【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施するための具体的な形態を実施例によって説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【0036】
先ず、比較例に用いるアスコルビン酸誘導体の合成例、実施例に用いるアスコルビン酸誘導体の製造例を記す。合成例、製造例、試験例において用いた2,6−ジ−O−パルミトイルL−アスコルビン酸、6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸、6−O−ステアロイルL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、2−O−α−D−グルコピラノシルアスコルビン酸及びグリセリルアスコルビン酸は、東京化成工業社製の試薬である。又、16−メチルヘプタデカン酸は和光純薬社製の試薬である。他の薬剤も、表中に記載のものを除き、試薬を用いた。
【0037】
合成例1
アルゴン雰囲気下、L−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mLを加え撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン9.47g、無水酢酸9.56gを加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した(以上を、「合成工程」とする)。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣2.87gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い(合成工程終了後、この濃縮までの工程を「精製工程」とする)、1.72gの生成物を得た。
【0038】
この生成物について、下記のMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:362([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5,6−テトラ−O−アセチルアスコルビン酸であることが確認された。
【0039】
【化3】
【0040】
[MASS分析条件]
移動相:
5mmol/L酢酸アンモニウム水溶液:アセトニトリル=50:50
流量 :0.2mL/min
検出器電圧 :1.15kV
インターフェイス電圧 :4.5kV
ヒートブロック温度 :200℃
インターフェイス温度 :300℃
ネプライザガス :1.5L/min
ドライングガス :15L/min
イオン化モード :ESI−ポジティブ又はネガティブ
測定モード :スキャンモード
試料導入方法 :FID(試料直接導入)
【0041】
合成例2
無水酢酸9.56gをブタン酸無水物14.8gに代えた以外は、合成例1と同条件で、同様にして合成工程及び精製工程を行い、5.18gの生成物を得た。この生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:470([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5,6−テトラ−O−ブタノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0042】
【化4】
【0043】
合成例3
無水酢酸9.56gをオクタン酸無水物25.4gに代えた以外は、合成例1と同条件で、同様にして、合成工程及び精製工程を行い、5.62gの生成物を得た。この生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:698([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5,6−テトラ−O−オクタノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0044】
【化5】
【0045】
合成例4
無水酢酸9.56gをピバル酸無水物17.4gに代え、60℃での加温時間3時間を8時間に変えた以外は、合成例1と同条件で、同様にして、合成工程及び精製工程を行い、1.12gの生成物を得た。この生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:530([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5,6−テトラ−O−ピバロイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0046】
【化6】
【0047】
合成例5
アルゴン雰囲気下、L−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mL、水0.1mL、水酸化ナトリウム0.75gを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン5.15g、ピバル酸無水物9.49gを加え、60℃に加温し8時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣4.86gをシリカゲルクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水混液にて溶出(クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3→10/3/0.3)し、減圧下にて濃縮を行い、1.05gの第1生成物を得た。
【0048】
この1.05gの第1生成物をL−アスコルビン酸3.00gの代わりに用い、トリエチルアミンの量を0.77gに、無水酢酸の量を0.78gに変えた以外は、合成例1と同条件で、同様にして、合成工程及び精製工程を行い、0.31gの第2生成物を得た。この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:446([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−2,6−ピバロイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0049】
