特許第6649841号(P6649841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649841
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】共振器及び誘電体フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/08 20060101AFI20200210BHJP
   H01P 1/203 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   H01P7/08
   H01P1/203
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-85911(P2016-85911)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-195565(P2017-195565A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201777
【氏名又は名称】双信電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】元山 洋人
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−060901(JP,A)
【文献】 特開2011−109449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20− 1/219
H01P 7/00− 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一主面に遮蔽導体が形成され、第1側面に第1入出力端子が形成され、前記第1側面と対向する第2側面に第2入出力端子が形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板内に形成されたストリップ線路と、
前記誘電体基板内に形成され、前記ストリップ線路から前記遮蔽導体にかけて隣接して形成された第1ビア電極部及び第2ビア電極部と、を有し、
前記誘電体基板の側面のうち、前記第1ビア電極部に対向する第3側面と、前記第2ビア電極部に対向する第4側面にそれぞれ遮蔽導体が形成され、
前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極から構成され、
前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極から構成され、
前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在せず、
前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線に沿って配列され、
前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線に沿って配列されていることを特徴とする共振器。
【請求項2】
請求項1記載の共振器において、
前記第1湾曲線と前記第2湾曲線は、1つの楕円の輪郭線の一部又は1つのトラック形状の輪郭線の一部を構成していることを特徴とする共振器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の共振器において、
前記第1ビア電極部は、前記ストリップ線路と共に、第1λ/4共振器を構成し、
前記第2ビア電極部は、前記ストリップ線路と共に、第2λ/4共振器を構成することを特徴とする共振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に、他のストリップ線路が形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項5】
少なくとも一主面に遮蔽導体が形成され、第1側面に第1入出力端子が形成され、前記第1側面と対向する第2側面に第2入出力端子が形成された誘電体基板と、
前記誘電体基板内に形成された少なくとも2つの共振器本体とを有し、
各前記共振器本体は、
ストリップ線路と、
前記ストリップ線路から前記遮蔽導体にかけて隣接して形成された第1ビア電極部及び第2ビア電極部と、を有し、
前記誘電体基板の側面のうち、前記第1ビア電極部に対向する第3側面と、前記第2ビア電極部に対向する第4側面にそれぞれ遮蔽導体が形成され、
前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極から構成され、
前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極から構成され、
前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在せず、
前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線に沿って配列され、
前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線に沿って配列され、
一方の前記共振器本体と他方の前記共振器本体とが結合されていることを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項6】
請求項5記載の誘電体フィルタにおいて、
一方の前記共振器と他方の前記共振器とが電磁界結合されていることを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項7】
請求項5記載の誘電体フィルタにおいて、
