【文献】
CHOOKAJORN,Tongjai et al.,Design of Stable Nanocrystalline Alloys,Science,米国,AAAS,2012年 8月24日,vol.337、Issue 6097,pp.951-954,DOI:10.1126/science.1224737
【文献】
小田英治他,ナノ結晶タングステン粉末の微細組織と焼結特性,日本金属学会誌,日本,日本金属学会,2005年11月,第69巻、第11号,pp967-972,ISSN:0021-4867,DOI:10.2320/jinstmet.69.697
【文献】
小川 英典,討52 メカニカルアロイング法により作製した高窒素ナノ結晶オーステナイトステンレス鋼粉末の固化成形とその機械的性質,日本鉄鋼協会講演論文集 材料とプロセス Current Advances in Materials and Processes,日本,社団法人日本鉄鋼協会,1999年 3月 1日,第12巻 第1,CAMP-ISIJ Vol.18(2005)-1342〜CAMP-ISIJ ,ISSN:0914-6628
【文献】
TELU,S. et al.,Densification and characterisation of W-Cr-Nb alloys prepared by mechanically alloyed nanocrystalline powders,Powder Metallurgy,The Institute of Materials, Minerals and Mininig,2013年 2月,vol.56,No.1,p.83-88,ISSN:0032-5899, http://www.skpabi.com/documents/suresh%20telu/pom1831%20_21.09.2012.pdfにて同一内容公開
【文献】
DA COSTA,F.A. et al.,Sinter densification of nanocrystalline composite W-Cu powder,International Journal of Powder Metallurgy,米国,American Powder Metallurgy Institute,2005年,vol.41,No.4,p.51-57,ISSN:0888-7462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
当業者は、図面が、主に、例証目的のためのものであって、本明細書に説明される本発明の主題の範囲を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。図面は、必ずしも、正確な縮尺ではない。いくつかの事例では、本明細書に開示される本発明の主題の種々の側面は、図面中で誇張または拡大されて示され、異なる特徴の理解を促進し得る。図面中、同様の参照文字は、概して、同じ特徴(例えば、機能的に類似および/または構造的に類似要素)を指す。
【0011】
【
図1(a)】
図1(a)−1(b)は、それぞれ、一実施形態における、粒度の関数としてのナノ結晶Ni−W合金の硬度と、一実施形態における、ナノ結晶Ni−W合金の変形のための活性化体積とを描写する。
【
図1(b)】
図1(a)−1(b)は、それぞれ、一実施形態における、粒度の関数としてのナノ結晶Ni−W合金の硬度と、一実施形態における、ナノ結晶Ni−W合金の変形のための活性化体積とを描写する。
【
図2】
図2(a)−2(d)は、一実施形態における、Ni−W合金試料のSEM画像を描写する。
【
図3(a)】
図3(a)−3(b)は、それぞれ、一実施形態における、溶質偏析から生じる古典的自由エネルギー曲線および自由度と、一実施形態における、粒度の関数としての合金中の一般的形態の粒界エネルギーとを描写する。
【
図3(b)】
図3(a)−3(b)は、それぞれ、一実施形態における、溶質偏析から生じる古典的自由エネルギー曲線および自由度と、一実施形態における、粒度の関数としての合金中の一般的形態の粒界エネルギーとを描写する。
【
図4】
図4は、一実施形態における、可変溶質濃度およびドーパントサイズに関する過剰エンタルピーのプロットを描写する。
【
図5】
図5は、一実施形態における、種々のアニーリング温度でのタングステン粉末の粒度を描写する。
【
図6(a)】
図6(a)−6(b)は、それぞれ、一実施形態における、可変数の層に関する3つの遷移金属活性剤を伴うタングステン圧密体の線形収縮と、一実施形態における、可変温度の関数としての添加剤の4つの単分子層を伴う種々のタングステン合金の線形収縮とを描写する。
【
図6(b)】
図6(a)−6(b)は、それぞれ、一実施形態における、可変数の層に関する3つの遷移金属活性剤を伴うタングステン圧密体の線形収縮と、一実施形態における、可変温度の関数としての添加剤の4つの単分子層を伴う種々のタングステン合金の線形収縮とを描写する。
【
図7(a)】
図7(a)−7(b)は、それぞれ、Ti−Wの位相図およびV−Wの位相図を描写する。
【
図7(b)】
図7(a)−7(b)は、それぞれ、Ti−Wの位相図およびV−Wの位相図を描写する。
【
図8(a)】
図8(a)−8(b)は、それぞれ、Sc−Wの位相図およびCr−Wの位相図を描写する。
【
図8(b)】
図8(a)−8(b)は、それぞれ、Sc−Wの位相図およびCr−Wの位相図を描写する。
【
図9(a)】
図9(a)−9(b)は、それぞれ、Ni−Tiの位相図およびPd−Tiの位相図を描写する。
【
図9(b)】
図9(a)−9(b)は、それぞれ、Ni−Tiの位相図およびPd−Tiの位相図を描写する。
【
図10(a)】
図10(a)−10(b)は、それぞれ、Ni−Vの位相図およびPd−Vの位相図を描写する。
【
図10(b)】
図10(a)−10(b)は、それぞれ、Ni−Vの位相図およびPd−Vの位相図を描写する。
【
図11(a)】
図11(a)−11(b)は、それぞれ、Cr−Pdの位相図およびCr−Niの位相図を描写する。
【
図11(b)】
図11(a)−11(b)は、それぞれ、Cr−Pdの位相図およびCr−Niの位相図を描写する。
【
図12(a)】
図12(a)−12(b)は、それぞれ、Pd−Sの位相図およびNi−Scの位相図を描写する。
【
図12(b)】
図12(a)−12(b)は、それぞれ、Pd−Sの位相図およびNi−Scの位相図を描写する。
【
図13】
図13は、1477℃時のW−Ti−Niの三元相図を描写する。
【
図14(a)】
図14(a)−14(b)は、それぞれ、1465℃時のFe−Niの位相図およびW−Fe−Niの三元相図を描写する。
【
図14(b)】
図14(a)−14(b)は、それぞれ、1465℃時のFe−Niの位相図およびW−Fe−Niの三元相図を描写する。
【
図15】
図15は、一実施形態における、1460℃で焼結されたW−Ni1原子%−Fe1原子%の破断面を描写する。
【
図16(a)】
図16(a)−16(b)は、それぞれ、一実施形態における、異なるミリング時間でのタングステンのX線回折パターンと、一実施形態における、異なるミリング時間でのタングステンの粒度とを描写する。
【
図16(b)】
図16(a)−16(b)は、それぞれ、一実施形態における、異なるミリング時間でのタングステンのX線回折パターンと、一実施形態における、異なるミリング時間でのタングステンの粒度とを描写する。
【
図17】
図17は、一実施形態における、異なるミリング時間でのW−Cr20原子%のX線回折パターンを描写する。
【
図18】
図18は、一実施形態における、ミリング時間の関数としての粒度、格子パラメータ、およびW中のCrの量を描写する。
【
図19】
図19は、一実施形態における、焼結挙動に及ぼすミリング時間の影響を描写する。
【
図20】
図20は、一実施形態における、7時間、1300℃に保持されたW−Cr20原子%材料の焼結挙動を描写する。
【
図21】
図21は、一実施形態における、異なるミリング時間でのW−Cr15原子%材料のX線回折パターンを描写する。
【
図22】
図22は、一実施形態における、焼結挙動に及ぼすミリング時間の影響を描写する。
【
図23】
図23は、一実施形態における、異なる加熱率でのW−Cr15原子%材料の焼結活性化エネルギーを描写する。
【
図24】
図24は、一実施形態における、ミリングされたW、W−Cr20原子%、およびW−Ti20原子%材料の焼結挙動を描写する。
【
図25】
図25は、一実施形態における、焼結プロセス中の1000℃でのW−Cr20原子%材料の粒度を描写する。
【
図26】
図26は、一実施形態における、焼結プロセス中の1100℃でのW−Cr20原子%材料の粒度を描写する。
【
図27】
図27は、一実施形態における、焼結プロセス中の1200℃でのW−Cr20原子%材料の粒度を描写する。
【
図28】
図28は、一実施形態における、1300℃での種々の量のCrを伴うタングステンの収縮を描写する。
【
図29】
図29は、一実施形態における、W−Ti20原子%材料およびW−Ti20原子%−Cr5原子%材料の焼結挙動を描写する。
【
図30-1】
図30(a)−30(f)は、それぞれ、一実施形態における、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の明視野TEM画像と、一実施形態における、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたCr相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたW相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたTi相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたCr、W、およびTi相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像とを描写する。
【
図30-2】
図30(a)−30(f)は、それぞれ、一実施形態における、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の明視野TEM画像と、一実施形態における、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたCr相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたW相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたTi相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像と、一実施形態における、ハイライトされたCr、W、およびTi相を伴う、W−Ti20原子%−Cr5原子%焼結材料の暗視野STEM画像とを描写する。
【
図31】