【化7】
【0050】
合成例6
ピバル酸無水物9.49gをブタン酸無水物8.08gに代え、トリエチルアミンの量を5.13gに変え、60℃での撹拌時間を3時間とした以外は、合成例5における第1生成物を得る場合と同条件で、同様にして、1.18gの第1生成物を得た。この1.18gの第1生成物をL−アスコルビン酸3.00gの代わりに用い、トリエチルアミンの量を0.94gに、無水酢酸の量を0.95gに変えた以外は、合成例1と同条件で、同様にして、合成工程及び精製工程を行い、0.36gの第2生成物を得た。この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:418([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−2,6−ブタノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0051】
【化8】
【0052】
合成例7(2,3,5,6−テトラ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸)
アルゴン雰囲気下、2,6−ジパルミトイルアスコルビン酸(1.00g)にDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン(0.30g)、パルミチン酸無水物(1.47g)を加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣2.10gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、2,3,5,6−テトラ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸(0.39g)を得た。
【0053】
得られたこの生成物を、上記MASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが得られた。測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5,6−テトラ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0054】
【化9】
【0055】
[ESIマススペクトル測定結果:検出されたピーク]
ポジティブイオン:1146([M+NH
4]
+に相当)
【0056】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.88(12H,t),1.25(96H,brs),1.62(8H,m),2.34(4H,t),2.44(4H,t),4.29(1H,dd),4.40(1H,dd),5.34(1H,d),5.49(1H,dt−like)
【0057】
製造例1
アルゴン雰囲気下、2,6−ジ−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン1.39g、無水酢酸1.40gを加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣3.15gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、1.05gの生成物を得た。
【0058】
得られたこの生成物1.05gを、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:754([M+NH
4]
+に相当)
又、
1H−NMR、
13C−NMR測定及び赤外吸収スペクトル測定(IR測定)を行ったところ下記の結果が得られた。これらの測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−2,6−ジ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0059】
【化10】
【0060】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.85(6H,t),1.23(48H,brs),1.62(4H,m),2.03(3H,s),2.24(3H,s),2.30(2H,t),2.49(2H,t),4.28(1H,dd),4.37(1H,dd),5.35(1H,d),5.45(1H,dt−like),
13C−NMR(100MHz,CDCl
3): δppm 14.1,20.3,20.4,22.7,24.5,24.8,28.9,29.07,29.15,29.2,29.3,29.4,29.6,31.9,33.3,34.0,61.8,66.4,74.9,122.1,149.6,164.7,165.2,169.1,170.0,173.1
【0061】
[IR測定結果]
ATR(波数 cm
−1) 2916,2849,1782,1757,1742,1231,1152,1099
【0062】
製造例2
2,6−ジ−O−パルミトイルL−アスコルビン酸を6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gに代え、トリエチルアミンの量を3.29gに、無水酢酸の量を3.33gに変えた以外は製造例1と同条件で、同様にして各工程を行い1.09gの生成物を得た。この生成物1.09gについて、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:558([M+NH
4]
+に相当)
又、
1H−NMR、
13C−NMR測定及び赤外吸収スペクトル測定(IR測定)を行ったところ下記の結果が得られた。これらの測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5−トリ−O−アセチル−6−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0063】
【化11】
