(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る出庫支援装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
[出庫支援装置12の構成]
(自車10の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る出庫支援装置12を搭載した車両(以下、自車10という)の構成を示すブロック図である。
【0020】
出庫支援装置12は、出庫(PO;Pull Out)支援制御を含む支援制御を行うことで、自動操舵によって自車10の出庫を支援する装置である。出庫支援装置12は主に縦列駐車時の出庫を支援する。ここで、ステアリングホイール70の操作は出庫支援装置12により自動で行われる。アクセルペダル及びブレーキペダル(いずれも図示せず)並びにシフトレバー32の操作は自車10の運転者により行われる。
【0021】
出庫支援装置12は、支援制御で用いられる各種の物理量を検出するセンサ群14と、ナビゲーション装置16と、支援制御を司るECU(電子制御装置;以下、支援ECU18)と、電動パワーステアリングシステム(Electric Power Steering)ユニット(以下、EPSユニット20)を備える。
【0022】
図1に示すように、センサ群14には、カメラ群22、ソナー群24と、車輪センサ26と、車速センサ28と、シフト位置センサ30が含まれる。
【0023】
カメラ群22は、自車10の周辺を撮像可能な1つ又は複数のカメラからなり、自車10の周辺画像を示す撮像信号を逐次出力する。ソナー群24は、音波を発射して他物体からの反射音を受信可能な1つ又は複数のソナーからなり、自車10からの距離Disに相関する検出信号を逐次出力する。
【0024】
車輪センサ26は、左右の前輪及び/又は左右の後輪(いずれも不図示)の回転角度を検出する角度センサ又は変位センサであり、自車10の走行距離に相関する数の検出パルスを出力する。車速センサ28は、自車10の速度(つまり、車速)を検出するセンサであり、例えば、トランスミッションのドライブシャフト(不図示)の回転量から車速を検出可能に構成される。
【0025】
シフト位置センサ30は、シフトレバー32(セレクタともいう)の操作に応じて選択されたシフト位置を示す検出信号を出力する。シフトレバー32は、例えば、6種類のシフト位置、「P」(パーキングレンジ)、「R」(リバースレンジ)、「N」(ニュートラルレンジ)、「D」(ドライブレンジ)、「2」(セカンドレンジ)又は「L」(ローレンジ)のうちのいずれか1種類を選択可能な装置である。
【0026】
ナビゲーション装置16は、GPS(Global Positioning System)を用いて自車10の現在位置を検出し、運転者を含む乗員に対して目的地までの経路を案内する。ナビゲーション装置16は、タッチパネルディスプレイ40と、スピーカ42と、地図情報データベースが構築された記憶装置(不図示)を含んで構成される。このナビゲーション装置16は、出庫支援装置12におけるHMI(Human-Machine Interface)として機能する。
【0027】
支援ECU18は、ハードウェアとして、入出力部50、演算部52、及び記憶部54を有する。この演算部52は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部54に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、出庫軌道設定部56(目標舵角設定部)、支援継続判定部58、支援制御部60及び出力制御部62として機能する。
【0028】
EPSユニット20は、ステアリングホイール70と、ステアリングコラム71と、舵角センサ72と、トルクセンサ73と、EPSモータ74と、レゾルバ75と、EPS−ECU76を含んで構成される。
【0029】
舵角センサ72は、ステアリングホイール70の舵角を検出する。トルクセンサ73は、ステアリングホイール70にかかるトルクを検出する。EPSモータ74は、ステアリングホイール70に連結されたステアリングコラム71に対して駆動力又は反力を付与する。レゾルバ75は、EPSモータ74の回転角度を検出する。
【0030】
EPS−ECU76は、EPSユニット20全体を制御する装置であり、支援ECU18と同様に、ハードウェアとして、入出力部、演算部及び記憶部(いずれも不図示)を有する。
【0031】
(カメラ群22及びソナー群24の具体的構成)
図2は、
図1の自車10におけるカメラ群22及びソナー群24の配置例を示す概略平面図である。例えば、カメラ群22は、車体80の前方にある前方カメラ81と、車体80の後方にある後方カメラ82と、運転者席側ドアミラーの外側下部にある右側方カメラ83と、助手者席側ドアミラーの外側下部にある左側方カメラ84の4つのカメラで構成される。
【0032】
ソナー群24は、車体80の前方にある4つの前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93、前方ソナー(コーナ右)94と、車体80の後方にある4つの後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97、後方ソナー(コーナ右)98で構成される。
【0033】
前方ソナー(センタ左)92と前方ソナー(センタ右)93は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。前方ソナー(センタ)92、93は、車体80の前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の前方からの音波を受信可能に配置されている。前方ソナー(コーナ左)91と前方ソナー(コーナ右)94は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。前方ソナー(コーナ左)91は、車体80を上方から見たときに前方ソナー(センタ左)92よりも左外側に配置されている。前方ソナー(コーナ左)91は、車体80の左前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の左前方からの音波を受信可能に配置されている。前方ソナー(コーナ右)94は、車体80を上方から見たときに前方ソナー(センタ右)93よりも右外側に配置されている。前方ソナー(コーナ右)94は、車体80の右前方に向けて音波を発射可能であり、車体80の右前方からの音波を受信可能に配置されている。
【0034】
