特許第6649820号(P6649820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649820筆記芯把持チャックおよびシャープペンシル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649820
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】筆記芯把持チャックおよびシャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/22 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   B43K21/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-50731(P2016-50731)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-164936(P2017-164936A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】新藤 孝範
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−031827(JP,U)
【文献】 実開昭61−040292(JP,U)
【文献】 実公昭38−003737(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00−21/26
B43K 24/00−24/18
B43K 27/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、
前記第1チャック片には軸芯に直交する断面がV字状に形成された芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面状態に構成された芯把持部が形成され、
前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも深く形成されていて、前記第1チャック片に施されたV字状の芯把持部の二点と、前記第2チャック片に施された平面状態の芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持することを特徴とする筆記芯把持チャック。
【請求項2】
先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、
前記第1チャック片には軸芯に直交する断面が、把持する筆記芯の曲率よりも大きな湾曲面による芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面状態に構成された芯把持部が形成され、
前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも深く形成されていて、前記第1のチャック片に施された湾曲面による芯把持部の一点と、前記第2のチャック片に施された平面状態の芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持することを特徴とする筆記芯把持チャック。
【請求項3】
先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、
前記第1チャック片には軸芯に直交する断面が、把持する筆記芯の曲率よりも大きな湾曲面による芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面もしくは前記第1のチャック片に施された芯把持部の湾曲面よりも曲率がさらに大きな湾曲面による芯把持部が形成され、
前記第1のチャック片に施された湾曲面による芯把持部の一点と、前記第2のチャック片に施された平面もしくは湾曲面による芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持することを特徴とする筆記芯把持チャック。
【請求項4】
前記筆記芯把持チャックが、弾性を有する樹脂素材により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の筆記芯把持チャック。
【請求項5】
前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも浅く形成され、前記第2チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも浅い凹みの内底部に形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の筆記芯把持チャック。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の筆記芯把持チャックを備えたことを特徴とするシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノック部材の操作により筆記芯が順次繰り出されるシャープペンシルに関し、特に筆記芯を把持するチャックに改良を施した筆記芯把持チャックおよびシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルは周知のとおり、例えば軸筒の尾端部に配置されたノック部材をノック操作することにより、軸筒前端部の口先部より筆記芯を順次繰り出すことができるように作用する。この筆記芯の繰り出しならびに筆記芯を把持する機能を果すために、口先部付近に筆記芯把持チャック(以下、単にチャックとも呼ぶ。)が配置されている。
