特許第6649872号(P6649872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649872
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ドアハンドルの成形方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20200210BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20200210BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   E05B85/16 Z
   B29C45/00
   B29C45/27
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-241241(P2016-241241)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-96105(P2018-96105A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101916
【氏名又は名称】イオ インダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆照
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】豊田 貴子
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−118170(JP,A)
【文献】 特開2008−248548(JP,A)
【文献】 特開2003−251653(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0011111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに溶融樹脂を射出して、ハンドル部位に複数の強度部位が設けられたドアハンドルを射出成形するドアハンドルの成形方法であって、
前記キャビティが、前記強度部位の一方を成形する一方成形領域、前記ハンドル部位を成形するハンドル成形領域、及び前記強度部位の他方を成形する他方成形領域を順次連通して形成した前記金型を用意する準備工程と、
前記金型に設けられて前記一方成形領域に連通する第1ゲートから、前記キャビティ内に所定量の溶融樹脂を射出する第1工程と、
前記第1工程の終了に伴う前記第1ゲート閉鎖時の前後一定時間から、前記第1ゲート近傍の前記キャビティに連通して前記金型に設けられたガス注入手段を用いて、前記キャビティ内の溶融樹脂中にガスを注入する第2工程と、
前記第2工程の開始から所定時間経過後に、前記金型に設けられて前記他方成形領域に連通する第2ゲートから溶融樹脂を、前記他方成形領域の空隙の少なくとも一部が溶融樹脂で満たされ補填されるように射出する第3工程とを有し、
前記ハンドル部位を中空構造とし、前記強度部位の一方と他方のいずれか1つを中実構造とした前記ドアハンドルを成形することを特徴とするドアハンドルの成形方法。
【請求項2】
前記キャビティのハンドル成形領域は、互いに連通するハンドルメイン成形領域とハンドルサブ成形領域とからなり、前記ハンドルメイン成形領域の高さ寸法が前記ハンドルサブ成形領域の高さ寸法よりも大きく設定され、
前記第3工程において溶融樹脂の射出を開始するタイミングである、第2工程の開始から所定時間経過後は、前記第2工程におけるガスの注入により少なくとも前記ハンドルメイン成形領域にガスが導入されて、このハンドルメイン成形領域内の外側部分に溶融樹脂が存在するようになった時点の経過後であることを特徴とする請求項1に記載のドアハンドルの成形方法。
【請求項3】
前記キャビティのハンドルサブ成形領域が、他方成形領域に連通すると共にこの他方成形領域と同一の高さ寸法に設定され、
前記第3工程において第2ゲートからの溶融樹脂の射出を終了するタイミングは、前記第2ゲートから前記他方成形領域に射出された溶融樹脂が、前記ハンドルサブ成形領域に設定された境界領域内に流入した時点であることを特徴とする請求項2に記載のドアハンドルの成形方法。
【請求項4】
