特許第6649811号(P6649811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649811水硬性組成物用添加剤およびコンクリート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649811
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤およびコンクリート組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20200210BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20200210BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20200210BHJP
   C08F 216/18 20060101ALI20200210BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20200210BHJP
   C08F 222/02 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 H
   C04B28/02
   C04B18/08 Z
   C08F216/18
   C08F220/04
   C08F222/02
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-45158(P2016-45158)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-160076(P2017-160076A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】小林 信弘
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063090(JP,A)
【文献】 特開平06−127987(JP,A)
【文献】 特開昭49−117519(JP,A)
【文献】 特開昭56−069257(JP,A)
【文献】 特開2003−073157(JP,A)
【文献】 特表2010−528972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C08F 216/18
C08F 220/04
C08F 222/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性セメントを含有する水硬性組成物の添加剤であって、
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体を含む水硬性材料分散剤と、ポリアクリル酸(塩)を含む強度向上剤と、を含み、
前記水硬性組成物がポゾラン性物質を含み、
前記水硬性組成物中、前記水硬性セメントと前記ポゾラン性物質の合計量に対する、該ポゾラン性物質の含有割合が、30質量%より大きい、
水硬性組成物用添加剤。
YO−(RO)−R (1)
(一般式(1)中、Yは炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、ROは、同一または異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、nは1〜500であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化1】
(一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のYが、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基のいずれかである、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記ポゾラン性物質がフライアッシュを含む、請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
水硬性セメントを含有する水硬性組成物と、請求項1からまでのいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤とを含む、コンクリート組成物。
【請求項5】
前記水硬性組成物がポゾラン性物質を含む、請求項に記載のコンクリート組成物。
【請求項6】
前記水硬性組成物中、前記水硬性セメントと前記ポゾラン性物質の合計量に対する、該ポゾラン性物質の含有割合が、30質量%より大きい、請求項に記載のコンクリート組成物。
【請求項7】
前記ポゾラン性物質がフライアッシュを含む、請求項5または6に記載のコンクリート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤およびコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性組成物は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物の成分として広く用いられている。水硬性組成物は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない(例えば、特許文献1)。
【0003】
セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物は、それを用いた各種施工において、多くの場面において、長期硬化性の向上が求められている。また、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物には、一般に、硬化性改善等の目的のために、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤が添加されることが多いが、その添加量を低減することによる経済性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−133241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量を低減できる、水硬性組成物用添加剤を提供することにある。また、そのような水硬性組成物用添加剤を含むコンクリート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、
水硬性セメントを含有する水硬性組成物の添加剤であって、
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体を含む水硬性材料分散剤と、ポリアクリル酸(塩)を含む強度向上剤と、を含む。
YO−(RO)−R (1)
(一般式(1)中、Yは炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、ROは、同一または異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、nは1〜500であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化1】
(一般式(2)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【0007】
一つの実施形態においては、上記一般式(1)中のYが、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基のいずれかである。
【0008】
一つの実施形態においては、上記水硬性組成物がポゾラン性物質を含む。
【0009】
一つの実施形態においては、上記水硬性組成物中、上記水硬性セメントと上記ポゾラン性物質の合計量に対する、該ポゾラン性物質の含有割合が、30質量%より大きい。
【0010】
一つの実施形態においては、上記ポゾラン性物質がフライアッシュを含む。
【0011】
本発明のコンクリート組成物は、水硬性セメントを含有する水硬性組成物と、本発明の水硬性組成物用添加剤とを含む。
【0012】
一つの実施形態においては、上記水硬性組成物がポゾラン性物質を含む。
【0013】
一つの実施形態においては、上記水硬性組成物中、上記水硬性セメントと上記ポゾラン性物質の合計量に対する、該ポゾラン性物質の含有割合が、30質量%より大きい。
【0014】
一つの実施形態においては、上記ポゾラン性物質がフライアッシュを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量を低減できる、水硬性組成物用強度添加剤を提供することができる。また、そのような水硬性組成物用添加剤を含むコンクリート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。また、本明細書中で「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えてもよく、逆に、本明細書中で「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として慣用されている「質量」と読み替えてもよい。
【0017】
本明細書において、構造単位の含有割合や単量体の含有割合などを算出する際、不飽和カルボン酸系単量体(b)が塩の形態を採っている場合(すなわち、カルボン酸塩)は、塩の形態を採っていないものとして算出することとする。例えば、アクリル酸ナトリウムの場合は、アクリル酸として算出する。
【0018】
本発明において、水硬性組成物は、水硬性セメントを含有する。水硬性組成物中の水硬性セメントの含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0019】
本発明において、水硬性組成物は、ポゾラン性物質を含んでいてもよい。
【0020】
