セル2xの構成について、図5図7を参照しつつ説明する。図5は、図2の符号Pに示す破線で囲われた範囲を拡大して示す、拡大模式図である。図6は、図3の符号Pに示す破線で囲われた範囲を拡大して示す、拡大模式図である。図7は、図4のB−B’断面における、符号Pに示す範囲を拡大して示す、拡大模式図である。すなわち、図5は、ハニカム構造体の第一端面側の拡大模式図であり、図6は、ハニカム構造体の第二端面側の拡大模式図である。そして、図7は、図4のB−B’断面における、図5に示す範囲と同様の範囲を示す拡大模式図である。
【0024】
ここで、特定開口セル2xの構成を説明するにあたり、セル2の開口部の周縁に接する内接円の直径を、以下のように定めることとする。まず、セル2の第一端面11における開口部の周縁に接する内接円の直径を、直径D1とする。また、セル2の第二端面12における開口部の周縁に接する内接円の直径を、直径D2とする。なお、以下、セル2の「内接円の直径D1」という場合は、当該セル2の「第一端面11における開口部の周縁に接する内接円の直径D1」を意味する。また、セル2の「内接円の直径D2」という場合は、当該セル2の「第二端面12における開口部の周縁に接する内接円の直径D2」を意味する。また、第一端面11において、特定開口セル2xが複数存在する場合、一の特定開口セル2xの内接円の直径D1を、直径D1aとし、その他の特定開口セル2xの内接円の直径D1を、順次、直径D1b,直径D1c,直径D1d・・・とすることがある。同様に、第二端面12における、対応する特定開口セル2xの内接円の直径D2を、順次、直径D2a,直径D2b,直径D2c,直径D2d・・・とすることがある。
【0025】
更に、特定開口セル2xの構成を説明するにあたり、セル2の第一端面11(図4参照)から20mm以下の範囲におけるセルの周縁に接する内接円の直径を、以下のように定めることとする。セル2の第一端面11(図4参照)から20mm以下の範囲におけるセルの周縁に接する内接円の直径を、直径D3とする。以下、セル2の「内接円の直径D3」という場合は、当該セル2の「第一端面11から20mm以下の範囲におけるセルの周縁に接する内接円の直径D3」を意味する。また、特定開口セル2xが複数存在する場合、一の特定開口セル2xの内接円の直径D3を、順次、直径D3a,直径D3b,直径D3c,直径D3d・・・とすることがある。ここで、図5では、5つの特定開口セル2xの内接円の直径D1を、D1a,D1b,D1c,D1d,D1eの符号を付した矢印の大きさにて示している。図6では、5つの特定開口セル2xの内接円の直径D2を、D2a,D2b,D2c,D2d,D2eの符号を付した矢印の大きさにて示している。図7では、5つの特定開口セル2xの内接円の直径D3を、D3a,D3b,D3c,D3d,D3eの符号を付した矢印の大きさにて示している。
【0026】
図4に示すように、特定開口セル2xは、第一端面11側の開口部の大きさが、当該特定開口セル2xの第二端面12側の開口部の大きさとは異なるように構成された、開口変化部15を有する。この開口変化部15とは、以下のように構成されたものである。図5に示すように、まず、特定開口セル2xは、この特定開口セル2xの内接円の直径D2と、当該特定開口セル2xの内接円の直径D1とが、1≦|(1−(D1/D2))×100|≦80の関係を満たす。すなわち、特定開口セル2xは、内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D1を差し引いた値(差分)の百分率の絶対値が、1〜80%となっている。以下、「内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D1を差し引いた値(差分)の百分率の絶対値」のことを、「最大内接円変化率」ということがある。すなわち、|(1−(D1/D2))×100|で示される値(絶対値)が、「最大内接円変化率」である。
【0027】
また、特定開口セル2xは、この特定開口セル2xの内接円の直径D2と、当該特定開口セル2xの内接円の直径D3とが、第一端面11から20mm以下の一部の範囲において、1≦|(1−(D3/D2))×100|≦80の関係を満たす。すなわち、特定開口セル2xは、内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D3を差し引いた値(差分)の百分率の絶対値が、1〜80%となっている。以下、「内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D3を差し引いた値(差分)の百分率の絶対値」のことを、「内部最大内接円変化率」ということがある。すなわち、|(1−(D3/D2))×100|で示される値(絶対値)が、「内部最大内接円変化率」である。
【0028】
そして、特定開口セル2xにおいて、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」が、共に1〜80%となる部分が、開口変化部15(図4参照)である。この開口変化部15は、特定開口セル2xの第一端面11から20mm以下の範囲のみに存在する。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体は、第一端面11の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセル2が、上述したように構成された開口変化部15を有する特定開口セル2xとなっている。このように構成することによって、図1図5に示すような本実施形態のハニカム構造体100は、圧力損失の上昇を極めて有効に抑制しつつ、浄化性能を向上させることができる。また、本実施形態のハニカム構造体は、その製造も比較的に簡便であり、生産性の向上に資する。「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」のうちの少なくとも一方が、1%未満であると、十分な浄化性能の向上効果を得ることができない。また、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」のうちの少なくとも一方が、80%を超えると、圧力損失の上昇が大きくなり過ぎてしまう。また、特定開口セル2xの第一端面11から20mmを超える範囲に存在していると、圧力損失の上昇が大きくなり過ぎてしまう。
【0030】
なお、本実施形態のハニカム構造体においては、複数のセルのうちの、特定開口セル以外のセルは、上述した開口変化部を有していない。そして、特定開口セル以外のセルは、当該セルの開口部の大きさが変化していない、又は、上記した開口変化部よりも開口部における変化率が小さい、非特定開口セルである。
【0031】
ここで、特定開口セルは、第一端面から20mmを超える範囲におけるセルの周縁に接する内接円の直径を、直径D3Xとした場合に、以下のように構成されている。特定開口セルは、この特定開口セルの内接円の直径D2と、当該特定開口セルの内接円の直径D3Xとが、|(1−(D3X/D2))×100|<1の関係を満たす。すなわち、第一端面から20mmを超える範囲におけるセルの周縁に接する内接円の直径D3Xは、「内部最大内接円変化率」が、1%未満である。このように構成することによって、圧力損失の上昇を極めて有効に抑制することができる。特に、第一端面を、排ガス等の流体が流入する流入端面としてハニカム構造体を使用することにより、特定開口セルの流入端面側にて、流体に流れに乱れを生じさせ、流体と隔壁との接触効率を向上させることができる。ここで、第一端面から20mm未満の流入端面側にて、一旦、流体に流れに乱れを生じさせることができると、仮に、それ以降の特定開口セルが真っ直ぐに延びるものであっても、その範囲における、流体と隔壁との接触効率については、比較的に高い状態が維持される。その一方で、第一端面から20mmを超える範囲について、特定開口セルが真っ直ぐに延びるものであると、この特定開口セルに起因する圧力損失の上昇を飛躍的に抑制することができる。以下、「内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D3Xを差し引いた値(差分)の百分率の絶対値」のことを、「第一端面から20mmを超える範囲における内部最大内接円変化率」ということがある。
