(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
[印刷装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置10の構成を示す図である。印刷装置10は、インクジェットヘッド12、上流容器保持部14、中間パック保持部16、及び圧力調整器18を備える。
【0023】
インクジェットヘッド12は、インクジェット方式でインク滴を吐出する印刷ヘッドである。インクジェットヘッド12は、印刷する画像に応じたタイミングでインク滴をそれぞれ吐出する複数のノズルを有する。インクジェットヘッド12としては、例えば公知のインクジェットヘッドを用いることができる。インクジェットヘッド12においては、各種の公知のインクを用いることができる。具体的には、例えば、水性顔料インク、水性染料インク、水性ラテックスインク、UV硬化インク、ソルベントインク等を好適に用いることができる。
【0024】
上流容器保持部14は、インクの流路の上流側でインクボトル200を交換可能な態様で保持する保持部である。インクボトル200に入ったインクは、脱気がされていない非脱気インクであってもよい。インクボトル200としては、公知のインクボトルを用いることができる。インクボトル200は、内部のインクに浮かぶ落とし蓋202を有する。この構成により、例えば、インクボトル200内のインクの空気への接触を少なくし、貯留中のインクに多量の空気が溶け込むことを防ぐ。
【0025】
上流容器保持部14は、インクボトル200から供給されるインクを貯留するインク貯留部204を有している。インク貯留部204は、落とし蓋を有する。この構成により、例えば、インク貯留部204内のインクの空気への接触を少なくし、貯留中のインクに多量の空気が溶け込むことを防ぐ。インク貯留部204は、例えば、チューブ等を介して、中間パック保持部16に保持されたインク容器100と接続されている。これにより、インクボトル200は、インクの水頭差を利用する水頭値方式により、インクの経路の下流側へインクを供給する。ここで、水頭値方式とは、重力を利用してインクを供給する方式である。
【0026】
中間パック保持部16は、上流容器保持部14とインクジェットヘッド12との間で、インク容器100を保持する部分である。本実施の形態において、中間パック保持部16は、インク容器保持部の一例である。インク容器100は、印刷装置10におけるインクの経路の途中においてインクを貯留するインク容器(中間パック)である。インク容器100としては、例えばパック状の袋状体を用いた容器等を好適に用いることができる。インク容器100は、チューブ等によって、上流側で上流容器保持部14のインク貯留部204と接続され、下流側で圧力調整器18及びインクジェットヘッド12と接続されている。本実施の形態では、インク容器100にて、インクの脱気を行う。インク容器100の具体的な構成については後述する。
【0027】
中間パック保持部16は、水頭値方式により、インクジェットヘッド12へインクを供給できる位置において、インク容器100を保持する。これにより、インク容器100は、水頭値方式により、インクジェットヘッド12へインクを供給する。
【0028】
中間パック保持部16は、印刷装置10の印刷動作中も静止している位置において、インク容器100を保持する。具体的には、中間パック保持部16は、インクジェットヘッド12と共に移動しない位置でインク容器100を保持することが好ましい。
【0029】
中間パック保持部16は、インク容器100内のインクの量を検知する手段を有してもよい。例えば、中間パック保持部16は、インク容器100の容量減少や、インクの終了を検知することが好ましい。インク容器100においてインクを収容するインク収容部の体積変化に基づき、インク容器100内のインクの量を検知してもよい。インクボトル200にインクが入っている間はインク容器100にインクが供給される。したがって、インク容器100の容積変化を検知することで、インクボトル200の交換またはインクの充填等を行うべきタイミングを適切に検知することができる。
【0030】
中間パック保持部16にインク容器100を保持する構成により、インク容器100からインクジェットヘッド12へインクを供給しつつインクボトル200の交換等を行うことが可能である。したがって、長時間連続してインクを供給可能な構成を実現できる。
【0031】