近年、水硬性セメントのコスト削減、環境負荷低減などを目的に、水硬性セメントの一部を各種工業材料等の製造の際の副生物であるフライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグなどのポゾラン性物質に代替置換したポゾラン性物質含有水硬性組成物が注目されてきている。ポゾラン性物質を水硬性セメントの一部代替物として使用すると、初期硬化性向上効果は発現される場合があるものの、長期硬化性向上効果は十分に発現できず、特に、ポゾラン性物質の代替割合が多くなると、長期硬化性向上効果の発現の程度が極めて不十分なものとなる。
【0021】
本明細書において「ポゾラン性物質」とは、そのもの単独では水硬性を有さないが、水硬性セメントの水和反応によって生じる水酸化カルシウムまたはカルシウムイオンと反応して水和物を生成する特性を有する物質である。このような「ポゾラン性物質」としては、例えば、天然ポゾラン、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、非晶質シリカなどが挙げられる。これらの中でも、本明細書における「ポゾラン性物質」としては、本発明の効果がより発現され得る点で、好ましくは、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームであり、より好ましくは、フライアッシュである。フライアッシュは、石炭焼却灰の一種であり、火力発電等により副生されるため、このフライアッシュを水硬性セメントの一部代替物として有効活用できれば、水硬性セメントの大きなコスト低減や環境負荷低減を達成することができる。
【0022】
本発明において、水硬性組成物がポゾラン性物質を含む場合、水硬性セメントとポゾラン性物質の合計量に対する、ポゾラン性物質の含有割合が、好ましくは30質量%より大きく、より好ましくは31質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは33質量%〜80質量%であり、特に好ましくは35質量%〜70質量%である。水硬性組成物がポゾラン性物質を含む場合、水硬性セメントとポゾラン性物質の合計量に対するポゾラン性物質の含有割合が上記範囲内にあれば、水硬性セメントのより大きなコスト低減やより十分な環境負荷低減を達成することができる。
【0023】
水硬性組成物がポゾラン性物質を含む場合、水硬性組成物中の、水硬性セメントとポゾラン性物質の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0024】
≪水硬性組成物用添加剤≫
本発明の水硬性組成物用添加剤は、特定のポリカルボン酸系共重合体を含む水硬性材料分散剤と、ポリアクリル酸(塩)を含む強度向上剤と、を含む。本発明の水硬性組成物用添加剤は、特定のポリカルボン酸系共重合体を含む水硬性材料分散剤と、ポリアクリル酸(塩)を含む強度向上剤と、を含むことにより、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量を低減できる。
【0025】
本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる水硬性材料分散剤中のポリカルボン酸系共重合体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0026】
本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる水硬性材料分散剤中のポリカルボン酸系共重合体の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0027】
本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる強度向上剤中のポリアクリル酸(塩)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0028】
本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる強度向上剤とは、後述の<強度向上率>の評価において3%以上の圧縮強度向上効果を示すものであり、より好ましくは4%以上の圧縮強度向上効果を示すものであり、さらに好ましくは5%以上の圧縮強度向上効果を示すものである。
【0029】
本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる強度向上剤中のポリアクリル酸(塩)の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0030】
ポリアクリル酸(塩)は、代表的には、アクリル酸および/またはその塩由来の構造単位を90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは実質的に100質量%有する重合体である。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
【0031】
本発明の水硬性組成物用添加剤中、ポリカルボン酸系共重合体の使用量は、水硬性組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。本発明のポゾラン性物質含有水硬性組成物用添加剤中のポリカルボン酸系共重合体の含有割合が上記範囲内にあれば、水硬性セメントとポゾラン性物質を含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果をより十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量をより低減できる。
【0032】
本発明の水硬性組成物用添加剤中、ポリアクリル酸(塩)の使用量は、水硬性組成物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部〜5質量部であり、より好ましくは0.005質量部〜3質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部〜1質量部である。本発明の水硬性組成物用添加剤中のポリアクリル酸(塩)の含有割合が上記範囲内にあれば、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果をより十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量をより低減できる。
【0033】
<ポリカルボン酸系共重合体>
ポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
YO−(RO)−R (1)
【0034】
【化2】
【0035】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、一般式(1)においてYが有する不飽和二重結合が重合によって開裂して形成される構造単位である。なお、不飽和二重結合が重合によって開裂して形成される構造単位とは、「RpRqC=CRrRs」の構造(Rp、Rq、Rr、Rsは、炭素原子と単結合で結合する任意の適切な基)の不飽和二重結合「C=C」が重合によって開裂して形成される「−RpRqC−CRrRs−」の構造単位である。
【0036】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
【化3】
【0037】
一般式(1)および構造単位(I)中、Yは炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、好ましくは、2−メチル−2プロペニル基、3−メチル−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基である。
【0038】
一般式(1)および構造単位(I)中、ROは、同一または異なって、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、ROが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、ROの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0039】
一般式(1)および構造単位(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500であり、好ましくは2〜500であり、より好ましくは5〜500であり、さらに好ましくは10〜500であり、特に好ましくは15〜500であり、最も好ましくは20〜300である。
【0040】
一般式(1)および構造単位(I)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。
【0041】
一般式(2)および構造単位(II)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表す。−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
【0042】
Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0043】
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0044】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0045】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0046】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)、一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0047】