一方の前記共振器と他方の前記共振器とがストリップ線路で直接接続されていることを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項8】
請求項5記載の誘電体フィルタにおいて、
一方の前記共振器と他方の前記共振器とが磁界結合されていることを特徴とする誘電体フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器及び誘電体フィルタに関し、例えば誘電体に形成されたビアホールによる共振器及び共振器を多段化して構成された誘電体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振器100として、例えば図19Aに示すように、周囲に遮蔽導体102が形成された誘電体基板104の内部に板状の中心導体106を形成した構成がある。この共振器100は、電流が中心導体106の端部に集中し、Q値が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、従来では、Q値の低下を抑えるために、図19Bに示すように、周囲に遮蔽導体102が形成された誘電体基板104に横断面形状が円形状のビアホールによる電極(以下、ビア電極108という)を形成するようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
また、従来では、誘電体基板の下面に2つの接地電極と入出力電極を形成し、誘電体内に板状の内部電極を形成し、さらに、誘電体内に、2つの接地電極と内部電極間にビア電極をそれぞれ形成し、入出力電極と内部電極間にビア電極を形成するようにしている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、従来では、誘電体基板の下面のみにグランド用導体層を形成し、このグランド用導体層上にビア電極(グランド接続路)を介してストリップ線路(インダクタ構成部)を形成するようにしている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−009513号公報
【特許文献2】特許第4506903号公報
【特許文献3】特許第4985999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1及び2に記載のビア電極は、径を大きくすることで、電流密度を低下させることができ、Q値の向上が期待できる。しかし、ビア電極の径を大きくすると、ビア電極と遮蔽導体との距離が小さくなり、Q値が低下するという問題がある。すなわち、ビア電極と遮蔽導体との距離もQ値の最適解に関係するため、共振器の設計において考慮する必要がある。
【0008】
ビア電極の径を大きくすると、共振器を多段化して誘電体フィルタを構成する場合において、共振器間に電気壁が発生し、Q値の劣化につながるため、隣り合う共振器との間隔も考慮する必要がある。誘電体フィルタでは、必ず受給電や結合調整のための電極パターン(線路)の配置が必要となるが、この場合、ビア電極と側面の遮蔽導体との間に配置する必要がある。これは、ビア電極からの磁界の広がりを妨げながら電極パターンを配置することになるため、Q値の劣化、不要な結合の発生につながるという問題がある。
【0009】
しかも、誘電体基板に径の大きいビア電極を形成すると、誘電体基板の構造欠陥、すなわち、クラックの発生の原因になるおそれがある。また、複数のビア電極の径のばらつきも大きくなることから、共振器のインピーダンスにばらつきが生じるという問題もある。
【0010】
特に、特許文献2記載の共振器は、その課題解決上、誘電体基板の下面に入出力端子を形成してビア電極と接続するようにしている。この場合、誘電体基板の下面に遮蔽導体を形成することが困難となり、電磁シールドが不十分になるおそれがある。
【0011】
一方、特許文献3記載の共振器において、TEM波の共振器として動作する部分はストリップ線路に限定されている。つまり、ビア電極はストリップ線路と平行に配置されたグランド用導体層とを接続する機能を有するに過ぎない。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、共振器として機能するビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる共振器及び誘電体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1] 第1の本発明に係る共振器は、以下の特徴を有する。すなわち、少なくとも一主面に遮蔽導体が形成され、第1側面に第1入出力端子が形成され、前記第1側面と対向する第2側面に第2入出力端子が形成された誘電体基板と、前記誘電体基板内に形成されたストリップ線路と、前記誘電体基板内に形成され、前記ストリップ線路から前記遮蔽導体にかけて隣接して形成された第1ビア電極部及び第2ビア電極部と、を有する。
【0014】
さらに、前記誘電体基板の側面のうち、前記第1ビア電極部に対向する第3側面と、前記第2ビア電極部に対向する第4側面にそれぞれ遮蔽導体が形成され、前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極から構成され、前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極から構成されている。
【0015】
また、前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在せず、前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線に沿って配列され、前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線に沿って配列されている。
【0016】