【0032】
更に、特定開口セルは、第一端面から第二端面に向かう方向において、開口変化部15を除く部分のセルの周縁に接する内接円の直径を、直径D3Yとした場合に、以下のように構成されていることがより好ましい。特定開口セルは、この特定開口セルの内接円の直径D2と、当該特定開口セルの内接円の直径D3Yとが、|(1−(D3Y/D2))×100|<1の関係を満たすことがより好ましい。「内接円の直径D2に対する、内接円の直径D2から内接円の直径D3Yを差し引いた値(差分)の百分率の絶対値」のことを、「開口変化部以外の内部最大内接円変化率」ということがある。例えば、この態様においては、第一端面から5mmまでの範囲に開口変化部が形成されている際には、5mmを超え、第二端面までの範囲が、上記した数式の関係を満たすこととなる。
【0033】
特定開口セルの「内接円の直径D1」及び「内接円の直径D2」は、以下のようにして測定することができる。まず、ハニカム構造体の第一端面及び第二端面を、画像測定機によって撮像する。そして、撮像した第一端面及び第二端面の画像を画像解析することよって、「内接円の直径D1」及び「内接円の直径D2」を求めることができる。画像解析の方法としては、例えば、ニコン社製の「VM−2520(商品名)」を用いることができる。
【0034】
特定開口セルの「内接円の直径D3」は、以下のようにして測定することができる。ハニカム構造体を、第一端面から5mm間隔で切断し、その切断面を、画像測定機によって撮像する。そして、撮像した切断面の画像を、順次画像解析することよって、第一端面から20mm以下の範囲におけるセルの周縁に接する「内接円の直径D3」を求めることができる。第一端面から20mmを超える範囲における「内接円の直径D3X」についても、ハニカム構造体の第一端面から20mmを超える範囲を、上記したように5mm間隔で切断し、その切断面の画像解析を行うことで求めることができる。このようにして、例えば、「第一端面から20mmを超える範囲における内部最大内接円変化率」が、1%未満であることを確認することができる。
【0035】
なお、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定については、ハニカム構造部に形成された全てのセルについて行い、測定した測定結果を元に、各セルについて、特定開口セルであるか否かの判断を行う。また、「内接円の直径D3X」の測定を行うことにより、開口変化部15が、特定開口セルの第一端面から20mm以下の範囲のみに存在することを確認することができる。以上のような測定結果に基づいて、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」が、それぞれ1〜80%となる開口変化部が存在するセルを、特定開口セルとする。ここで、特定開口セル以外のセルを、非特定開口セルとする。非特定開口セルは、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」のうちの少なくとも一方が、1〜80%とならないセル、及び、「第一端面から20mmを超える範囲における内部最大内接円変化率」が1%未満のセル、を含む。非特定開口セルのうち、「最大内接円変化率」、及び「内部最大内接円変化率」が、共に1%未満となるように構成されたセルを、通常セルということがある。通常セルにおける「内部最大内接円変化率」とは、第一端面から第二端面までの全ての「内部最大内接円変化率」のことをいう。本実施形態のハニカム構造体は、特定開口セル以外の非特定開口セルが、通常セルである。例えば、図1図4に示すような本実施形態のハニカム構造体100において、第一端面11の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセル2が、特定開口セル2xである場合、その他のセルは、非特定開口セル2yとなる。そして、この非特定開口セル2yは、上述した「通常セル」である。通常セル以外の非特定開口セルとしては、例えば、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」の一方が80%以下であり、「最大内接円変化率」及び「内部最大内接円変化率」のもう一方が、1%未満であるものなどを挙げることができる。
【0036】
特定開口セルは、ハニカム構造部の第一端面の面積の1〜80%の範囲に存在する。このような特定開口セルが存在する範囲の面積比率を、「特定開口セルの面積率」ということがある。特定開口セルの面積率が、1%未満であると、浄化性能の向上効果が十分に得られないことがある。特定開口セルの面積率が、80%を超えると、圧力損失の上昇が大きくなり過ぎてしまう。
【0037】
特定開口セルの面積率は、1〜80%であるが、好ましくは3〜70%であり、より好ましくは4〜65%であり、特に好ましくは5〜60%である。特定開口セルの面積率は、以下のように測定することができる。まず、ハニカム構造部の第一端面の全体の面積を測定する。この際、ハニカム構造部の第一端面の面積には、ハニカム構造部の外周を囲繞するように配置された外周壁の面積を含むこととする。次に、上述した「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、ハニカム構造部に形成されたセルを、特定開口セルと、非特定開口セルと、に分類する。次に、特定開口セルと分類されたセルの面積を測定する。特定開口セルと分類されたセルの面積は、セルを取り囲むように配置された隔壁の厚さの中間値を境界として算出した面積とする。ハニカム構造部の第一端面の全体の面積に対する、特定開口セルと分類されたセルの総面積の百分率を算出する。算出された値が、特定開口セルの面積率となる。
【0038】
また、上述した特定開口セルの面積率の算出に際し、隔壁と外周壁とによって区画された最外周のセルについては、その形状が四角形でない場合がある。このようなセルを、本明細書では、不完全セルと称する。このような不完全セルに関しても、上述した方法と同様にして、各内接円の直径を求め、特定開口セルと、非特定開口セルとの分類を行うことができる。そして、その分類された各セルの面積を測定し、特定開口セルの面積率の算出に用いることとする。
【0039】
特定開口セルの「最大内接円変化率」は、1〜80%である。「最大内接円変化率」は、3〜70%であることが好ましく、4〜65%であることが更に好ましく、5〜60%であることが特に好ましい。
【0040】
また、特定開口セルの開口変化部における「内部最大内接円変化率」は、1〜80%である。開口変化部における「内部最大内接円変化率」は、3〜70%であることが好ましく、4〜65%であることが更に好ましく、5〜60%であることが特に好ましい。このように構成することによって、圧力損失の上昇をより有効に抑制しつつ、浄化性能をより向上させることができる。
【0041】
特定開口セルの内接円の直径D2は、0.5〜2.2mmであることが好ましく、0.5〜1.7mmであることがより好ましく、0.6〜1.55mmであることが更に好ましく、0.7〜1.4mmであることが特に好ましい。特定開口セルの内接円の直径D2が、0.5〜2.2mmであると、ハニカム構造体を排ガス浄化用の触媒担体やフィルターとして用いた際に、浄化性能に優れたものとなる。
【0042】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の厚さが、40〜350μmであることが好ましく、50〜300μmであることが更に好ましく、55〜250μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが、40μm未満であると、ハニカム構造体を押出成形する際に、口金に成形原料が詰まることにより、隔壁が上手く成形できないことがある。隔壁の厚さが、350μmを超えると、圧力損失が増大し、エンジンの出力低下や燃費の悪化を引き起こすことがある。隔壁の厚さは、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面を光学顕微鏡により観察する方法で測定した値である。