図31は、一実施形態における、焼結プロセス終了時のW−Cr20原子%材料を描写する。
【
図32】
図32は、一実施形態における、W−Cr20原子%材料の焼結活性化エネルギーを描写する。
【
図33】
図33は、一実施形態における、1400℃まで加熱後のW−Cr20原子%材料の後方散乱SEM画像を描写する。
【
図34】
図34は、一実施形態における、1100℃まで加熱し、2時間保持後の研磨されたW−Cr20原子%材料の後方散乱SEM画像を描写する。
【
図35】
図35は、一実施形態における、1100℃まで加熱し、2時間保持後の研磨されたW−Cr20原子%材料の後方散乱SEM画像を描写する。
【
図36】
図36は、一実施形態における、種々の加熱プロファイルに関する収縮データおよび曲線が異なる活性化エネルギー値で収束する程度から計算される、W−Cr20原子%材料の焼結活性化エネルギー曲線を描写する。
【
図37】
図37は、一実施形態における、活性化エネルギー値約357kJで収束する種々の加熱プロファイルに関する収縮データから計算される、W−Cr15原子%材料の活性化エネルギー曲線を描写する。
【
図38】
図38は、一実施形態における、活性化エネルギーの関数としての
図37に描写される活性化エネルギー曲線の平均残差二乗値のプロットを描写する。
【
図39】
図39(a)−39(d)は、それぞれ、一実施形態における、材料の選択された面積回折パターンの差込図を伴う、W−Cr15原子%材料の20時間ミリングされたままの明視野TEM画像と、一実施形態における、1100℃まで加熱後の過飽和タングステンから析出されたクロム豊富相の後方散乱SEM画像と、一実施形態における、1200℃まで加熱後の粒子間に形成される縮径部の後方散乱SEM画像と、W豊富粒子に隣接するCr豊富縮径部の明視野TEM画像とを描写する。
【
図40】
図40は、一実施形態における、温度の関数としてのW豊富相の相対密度、W中のCr量、およびBCC格子パラメータと、一連の制御実験に関する温度の関数としての相対密度とを描写する。
【
図41】
図41は、一実施形態における、種々の加熱率でのW−Cr15原子%のマスタ焼結曲線および加熱プロファイルを描写する。
【
図42】
図42(a)−42(d)は、それぞれ、一実施形態における、ナノ相焼結、活性化焼結、および液相焼結に関する相対密度の関数としての粒度と、一実施形態における、液相焼結ミクロ構造、活性化焼結ミクロ構造、およびナノ相焼結ミクロ構造とを描写する。
【
図43】
図43(a)および43(b)は、それぞれ、一実施形態における、温度の関数としてのCr−Ni系の相対密度変化と、一実施形態における、エネルギー分散分光法(EDS)によって産生されるNi元素マップの差込図を伴う、1200℃で焼結後のCr−Ni15原子%の後方散乱SEM画像とを描写する。
【
図44】
図44(a)および44(b)は、それぞれ、一実施形態における、30°〜130°の2θ範囲内と、一実施形態における、44°〜45°の2θ範囲内とのW−Cr15原子%のX線回折パターンを描写する。
【
図45】
図45は、一実施形態における、種々の加熱率での温度の関数としてのW−Cr15原子%の相対密度を描写する。
【
図46】
図46(a)および46(b)は、それぞれ、一実施形態における、種々の加熱率での温度の関数としてのCr−Ni15原子%の相対密度と、一実施形態における、Cr−Ni15原子%のマスタ焼結曲線とを描写する。
【
図47】
図47は、種々の焼結されたタングステン合金に関する相対密度の関数としての粒度を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下は、本発明の焼結方法および焼結されたナノ結晶合金に関連する種々の概念と、その実施形態のより詳細な説明である。前述で導入され、以下により詳細に論じられる、種々の概念は、多数の方法のうちのいずれかにおいて実装されてもよく、開示される概念は、実装の任意の特定の様式に限定されないことを理解されたい。具体的実装および用途の実施例は、主に、例証目的のために提供される。
(緒言)
【0013】
高強度および抵抗増加等の望ましい特性が、概して、100nmより小さい平均粒度を伴う、ナノ結晶金属における広範な研究に拍車をかけている。これらの特性は、多数の粒界から生じ得、粒度にわずかな変動を伴う場合でも、著しく変動し得る。
図1(a)および1(b)は、ナノ結晶Ni−W合金に関する機械的試験データを提示する。10〜100nmの粒度変化は、約50%の硬度低下および活性化体積に4倍を上回る増加をもたらし得る(感度率は、活性化体積の逆数として示され得る)。したがって、粒度の制御は、ナノ結晶金属の材料特性を調整するために重要であり得る。
【0014】
加えて、具体的粒度(または、サイズ範囲)は、所望の機械的特性に対応し得る。
図1(a)に示されるように、硬度は、粒度約10nmでピークとなり、次いで、さらなる結晶粒微細化に伴って低下し得る。活性化体積もまた、低下し、次いで、
図1(b)に示されるように、粒度がより小さくなるにつれて、増加し得る。せん断強さ帯は、
図2(a)−2(d)に示されるように、粒度が12nmを下回るのに伴って、Ni−W合金において顕著となり得る。その結果、特性に関する所望の値をもたらす、有限粒度が、存在し得る。したがって、粒度にわたる拡張可能な制御は、所望の特性を伴うナノ結晶金属材料を製造する重要な特徴であり得る。
(ナノ結晶材料)
【0015】
ナノ結晶材料は、概して、ナノメートル範囲、すなわち、約1000nmより小さい、例えば、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、約300nm、約200nm、約150nm、約100nm、約50nm、約30nm、約20nm、約10nm、約5nm、約2nm、またはより小さいものより小さいまたはそれと等しいサイズを伴う結晶粒を含む、材料を指し得る。本明細書のいくつかの実施形態では、異なる粒度状態をさらに区別するために、用語「超微細粒」が、約100nmを上回り、約1000nm未満の粒度を示すために使用され、用語「ナノ結晶粒」が、約100nm未満またはそれと等しい粒度を示すために使用される。一実施形態では、ナノ結晶材料は、多結晶材料であってもよい。別の実施形態では、ナノ結晶材料は、単結晶材料であっておよい。
【0016】
一実施形態では、粒度は、結晶粒の最大寸法を指し得る。寸法は、その幾何学形状に応じて、結晶粒の直径、長さ、幅、または高さを指し得る。一実施形態では、結晶粒は、球状、立方体、円錐形、円筒形、針状、または任意の他の好適な幾何学形状であってもよい。
【0017】
一実施形態では、ナノ結晶材料は、微粒子の形態であってもよい。微粒子の形状は、球状、立方体、円錐形、円筒形、針状、不規則形、または任意の他の好適な幾何学形状であってもよい。
【0018】
一実施形態では、ナノ結晶材料は、第1の金属材料および第2の金属材料を含み得る、ナノ結晶合金であってもよい。第1および/または第2の金属材料は、それぞれ、第1および/または第2の金属元素を含んでもよい。用語「元素」は、本明細書では、周期表に見出され得る、化学記号を指す。第1の金属材料は、金属元素であってもよい。金属元素は、周期表中の3−14族中の元素のいずれかを含んでもよい。一実施形態では、金属元素は、耐熱金属元素であってもよい。別の実施形態では、金属元素は、遷移金属(周期表の3−12族中のもののいずれか)であってもよい。以下では、タングステンが、いくつかの実施形態の説明を提供するために採用されるが、任意の好適な第1の金属材料が、タングステンの代わりに利用されてもよい。別の実施形態によると、第1の金属材料は、クロムを含んでもよい。別の実施形態では、第1の金属材料は、タングステンおよびクロムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、第2の金属材料元素は、第1の金属材料に対して、活性剤材料を含む、またはそのものであってもよい。別の実施形態では、第2の金属材料は、第1の金属材料に対して、安定剤材料を含む、またはそのものであってもよい。一実施形態では、第2の金属材料は、第1の金属材料と同一または異なる金属元素を含んでもよい。例えば、第2の金属材料の金属元素は、遷移金属であってもよい。一実施形態では、第2の金属材料は、Cr、Ti、または両方を含んでもよい。別の実施形態によると、第2の金属材料は、Niを含んでもよい。
【0020】
ナノ結晶材料は、材料に応じて、任意の値の相対密度を有してもよい。相対密度は、ナノ結晶材料の実験的に測定された密度とナノ結晶材料の理論的密度との間の比率を指し得る。
【0021】
一実施形態では、ナノ結晶材料は、バルクナノ結晶合金であってもよい。バルクナノ結晶合金は、薄膜の形態ではない、材料であってもよい。例えば、バルクナノ結晶合金は、一実施形態では、少なくとも約1ミクロン、例えば、少なくとも約10ミクロン、約25ミクロン、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約250ミクロン、約500ミクロン、約1mm、約5mm、約10mm、またはより大きい最小寸法を伴う、材料を指し得る。別の実施形態では、ナノ結晶合金は、コーティングの形態ではない。
(ナノ結晶構造の安定化)
【0022】
高表面/体積比率を伴うナノ結晶ミクロ構造は、多数の界面領域または粒界を有し得、これは、不安定にし得る。一実施形態では、不安定性は、系中の多量の過剰エネルギーを示し得、有意な結晶粒成長が、室温でさえ、純ナノ構造化材料中で観察され得る。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、本現象は、熱力学的観点から理解され得る。Gibbs自由エネルギーGは、粒界面積Aによって乗算された粒界エネルギーγに比例する。したがって、結晶粒成長の結果として生じる粒界面積の減少は、系をより低いエネルギー状態にもたらし得る。本現象は、一実施形態では、
図3(a)に図示される。
【数1】
【0023】
結晶粒成長のための高駆動力は、材料の耐用年数にわたる粒度のわずかな変化さえ、材料特性における劇的変化につながり得るため、純ナノ構造化材料のさらなる技術的用途を限定し得る。加えて、結晶粒成長の性質は、圧密および形状形成を含む、ナノ構造化材料が被り得る後処理の量を限定し得る。
【0024】
一実施形態では、動力学的アプローチおよび熱力学的アプローチの2つの基本アプローチが、ナノ結晶材料を安定化させるために使用され得る。動力学的アプローチは、粒界移動度を減少させ、結晶粒成長を低減させることを試みる。例えば、粒界移動度は、第2相牽引、溶質牽引、および化学的規則性を含む、方法によって限定され得る。これらの方略は、結晶粒成長が生じる時間を延期させ得る。しかしながら、これらの方法は、結晶粒成長のための駆動力を低減させ得ない。したがって、動力学的に安定化された生成物は、結晶粒成長を被り得、耐用年数全体を通して一定性能を提供し得ない。
【0025】