後方ソナー(センタ左)96と後方ソナー(センタ右)97は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通り車長方向に延びる中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。後方ソナー(センタ)96、97は、車体80の後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の後方からの音波を受信可能に配置されている。後方ソナー(コーナ左)95と後方ソナー(コーナ右)98は、車体80を上方から見たときに車体80の中心を通る車長方向の中心線に対して略左右対称な位置に設けられている。後方ソナー(コーナ左)95は、車体80を上方から見たときに後方ソナー(センタ左)96よりも左外側に配置されている。後方ソナー(コーナ左)95は、車体80の左後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の左後方からの音波を受信可能に配置されている。後方ソナー(コーナ右)98は、車体80を上方から見たときに後方ソナー(センタ右)97よりも右外側に配置されている。後方ソナー(コーナ右)98は、車体80の右後方に向けて音波を発射可能であり、車体80の右後方からの音波を受信可能に配置されている。
【0035】
以下、前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93、前方ソナー(コーナ右)94を特に区別ない場合、前方ソナー91〜94と記載する。また後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97、後方ソナー(コーナ右)98を特に区別しない場合、後方ソナー95〜98と記載する。なお、前方ソナー91〜94は本発明の前方検出部、後方ソナー95〜98は本発明の後方検出部に相当する。
【0036】
また、前方ソナー(コーナ左)91、前方ソナー(コーナ右)94を特に区別しないときには前方ソナー(コーナ)91、94と記載し、前方ソナー(センタ左)92、前方ソナー(センタ右)93を特に区別しないときには前方ソナー(センタ)92、93と記載する。後方ソナー(コーナ左)95、後方ソナー(コーナ右)98を特に区別しないときには後方ソナー(コーナ)95、98と記載し、後方ソナー(センタ左)96、後方ソナー(センタ右)97を特に区別しないときには後方ソナー(センタ)96、97と記載する。
【0037】
図3は、前方ソナー(センタ)92、93に対する距離領域を示す模式図である。ここでは、前方ソナー(センタ)92、93について例を説明するが、他のソナー91、94〜98についても同様である。
【0038】
支援ECU18(演算部52)は、前方ソナー(センタ)92、93からの距離Disに応じて、3つの距離領域に区分して検出処理を行う。0<Dis≦D2を満たす距離領域を「検出可能領域」と定義する。Dis>D2を満たす距離領域を「検出不可領域」と定義する。「検出可能領域」は更に2つの距離領域に区分される。具体的には、0<Dis≦D1(<D2)を満たす距離領域を「Near領域」と定義する。D1<Dis≦D2を満たす距離領域を「Far領域」と定義する。
【0039】
前方ソナー(センタ)92、93が「Near領域」において他物体を検出した場合、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「Near」と判定する。前方ソナー(センタ)92、93が「Far領域」において他物体を検出した場合、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「Far」と判定する。前方ソナー(センタ)92、93が「検出不可領域」において他物体を検出した場合(又は、他物体を検出できなかった場合)、支援ECU18(演算部52)は検出結果を「不検出」と判定する。
【0040】
[出庫支援装置12の動作]
(出庫支援制御の概要)
この実施形態に係る出庫支援装置12は、以上のように構成される。出庫支援装置12は、ナビゲーション装置16(
図1)を介する運転者の入力操作に応じて、
図5にて後述する「出庫支援制御モード」に移行し、自車10に対する出庫支援制御を開始する。ナビゲーション装置16は、出庫支援制御の実行中に、出庫支援に関するガイダンス出力(以下、単にガイダンスという)を行う。具体的には、出力制御部62による出力制御に従って、タッチパネルディスプレイ40には出庫支援に関する可視情報(画面)が出力されると共に、スピーカ42には出庫支援に関する音声情報が出力される。
【0041】
図4は、出庫支援制御による自車10の一連の動作を示す模式図である。ここでは、縦列駐車スペース100内に、前方他車101(前方障害物)、自車10、後方他車102(後方障害物)が一列に駐車している場合を想定する。自車10は
図4の右方向に出庫しようとしている。
【0042】
[動作1]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の後進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「P」から「R」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の現在舵角(操舵角)θが中立舵角(=0度)となるように自動操舵する。これにより、自車10はクリープ力の作用により真っ直ぐ後方へ移動する。後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
【0043】
[動作2]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の前進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「R」から「D」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18はステアリングホイール70の現在舵角θが目標舵角θtar(時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は右方向に旋回しながら前方へ移動する。前方ソナー91〜94の1つ以上の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
【0044】