これにより、先ず、誘電体基板の側面のうち、第1ビア電極部に対向する第3側面と、第2ビア電極部に対向する第4側面にそれぞれ遮蔽導体を形成したので、第1ビア電極部及び第2ビア電極部は、側面の遮蔽導体と共にTEM波の共振器として動作する。すなわち、第1ビア電極部及び第2ビア電極部が、側面の遮蔽導体を参照したTEM波の共振器として動作する。そして、第1ビア電極部及び第2ビア電極部からそれぞれ対向する遮蔽導体に向かって磁界が広がり、第1ビア電極部と第2ビア電極部間に電磁界が疎になった領域が形成される。
【0017】
従来は、ビア電極と側面の遮蔽導体との間に、ビア電極からの磁界の広がりを妨げながら、受給電や結合調整をするためのパターン(線路)を配置していた。そのため、Q値の劣化や、不要な結合が発生していた。
【0018】
しかし、第1の本発明では、上述した電磁界が疎になった領域、すなわち、第1ビア電極部と第2ビア電極部間に、受給電や結合調整をするためのパターン(線路)を形成することが可能となるため、Q値の劣化を抑制することができ、しかも、不要な結合を抑制することができる。
【0019】
このように、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、ビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0020】
[2] 第1の本発明において、前記第1湾曲線と前記第2湾曲線は、1つの楕円の輪郭線の一部又は1つのトラック形状の輪郭線の一部を構成していてもよい。
【0021】
これにより、第1ビア電極部と第2ビア電極部は、1つの楕円の輪郭線の一部又は1つのトラック形状の輪郭線の一部、すなわち、楕円又はトラック形状の長軸上の各端部に形成されることになる。この部分は、高周波電流の表皮効果により、電流が集中する部分でもある。すなわち、第1ビア電極部と第2ビア電極部に集中して電流が流れる。そのため、第1ビア電極部と第2ビア電極部との間に、他のビア電極部を配置する必要がなくなる。
【0022】
[3] 第1の本発明において、前記第1ビア電極部は、前記ストリップ線路と共に、第1λ/4共振器を構成し、前記第2ビア電極部は、前記ストリップ線路と共に、第2λ/4共振器を構成してもよい。これにより、第1λ/4共振器と第2λ/4共振器には常に同相の電流が流れることとなる。同相となることで、共振器単体で見た場合、第1ビア電極部と第2ビア電極部との間は電磁界が疎の状態になり、その間に結合や引き回しのための電極を配置しても不要な結合を極力抑えることができる。その結果、Q値の劣化防止、ばらつき抑制の効果を奏する。
【0023】
[4] 第1の本発明において、前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に、他のストリップ線路が形成されていてもよい。上述したように、第1ビア電極部と第2ビア電極部間に電磁界が疎になった領域が形成される。その結果、第1ビア電極部と第2ビア電極部との間に、他のストリップ線路、例えば受給電や結合調整をするためのパターン(線路)を形成することが可能となり、Q値の劣化を抑制することができ、しかも、不要な結合を抑制することができる。
【0024】
[5] 第2の本発明に係る誘電体フィルタは、以下の特徴を有する。すなわち、少なくとも一主面に遮蔽導体が形成され、第1側面に第1入出力端子が形成され、前記第1側面と対向する第2側面に第2入出力端子が形成された誘電体基板と、前記誘電体基板内に形成された少なくとも2つの共振器本体とを有する。
【0025】
各前記共振器本体は、ストリップ線路と、前記ストリップ線路から前記遮蔽導体にかけて隣接して形成された第1ビア電極部及び第2ビア電極部と、を有する。
【0026】
さらに、前記誘電体基板の側面のうち、前記第1ビア電極部に対向する第3側面と、前記第2ビア電極部に対向する第4側面にそれぞれ遮蔽導体が形成され、前記第1ビア電極部は、複数の第1ビア電極から構成され、前記第2ビア電極部は、複数の第2ビア電極から構成されている。
【0027】
また、前記第1ビア電極部と前記第2ビア電極部との間に他のビア電極部が存在せず、前記複数の第1ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線に沿って配列され、前記複数の第2ビア電極は、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線に沿って配列され、一方の前記共振器本体と他方の前記共振器本体とが結合されている。
【0028】
これにより、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、ビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
[6] 第2の本発明において、一方の前記共振器と他方の前記共振器とが電磁界結合されていてもよい。一方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域と、他方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域を利用して、共振器同士を容量結合するためのストリップ線路を形成することができる。すなわち、Q値の劣化の抑制や、不要な結合の抑制を図りながらも、一方の前記共振器と他方の前記共振器とを電磁界結合することができる。
【0030】
[7] 第2の本発明において、一方の前記共振器と他方の前記共振器とがストリップ線路で直接接続されていてもよい。この場合、一方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域と、他方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域を利用して、一方の共振器と他方の共振器間の結合調整をするためのパターン(線路)を形成することができる。