対照的に、熱力学的アプローチは、溶質原子を偏析し、したがって、結晶粒成長のための駆動力を低減させることによって、粒界エネルギーを低減させるようと試みる。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、合金系では、粒界エネルギーγは、以下のGibbs吸着式によって、溶質濃度C
sの観点から説明され得る。
【数2】
式中、Tは、温度であって、Rは、ガス定数であって、Γ
sは、界面過剰溶質原子である。偏析の場合、Γ
s>0、したがって、γは、溶質濃度C
sの増加に伴って減少するであろう。ナノ結晶合金は、γが、具体的溶質濃度において、ゼロに近い場合、準安定状態にあり得る。方程式(2)から、総粒界エネルギーは、以下のように与えられる。
【数3】
式中、γ
0は、純元素の具体的粒界エネルギーであって、ΔH
segは、溶質原子の偏析エンタルピーであって、kは、Boltzmann定数であって、Xは、粒界中の溶質濃度である。溶質偏析によるナノ結晶材料粒度の安定化は、多くのその他の中でもとりわけ、Ni−P合金、Y−Fe合金、Nb−Cu合金、Pd−Zr合金、およびFe−Zr合金のために行われ得る。
【0026】
溶質偏析によって産生されるGibbs自由エネルギーに対する新しい自由度は、
図3(a)にプロットされ、古典的粒界エネルギーと反対傾向を示す。溶質偏析影響によって修正される古典的粒界エネルギーは、
図3(b)に描写される。一実施形態では、本曲線は、単に、減少するのではなく、具体的粒度において最小値を呈するため、古典的粒界エネルギー曲線と異なる。したがって、微細粒度を伴う、安定化されたナノ構造化材料が、溶質偏析を用いて、結晶粒成長のための駆動力を低減させることによって産生され得る。
(ナノ結晶タングステン)
【0027】
一実施形態では、ナノ結晶体中心立方体金属は、これらの金属が、高率荷重下の局所せん断強さを含む、望ましい特性を呈するため、望ましくあり得る。高率荷重下のせん断強さ帯の形成は、弾のプラスチック変形の結果として消散されるエネルギーを低減させることによって、より多くのエネルギーが、貫通される物体に伝達されることを可能にし得るため、運動エネルギー弾デバイスにおいて利用される材料に有益となり得る。一実施形態では、タングステンは、その高密度および強度のため、運動エネルギー弾用途において、劣化ウランの有望な代用品として望ましくあり得る。加えて、より大きい粒度を伴うタングステンと異なり、ナノ結晶タングステンは、高率荷重下でせん断強さ帯を呈し得る。
【0028】
ボトムアップおよびトップダウンの2つの方法論が、ナノ結晶材料を製造するために採用され得る。トップダウン方略は、バルク粗野結晶粒材料をナノスケール状態に微細化し得る。ボトムアップ方法は、ナノサイズ粒子を採用後、高温における圧密が続き得る。
【0029】
タングステンの粒度を微細化するための一例示的トップダウン方法は、強塑性変形(SPD)である。少なくとも2つの典型的SPD技法、すなわち、等チャンネル角プレス(ECAP)および高圧ねじり加工(HPT)がある。ECAPプロセスは、約1000℃の高処理温度の結果として、動的再結晶化および結晶粒成長を開始することによって、数ミクロンのタングステン粒度をもたらし得る。したがって、温間圧延プロセスが、超微細粒状態における粒度を得るために、ECAPプロセスに続き得る。別のSPD処理方法HPTは、高圧力およびねじり力をタングステンの円板に印加する。結果として生じる塑性歪みは、約100nmの粒度を伴う材料をもたらし得る。これらのSPD技法は、歪み固化を伴わず、完璧に塑性であり得る、低歪み率感度を呈し得る、および/または高率荷重下で局所せん断強さを呈し得る、超微細粒度タングステンを産生し得る。
【0030】
いくつかの事例では、超微細粒度タングステン(またはさらにより微細な結晶粒)を産生するためのSPD技法の使用に関して、問題が存在し得る。第1に、大量生産は、SPD技法を通して産生されない。一実施形態では、SPD技法は、処理される材料の単位体積あたり大量のエネルギーを利用する。また、産生される材料の微細粒度は、材料が後続処理(例えば、形状形成)に曝される場合、喪失され得る。加えて、SPD技法は、粒度を精密に制御するための拡張可能方法を提供せず、したがって、具体的用途のために必要とされる具体的粒度を伴う材料を産生し得ない。一実施形態では、SPD技法は、結晶粒成長のための駆動力を低減させない。
【0031】
ボトムアップ方法の一実施形態では、材料のナノサイズ結晶粒を含有する粒子が、合成され得、次いで、粒子は、緻密化され得る。したがって、本方法は、本明細書における一実施形態では、「2ステップ」プロセスと称され得る。圧密は、焼結プロセスによって達成されてもよい。しかしながら、ボトムアップ方法を通して産生される材料は、圧密ステップの間に除去されない、体積欠陥の結果として、不良延性を呈し得る。これらの体積欠陥として、残留多孔率、不良粒子間接合、および不純物汚染が挙げられ得る。
【0032】
ボトムアッププロセスは、ナノ結晶タングステンを産生するために利用され得る。これらのプロセスは、ボールミリングおよび/または高エネルギーミリングを含む、機械的加工を通して合成されたナノ結晶タングステン粉末の産生を含み得る。いくつかの事例では、約5nm〜約15nmのナノサイズ結晶粒を伴うタングステンが、産生され得るが、結果として生じるナノ構造は、不安定となり得、熱的に活性化された結晶粒成長を被り得る。一実施形態では、安定ナノ構造を伴うタングステン材料を産生するために、添加元素は、熱的に活性化された結晶粒成長に対する感受性を低減させるために採用され得る。本明細書のいずれかに説明されるように、添加元素は、一実施形態では、ナノ結晶合金中のタングステンに対する安定剤、活性剤、または両方であってもよい。
(ナノ結晶タングステンを安定化させるための元素)
【0033】
ナノサイズ結晶粒を伴うタングステン材料を安定化させるための元素を選択する際、ΔH
segは、重要であり得る。方程式(3)に示されるように、高値のΔH
segを伴う元素は、粒界エネルギーを低減させ得る。溶液のΔH
segは、溶液の弾性歪みエネルギーに正比例し得、溶液の弾性歪みエネルギーは、原子半径不整合に伴って拡張し得る。したがって、一実施形態では、原子半径不整合が増加するにつれて、粒界エネルギーは、低減され得る。
【0034】
図4に示されるように、過剰エンタルピーの傾きは、溶質の原子半径とホスト原子の原子半径の比率が増加するにつれて、より負となり得、原子半径不整合の増加に伴う粒界エネルギー低減の潜在性の増加を示す。タングステンの安定化のための元素を選択する際に考慮され得る、他の要因として、化学相互作用および粒界エネルギー差が挙げられる。正の混合熱を伴う元素の場合、溶解度は、化学相互作用に正比例し得、ホスト原子と高不混和性を伴う溶質は、粒界まで偏析する可能性がより高くなり得る。
【0035】
正の混合熱を伴う、タングステン合金の偏析強度を考慮する際、元素Ti、V、Sc、およびCrは、その混合エンタルピーに対して良好な偏析強度を有し得る。一実施形態では、バナジウムは、低混合熱を呈し、したがって、ある用途には望ましくあり得ない。
【0036】
合金の熱安定性は、任意の好適な技法によって、判定および/または確認されてもよい。例えば、一実施形態では、W−Ti合金の熱安定性は、異なる温度で原位置で収集されたX線回折(XRD)データを用いて確認されてもよい。合金サンプルは、種々の所定の時間周期の間、種々の温度ですでにアニーリングされていてもよい。
図5は、種々の温度で1.5時間アニーリングされた後のW−Ti合金のXRDデータを示す。
図5に示されるように、純タングステンの粒度は、1000℃で増加し得るが、W−17.5原子%Ti合金中の粒度増加は、抑制され得る。したがって、任意の理論によって拘束されるわけではないが、少なくとも本実施形態では、Tiは、粒界エネルギーを低減させることによって、結晶粒成長を阻止する役割を果たし得る。
(タングステンの活性化焼結)
【0037】
タングステンは、3422℃の高溶融点を有するため、タングステンは、耐熱金属材料として採用され得る。一実施形態では、焼結技法を用いても、約2400℃〜約2800℃の高温が、完全密度の焼結されたタングステン材料を得るために必要とされ得る。少量の付加的元素が、タングステンに添加され、焼結動力学を向上させ、ひいては、焼結温度を低下させ得る。添加元素は、前述のもののいずれかを含む、金属元素であってもよい。一実施形態では、添加元素は、Pd、Pt、Ni、Co、およびFeのうちの少なくとも1つであってもよい。これらの添加金属元素は、タングステン粒子を囲繞し、タングステンのための比較的に高輸送拡散経路を提供し、それによって、タングステン拡散の活性化エネルギーを低減させ得る。一実施形態では、本技法は、活性化焼結と称される。
【0038】
活性化焼結は、異なる機構によって説明され得る。これは、転位上昇、添加元素からタングステンのd−軌道までの電子の移動、および粒界拡散率の向上によるものだとされ得る。タングステンの焼結動力学に及ぼす、遷移金属元素である添加元素の影響は、
図6(a)および6(b)に示される。これらの図では、焼結度は、高温で一定力下、タングステン圧密体の収縮度によって反映され得、収縮は、発生した焼結量に相関する。
図6(a)は、タングステン粒子に及ぼす添加元素の種々の単分子層の収縮量を描写し、
図6(b)は、異なる温度における異なる添加元素の4つの単分子層を伴うタングステン粒子の収縮を描写する。一実施形態では、付加的元素としてのPdおよびNiの使用は、タングステンの活性化焼結をもたらし得る。別の実施形態では、添加元素Cuは、
図6(b)に示されるように、焼結動力学に最小限の影響を及ぼし得、純タングステンと同一線形収縮をもたらし得る。任意の理論によって拘束されるわけではないが、これは、Cu中のタングステンの低溶解度の結果であり得、低溶解度は、焼結の間、Cuがタングステン原子への高速輸送経路を提供しないように防止し得る。
(焼結動力学)
【0039】
添加元素は、いくつかの事例では、望ましくあり得るが、あまり多い添加元素は、タングステンの緻密化を妨害し得る。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、これは、タングステンの活性化焼結が、拡散制御プロセスであり得ることを示唆し得る。添加元素Fe、Co、Ni、およびPdの活性化エネルギーは、それぞれ、480kJ/モル、370kJ/モル、280kJ/モル、および200kJ/モルである。
【0040】
純タングステン焼結の活性化エネルギーは、約380〜460kJ/モルである。任意の理論によって拘束されるわけではないが、純タングステン焼結の活性化エネルギーが、表1に示されるように、タングステンの粒界拡散のものに匹敵するため、値は、初期段階における純タングステンの焼結の機構が粒界拡散であり得ることを示唆する。
【表1】
(緻密化のための活性化エネルギー)
【0041】