圧力調整器18は、インクジェットヘッド12へ供給するインクの圧力を調整する構成である。圧力調整器18は、インクジェットヘッド12のノズルへ供給されるインクの圧力について、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力(負圧)に調整する。圧力調整器18は、インクジェットヘッド12に近い位置で圧力の調整を行うことが好ましい。例えば、圧力調整器18は、印刷装置10においてインクジェットヘッド12を保持する部材(例えばキャリッジ等)によりインクジェットヘッド12と共に保持されることが好ましい。
【0032】
圧力調整器18としては、公知の圧力調整器を好適に用いることができる。圧力調整器18として、例えば、機械式の圧力ダンパ、袋方式の圧力ダンパ、又は蛇腹方式のダンパ等の各種の圧力ダンパ等を用いることができる。
【0033】
本実施の形態の印刷装置10は、上記に示した構成以外に、印刷動作に必要な公知の各種構成を更に有してもよい。例えば、本実施の形態において、印刷装置10は、インクジェットヘッド12に主走査動作を行わせるシリアル方式のインクジェットプリンタであってよい。この場合、印刷装置10は、所定の主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をインクジェットヘッド12に行わせる主走査駆動部等を更に有してもよい。また、主走査方向と直交に副走査方向へインクジェットヘッド12を移動させる副走査駆動部等を更に有してもよい。また、インクジェットヘッド12は、例えば、主走査動作等の移動をすることなく印刷を行うラインヘッドであってもよい。
【0034】
また、印刷装置10は、例えば、複数色のインクを用いて印刷を行ってもよい。この場合、印刷装置10は、使用する色ごとに、複数のインクジェットヘッド12、上流容器保持部14、中間パック保持部16、及び圧力調整器18を備えてもよい。
【0035】
また、
図1に示した構成において、上流容器保持部14は、印刷装置10の一部として構成されている。しかし、上流容器保持部14は、例えば、印刷装置10における本体部分から分離可能なインク供給装置に配設されてもよい。この場合、印刷装置10の本体部とは、少なくともインクジェットヘッド12を備える部分である。印刷装置10の本体部は、インク供給装置が分離された単独の状態でもインクジェットプリンタとして機能する部分であってもよい。また、印刷装置10の本体部が単独の状態で印刷を行う場合、中間パック保持部16において、例えば、外部のインクボトル200等には接続されないインク容器(例えば、インクカートリッジ等)を保持してもよい。この場合、インク容器として、インクボトル200に接続しないこと以外は、インク容器100と同様の構成を有するインク容器等を好適に用いることができる。
【0036】
[インク容器の構成]
図2(a)〜
図2(d)は、インク容器100を示す図である。
図2(a)は、インク容器100を示す垂直断面図、
図2(b)は、インク容器100を示す水平断面図である。
図2(c)及び
図2(d)は、インク容器100におけるバルブ302及びバルブ306の構成を示す図である。
【0037】
インク容器100は、外周部102、インク収容部104、気液分離手段106、減圧手段110、及び、振動攪拌機構112を有する。外周部102は、インク容器100の筐体部分であり、内部にインク収容部104及び気液分離手段106等を収容する。外周部102は、例えばプラスチック等で形成された固定形状の筐体であってよい。例えば、外周部102は、カートリッジ状のインク容器100の筐体部分であってよい。
【0038】
インク収容部104は、インクを収容する部分である。インク収容部104は、可撓性のフィルム等で形成された袋状のパック部材である。インク収容部104は、内部に収容するインクの量に応じて容積を変化させることにより、空気に接触させない状態でインクを収容する。この構成により、インク収容部104内のインクの圧力と大気圧とが釣り合った状態を適切に維持できる。インクの圧力が大気圧と釣り合っていることで、印刷装置10(
図1参照)において、水頭値方式によるインクの供給を適切に行うことができる。
【0039】
インク収容部104を形成する材料としては、インクの内容量変化に応じて体積が変わる可撓性の材料で、かつ、インクにより溶解や変質の起こらない各種の材料を用いることができる。例えば、可撓性の単層又は複合材料や、複数の材料からなるフィルム等を好適に用いることができる。このようなフィルムとして、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム等を好適に用いることができる。また、プラスチックフィルム等に限らず、例えば、気体透過率を低減できる金属や無機酸化物等の層を含む構成を用いてもよい。また、インク収容部104については、必ずしも全体が可撓性を有する必要はなく、少なくともその一部が可撓性を有していればよい。