このチャックは金属あるいは樹脂素材により形成されており、特に低価格帯向けの商品については、大量生産が可能な樹脂素材によるものが採用されている。
【0003】
このような樹脂素材により成形されたチャックによると、金属によるチャックに比較して、筆記芯の把持力が十分ではない。したがって、前記把持力を補うためにチャックの芯把持部における曲率半径を、使用する芯の半径よりも若干小さく形成させたチャックの構成が特許文献1の図6に開示されている。
【0004】
この構成によると、筆記芯にチャックの角が食い込むように作用するので、チャックによる筆記芯の把持力を増加させることができる。しかしながら前記したチャックの構成によると、筆記芯が折損し易いので、特許文献1にはこの問題を改善することについての開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−280683号公報
【0006】
ところで、特許文献1に開示された樹脂製のチャックは、先端部が3分割された構成であり、このような3分割のチャックは、これを樹脂成形する金型が複雑化し、これに基づく離型の問題や、その他の技術的な問題が発生しやすい。したがってこのような技術的な問題を回避するには、2分割のチャックとすることが望ましい。しかしながら2分割のチャックを樹脂成形するにあたっては、次に示すような別の技術的な課題が発生する。
【0007】
すなわち、2分割のチャックは、その軸芯に沿った面を境にして先端部が上下に分割されることになる。そして、従来より上下に分れた各チャック片の芯把持部には、軸方向に沿ってV字状の溝が対向するようにして形成されている。
このように軸方向にV字状の溝(芯把持部)を互いに対向するようにして形成させるには、チャックの樹脂成形時においてチャックの中心部に配置されるコアピンの加工精度を高める必要がある。
【0008】
一般に、樹脂成形時においてチャックの中心部に配置される前記コアピンを機械加工するには、先ずコアピンとなる素材の軸芯に沿った半周面に逆V字状の切削加工が施される。その後に、素材を180度軸回転させて、同様に残りの半周面に逆V字状の切削加工を施すことで、前記コアピンが成形される。
したがって、コアピンの軸を中心とした上半部と下半部における逆V字状の溝位置に、機械加工上においてずれが生じ易いという問題が発生する。
【0009】
図8Aおよび図8Bは、前記したコアピンを利用してチャック5を樹脂成形した例を示している。
すなわち、チャック5の先端部が上下に分割されて第1チャック片5aと第2チャック片5bになされ、各チャック片5a,5bの内面に断面がV字状の芯把持部5e,5fがそれぞれ対向して形成されている。
そして図8Aは、上下のV字状の芯把持部5e,5fに水平方向のずれのない理想的な状態を示したチャックの断面図であり、図8Bは、上下のV字状の芯把持部5e,5fにずれが生じた場合の例を、軸方向に直交する方向の断面図で示している。なお図に示す筆記芯Lの直径は、0.5mmである。
【0010】
上下のV字状の芯把持部5e,5fにずれのない理想的な状態のチャック5は、図8Aに示すように、上下のチャック片5a,5bにそれぞれ施された対向するV字状の四点で、筆記芯Lが把持されることになる。
これに対して、上下のV字状の芯把持部5e,5fにずれが生じたチャック5によると、図8Bに示すように、上下のチャック片5a,5bにそれぞれ施されたV字状の芯把持部5e,5fの対角線上の2点で、筆記芯Lが把持されることになる。このためにチャック5に把持された状態の筆記芯Lの位置は安定せずに、しかも筆記芯Lには剪断力が働き、筆記芯Lはチャック5において頻繁に折損するという問題が発生する。
【0011】
なお、前記した上下のV字状の芯把持部5e,5fの位置ずれは、たとえコアピンの仕上がり精度が高くても、樹脂の冷却時の引けによって生ずる場合もあり、チャック5における筆記芯Lの折損は、前記したコアピンの仕上がり精度の向上のみでは解決し得ない問題も含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、2分割されたチャック片において、第1と第2のチャック片に機械的なずれが生じても、常に安定した状態で筆記芯を把持することができる筆記芯把持チャックを提供しようとするものであり、これにより、筆記芯の折損を効果的に防止し得るシャープペンシルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る筆記芯把持チャックの第1の好ましい形態は、先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、前記第1チャック片には軸芯に直交する断面がV字状に形成された芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面状態に構成された芯把持部が形成され、前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも深く形成されていて、前記第1チャック片に施されたV字状の芯把持部の二点と、前記第2チャック片に施された平面状態の芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持するように構成される。
【0014】