【0064】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.85(3H,t),1.23(24H,brs),1.59(2H,m),2.02(3H,s),2.23(3H,s),2.25(3H,s),2.30(2H,t),4.28(1H,dd),4.37(1H,dd),5.35(1H,d),5.46(1H,dt−like)
13C−NMR(100MHz,CDCl
3): δppm 14.1,20.3,20.4,22.7,24.8,29.1,29.2,29.3,29.4,29.6,29.7,31.9,33.9,61.8,66.4,74.9,122.0,149.8,164.7,165.1,166.1,170.0,173.1
【0065】
[IR測定結果]
ATR(波数 cm
−1) 2916,2851,1771,1738,1240,1219,1150,1093,1057
【0066】
製造例3
アルゴン雰囲気下、6−O−ステアロイルL−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mL、水0.1mL、水酸化ナトリウム0.75gを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン5.15g、ステアリン酸無水物9.37gを加え、60℃に加温し8時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣12.3gをシリカゲルクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水混液にて溶出(クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3→10/3/0.3)し、減圧下にて濃縮を行い、4.34gの第1生成物を得た(第1生成物を得る工程を反応工程1とする)。
【0067】
得られた4.34gの第1生成物にDMSO15mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン(1.55g)、無水酢酸(1.56g)を加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、0.73gの第2生成物を得た(第1生成物から第2生成物を得る工程を反応工程2とする)。
【0068】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:810([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−2,6−ジ−O−オクタデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0069】
【化12】
【0070】
製造例4
6−O−ステアロイルL−アスコルビン酸に代えて6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gを用い、トリエチルアミンの量を1.10gに、ステアリン酸無水物の量を5.99gに変えた以外は、製造例3と同条件、同様にして反応工程1を行い、1.53gの第1生成物を得た。
この1.53gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌し、その後は、トリエチルアミンの量を0.57gに、無水酢酸の量を0.57gに変えた以外は、製造例3と同条件、同様にして反応工程2を行い、0.31gの第2生成物を得た。
この生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:782([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−6−O−ヘキサデカノイル−2−O−オクタデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0071】
【化13】
【0072】
製造例5
6−O−ステアロイルL−アスコルビン酸3.00gに代えてL−アスコルビン酸3.00gを用い、ステアリン酸無水物に代えてラウリン酸無水物19.5gを用いた以外は、製造例3と同条件、同様にして反応工程1を行い、2.75gの第1生成物を得た。この2.75gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌し、その後は、トリエチルアミンの量を1.29gに、無水酢酸の量を1.31gに変えた以外は、製造例3と同条件、同様にして反応工程2を行い、0.64gの第2生成物を得た。この生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:642([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される3,5−ジ−O−アセチル−2,6−ジ−O−ドデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0073】
【化14】
【0074】
製造例6
アルゴン雰囲気下、6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン1.61g、無水酢酸1.63gを加え、60℃に加温し8時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水混液にて溶出(クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3→10/3/0.3)し、減圧下にて濃縮を行い、1.18gの第1生成物を得た(第1生成物を得る工程を反応工程1とする)。
【0075】
得られた1.18gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン(0.26g)、パルミチン酸無水物(1.29g)を加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、0.47gの第2生成物を得た(第1生成物から第2生成物を得る工程を反応工程2とする)。この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:754([M+NH