焼結は、いくつかの異なる拡散機構の結果としてのミクロ構造の変化を含む、複合プロセスであってもよい。一実施形態では、本複合焼結プロセスは、ミクロ構造の発達に基づいて、初期、中間、および最終段階の3つの段階に区別され得る。初期段階は、低温から始まり得、そのとき、縮径部が粒子間に生成される。縮径部は、表面拡散を通して生成され得、密度にわずかな増加をもたらし得る。初期段階は、3%線形収縮未満と相関し得る。中間段階は、著しい緻密化を産生し得る。中間段階における緻密化は、最大相対密度93%であり得る。最終段階の間、隔離された細孔が、形成され、次いで、除去され得る。最終段階では、体積拡散が、主となり得る。
【0042】
焼結挙動は、幾何学的モデルによって説明され得る。これらのモデルは、実験結果と合致し得るが、ある場合には、非球状粒子または種々の粒子サイズの使用等、幾何学的モデルからの若干の逸脱が、幾何学的モデルの結果を信頼できないものにし得る。さらに、初期焼結プロセスに基づく幾何学的モデルは、線形収縮の最初の5%を超えると、正確ではあり得ない。加えて、粉末圧密体のミクロ構造の実際の発達は、幾何学的モデルの予測と異なり得る。その結果、焼結動力学を定量的に予測することが困難であり得る。
【0043】
焼結プロセス全体は、3つを上回る焼結段階に焦点を当てる、アプローチにおいて説明され得る。焼結プロセスの精密な活性化エネルギーを評価するために、一般化された焼結方程式が、利用され得る。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、焼結の間の瞬間緻密化率は、方程式(4)に示されるように、温度依存、粒径依存、および密度依存項を用いて表され得る。
【数4】
式中、ρは、バルク密度であって、dは、粒径または粒子サイズであって、γは、表面エネルギーであって、Vは、モル体積であって、Rは、ガス定数であって、Tは、絶対温度であって、Qは、活性化エネルギーであって、f(ρ)は、密度のみの関数である。Cは、定数であって、Aは、d、T、またはρと関連しない、材料パラメータである。最後に、粒界拡散または体積拡散等の拡散機構は、nの値を判定する。等方性収縮状況では、ρは、以下のように、単純な数学的関係および収縮データに基づいて得られ得る。
【数5】
【0044】
方程式4の対数を求めることに応じて、以下の方程式が、得られる。
【数6】
【0045】
したがって、活性化エネルギーQは、定数ρおよびdにおいて、ln(Tdρ/dt)対1/Tをプロットすることによって、傾きを通して評価され得る。さらに、方程式(6)は、異なる密度値において、異なるQを産生する。
(偏析を通したタングステン合金の熱力学的安定化)
【0046】
一実施形態では、添加剤合金元素、すなわち、安定剤元素および/または活性剤元素が、採用され得る。安定剤元素は、粒界を偏析させることによって、ナノ結晶タングステンを熱力学的に安定化させ得る。本偏析は、粒界エネルギーを低減させ得、ひいては、結晶粒成長のための駆動力を低減させ得る。一実施形態では、ナノ結晶タングステン合金は、約1000℃を上回るまたはそれと等しい、例えば、約1050℃、約1000℃、約1150℃、約1200℃、約1250℃、約1300℃、約1350℃、約1400℃、約1450℃、約1500℃、またはより高い温度を上回るまたはそれと等しい温度において、熱力学的に安定する、または実質的に熱力学的に安定し得る。
【0047】
活性剤元素は、タングステン原子のための高拡散経路を提供することによって、タングステンの焼結動力学を向上させ得る。その結果、焼結温度は、一実施形態では、約1500℃未満またはそれと等しい、例えば、約1450℃、約1400℃、約1350℃、約1300℃、約1250℃、約1200℃、約1150℃、約1100℃、約1050℃、またはそれより低い温度未満またはそれと等しくあり得る。一実施形態では、焼結温度は、約1000℃であってもよい。焼結温度の低減は、焼結が、ナノ結晶タングステンのナノ構造が熱力学的に安定する温度範囲内で生じることを可能にし得る。一実施形態では、焼結温度は、採用される加熱率によって影響され得る。
(安定剤元素)
【0048】
安定剤元素は、焼結材料の粒界エネルギーを低減し、それによって、結晶粒成長のための駆動力を低減可能な任意の元素であってもよい。概して、安定剤元素は、焼結材料と正の混合熱を呈し得る。一実施形態では、安定剤元素は、前述の金属元素のいずれかであり得る、金属元素であってもよい。
【0049】
安定剤元素は、約2.5原子%を上回るまたはそれと等しい、例えば、約5原子%、約7.5原子%、約10原子%、約12.5原子%、約15原子%、約17.5原子%、約20原子%、約25原子%、約30原子%、約35原子%、約40原子%、約45原子%、またはそれを上回る量を上回るまたはそれと等しい量で存在してもよい。一実施形態では、安定剤元素は、約2.5原子%〜約45原子%、例えば、約5原子%〜約40原子%、約7.5原子%〜約35原子%、約10原子%〜約30原子%、約12.5原子%〜約25原子%、または約15原子%〜約20原子%等の量で存在してもよい。一実施形態では、安定剤元素は、約2.5原子%、約5原子%、約7.5原子%、約10原子%、約12.5原子%、約15原子%、約17.5原子%、約20原子%、約25原子%、約30原子%、約35原子%、約40原子%、または約45原子%の量で存在してもよい。
(活性剤元素)
【0050】
活性剤元素は、焼結材料の焼結動力学を向上させることが可能な任意の元素であってもよい。活性化焼結の一実施形態では、活性剤元素は、タングステンの拡散のための高速搬送経路として作用し得る。その結果、一実施形態では、活性剤元素の選択は、2つの条件に基づき得る。第1に、タングステン中の活性剤元素の溶解度および粒子間界面における偏析が、低くあり得る。加えて、活性剤元素は、タングステンのための比較的に高溶解度を呈し、活性剤元素が、タングステン原子のための高速拡散経路として作用することを可能にするべきである。第2に、活性剤元素が豊富な位相中のタングステンの拡散率は、比較的に高くあり得る。加えて、活性剤元素が豊富な位相中のタングステンの拡散率は、それ自体中のタングステンの拡散率より高くあるべきである。位相中の元素の含有量に関する用語「豊富」は、一実施形態では、少なくとも約50原子%、例えば、少なくとも約60原子%、約70原子%、約80原子%、約90原子%、約99%、またはより高い位相中の元素の含有量を指す。用語「位相」は、一実施形態では、物質の状態を指す。例えば、一実施形態では、位相は、位相図上に示される位相を指し得る。
【0051】
一実施形態では、タングステンは、活性剤元素中に可溶性である。別の実施形態では、活性剤元素中のタングステンの溶解度は、温度上昇に伴って増加する。一実施形態では、活性剤元素の溶融温度は、タングステンの溶融温度未満であり得る。
【0052】
概して、活性剤の量は、安定剤元素との相互作用のために利用可能な量が低減されるように、最小限にされ得る。一実施形態では、活性剤元素は、約0.15原子%を上回るまたはそれと等しい、例えば、約0.3原子%、約0.5原子%、約1原子%、約3原子%、約5原子%、約8原子%、約10原子%、約13原子%、約15原子%、約18原子%、約20原子%、約23原子%、約25原子%、約30原子%、約35原子%、約40原子%、約45原子%、またはそれを上回る量を上回るまたはそれと等しい量で存在し得る。一実施形態では、活性剤元素は、約0.15原子%〜約45原子%、例えば、約0.3原子%〜約40原子%、約0.5原子%〜約35原子%、約1原子%〜約30原子%、約3原子%〜約25原子%、約5原子%〜約23原子%、約8原子%〜約20原子%、約10原子%〜約18原子%、または約13原子%〜約15原子%等の量で存在し得る。一実施形態では、活性剤元素は、約0.15原子%、約0.3原子%、約0。5原子%、約1原子%、約3原子%、約5原子%、約8原子%、約10原子%、約13原子%、約15原子%、約18原子%、約20原子%、約23原子%、約25原子%、約30原子%、約35原子%、約40原子%、または約45原子%の量で存在し得る。
【0053】
一実施形態では、活性剤元素は、前述の金属元素のいずれかであり得る、金属元素であってもよい。一実施形態では、活性剤元素は、Pd、Pt、Ni、Co、およびFeのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0054】
一実施形態では、活性剤元素はまた、安定剤元素であってもよい。方程式(3)に示されるように、最大ΔH
segを提供する、活性剤元素は、最大安定化影響を産生し得、ΔH
segは、3つの要因、すなわち、原子半径不整合(弾性歪みエネルギー)、化学相互作用、および粒界エネルギー差に関連し得る。Niとタングステンとの間の原子半径不整合は、Pdとタングステンとの間の不整合より大きい。したがって、Niは、弾性歪みエネルギーのみが考慮される場合、タングステンを安定化させるためのより優れた元素であり得る。一実施形態では、NiまたはPdは、安定剤元素および活性剤元素の両方として作用し、W−NiおよびW−Pdナノ結晶合金を産生し得る。
【0055】
別の実施形態では、安定剤元素はまた、活性剤元素であってもよい。安定剤および活性剤元素の両方としての単一元素の使用は、活性剤と安定剤との間の相互作用を考慮する必要を除去するという付加的利点を有する。一実施形態では、活性剤および安定剤元素の両方として利用され得る、元素は、前述の金属元素のいずれかであり得る、金属元素であってもよい。一実施形態では、Ti、V、Cr、およびSc、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが、活性剤および安定剤元素の両方として利用されてもよい。別の実施形態ではCr、Ti、または両方が、活性剤および安定剤元素の両方として利用されてもよい。
【0056】
TiおよびVの両方の場合、固溶体が、
図7(a)および7(b)における位相図に示されるように、焼結温度(1500℃を下回る)において、タングステンと形成される。Scの場合、ScおよびW相は、
図8(a)における位相図に示されるように、予期される焼結温度(1500℃を下回る)において、別個に存在する。したがって、一実施形態では、Scは、タングステンのための拡散経路を提供可能であり得る。Crの場合、Crが豊富およびWが豊富な位相は、
図8(b)における位相図に示されるように、予期される焼結温度(1500℃を下回る)において、別個に存在する。加えて、Crは、他の安定剤と比較して、比較的に高偏析エンタルピーを有し、Cr中のタングステンの拡散率は、タングステンの自己拡散率より高い。一実施形態では、Crが、活性剤元素および安定剤元素の両方として作用し、W−Crナノ結晶合金を産生し得る。
(活性剤および安定剤の相互作用)
【0057】
1つの元素が、安定剤および活性剤の両方として作用することができないとき、2つの元素が、採用されてもよい。2つの元素間の相互作用は、活性剤および安定剤の役割が適切に果たされることを確実にするために考慮され得る。例えば、活性剤および安定剤が、金属間化合物を形成するとき、元素はそれぞれ、その指定される役割を果たさないように妨害され得る。その結果、予期される焼結温度において、金属間化合物を形成する能力を伴う、活性剤および安定剤の組み合わせは、いくつかの事例では、少なくとも回避されるべきである。2つの元素間の金属間化合物の形成の潜在性は、位相図を用いて分析されてもよい。