また、この発明に係る筆記芯把持チャックの第2の好ましい形態は、先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、前記第1チャック片には軸芯に直交する断面が、把持する筆記芯の曲率よりも大きな湾曲面による芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面状態に構成された芯把持部が形成され、前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも深く形成されていて、前記第1のチャック片に施された湾曲面による芯把持部の一点と、前記第2のチャック片に施された平面状態の芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持するように構成される。
【0015】
さらに、この発明に係る筆記芯把持チャックの第3の好ましい形態は、先端部で2つに分割されて第1と第2チャック片が備えられた筆記芯把持チャックであって、前記第1チャック片には軸芯に直交する断面が、把持する筆記芯の曲率よりも大きな湾曲面による芯把持部が形成されると共に、前記第2チャック片には軸芯に直交する断面が平面もしくは前記第1のチャック片に施された芯把持部の湾曲面よりも曲率がさらに大きな湾曲面による芯把持部が形成され、前記第1のチャック片に施された湾曲面による芯把持部の一点と、前記第2のチャック片に施された平面もしくは湾曲面による芯把持部の一点で、前記筆記芯を把持するように構成される。
【0016】
この場合、前記した第1形態〜第3形態による筆記芯把持チャックは、望ましくはいずれも弾性を有する樹脂素材により構成される。
【0017】
また、前記した第3形態による筆記芯把持チャックは、一つの好ましい形態として、前記第1チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも浅く形成され、前記第2チャック片に形成された芯把持部は、把持する筆記芯の半径よりも浅い凹みの内底部に形成される。
【0018】
そして、前記した筆記芯把持チャックを採用したシャープペンシルによれば、次に示す発明の効果の欄に記載した独自の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、先端部で2つに分割された筆記芯把持チャックにおいて、対向する第1と第2のチャック片に成形上においてたとえずれが生じても、第1と第2のチャック片における各芯把持部の組み合わせ構成を前記したように選定することで、常に安定した状態で筆記芯を把持することができる。
したがって、筆記芯の折損を効果的に防止し得るシャープペンシルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係るシャープペンシルの全体構成を示した中央断面図である。
図2図1に示すシャープペンシルの口先部分の拡大断面図である。
図3A】筆記芯把持チャックの全体構成を示した上面図である。
図3B図3AにおけるA−A線より矢印方向に見た断面図である。
図3C】筆記芯把持チャックの全体構成を示した正面図である。
図3D】筆記芯把持チャックの左側面図である。
図4A】第1例のチャック片にずれのない状態を示した模式図である。
図4B】第1例のチャック片にずれが生じた場合の模式図である。
図5A】第2例のチャック片にずれのない状態を示した模式図である。
図5B】第2例のチャック片にずれが生じた場合の模式図である。
図6】第3例のチャック片を示した模式図である。
図7】第4例のチャック片を示した模式図である。
図8A】従来のチャックにおけるチャック片にずれのない状態を示した模式図である。
図8B】従来のチャックにおけるチャック片にずれが生じた場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明に係るシャープペンシルについての全体構成を図に基づいて説明した後に、これに用いられる筆記芯把持チャックの好ましい例について説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
【0022】
図1および図2に示すシャープペンシルは、その外郭が樹脂製の軸筒1により構成されており、軸筒1の前半部は若干縮径されて、その外周にグリップ部材2が取り付けられている。
符号3は、前記軸筒1の先端部に取り付けられた口先部を示しており、この口先部3の後端部内周面に形成された雌ねじが、前記軸筒1の前端部外周面に形成された雄ねじに螺合されている。
【0023】
前記軸筒1内には筒状の芯ケース4が軸筒1と同軸状に収容されており、この芯ケース4の先端部内周面には、チャック5の後端部が嵌合されて連結されている。
このチャック5は全体が弾性を有する樹脂素材により構成され、その軸心に沿って通孔が形成されている。またチャック5の先端部は2つに分割されて、分割された先端部がリング状に形成された金属製の締め具6内に遊嵌されるようにして装着されている。そしてリング状の前記締め具6は、前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された円筒状に形成されたチャック収容体7の先端部内面に装着されている。
【0024】
前記口先部3より突出するようにして先端パイプ8が配置されており、この先端パイプ8の基端部は前記口先部2内に位置する樹脂製の保持チャック9の先端部内面に嵌合されて取り付けられている。
前記樹脂製の保持チャック9は、図2に拡大して示したように、軸心部分に芯挿通孔が形成されると共に、この芯挿通孔の外側に軸方向に沿って円環状の溝9aが施されている。この構成により保持チャック9は、軸心部分の芯挿通孔に位置する図示せぬ筆記芯に対して軽い摩擦を与えた状態で、筆記芯を一時的に保持する作用を果す。
【0025】