前記第1工程において第1ゲートからキャビティ内に射出される溶融樹脂の所定量は、前記キャビティの全容積の60%〜80%の容量であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドアハンドルの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部が中空構造に構成されるドアハンドルを成形するドアハンドルの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、金型に設けられたキャビティ内に樹脂ゲートから溶融樹脂を途中まで射出し、その後、ガス注入ノズルからガスをキャビティ内の溶融樹脂中に注入し、この状態を保持して冷却し固化させることで、一部が中空構造に構成された取っ手形成形品(ドアハンドル)を成形する成形方法が開示されている。取っ手形成形品(ドアハンドル)は、一部が中空構造に構成されることで、軽量化及び外観の向上を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−118170号公報
【特許文献2】特開平11−28740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ハンドル部位に複数の強度部位が設けられたドアハンドルを、上述の特許文献1及び2に記載の成形方法で成形する場合、図7(A)に示すように、金型100におけるキャビティ101には、ドアハンドルのハンドル部位を成形するハンドル部位成形領域102と、強度部位の一方を成形する一方成形領域103と、強度部位の他方を成形する他方成形領域104とが連通して形成されている。更に金型100には、例えば一方成形領域103に連通して樹脂ゲート105が設けられ、この樹脂ゲート105の近傍にガス注入ノズル106が、例えば一方成形領域103に連通して設けられる。
【0005】
樹脂ゲート105からキャビティ101内に溶融樹脂107が途中まで射出された後に、ガス注入ノズル106から、このキャビティ101内の溶融樹脂107中にガス108が注入されることで、ハンドル部位成形領域102内の外側部分に溶融樹脂107が押し付けられ、内側部分にガス108が存在した状態になる。この状態で冷却され固化されることで、ハンドル部位成形領域102により成形されたハンドル部位が中空構造で、特に他方成形領域104により成形された強度部位の他方が中実構造のドアハンドルが成形される。
【0006】
しかしながら、図7(B)に示すように、例えば樹脂ゲート105から射出される溶融樹脂107の射出量が適切でなかったり、ガス注入ノズル106から注入されるガス108が過剰であったりした場合には、特に他方成形領域104内にガス108が導入されてしまい、この他方成形領域104により成形される強度部位の他方に気泡やウェルドが存在して、この強度部位の他方の強度が低下してしまう課題がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、ドアハンドルの軽量化及び外観の向上を実現しつつ、ドアハンドルの強度部位の強度を確保できるドアハンドルの成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るドアハンドルの成形方法は、金型のキャビティに溶融樹脂を射出して、ハンドル部位に複数の強度部位が設けられたドアハンドルを射出成形するドアハンドルの成形方法であって、前記キャビティが、前記強度部位の一方を成形する一方成形領域、前記ハンドル部位を成形するハンドル成形領域、及び前記強度部位の他方を成形する他方成形領域を順次連通して形成した前記金型を用意する準備工程と、前記金型に設けられて前記一方成形領域に連通する第1ゲートから、前記キャビティ内に所定量の溶融樹脂を射出する第1工程と、前記第1工程の終了に伴う前記第1ゲート閉鎖時の前後一定時間から、前記第1ゲート近傍の前記キャビティに連通して前記金型に設けられたガス注入手段を用いて、前記キャビティ内の溶融樹脂中にガスを注入する第2工程と、前記第2工程の開始から所定時間経過後に、前記金型に設けられて前記他方成形領域に連通する第2ゲートから溶融樹脂を、前記他方成形領域の空隙の少なくとも一部が溶融樹脂で満たされ補填されるように射出する第3工程とを有し、前記ハンドル部位を中空構造とし、前記強度部位の一方と他方のいずれか1つを中実構造とした前記ドアハンドルを成形することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2工程でキャビティ内に注入されるガスによって、ドアハンドルのハンドル部位が中空構造に構成されるので、ドアハンドルの軽量化を実現でき、更に、ヒケ(収縮変形)の発生を防止して外観の向上を実現できる。