【0031】
[8] 第2の本発明において、一方の前記共振器と他方の前記共振器とが磁界結合されていてもよい。この場合も、一方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域と、他方の共振器における上述した電磁界が疎になった領域を利用して、一方の共振器と他方の共振器間の結合調整をするためのパターン(線路)を形成することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る共振器及び誘電体フィルタによれば、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、ビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施の形態に係る共振器を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る共振器を示す斜視図である。
図3図3A図1におけるIIIA−IIIA線上の断面図であり、図3B図1におけるIIIB−IIIB線上の断面図である。
図4】第1ビア電極部を構成する複数の第1小径ビア電極の配列状態と、第2ビア電極部を構成する複数の第2小径ビア電極の配列状態を示す説明図である。
図5図5Aは横断面形状が円形状のビア電極である場合の問題を示す説明図であり、図5Bは横断面形状が楕円形状のビア電極の有利な点を示す説明図である。
図6図6Aは楕円形状のビア電極を複数の小径ビア電極で構成した例を示す説明図であり、図6Bは楕円形状のビア電極において、電流が集中する部分のみに小径ビア電極を配列させた例を示す説明図である。
図7図7Aは楕円形状のビア電極の問題点を示す説明図であり、図7Bは楕円形状のビア電極を複数の小径ビア電極で構成した場合の問題点を示す説明図である。
図8】楕円形状のビア電極において、電流が集中する部分のみに小径ビア電極を配列させた場合の利点を示す説明図である。
図9図9Aは本実施の形態に係る共振器を示す等価回路図であり、図9Bは共振器の電流の流れを示す説明図である。
図10】変形例に係る共振器を示す断面図である。
図11】第1の実施の形態に係る誘電体フィルタ(第1誘電体フィルタ)の構成を示す斜視図である。
図12図11におけるXII−XII線上の断面図である。但し、誘電体基板の断面ハッチングの表示を省略した。
図13】第1誘電体フィルタの変形例の構成を示す斜視図である。
図14図13におけるXIV−XIV線上の断面図である。但し、誘電体基板の断面ハッチングの表示を省略した。
図15】第1誘電体フィルタを示す等価回路図である。
図16】第2の実施の形態に係る誘電体フィルタ(第2誘電体フィルタ)の構成を示す斜視図である。
図17図16におけるXVII−XVII線上の断面図である。但し、誘電体基板の断面ハッチングの表示を省略した。
図18】第2誘電体フィルタを示す等価回路図である。
図19図19Aは従来の共振器の一例を示す断面図であり、図19Bは従来の共振器の他の例を示す断面図である。但し、誘電体基板の断面ハッチングの表示を省略した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る共振器及び誘電体フィルタの実施の形態例を図1図18を参照しながら説明する。
【0035】
先ず、本実施の形態に係る共振器10は、図1図2並びに図3A及び図3Bに示すように、少なくとも上部及び下部にそれぞれ遮蔽導体12U及び12Bが形成された誘電体基板14と、該誘電体基板14内に形成され、上部の遮蔽導体12Uと対向するストリップ線路16と、誘電体基板14内に形成され、ストリップ線路16から下部の遮蔽導体12Bにかけて隣接して形成された第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bとを有する。第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bは、誘電体基板14に形成されたビアホールにて構成されている。
【0036】
誘電体基板14は、複数の誘電体層を積層して構成され、例えば図1に示すように、直方体状を有する。誘電体基板14の4つの側面のうち、第1側面14aに第1入出力端子20Aが形成され、第1側面14aと対向する第2側面14bに第2入出力端子20Bが形成されている。また、第3側面14cと、該第3側面14cと対向する第4側面14dにそれぞれ遮蔽導体12a及び12bが形成されている。誘電体基板14内において、第1ビア電極部18Aが第3側面14cに対向し、第2ビア電極部18Bが第4側面14dに対向している。
【0037】
図2図3A及び図3Bに示すように、第1ビア電極部18Aは、複数の小径の第1ビア電極(以下、第1小径ビア電極22aと記す)から構成され、第2ビア電極部18Bは、複数の小径の第2ビア電極(以下、第2小径ビア電極22bと記す)から構成されている。第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間に他のビア電極部は存在しない。
【0038】
さらに、本実施の形態では、第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方から第1入出力端子20Aに延びる第1入出力線路24Aと、同じくストリップ線路16の下方から第2入出力端子20Bに延びる第2入出力線路24Bとを有する。
【0039】