【0040】
インク供給口114は、インク収容部104へインクを供給するための供給口である。本実施の形態において、インク供給口114は、上流容器保持部14(
図1参照)を介して、インク貯留部204(
図1参照)と接続される。これにより、インク供給口114は、インク貯留部204から供給されるインクを受け取る。
【0041】
インク出口116は、インクジェットヘッド12へ向けてインクを供給する供給口である。インク出口116は、圧力調整器18(
図1参照)を介して、インクジェットヘッド12と接続される。
【0042】
振動攪拌機構112は、インク収容部104内のインクを攪拌する機能を有する。後述する気液分離手段106を介して脱気が行われるときに、振動攪拌機構112は、気液分離手段106付近のインクと気液分離手段106から離れた場所にあるインクとを攪拌することによって、インク収容部104内のインク全体の脱気を促進する。
【0043】
インク容器100は、インクの脱気を行う機能を有する。
図3は、脱気処理の原理を示す図である。
図3は、脱気処理の原理を示す目的で描いた図であり、具体的な構成は、
図2に示すインク容器100のものとは異なる。インク中の気体を分離して気体成分を脱気するための手段として、一面がインクに接し、他面が空気に接している気液分離膜Aを有する。インクを収容した定圧インク容器部Bは、圧力をほぼ一定に保つことができる構造を有する。定圧インク容器部Bには、水性やソルベントインクなどのインクが入れられている。
【0044】
脱気処理は、減圧ポンプによって、減圧部Cの空気を大気圧の4/5程度まで減圧することによって行う。減圧部Cの空気を減圧すると、インク中に溶解または気泡化している気体が気液分離膜Aから減圧部Cに浸透し、気体化する。一方で、インクは、液体の表面張力があるため、気液分離膜Aの微細孔を通じて減圧部に滲み出さない。この原理によって、インクの脱気を行うことができる。
【0045】
気体を浸透させ、かつ、液体を通さない気液分離膜の孔の大きさは、理論的に求まる。例えば、孔の形状が円であるとした場合、表面張力が30mN/mの液体は、理論上、1気圧下で1.2μm以下の孔径の孔から滲み出さない。気液分離膜の孔径としては、平均孔径が5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは、0.2μm以下から0.005μ以上である。以上、脱気処理の原理について説明した。
【0046】
図4(a)は、気液分離手段106の構成を示す図である。気液分離手段106は、撥水性を有するポリエチレン単層メンブレン107を袋状にすることによって形成されている。ポリエチレン単層メンブレン107は平均孔径が数nm〜0.1μmの微小孔を有する。微小孔は、気体を通過させるが、インクを通過させない大きさである。なお、本実施の形態では、気液分離手段106をポリエチレン単層メンブレン107によって構成する例について説明しているが、複数の層で形成されたポリエチレンメンブレンを用いて構成することもできる。
【0047】
気液分離手段106は、袋状にしたポリエチレン単層メンブレン107の内部に、平均孔径の100μm以上の多孔
フィルム108が充填されている。多孔
フィルム108の孔径は、気体だけでなく液体も通す大きさである。このような孔径を有する多孔
フィルム108をポリエチレン単層メンブレン107の内部に設けているのは、気液分離手段106の機械強度を高めるためである。この気液分離手段106は、ポリエチレン単層メンブレン107と多孔
フィルム108とを貼り合わせることで製造される。
【0048】
気液分離手段106は、袋状のポリエチレン単層メンブレン107が、気体を通過させる一方で、インク収容部104内のインクを内部へ通さないので、多孔
フィルム108の部分にはインクが入らない。つまり、多孔
フィルム108の部分には気体が存在する。
図3で説明した原理図でいうと、多孔
フィルム108の部分が減圧部Cに相当する。多孔
フィルム108が充填された部分の気圧が低下すると、インク収容部104のインク中に溶解または気泡化した気体が多孔
フィルム108の方へ通過し、インクが脱気する。
【0049】
図2に戻って説明する。減圧手段110は、気液分離手段106の内部(多孔
フィルム108の部分)を減圧する手段である。多孔
フィルム108の部分を減圧することにより、気液分離手段106を介して、インク収容部104内のインク中の空気を取り除く。
【0050】
減圧手段110は、付勢手段の付勢力を用いて機械的に減圧を行う手段であり、バルブ302、接続部304、バルブ306、可撓性部材308、空気室310、バネ312、及び圧力板314を有する。このように、減圧手段110を機械的な構成とすることにより、コストを抑えることができる。