また、第3工程で第2ゲートからキャビティの他方成形領域に射出される溶融樹脂によって、ドアハンドルの強度部位の他方が、気泡などの存在しない中実構造に構成されるので、ドアハンドルの強度部位の強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るドアハンドルの成形方法における第1実施形態を実施するための金型等を示す断面図。
図2図1の金型等を用いて成形されたドアハンドルを示し、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は裏面側から目視した斜視図。
図3】(A),(B)および(C)は、図1の金型等を用いて実施するドアハンドルの成形方法における工程の前半を説明する説明図。
図4】(A),(B)は、図1の金型等を用いて実施するドアハンドルの成形方法における工程の後半を説明する説明図。
図5図1の金型の変形形態を示す断面図。
図6】本発明に係るドアハンドルの成形方法における第2実施形態を実施するための金型等を示す断面図。
図7】(A),(B)は、ドアハンドルの成形過程において生ずる課題を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図5
図1は、本発明に係るドアハンドルの成形方法における第1実施形態を実施するための金型等を示す断面図である。この図1に示す金型10は、固定型11と、この固定型11に対し接離する方向に移動可能な可動型12と、この可動型12の移動方向に対して直交する方向に移動可能なスライドコワ13と、を有して構成される。これらの固定型11、可動型12及びスライドコア13に囲まれて形成されたキャビティ14に溶融樹脂Mが射出されることで、例えば自動車用のドアハンドル1が射出成形される。
【0012】
ここで、このドアハンドル1は、図2に示すように、ハンドル部位2の両端の裏面側に、強度部位の一方としてのL字アーム部位3と、強度部位の他方としてのU字アーム部位4とが一体に設けられたものである。更に、ハンドル部位2は、L字アーム部位3が一体に設けられたハンドル部位主要部2Aと、U字アーム部位4が一体に設けられたハンドル部位付根部2Bとが連設されている。ハンドル部位主要部2Aの厚さ寸法Taは、握り易さを考慮してハンドル部位付根部2Bの厚さ寸法Tbよりも大きく設定されている。尚、図2中の符号5は、ドアハンドル1を回動させるための回動軸(不図示)が挿通される挿通穴を示す。
【0013】
図1及び図2に示すように、金型10のキャビティ14は、L字アーム部位3を成形する一方成形領域としてのL字アーム部位成形領域15と、ハンドル部位2を成形するハンドル部位成形領域16と、U字アーム部位4を成形する他方成形領域としてのU字アーム部位成形領域17とが、順次連通して形成されている。更に、ハンドル部位成形領域16は、ハンドル部位主要部2Aを成形するハンドルメイン成形領域としてのハンドル部位主要部成形領域16Aと、ハンドル部位付根部2Bを成形するハンドルサブ成形領域としてのハンドル部位付根部成形領域16Bとが、互いに連通して形成される。そして、ハンドル部位主要部成形領域16AがL字アーム部位成形領域15に連通し、ハンドル部位付根部成形領域16BがU字アーム部位成形領域17に連通して形成される。
【0014】
上述のようなキャビティ14のハンドル部位成形領域16では、ハンドル部位主要部2Aを成形するハンドル部位主要部成形領域16Aの高さ寸法Haは、ハンドル部位主要部2Aの厚さ寸法Taに対応して設定される。また、ハンドル部位付根部2Bを成形するハンドル部位付根部成形領域16Bの高さ寸法Hbは、ハンドル部位付根部2Bの厚さ寸法Tbに対応して設定される。このため、ハンドル部位主要部成形領域16Aの高さ寸法Haは、ハンドル部位付根部成形領域16Bの高さ寸法Hbよりも大きく設定される。
【0015】