【0043】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁によって区画形成されるセルのセル密度が、30〜200個/cmであることが好ましく、45〜140個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体を、排ガス浄化用触媒担体やフィルター等として好適に利用することができる。
【0044】
隔壁及び外周壁は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁及び外周壁の材質としては、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、コージェライト化原料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群より選択される少なくとも1種を含む材料を好適例として挙げることができる。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の50質量%以上含有することを意味する。
【0045】
ハニカム構造部は、セルを区画形成する隔壁が一体的に構成されたものである。例えば、ハニカム構造体には、全ての隔壁が一体的に構成された、所謂、一体型のハニカム構造体と、複数のセグメント構造のハニカム構造部が接合された、セグメント構造のハニカム構造体と、の2種類のハニカム構造体がある。本実施形態のハニカム構造体は、この2種類のハニカム構造体のうち、先に述べた、所謂、一体型のハニカム構造体であることが好ましい。
【0046】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の気孔率が、20〜70%であることが好ましく、25〜60%であることが更に好ましく、25〜50%であることが特に好ましい。隔壁の気孔率が20%未満では、ハニカム構造体の圧力損失が増大し、エンジンの排気系に設置されるPM捕集用のフィルターとして用いた場合に、エンジンの出力低下を招くことがある。また、隔壁の気孔率が70%を超えると、十分な強度が得られないことがある。隔壁の気孔率は、水銀圧入法により測定した値である。
【0047】
隔壁によって区画形成されるセルの形状については、四角形とする。本実施形態のハニカム構造体においては、特定開口セルは、第一端面と、第二端面とで、その開口部の形状が異なっている。第二端面における、特定開口セルの開口部の形状と、非特定開口セルの開口部の形状とは、それぞれ同じ形状であることが好ましい。
【0048】
ハニカム構造体の形状は、特に限定されないが、円柱形状、端面が楕円形の柱状、端面が長円形の柱状、端面が四角形、五角形、六角形等の多角形の角柱形状等を挙げることができる。ハニカム構造体の端面の形状が四角形である場合には、正方形、長方形、台形等を挙げることができる。また、ハニカム構造体の端面の形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形の角部に丸みを持たせた形状であってもよい。ハニカム構造体は、ハニカム構造部の外周を囲繞するように外周壁が配設されているため、ハニカム構造体の外周形状が、外周壁の側面形状となる。
【0049】
ハニカム構造体の大きさは、特に制限はない。ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さが35〜440mmであることが好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体によって、圧力損失を増大させずに、優れた浄化性能を実現することができる。
【0050】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の少なくとも一部に触媒、例えば、酸化触媒が担持されたものであってもよい。更に詳細には、ハニカム構造体を構成する隔壁に、触媒が担持されていることが好ましい。ハニカム構造体の単位体積当りの触媒の担持量は、15〜350g/リットルであることが好ましく、30〜300g/リットルであることが更に好ましく、50〜250g/リットルであることが特に好ましい。15g/リットルより少ないと、触媒効果が発揮され難くなることがある。350g/リットルより多いと、隔壁の細孔が閉塞することにより、圧力損失が大きくなり、捕集効率が著しく低下することがある。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体に触媒を担持する場合には、触媒は、三元触媒、SCR触媒、NO吸蔵触媒、酸化触媒からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。三元触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。SCR触媒は、被浄化成分を選択還元する触媒である。特に、本実施形態のハニカム触媒体においては、SCR触媒が、排ガス中のNOを選択還元するNO選択還元用SCR触媒であることが好ましい。NO選択還元用SCR触媒としては、排ガス中のNOを選択還元して浄化する触媒を好適例として挙げることができる。また、SCR触媒としては、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。また、SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。NO吸蔵触媒としては、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、カルシウムなどを挙げることができる。酸化触媒としては、貴金属を含有するものを挙げることができる。酸化触媒として、具体的には、白金、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体を、PM捕集用のフィルターに用いる場合には、セルの開口部を目封止する目封止部を更に備えたものであってもよい。目封止部は、例えば、所定のセルの第一端面側の開口部、及び所定のセル以外の残余のセルの第二端面側の開口部に配設することができる。目封止部の材質は、ハニカム構造部の隔壁や、外周壁の材質と同じものであってもよし、異なるものであってもよい。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体が、目封止部を更に備えたものである場合には、例えば、このように構成されたハニカム構造体を、好適例として挙げることができる。第一端面側において目封止部が配設されている所定のセルと、第二端面側において目封止部が配設されている残余のセルと、が千鳥状に配置されているハニカム構造体を、好適例として挙げることができる。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体を、触媒担体やPM捕集用のフィルターとして用いる場合において、ガスが流入する流入端面を、ハニカム構造体の第一端面としてもよいし、ハニカム構造体の第二端面としてもよい。例えば、ハニカム構造体の第一端面を、ガスが流入する流入端面とし、ハニカム構造体の第二端面を、ガスが流出する流出端面とすると、流入端面にて、ガスの流れに乱れを起こしやすくなる。
【0055】