4]
+に相当)
又、
1H−NMR及び
13C−NMR測定を行ったところ下記の結果が得られた。これらの測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,5−ジ−O−アセチル−3,6−ジ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0076】
【化15】
【0077】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.88(6H,t),1.25(48H,brs),1.63(4H,m),2.04(3H,s),2.25(3H,s),2.35(2H,t),2.52(2H,t),4.31(1H,dd),4.39(1H,dd),5.37(1H,d),5.47(1H,dt−like),
13C−NMR(100MHz,CDCl
3): δppm 14.1,20.1,20.4,22.7,24.2,24.7,24.8,28.81,28.88,29.06,29.10,29.17,29.20,29.25,29.38,29.44,29.59,29.67,29.70,31.9,33.5,33.97,34.03,35.3,61.8,66.4,75.0,121.8,150.0,165.3,166.1,167.8,169.9,173.1,179.9
【0078】
製造例7
アルゴン雰囲気下、濃硫酸30g中にL−アスコルビン酸3.00g(17.0mmol)、ステアリン酸7.24gを加え、室温にて2時間撹拌した後、反応液を水500mLに撹拌しながらゆっくりと添加し、水相を除去した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣8.70gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水混液にて溶出(クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3→10/3/0.3)し、減圧下にて濃縮を行い、1.88gの第1生成物を得た(第1生成物を得る工程を反応工程1とする)。
【0079】
得られた第1生成物(1.88g)にDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながら無水酢酸1.93g、トリエチルアミン1.92gを加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣2.91gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、0.51gの第2生成物を得た(第1生成物から第2生成物を得る工程を反応工程2とする)。
【0080】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:586([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5−トリ−O−アセチル−6−O−オクタデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0081】
【化16】
【0082】
製造例8
ステアリン酸7.24gの代わりにラウリン酸5.1gを用いた以外は、製造例7と同条件、同様にして反応工程1を行い2.29gの第1生成物を得た。得られた2.29gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌した後は、無水酢酸の量を2.11gに、トリエチルアミンの量を2.09gに変えた以外は、製造例7と同条件、同様にして反応工程2を行い0.57gの第2生成物を得た。
【0083】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:516([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5−トリ−O−アセチル−6−O−ドデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0084】
【化17】
【0085】
製造例9
ステアリン酸の代わりに16−メチルヘプタデカン酸(イソステアリン酸)7.25gを用いた以外は、製造例7と同条件、同様にして反応工程1を行い1.80gの第1生成物を得た。得られた1.80gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌した後は、無水酢酸の量を1.87gに、トリエチルアミンの量を1.85gに変えた以外は、製造例7と同条件、同様にして反応工程2を行い0.47gの第2生成物を得た。
【0086】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:586([M+NH
4]
+に相当)
この測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5−トリ−O−アセチル−6−O−(16−メチルヘプタデカノイル)アスコルビン酸であることが確認された。
【0087】
【化18】
【0088】
製造例10
6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gの代わりに2,6−ジ−O−パルミトイルL−アスコルビン酸3.00gを用い、トリエチルアミンの量を0.51gに、無水酢酸の量を0.47gに変えた以外は製造例6と同条件で、同様にして反応工程1を行い1.28gの第1生成物を得た。得られた1.28gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌した後は、トリエチルアミンの量を0.18gに、パルミチン酸無水物の量を0.95gに変えた以外は製造例6と同条件で、同様にして反応工程2を行い0.34gの第2生成物を得た。
【0089】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:950([M+NH
4]
+に相当)
又、
1H−NMR及び