[動作3]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の後進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「D」から「R」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の現在舵角θが目標舵角θtar(反時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は左方向に旋回しながら後方へ移動する。後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」となると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対して自車10の停止操作(停止指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、ブレーキペダルを踏下する操作を行う。
【0045】
[動作4]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して自車10の前進操作(発車指示)を行うための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って、シフト位置を「R」から「D」に変更するシフトレバー32の操作を行った後、ブレーキペダルを離す操作を行う。支援ECU18は、ステアリングホイール70の現在舵角θが目標舵角θtar(時計回り)となるように自動操舵する。これにより、自車10は右方向に旋回しながら前方へ移動する。前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」であり、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない(「Far」又は「不検出」である)ときには、支援ECU18は出庫可能と判定する。
【0046】
[動作5]において、支援ECU18は、ナビゲーション装置16に対して出庫支援の終了を報知するための出力信号を供給する。運転者は、ナビゲーション装置16による報知を受けて、運転主体が自身に移譲された旨を把握する。運転者は、アクセルペダルを踏下することで、縦列駐車スペース100から離れる。これにより、自車10の出庫動作が完了する。
【0047】
(状態遷移図)
図5は「出庫支援制御モード」の状態遷移図である。「出庫支援制御モード」は、「前進モード」、「後進モード」、「中立舵角制御モード」及び「支援終了報知モード」の4つのモードから構成される。
【0048】
「出庫支援制御モード」のイベントの発生に伴って、「前進モード」又は「後進モード」のいずれかのモードに遷移する。通常、「出庫支援制御モード」のイベントが発生すると、支援ECU18はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「R」に変更する案内をするように出力信号を供給する。運転者がシフトレバー32を操作し、シフト位置が「R」になると「後進モード」に遷移する。しかし、例えば後方ソナー95〜98の1つ以上の検出結果が「Near」であるときには、支援ECU18はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「D」に変更する案内をするように出力信号を供給する。運転者がシフトレバー32を操作し、シフト位置が「D」になると「前進モード」に遷移する。
【0049】
「前進モード」においてシフト位置が「D」から「R」に変更された場合、「前進モード」から「後進モード」に遷移する。
【0050】
「後進モード」においてシフト位置が「R」から「D」に変更された場合、「後進モード」から「前進モード」に遷移する。
【0051】
「前進モード」において終了判定(「出庫可能」判定)が成立した場合、「中立舵角制御モード」に遷移する。「出庫可能」判定は、例えば、前方ソナー(センタ)92、93の検出結果が「不検出」であり、且つ、前方ソナー(コーナ)91、94の検出結果が「Near」でない(「Far」又は「不検出」である)場合に成立する。
【0052】
「中立舵角制御モード」において舵角中立化制御終了判定が成立した場合、「支援終了報知モード」に遷移する。舵角中立化制御終了判定は、ステアリングホイール70の操舵角が中立位置(前輪の転舵角が中立となる位置)となったときに成立する。
【0053】
「支援終了報知モード」において、出庫支援制御の終了判定が成立した場合、「出庫支援制御モード」のイベントを終了する。出庫支援制御の終了判定は、例えば運転者がタッチパネルディスプレイ40上のボタンをタッチする等して、出庫支援制御の終了を了解した意思を示したときに成立する。
【0054】
(制御フロー)
図6は支援ECU18の「出庫支援制御モード」における処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ステップS1において、支援ECU18は出庫方向の確認を行う。出力制御部62は、出庫支援制御の開始時にタッチパネルディスプレイ40に左右いずれの方向に出庫するかを選択するボタンを表示する。運転者はタッチパネルディスプレイ40のボタンをタッチすることで出庫方向を選択する。
【0056】
ステップS2において、支援ECU18は最初に遷移するモードとして「後進モード」又は「前進モード」を選択する。出庫支援制御では、基本的に「後進モード」から始めるが、自車10の後方に障害物が接近しているときには例外として「前進モード」から始める。具体的には、自車10の後方の近傍に障害物がなく、すべての後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」でない場合には「後進モード」を選択する。一方、自車10の後方の近傍に障害物があり、1つ以上の後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」である場合には「前進モード」を選択する。
【0057】
なお、ステップS2において最初に遷移するモードとして「後進モード」が選択された場合、最初に遷移した「後進モード」の処理では、支援ECU18はステアリングホイール70の舵角を中立舵角となるように制御する。一方、ステップS2において最初に遷移するモードとして「前進モード」が選択された場合、最初に遷移した「前進モード」の処理では、支援ECU18はステアリングホイール70の舵角を自車10の出庫方向となるように制御する。その後の「前進モード」及び「後進モード」の処理では、支援ECU18は、自車10が出庫方向に旋回するようにステアリングホイール70の舵角を制御する。
【0058】
なお、最初に遷移した「後進モード」の処理とは、出庫支援制御開始後の直後に行われた「後進モード」の処理を示し、この最初に遷移した「後進モード」の処理の前には「後進モード」の処理も「前進モード」の処理も行われていないことを示す。同様に、最初に遷移した「前進モード」の処理とは、出庫支援制御開始後の直後に行われた「前進モード」の処理を示し、この最初に遷移した「前進モード」の処理の前には「前進モード」の処理も「後進モード」の処理も行われていないことを示す。
【0059】