ここで、本実施形態のハニカム構造体における、特定開口セルが形成される範囲、別言すれば、特定開口セルの、第一端面上の存在範囲について、図8A図8Eを参照しつつ、具体的に説明する。図8Aは、特定開口セルが形成される範囲の一例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。図8Bは、特定開口セルが形成される範囲の他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。図8C図8Eのそれぞれは、特定開口セルが形成される範囲の更に他の例を模式的に示す模式図であって、ハニカム構造体を第一端面側からみた平面図である。図8A図8Eにおいては、第一端面上の隔壁及びセルを捨象した形で作図を行っている。図8A図8Eにおいて、符号3は、外周壁を示し、符号4は、ハニカム構造部を示す。
【0056】
図8Aに示すように、特定開口セルが形成される範囲Pは、第一端面11上の1箇所に集中していてもよい。図8Aにおいては、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pが、ハニカム構造体100の第一端面11の中央部分の1箇所に集中している。なお、特定開口セルが形成される範囲Pが、1箇所に集中している場合には、第一端面11の中央部分でなくともよい。例えば、第一端面11の外周部分に偏っていてもよい。
【0057】
図8Bに示すように、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pは、ハニカム構造体100の第一端面11の複数箇所であってもよい。第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pが複数箇所ある場合、それぞれの範囲の大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pが複数箇所ある場合、それぞれの範囲の形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、それぞれの範囲Pが、不規則な形状であってよいし、例えば、特定開口セルの縦列及び横列の個数が整った規則的な形状であってもよい。また、それぞれの範囲Pが、不規則に点在していてもよいし、等間隔に配列していてもよい。
【0058】
図8Cに示すように、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pは、ハニカム構造体100の第一端面11の外周部分に、環状に存在していてもよい。図8Cにおいては、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pが、ハニカム構造体100の第一端面11の外周部分に集中しており、第一端面11の中央部分には、非特定開口セルが存在している。
【0059】
図8Dに示すように、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pは、ハニカム構造体100の第一端面11の複数箇所に点在していてもよい。図8Dに示す形態と、図8Bに示す形態との相違点は、図8Dにおいては、特定開口セルが形成される範囲Pが、1個の特定開口セルによって構成されている点である。なお、図8Dに示すような、1個の特定開口セルによって構成されている範囲Pが、図8Bに示す形態において、一部存在していてもよい。
【0060】
図8Eに示すように、第一端面11上の特定開口セルが形成される範囲Pは、ハニカム構造体100の第一端面11の中心と外周との間に、環状に存在していてもよい。図8Eにおいては、第一端面11の中央部分と外周部分とには、非特定開口セルが存在している。
【0061】
次に、本実施形態のハニカム構造体における、特定開口セルの第一端面における開口部の形状について、図9A図9Oを参照しつつ、具体的に説明する。ここで、図9A図9Oに示す特定開口セル2xは、図示しない第二面における開口部の形状が、正方形であるものとする。そして、図9A図9Oに示す特定開口セル2xの開口部の形状を構成する各「辺」を、図示しない第二面における開口部の正方形を構成する4つの辺と対応するものとする。また、図9A図9Oにおいて、特定開口セル2xの内接円の直径D1は、「最大内接円変化率」が、1〜80%の範囲に含まれるものである。ここで、図9Aは、特定開口セルの一例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。図9Bは、特定開口セルの他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。図9C図9Oのそれぞれは、特定開口セルの更に他の例を模式的に示す模式図であって、特定開口セルを第一端面側からみた平面図である。
【0062】
図9Aに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、4つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲した形状となっている。図9Aにおいては、特定開口セル2xの各「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0063】
図9Bに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、3つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの1つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。図9Bにおいては、特定開口セル2xの各「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0064】
図9Cに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、3つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの1つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Cにおいては、特定開口セル2xの3つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0065】
図9Dに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの2つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。内側に向かって湾曲する2つの「辺」は、互いに対向する辺である。以下、このような2つの「辺」のことを、互いに対向する2つの「辺」ということがある。図9Dにおいては、特定開口セル2xの2つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0066】
図9Eに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの2つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。内側に向かって湾曲する2つの「辺」は、その一端が接触しており、この2つの「辺」にて、1つの角部を構成する辺である。以下、このような2つの「辺」のことを、隣接する2つの「辺」ということがある。図9Eにおいては、特定開口セル2xの2つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0067】
図9Fに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、互いに対向する2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの2つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。図9Fにおいては、特定開口セル2xの各「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0068】