【0051】
可撓性部材308は、空気室310の壁面の少なくとも一部を構成する部材である。空気室310として機能する空間の少なくとも一部を覆うことにより、空気室310の内壁の少なくとも一部を移動又は変形可能に構成する。可撓性部材308としては、例えば、非通気性のフィルム等を好適に用いることができる。
【0052】
バルブ302は、空気室310と外部とを繋ぐバルブである。
図2(c)は、バルブ302の構成を示す図である。バルブ302は、空気室310内が大気圧よりも低い圧力になっている減圧時に閉じ、空気室310内が大気圧よりも高い圧力になっている加圧時に開くように開閉する。つまり、バルブ302は、空気室310内の空気を外部へ排出する場合に開いた状態になる。
【0053】
接続部304は、気液分離手段106の内部と減圧手段110の空気室310とを繋ぐ空気の流路である。接続部304上には、バルブ306が設けられている。
【0054】
図2(d)は、バルブ306の構成を示す図である。バルブ306は、空気室310の気圧が多孔
フィルム108にある空気の気圧よりも低い圧力になっている減圧時に開き、空気室310の気圧が多孔
フィルム108にある空気の気圧よりも高い圧力になっている加圧時に閉じるように開閉する。つまり、バルブ306は、気液分離手段106の内部の空気を空気室310へ流す場合に開いた状態になる。
【0055】
空気室310は、バルブ302及びバルブ306のみを介して外部と繋がる閉じた空間である。空気室310の内部にはバネ312及び圧力板314が収容されている。バネ312は、一端が減圧手段110の基台316に固定され、かつ、他端が圧力板314を介して可撓性部材308を押圧するように構成される。バネ312は、所定の方向へ可撓性部材308が変形した場合に可撓性部材308を元の状態に復帰させる復帰バネとして機能する。圧力板314は、バネ312の他端側を受ける部材であり、バネ312の他端と可撓性部材308との間に配設されることにより、バネ312の付勢力を可撓性部材308へ伝達する。
【0056】
減圧手段110により減圧を行う場合、先ず、例えばユーザの手動動作により、可撓性部材308を介して圧力板314を押圧し、空気室310の体積が減少する方向へ可撓性部材308を変形させる。このとき、体積の減少により空気室310内の圧力が高まるため、バルブ302が開いて、空気室310内の空気が排出される。このときは、バルブ306は閉じた状態になり、気液分離手段106の内部に空気が流入することはない。
【0057】
次に、ユーザが圧力板314から手を離し、圧力板314の押圧をやめると、押圧時に縮められていたバネ312の復帰動作により、圧力板314を介して可撓性部材308が膨らみ、空気室310の体積が増大する。この体積の増大により、空気室310内の圧力は、大気圧よりも低い負圧に変化する。この負圧の状態は、バネ312が伸びきるまでの間、維持される。これにより、時間をかけてインクを脱気することができる。なお、バネ312等により発生させる負圧は、バネ312のバネ力等で所望の圧力に調整することができる。
【0058】
空気室310内の負圧が維持されているとき、バルブ302は閉じた状態、バルブ306は開いた状態になる。空気室310が負圧にされることで、空気室310と接続された気液分離手段106の内部の圧力も負圧に調整される。
【0059】
インク収容部104に収容されているインクの圧力は、大気圧と釣り合った状態になっている。したがって、減圧手段110によって気液分離手段106の内部を減圧すると、袋状のポリエチレン単層メンブレン107の内外の間、すなわち、インク側と気体側との間で気圧差が生じる。これにより、インク中の気体が気液分離手段106の内部へ移動し、インクの脱気を行える。また、ポリエチレン単層メンブレン107が撥水性を有することにより、インクが気液分離手段106の内部に滲み込んでしまうリスクを低減することができる。
【0060】
以上に、第1の実施の形態の印刷装置10について説明したが、第1の実施の形態の印刷装置10は、以下のような変形をすることも可能である。これらの変形は、以下に説明する実施の形態にも適用できる。
【0061】
(第1の実施の形態の変形例1)
図4(b)は、変形例1に係る気液分離手段106の構成を示す図である。変形例1に係る気液分離手段106は、袋状にしたポリエチレン単層メンブレン107の内部に、平均孔径の100μm以上の多孔
