(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3制御モードの実行時において、前記検出車速が前記制限車速より大きい場合には、前記制御部は車両ブレーキ装置を作動させて減速する第4制御モードが実行可能である請求項2に記載の荷役作業車。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0013】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、当該部材が2以上設けられていてもよい。
(第1実施形態)
1.荷役作業車の構成
荷役作業車1は、
図1に示すように、前輪Fh側に荷役装置3、及び後輪Rh側に錘部5を有する。本実施形態に係る荷役装置3は、一対のフォーク3A及び一対のマストリフトシリンダー3B等を有する。
【0014】
つまり、本実施形態は、カウンターバランス式のフォークリフトに本発明に係る荷役作業車を適用したものである。各フォーク3Aは、前輪Fh側から車両前方側に延びる帯板状の部材である。
【0015】
一対のマストリフトシリンダー3Bは、一対のフォーク3Aを含む荷役部を昇降させる油圧機器である。錘部5は、荷役装置3に作用する重力により車両が前方側に大きく傾くことを抑制する釣り合い錘である。
【0016】
前輪Fhと後輪Rhとの間には、バッテリ7が収納されている。バッテリ7は、荷役作業車1の動力用電力を供給する電源である。つまり、バッテリ7は、走行用電動モータ(
図2参照)及び油圧ポンプ用電動モータ(図示せず。)等に電力を供給する二次電池である。
【0017】
走行用電動モータは、車両走行用のトルクを発生させる駆動源9の一例である。油圧ポンプ用電動モータは、マストリフトシリンダー3B等の油圧機器に作動油を供給する油圧ポンプ(図示せず。)を駆動する。
【0018】
なお、本実施形態では、前輪Fhが駆動源9からトルクの供給を受けて回転する駆動輪である。後輪Rhは操舵輪である。操舵輪は、車両の走行方向を制御するための車輪である。以下、後輪Rhを操舵輪Rhともいう。
【0019】
2.駆動源の制御
2.1 制御系の構成
図2に示すように、駆動源9が発生する走行用のトルクは、制御部11により制御される。制御部11は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。制御部11、つまりCPUは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されたプログラムに従って駆動源9を制御する。
【0020】
制御部11には、少なくともアクセルセンサS1、舵角検出部S2及び車速検出部S3からの信号が入力されている。アクセルセンサS1はアクセル12の操作量を検出する。アクセル12は、車速を増減させる際に作業者(オペレータ)により操作される操作部である。
【0021】
アクセル12は、踏み込み式のアクセルペダルや手動操作されるアクセルレバー等、その形式は不問である。本実施形態に係るアクセル12は、踏み込み式のアクセルペダルである。
【0022】
制御部11は、アクセル12の操作量が大きくなるほど、駆動源9で発生するトルクを大きくし、アクセル12の操作量が小さくなるほど、駆動源9で発生するトルクを小さくする。以下、アクセルセンサS1により検出された操作量を検出操作量という。
【0023】
舵角検出部S2は操舵輪Rhの操舵角度を検出する。本実施形態に係る舵角検出部S2は、操舵輪Rhにて操舵角度を検出する。以下、舵角検出部S2が検出した操舵角度を検出舵角θsという。
【0024】
舵角検出部S2は、操舵角度の絶対値を検出舵角θsとして検出する。なお、
図3及び
図4では、右旋回時の検出舵角θsをプラス(+)と表記し、左旋回時の検出舵角θsをマイナス(−)と表記している。
【0025】
車速検出部S3は車速を検出する。車速検出部S3が検出した車速(以下、検出車速Vという。)は、車両速度のスカラー量(絶対値)である。つまり、検出車速Vは、直進時及び旋回時、並びに前進時及び後進時を問わず、検出時における車両の速さを示す。
【0026】
制御部11は、車両ブレーキ装置13の作動を制御可能である。本実施形態に係る車両ブレーキ装置13は、ディスクブレーキやドラムブレーキ等の摩擦制動装置、及び電動モータにて構成された駆動源9を利用した回生制動装置を有して構成されている。そして、制御部11は、車両ブレーキ装置13のうち少なくとも回生制動装置の制動力を制御可能である。
【0027】
2.2 制御の概要
制御部11は、第1制御モード、第2制御モード及び第3制御モードのうちいずれかの制御モードにて駆動源9等を制御可能である。
【0028】
第1制御モードは「アクセル12の操作量、つまり検出操作量に応じたトルクを駆動源9に発生させる」制御モードである。第1制御モードの実行時における、検出操作量と駆動源9で発生させるトルクとの関係は予め設定されている。以下、当該「予め設定された関係」により決まるトルクを通常発生トルクという。
【0029】
第2制御モードは、「検出操作量に応じて発生するトルクを第1制御モード時に比べて減少させる」制御モードである。つまり、
図3に示すように、通常発生トルクを100%としたとき、第2制御モードでは、検出操作量に対して通常発生トルクより小さいトルクが発生する。
【0030】