図9Gに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、隣接する2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの隣接する2つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。図9Gにおいては、特定開口セル2xの4つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0069】
図9Hに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、互いに対向する2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、1つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの1つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Hにおいては、特定開口セル2xの3つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0070】
図9Iに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、隣接する2つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、1つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの1つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Iにおいては、特定開口セル2xの3つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0071】
図9Jに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、1つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、残りの3つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。図9Jにおいては、特定開口セル2xの4つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0072】
図9Kに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、1つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、互いに対向する2つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの1つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Kにおいては、特定開口セル2xの3つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0073】
図9Lに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、1つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、隣接する2つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの1つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Kにおいては、特定開口セル2xの3つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0074】
図9Mに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、1つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、内側に向かって湾曲した「辺」に対向する1つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの対向する2つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Mにおいては、特定開口セル2xの2つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0075】
図9Nに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、1つの「辺」が、特定開口セル2xの内側に向かって湾曲し、内側に向かって湾曲した「辺」に隣接する1つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。そして、残りの2つの「辺」が、第二面における開口部の辺から変形することなくそのままの直線状となっている。図9Nにおいては、特定開口セル2xの2つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0076】
図9Oに示すように、特定開口セル2xは、第一端面11において、4つの「辺」が、特定開口セル2xの外側に向かって湾曲した形状となっている。図9Oにおいては、特定開口セル2xの4つの「辺」は、円弧形状に湾曲した場合の例を示しているが、円弧形状に限定されることはなく、その他の不定形状に変形したものであってもよい。
【0077】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について説明する。本発明のハニカム構造体の製造方法としては、ハニカム成形体を作製する工程、ハニカム成形体を乾燥及び焼成する工程、を備えたものを挙げることができる。また、必要に応じて、ハニカム成形体又はハニカム成形体を乾燥したハニカム乾燥体のセル形状を変形させる工程を、更に有していてもよい。以下、ハニカム成形体を作製する工程を、成形工程として説明する。ハニカム成形体を乾燥及び焼成する工程を、焼成工程として説明する。また、セル形状を変形させる工程を、セル変形工程として説明する。
【0078】
(2−1)成形工程:
成形工程は、成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る工程である。ハニカム成形体は、第一端面から第二端面まで延びるセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁の最外周を囲繞するように形成された外周壁を有するものである。隔壁によって構成されたハニカム構造の部分が、ハニカム構造部となる。成形工程においては、まず、成形原料を混練して坏土とする。次に、得られた坏土を押出成形して、隔壁と外周壁とが一体的に成形されたハニカム成形体を得る。
【0079】
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0080】
セラミック原料は、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、コージェライト化原料、リチウムアルミニウムシリケート、アルミニウムチタネート、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
【0081】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0082】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に制限はなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0083】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0084】