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは80質量%〜100質量%であり、特に好ましくは90質量%〜100質量%であり、最も好ましくは95質量%〜100質量%である。ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合が上記範囲内にあれば、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果をより十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量をより低減できる。
【0048】
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合などは、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合などとしても良い。すなわち、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)の含有割合、不飽和カルボン酸系単量体(b)の含有割合、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)との合計の質量の含有割合を、ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)の含有割合、構造単位(II)の含有割合、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合などとして扱って良い。
【0049】
ポリカルボン酸系共重合体中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいても良い。
【0050】
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な単量体である。単量体(c)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0051】
単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1モル〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1モル〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
【0052】
ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合は、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合としても良い。すなわち、ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の他の単量体(c)の質量の含有割合を、ポリカルボン酸系共重合体中の構造単位(III)の含有割合として扱って良い。
【0053】
ポリカルボン酸系共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の含有比率は、質量比(質量%)で、好ましくは、(I)/(II)/(III)=1〜99/1〜99/0〜70であり、より好ましくは、(I)/(II)/(III)=50〜99/1〜50/0〜49であり、さらに好ましくは、(I)/(II)/(III)=55〜98/2〜45/0〜40であり、特に好ましくは、(I)/(II)/(III)=60〜97/3〜40/0〜30である。
【0054】
ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による質量平均分子量(Mw)として、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは5000〜300000であり、さらに好ましくは10000〜150000である。ポリカルボン酸系共重合体の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内に収まることより、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果をより十分に発現することができるとともに、ポリカルボン酸系共重合体などのセメント混和剤の添加量をより低減できる。
【0055】
ポリカルボン酸系共重合体は、任意の適切な方法によって製造し得る。ポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
【0056】
ポリカルボン酸系共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、および、必要に応じて、他の単量体(c)の使用量は、ポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述したポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いれば良い。
【0057】
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、任意の適切な方法によって合成し得る。例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加することによって合成し得る。
【0058】
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
【0059】
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。重合開始剤の中では、過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。促進剤の中では、モール塩等のFe(II)塩やL−アスコルビン酸(塩)が好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0060】
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0061】
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0062】
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0063】
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0064】
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
【0065】
製造された水硬性組成物用添加剤は、そのままでも本発明の水硬性組成物用添加剤として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、水硬性組成物用添加剤の製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率向上のため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、1価金属または2価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。
【0066】
製造された水硬性組成物用添加剤は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
【0067】
製造された水硬性組成物用添加剤は、溶液の形態でそのまま使用してもよいし、あるいは、粉体化して使用してもよい。
【0068】
≪コンクリート組成物≫
本発明のコンクリート組成物は、水硬性セメントを含有する水硬性組成物と、本発明の水硬性組成物用添加剤とを含む。
【0069】
本発明のコンクリート組成物は、好ましくは、さらに、水と骨材を含む。なお、骨材として砂を用いる場合は、モルタル組成物と称することもある。
【0070】
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0071】
本発明のコンクリート組成物は、その他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、セメント混和剤、セメント分散剤などが挙げられる。
【0072】
セメント混和剤は、好ましくは、セメント混和剤用ポリマーを含む。
【0073】
セメント混和剤は、セメント混和剤用ポリマー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
【0074】
他の成分としては、例えば、セメント分散剤が挙げられる。セメント分散剤を用いる場合、セメント混和剤用ポリマーとセメント分散剤との配合比(セメント混和剤用ポリマー/セメント分散剤)としては、使用するセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって、任意の適切な配合比を設定し得る。セメント分散剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0075】
セメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体以外のポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
【0076】
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
【0077】
セメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(12)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。セメント混和剤に含まれ得るセメント混和剤用ポリマーとこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