【0058】
各添加剤の量は、位相図に基づいて、金属間位相の形成の潜在性を判定する際に重要となり得る。例えば、
図5に示されるように、17.5原子%Tiは、Wに対して望ましい安定剤であり得る。一実施形態では、便宜上、20原子%安定剤の量が、
図5に基づいて考慮され得る。一方、添加される活性剤の量は、粒子サイズに伴って変化し得る。一実施形態では、添加されるべき活性剤の正確な量は、タングステン粒子サイズの分布を測定するまで、既知ではない場合があるが、タングステンと比較して、0.5重量%として大まかに概算されてもよい。
【0059】
図9(a)は、TiおよびNiが、20原子%Tiおよび1.3原子%Ni(タングステンと比較して、0.5重量%Niに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図9(a)に示されるように、Ti
2Ni金属間位相およびTi(HCP)位相は、767℃を下回る温度において共存する。活性化焼結の目的のためにより重要なことは、2相領域、すなわち、Ti(HCP)、液体が、本濃度では、約1200℃およびそれを上回る温度で存在することである。
【0060】
図9(b)は、TiおよびPdが、20原子%Tiおよび0.7原子%Pd(タングステンと比較して、0.5重量%Pdに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図9(b)に示されるように、Ti(HCP)相が、約1500℃で存在する。
【0061】
図10(a)は、VおよびNiが、20原子%Vおよび1.3原子%Ni(タングステンと比較して、0.5重量%Niに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図10(a)に示されるように、V
3.
1Ni
0.
9金属間化合物およびV相が、約800℃において共存し、V相が、高温において存在する。
【0062】
図10(b)は、VおよびPdが、20原子%Vおよび0.7原子%Pd(タングステンと比較して、0.5重量%Pdに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図10(b)に示されるように、V相のみ、最大約1900℃で存在する。
【0063】
図11(a)は、CrおよびPdが、20原子%Crおよび0.7原子%Pd(タングステンと比較して、0.5重量%Pdに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図11(a)に示されるように、Cr相およびPd相が、570℃を上回って共存し、Cr相および液相が、1304℃を上回って共存する。三元相図は、金属間化合物が形成され得るかどうかを判定する際に重要であり得るが、二元相図は、別個のCrおよびPd位相が共存し得るかを示す。一実施形態では、焼結温度は、1300℃を下回ってもよく、CrおよびPdは、二元相図に基づいて、別個の位相として、本温度範囲内に存在し、CrおよびPdが、相互に干渉せずに、それぞれ、安定剤および活性剤の役割を果たすことを可能にし得る。別の実施形態では、処理温度は、1300℃を上回ってもよく、液体焼結技法が、採用されてもよい。
【0064】
図11(b)は、CrおよびNiが、20原子%Crおよび1.3原子%Ni(タングステンと比較して、0.5重量%Niに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図11(b)に示されるように、Cr相およびNi相は、587℃を上回って共存し、Cr相のみ、1000℃を上回って存在する。
【0065】
図12(a)は、ScおよびPdが、20原子%Scおよび0.7原子%Pd(タングステンと比較して、0.5重量%Pdに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図12(a)に示されるように、Sc相および液相が、1000℃を上回って共存し、液相のみ、1400℃を上回って存在する。
【0066】
図12(b)は、ScおよびNiが、20原子%Scおよび1.3原子%Ni(タングステンと比較して、0.5重量%Niに対応する)の量において、添加される、一実施形態を図示する。
図12(b)に示されるように、Sc相および液相が、960℃を上回って共存し、液相のみ、1400℃を上回って存在する。
【0067】
タングステンとの活性剤−安定剤の組み合わせの三元相図は、液相が、いくつかの安定剤−活性剤組み合わせとともに形成され得ることを示す。一実施形態では、液相を形成し得る、安定剤−活性剤の組み合わせは、Ni−Ti、Sc−Ni、Sc−Pd、およびCr−Pdであり得る。
【0068】
W−Ti−Niに関する三元相図は、
図13に示されるように、1477℃の場合、液相が、組成W−20原子%Ti−1.3原子%Niにおいて存在することを示す。一実施形態では、液相焼結技法が、W−Ti−Niのために採用されてもよく、これは、活性化焼結のように、焼結動力学をさらに向上させ得る。
(液相焼結)
【0069】
液相焼結の少なくとも一実施形態では、合金は、予期される処理温度において成分の固相線を上回る1つを上回る成分を含有し、液相は、予期される処理温度において存在する。緻密化率は、液相中の原子の高拡散率に起因して、固体状態焼結と比較して、液相焼結の場合、より高速であり得る。産業用焼結は、概して、コストおよび生産性利点に起因して、液相の存在下で行われ得る。70%を上回る焼結材料が、液相焼結技法を使用して処理され得る。
【0070】
一実施形態では、W−Ni−Fe合金系は、液相焼結技法によって焼結され、運動エネルギー弾等の用途において採用される材料を産生してもよい。1460℃を上回る温度が、98重量%W−1重量%Ni−1重量%Feの液相焼結のために印加され得る。液相は、本濃度では、
図14(a)−(b)に示されるように、NiおよびFeの組み合わせとして現れ得る。タングステン中のNiおよびFeの低溶解度は、タングステン粉末焼結を支援し得る。本系は、W−Ni−Ti合金系に類似し得る。
【0071】
いくつかの事例では、液相焼結技法は、同時に、ミクロ構造粗粒化を呈し得る。ナノ結晶材料中のTi等の安定剤の含有は、ミクロ構造粗粒化を防止し得る。液相焼結の発生は、焼結プロセス全体を通して異なる温度における、走査電子顕微鏡(SEM)画像を通して確認されてもよい。一実施形態では、液相焼結プロセスは、細孔充填機構の結果であり得る。細孔充填機構および正常液相焼結は、
図15に示されるように、焼結された粒子を囲繞する液体充填分岐の存在によって検出され得る。
(焼結されたナノ結晶合金の産生)
【0072】
一実施形態では、ナノ結晶合金の産生のためのプロセスは、複数のナノ結晶微粒子を焼結するステップを含む。ナノ結晶微粒子は、タングステン等の第1の金属材料と、活性剤元素等の第2の金属材料とを含んでもよい。ナノ結晶微粒子は、非平衡相を含んでもよく、第2の金属材料は、第1の金属材料中に溶解される。一実施形態によると、非平衡相は、過飽和相であってもよい。用語「過飽和相」は、以下にさらに説明される。非平衡相は、ナノ結晶微粒子の焼結の間、分解を受け得る。ナノ結晶微粒子の焼結は、ナノ結晶微粒子の表面および粒界のうちの少なくとも1つにおいて、第2の金属材料が豊富な位相の形成を生じさせ得る。第2の金属材料が豊富な位相の形成は、焼結の間の非平衡相の分解の結果であり得る。第2の金属材料が豊富な位相は、第1の金属材料のための高速拡散経路として作用し、焼結動力学を向上させ、ナノ結晶微粒子の焼結率を加速させ得る。一実施形態によると、ナノ結晶微粒子の焼結の間の非平衡相の分解は、ナノ結晶微粒子の焼結率を加速させる。焼結プロセスの結果として産生されるナノ結晶合金は、バルクナノ結晶合金であってもよい。
【0073】
一実施形態では、第2の金属材料は、第1の金属材料より低い溶融温度を有してもよい。別の実施形態では、第1の金属材料は、第2の金属材料中に可溶性であってもよい。一実施形態では、第2の金属材料中の第1の金属材料の溶解度は、温度上昇に伴って増加してもよい。別の実施形態では、第2の金属材料が豊富な位相中の第1の金属材料の拡散率は、それ自体中の第1の金属材料の拡散率を上回る。具体的には、第1の金属材料および第2の金属材料は、ナノ結晶合金区分内に前述の元素を含んでもよい。
【0074】
一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金は、約75%を上回るまたはそれと等しい、例えば、少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.9%の相対密度を呈し得る。用語「相対密度」は、すでに前述の通りである。別の実施形態では、焼結材料の相対密度は、約100%であってもよい。一実施形態によると、焼結材料は、完全緻密であってもよい。本明細書で利用されるように、用語「完全緻密」または「完全密度」は、少なくとも98%、例えば、少なくとも約98%、約99%、約99.5%、またはより高い相対密度を伴う材料を指す。焼結材料の密度は、焼結される材料の他の材料特性に影響を及ぼし得る。したがって、焼結される材料の密度を制御することによって、他の材料特性も、制御され得る。
【0075】
一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金の粒度は、ナノメートル範囲、例えば、約1000nmより小さいまたはそれと等しい、例えば、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約450nm、約400nm、約350nm、約300nm、約250nm、約200nm、約150nm、約125nm、約100nm、約75nm、約50nm、約40nm、約30nm、約25nm、約20nm、約15nm、約10nm、またはより小さい粒度未満またはそれと等しくあり得る。本明細書のいくつかの実施形態では、異なる粒度状態をさらに区別するために、用語「超微細粒」が、約100nmを上回り、約1000nm未満の粒度を示すために使用され、用語「ナノ結晶粒」が、約100nm未満またはそれと等しい粒度を示すために使用される。一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金の粒度は、約1nm〜約1000nm、例えば、約10nm〜約900nm、約15nm〜約800nm、約20nm〜約700nm、約25nm〜約600nm、約30nm〜約500nm、約40nm〜約450nm、約50nm〜約400nm、約75nm〜約350nm、約100nm〜約300nm、約125nm〜約250nm、または約150nm〜約200nm等であってもよい。一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金の粒度は、第2の金属材料の不在下、第1の金属材料を含む、焼結材料の粒度より小さくてもよい。一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金の粒度は、第2の金属材料の不在下、第1の金属材料を含む、焼結材料の粒度とほぼ同一であってもよい。一実施形態では、焼結されたナノ結晶合金の粒度は、第2の金属材料の不在下、第1の金属材料を含む、焼結材料の粒度より大きいまたはそれと同一であってもよい。一実施形態では、本明細書に説明される焼結機構は、熱処理の間、超微細およびナノ結晶構造を維持するための第2の位相および合金元素の能力に起因して、超微細およびナノ結晶焼結材料の産生のために有用であり得る。