ステップS3において、支援ECU18は選択したモードが「前進モード」であるか「後進モード」であるかを判定する。遷移するモードが「前進モード」である場合、支援ECU18はステップS5に処理を進める。遷移するモードが「後進モード」である場合、支援ECU18はステップS4に処理を進める。
【0060】
ステップS4において、支援制御部60は後進モード処理を行う。後進モード処理は
図10を用いて後に詳述する。
【0061】
ステップS5において、支援制御部60は前進モード処理を行う。前進モード処理は
図7及び
図8を用いて後に詳述する。
【0062】
ステップS6において、支援制御部60は中立舵角制御モード処理を行う。支援制御部60は、ステアリングホイール70の現在舵角θを中立位置(前輪の転舵角が中立となる位置)に変更を指示する制御信号をEPS−ECU76に供給する。
【0063】
ステップS7において、出力制御部62は支援終了報知モード処理を行う。出力制御部62はナビゲーション装置16に対して出庫支援制御が終了する旨を示す出力信号を供給する。また出力制御部62はナビゲーション装置16に対してタッチパネルディスプレイ40に運転者が出庫支援制御の終了を了解した旨を示すためのボタンを表示する出力信号を供給する。運転者がこのボタンにタッチすると「出庫支援制御モード」を終了する。
【0064】
図7及び
図8は支援ECU18の「前進モード」における処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
ステップS10において、支援ECU18は、シフト位置センサ30による検出信号からシフトレバー32のシフト位置が「D」であると判別し、「前進モード」を開始する。
【0066】
ステップS11において、出庫軌道設定部56は自車10の周辺にある障害物との位置関係を示す各種情報を取得する。具体的には、前方ソナー91〜94は、自車10と前方他車101の間の前方距離Dfを検出する。また出庫軌道設定部56は、前方距離Dfの他に、自車10の現在位置Pc(中間位置Pm)を求める。前方距離Dfは自車10と前方他車101との距離を示す。中間位置Pmは、自車10が停止し操舵の切り返しを行う位置である。中間位置Pmにおいて自車10の進行方向が前進から後進又は後進から前進に切り替わる。なお、操舵の切り返しとは、自車10の操舵方向が中立位置を跨いで右から左、又は左から右に変化することを示す。
【0067】
ステップS12において、出庫軌道設定部56は前回の「前進モード」において「次回出庫可能性あり」と判定されたか否かを判定する。前回の「前進モード」において「次回出庫可能性あり」と判定された場合、支援ECU18はステップS14に処理を進める。前回の「前進モード」において「次回出庫可能性あり」と判定されなかった場合、支援ECU18はステップS13に処理を進める。
【0068】
ステップS13において、出庫軌道設定部56は、目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1に設定し、目標舵角θtarの方向を出庫支援制御開始時選択された出庫方向に設定する。なお、今回の「前進モード」の処理が、ステップS2において最初に遷移するモードとして選択された「前進モード」の処理である場合であっても、出庫軌道設定部56は、目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1に設定し、目標舵角θtarの方向を出庫支援制御開始時選択された出庫方向に設定する。
【0069】
第一舵角θ1は制御最大舵角θmaxに設定される。制御最大舵角θmaxは、操舵機構の構造上、転舵可能な最大舵角(限界舵角θlim)よりもわずかに小さい値(例えば、限界舵角θlimの95%相当)に設定される。制御最大舵角θmaxは、操舵機構の構造上、前輪を最も転舵させたときのステアリングホイール70の限界舵角θlimよりもわずかに小さい値(例えば、限界舵角θlimの95%相当)に設定される。目標舵角θtarを制御最大舵角θmaxに設定することにより、ステアリングホイール70の舵角が限界舵角θlim付近であるときに発生しやすくなる操舵機構の作動音を抑制することができる。また、EPSユニット20によるステアリングホイール70の自動操舵制御におけるオーバシュートに対するマージンを残すことができる。
【0070】
ステップS14において、出庫軌道設定部56は、目標舵角θtarの大きさを第二舵角θ2に設定し、目標舵角θtarの方向を出庫支援制御開始時選択された出庫方向に設定する。第二舵角θ2は、前回の「後進モード」(「前進モード」から「後進モード」切り替わってから「後進モード」から「前進モード」に切り替わるまでの間)において自車10が後進した距離(後進距離)に応じて設定される。
図9は第二舵角θ2のマップである。
図9に示すように後進距離が長いほど第二舵角θ2は小さな角度に設定される。
図9のマップでは後進距離の代表値に対する第二舵角θ2を示している。後進距離がこの代表値を外れて隣接する代表値の中間に位置する場合には、第二舵角θ2を線形補完して求める。また、第二舵角θ2を、マップを用いずに後進距離を変数とする関数によって求めるようにしてもよい。
【0071】
ステップS15において、支援制御部60は自車10の現在舵角θをステップS13又はステップS14で設定された目標舵角θtarへ変更する。具体的には、支援制御部60は目標舵角θtarへの変更を指示する制御信号をEPS−ECU76に供給する。これにより、自車10が中間位置Pmに停止した状態で自動操舵がなされる。このとき、ステップS1において出庫方向として右が選択されている場合は時計回り方向に操舵され、出庫方向として左が選択されている場合は反時計回り方向に操舵される。
【0072】
ステップS16(
図8)において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対して自車10を前進させる旨を示す出力信号を供給する。ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って運転者がブレーキペダルを離す操作を行うと、自車10は、クリープ力の作用により出庫軌道Tの上を前進する。
【0073】
ステップS17において、支援継続判定部58は前方ソナー91〜94により位置判定を行う。具体的には、少なくとも1つの前方ソナー91〜94の検出結果が「Near」であるか否かを判定する。少なくとも1つの前方ソナー91〜94の検出結果が「Near」である場合、支援ECU18はステップS20に処理を進める。すべての前方ソナー91〜94の検出結果が「Near」でない場合、支援ECU18はステップS18に処理を進める。
【0074】