また、キャビティ14のL字アーム部位成形領域15の高さ寸法Hcは、ドアハンドル1のL字アーム部位3の厚さ寸法Tc(図2)に対応して設定される。また、キャビティ14のU字アーム部位成形領域17の高さ寸法Hdは、ハンドル1のU字アーム部位4の厚さ寸法Tdに対応して設定される。そして、L字アーム部位3の厚さ寸法TcがU字アーム部位4の厚さ寸法Tdよりも厚く設定されることで、キャビティ14においても、L字アーム部位成形領域15の高さ寸法HcがU字アーム部位成形領域17の高さ寸法Hdよりも大きく設定される。
【0016】
また、ドアハンドル1のハンドル部位付根部2Bの厚さ寸法Tbが、U字アーム部位4の厚さ寸法Tdと略同一に設定されたことで、キャビティ14においても、ハンドル部位付根部成形領域16Bの高さ寸法Hbが、U字アーム部位成形領域17の高さ寸法Hdと略同一に設定される。
【0017】
更に、図1に示す金型10には、第1ゲート21がL字アーム部位成形領域15に連通して、第2ゲート22がU字アーム部位成形領域17に連通して、それぞれ固定型11に設けられる。また、第1ゲート21近傍のキャビティ14(つまりL字アーム部位成形領域15)に連通して、ガス注入手段としてのガス注入ノズル23が可動型12に設けられる。第1ゲート21は、具体的には、このL字アーム部位成形領域15のうちでドアハンドル1の挿通穴5(図2)に対応する箇所18に連通して設けられる。
【0018】
また、第2ゲート22は、図1に示すように、U字アーム部位成形領域17における基端部側(ハンドル部位付根部成形領域16Bに接近した側)に連通して設けられてもよいが、図5に示すように、U字アーム部位成形領域17における先端部側(ハンドル部位付根部成形領域16Bから離反した側)に連通して設けられてもよい。
【0019】
図1に示すように、射出成型機の射出ノズル20は、金型10の固定型11に形成されたスプール部24及びランナー部25を経て、ランナー部25の一端側が、第1ゲート21を閉鎖可能な例えば第1バルブゲート26を介して第1ゲート21に、ランナー部25の他端側が、第2ゲート22を閉鎖可能な第2バルブゲート27を介して第2ゲート22にそれぞれ接続される。
【0020】
従って、第1バルブゲート26による第1ゲート21の開放時に、射出ノズル20からの溶融樹脂Mがスプール部24、ランナー部25及び第1バルブゲート26を経て第1ゲート21に至り、この第1ゲート21からL字アーム部位成形領域15を含むキャビティ14内に射出される。また、第2バルブゲート27による第2ゲート22の開放時に、射出ノズル20からの溶融樹脂Mが、スプール部24及びランナー部25及び第2バルブゲート27を経て第2ゲート22に至り、この第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17を含むキャビティ14内に射出される。ここで、溶融樹脂Mは熱可塑性樹脂であり、例えばポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などが好ましい。
【0021】
ガス注入ノズル23は、例えば可撓性のガスチューブ30等を介してガス供給源31に接続される。このガス注入ノズル23は、ガス供給源31からのガスGを、ガスチューブ30等を経て金型10のキャビティ14内に注入し、またはその注入を遮断する。ガス注入ノズル23がキャビティ14内の溶融樹脂M中にガスGを注入することにより、溶融樹脂Mが未だ充填されていないキャビティ14の領域に溶融樹脂Mが押し込まれることになる。その結果、キャビティ14内では、その外側部分に溶融樹脂Mが押し付けられ、内側部分にガスGが存在する部分が生ずる。ここで、ガスGは、窒素ガスやヘリウムガス、空気などのように、常温で気体となる物質が使用される。
【0022】
前記ガス注入ノズル23は、金型10の可動型12の第1ゲート21近傍に設けられるものを述べたが、固定型11の第1ゲート41近傍に設けられてもよい。ガス注入ノズル23が可動型12または固定型11において第1ゲート21の近傍に設けられることで、第1ゲート21が閉鎖され且つ第2ゲート22が開放された状態で、ガス注入ノズル23から注入されたガスGは、溶融樹脂M中を第2ゲート22側へ向かって流れる。これにより、キャビティ14内の外側部分の溶融樹脂Mと内側部分のガスGとが、溶融樹脂M及びガスGの流れ方向(つまり、ハンドル部位成形領域16の長手方向)に沿って均一になる。
【0023】
次に、上述のように構成された金型10を用いて、ドアハンドル1を射出成形するドアハンドル1の成形方法について、図1図3及び図4を用いて説明する。
【0024】