これにより、先ず、共振器10の第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bは、側面の遮蔽導体12a〜12dと共にTEM波の共振器として動作する。つまり、第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bが、側面の遮蔽導体12a〜12dを参照したTEM波の共振器として動作する。ストリップ線路16は、開放端容量を形成する機能として動作する。これは、特許文献3記載の共振器の構造、すなわち、TEM波の共振器として動作する部分がストリップ線路に限定され、ビア電極がストリップ線路と平行に配置されたグランド用導体層とを接続する機能を有するに過ぎない共振器の構造とは明らかに異なる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、図4に示すように、複数の第1小径ビア電極22aは、上面から見たとき、仮想の第1湾曲線26a(高周波電流が集中する部分)に沿って配列され、複数の第2小径ビア電極22bは、上面から見たとき、仮想の第2湾曲線26b(高周波電流が集中する部分である)に沿って配列されている。第1湾曲線26aと第2湾曲線26bは、1つの楕円の輪郭線の一部又は1つのトラック形状の輪郭線の一部を構成している。
【0041】
ここで、第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bと1つの楕円との関係について図5A図7Bを参照しながら説明する。
【0042】
図5Aに示すように、横断面形状が円形状のビア電極108の径を大きくすると、共振器100を多段化して誘電体フィルタ110を構成する場合において、共振器100間に電気壁112が発生し、Q値の劣化につながる。
【0043】
そこで、図5Bに示すように、横断面形状が楕円形状のビア電極114にした場合、短軸方向に共振器100を多段化して誘電体フィルタ110を構成すると、共振器100間に電気壁112は生じるが、ビア電極114間の距離が円形状のビア電極108よりも長くなるため、Q値の向上につながる。
【0044】
さらに、図6Aに示すように、楕円形状のビア電極114を複数の小径のビア電極(以下、小径ビア電極22と記す)で構成すると、磁界の包絡線118があたかも大径のビア電極であるかのように振る舞わせる。個々の小径ビア電極22の径が一定の割合ばらついても、包絡線118(大径のビア電極)への影響は、その割合未満となるため、ばらつきの低減効果も得ることができる。
【0045】
ところで、例えば図6Aに示す楕円形状のビア電極114では、高周波電流は楕円の端部、曲率の大きい両端部に集中する。そこで、図6Bに示すように、楕円形状のビア電極114を構成する複数の小径ビア電極22のうち、楕円形状の両端部に位置する曲率の大きい仮想の第1湾曲線26aに沿った複数の第1小径ビア電極22aと、曲率の大きい仮想の第2湾曲線26bに沿った複数の第2小径ビア電極22bを残し、中央に位置する複数の小径ビア電極22を取り除くことができる。
【0046】
すなわち、第1ビア電極部18Aを構成する複数の第1小径ビア電極22aは仮想の第1湾曲線26aに沿って配列され、第2ビア電極部18Bを構成する複数の第2小径ビア電極22bは仮想の第2湾曲線26bに沿って配列された形態となる。
【0047】
また、図7Aに示すように、横断面形状が楕円形状のビア電極114や、図7Bに示すように、複数の小径ビア電極22で楕円形状のビア電極114を構成した場合、楕円形状のビア電極114からそれぞれ対向する遮蔽導体102に向かって磁界28が広がる。しかし、共振器100を多段化して誘電体フィルタ110を構成する場合、受給電や結合調整をするためのパターン116(線路)を配置する必要があるが、楕円形状のビア電極114と側面の遮蔽導体102との間に、ビア電極114からの磁界28の広がりを妨げながら、受給電や結合調整をするためのパターン116(線路)を配置せざるを得なかった。これは、Q値の劣化や、不要な結合の発生をもたらす。
【0048】
一方、本実施の形態では、図6Bに示すように、第1ビア電極部18Aを構成する複数の第1小径ビア電極22aを仮想の第1湾曲線26aに沿って配列し、第2ビア電極部18Bを構成する複数の第2小径ビア電極22bを仮想の第2湾曲線26bに沿って配列したので、図8に示すように、第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bからそれぞれ対向する遮蔽導体12a及び12bに向かって磁界28が広がり、第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18B間に電磁界が疎になった領域30が形成される。
【0049】
そのため、上述した電磁界が疎になった領域30、すなわち、第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18B間に、受給電や結合調整をするためのパターン32(線路)を形成することが可能となる。その結果、Q値の劣化を抑制することができ、しかも、不要な結合を抑制することができる。
【0050】
また、図7Aに示す楕円形状のビア電極114や、図7Bに示す複数の小径ビア電極22等と異なり、図8に示すように、電流が集中する部分のみに小径ビア電極22(22a、22b)を配列させたので、小径ビア電極22(22a、22b)を構成する金属材料(例えば銀)の量を大幅に低減することができると共に、小径ビア電極22(22a、22b)の本数を減らすことができるため、工数の低減を図ることができる。
【0051】
このように、本実施の形態に係る共振器10においては、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、ビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0052】