ステップS18において、すべての前方ソナー91〜94の検出結果が「不検出」であるか否かを判定する。すべての前方ソナー91〜94の検出結果が「不検出」である場合、支援ECU18はステップS19に処理を進める。いずれか前方ソナー91〜94の検出結果が「Far」である場合、支援ECU18はステップS16に処理を戻す。
【0075】
ステップS19において、支援継続判定部58は自車10が操舵を中立にした状態で出庫できる(「出庫可能」)と判定する。
【0076】
ステップS20において、支援継続判定部58は前方ソナー(コーナ左)91又は前方ソナー(コーナ右)94の検出結果のみが「Near」であるか否かを判定する。前方ソナー(コーナ左)91又は前方ソナー(コーナ右)94の検出結果のみが「Near」である場合、支援ECU18はステップS21に処理を進める。前方ソナー(センタ左)92又は前方ソナー(センタ右)93の検出結果も「Near」である場合、支援ECU18はステップS22に処理を進める。
【0077】
例えば、出庫方向が右方向である場合に、車体80の左前方に向けて取り付けられた前方ソナー(コーナ左)91の検出結果のみが「Near」であるときを想定する。前方ソナー(コーナ左)91の検出結果のみが「Near」である場合には、自車10の車長方向に対する障害物の検出方向の角度は所定角度以上であると判定する。つまり、自車10の左前方近傍にのみ障害物があり、自車10の正面前方近傍及び右前方近傍には障害物がないと判定できる。この後の「後進モード」において操舵の切り返しを行い、自車10の車長方向が更に右方向に向けば、次回の「前進モード」において自車10の左前方の障害物を回避して出庫可能であると推定できる。
【0078】
ステップS21において、支援継続判定部58は次回の「前進モード」において、自車10が操舵の切り返しを行うことなく出庫できる可能性がある(「次回出庫可能性あり」)と判定する。
【0079】
ステップS22において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対して自車10を停止させる旨を示す出力信号を供給する。ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って運転者がブレーキペダルを踏下する操作を行うと、自車10は停止する。
【0080】
ステップS23において、支援ECU18は自車10が停止しているか否かを判定する。自車10が停止している場合、支援ECU18はステップS24に処理を進める。自車10が停止していない場合、支援ECU18はステップS22に処理を戻す。
【0081】
ステップS24において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「D」から「R」に変更する旨を示す出力信号を供給する。
【0082】
ステップS25において、支援ECU18はシフト位置が「R」であるか否かを判定する。シフト位置が「R」と判定された場合、支援ECU18はステップS4(
図6)に処理を進める。シフト位置が「R」と判定されなかった場合、支援ECU18はステップS24に処理を戻す。
【0083】
図10は支援ECU18の「後進モード」における処理の流れを示すフローチャートである。
【0084】
ステップS30において、支援ECU18は、シフト位置センサ30による検出信号からシフトレバー32のシフト位置が「R」であると判別し、「後進モード」を開始する。
【0085】
ステップS31において、出庫軌道設定部56は自車10の周辺にある障害物との位置関係を示す各種情報を取得する。具体的には、後方ソナー95〜98は、自車10と後方他車102の間の後方距離Dbをそれぞれ検出する。また出庫軌道設定部56は、後方距離Dbの他に、自車10の現在位置Pc(中間位置Pm)を求める。後方距離Dbは自車10と後方他車102との距離を示す。
【0086】
ステップS32において、出庫軌道設定部56は目標舵角θtarを設定する。今回の「後進モード」の処理が、ステップS2において最初に遷移するモードとして選択された「後進モード」の処理である場合、目標舵角θtarは中立舵角に設定される。今回の「後進モード」が、ステップS2において最初に遷移するモードとして選択された「後進モード」の処理でない場合、目標舵角θtarの大きさは第一舵角θ1に設定され、目標舵角θtarの方向を出庫支援制御開始時選択された出庫方向と反対方向に設定する。
【0087】
ステップS32では、基本的には目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1に設定するが、目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1よりも小さな舵角に設定するようにしてもよい。例えば、自車10の出庫方向と反対側に縁石等の障害物がある場合を想定する。自車10が後進する場合に、ステアリングホイール70の舵角が大きいときには、自車10が障害物に接触する可能性が高くなる。後方ソナー95〜98により自車10の出庫方向と反対側にある縁石等の障害物を検出した場合、自車10の現在舵角θを第一舵角θ1よりも小さな舵角に自動操舵することにより、自車10と障害物との接触を抑制することができる。
【0088】
又は目標舵角θtarの大きさを、「前進モード」のステップS14と同様に第二舵角θ2に設定してもよい。この場合、第二舵角θ2は、前回の「前進モード」(「後進モード」から「前進モード」に切り替わってから、「前進モード」から「後進モード」に切り替わるまでの間)において自車10が前進した距離(前進距離)に応じて設定すればよい。
【0089】
ステップS33において、支援制御部60は自車10の現在舵角θをステップS32で設定された目標舵角θtarへ変更する。具体的には、支援制御部60は、目標舵角θtarへの変更を指示する制御信号をEPS−ECU76に供給する。これにより、自車10が中間位置Pmに停止した状態で自動操舵がなされる。このとき、ステップS1において出庫方向として右が選択されている場合は反時計回り方向に転舵され、出庫方向として左が選択されている場合は時計回り方向に転舵される。
【0090】
ステップS34において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対して自車10を後進させる旨を示す出力信号を供給する。ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って運転者がブレーキペダルを離す操作を行うと、自車10は、クリープ力の作用により出庫軌道Tの上を後進する。
【0091】
ステップS35において、支援継続判定部58は後方ソナー95〜98により位置判定を行う。具体的には、少なくとも1つの後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」である場合、支援ECU18はステップS36に処理を進める。すべての後方ソナー95〜98の検出結果が「Near」でない場合、支援ECU18はステップS34に処理を戻す。