このドアハンドル1の成形方法は、金型10を用意する準備工程(図1)と、金型10の第1ゲート21からL字アーム部位成形領域15を含むキャビティ14内に溶融樹脂Mを射出する第1工程(図3(A)及び図3(B))と、金型10のガス注入ノズル23からキャビティ14内の溶融樹脂M中にガスGを注入する第2工程(図3(C)及び図4(A))と、金型10の第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17を含むキャビティ14内に溶融樹脂Mを射出する第3工程(図4(B))と、金型10のキャビティ14内で溶融樹脂Mを冷却し固化させる第4工程(図4(B))とを有する。
【0025】
第1工程では、第1バルブゲート26が第1ゲート21を開放し、第2バルブゲート27が第2ゲート22を閉鎖し、ガス注入ノズル23がガスGの注入を遮断した状態にある。この状態で、第1工程では、図1及び図3(A)に示すように、射出ノズル20からの溶融樹脂Mがスプール部24、ランナー部25及び第1バルブゲート26を経て第1ゲート21に至り、この第1ゲート21からL字アーム部位成形領域15を含むキャビティ14内に所定量射出される。この射出される溶融樹脂Mの所定量は、図3(B)に示すように、キャビティ14の全容積の60%〜80%の容量、好ましくは70%の容量である。
【0026】
第2工程では、図3(C)に示すように、第2バルブゲート27が第2ゲート22を閉鎖した状態で、第1工程の終了に伴う第1バルブゲート26による第1ゲート21の閉鎖時の前後一定時間からガス注入ノズル23を用いて、キャビティ14内の溶融樹脂M中にガスGを注入する。第1ゲート21の閉鎖時の前後一定時間は、第1ゲート21の閉鎖直前、第1ゲート21の閉鎖と同時、または第1ゲート21の閉鎖直後を言い、第1工程でキャビティ14内に射出された溶融樹脂Mの流れが停止しない状態にある時間帯である。
【0027】
このキャビティ14内の溶融樹脂M中へのガスGの注入によって、溶融樹脂Mが未だ充填されていないキャビティ14の領域に溶融樹脂Mが押し込まれる。これにより、図3(C)及び図4(A)に示すように、キャビティ14内では、その外側部分に溶融樹脂Mが押し付けられ、内側部分にガスGが存在して空隙Kが生ずる部分が、ハンドル部位主要部成形領域16Aやハンドル部位付根部成形領域16Bに発生し、場合によってはU字アーム部位成形領域17に発生することになる。尚、ガス注入ノズル23からキャビティ14内へのガスGの注入は、第3工程及び第4工程においても継続して実施される。
【0028】
第3工程では、図1及び図4(B)に示すように、第1バルブゲート26が第1ゲート21を閉鎖し、または閉鎖していない状態で、且つガス注入ノズル23がキャビティ14内にガスGを注入した状態で、第2バルブゲート27が第2ゲート22を開放することで実施される。つまり、第2バルブゲート27は、ガス注入ノズル23がガスGの注入を開始した第2工程の開始から所定時間経過後に、第2ゲート22を開放して、この第2ゲート22から溶融樹脂Mを射出させる。これにより、キャビティ14におけるU字アーム部位成形領域17に生じた略全ての空隙K内のガスGが、ハンドル部位成形領域16側へ押し戻されて、このU字アーム部位成形領域17における略全ての空隙Kが、第2ゲート22から射出された溶融樹脂Mで満たされ補填されることになり、U字アーム部位成形領域17に溶融樹脂Mが略隙間なく充填される。
【0029】
この第3工程において第2ゲート22からの溶融樹脂Mの射出を開始するタイミングである、第2工程の開始から所定時間経過後は、第2工程におけるガス注入ノズル23からのガスGの注入により、少なくともハンドル部位主要部成形領域16AにガスGが導入されて、このハンドル部位主要部成形領域16A内の略全ての領域における外側部分に溶融樹脂Mが押し付けられて存在するようになった時点の経過後である。
【0030】
また、第3工程において第2ゲート22からの溶融樹脂Mの射出を終了するタイミングは、第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17に射出された溶融樹脂Mがハンドル部位付根部成形領域16B内に流入し、このハンドル部位付根部成形領域16Bに設定された境界範囲33に流入した時点である。この境界範囲33は、ハンドル部位付根部成形領域16Bにおいてハンドル部位主要部成形領域16Aと隣接する部分に設定された範囲である。