13C−NMR測定を行ったところ下記の結果が得られた。これらの測定結果より、生成物は、下記構造式で示される5−O−アセチル−2,3,6−トリ−O−ヘキサデカノイルアスコルビン酸であることが確認された。
【0090】
【化19】
【0091】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.88(9H,t),1.26(72H,brs),1.63(6H,m),2.02(3H,s),2.35(4H,s),2.51(2H,s),4.30(1H,dd),4.39(1H,dd),5.36(1H,m),5.48(1H,m)
13C−NMR(100MHz,CDCl
3): δppm 14.1,20.3,22.7,24.2,24.6,24.7,24.8,24.85,28.91,29.06,29.10,29.25,29.38,29.44,29.60,29.68,29.70,31.9,33.3,33.5,34.0,61.8,66.4,74.9,121.9,149.8,165.3,167.8,169.1,169.9,173.1,179.7
【0092】
製造例11
アルゴン雰囲気下、L−アスコルビン酸3.00gにDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン2.58g、オレイン酸無水物10.4gを加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。クロロホルム/メタノール/水混液にて溶出(クロロホルム/メタノール/水=30/3/0.3→10/3/0.3)し、減圧下にて濃縮を行い、1.84gの第1生成物を得た。
【0093】
得られた1.84gの第1生成物にDMSO10mLを加えて撹拌し、撹拌しながらトリエチルアミン1.39gを加え、無水酢酸1.49gを加え、60℃に加温し3時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出し水洗した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて濃縮して、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付した。ヘキサン/酢酸エチル混液にて溶出(ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→1/5)し、減圧下にて濃縮を行い、0.49gの第2生成物を得た。
【0094】
この第2生成物について、合成例1と同じMASS分析条件により質量分析を行ったところ、ESIマススペクトルより下記に示すピークが検出された。
ポジティブイオン:566([M+NH
4]
+に相当)
又、
1H−NMR及び
13C−NMR測定を行ったところ下記の結果が得られた。これらの測定結果より、生成物は、下記構造式で示される2,3,5−トリ−O−アセチル−6−O−(9,10−オクタデセノイル)アスコルビン酸であることが確認された。
【0095】
【化20】
【0096】
[NMRによる分析結果]
1H−NMR(400MHz,CDCl
3): δppm 0.88(3H,t),1.27/1.31(72H,brs),1.68(2H,m),2.02(2H,m),2.06(3H,s),2.09(3H,s),2.26(3H,s),2.52(2H,t),4.31(1H,dd),4.41(1H,dd),5.34(2H,m)5.38(1H,m),5.49(1H,dt−like)
13C−NMR(100MHz,CDCl
3): δppm 14.1,20.36,20.40,20.67,22.7,24.5,27.15,27.22,28.8,29.1,29.3,29.5,29.7,29.8,31.9,33.3,62.1,66.4,74.9,122.1,129.7,130.1,130.3,149.6,164.7,165.2,169.1,170.1,170.3
【0097】
試験例1:コラーゲン産生促進評価試験
合成例1〜7のアスコルビン酸誘導体を比較例1〜7とし、製造例1〜11のアスコルビン酸誘導体を実施例1〜11とし、さらに、市販品のアスコルビン酸誘導体である、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、2−O−α−D−グルコピラノシルアスコルビン酸、グリセリルアスコルビン酸、6−O−パルミトイルL−アスコルビン酸を比較例8〜12とし、それぞれのコラーゲン産生促進作用を下記の方法で評価した。
【0098】
[コラーゲン産生促進評価試験法]
正常ヒト皮膚線維芽細胞を5%牛胎児血清(以下、FBSと言う)含有D−MEM培地を用いて、96穴プレートに2.5×10
4cells/wellで播種し、37℃で、5%CO
2下で24時間培養を行い、培養後、培地を除去し、試料が所定の濃度になるように添加調整したD−MEM培地を各ウェルに添加し、さらに48時間培養した。培養終了後、培養上清中のI型コラーゲンをELISA assayで測定した。アスコルビン酸誘導体を用いていない群をコントロール群とし、コントロール群のコラーゲン産生促進量を100%として、各被検培養液中のコラーゲン量産生促進率を算出した。コラーゲン量産生促進率を表1、2中の「判定」の欄のカッコ内示す。
【0099】
試験試料を0.1μmol/L又は1μmol/Lで適用したときのコラーゲン量産生促進率を、下記に基づき判定し、その結果を表1、2に示す。
200%未満 :±
200%以上−350%未満 :+
350%以上−500%未満 :++
500%以上 :+++
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1及び実施例3〜6に使用したアスコルビン酸誘導体は、分子内にアセチル基を2つ有するとともに炭素数12〜18のアルカノイル基を有するアスコルビン酸誘導体であり、実施例2及び実施例7〜9、11は分子内にアセチル基を3つ有するとともに炭素数12〜18のアルカノイル基又はオレイノイル基(実施例11)を有するアスコルビン酸誘導体であり、実施例10は分子内にアセチル基を一つ有するとともに炭素数17のヘキサデカノイル基を3つ有したアスコルビン酸誘導体である。それらいずれのアスコルビン酸誘導体においても、優れたコラーゲン産生促進効果を示し、中でも、炭素数16又は炭素数18のアシル基(アルカノイル基又はアルケノイル基)を有するアスコルビン酸誘導体(実施例1〜4、実施例7、実施例9、実施例11)においては、特に優れたコラーゲン産生促進効果を有していた。