本実施の形態に係る共振器10の等価回路を図9A及び図9Bに示す。図9Aに示すように、第1ビア電極部18Aからストリップ線路16の入出力部分(I/O)にかけて第1λ/4共振器34Aを構成し、第2ビア電極部18Bからストリップ線路16の入出力部分(I/O)にかけて第2λ/4共振器34Bを構成する。これにより、図9Bに示すように、第1λ/4共振器34Aと第2λ/4共振器34Bには常に同相の電流iが流れることとなる。同相となることで、共振器10単体で見た場合、第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間は電磁界が疎の状態になり、その間に結合や引き回しのための電極を配置しても不要な結合を極力抑えることができる。その結果、Q値の劣化を防止することができると共に、特性のばらつきを抑制することができる。
【0053】
上述の例では、ストリップ線路16を上部の遮蔽導体12Uに対向させ、第1ビア電極部18Aを構成する第1小径ビア電極22a並びに第2ビア電極部18Bを構成する第2小径ビア電極22bをそれぞれ下部の遮蔽導体12Bに接続するようにしたが、その他、図10に示す変形例に係る共振器10aのように、ストリップ線路16を下部の遮蔽導体12Bに対向させ、第1小径ビア電極22a及び第2小径ビア電極22bをそれぞれ上部の遮蔽導体12Uに接続するようにしてもよい。
【0054】
次に、第1の実施の形態に係る誘電体フィルタ(以下、第1誘電体フィルタ50Aと記す)について図11図15を参照しながら説明する。なお、上述した共振器10と共通する部材については、その重複説明を省略する。
【0055】
図11及び図12は、共振器10を多段化して3つの共振器10にて第1誘電体フィルタ50Aを構成した例を示す。
【0056】
すなわち、第1誘電体フィルタ50Aは、誘電体基板14内に、3つの共振器本体(第1共振器本体52A〜第3共振器本体52C)を有する。
【0057】
第1共振器本体52A(共振器10)〜第3共振器本体52C(共振器10)は、それぞれ上部の遮蔽導体12Uと対向するストリップ線路16と、ストリップ線路16から下部の遮蔽導体12Bにかけて隣接して形成された第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bとを有する。第1ビア電極部18Aは、複数の第1小径ビア電極22aから構成され、第2ビア電極部18Bは、複数の第2小径ビア電極22bから構成されている。
【0058】
特に、この第1誘電体フィルタ50Aは、下記構成を有する。すなわち、第1共振器本体52Aのストリップ線路16と第1入出力端子20Aとの間に、ストリップ線路16と第1入出力端子20Aとを電気的に接続する第1接続線路54Aが形成されている。第2共振器本体52Bのストリップ線路16から第1共振器本体52Aに向かって延びる容量性の第1結合調整線路56Aが形成されている。この第1結合調整線路56Aの端部は、第1共振器本体52Aの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。
【0059】
同様に、第3共振器本体52Cのストリップ線路16と第2入出力端子20Bとの間に、ストリップ線路16と第2入出力端子20Bとを電気的に接続する第2接続線路54Bが形成されている。第2共振器本体52Bのストリップ線路16から第2入出力端子20Bに向かって延びる容量性の第2結合調整線路56Bが形成されている。この第2結合調整線路56Bの端部は、第3共振器本体52Cの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。
【0060】
図13及び図14は、第1誘電体フィルタ50Aの変形例に係る誘電体フィルタ50Aaを示す。この変形例に係る誘電体フィルタ50Aaは、図13及び図14に示すように、上述した第1誘電体フィルタ50Aとほぼ同様の構成を有するが、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bの各ストリップ線路16同士が第3接続線路54Cにて直接接続され、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cの各ストリップ線路16同士が第4接続線路54Dにて直接接続されている。
【0061】
さらに、第1共振器本体52Aのストリップ線路16の下方の位置から第2共振器本体52Bのストリップ線路16の下方の位置にかけて容量性の第3結合調整線路56Cが形成され、第2共振器本体52Bのストリップ線路16の下方の位置から第3共振器本体52Cのストリップ線路16の下方の位置にかけて容量性の第4結合調整線路56Dが形成されている。
【0062】
第1誘電体フィルタ50A及びその変形例に係る誘電体フィルタ50Aaの等価回路を図15に示す。図15に示すように、第1誘電体フィルタ50A及び変形例に係る誘電体フィルタ50Aaは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとが電磁界結合され、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとが電磁界結合されて構成される。
【0063】
そして、第1共振器本体52A〜第3共振器本体52Cにおいて、第1ビア電極部18Aは、ストリップ線路16と共に、第1λ/4共振器34Aを構成し、第2ビア電極部18Bは、ストリップ線路16と共に、第2λ/4共振器34Bを構成する。
【0064】
第1誘電体フィルタ50Aは、上述した本実施の形態に係る共振器10を多段化して構成したので、ビア電極のサイズを大きくすることなく、電流密度の分散を図ることができ、しかも、ビア電極からの磁界の広がりを妨げることなく、各種電極パターンを形成でき、Q値の劣化の抑制、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0065】