フィルム108が充填されている。また、ポリエチレン単層メンブレン107の外側を、無孔フィルム109が覆っている。無孔フィルム109の膜厚は、気体を通すことができる程度に十分に薄い。変形例1に係る気液分離手段106は、無孔フィルム109を備えることで、気液分離手段106の内部にインクが滲み込むリスクをいっそう低減できる。
【0062】
(第1の実施の形態の変形例2)
図4(c)は、変形例2に係る気液分離手段106の構成を示す図である。変形例2に係る気液分離手段106は、袋状にしたポリエチレン単層メンブレン107の内部に、平均孔径の100μm以上の細孔
フィルム108aと平均孔径が数100μm以上の粗孔
フィルム108bの2種類の多孔
フィルム108が充填されている。また、ポリエチレン単層メンブレン107の外側を、無孔フィルム109が覆っている。無孔フィルム109の膜厚は、気体を通すことができる程度に十分に薄い。変形例2に係る気液分離手段106は、無孔フィルム109を備えることで気液分離手段106の内部にインクが滲み込むリスクをいっそう低減できると共に、孔径の大きい粗孔
フィルム108bを有することで機械強度をさらに高めることができる。
【0063】
(第1の実施の形態の変形例3)
上記した実施の形態では、気液分離膜としてポリエチレン単層メンブレン107を用いたが、第1の実施の形態の変形例3に係る気液分離手段106は、フッ素樹脂によって構成する。フッ素樹脂は、高い撥水性を有するので、気液分離手段106の内部にインクが入る可能性を低減できる。
【0064】
(第1の実施の形態の変形例4)
上記した実施の形態では、気液分離膜としてポリエチレン単層メンブレン107を用いたが、第1の実施の形態の変形例4に係る気液分離手段106は、超撥水処理を行ったメッシュによって構成する。この構成により、気液分離手段106の内部にインクが入る可能性を低減できるとともに、種々の材料を用いてメッシュを構成することができる。
【0065】
(第1の実施の形態の変形例5)
上記した実施の形態において、減圧手段110が、気液分離手段106の内部と常に接続された例を挙げたが、減圧手段110は、インク収容部104と取り外し可能に構成してもよい。また、減圧手段110をインク容器100に取り付けられる別の部品としてもよい。このように減圧手段110をインク収容部104から取り外し可能な構成とすることで、気液分離手段106を収容したインク収容部104を取り替えることが可能となる。例えば、経時変化により、気液分離手段106を用いた脱気性能が低下した場合には、新しい(インク収容部104を備えた)インク容器100を減圧手段110に取り付けることにより、減圧手段110をそのまま使うことができ、低コストでインク容器100の取替えを行える。
【0066】
(第1の実施の形態の変形例6)
上記した実施の形態において、気液分離手段106をインク収容部104の中から取り出したり、挿入したりすることができる構成としてもよい。すなわち、本実施の形態の変形例6にかかる印刷装置は、インクジェットヘッド12と、インク容器100を保持する中間パック保持部16と、ポリエチレン単層メンブレン107によって構成された袋状の気液分離手段106と、気液分離手段106の内部の空間に接続された減圧手段110とを備え、中間パック保持部16に保持されたインク容器100の中に気液分離手段106を入れて、脱気を行う。
【0067】
この構成により、インク容器100自体は、脱気機構を有しないインク容器であっても、インク収容部104に気液分離手段106を入れることにより、インクの脱気処理を行うことができる。
【0068】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態のインク容器100の構成を示す図である。
図5(a)は、第2の実施の形態におけるインク容器100の構成を示す垂直断面図、
図5(b)は第2の実施の形態におけるインク容器100の構成を示す水平断面図である。第2の実施の形態のインク容器100の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、減圧手段110の構成が異なる。
【0069】
第2の実施の形態において、減圧手段110は、注射器のような構成により減圧を行う手段であり、バルブ302、接続部304、バルブ306、空気室310、バネ312、筒部320、ピストン322、及びストッパ324を有する。これらの構成のうち、バルブ302、接続部304、バルブ306、及び空気室310は、
図2における各構成の同じ番号の構成に対応する。
【0070】
筒部320及びピストン322は、注射器の筒部及びピストンに相当する構成である。筒部320内にピストン322が挿入されることにより、