【0103】
一方、比較例1、5、6に使用したアスコルビン酸誘導体は、分子内にアセチル基を有しているが、炭素数7以上のアルカノイル基を有しない。又、比較例2〜4、7に使用したアスコルビン酸誘導体は、分子内にアセチル基を有しない。これらのアスコルビン酸誘導体及び市販品のアスコルビン酸誘導体(比較例8〜12)は、本試験で実施した低い濃度においては、優れたコラーゲン産生効果を有していなかった。これらのことから、分子内にアセチル基を有するとともに、炭素数7以上のアルカノイル基又はアルケノイル基を有するアスコルビン酸誘導体は、優れたコラーゲン産生促進効果を有し、優れたコラーゲン産生促進剤(を有する化粧料、皮膚外用剤)として使用できることが確認された。
【0104】
試験例2:実使用試験(乳液)
表3に示す組成(表中の数字は質量%)の乳液を調製し、2ヶ月間連用後のシワ、肌のはり、弾力、かさつきの少なさを評価した。実施例12では製造例1のアスコルビン酸誘導体を使用し、比較例13では、市販品のL−アスコルビン酸を用いた。
【0105】
【表3】
【0106】
上記乳液による試験は、10人の被験者に、実施例、比較例を明らかにせず、乳液A及びBとして、毎日二度(朝晩)、顔面の左右全体にA又はBの乳液をそれぞれ約0.2g塗布させ(Aの塗布面、Bの塗布面は常に同じにする)、その連用試験を2ヶ月間続けた。2ヶ月の連続使用試験終了後、各被験者に、シワ、はり、弾力、かさつきのなさについての連用前との比較を、各項目について下記基準に基づき自己評価させた。
【0107】
シワ:
3:連用前と比較して、シワの面積や深さが改善したと感じる。
2:連用前と比較して、シワの面積や深さがやや改善したと感じる。
1:連用前と比較して、ほとんど変わらない、又は悪化した。
はり:
3:連用前と比較して、目尻や頬周辺の皮膚のハリが改善したと感じる。
2:連用前と比較して、目尻や頬周辺の皮膚のハリがやや改善したと感じる。
1:連用前と比較して、ほとんど変わらない、又は悪化した。
弾力:
3:連用前と比較して、肌の弾力が改善したと感じる。
2:連用前と比較して、肌の弾力がやや改善したと感じる。
1:連用前と比較して、ほとんど変わらない、又は悪化した。
かさつきのなさ:
3:連用前と比較して、肌の潤いが増し改善したと感じる。
2:連用前と比較して、肌の潤いがやや改善したと感じる。
1:連用前と比較して、ほとんど変わらない、又は悪化した。
【0108】
10人の評価結果の合計を下記のように分類した。その結果を表4に示す。
15未満 :±
15以上−20未満 :+
20以上−25未満 :++
25以上 :+++
【0109】
【表4】
【0110】
表4に示したように、本発明のコラーゲン産生促進剤であるアスコルビン酸誘導体を配合した乳液を連用した場合(実施例12)、シワ、はり、弾力及びかさつきのなさの全ての項目において優れた改善が確認された。一方、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合しない場合(比較例13)では、連用による改善効果は見られなかった。よって、本発明のコラーゲン産生促進剤であるアスコルビン酸誘導体は、既存のアスコルビン酸と比べ特段優れたコラーゲン産生促進効果を持っていることが確認された。
【0111】
試験例3:実使用試験(クリーム)
表5に示す組成(表中の数字は質量%)のクリームを調製し、2ヶ月間連用後のシワ、肌のはり、弾力、かさつきのなさを評価した。実施例13では製造例2のアスコルビン酸誘導体を使用し、比較例14では、市販品のグリセリルアスコルビン酸を用いた。
【0112】
【表5】
【0113】
上記クリームによる試験は、10人の被験者に、実施例、比較例を明らかにせず、クリームA及びBとして、毎日二度(朝晩)、顔面の左右全体にA又はBのクリームをそれぞれ約0.2g塗布させ(Aの塗布面、Bの塗布面は常に同じにする)、その連用試験を2ヶ月間続けた。2ヶ月の連続使用試験終了後、各被験者に、シワ、はり、弾力、かさつきのなさについて、連用前と比較して各項目について上記試験例2と同様の基準に基づき自己評価させ、評価結果を試験例2と同様に分類した。その結果を表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
表6に示したように、本発明のコラーゲン産生促進剤であるアスコルビン酸誘導体を配合した乳液を連用した場合(実施例13)、シワ、はり、弾力、及びかさつきのなさの全ての項目において優れた改善が確認された。一方、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合しない場合(比較例14)では、連用による改善効果は見られなかった。よって、本発明のコラーゲン産生促進剤であるアスコルビン酸誘導体は、既存のアスコルビン酸と比べ特段優れたコラーゲン産生促進効果を持っていることが確認された。
【0116】
試験例4:油溶解性試験
表7に示すアスコルビン酸誘導体について、スクワラン、流動パラフィン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの各種油剤に対する溶解性を確認した。各種アスコルビン酸誘導体の濃度が10質量%となるように油剤を添加し10分間室温で撹拌し、撹拌後の各種サンプルの外観について下記基準に従い評価を行った。なお、比較品のアスコルビン酸誘導体は試験例1と同様市販品を使用した。
【0117】
◎:澄明な状態となり、溶け残りがない。
○:ほとんど溶解した状態であり、わずかに溶け残りがある。
△:わずかに溶解している。
×:ほとんど溶解せずに残存している。
【0118】
【表7】
【0119】
本発明のアスコルビン酸誘導体からなるコラーゲン産生促進剤は、シワ、皮膚のはり、弾力、かさつきの改善を目的として化粧品に配合して利用できる。以下に、本発明のコラーゲン産生促進剤を配合した化粧品の処方例として、表8にオイル製剤の例(化粧品応用例1)を、表9にジェル製剤の例(化粧品応用例2)を示す。
【0120】
【表8】
【0121】
【表9】