【0092】
ステップS36において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対して自車10を停止させる旨を示す出力信号を供給する。ナビゲーション装置16によるガイダンスに従って運転者がブレーキペダルを踏下する操作を行うと、自車10は停止する。
【0093】
ステップS37において、支援ECU18は自車10が停止しているか否かを判定する。自車10が停止している場合、支援ECU18はステップS38に処理を進める。自車10が停止していない場合、支援ECU18はステップS36に処理を戻す。
【0094】
ステップS38において、出力制御部62はナビゲーション装置16に対してシフト位置を「R」から「D」に変更する指示を示す出力信号を供給する。
【0095】
ステップS39において、支援ECU18はシフト位置が「D」であるか否かを判定する。シフト位置が「D」と判定された場合、支援ECU18は後進モード処理を終了する。シフト位置が「D」と判定されなかった場合、支援ECU18はステップS38に処理を戻す。
【0096】
(出庫軌道Tの設定について)
図11は前進モードにおける出庫軌道Tの設定について説明する図である。
図11は、駐車中の自車10の前方に前方他車101、後方に後方他車102が駐車している縦列駐車スペース100から自車10が出庫しようとしている状態を示している。以下、前進モードにおける出庫軌道Tの設定について説明する。
【0097】
出庫軌道設定部56は出庫支援制御の開始時における自車10の位置を原点Oとして設定する出庫座標系110を設定する。出庫座標系110は路面と平行な平面上に設定される平面座標系である。出庫座標系110のX軸は、自車10の車幅方向に平行する軸であり自車10の前方に向かって右方を正方向とする。出庫座標系110のY軸は、自車10の車長方向に平行する軸であり自車10の前方を正方向とする。
【0098】
自車10の位置は、左右後輪の車軸を結ぶ直線上であって左右後輪の中央の点に設定されている。出庫支援制御の開始時における自車10の位置を支援開始位置Psとする。支援開始位置Psは出庫座標系110の原点Oと一致する。現在の自車10の位置を現在位置Pcとする。出庫支援制御中に自車10が停止し、後進モードから前進モードに切り替わったときの自車10の位置を中間位置Pmとする。中間位置Pmは、前進モードと後進モードとが切り替わる度に更新される。
【0099】
支援ECU18は、出庫支援制御中において、前方ソナー91〜94により自車10と前方他車101との距離(以下、前方距離Df)を常時検出する。前方距離Dfは、Y軸方向における自車10のY軸正方向側端部と前方他車101のY軸負方向側端部との間の距離を示す。支援ECU18は、出庫支援制御中において、後方ソナー95〜98により自車10と後方他車102との距離(以下、後方距離Db)を常時検出する。後方距離Dbは、Y軸方向における自車10のY軸負方向側端部と後方他車102のY軸正方向側端部との間の距離を示す。
【0100】
出庫軌道設定部56は後進モードから前進モードに切り替わったときに中間位置Pmを始点とする出庫軌道Tを設定する。出庫軌道設定部56は、自車10が中間位置Pmにあるときに、ステアリングホイール70の舵角を目標舵角θtarに設定した状態で自車10が通過し得る軌道を出庫軌道Tとして設定する。なお、出庫軌道設定部56は、出庫支援制御の開始後に初めて出庫軌道Tを設定する場合、支援開始位置Psを始点とする出庫軌道Tを設定する。
【0101】
自車10の現在位置Pcは、GPSにより検出してもよいし、中間位置Pm(又は支援開始位置Ps)からのステアリングホイール70の舵角と走行距離を用いて求めてもよい。
【0102】
以上、前進モードにおける出庫軌道Tの設定について説明したが、後進モードにおける出庫軌道Tの設定についても同様である。
【0103】
[出庫支援装置12による作用効果]
縦列駐車中に自車10が縦列駐車スペース100から出庫する際に操舵の切り返しを行う場合、舵角をできるだけ大きくすることにより操舵の切り返し回数を少なくすることができる。しかし、舵角を大きくした場合、出庫支援制御終了後に運転者の操舵負担が大きくなるおそれや、走行車線上の他車の走行を阻害するおそれがある。
【0104】
ここで、縦列駐車の出庫支援制御において、常に目標舵角θtarの大きさを制御最大舵角θmaxとして制御した場合を想定した例を説明する。
図12A〜
図12Cは出庫支援制御中の自車10と前方他車101及び後方他車102との位置関係を示す図である。支援制御開始後、「前進モード」又は「後進モード」が実施され、最初に現在舵角θを目標舵角θtarに変更したときを1回目の操舵の切り返しとする。1回目の操舵の切り返しを行うときの自車10の位置は支援開始位置Psである。以降、自車10が中間位置Pmにあるときに、「前進モード」と「後進モード」とが切り替わり操舵の切り返しが行われる度に、切り返し回数は増える。以下、N回目の操舵の切り返しが行われたときの中間位置PmをPm(N)として記載する。
【0105】
図12AはN回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
図12Bは(N+1)回目の操舵の切り返し後に「後進モード」が終了した時点の状態を示す。
図12Cは(N+2)回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
【0106】
支援ECU18は、中間位置Pm(N)において自車10が停止すると「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N)においてN回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。自車10に対して前方他車101が接近し、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+1)とする(
図12A)。このとき、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果のみ「Near」であったため、支援継続判定部58は「次回出庫可能性あり」と判定する。
【0107】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N+1)にあるときに「前進モード」から「後進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+1)において(N+1)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は後進する。自車10に対して後方他車102が接近し、後方ソナー(コーナ右)98の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+2)とする(