図5(a)に示すように、筒部320の内部に空気室310を形成する。バネ312は、空気室310が広がる方向へピストン322を付勢する。ストッパ324は、ピストン322の過度な移動を防ぐためのストッパ部材であり、上側へのピストン322の移動を予め設定された位置で停止させる。
【0071】
第2の実施の形態においてインクの脱気を行う場合、例えば、ユーザの手動操作でピストン322を
図5(a)における下方向へ押し、空気室310内の空気をバルブ302から外部へ排出する。その後、ユーザが手を離すことにより、バネ312の付勢力に応じて、ピストン322が図中の上方向へ移動する。このとき、空気室310の体積が拡がり、空気室310内は負圧になる。これにより、接続部304及びバルブ306を介して、気液分離手段106の内部も減圧される。
【0072】
減圧手段110によって気液分離手段106の内部が減圧されると、ポリエチレン単層メンブレン107の内外の間、すなわち、インク側と気体側との間で気圧差が生じる。これにより、インク中の気体が気液分離手段106の内部へ移動し、インクの脱気を行える。
【0073】
以上の構成により、インク収容部104の内部にある気液分離手段106により、インクの脱気を適切に行うことができる。また、ポリエチレン単層メンブレン107が撥水性を有することにより、インクが気液分離手段106の内部に滲み込んでしまうリスクを低減することができる。
【0074】
本実施の形態においても、少なくともバネ312が伸びきるまでの間、空気室310内の負圧が維持されることになる。したがって、負圧を長時間適切に維持することができ、インクの脱気を適切に行うことができる。
【0075】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態の印刷装置10の構成を示す図である。第3の実施の形態の印刷装置10の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、第3の実施の形態の印刷装置10は、
図1に示したインクボトル200に代えて、交換インクパック220を有する。また、上流容器保持部14は、交換インクパック220に対応する構成により、交換インクパック220を保持する。本実施の形態においては、上流容器保持部14も、インク容器保持部の一例である。
【0076】
交換インクパック220は、例えば、交換用の大容量のインクパックであり、インク容器100よりも大容量のインクを貯留する。本実施の形態において、交換インクパック220は、更に、
図2等を用いて説明をしたインク容器100と同様に、インク容器100の内部のインクを脱気する。
【0077】
交換インクパック220は、外周部102、インク収容部104、気液分離手段106、減圧手段110、及ぶインク出口116等を有し、
図2(a)〜
図2(d)を用いて説明をしたインク容器100と同様にして、インクの脱気を行う。これにより、例えば、大容量のインクを貯留する容器内でインクを脱気することができる。この場合、インクの経路の最上流にある交換インクパック220と、中間にあるインク容器100との両方でインクを脱気することにより、インクの脱気度を高めることができる。逆に、インクに求められる品質によっては、例えば、中間位置のインク容器100では脱気を行わず、交換インクパック220でのみインクの脱気を行ってもよい。
【0078】
なお、印刷装置10の連続運転時等には、交換インクパック220を適宜交換することにより、大容量のインクを供給することができる。また、交換インクパック220自体を交換するのではなく、例えば、交換インクパック220へインクを補充してもよい。例えば、図中に示した構成の交換インクパック220の場合、上流容器保持部14から交換インクパック220を一旦取り外し、上流容器保持部14に接続されていた口栓部分からインクを補充する。これにより、大容量のインクを適切に供給できる。
【0079】
(第4の実施の形態)
図7(a)は、第4の実施の形態のインク容器100の構成を示す図である。第4の実施の形態において、インク収容部104は、底面104aと対向する2つの側面104b,104cを有する筐体と、上面を覆う可撓性のフィルム104dを有している。上面のフィルム104dは、インクの減少と共に下がる。フィルム104dの上にインク残量検出部118が設けられており、インク残量検出部118の高さが所定の高さより低くなるとインクの残量が少なくなったことを検出する。
【0080】
インク収容部104の2つの側面104b,104cは高さが異なっている。高い方の側面104cに、磁力を利用して液体を攪拌するマグネチックスターラ120が設けられている。マグネチックスターラ120は、インク収容部104の中でインクを攪拌する攪拌羽根120aと、攪拌羽根120aを磁力で回転させるドライブ部120bとを有している。