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0085】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、ハニカム成形体の断面形状に対応したスリットが形成された押出成形用の口金を用いて行うことができる。
【0086】
(2−2)セル変形工程:
次に、必要に応じて、得られたハニカム成形体の第一端面側に、剣山のような先端の尖った部材(以下、「セル変形部材」ということがある)を押し当てて、所定のセルの形状を部分的に変形させるセル変形工程を行ってもよい。このセル変形工程を行うことにより、ハニカム成形体の第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルについて、その「最大内接円変化率」及び第一端面から20mm以下の範囲の「内部最大内接円変化率」を1〜80%とすることができる。すなわち、このセル変形工程を行うことにより、ハニカム成形体の第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルを、第一端面から20mm以下の範囲のみに開口変化部を有する特定開口セルに変形させることができる。例えば、セル変形部材の先端の形状やその長さ、また、第一端面側に押し当てる範囲などを調整することにより、所望形状の特定開口セルを形成することができる。なお、後述する焼成工程の乾燥時又は焼成時に、所定のセルを特定開口セルに変形させることもできる。このため、セル変形工程は、必要に応じて行えばよい。また、上記したように、セル変形工程は、ハニカム成形体を乾燥したハニカム乾燥体に対して行ってもよい。
【0087】
(2−3)焼成工程:
焼成工程は、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を得る工程である。ハニカム成形体を焼成する前に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥してもよい。また、製造するハニカム構造体として、目封止部を備えたものとする場合には、ハニカム成形体を乾燥した後に、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製してもよい。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0088】
ハニカム成形体を焼成する際の焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として4〜6時間程度とすることが好ましい。
【0089】
ここで、焼成工程を行う際には、従来のハニカム成形体の焼成に用いられる焼成用の栃を用いずに、例えば、図10A図10Eに示すような形状の栃20の上に、ハニカム成形体の第一端面側が下になるように載置して、焼成を行うことが好ましい。図10A図10Eは、ハニカム成形体を載置する栃(トチ)を模式的に示す図である。図10A図10Eの各図において、(a)は、栃の上面図(ハニカム成形体を載置する面)を示す。また、図10Aの(b)は、(a)のB−B’断面を示し、図10Bの(b)は、(a)のC−C’断面を示し、図10Cの(b)は、(a)のD−D’断面を示し、図10Dの(b)は、(a)のE−E’断面を示し、図10Eの(b)は、(a)のF−F’断面を示す。
【0090】
通常の焼成工程において、ハニカム成形体は、第一端面側が下になるような状態で、棚板の上に載置され、当該棚板とともに焼成炉内に投入される。このとき、ハニカム成形体が棚板に付着することを防止するために、棚板とハニカム成形体との間には、「栃(トチ)」と呼ばれる焼成用の敷板が設けられている。従来、ハニカム成形体焼成用の栃としては、例えば、ハニカム成形体を焼成したハニカム構造体を切断したものが用いられていた。本発明のハニカム構造体を製造する際の焼成工程では、図10A図10Eに示すような特別な形状の栃を用いることが好ましい。焼成工程に用いられる栃としては、未焼成の栃(以下、「生栃」ということがある)であってもよいし、焼成済みの栃(以下、「焼栃」ということがある)であってもよい。栃の材質として、生栃の場合は、ハニカム成形体と同じ材料を好適例として挙げることができる。また、栃の材質として、焼栃の場合は、コージェライト、アルミナ、ムライト等を好適例として挙げることができる。ただし、栃の材質は、上記以外のものであってもよい。
【0091】
図10A図10Eに示すように、栃20は、ハニカム成形体の第一端面が載置される面(上面)に、凸部21を有している。そして、この凸部21を、ハニカム成形体の第一端面と接触させた状態で、ハニカム成形体を乾燥し、及び焼成することが好ましい。このような方法で焼成工程を行うことにより、凸部21と接触する部位のセルの形状を、選択的に変形させることができる。即ち、ハニカム成形体の第一端面の面積の1〜80%の範囲に開口部を有するセルについて、その「最大内接円変化率」及び第一端面から20mm以下の範囲の「内部最大内接円変化率」を1〜80%とすることができる。例えば、図10Aの栃20を用いた場合は、図8Aに示すようなハニカム構造体100を、選択的に製造することができる。同様に、図10B図10Eに示すそれぞれの栃20を用いた場合には、図8B図8Eに示すような、それぞれのハニカム構造体100を、選択的に製造することができる。
【0092】
以上のようにしてハニカム構造体を製造することにより、本発明のハニカム構造体を簡便に製造することができる。なお、本発明のハニカム構造体を製造する方法については、本発明のハニカム構造体の構成を満たすものを製造可能な方法であれば、これまでに説明した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を0.5質量部、分散媒を33質量部、有機バインダを5.6質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径10〜50μmの吸水性ポリマーを使用し、有機バインダとしてはメチルセルロースを使用し、分散剤としてはデキストリンを使用した。
【0094】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。
【0095】
次に、ハニカム成形体を、作製するハニカム構造体の第一端面が下を向くようにして、アルミナ製の焼栃の上に載置した。焼栃としては、ハニカム成形体の第一端面が載置される面(上面)の一部に、凸部を有するものを用いた。具体的には、実施例1においては、図8Aに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いた。そして、ハニカム成形体を、熱風乾燥機にて乾燥させた。乾燥条件としては、95〜145℃とした。
【0096】
次に、乾燥させたハニカム成形体を、トンネルキルン(連続焼成炉)にて焼成した。焼成条件としては、1350〜1440℃で、10時間、焼成してハニカム焼成体を得た。
【0097】
得られたハニカム構造体は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面形状が、円形の円柱形状であった。表1の「断面形状」の欄に、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面形状を示す。
【0098】
【表1】
【0099】
ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面の直径が105.7mmであり、ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さが81.2mmであった。表1の「直径(mm)」、及び「全長(mm)」の欄に、ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面の直径、及びハニカム構造体のセルの延びる方向の長さを示す。
【0100】