図12B)。
【0108】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N+2)にあるときに「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+2)において(N+2)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。すべての前方ソナー91〜94の検出結果が「不検出」となる。支援継続判定部58は「出庫可能」と判定する。運転者がブレーキを踏下し、自車10が支援終了位置Peに到達すると、支援継続判定部58は出庫支援制御を終了する(
図12C)。
【0109】
上記の例では、走行車線103の方向に対して出庫支援制御終了時の自車10の車長方向の角度が大きくなる。そのため、自車10を走行車線103に合流させる際に、運転者はステアリングホイール70を大きく操舵する必要がある。また、出庫支援制御終了時に自車10は走行車線103へ大きく進入している。そのため、自車10により走行車線103の他車の走行を阻害するおそれがある。
【0110】
そこで本実施形態の出庫支援装置12では、「次回出庫可能性あり」と判定した後の次の「前進モード」において、出庫軌道設定部56は目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1よりも小さい第二舵角θ2に設定する。これにより、目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1に設定したときに比べて第二舵角θ2に設定したときには、出庫支援制御終了時の走行車線103の方向に対する自車10の車長方向の角度を小さくすることが可能となる。よって、出庫支援制御終了後に自車10を走行車線103に合流させる際の運転者の操舵量を軽減できる。また、目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1に設定したときに比べて第二舵角θ2に設定したときには、出庫支援制御終了時の自車10の走行車線103への進入量を小さくすることが可能となる。よって、自車10による走行車線103の他車の走行の阻害を抑制することができる。
【0111】
しかし第二舵角θ2の角度が小さすぎると、「次回出庫可能性あり」と判定した後の次の「前進モード」において出庫支援制御を終了することができないおそれがある。
【0112】
ここで、第二舵角θ2の角度を小さくしすぎた場合を想定した例を説明する。
図13A〜
図13Cは出庫支援制御中の自車10と前方他車101及び後方他車102との位置関係を示す図である。
【0113】
図13AはN回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
図13Bは(N+1)回目の操舵の切り返し後に「後進モード」が終了した時点の状態を示す。
図13Cは(N+2)回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
【0114】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N)にあるときに「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N)においてN回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。自車10に対して前方他車101が接近し、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+1)とする(
図13A)。このとき、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果のみ「Near」であったため、支援継続判定部58は「次回出庫可能性あり」と判定する。
【0115】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N+1)にあるときに「前進モード」から「後進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+1)において(N+1)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は後進する。自車10に対して後方他車102が接近し、後方ソナー(コーナ右)98の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+2)とする(
図13B)。
【0116】
支援ECU18は、中間位置Pm(N+2)において自車10が停止すると「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+2)において(N+2)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは第二舵角θ2に設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。自車10に対して前方他車101が接近し、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が中間位置Pm(N+3)で停止する(
図13C)。
【0117】
上記の例では、(N+1)回目の操舵の切り返し時に支援継続判定部58が「次回出庫可能性あり」と判定したにも関わらず、(N+2)回目の切り返し後の「前進モード」では出庫支援制御を終了することができない。これは(N+2)回目の操舵の切り返し時の目標舵角θtar(=θ2)が小さすぎたことが原因である。
【0118】
そこで本実施形態の出庫支援装置12では、出庫軌道設定部56は「後進モード」における自車10の後進距離が長いほど第二舵角θ2を小さくする。
【0119】
ここで、第二舵角θ2を「後進モード」における後進距離に応じて設定した場合を想定した例を説明する。
図14A〜
図14Cは出庫支援制御中の自車10と前方他車101及び後方他車102との位置関係を示す図である。
【0120】
図14AはN回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
図14Bは(N+1)回目の操舵の切り返し後に「後進モード」が終了した時点の状態を示す。
図14Cは(N+2)回目の操舵の切り返し後に「前進モード」が終了した時点の状態を示す。
【0121】