【0076】
焼結材料の産生のための焼結条件は、任意の適切な条件であってもよい。一実施形態によると、高焼結温度は、焼結材料を産生するために、短焼結時間の間、採用されてもよい。代替として、比較的より低い焼結温度が、同一程度まで緻密化される、焼結材料を産生するために、より長い焼結時間の間、採用されてもよい。一実施形態では、長焼結時間は、粒度に望ましくない増加をもたらし得る。焼結は、無圧焼結プロセスであってもよい。本明細書に説明される焼結機構は、焼結プロセスの間、印加される外部圧力の不在下でも、完全緻密焼結超微細およびナノ結晶材料の産生を可能にする。
(ナノ結晶微粒子を作製するためのプロセス)
【0077】
一実施形態は、ナノ結晶タングステン微粒子を作製するための方法を提供し、本方法は、複数のタングステン微粒子および第2の金属材料を含む粉末を機械的に加工するステップを伴う。一実施形態では、第2の金属材料は、活性剤元素または安定剤元素であってもよい。機械的加工は、ボールミリングプロセスまたは高エネルギーボールミリングプロセスであってもよい。例示的ボールミリングプロセスでは、炭化タングステンまたは鋼鉄ミリングバイアルが、採用されてもよく、ボール/粉末比率は、約2:1〜約5:1であって、ステアリン酸プロセス制御剤含有量は、約0.01重量%〜約3重量%である。別の実施形態では、機械的加工は、約1重量%、約2重量%、または約3重量%のステアリン酸プロセス制御剤含有量の存在下で実施されてもよい。別の実施形態によると、機械的加工は、プロセス制御剤の不在下で実施される。一実施形態では、ボールミリングは、過飽和相を備えるナノ結晶微粒子を産生するために十分な任意の条件下で行われ得る。
【0078】
別の実施形態によると、機械的粉末ミリングの任意の適切な方法が、粉末を機械的に加工し、ナノ結晶微粒子を形成するために採用されてもよい。一実施形態では、摩擦ミリングの高エネルギーボールミリングが、採用されてもよい。他の実施形態では、シェーカーミリングおよび遊星ミリングを含む、他のタイプのミリングも、採用されてもよい。一般に、機械的合金効果を産生する、任意の機械的ミリング方法が、採用されてもよい。
【0079】
ナノ結晶微粒子の平均粒度は、X線回折(XRD)を通して得られた測定をピーク広幅化することによって計算され得る。
図16(a)に示されるように、XRDパターンの変化は、ミリング時間の関数であり得る。本実施形態に示されるように、XRDパターンにおけるピークは、約6時間のミリング時間後、広幅化され始め得る。ミリングされた材料の粒度もまた、
図16(b)に示されるように、約6時間のミリング時間後、有意に降下し得る。
【0080】
一実施形態では、ボールミリングは、約2時間を上回るまたはそれと等しい、例えば、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約15時間、約20時間、約25時間、約30時間、または約35時間を上回るまたはそれと等しい時間の間、行われ得る。一実施形態では、ボールミリングは、約1時間〜約35時間、例えば、約2時間〜約30時間、約4時間〜約25時間、約6時間〜約20時間、約8時間〜約15時間、または約10時間〜約12時間の時間の間、行われ得る。ミリング時間が、長過ぎる場合、タングステン粉末は、ミリングバイアル材料によって汚染され得る。タングステン材料中に溶解される、第2の金属材料の量はまた、ミリング時間の増加に伴って増加し得る。一実施形態では、ボールミリングステップ後、第2の金属材料が豊富な位相が、観察され得る。
【0081】
一実施形態では、産生されるナノ結晶微粒子の粒度は、約1000nmより小さい、例えば、約900nm、約800nm、約700nm、約600nm、約500nm、約400nm、約300nm、約200nm、約150nm、約100nm、約50nm、約30nm、約20nm、約10nm、約5nm、約2nm、またはより小さい粒度より小さいまたはそれと等しくあり得る。一実施形態では、産生されるナノ結晶微粒子の粒度は、約1nm〜約1000nm、例えば、約10nm〜約900nm、約15nm〜約800nm、約20nm〜約700nm、約25nm〜約600nm、約30nm〜約500nm、約40nm〜約450nm、約50nm〜約400nm、約75nm〜約350nm、約100nm〜約300nm、約125nm〜約250nm、または約150nm〜約200nm等であり得る。別の実施形態では、ナノ結晶微粒子は、約7nm〜約8nmの粒度を有し得る。
【0082】
一実施形態では、ナノ結晶微粒子は、多結晶、例えば、複数の結晶粒を含有するナノ結晶微粒子である。別の実施形態では、ナノ結晶微粒子は、単結晶材料、例えば、ナノ結晶微粒子のうちの少なくとも1つは、単一結晶粒を含有する。
【0083】
少なくとも一実施形態では、タングステン粉末および活性剤元素のボールミリングは、非平衡相を産生し得る。非平衡相は、固溶体を含有してもよい。非平衡相は、過飽和相であってもよい。「過飽和相」は、そうでなければ平衡タングステン相中に溶解され得る、活性剤元素の量を超える量において、タングステン中に強制的に溶解される活性剤元素を含む、非平衡相であり得る。一実施形態では、過飽和相は、ボールミリングプロセス後に存在する唯一の位相であり得る。別の実施形態では、第2の活性剤元素が豊富な位相が、ボールミリング後、存在し得る。
【0084】
少なくとも一実施形態では、微粒子材料の焼結挙動が、一定力下、微粒子材料の圧密体を加熱することによって、観察され得る。圧密体の長さの変化は、焼結および緻密化を示す。力は、用途に応じて、任意の値であってもよい。一実施形態では、加熱プロセス全体を通して圧密体に印加される一定力は、約0.05Nまたは約0.1Nである。微粒子材料の焼結温度は、圧密体の長さの変化が1%である温度として定義され得る。
【0085】
一実施形態によると、焼結は、液相焼結機構を含んでもよい。
(マスタ焼結曲線)
【0086】
焼結の間の瞬間線形収縮率の積分が、以下のように表され得る。
【数7】
式中、γは、表面エネルギーであって、Ωは、原子体積であって、Rは、ガス定数であって、Tは、温度であって、Gは、平均粒度であって、tは、時間であって、Γは、駆動力、平均拡散距離、およびミクロ構造の他の幾何学的特徴に関連するパラメータであって、
【化1】
は、体積拡散の場合であって、
【化2】
は、粒境拡散の場合である。若干並べ替えると、7は、以下のように、2つの部分に分割される。
【数8】
これは、活性化エネルギーを除く、全ミクロ構造および材料特性を備える。
【数9】
これは、Qおよび加熱時間−温度プロファイルのみに依拠する。活性化エネルギーは、コンピューティング9を算出することによって推定されることができ、正しい活性化エネルギーQは、9を通して算出されたデータの全てを単一曲線上にまとめるであろう。ナノ結晶W−Cr15原子%の焼結活性化エネルギーを査定するために、9を計算するために要求される、
図45に示される5、10、15、20℃/分を伴う、その加熱プロファイルが、採用された。
図41に示されるように、373kJ/モルの活性化エネルギーは、W−Cr15原子%の焼結曲線を単一マスタ焼結曲線にまとめさせる。
(非限定的実施例)
(材料および方法)
【0087】
一実施例では、微粒子サイズ約1−5umおよび純度99.9%を伴う、タングステン粉末が、第1の金属材料として利用される。
【0088】
別の実施例では、高エネルギーボールミリングが、機械的ミリングを通してナノ結晶タングステンを形成するために利用される。ボールミリングは、グローブボックス内のアルゴン雰囲気中で行われてもよい。ボールミリングされた材料は、圧力360MPaで圧密化することによって、初期密度約11.1−11.2g/cm
3の6mm直径および約3−4mm高さを伴う未乾燥円筒状円板圧密体に形成された。
【0089】
熱膨張測定装置が、温度に従ってサンプルの寸法の変化を測定するために使用されてもよい。熱膨張測定装置は、N
2/H
2(4%)形成ガス、Ar/H
2(3%)、または流動アルゴンガスの雰囲気を用いて動作されてもよい。サンプル寸法の変化を測定する目的のために、焼結に曝されるペレットにかかる力は、100mNであった。
【0090】
一実施例では、焼結は、水素含有雰囲気、真空、空気、または不活性ガス雰囲気下で行われてもよい。焼結雰囲気は、タングステン粉末の焼結能力に影響を及ぼし得る。水素含有雰囲気は、概して、焼結タングステン粉末を焼結するために使用されてもよい。水素含有雰囲気は、比較的に高密度材料を産生し得る。真空雰囲気は、中程度密度を伴う、焼結材料を産生し得る。いくつかの事例では、限定緻密化または無緻密化が、アルゴン焼結環境が採用されるとき、検出され得る。任意の特定の理論によって拘束されるわけではないが、タングステン微粒子の揮発性気相酸化水和物(WO
2(OH)
2)が、真空またはアルゴン雰囲気中で焼結の際に発生し得、タングステン微粒子の表面上への気相の吸着は、低焼結能力をもたらし得る。
【0091】
一実施例では、非等温加熱技法が、焼結プロセス中に使用されてもよい。例えば、一定加熱率(CRH)技法が、採用されてもよい。一実施形態では、一定加熱率1K/分、3K/分、5K/分、7K/分、10K/分、12K/分、15K/分または20K/分が、使用されてもよい。別の実施例では、等温加熱方法が、採用されてもよい。
【0092】
以下の非限定的実験実施例が、産生および分析された。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
20原子%Crを含有するタングステン粉末が、ナノ結晶微粒子を産生するためにボールミリングされた。ナノ結晶微粒子は、ボールミリングから6時間、10時間、および15時間後に分析された。
図17に示されるように、XRDピークは、ボールミリング時間の増加に伴って、より広幅となった。加えて、粒度は、
図18に示されるように、ボールミリング時間の増加に伴って減少することが見出された一方、タングステン中に溶解されるCrの量は、増加することが見出された。
図19に示されるように、ナノ結晶微粒子の焼結温度は、ボールミリング時間が増加し、タングステン中に溶解されるCrの量が増加するにつれて、低下した。これは、Cr活性剤材料の量の増加が、焼結活性化エネルギーおよび焼結温度の付加的低減をもたらすことを示す。W−20原子%Crナノ結晶微粒子の焼結温度は、3K/分加熱率が採用されるとき、約1000℃であった。タングステン中に溶解されるCrの量は、約10原子%であった。