特に、第1共振器本体52A、第2共振器本体52B及び第3共振器本体52Cにおける電磁界が疎になった領域30を利用して、第1結合調整線路56A〜第4結合調整線路56Dを形成することができ、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとの電磁界結合及びその調整、並びに第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとの電磁界結合及びその調整を容易に行うことができる。
【0066】
すなわち、第1誘電体フィルタ50A及びその変形例に係る誘電体フィルタ50Aaは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとが電磁界結合し、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとが電磁界結合している。従って、第1誘電体フィルタ50Aでは、第1結合調整線路56Aによって第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の容量結合の調整が容易になり、第2結合調整線路56Bによって第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の容量結合の調整が容易になる。同様に、変形例に係る誘電体フィルタ50Aaでは、第3結合調整線路56Cによって第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の容量結合の調整が容易になり、第4結合調整線路56Dによって第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の容量結合の調整が容易になる。
【0067】
一方、誘導結合の調整については、第1誘電体フィルタ50Aでは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の距離を変更したり、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の距離を変更することで、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の誘導結合、並びに第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の誘導結合の調整が容易になる。変形例に係る誘電体フィルタ50Aaでは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の距離を変更したり、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の距離を変更する方法のほか、第3接続線路54Cの接続位置を変更したり、第4接続線路54Dの接続位置を変更することで、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の誘導結合、並びに第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の誘導結合の調整が容易になる。
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る誘電体フィルタ(以下、第2誘電体フィルタ50Bと記す)について、図16図18を参照しながら説明する。
【0069】
図16及び図17は、共振器10を多段化して4つの共振器10にて第2誘電体フィルタ50Bを構成した例を示す。
【0070】
すなわち、第2誘電体フィルタ50Bは、誘電体基板14内に、4つの共振器本体(第1共振器本体52A〜第4共振器本体52D)を有する。
【0071】
第1共振器本体52A〜第4共振器本体52Dは、それぞれ上部の遮蔽導体12Uと対向するストリップ線路16と、ストリップ線路16から下部の遮蔽導体12Bにかけて隣接して形成された第1ビア電極部18A及び第2ビア電極部18Bとを有する。第1ビア電極部18Aは、複数の第1小径ビア電極22aから構成され、第2ビア電極部18Bは、複数の第2小径ビア電極22bから構成されている。
【0072】
特に、この第2誘電体フィルタ50Bは、下記構成を有する。すなわち、第1共振器本体52Aのストリップ線路16と第1入出力端子20Aとの間に、ストリップ線路16と第1入出力端子20Aとを電気的に接続する第1接続線路54Aが形成されている。第2共振器本体52Bのストリップ線路16から第1入出力端子20Aに向かって延びる容量性の第5結合調整線路56Eが形成されている。この第5結合調整線路56Eの端部は、第1共振器本体52Aの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。
【0073】
同様に、第4共振器本体52Dのストリップ線路16と第2入出力端子20Bとの間に、ストリップ線路16と第2入出力端子20Bとを電気的に接続する第2接続線路54Bが形成されている。第3共振器本体52Cのストリップ線路16から第2入出力端子20Bに向かって延びる容量性の第6結合調整線路56Fが形成されている。この第6結合調整線路56Fの端部は、第4共振器本体52Dの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。
【0074】
さらに、磁界結合される第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間に容量性の第7結合調整線路56Gが形成されている。第7結合調整線路56Gの一方の端部は、第2共振器本体52Bの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。第7結合調整線路56Gの他方の端部は、第3共振器本体52Cの第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18Bとの間であって、且つ、ストリップ線路16の下方に位置されている。