支援ECU18は、中間位置Pm(N)において自車10が停止すると「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N)においてN回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。自車10に対して前方他車101が接近し、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+1)とする(
図14A)。このとき、前方ソナー(コーナ左)91の検出結果のみ「Near」であったため、支援継続判定部58は「次回出庫可能性あり」と判定する。
【0122】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N+1)にあるときに「前進モード」から「後進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+1)において(N+1)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは制御最大舵角θmaxに設定される。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は後進する。自車10に対して後方他車102が接近し、後方ソナー(コーナ右)98の検出結果が「Near」となる。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止する。この自車10の停止位置を中間位置Pm(N+2)とする(
図14B)。
【0123】
支援ECU18は、自車10が中間位置Pm(N+2)にあるときに「後進モード」から「前進モード」に処理を切り替える。中間位置Pm(N+2)において(N+2)回目の操舵の切り返しが行われる。このとき、目標舵角θtarの大きさは第二舵角θ2に設定される。この第二舵角θ2は、前回の「後進モード」における自車10の後進距離が長いほど角度が小さくなるように設定されている。その後、運転者がブレーキペダルを離す操作をし、自車10は前進する。すべての前方ソナー91〜94の検出結果が「不検出」となる。支援継続判定部58は「出庫可能」と判定する。運転者がブレーキを踏下し、自車10が停止すると、支援継続判定部58は出庫支援制御を終了する(
図14C)。
【0124】
[後進モード]における自車10の後進距離が長いほど、[前進モード]開始時における自車10と前方他車101との距離は長くなる。自車10は、自車10と前方他車101との距離が長いほど小さな舵角で前方他車101を回避することが可能となる。これにより、前方他車101を回避しつつ、出庫支援制御終了後に自車10を走行車線103に合流させる際の運転者の操舵量を軽減できる。また、自車10による走行車線103の他車の走行の阻害を抑制することができる。
【0125】
また本実施形態の出庫支援装置12では、出庫軌道設定部56は第一舵角θ1を制御最大舵角θmaxに設定する。これにより、自車10の旋回半径を最小にすることが可能となる。よって、出庫支援制御時の操舵の切り返し回数を少なくすることができる。
【0126】
[補足]
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0127】
この実施形態では、自動操舵を例に挙げて説明したが、アクセルペダル(不図示)、ブレーキペダル(不図示)及びシフトレバー32の自動操作/手動操作を組み合わせた種々の運転形態を採り得る。
【0128】
この実施形態では、ステアリングホイール70の自動操舵を行う構成を採用しているが、現在舵角θを変更する手段はこれに限られない。例えば、EPS−ECU76がステアバイワイヤによる指令信号を転舵機構側に出力することで、車輪の転舵角を、ステアリングホイール70の舵角を現在舵角θに変更した状態に相当する角度に変更するようにしてもよい。このとき、ステアリングホイール70の舵角は変更されなくともよい。或いは、内輪の回転速度と外輪の回転速度の間に速度差を設けることで、自車10を旋回させるようにしてもよい。このときの自車10の旋回角(ヨー角)は、ステアリングホイール70の舵角を現在舵角θに変更した状態に相当する角度とすればよい。
【0129】
この実施形態では、目標舵角θtarをステアリングホイール70の目標操舵角として説明しているが、目標舵角θtarを車輪の転舵角としてもよいし、自車10のヨー角としてもよい。
【0130】
この実施形態では、前方距離Df又は後方距離Dbを検出する手段としてソナー91〜98を用いているが、この構成に限られない。ソナー91〜98に代えて、例えば、測距レーダであってもよいし、ステレオカメラを用いてもよい。
【0131】
この実施形態では、「前進モード」において「次回出庫可能性あり」及び「出庫可能」の判定を行っているが、「後進モード」において「次回出庫可能性あり」及び「出庫可能」の判定を行うようにしてもよい。
【0132】
この実施形態では、「前進モード」後に出庫支援制御を終了しているが、「後進モード」後に出庫支援制御を終了するようにしてもよい。
【0133】
この実施形態では、「前進モード」において前方ソナー(コーナ左)91又は前方ソナー(コーナ右)94の検出結果のみが「Near」である場合に「次回出庫可能性あり」と判定しているが、この判定方法に限られない。例えば、「後進モード」において自車10の後進距離が所定距離以上である場合に「次回出庫可能性あり」と判定してもよい。また、例えば、支援制御開始時の自車10の車長方向に対して支援制御開始後の自車10の車長方向の角度が所定角度以上である場合に「次回出庫可能性あり」と判定してもよい。
【0134】
この実施形態では、「前進モード」において「次回出庫可能性あり」と判定した場合、次回の「前進モード」における目標舵角θtarの大きさを第一舵角θ1よりも小さい第二舵角θ2としているが、この目標舵角θtarの設定方法に限られない。例えば、「前進モード」において「次回出庫可能性あり」と判定した場合、次の「後進モード」における目標舵角θtarの大きさを第二舵角θ2に設定してもよい。
【0135】
この実施形態では、「後進モード」において後進距離が長いほど、次回の「前進モード」において目標舵角θtarの大きさとして設定する第二舵角θ2を小さくしているが、この設定方法に限られない。例えば、「前進モード」において自車10の車長方向に対する前方ソナー91〜94により検出した障害物の検出方向の角度が大きいほど、次回の「前進モード」において目標舵角θtarの大きさとして設定する第二舵角θ2を小さく設定するようにしてもよい。また例えば、出庫支援制御開始時の自車10の車長方向に対する現在の自車の車長方向の角度が大きいほど次回の「前進モード」において目標舵角θtarの大きさとして設定する第二舵角θ2を小さく設定するようにしてもよい。