ハニカム構造体は、中央領域の隔壁の厚さが、50μmであり、外周領域の隔壁の厚さが、70μmであった。なお、中央領域の隔壁の厚さは、外周壁から10セルを除いた範囲に存在する隔壁の厚さの平均値とする。外周領域の隔壁の厚さは、外周壁から10セルの範囲に存在する隔壁の厚さの平均値とする。表1の「セル構造」の「中央領域の隔壁の厚さ(μm)」、及び「外周領域の隔壁の厚さ(μm)」の欄に、隔壁の厚さを示す。
【0101】
ハニカム構造体の第二端面におけるセルの開口部の形状は、四角形であった。ハニカム構造体のセル密度は、93個/cmであった。表1に、ハニカム構造体の「セル形状」、及び「セル密度」を示す。ハニカム構造体を構成する隔壁の気孔率は、27%であった。隔壁の気孔率は、Micromeritics社製の水銀ポロシメーター(Autopore 9500(商品名))で測定した。表1に、隔壁の気孔率を示す。
【0102】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「特定開口セルの面積率(%)」を求めた。まず、ハニカム構造体の第一端面及び第二端面を、画像測定機によって撮像した。撮像した第一端面及び第二端面の画像を画像解析することよって、「内接円の直径D1」及び「内接円の直径D2」を測定した。画像解析は、ニコン社製の「VM−2520(商品名)」を用いた。また、ハニカム構造体を、第一端面から5mm間隔で切断し、その切断面を、画像測定機によって撮像した。そして、撮像した切断面の画像を、順次画像解析することよって、セルの周縁に接する「内接円の直径D3」を測定した。そして、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、ハニカム構造体に形成された全てのセルについて、特定開口セルであるか否かの判別を行った。そして、ハニカム構造部の第一端面の全体の面積に対する、特定開口セルと分類されたセルの総面積の百分率を算出し、算出された値を、「特定開口セルの面積率(%)」とした。表2に、「特定開口セルの面積率(%)」を示す。
【0103】
【表2】
【0104】
また、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」とを求めた。それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」のうち、それぞれの「最大値」と「最小値」を、表2に示す。
【0105】
また、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、開口変化部の第一端面からの長さ(mm)を求めた。表2に、「開口変化部の第一端面からの長さ(mm)」を示す。
【0106】
また、得られたハニカム構造体について、以下の方法で、浄化性能、及び圧力損失の評価を行った。評価結果を、表2に示す。なお、浄化性能、及び圧力損失の評価においては、ハニカム構造体の第一端面を、ガスが流入する流入端面とし、ハニカム構造体の第二端面を、ガスが流出する流出端面とした。
【0107】
(浄化性能)
まず、ハニカム構造体の隔壁に、三元触媒をディッピング法によって担持し、ハニカム触媒体を得た。三元触媒の担持量は、200g/Lとした。
【0108】
排気量2.0Lのガソリンエンジンの排気管に、上記のようにして得られたハニカム構造体(具体的には、ハニカム触媒体)が缶体内にキャニングされたものを取り付けた。排ガス規制モード(JC−08)走行時に、排気管と接続したパイプから排ガスをサンプリングし、バッグと呼ばれる袋に貯めた後、走行終了後に、溜まった排ガスを分析計に通すことで、HCエミッションを測定した。HCエミッションの測定は、JC−08の規定による方法にて行った。排ガス分析計は「HORIBA社製、MEXA9100EGR」を用いた。以下の評価基準に基づき、浄化性能の評価を行った。下記の評価基準においては、以下のような「基準ハニカム構造体」に対する、浄化性能の向上率を判断基準とした。浄化性能の向上率は、下記式(a)で表される。「基準ハニカム構造体」とは、第一端面から第二端面までセルの形状の変化が無く、評価対象のハニカム構造体と、同一のセル構造及びサイズのハニカム構造体である。なお、浄化性能が向上できれば、今後の厳しい排ガス規制に対応することができ、また、触媒に含まれる貴金属量を低減することができる。
(1−(各実施例のハニカム構造体のHCエミッション値/基準ハニカム構造体のHCエミッション値))×100 (a)
【0109】
評価A:基準ハニカム構造体に対して、浄化性能が、5%を超えて向上が見られるもの。
評価B:基準ハニカム構造体に対して、浄化性能が、2%を超え、5%以下の範囲で向上が見られるもの。
評価C:基準ハニカム構造体に対して、浄化性能が、2%以下の向上に留まるもの。
【0110】
(圧力損失)
浄化性能の評価に用いたハニカム触媒体に、圧力損失の測定用ガス(空気)を、25℃、流量10Nm/minで通気して、第一端面側と第二端面側との圧力をそれぞれ測定し、その圧力差を算出した。算出した圧力差を、ハニカム構造体の圧力損失とした。そして、以下の評価基準に基づき、圧力損失の評価を行った。下記の評価基準においては、上述した「基準ハニカム構造体」に対する、圧力損失上昇率を判断基準とした。圧力損失上昇率は、下記式(b)で表される。圧力損失の上昇を抑えることができれば、出力の低下を抑えることができ、燃費向上が期待できる。
(各実施例のハニカム構造体の圧力損失値/基準ハニカム構造体の圧力損失値)×100 (b)
評価A:基準ハニカム構造体に対して、圧力損失上昇率が、2%以内のもの。
評価B:基準ハニカム構造体に対して、圧力損失上昇率が、2%を超え、5%以下の範囲のもの。
評価C:基準ハニカム構造体に対して、圧力損失上昇率が、5%を超えるもの。
【0111】
(実施例2〜18)
実施例2〜18においては、セル構造、気孔率、断面形状、直径、長径、短径、全長を表1に示すように変更し、更に、各実施例2〜18において、以下のように焼成方法を変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を作製した。ここで、「長径」とは、セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の外周縁上の2点を結んだ直線のうち最も長いものをいう。そして、「短径」とは、セルの延びる方向に直交する断面において、上記「長径」に直交する直線をいう。実施例14においては、ハニカム構造体の断面形状が楕円形であり、長径が228.6mmで、短径が137.2mmである。実施例15においては、ハニカム構造体の断面形状が楕円形であり、長径が95.0mmで、短径が70.0mmである。実施例16においては、ハニカム構造体の断面形状が台形であり、長径が122.0mmで、短径が104.0mmである。実施例17においては、ハニカム構造体の断面形状が台形であり、長径が169.7mmで、短径が80.8mmである。
【0112】
また、実施例2〜18のハニカム構造体について、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」とを求めた。それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」のうち、それぞれの「最大値」と「最小値」を、表2に示す。「内部最大内接円変化率」は、第一端面から20mmの位置の値とした。
【0113】
また、実施例2〜18のハニカム構造体について、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、開口変化部の第一端面からの長さ(mm)を求めた。表2に、「開口変化部の第一端面からの長さ(mm)」を示す。実施例1〜18のハニカム構造体において、特定開口セル以外のセルは、「最大内接円変化率」、及び「内部最大内接円変化率」が、共に1%未満となるように構成された「通常セル」であった。
【0114】
実施例2においては、図8Bに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0115】