【0094】
W−20原子%Crナノ結晶微粒子が、1300℃における等温プロセスを使用して焼結されるとき、
図20に示されるように、90%、具体的には、約91%を上回る緻密化が、達成された。W−20原子%Cr材料は、
図25−27に示されるように、焼結プロセス全体を通して、1000℃時約62nm、1100℃時約100nm、1200℃時100nmを上回る粒度を呈した。焼結プロセスの完了後の材料の構造は、
図31に描写される。
【0095】
初期低密度焼結機構と第2のより高い密度の中間焼結機構との間の遷移は、焼結の間の焼結長変化曲線の傾きの変化に基づいて、
図32に観察され得る。焼結機構における遷移は、タングステンがCrの中にかつそれを通して拡散する初期機構から、中間タングステン体積拡散機構へとなり得る。W−20原子%Cr微粒子の焼結活性化エネルギーは、未加工収縮データからの種々の加熱プロファイルに関して判定され、種々の活性化エネルギーを変換係数として利用して変換され、
図36に描写される。
図36における焼結活性化エネルギープロットは、適切な活性化エネルギー変換係数が判定される場合、単一プロットに収束し得る。
【0096】
1400℃まで加熱後のW−20原子%Cr材料の微粒子の表面におけるCr豊富相の形成は、
図33に描写される。明相は、
図33に示されるように、タングステン豊富相であって、Cr豊富相は、タングステン豊富相微粒子間の暗相である。1100℃まで加熱し、2時間保持後のW−20原子%Cr材料のミクロ構造は、
図34および35に示される。
図34および35に描写される画像は、サンプルを研磨後に得られており、タングステン豊富相微粒子間のCr豊富相を明確に示す。
(実施例2)
【0097】
15原子%Crを含有するタングステン粉末が、ナノ結晶微粒子を産生するためにボールミリングされた。ナノ結晶微粒子は、ボールミリングから20および30時間後に分析された。W−15原子%Crナノ結晶微粒子は、
図21に示されるように、過飽和ナノ結晶相のXRDピーク広幅化およびピークシフト特性を実証した。タングステン中に溶解されるCrの量は、約6.5原子%であった。
【0098】
ナノ結晶微粒子は、
図22に示されるように、10時間ボールミリングされたW−20原子%Crナノ結晶微粒子と比較して、焼結に応じて、改良された緻密化挙動を呈し、30時間ボールミリングされたナノ結晶微粒子は、20時間ボールミリングされたナノ結晶微粒子と比較して、若干改良された緻密化性能を実証した。
【0099】
15原子%Crナノ結晶微粒子の焼結活性化エネルギーが、3K/分、5K/分、10K/分、15K/分、および20K/分を含む、種々の加熱率に関して判定され、結果は、
図23に示される。W−15原子%Crナノ結晶微粒子の焼結温度は、3K/分加熱率が採用されるとき、約1000℃であった。
図23に示される加熱率に関する活性化エネルギー曲線は、収縮データから計算され、
図37に示されるように、曲線は、約357kJの活性化エネルギー値で収束した。約357kJの活性化エネルギーにおける、
図37に示される曲線の収束は、
図37における活性化エネルギー曲線の二乗平均平方根値が、
図38に示されるように、約357kJの活性化エネルギーにおいて最小値を呈したことを判定することによって確認された。
(実施例3)
【0100】
20原子%Tiを含有するタングステン粉末が、ボールミリングされ、ナノ結晶微粒子を形成し、次いで、焼結された。ナノ結晶微粒子は、
図24に実証されるように、純タングステンナノ結晶微粒子およびW−20原子%Crナノ結晶微粒子と比較して、劣った焼結挙動を呈した。
(実施例4)
【0101】
本実施例では、約5原子%、約10原子%、約20原子%、約30原子%、および約40原子%の量における、Crを含有するタングステン粉末混合物が、10時間ボールミリングされ、次いで、1300℃で焼結された。サンプルの収縮は、
図28に示されるように、タングステンの焼結動力学を改善するためのCrの最適量が存在し、最適Cr含有量が約20原子%の範囲内であり得ることを示す。
(実施例5)
【0102】
本実施例では、W−Ti20原子%−Cr5原子%粉末混合物が、ボールミリングされ、次いで、1300℃まで加熱することによって焼結された。焼結挙動は、
図29に示されるように、Crが、Tiの存在下でも、活性剤として作用することを示す。焼結材料のナノ構造は、
図30(a)−(f)に描写される。データは、W−Ti−Cr焼結材料が、ナノ結晶粒度を維持しながら、完全に緻密化され得ることを示す。
(実施例6)
【0103】
本実施例では、W−Cr15原子%混合物が、ボールミリングされ、
図39(a)に示されるように、平均粒子直径約1ミクロンおよび平均粒度約13nmを伴う、CrがW中に完全に溶解される、過飽和粉末を産生した。粉末のデバイシェラー環が、
図39(a)の差込図に示されるように、BCC固溶体として示された。
【0104】
粉末は、1100℃まで加熱され、Cr豊富相が、過飽和W豊富相から析出され、
図39(b)に示されるように、粒子の表面上に、小Crドメインを形成した。粉末は、次いで、1200℃の温度まで加熱され、Cr豊富相の縮径部が、
図39(c)に示されるように、粒子間に形成された。
図39(d)は、画像上にオーバーレイされた、走査伝送電子顕微鏡とエネルギー分散分光法(STEM−EDS)を併用して産生されるWおよびCr元素マップとともに、W豊富粒子に隣接するCr豊富縮径部を示す。
(実施例7)
【0105】
本実施例では、Cr−Ni5原子%およびCr−Ni15原子%サンプルが、ボールミリングされ、次いで、焼結された。
図43(a)は、5原子%Niと混合されたナノ結晶Cr(nc−Cr+5原子%Ni)、ナノ結晶Cr(nc−Cr)、およびCrと5原子%Ni(Cr+5原子%Ni)の混合物の比較実施例に加え、サンプルの相対密度変化を描写する。
図43(b)は、局所Ni含有量を示すエネルギー分散分光法(EDS)マップの差込図とともに、Cr−Ni15原子%サンプルのミクロ構造が、1200℃で焼結後、高速輸送層として作用する、Cr縮径部の周囲に析出されたNiを含むことを示す。
【0106】
図46(a)は、種々の加熱率を用いた温度の関数としてのCr−Ni15原子%の相対密度を描写する。
図46(b)に示されるように、加熱プロファイルは、258kJ/モルの焼結活性化エネルギーにおいて、マスタ焼結曲線にまとめられる。258kJ/モルの焼結活性化エネルギーは、Ni中のCrの拡散のための活性化エネルギー272kJ/モルに一致し、Crの自己拡散のための活性化エネルギー442kJ/モルとは別々である。その結果、データは、Cr−Ni15原子%材料がナノ相分離焼結を受けることを示す。
(実施例8)
【0107】
本実施例では、W−Cr15原子%が、2時間、4時間、6時間、および20時間、ボールミリングされた。
図44(a)および(b)に示されるように、44.4°時のCrの主回折ピークは、ボールミリングから約4時間後、消失し、CrがWの中に完全溶解されることを示す。ボールミリングから約4時間後、ミリング媒体の摩滅からWCが、現れ始め、ボールミリングから20時間後のWCの量は、Rietveld法によって測定されるように、約1〜2重量%である。
(比較実施例1)
【0108】
一連の比較実施例が、焼結挙動に及ぼす(i)ナノ結晶度および(ii)粉末の合金過飽和の独立影響を判定するために調査された。温度の関数としての比較実施例の相対密度変化は、
図40に示される。
図40に描写されるサンプルは、緻密化サイクルを通して途中まで急冷された。データは、本明細書に説明される焼結機構が、粉末がナノ結晶粒を有し、粉末が過飽和固溶体を含むことを前提として、望ましいことを示す。比較実施例の具体的組成物ならびに比較実施例が(i)ナノ結晶度および(ii)過飽和固溶体を含むかどうかは、以下に説明される。材料は、10℃/分の率で加熱された。外部圧力の印加を伴わずに、同一処理条件下において、W−Cr15原子%ナノ結晶過飽和粉末実施例は、約950℃で著しく緻密化し始め、1500℃の温度に到達する時間までには、ほぼ完全に緻密化する。
【0109】
純ナノ結晶W(nc−W):純タングステンが、炭化タングステン媒体およびボール/粉末比率5:1と、プロセス制御剤として1重量%ステアリン酸を併用して、20時間、SPEX8000高エネルギーミル中で機械的にミリングされた。結果として生じるサンプルは、Rietveld法によって明らかにされるように、粒度10nmを有していたが、Crを有していなかった。本サンプルは、条件(i)を満たすが、(ii)を満たさなかった。本粉末は、次いで、0.62の相対密度の6mm直径および3〜4mm高さの円筒状円板に圧密化された。
【0110】
15原子%Cr(溶解されない)を伴うナノ結晶W(nc−W+15原子%Cr):純Crの粉末が、乾燥混合法を用いて、20時間、ミリングすることによって産生された純ナノ結晶Wに添加された。15原子%Crが、約15分間、ミリングまたは機械的合金化を伴わずに、ナノ結晶Wと混合された。結果として生じるサンプルは、Rietveld法によって明らかにされるように、粒度10nmを伴うWから成り、クロムを含有していたが、合金または過飽和状態にはなかった。これは、条件(i)を満たすが、(ii)を満たさなかった。本粉末は、次いで、0.63の相対密度の6mm直径および3〜4mm高さの円筒状円板に圧密化された。
【0111】
非合金化かつナノ構造を伴わないW−15原子%Cr(W+15原子%Cr):15原子%Crが、機械的合金化またはミリングを伴わずに、約15分間、Wと乾燥混合された。結果として生じるサンプルは、W−15原子%Crの混合物であったが、ナノスケース構造または過飽和を有していなかった。これは、条件(i)または(ii)のいずれも満たさなかった。本粉末は、次いで、0.67の相対密度の6mm直径および3〜4mm高さの円筒状円板に圧密化された。
【0112】
過飽和W−15原子%Cr(W(Cr)):W−15原子%Cr粉末が、任意のプロセス制御剤を伴わずに、炭化タングステン媒体を使用して、30分間、SPEX8000高エネルギーミル中で機械的にミリングされた。得られた粉末は、次いで、石英管内に密閉され、最初に、ターボポンプを使用して、10
−6トルまで真空化され、次いで、120トルまで高純度アルゴンガスで充填し直した。密閉された粉末は、20時間、1400℃(±3℃)に制御され得る、炉内でアニーリングされ、次いで、急冷された。結果として生じる粉末は、過飽和W(Cr)溶液であったが、1ミクロンを超える粗粒度を伴っていた。これは、条件(ii)を満たすが、(i)を満たさなかった。本タングステン固溶体粉末は、次いで、0.65の相対密度の6mm直径および2〜3mm高さの円筒状円板に圧密化された。
【0113】
純Cr:純クロム粉末が、0.67の相対密度の6mm直径および3〜4mm高さの円筒状円板に圧密化された。
