(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の液晶光変調素子ユニットは、顕微鏡等の光学装置に取り付けられ、光学装置の光学系の波面収差の補正を可能とするものであって、液晶光変調素子ユニットの取り付け状態を保持したまま、アライメント調整を可能とすることを特徴とする。
【0018】
以下、図面を用いて液晶光変調素子ユニットを詳述する。
図1〜
図6を用いて液晶光変調素子ユニットの第1の実施形態を説明する。次に、
図7を用いて液晶光変調素子ユニットの回転規制手段の変形例を説明する。
【0019】
[液晶光変調素子ユニットの第1の実施形態の全体構成の説明:
図1〜
図3]
はじめに、
図1〜
図3を用いて、液晶光変調素子ユニットの全体構成を説明する。
図1は、液晶光変調素子ユニットの外観を示す斜視図であり、
図2は、この液晶光変調素子ユニットの分解斜視図であり、
図3は、液晶光変調素子ユニットの光軸を通る筐体長手方向の断面図である。なお、各図において同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示すように、液晶光変調素子ユニット1は、光軸Zに沿って入射する光学装置の直線偏光の偏光Vが筐体10と液晶ホルダ押え40に挟持された液晶光変調素子20を透過し、位相変調制御された位相変調光Wを出射する。
【0021】
そして、液晶光変調素子ユニット1は、位相変調を可能とするために光学装置の直線偏光の偏光方向と液晶光変調素子の配向方向を一致させるアライメント調整機能と、入射光を位相変調するために液晶光変調素子を制御する外部制御回路に接続する機能を有する。
【0022】
アライメント調整のために、ノブ31を矢印Aあるいは矢印B方向に回動させたときに、液晶光変調素子20が光軸Zを中心に回動できるようになっている。つまり、液晶光変調素子20の配向方向を光軸Zを中心に回転させることができる。
また、位相変調のために、液晶光変調素子20は上述のアライメント調整を行ったとしてもコンタクトプローブ50の一端と電気的に接続されるようになっており、コンタクトプローブ50の他端側は回路基板60、コネクタ61、ケーブル62と電気的に接続されており、外部制御回路に電気的な接続が可能となっている。
すなわち、液晶光学素子20をアライメント調整のために回動できるとともに、外部制御回路に接続される固定配置されたコンタクトプローブ50及び回路基板60と電気的に接続できる構成としているため、光学装置への液晶光変調素子ユニット1の組み込みに当たって、外部の制御回路に接続するために突出するコネクタ61やケーブル62の配回しがアライメント調整や光学装置の操作の邪魔にならない構成とすることが可能となっている。
【0023】
図2、
図3に示すように、液晶光変調素子ユニット1は、主には、上述した回路基板60と、コンタクトプローブ50と、筐体10と、液晶光変調素子20と、液晶ホルダ30と、液晶ホルダ押え40から構成され、液晶光変調素子20は第1の接続電極である接続電極25を、筐体10は第2の接続電極であるコンタクトプローブ50をそれぞれ有している。
図2において筐体10は、部分断面の箇所を表示する。
【0024】
筐体10は、液晶光変調素子20を格納し、液晶光変調素子20と電気的な接続をするためのコンタクトプローブ50と回路基板60を搭載可能な構成であり、開口部11、凹部12、コンタクトプローブ孔13、ネジ孔14を有する。
開口部11は、筐体10上に形成された孔であって、光軸Zを中心とする同心円の形状をしており、光学装置の偏光Vが光軸Zに沿って入射可能となっている。
凹部12は、筐体10の内面に形成されており、光軸Zを中心とする同心円状の下面側に開いた構造となっている。この凹部12は、液晶ホルダ30の収納可能な凹部であって、液晶ホルダ30を光軸Z回りに回動可能に嵌合することができる。
コンタクトプローブ孔13は、液晶光変調素子20に形成された第1の接続電極である接続電極25と第2の接続電極であるコンタクトプローブ50とを電気的に接続可能になる位置に形成されている。コンタクトプローブ50は、このコンタクトプローブ孔13によって位置決めされ、接着することによって、液晶光変調素子20の接続電極25に接触可能な位置に配置される。
ネジ孔14は、回路基板60をネジ63でネジ止めし、そして、液晶ホルダ押え40をネジ44でネジ止めするネジ孔である。
【0025】
液晶光変調素子20は、円板状であって、円板状の上下の透明基板21、22とシールで形成された空間に液晶が充填され、封孔口を封孔部材24で封止されている。透明基板21、22の液晶が充填されている側には透明電極による液晶駆動電極が形成されており、例えば液晶駆動電極をラビング処理などの公知技術を用いることによって、液晶の初期配向方向を揃えることができる。