【0031】
第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17に射出された溶融樹脂Mが、ハンドル部位付根部成形領域16Bの境界範囲33からハンドル部位主要部成形領域16A内に流入すると、このハンドル部位主要部成形領域16Aの高さ寸法Haがハンドル部位付根部成形領域16Bの高さ寸法Hbによりも大きいので、このハンドル部位主要部成形領域16A内に流入した溶融樹脂Mが厚肉状態になり、通常の成形サイクル内で冷却され固化されたときにヒケ(収縮変形)を生ずる。このヒケの発生を未然に防止するために、第2ゲート22から射出された溶融樹脂Mがハンドル部位付根部成形領域16Bの境界範囲33に流入した時点で、第2ゲート22からの溶融樹脂Mの射出を終了する。
【0032】
第4工程では、図1に示すように、第1バルブゲート26が第1ゲート21を閉鎖し、第2バルブゲート27が第2ゲート22を閉鎖し、ガス注入ノズル23がキャビティ14内へのガスGの注入を継続している状態である。ガス注入ノズル23からキャビティ14内にガスGが継続して注入されることで、キャビティ14のうちで特にハンドル部位主要部成形領域16A内の外側部分に存在する溶融樹脂Mが、ガスGの圧力によって変形しない状態で冷却され固化されることになる。
【0033】
この第4工程におけるキャビティ14内の溶融樹脂Mの冷却・固化後に、ガス注入ノズル23からのガスGの注入が停止されてキャビティ14内が大気圧まで低下した段階で、金型10から成形品であるドアハンドル1が取り出される。このドアハンドル1は、ハンドル部位2のハンドル部位主要部2Aが中空構造で、U字アーム部位4が中実構造に構成されている。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
(1)図1及び図2に示すように、ドアハンドル1の成形方法における第2工程でガス注入ノズル23を用いて金型10のキャビティ14内に注入されるガスGによって、金型10により成形されるドアハンドル1のハンドル部位2のハンドル部位主要部2Aが中空構造に構成される。このため、ドアハンドル1の軽量化を実現できる。更に、ドアハンドル1のハンドル部位主要部2Aが薄肉構造になるので、このハンドル部位主要部2Aにヒケ(収縮変形)の発生を防止できてドアハンドル1の外観の向上を実現できると共に、溶融樹脂Mの冷却・固化時間が短くなってドアハンドル1の成形サイクルを短縮できる。
【0035】
(2)ドアハンドル1の成形方法における第3工程で第2ゲート22からキャビティ14のU字アーム部位成形領域17に射出される溶融樹脂Mによって、金型10により成形されるドアハンドル1のU字アーム部位4が、気泡などの存在しない中実構造に構成される。この結果、ドアハンドル1のU字アーム部位4の強度を良好に確保でき、ドアハンドル1の品質を安定化できる。
【0036】
(3)第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17に射出された溶融樹脂Mがハンドル部位付根部成形領域16B内に流入し、このハンドル部位付根部成形領域16Bの境界範囲33に流入した時点で、第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17への溶融樹脂Mの射出が終了する。このため、第2ゲート22からU字アーム部位成形領域17に射出された溶融樹脂Mが、ハンドル部位付根部成形領域16Bの高さ寸法Hbよりも大きな高さ寸法Haのハンドル部位主要部成形領域16A内に流入することを防止できる。この結果、ハンドル部位主要部成形領域16A内に流入して厚肉状態になった溶融樹脂Mが冷却され固化されたときのヒケ(収縮変形)の発生を未然に防止できるので、この点からも、ドアハンドル1の外観を向上させることができる。
【0037】
[B]第2実施形態(図6
図6は、本発明に係るドアハンドルの成形方法における第2実施形態を実施するための金型等を示す断面図である。この第2実施形態において、第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0038】