【0078】
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等。
【0079】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0080】
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0081】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0082】
(5)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0083】
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
【0084】
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0085】
(8)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0086】
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0087】
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0088】
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0089】
(12)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0090】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
コンクリート組成物やモルタル組成物においては、その1mあたりの単位水量、水硬性組成物の使用量、および(水/水硬性組成物)比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が50kg/m〜200kg/mであり、水硬性組成物の使用量が200kg/m〜800kg/mであり、(水/水硬性組成物)比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が100kg/m〜185kg/mであり、水硬性組成物の使用量が250kg/m〜600kg/mであり、(水/水硬性組成物)比(質量比)=0.15〜0.6である。
【0092】
コンクリート組成物やモルタル組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【0093】
なお、本発明の水硬性組成物用強度向上剤の効果をより発現させるために、上記のようなコンクリート組成物やモルタル組成物の構成成分(水硬性セメント、ポゾラン性物質、水、骨材など)の使用比率や単位量を調整することも有効である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
【0095】
<GPC分析法>
質量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL(内径:6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径:7.8mm×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製のポリエチレングリコール、Mp=300000、200000、107000、44900、30000、20000、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
【0096】
<コンクリートの作成>
パン型コンクリートミキサーにて、表1の配合割合に従って、水、セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント製)、フライアッシュ(フライアッシュII種、中部電力製)、粗骨材(青梅産硬質砕石、表乾比重=2.65g/cm)、細骨材(大井川産陸砂、表乾比重=2.62g/cm)、および表2〜5に示す水硬性組成物用強度向上剤を投入し、90秒間混練を行ってコンクリートを作成した。フロー値が400±20mmとなるように、ポリカルボン酸共重合体の添加量の調整を行った。
なお、空気量は消泡剤であるアデカノールLG−299(アデカ製)を添加して2.0%未満となるように調整した。
得られたコンクリートのフロー、28日圧縮強度はそれぞれJIS A 1150、JIS A 1108に従って測定した。
【0097】
【表1】
【0098】
<強度向上率>
同一のコンクリート配合において、本発明の水硬性組成物用添加剤に含まれる強度向上剤を含有していない(ポリカルボン酸系共重合体を含む水硬性材料分散剤のみ)供試体の圧縮強度を基準とし、本発明の強度向上剤を含む水硬性組成物用添加剤を使用した場合の強度向上率を下記式により求めた。
強度向上率(%)=[(強度向上剤を含む添加剤を使用した供試体の圧縮強度)/(強度向上剤を含まない添加剤を使用した供試体の圧縮強度)]×100−100
【0099】
〔製造例1〕
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水231.5g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体552.9g、アクリル酸4.7gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水44.6gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸42.4gを水17.5gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.2g、2−メルカプトプロピオン酸2.0gを水93.3gに溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(1)のGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は35000であった。
【0100】
〔製造例2〕
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水231.5g、2−メチル−2−プロペン−1−オールのエチレンオキシド100モル付加体575.0g、アクリル酸2.5gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水44.6gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸22.5gを水17.5gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.2g、2−メルカプトプロピオン酸3.0gを水93.3gに溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(2)のGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は47000であった。
【0101】
〔製造例3〕
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水300gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。
次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(NKエステルM−450G、新中村化学工業社製)204g、メタクリル酸36g、3−メルカプトプロピオン酸0.90gを水50.0gに溶解させた。
得られたモノマー水溶液を4時間かけて滴下した。モノマー水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム2.8gを水50.0gに溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き80℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(3)のGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は29000であった。
【0102】
〔製造例4〕
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水150.0gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、5%過酸化水素水35.0gを投入した。
温度が58℃で安定した後、アクリル酸200.0gを水30.0gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸2.0g、2−メルカプトプロピオン酸8.0gを水60.0gに溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリアクリル酸(1)のGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は11000であった。
【0103】
〔製造例5〜8〕
使用する2−メルカプトプロピオン酸の量を表2に記載した量に変更した以外は製造例4と同様の操作を行い、ポリアクリル酸(2)〜(5)を得た。
【0104】
【表2】
【0105】
〔実施例1〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例4で得られたポリアクリル酸(1)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(1)を得た。