【0081】
第4の実施の形態のインク容器100は、気液分離手段106を図示しない減圧手段に接続する接続部304を有している。気液分離手段106は、上記した実施の形態と同様に、インクの脱気処理を行う。
【0082】
図7(b)は、第4の実施の形態の変形例にかかるインク容器100の構成を示す図である。変形例に係るインク容器100の基本的な構成は、上記した実施の形態と同じであるが、マグネチックスターラ120がインク収容部104の底面104aに設けられている点が異なる。
【0083】
以上、本発明のインク容器および印刷装置について、実施の形態を挙げて詳細したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記の実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0084】
(変形例)
上記した実施の形態では、
図1に示す印刷装置10において、中間パック保持部16に保持されたインク容器130に脱気機構を設ける例を挙げて説明したが、脱気機構を設ける場所は、印刷装置10の構成に応じて適宜に決めることができる。
【0085】
図8は、複数のインク容器130が下置きされた印刷装置10の構成例を示す図である。インク容器130とインクジェットヘッド12との経路上には、外付け中間パック132と本体中間パック134とが配置されている。本体中間パック134はインクジェットヘッド12よりも高い位置に配置され、外付け中間パック132は、本体中間パック134よりも高い位置に配置されている。これにより、外付け中間パック132から本体中間パック134、本体中間パック134からインクジェットヘッド12へは、インクの水頭差を利用する水頭値方式により、インクが流れる。なお、下置きされたインク容器130から外付け中間パック132へは、バルブ138を開いた状態で、インク汲み上げポンプ136を利用してインクを汲み上げる。インクの汲み上げ時以外には、バルブ138を閉じる。
【0086】
以上の構成を有する印刷装置10において、脱気機構は、本体中間パック134、外付け中間パック132、インク容器130の1箇所または複数個所に設ける。脱気機構の構成は、上記した実施の形態と同じ構成とすることができる。
【0087】
図9は、複数のインク容器140が下置きされた印刷装置10の別の構成例を示す図である。この構成は、長時間連続プリントを可能にするバルクインク供給システムである。インク容器140とインクジェットヘッド12との経路上には、バルクタンク142とカートリッジ144とを有している。カートリッジ144はインクジェットヘッド12よりも高い位置に配置され、バルクタンク142は、カートリッジ144よりも高い位置に配置されている。これにより、バルクタンク142からカートリッジ144、カートリッジ144からインクジェットヘッド12へは、インクの水頭差を利用する水頭値方式により、インクが流れる。なお、下置きされたインク容器140からバルクタンク142へは、バルブ148を開いた状態で、インク汲み上げポンプ146を利用してインクを汲み上げる。インクの汲み上げ時以外には、バルブ148を閉じる。
【0088】
以上の構成を有する印刷装置10において、脱気機構を、カートリッジ144、バルクタンク142の一方または両方に設ける。脱気機構の構成は、上記した実施の形態と同じ構成とすることができる。
【0089】
上記した実施の形態において、減圧手段110を外周部102内に収容してもよい。この構成により、インク容器100内に減圧及び脱気のための構成が全て封入された構成を実現することができる。
【0090】
上記した実施の形態において、減圧手段110を、手動操作によって減圧を行う構成を挙げたが、電動等による自動減圧の構成を採用してもよい。例えば、減圧が解除された状態を検出する手段を用い、減圧が所定のレベルに解除された状態になった場合に自動的に減圧することも可能である。この場合に、間欠駆動ポンプ等を用いて減圧を行ってもよい。
【0091】
上記した実施の形態においては、気液分離膜であるポリエチレン単層メンブレン107を袋状にして、気液分離手段106を構成する例を挙げて説明したが、気液分離手段の周囲全体が気液分離膜である必要はない。気液分離手段は、外周の少なくとも一部が撥水性を有する気液分離膜であればよい。少なくとも一部が撥水性を有する気液分離膜であれば、その部分からインク中の気体を気液分離手段の内部に取り込むことができる。
【0092】
(実施の形態に係る構成の効果)
(1)本実施の形態のインク容器100は、撥水性を有するポリエチレン単層メンブレン107を袋状にし、その内部に多孔