一方、円筒状のチャック収容体7の後端部と、芯ケース4との間の軸方向の空間部には、コイル状のチャックスプリング11が配置されている。このチャックスプリング11の作用により、チャック収容体7内のチャック5は、芯ケース4と共に軸筒1内で後退する方向に付勢されている。
これにより、前記チャック5の先端部は、リング状の締め具6内に収容され、筆記芯は前記チャック5に把持された状態に保たれる。
【0026】
なお、前記軸筒1の後端部には、クリップ支持体1aが軸筒1と一体に形成されており、この支持体1aを利用して、クリップ13が軸筒1に沿って取り付けられている。また軸筒1の後端部に突出する前記芯ケース4の尾端部には、消しゴム14が芯補給口を覆うようにして着脱可能に装着されている。そして、この消しゴム14の外側を覆うようにして、ノックカバー15が芯ケース4に取り付けられており、前記ノックカバー15は軸筒1の後端部に突出するようにして配置されており、ノックカバー15はノック操作部の機能を果すものとなる。
【0027】
図1に示すシャープペンシルにおいては、軸筒1の後端部に突出するノック操作部(ノックカバー15)をノック操作することで、前記芯ケース4が軸筒1内において前進し、これに連結されたチャック5も図示せぬ筆記芯を把持した状態で前進する。そして、チャック5の先端部が締め具6から突出することで、チャックが開いて筆記芯の把持状態が解除される。また前記ノック操作の解除により、チャックスプリング11の作用によりチャック5、芯ケース4は軸筒1内において後退する。
【0028】
この時、筆記芯は保持チャック9の通孔において摩擦により一時的に保持される。この状態でチャック5は後退して、その先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯は再びチャック5によって把持される。
すなわち、前記したノック操作部へのノック操作の繰り返しによる前記チャック5の前後運動により、チャック5は筆記芯の解除と把持を行い、これにより筆記芯は先端パイプ8から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0029】
図3A図3Dは、筆記芯把持チャック5の単体を拡大して示したものである。このチャック5は、前記したとおり全体が弾性を有する樹脂素材、例えばポリアセタール、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いて成形される。
また、チャック5の先端部(前半部)は、軸方向に沿って上下2つに分割されることで、第1チャック片5aと第2チャック片5bが備えられている。そしてチャック5の後半部は、前記した芯ケース4に嵌合して取り付けられる嵌合軸5cを構成しており、この円筒状の嵌合軸5cの軸芯部分には、筆記芯の挿通孔5dが形成されている。
【0030】
さらに、上下に対向する第1および第2チャック片5a,5bの各内側面には、前記した芯挿通孔5dに挿通される筆記芯の芯把持部5e,5fが形成されている。
なお、図3A図3Dに示すチャック5においては、芯把持部5e,5fとして断面がそれぞれV字状に形成された構成が例示されている。
樹脂成形により先端部が2分割されるチャック5における芯把持部5e,5fの理想的な組み合わせ構成については、図4図7に基づいて、この後に説明する。
【0031】
図4Aおよび図4Bは、その第1の例を断面図で示したものであり、この例は第1チャック片5aに形成される第1芯把持部5eは、軸芯に直交する断面がV字状に形成されている。この場合、V字状に形成された第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの半径より浅く形成されている。また第2チャック片5bに形成される第2芯把持部5fは、把持する筆記芯Lの半径よりも浅い凹み5gの内底部に、軸芯に直交する断面が平面状となるように形成されている。
なお前記凹み5gの内底部に形成される第2芯把持部5fは、筆記芯Lの曲率よりも遥かに大きな曲率を有する湾曲面により構成されていてもよい。
【0032】
そして図4Aは、上下の芯把持部5e,5fの間で水平方向にずれのない理想的な状態を示したチャック5の断面図であり、図4Bは、上下の芯把持部5e,5fにずれが生じた場合の例を、軸方向に直交する方向の断面図で示している。
上下の芯把持部5e,5fにずれのない理想的な状態のチャック5は、図4Aに示すように、第1チャック片5aに施されたV字状の芯把持部5eの二点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは湾曲面による芯把持部5fの一点で、前記筆記芯Lを把持することになる。なお図に示す筆記芯Lの直径は、0.5mmである。
【0033】
一方、この第1の例によると、上下の芯把持部5e,5fにたとえずれが生じても、図4Bに示すように第1チャック片5aに施されたV字状の芯把持部5eの二点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは湾曲面による芯把持部5fの一点で、前記筆記芯Lを把持することができる。したがって、チャック5に把持された筆記芯Lの位置は安定し、筆記芯Lに不要な剪断力が働くのを回避できるので、筆記芯Lの折損を防止することができる。
【0034】