第2制御モード時に発生するトルク(以下、第1制限トルクという。)とし、同一の検出操作量に対する通常発生トルクと第1制限トルクとの差を第1制限量としたとき、当該第1制限量は、
図3に示すように、検出舵角θsが大きくなるほど、大きくなる。
【0031】
そして、制御部11は、検出車速Vが予め設定された所定車速(以下、第1所定速度V1という。)以下の場合に第1制御モードを実行し、かつ、検出車速Vが第1所定速度V1より大きい場合に第2制御モードを実行する。
【0032】
なお、第2制御モードは、検出舵角θsが第1検出舵角θs1と第2検出舵角θs2との間にあるときに実行される。つまり、検出舵角θsが0以上、第1検出舵角θs1未満である場合には、制御部11は、駆動源9に通常発生トルクを発生させる。
【0033】
検出舵角θsが第1検出舵角θs1以上、第2検出舵角θs2以下の場合には、制御部11は、検出舵角θsが大きくなるほど、第1制限量が大きくなるような第1制限トルクを発生させる。
【0034】
検出舵角θsが第2検出舵角θs2より大きい場合には、制御部11は、検出舵角θsが第2検出舵角θs2であるときのトルク(以下、最小トルクという。)に維持する。なお、本実施形態では、第1制限量の変化率が検出舵角θsによらず一定、最小トルクが前進時及び後退時によらず一定、かつ、右旋回時及び左旋回時を問わず、当該変化率及び最小トルクが一定である。
【0035】
第3制御モードは、検出車速Vが第1所定速度V1より大きい場合に車速を、
図4に示す制限車速Vlmt以下とする制御モードである。制限車速Vlmtとは、検出舵角θsとの関係で予め設定された車速の値であって、検出舵角θsが大きくなるほど小さくなる車速の値である。
【0036】
なお、第3制御モードは、検出舵角θsが第3検出舵角θs3と第5検出舵角θs5との間にあるときに実行される。つまり、検出舵角θsが0以上、第3検出舵角θs3未満である場合には、制御部11は速度制限を実行しない。このため、車両は、通常発生トルクによって決まる速度で走行する。
【0037】
検出舵角θsが第3検出舵角θs3以上、第5検出舵角θs5以下の場合には、制御部11は、検出舵角θsが大きくなるほど、制限車速Vlmtを小さくする。このとき、検出車速Vが制限車速Vlmtを越えていると制御部11が判断した場合には、制御部11は、車両ブレーキ装置13、つまり回生制動装置を作動させて車速を制限車速Vlmt以下まで低下させる第4制御モードを実行する。
【0038】
検出舵角θsが第5検出舵角θs5より大きい場合には、制御部11は、検出舵角θsが第5検出舵角θs5であるときの車速(以下、第2所定速度V2という。)に維持する。第2所定速度V2は第1所定速度V1より大きい速度である。
【0039】
本実施形態では、検出車速Vが第1所定速度V1より大きい状態では、第2制御モード及び第3制御モードが実行され得る状態(以下、制限状態という。)となる。
そして、制御部11は、制限状態時において、制限車速Vlmtで走行しているときに発生しているトルク(以下、第2制限トルクという。)が第1制限トルクより大きい場合には、駆動源9で発生させるトルクを第1制限トルク以下とする。
【0040】
制御部11は、制限状態時において、第2制限トルクが第1制限トルクより小さい場合には、駆動源9で発生させるトルクを第2制限トルク以下とする。なお、この場合、検出車速Vが制限車速Vlmtより大きい場合には、車両ブレーキ装置13も作動させる。
【0041】
なお、本実施形態では、検出車速Vが第1所定速度V1より大きく、かつ、第2所定速度V2以下の場合、第2制御モードが実行される確率が高い。本実施形態では、検出車速Vが第2所定速度V2より大きい場合、第3制御モードが実行される確率が高い。
【0042】
2.3 制御の詳細
図5は、上記「制御の概要」の制御フローの一例を示す。当該制御フローを実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に記憶されている。検出舵角θsと第1制限トルク(第1制限量)及び制限車速Vlmt(第2制限トルク)との関係は、ROM等の不揮発性の記憶部15(
図2参照)に予め記憶されている。
【0043】
荷役作業車1の始動スイッチ(図示せず。)が投入されると、上記制御フローを実行するためのプログラムが制御部11(CPU)に読み込まれる。当該プログラムが実行されと、制御部11は検出車速Vが第1所定速度V1より大きいか否かを判断する(S1)。
【0044】
検出車速Vが第1所定速度V1以下であると制御部11が判断した場合には(S1:NO)、制御部11は第1制御モードにて駆動源9を制御する。つまり、制御部11は、第2制御モード及び第3制御モード等の特別な制御モードを実行する場合を除き、第1制御モードにて駆動源9を制御する。
【0045】
検出車速Vが第1所定速度V1より大きいと制御部11が判断した場合には(S1:YES)、制御部11は、記憶部15を利用して、現時の検出舵角θsに対する第1制限トルク及び制限車速Vlmtを決定する(S3)。
【0046】
次に、制御部11は、現時のトルクが第1制御トルクより大きいか否かを判断する(S5)。なお、本実施形態に係る制御部11は、駆動源9のトルク指令信号又は駆動源9への印加電圧等を利用して現実のトルクを検出する。
【0047】