図2においては、配向方向を矢印Cで示している。液晶光変調素子20の矢印Cの配向方向は、封孔口方向に形成されるのが望ましい。
【0026】
下側の透明基板22は、上側の透明基板21より外径が大きく、その外周縁に液晶を駆動する外部引き出し電極として、例えば、インジウム錫酸化物膜などの透明導電膜からなる接続電極25が複数本、円板の中心の光軸Zを中心軸として円弧状に形成されている。この接続電極25は、第1の接続電極であり、上述した基板21、22に形成された液晶駆動電極とそれぞれ接続されている。そして、この接続電極25は、上述したように、筐体10の孔13に位置決め配置されたコンタクトプローブ50と接触し外部制御回路との電気的な接続が可能となる。
【0027】
液晶ホルダ30は、上述した筐体10の凹部12と嵌合する円盤形状であって、筐体10と対面する側に光軸Zを中心とする同心円状の凹部32を有し、さらに液晶ホルダ30を貫通する開口部33を有している。また、液晶ホルダ30は光軸Zを中心に回動できるようにノブ31を取付可能なネジ孔を有する。
凹部32には、液晶光変調素子20が収納固着される。固着手段は押さえ部材や接着剤などを用いることができるが、接着する場合は、液晶光変調素子20を着脱可能な接着力としておくのが好ましい。ここでは一例として、液晶光変調素子20は、封孔部材24とノブ31の取付け方向とを同じにして収納固着される。
開口部33は、光軸Zを中心とする同心円状の孔であり液晶光学素子20によって光変調された位相変調光Wを出射できるように、液晶光学素子20の光変調領域に対応する大きさの開口形状で形成されている。
ノブ31は、ネジの段付き形状であって、液晶ホルダ30にネジ止めするネジ部311と、指先で操作のしやすい大きさの径のネジ頭で形成されている。
【0028】
液晶ホルダ押え40は、液晶ホルダ30が筐体10から外れないように押さえる役割をする部品であり、筐体10のネジ孔14に対応する位置に開口を有し、下面側から、ネジ44で筐体10のネジ孔14にネジ止めされる。また、液晶ホルダ押え40は、位相変調光Wが通過できるように半円状の切り欠き部41と、ノブ31の回動領域を制限するストッパ部42とを有している。
【0029】
上述した回路基板60と、コンタクトプローブ50と、筐体10と、液晶光変調素子20と、液晶ホルダ30と、液晶ホルダ押え40とを組み立てたときの断面の構成について
図3を用いて説明する。
図3に示すように、液晶ホルダ30は、筐体10の凹部12に嵌合収納され、液晶ホルダ押え40で摺動可能に挟持され、光軸Zを中心としてノブ31で矢印Aあるいは矢印B方向(
図1参照)に回動可能に構成されている。すなわち、液晶ホルダ30は、ノブ31によって光軸Zを中心として液晶光変調素子20の配向方向を回転し、アライメント調整が可能な回転位置調整機構部を形成している。
【0030】
筐体10に位置決め固着されたコンタクトプローブ50は、液晶光変調素子20の下側の透明基板22に形成された接続電極25を弾性的に押圧し電気的な接続を可能とし、その押圧力は液晶ホルダ押え40で支えられている。コンタクトプローブ50にバネピンを用いて、接続電極25に対して押圧力をもたせる構造としてもよい。
【0031】
したがって、光学装置の偏光Vは、筐体10の開口部11を通過し、液晶光変調素子20を透過して外部制御回路からの制御信号で位相変調した位相変調光Wに変換し、液晶光
変調素子20と一体で回動する液晶ホルダ30の開口部33を通過し、そして、液晶ホルダ押え40の切り欠き部41を通過する光路を形成している。
【0032】
[液晶光変調素子と接点機構の説明:
図4、
図5]
次に、液晶光変調素子ユニットの外部接続用ケーブルの位置を固定したまま、液晶光変調素子を光軸回りに回転するアライメント調整を可能とする接点機構について説明する。
図4は、液晶光変調素子20の平面図であり、
図5は、
図3に示す液晶光変調素子ユニット1のコンタクトプローブ50と液晶光変調素子20の接点部分のD部の詳細断面図である。なお、液晶光変調素子20を構成する各層の構造は公知で有るので詳細な説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、液晶光変調素子20は、上述したように、円板状の上下の透明基板21、22とシール23で形成された空間に液晶が充填され、封孔口を封孔部材24で封止されて形成されている。液晶光変調素子20の光変調領域26は、少なくともシール23の内側に形成されている。液晶光変調素子20の外周縁には第1の接続電極である接続電極25が外部引き出し電極として円弧状に形成されている。この接続電極25の円弧の中心軸は光変調領域26の光軸Zと同軸であり、かつ、筐体10の開口部11と液晶ホルダ30の開口部33の光軸Zとも同軸となるように形成されている。また、接続電極25は、光変調領域26に形成された液晶駆動電極とそれぞれ接続されており、接続電極25に電圧を印加することによって液晶を駆動することができる。光変調領域26内において矢印Cで示す液晶の配向方向は、封孔口と一致する方向が望ましい。