フィルム108を充填して構成した気液分離手段106を備える。減圧手段110によって気液分離手段106の内部を減圧することで、気液分離膜107を介してインク中の気体を脱気することができる。気液分離膜107が撥水性を有することにより、気液分離膜107をインクが通過してしまう可能性を低減することができる。
【0093】
(2)本実施の形態のインク容器100の気液分離手段106は、気液分離膜としてポリエチレン単層メンブレン107を有する。発明者の実験により、ポリエチレン単層メンブレン107を用いた気液分離手段106は、インクの脱気処理を適切に行えることが確認された。
【0094】
(3)第1の実施の形態の変形例3のインク容器100の気液分離手段106は、気液分離膜がフッ素樹脂によって構成されている。フッ素樹脂は、高い撥水性を有するので、気液分離手段106の気液分離膜として好ましい。
【0095】
(4)第1の実施の形態の変形例4のインク容器100の気液分離手段106は、気液分離膜が超撥水処理したメッシュによって構成されている。超撥水処理を行うことにより、気液分離膜として様々な材料を用いることが可能となる。
【0096】
(5)本実施の形態のインク容器100において、気液分離手段106の内部には、ポリエチレン単層メンブレン107よりも孔径が大きい多孔フィルム108が充填されているので、気液分離手段106の機械的な強度を高めることができる。
【0097】
(6)第1の実施の形態の変形例1、変形例2にかかるインク容器100は、気体を通す程度の膜厚の無孔フィルム109によってポリエチレン単層メンブレン107が覆われている。この構成により、気液分離手段106の内部にインクが滲み込むリスクをいっそう低減できる。
【0098】
(7)本実施の形態のインク容器100において、インク収容部104は、可撓性を有するので、インク収容部104の内部のインクの圧力と大気圧とが釣り合い、印刷装置100において、水頭値方式によるインクの供給を適切に行うことができる。
【0099】
(8)本実施の形態のインク容器100は、接続部304に接続された減圧手段110を備える。このように減圧手段110を備えたインク容器100は、例えば、印刷装置の経路上において、インクを貯留するインク容器として利用することができる。
【0100】
(9)第1の実施の形態のインク容器100はインクを攪拌する振動攪拌機構112を備え、第4の実施の形態のインクを攪拌するマグネチックスターラ120を備える。この構成により、インク収容部104内のインクを攪拌することで、効果的に脱気を行うことができる。
【0101】
(10)本実施の形態の印刷装置100は、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッド12と、インクジェットヘッド12へ供給するインクを貯留するインク容器100とを備え、インク容器100は、インクを収容するインク収容部104と、インク収容部104内に設けられた気液分離手段106であって、撥水性を有するポリエチレン単層メンブレン107によって構成された袋状の気液分離手段106と、気液分離手段106の内部の空間とインク収容部104の外部の減圧手段110とを接続する接続部304とを備える。この構成により、減圧手段110によって気液分離手段106の内部を減圧することで、ポリエチレン単層メンブレン107を介してインク中の気体を脱気することができる。また、ポリエチレン単層メンブレン107が撥水性を有することにより、ポリエチレン単層メンブレン107をインクが通過してしまう可能性を低減することができる。また、気液分離手段106によって脱気できるので、例えば、脱気されていないインクを用いて印刷を行う場合にも、インクジェットヘッド12への供給前にインクの脱気度を適切に高めることができる。
【0102】
(11)本実施の形態の変形例6にかかる印刷装置は、インクジェットヘッド12と、インク供給経路の中間に配置されたインク容器100を保持する中間パック保持部16と、ポリエチレン単層メンブレン107によって構成された袋状の気液分離手段106と、気液分離手段106の内部の空間に接続された減圧手段110とを備え、中間パック保持部16に保持されたインク容器100の中に気液分離手段106を入れて、脱気を行う。
【0103】
この構成により、上述した実施の形態と同様に、気液分離手段106の内部にインクが滲み込むリスクを低減しつつ、インクの脱気を行うことができる。また、中間パック保持部16に保持されたインク容器100に気液分離手段106を入れることで脱気を行えるので、インク容器100自体は気液分離手段106を有する必要はなく、インク容器100を取り替えても脱気を行える。