この第2実施形態のドアハンドル1の成形方法で用いられる金型40では、図1及び図6に示すように、第1実施形態の第2ゲート22が第1ゲート41となり、第1実施形態の第1ゲート21が第2ゲート42となる。従って、第1ゲート41が連通するU字アーム部位成形領域17は一方成形領域であり、第2ゲート42が連通するL字アーム部位成形領域15は他方成形領域である。また、第1実施形態の第2バルブゲート27、第1バルブゲート26がそれぞれ第2実施形態の第1バルブゲート44、第2バルブゲート45になる。
【0039】
更に、金型40では、第1実施形態のガス注入ノズル23がガス注入ノズル43となって、キャビティ14におけるハンドル部位付根部成形領域16Bのハンドル部位主要部成形領域16A側部分に連通し、且つ第1ゲート41の近傍で可動型12に設けられている。従って、ハンドル部位付根部成形領域16Bにおけるハンドル部位主要部成形領域16A側部分は、高さ寸法Heがハンドル部位主要部成形領域16Aの高さ寸法Haと略同一に設定されている。
【0040】
この第2実施形態のドアハンドル1の成形方法においても、金型40を用意する準備工程と、金型40の第1ゲート41からU字アーム部位成形領域17を含むキャビティ14内に溶融樹脂Mを射出する第1工程と、金型40のガス注入ノズル43からキャビティ14内の溶融樹脂M中にガスGを注入する第2工程と、金型40の第2ゲート42からL字アーム部位成形領域15内に溶融樹脂Mを射出する第3工程と、金型40のキャビティ14内で溶融樹脂Mを冷却し固化する第4工程とを有する。
【0041】
このうち、第2工程におけるガス注入ノズル43からのガスGの注入は、そのガス圧などの調整によって、注入されたガスGがU字アーム部位成形領域17内に流入しないように設けられる。また、第3工程における第2ゲート42からの溶融樹脂Mの射出は、L字アーム部位成形領域15のうち、ドアハンドル1の挿通穴5(図2)に対応する箇所18の周囲46に溶融樹脂Mが到達するよう調整される。このL字アーム部位成形領域15には、例えば、ドアハンドル1の挿通穴5に対応する箇所18の周囲46を超えてからハンドル部位主要部成形領域16Aに至るまでの範囲に、境界範囲47が設定される。第2ゲート42は、射出した溶融樹脂Mが境界範囲47に流入した時点で溶融樹脂Mの射出を終了する。
【0042】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態におけるドアハンドル1の成形方法によっても、金型40により成形されたドアハンドル1のハンドル部位主要部2Aが中空構造になり、また、ドアハンドル1におけるU字アーム部位4が中実構造となってその強度が確保される。このため、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様に、ドアハンドル1の軽量化、外観の向上及び成形サイクルの短縮を実現でき、更に、ドアハンドル1のU字アーム部位4の強度を良好に確保できる。
【0043】
また、第2ゲート42から射出される溶融樹脂Mが境界範囲に47に流入した時点で、第2ゲート42からの溶融樹脂Mの射出が停止されるので、ドアハンドル1のハンドル部位主要部2Aにヒケの発生を未然に防止でき、第1実施形態の効果(3)と同様に、ドアハンドル1の外観を向上させることができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、上述の両実施形態では、自動車用のドアハンドルを成形する場合を述べたが、例えば電気製品や建築物の扉などに用いられるドアハンドルを成形する場合であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…ドアハンドル、2…ハンドル部位、3…L字アーム部位(強度部位の一方)4…U字アーム部位(強度部位の他方)、10…金型、14…キャビティ、15…L字アーム部位成形領域(一方成形領域、他方成形領域)、16…ハンドル部位成形領域、16A…ハンドル部位主要部成形領域(ハンドルメイン成形領域)、16B…ハンドル部位付根部成形領域(ハンドルサブ成形領域)、17…U字アーム部位成形領域(他方成形領域、一方成形領域)、21…第1ゲート、22…第2ゲート、23…ガス注入ノズル、26…第1バルブゲート、27…第2バルブゲート、33…境界範囲、40…金型、41…第1ゲート、42…第2ゲート、43…ガス注入ノズル、47…境界範囲、M…溶融樹脂、G…ガス、K…空隙、Ha、Hb、Hd…高さ寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7