図5Aおよび図5Bは、その第2の例を断面図で示したものであり、この例は第1チャック片5aに形成される第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの曲率よりも僅かに大きな湾曲面により構成されている。この場合、湾曲面により構成された第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの半径より浅く構成されている。また第2チャック片5bに形成される第2芯把持部5fは、把持する筆記芯Lの半径よりも浅い凹み5gの内底部に、軸芯に直交する断面が平面状となるように形成されている。
なお前記凹み5gの内底部に形成される第2芯把持部5fは、前記第1のチャック片5aに施された芯把持部5eの湾曲面よりも曲率がさらに遥かに大きな湾曲面により構成されていてもよい。
【0035】
そして図5Aは、上下の芯把持部5e,5fの間で水平方向にずれのない理想的な状態を示したチャック5の断面図であり、図5Bは、上下の芯把持部5e,5fにずれが生じた場合の例を、軸方向に直交する方向の断面図で示している。
上下の芯把持部5e,5fにずれのない理想的な状態のチャック5は、図5Aに示すように、第1チャック片5aに施された湾曲面による芯把持部5eの一点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは湾曲面による芯把持部5fの一点で、前記筆記芯Lを把持することになる。なお図に示す筆記芯Lの直径は、0.5mmである。
【0036】
一方、この第2の例によると上下の芯把持部5e,5fにたとえずれが生じても、図5Bに示すように第1チャック片5aに施された湾曲面による芯把持部5eの一点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは湾曲面による芯把持部5fの一点で、前記筆記芯Lを把持することができる。
この第2の例においても第1の例と同様に、チャック5に把持された筆記芯Lの位置は安定し、筆記芯Lに不要な剪断力が働くのを回避できるので、筆記芯Lの折損を防止することができる。
【0037】
図6は、第3の例を同様の断面図で示したものであり、この図6に示すチャック5の第3の例は、第1チャック片5aに形成される第1芯把持部5eは、軸芯に直交する断面がV字状に形成されている。この場合、V字状に形成された第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの半径より深く形成されている。一方、第2チャック片5bに形成される第2芯把持部5hは、平面状となるように構成されている。
すなわち、第1芯把持部5eを形成するV字状の二辺に対して、第2芯把持部5hの面が底辺となる二等辺三角形を構成している。
なお、前記第2芯把持部5hは、図に示すような平面状ではなく、把持する筆記芯Lの曲率よりも遥かに大きな曲率を有する湾曲面により構成されていてもよい。
【0038】
この図6に示す第3の例によると、筆記芯Lは第1チャック片5aに施されたV字状の芯把持部5eの二点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは大きな曲率の湾曲面による芯把持部5fの一点で把持される。
そして、上下の芯把持部5e,5fにずれがない状態、およびずれが生じた場合のいずれにおいても、前記した筆記芯Lの把持態様に変化は生じない。
したがって、この第3の例においても、前記した第1の例および第2の例と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
図7は、第4の例を断面図で示したものであり、この図7に示すチャック5の第4の例は、第1チャック片5aに形成される第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの曲率よりも僅かに大きな湾曲面により構成されている。この場合、湾曲面になされた第1芯把持部5eは、把持する筆記芯Lの半径より深く形成されている。一方、第2チャック片5bに形成される第2芯把持部5hは、平面状となるように構成されている。
なお、前記第2芯把持部5hは、図に示すような平面状ではなく、把持する筆記芯Lの曲率よりも遥かに大きな曲率を有する湾曲面により構成されていてもよい。
【0040】
この図7に示す例によると、筆記芯Lは第1チャック片5aに施された湾曲面による芯把持部5eの一点と、第2チャック片5bに施された平面もしくは大きな曲率の湾曲面による芯把持部5hの一点で把持される。
そして、上下の芯把持部5e,5fにずれがない状態、およびずれが生じた場合のいずれにおいても、前記した筆記芯Lの把持態様に変化は生じない。
したがって、この第4の例においても、前記した第1の例および第2の例と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
斯くして、この発明に係る筆記芯把持チャックによると、対向する第1と第2のチャック片に樹脂成形上においてたとえずれが生じても、常に安定した状態で筆記芯を把持することができる。したがって、このチャックをシャープペンシルに利用することで、筆記芯の折損を効果的に防止し得るシャープペンシルを提供することができるなど、発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 軸筒
2 グリップ部材
3 口先部
4 芯ケース
5 チャック
5a 第1チャック片
5b 第2チャック片
5c 嵌合軸
5d 筆記芯挿通孔
5e 第1芯把持部
5f 第2芯把持部
5g 凹み
5h 平面状芯把持部
6 締め具
7 チャック収容体
8 先端パイプ
9 保持チャック
11 チャックスプリング
13 クリップ
14 消しゴム
15 ノックカバー
L 筆記芯
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B