実施例3においては、図8Cに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0116】
実施例4においては、図8Dに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0117】
実施例5においては、図8Eに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0118】
また、実施例6,11,16においては、図8Aに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0119】
実施例7,12,17においては、図8Bに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0120】
実施例8,13,18においては、図8Cに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0121】
実施例9,14においては、図8Dに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0122】
実施例10,15においては、図8Eに示すハニカム構造体における特定開口セルの存在範囲と同様の範囲に、特定開口セルを形成するために、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0123】
(比較例1〜11)
比較例1〜11においては、セル構造、気孔率、断面形状、直径、長径、短径、全長を表3に示すように変更し、更に、各比較例1〜11において、以下のように焼成方法を変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、ハニカム構造体を作製した。比較例9においては、ハニカム構造体の断面形状が楕円形であり、長径が228.6mmで、短径が137.2mmである。
【0124】
また、比較例1〜11のハニカム構造体について、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」とを求めた。それぞれの特定開口セルの「最大内接円変化率」と「内部最大内接円変化率」のうち、それぞれの「最大値」と「最小値」を、表4に示す。
【0125】
また、比較例1〜11のハニカム構造体について、「内接円の直径D1」、「内接円の直径D2」、及び「内接円の直径D3」の測定結果に基づいて、開口変化部の第一端面からの長さ(mm)を求めた。表4に、「開口変化部の第一端面からの長さ(mm)」を示す。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
比較例1〜3においては、ハニカム成形体と接触する側の面が凸部を有さない、生栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0129】
比較例4,5においては、80%を超えた領域に特定開口セルが形成されるように、その該当部分に凸部を有する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0130】
比較例6においては、全領域に特定開口セルが形成されるように、全体が栃面に接触する焼栃を用いて焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0131】
比較例7においては、部分的に内接円の大きくなるセルを形成するため、以下の方法でハニカム構造体を作製した。図8Aの領域60%が凸となった焼栃を用い、更に、焼成前のハニカム成形体の栃面に接触する側の厚さ5mmの部分にコージェライト粉末を溶かした液に浸漬させた後、焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0132】
比較例8においては、部分的に内接円の大きくなるセルを形成するため、以下の方法でハニカム構造体を作製した。図8Aの領域60%が凸となった焼栃を用い、更に、焼成前のハニカム成形体の栃面に接触する側の厚さ20mmの部分にコージェライト粉末を溶かした液に浸漬させた後、焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0133】
比較例9においては、部分的に内接円の大きくなるセルを形成するため、以下の方法でハニカム構造体を作製した。図8Aの領域60%が凸となった焼栃を用い、更に、焼成前のハニカム成形体の栃面に接触する側の厚さ10mmの部分にコージェライト粉末を溶かした液に浸漬させた後、焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0134】
比較例10においては、部分的に内接円の大きくなるセルを形成するため、以下の方法でハニカム構造体を作製した。図8Aの領域60%が凸となった焼栃を用い、更に、焼成前のハニカム成形体の栃面に接触する側の厚さ25mmの部分にコージェライト粉末を溶かした液に浸漬させた後、焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0135】
比較例11においては、部分的に内接円の大きくなるセルを形成するため、以下の方法でハニカム構造体を作製した。図8Aの領域30%が凸となった焼栃を用い、更に、焼成前のハニカム成形体の栃面に接触する側の厚さ50mmの部分にコージェライト粉末を溶かした液に浸漬させた後、焼成を行って、ハニカム構造体を作製した。
【0136】
また、実施例2〜18及び比較例1〜11のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、浄化性能、及び圧力損失の評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【0137】
(結果)
表2に示すように、ハニカム構造体は、最大内接円変化率(%)及び内部最大内接円変化率(%)が大きくなるにしたがって、浄化性能が向上する傾向が確認された。また、特定開口セルの面積率が、1〜80%の範囲内であれば、圧力損失が小さく、排ガス浄化用の触媒担体として良好に用いられるものであった。また、開口変化部の第一端面からの長さが、20mm以下であれば、排ガス浄化用の触媒担体として十分な浄化性能を維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制することが可能であった。
【0138】
表4に示すように、比較例1〜3のハニカム構造体は、特定開口セルが存在せず、浄化性能が悪いものであった。比較例4〜6のハニカム構造体は、特定開口セルの面積比率が80%を超えており、圧力損失が著しく大きなものであった。比較例7〜9のハニカム構造体は、最大内接円変化率(%)及び内部最大内接円変化率(%)が80%を超えており、圧力損失が著しく大きなものであった。比較例10及び11のハニカム構造体は、開口変化部の第一端面からの長さが、20mmを超えており、圧力損失が著しく大きなものであった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒担体やフィルターとして用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1:隔壁、2:セル、2x:特定開口セル、2y:非特定開口セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、11:第一端面、12:第二端面、15:開口変化部、20:栃、21:凸部、100:ハニカム構造体、D1a,D1b,D1c,D1d,D1e,D2a,D2b,D2c,D2d,D2e,D3a,D3b,D3c,D3d,D3e:内接円の直径、P:特定開口セルが形成される範囲。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L
図9M
図9N
図9O
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E