水硬性組成物用添加剤(1)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0106】
〔実施例2〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例4で得られたポリアクリル酸(1)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(2)を得た。
水硬性組成物用添加剤(2)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0107】
〔実施例3〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例5で得られたポリアクリル酸(2)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(3)を得た。
水硬性組成物用添加剤(3)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0108】
〔実施例4〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例6で得られたポリアクリル酸(3)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(4)を得た。
水硬性組成物用添加剤(4)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0109】
〔実施例5〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例7で得られたポリアクリル酸(4)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(5)を得た。
水硬性組成物用添加剤(5)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0110】
〔実施例6〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例7で得られたポリアクリル酸(4)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(6)を得た。
水硬性組成物用添加剤(6)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0111】
〔実施例7〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例8で得られたポリアクリル酸(5)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(7)を得た。
水硬性組成物用添加剤(7)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0112】
〔比較例1〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)を水硬性組成物用添加剤(C1)とした。
水硬性組成物用添加剤(C1)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0113】
〔比較例2〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と亜硝酸カルシウムとを配合し、水硬性組成物用添加剤(C2)を得た。
水硬性組成物用添加剤(C2)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0114】
〔比較例3〕
表3に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)とトリエタノールアミンとを配合し、水硬性組成物用添加剤(C3)を得た。
水硬性組成物用添加剤(C3)を用いて、各種評価を行った。結果を表3に示した。
【0115】
【表3】
【0116】
表3に示すように、ポリカルボン酸系共重合体(1)を水硬性組成物用添加剤(C1)とした比較例1に比べて、ポリカルボン酸系共重合体(1)にポリアクリル酸(塩)を添加した実施例1−7においては、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができることがわかる。他方、ポリカルボン酸系共重合体(1)に亜硝酸カルシウムを添加した比較例2においては、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果がほとんど発現できておらず、ポリカルボン酸系共重合体(1)にトリエタノールアミンを添加した比較例3においては、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果が比較例1よりも低下していることがわかる。
【0117】
〔実施例8〕
表4に示すように、製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)と製造例7で得られたポリアクリル酸(4)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(8)を得た。
水硬性組成物用添加剤(8)を用いて、各種評価を行った。結果を表4に示した。
【0118】
〔実施例9〕
表4に示すように、製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)と製造例8で得られたポリアクリル酸(5)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(9)を得た。
水硬性組成物用添加剤(9)を用いて、各種評価を行った。結果を表4に示した。
【0119】
〔比較例4〕
表4に示すように、製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)を水硬性組成物用添加剤(C4)とした。
水硬性組成物用添加剤(C4)を用いて、各種評価を行った。結果を表4に示した。
【0120】
【表4】
【0121】
表4に示すように、ポリカルボン酸系共重合体(2)を水硬性組成物用添加剤(C4)とした比較例4に比べて、ポリカルボン酸系共重合体(2)にポリアクリル酸(塩)を添加した実施例8、9においては、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができることがわかる。
【0122】
〔実施例10〕
表5に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例4で得られたポリアクリル酸(1)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(10)を得た。
水硬性組成物用添加剤(10)を用いて、各種評価を行った。結果を表5に示した。
【0123】
〔実施例11〕
表5に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例7で得られたポリアクリル酸(4)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(11)を得た。
水硬性組成物用添加剤(11)を用いて、各種評価を行った。結果を表5に示した。
【0124】
〔実施例12〕
表5に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)と製造例8で得られたポリアクリル酸(5)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(12)を得た。
水硬性組成物用添加剤(12)を用いて、各種評価を行った。結果を表5に示した。
【0125】
〔比較例5〕
表5に示すように、製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)を水硬性組成物用添加剤(C5)とした。
水硬性組成物用添加剤(C5)を用いて、各種評価を行った。結果を表5に示した。
【0126】
【表5】
【0127】
表5に示すように、コンクリート配合2のように、ポゾラン性物質を減らした水硬性組成物に対しても、ポリカルボン酸系共重合体(1)を水硬性組成物用添加剤(C5)とした比較例5に比べて、ポリカルボン酸系共重合体(1)にポリアクリル酸(塩)を添加した実施例10−12においては、水硬性セメントを含有する水硬性組成物の長期硬化性向上効果を十分に発現することができることがわかる。
【0128】
〔比較例6〕
表6に示すように、製造例3で得られたポリカルボン酸系共重合体(3)と製造例7で得られたポリアクリル酸(4)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(C6)を得た。
水硬性組成物用添加剤(C6)を用いて、各種評価を行った。結果を表6に示した。
【0129】
〔比較例7〕
表6に示すように、製造例3で得られたポリカルボン酸系共重合体(3)と製造例8で得られたポリアクリル酸(5)とを配合し、水硬性組成物用添加剤(C7)を得た。
水硬性組成物用添加剤(C7)を用いて、各種評価を行った。結果を表6に示した。
【0130】
【表6】
【0131】
表6に示すように、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体を含まない水硬性組成物用添加剤を用いる比較例6、7においては、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体を含んでいる対応する水硬性組成物用添加剤を用いる実施例5、7、8、9に比べて、フロー値が400±20mmとなるようなポリカルボン酸共重合体の添加量が多くなっており、経済性が悪いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のコンクリート組成物の材料として好適に利用できる。