(比較実施例2)
【0114】
表1は、液相および活性化焼結プロセスを受けたW−合金のいくつかの比較実施例を説明する。
図42(a)および47は、相対密度の関数としての結果として生じる材料の粒度を示す。データは、ナノ相偏析焼結が、他の方法と匹敵する密度において、より小さい粒度を伴う材料を産生することを示す。
図42(b)は、液体−位相焼結機構によって産生されるW−合金のミクロ構造を描写し、W−粒子は、液体マトリクス内に埋め込まれ、焼結のための高速輸送経路として作用する。
図42(c)は、活性化焼結機構によって産生されるW−合金のミクロ構造を描写し、膜が、粒界上に形成され、焼結のための活性輸送経路として作用する。
図42(d)は、ナノ相偏析焼結機構によって産生されるW−合金のミクロ構造を描写し、過飽和溶液の偏析は、第2の固相で粒子間縮径部を装飾し、焼結のための高速拡散経路として作用する。
【表2】
(付加的注記)
【0115】
限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、論文、およびウェブページを含む、本願で引用される全文献および類似資料は、そのような文献および類似材料の形式にかかわらず、その全体として、参照することによって明示的に組み込まれる。定義される用語、用語の使用、説明される技法、または同等物を含むが、それらに限定されない、組み込まれた文献および類似資料のうちの1つまたはそれを上回るものが、本願と異なるまたは矛盾する場合、本願が優先する。
【0116】
本教示が、種々の実施形態および実施例と併せて説明されたが、本教示をそのような実施形態または実施例に限定されることを意図するものではない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0117】
種々の本発明の実施形態が本明細書で説明および例証されているが、当業者であれば、機能を果たし、および/または本明細書で説明される結果および/または利点のうちの1つまたはそれを上回るものを得るための種々の他の手段および/または構造を容易に構想し、そのような変化例および/または修正のそれぞれは、本明細書に説明される本発明の実施形態の範囲内と見なされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的となるように意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される、1つまたは複数の具体的用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に説明される本発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識するであろう。したがって、前述の実施形態は、一例のみとして提示され、添付の請求項およびそれらの同等物の範囲内で、具体的に説明および請求される通り以外で本発明の実施形態が実践されてもよいことを理解されたい。本開示の本発明の実施形態は、本明細書で説明される各個別特徴、システム、物品、物質、キット、および/または方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、物質、キット、および/または方法が相互に矛盾していなければ、2つまたはそれを上回るそのような特徴、システム、物品、物質、キット、および/または方法の任意の組み合わせが、本発明の開示の範囲に含まれる。
【0118】
本明細書で定義および使用されるような全ての定義は、辞書の定義、参照することにより組み込まれる文書内の定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優勢であると理解されるべきである。
【0119】
明細書および請求項で使用されるような「1つの」という不定冠詞は、明確にそれとは反対に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。本明細書に引用される任意の範囲は、包含である。
【0120】
本明細書全体を通して使用される用語「実質的に」および「約」は、わずかな変動を説明し、かつそれを考慮するために使用される。例えば、それらは、+5%未満またはそれと等しい、例えば、+2%未満またはそれと等しい、例えば、+1%未満またはそれと等しい、例えば、+0.5%未満またはそれと等しい、例えば、+0.2%未満またはそれと等しい、例えば、+0.1%未満またはそれと等しい、例えば、+0.05%未満またはそれと等しいことを指し得る。
【0121】
明細書および請求項で使用されるような「および/または」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか一方または両方」、すなわち、場合によっては接合的に存在し、他の場合においては離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で記載される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つまたはそれを上回る」と解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に識別される要素以外に、具体的に識別される要素に関係しようと、無関係であろうと、他の要素が随意的に存在してもよい。したがって、非限定的実施例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「〜を備える」等の制約のない用語と併せて使用されると、一実施形態ではAのみ(随意でB以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみ(随意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(随意で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0122】
明細書および請求項で使用されるように、「または」は、上記で定義されるような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストの中のアイテムを偏析する時に、「または」あるいは「および/または」は、包括的として、すなわち、少なくとも1つを含むが、いくつかの要素または要素のリストのうちの1つより多く、および随意で付加的な記載されていないアイテムも含むと解釈されるものとする。「〜のうちの1つのみ」または「〜のうちの正確に1つ」等の明確にそれとは反対に示される他の用語、あるいは請求項で使用される時の「〜から成る」は、いくつかの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指す。概して、本明細書で使用されるような「または」という用語は、「いずれか一方」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、または「〜のうちの正確に1つ」等の排他性の用語が続く時に、排他的な代替用語(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すと解釈されるだけのものとする。「本質的に〜から成る」は、請求項で使用されると、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0123】
明細書および請求項で使用されるように、「少なくとも1つ」という語句は、1つまたはそれを上回る要素のリストを参照して、要素のリストの中の要素のまたはそれを上回るもののいずれかから選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に記載されたあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストの中の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、具体的に識別される要素に関係しようと、無関係であろうと、「少なくとも1つ」という語句が指す、要素のリスト内で具体的に識別される要素以外に、要素が随意で存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的実施例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、あるいは同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、いずれのBも存在しない、随意で1つより多くを含む、少なくとも1つのA(および随意でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、いずれのAも存在しない、随意で1つより多くを含む、少なくとも1つのB(および随意でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、随意で1つより多くを含む、少なくとも1つのA、および随意で1つより多くを含む、少なくとも1つのB(および随意で他の要素を含む)等を指すことができる。
【0124】
本明細書で使用されるように、「原子%」は、原子パーセントを指し、「重量%」は、重量パーセントを指す。しかしながら、ある実施形態では、「原子%」が利用されるとき、説明される値はまた、「重量%」を説明し得る。例えば、「20原子%」が一実施形態において説明される場合、他の実施形態では、同一説明は、「20重量%」を指し得る。その結果、全「原子%」値は、いくつかの事例では、「重量%」も指すものと理解され、全「重量%」値は、いくつかの事例では、「原子%」も指すものと理解されたい。
【0125】
請求項では、ならびに上記の明細書では、「〜を備える」、「〜を含む」、「〜を携持する」、「〜を有する」、「〜を含有する」、「〜を伴う」、「〜を担持する」、「〜から構成される」、および同等物等の全ての移行句は、制約がない、すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」を意味すると理解されるものである。「〜から成る」および「本質的に〜から成る」という移行句のみが、米国特許審査手続便覧第2111.03条(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section2111.03)で規定されているように、それぞれ、制約的または半制約的移行句であるものとする。
【0126】
請求項は、その旨が記載されない限り、説明される順序または要素に限定されるものとして読み取られるべきではない。形態および詳細における種々の変更は、添付の請求項の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって行われ得ることを理解されたい。以下の請求項およびその均等物の精神および範囲内にある、全ての実施形態が、請求される。