【0075】
第2誘電体フィルタ50Bの等価回路を図18に示す。図18に示すように、第2誘電体フィルタ50Bは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとが電磁界結合され、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとが電磁界結合され、第3共振器本体52Cと第4共振器本体52Dとが電磁界結合されて構成される。
【0076】
また、第1誘電体フィルタ50Aと同様に、第4共振器本体52Dにおいても、第1ビア電極部18Aは、ストリップ線路16と共に、第1λ/4共振器34Aを構成し、第2ビア電極部18Bは、ストリップ線路16と共に、第2λ/4共振器34Bを構成する。
【0077】
第2誘電体フィルタ50Bは、上述した本実施の形態に係る共振器10を多段化して構成したので、第1誘電体フィルタ50Aと同様の構成を有する。しかも、電磁界が疎になった領域30、すなわち、第1ビア電極部18Aと第2ビア電極部18B間に、各種電極パターンを形成でき、不要な結合の抑制、電磁シールドの低下の抑制、設計の自由度の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0078】
この第2誘電体フィルタ50Bにおいても、上述した第1誘電体フィルタ50A及び変形例に係る誘電体フィルタ50Aaと同様に、第1共振器本体52A〜第4共振器本体52Dにおける電磁界が疎になった領域30を利用して、第5結合調整線路56E〜第7結合調整線路56Gを形成することができ、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとの電磁界結合及びその調整、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとの電磁界結合及びその調整、並びに第3共振器本体52Cと第4共振器本体52Dとの電磁界結合及びその調整を容易に行うことができる。
【0079】
すなわち、第2誘電体フィルタ50Bでは、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52Bとが電磁界結合し、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52Cとが電磁界結合し、第3共振器本体52Cと第4共振器本体52Dとが電磁界結合している。従って、第5結合調整線路56Eによって第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の容量結合の調整が容易になり、第6結合調整線路56Fによって第3共振器本体52Cと第4共振器本体52D間の容量結合の調整が容易になり、第7結合調整線路56Gによって第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の容量結合の調整が容易になる。
【0080】
一方、誘導結合の調整については、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の距離を変更したり、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の距離を変更したり、第3共振器本体52Cと第4共振器本体52D間の距離を変更することで、第1共振器本体52Aと第2共振器本体52B間の誘導結合の調整、第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C間の誘導結合の調整、並びに第3共振器本体52Cと第4共振器本体52D間の誘導結合の調整が容易になる。
【0081】
もちろん、上述した変形例に係る誘電体フィルタ50Aaと同様に、隣接する共振器本体同士(例えば第2共振器本体52Bと第3共振器本体52C)を直接接続線路でつなぎ、該接続線路のつなぐ位置を変えることで、共振器本体間の誘導結合の調整が容易になる。
【0082】
なお、本発明に係る共振器及び誘電体フィルタは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0083】
すなわち、上述の例では、3つの共振器本体あるいは4つの共振器本体を設けた例を示したが、その他、2つの共振器本体あるいは5つ以上の共振器本体を設けてもよい。また、第1小径ビア電極22a及び第2小径ビア電極22bをそれぞれ3本配列させた例を示したが、これに限定されることなく、2本や、4本以上配列させてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…共振器 12U…上部の遮蔽導体
12B…下部の遮蔽導体 12a、12b…遮蔽導体
14…誘電体基板 16…ストリップ線路
18A…第1ビア電極部 18B…第2ビア電極部
20A…第1入出力端子 20B…第2入出力端子
22…小径ビア電極 22a…第1小径ビア電極
22b…第2小径ビア電極 24A…第1入出力線路
24B…第2入出力線路 26a…第1湾曲線
26b…第2湾曲線 28…磁界
30…電磁界が疎になった領域 32…パターン
34A…第1λ/4共振器 34B…第2λ/4共振器
50A…第1誘電体フィルタ 50Aa…誘電体フィルタ(変形例)
50B…第2誘電体フィルタ
52A〜52D…第1共振器本体〜第4共振器本体
54A〜54D…第1接続線路〜第4接続線路
56A〜56G…第1結合調整線路〜第7結合調整線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19