【0034】
液晶光変調素子は光軸Zに対して点対称の液晶駆動電極を有しており、液晶のある配向方向に対して、液晶光変調素子を180度回転させたときに得られる位相変調プロファイルは同じであるため、アライメント調整に必要な液晶光変調素子20の光軸Z回りの最大回転角度が180度であるが、それ以上の角度分の接続電極25を形成してもよく、
図4においては、光軸Zを中心軸として円弧状に形成された複数の接続電極25は、封孔口の部分を除いて270度近くの円弧状に形成されている。すくなくとも、液晶光変調素子を回転させたときに同じ位相変調プロファイルを得られる回転角度の分だけ接続電極25を形成すればよい。
【0035】
図5に示すように、第2の接続電極としてコンタクトプローブ50が下側の透明基板22に形成された接続電極25に当接する。そして、上述したように、コンタクトプローブ50は、接続電極25との接触を確実にするためその当接方向に弾性を持って押圧する構成を備えており、その押圧の力を液晶光変調素子20、液晶ホルダ30を介して液晶ホルダ押え40で支える構成を形成している。すなわち、液晶ホルダ押え40は、コンタクトプローブ50が接続電極25に当接する方向に押圧する力を支持する押圧機構部を形成する。
【0036】
そして、接続電極25は、下側の透明基板22に光軸Zを中心として円弧状に形成されているから、
図1で説明したように、ノブ31によって液晶ホルダ30を矢印Aあるいは矢印B方向に回動しても、接続電極25の半径方向の位置が不変で、コンタクトプローブ50との相対位置が変わらず確実な電気的な接続を可能としている。
【0037】
したがって、液晶光変調素子ユニット1は、ケーブル62を操作の邪魔とならない位置に固定されるように配置して、ノブ31だけを矢印Aあるいは矢印B方向に回動して容易なアライメント調整が可能となり、調整後の光学装置での測定や観察の操作性も容易となる。ノブ31の代わりにモータを配置して、筐体10の内部から液晶ホルダ30を回転できるようにすれば、ノブ31による配置上の影響もなくすことができる。
【0038】
[液晶光変調素子ユニットの第1の実施形態の回転規制手段の説明:
図6]
次に、液晶光変調素子の回転規制手段について説明する。
図6は、液晶光変調素子ユニット1の下面側からみた底面の平面図である。
【0039】
図6に示した第1の実施形態の液晶光変調素子ユニット1は、上述したように、液晶光変調素子20の矢印Cで示す配向方向を光学装置の直線偏光の偏光面に一致するように、液晶ホルダ30のノブ31を矢印Aあるいは矢印B方向に回転してアライメント調整を可能としている。
【0040】
このアライメント調整おける液晶ホルダ30の可動角度範囲は、最大で180度の回転角度であるから、点線で示したノブ31の頭が液晶ホルダ押え40のストッパ部42に当接する回転規制手段で、180度の最大可動範囲が形成される。
【0041】
そして、ノブ31の方向に液晶光変調素子20の封孔口を合わせて、液晶光変調素子20を液晶ホルダ30に収納固着することによって、点線で示したノブ31の頭がストッパ部42に当接する位置に達したとしても、コンタクトプローブ50の接触領域51に封孔部材24(
図2参照)が干渉することなく、液晶光変調素子20にダメージを与える危険がない。
【0042】
[液晶光変調素子ユニットの回転規制手段の変形例の説明:
図7]
次に、液晶光変調素子の回転規制手段の第1の実施形態の変形例について説明する。
図7は、
図6と同様に、液晶光変調素子ユニット2の底面の平面図である。
【0043】
この変形例の第1の実施形態と異なる点は、液晶ホルダ押え40にノブ31が回動する軌跡に沿って、溝43が形成されている点である。
【0044】
図7に示すように、液晶光変調素子ユニット2は、液晶ホルダ押え40に段付きネジであるノブ31のネジ部311の径に相当する幅の溝43が形成され、ノブ31が溝43に沿って矢印Aあるいは矢印B方向に回動する構造で形成されている。そして、第1の実施形態と同様に、点線で示したノブ31のネジ部311(
図2参照)が溝43の両端で当接する回転規制手段となり、ノブ31の最大可動範囲が180度に形成されている。したがって、第1の実施形態と同様に、コンタクトプローブ50の接触領域51に封孔部材24(