現時のトルクが第1制御トルクより大きいと制御部11が判断した場合には(S5:YES)、制御部11は、現時のトルクが第1制御トルク以下となるように、上記トルク指令信号又は印加電圧等を制御してトルクを下げた後(S7)、検出車速Vが制限車速Vlmtより大きいか否かを判断する(S9)。
【0048】
現時のトルクが第1制御トルクより大きくないと制御部11が判断した場合には(S5:NO)、現時のトルク制御、つまり第1制御モードを維持した状態でS9を実行する。検出車速Vが制限車速Vlmtより大きくないと制御部11が判断した場合には(S9:NO)、制御部11は、現時のトルク制御、つまり第1制御モードを維持した状態で、再びS1を実行する。
【0049】
検出車速Vが制限車速Vlmtより大きいと制御部11が判断した場合には(S9:YES)、検出車速Vが制限車速Vlmt以下となるように、駆動源9の回転数を制御する。なお、本実施形態では、制御部11は、駆動源9で発生させるトルクを下げながら回生制動を作動させることにより、検出車速Vが制限車速Vlmt以下となるように、駆動源9の回転数を下げる。
【0050】
3.本実施形態に係る荷役作業車の特徴
本実施形態に係る制御部11は、検出車速Vが予め設定された第1所定速度V1以下の場合に第1制御モードを実行し、かつ、検出車速Vが第1所定速度V1より大きい場合に第2制御モードを実行する。これにより、本実施形態では、起動トルクが小さくなることを抑制できるので、荷役作業車1の操作性及び作業性が低下することを抑制できる。
【0051】
本実施形態に係る第2制御モードにおいては、検出舵角θsが大きくなるほど、駆動源9で発生させるトルクを大きく減少させるので、車両旋回時に荷崩れの発生を抑制でき得る。
【0052】
すなわち、検出舵角θsが大きい状態で大きなトルクを発生させると、旋回時に貨物に作用する慣性力(遠心力)が大きくなるので、荷崩れが発生する可能性が高い。これに対して、本実施形態では、検出舵角θsが大きくなるほどトルクを大きく減少させるので、旋回時に荷崩れの発生を抑制でき得る。
【0053】
本実施形態に係る制御部11は、検出車速Vが第1所定速度V1より大きい場合に車速を制限車速Vlmt以下とする第3制御モードを実行する。これにより、旋回時に貨物に作用する慣性力を小さくできるので、旋回時に荷崩れの発生を抑制でき得る。
【0054】
本実施形態では、第3制御モードの実行時において、検出車速Vが制限車速Vlmtより大きい場合には、制御部11は車両ブレーキ装置13を作動させて減速する。これにより、早期に検出車速Vを制限車速Vlmt以下にすることができる。
【0055】
なお、第1制限量及び制限車速Vlmt等は、上記の作用効果を得ることが可能な値であって、実験や数値シミュレーション等により試行錯誤的に決定される値である。
第2制御モード時や第3制御モード時において、トルク又は車速を低下させるときには、減速時に貨物に作用する慣性力により、貨物が荷崩れしない程度の減速度が適用される。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第1制限量の変化率が検出舵角θsによらず一定、かつ、最小トルクが前進時及び後退時によらず一定、かつ、当該変化率及び最小トルクが一定であった。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
すなわち、例えば、上記変化率を検出舵角θsに応じて変更する、又は変化率及び最小トルクを前進時と後退時とで異なる値とする、右旋回時と左旋回時とで変化率及び最小トルクを相違させる等としてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、検出車速Vによって、第1制御モードを実行する場合と第2制御モード又は第3制御モードを実行する場合を分けた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
すなわち、第2制御モードは、車両が停止状態から発進するときに特に有効な制御モードである。そこで、例えば、検出車速Vが第1所定速度V1より大きく、かつ、検出車速Vの変化率が正であるときに第2制御モードを実行する構成とし、検出車速Vが第2所定速度V2より大きいときに第3制御モードを実行する構成としてもよい。
【0060】
上述の実施形態に係る荷役作業車は、カウンターバランス式の電動フォークリフトであった。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、リーチ式の電動フォークリフト、又はカウンターバランス式のエンジンフォークリフトであってもよい。
【0061】
上述の実施形態では、車両が停止状態から発進するとき等のように増速(加速)時に検出舵角θsに応じてトルク等を規制制御するものであった。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、減速時に検出舵角θsに応じてトルク等を規制制御してもよい。
【0062】
上述の実施形態に係る第3制御モードでは回生制動装置を作動させて減速した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、摩擦制動装置を作動させて減速する構成、又は摩擦制動装置及び回生制動装置を組み合わせて減速する構成であってもよい。
【0063】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。