図2参照)が干渉することなく、液晶光変調素子20にダメージを与える危険がない。
【0045】
更に、アライメント調整後に、ノブ31のネジを締め付けることによって、ノブ31を含め液晶ホルダ30と液晶ホルダ押え40をクランプすることが可能で、誤ってノブ31に触れたとしても、液晶ホルダ30が動くことなく、アライメント調整が狂うこともない。
【0046】
[液晶光変調素子ユニットの第2の実施形態の説明:
図8〜
図10]
次に、
図8から
図10を用いて第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態は、光軸Zを中心として回動する液晶光変調素子に形成される第1の接続電極を円弧状の接続電極とするのではなく、固定した筐体に形成する第2の接続電極を円弧状とする点が第1の実施形態と異なり、他の構成は全く同一である。
図8は、液晶光変調素子の平面図であり、
図9は、液晶光変調素子ユニットの分解斜視図で、
図2で示した分解斜視図の上下を逆にした図であり、
図10は、
図5で示した接点部分と同様の詳細断面図である。なお、各図において同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、第2の実施形態の液晶光変調素子20Aは、
図4で示した液晶光変
調素子20と接続電極の形状が異なるだけで、他は全く同一である。すなわち、液晶光変調素子20Aの下側の透明基板22の外周縁に液晶を駆動するための第1の接続電極として端子電極25A、25Bが端子形状で形成されており、その配置は光軸Zを中心として封孔部材24と対称の位置に形成されている。半径方向外側の端子電極25Bは、内側の端子電極25Aの半径方向に相当する位置を絶縁膜25Cで覆われ、後述する筐体10Aに形成される円弧電極による電気的な短絡を防止している。
【0048】
図9に示すように、液晶光変調素子ユニット3は、筐体10Aの凹部12に、光軸Zを中心として、同心円で円弧状の溝14がコンタクトプローブ孔13(
図2参照)に一致する位置に形成され、その溝14に第2の接続電極である導電性ゴム15が嵌めこまれ固着されている。したがって、同心円で円弧状に形成された導電性ゴム15が光軸Zを中心として回動する液晶光変調素子20Aの端子電極25A、25Bの軌跡と一致して当接し、電気的接続を可能としている。そして、導電性ゴム15の円弧の開口角度はアライメント調整範囲の180度以上の角度で形成されることが望ましい。
【0049】
図10に示すように、筐体10Aの円弧状の溝14に嵌めこまれた導電性ゴム15の第2の接続電極が下側の透明基板22に形成された端子電極25A、25Bに当接する。そして、導電性ゴム15は、端子電極25A、25Bとの接触を確実にするため、当接方向にゴム弾性で押圧し、その押圧の力を液晶光変調素子20Aの下側の透明基板22、液晶ホルダ30を介して液晶ホルダ押え40で支える構成を形成している。すなわち、液晶ホルダ押え40は、導電性ゴム15が端子電極25A、25Bに当接する方向に押圧する力を支持する押圧機構部を形成する。
そして、外部制御回路からの制御信号は、ケーブル、コネクタ、回路基板、そして、コンタクトプローブ50と導電性ゴム15を経由して端子電極25A、25Bから液晶光変調素子20Aに伝達され、位相変調制御される。
【0050】
液晶光変調素子ユニット3は、筐体10Aに固定配置した円弧状の接続電極の導電性ゴム15と、液晶光変調素子20Aの端子電極25A、25Bが当接して接続するので、液晶光変調素子ユニットを固定したまま、液晶光変調素子を回転しても電気的な接続が保たれ、アライメント調整が可能であり、光学装置の波面収差補正を容易に行なうことが可能となる。
【0051】
したがって、本発明の液晶光変調素子ユニットは、外部接続用のコネクタ及びケーブルを光学装置の測定や観察の邪魔とならない位置に配置し固定したまま、液晶光変調素子の配向方向を光軸回りに回転するアライメント調整が容易であり、光学装置の波面収差補正を容易に行なうことが可能となり、その後の光学装置での測定や観察の操作性も容易となる。
【0052】
なお、液晶光変調素子の透明基板を円板状として説明を行ったが、これに限定されず、矩形形状でもよいし、六角形の形状や八角形の形状としてもよい。このとき、液晶ホルダにおける凹部の形状を液晶光変調素子が収まるようにしておけばよい。
【0053】
なお、本発明は、上述した液晶光変調素子ユニットの実施例に限定されることはなく、それらの全てを行う必要もなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した内容の範囲で種々に変更や省略をすることができることは言うまでもない。