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特許6649892ヒアルロン酸オリゴマーの複合体又はその塩,その調製法及びその使用
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  • 特許6649892-ヒアルロン酸オリゴマーの複合体又はその塩,その調製法及びその使用 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649892
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸オリゴマーの複合体又はその塩,その調製法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20200210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200210BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20200210BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20200210BHJP
   A61K 47/18 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   C08B37/08 Z
   A61P35/00
   A61K31/728
   A61K47/36
   !A61K47/18
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-556890(P2016-556890)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公表番号】特表2017-508050(P2017-508050A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】CZ2015000018
(87)【国際公開番号】WO2015135511
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年3月2日
(31)【優先権主張番号】PV2014-150
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッファ,ラドヴァン
(72)【発明者】
【氏名】バサラボヴァ,イヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】ネスポロヴァ,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】エフロヴァ,テレーザ
(72)【発明者】
【氏名】コットランド,オンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】セドヴァ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】フロメク,レオス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/023272(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/159757(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/127374(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/146218(WO,A1)
【文献】 特表2013−513672(JP,A)
【文献】 特表2013−513671(JP,A)
【文献】 特表2013−500375(JP,A)
【文献】 特表2009−528438(JP,A)
【文献】 特開平09−030979(JP,A)
【文献】 特開平08−085704(JP,A)
【文献】 特開平02−133401(JP,A)
【文献】 Acta Biomaterialia,2010年,Vol.6(8),p.3044-3055
【文献】 Biomaterials,2004年,Vol.25(19),p.4797-4804
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I,II,III又はIVのいずれかによるヒアルロン酸のオリゴマーの複合体又はその塩。
(式中,RはCOOR又はCHOHであり,
はOH又はNHCOCHであり,
はHであるか又はアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンからなる群から選択され;
はC−C30アルキレン基,両端にカルボニル基を有するC−C28アルキレン基,又はフェニレンビスカルボニル基であり;
XはO又はNH基であり;
がCOORである場合,RはOHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基であり;
がCHOHである場合,RはNHCOCHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基であり;
substrateはヒアルロン酸又はその薬理学的に許容されるその塩である。)
【請求項2】
ヒアルロン酸又はその薬理学的に許容されるその塩が10〜10g.mol-1の範囲内の分子量を有することを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸オリゴマー残基が1〜17の糖単位を含み,該糖単位がβ(1,3)−Dグルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンから成る群から選択される請求項1記載の複合体。
【請求項4】
請求項1記載の一般式I及びIIによるヒアルロン酸オリゴマー複合体の調製方法であって,一般式V及びVI:
(式中,RはCOOR又はCHOHであり,
はOH又はNHCOCHであり,
はH又は薬理学的に許容される塩であり;
はC−C30アルキレン基,両端にカルボニル基を有するC−C28アルキレン基,又はフェニレンビスカルボニル基であり;
XはO又はNH基であり;
がCOORである場合,RはOHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基であり;
がCHOHである場合,RはNHCOCHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基である)のヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体を,水又は水と水混和性有機溶媒の混合物中で,基質の少なくとも1つのアルデヒド基と反応させることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸オリゴマー残基が1〜17の糖単位を含み,該糖単位がβ(1,3)−Dグルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンからなる群から選択されることを特徴とする請求項4記載の調製方法。
【請求項6】
前記substrateが,10〜10g.mol-1の範囲内の分子量を有するヒアルロン酸又はその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項7】
10〜40℃の温度で,24〜150時間行われることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項記載の調製方法。
【請求項8】
前記水混和性溶媒がエタノール,イソプロパノール,メタノール又はジメチルスルホキシドからなる群より選択されることを特徴とする請求項4〜7いずれか1項記載の調製方法。
【請求項9】
一般式III及びIVによるヒアルロン酸オリゴマーの複合体の調製方法であって,請求項4〜8いずれか1項記載の方法により,かつ一般式V及びVIのヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体を基質の少なくとも1つのアルデヒド基と還元剤の存在下で反応させて行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記還元剤がシアノホウ化水素又はピコリン-ボランからなる群から選択されることを特徴とする請求項9記載の調製方法。
【請求項11】
前記還元剤の量がヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して0.1〜5当量の範囲内であることを特徴とする請求項9又は10記載の調製方法。
【請求項12】
前記一般式をV及びVIのヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体を,ヒアルロン酸オリゴマー末端の1位のアノマー中心で一般式HN−X−R−X−NH(式中,RはC−C30アルキレン基,両端にカルボニル基を有するC−C28アルキレン基,又はフェニレンビスカルボニル基であり;
XはO又はNH基である)のジアミノリンカーの過剰量と3〜6.99の範囲内のpHで反応させ,その後,前記一般式V及びVIのヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体を単離する方法で調製することを特徴とする請求項4〜11いずれか1項記載の調製方法。
【請求項13】
前記反応が3〜6の範囲内のpHで行われることを特徴とする請求項12記載の調製方法。
【請求項14】
前記反応が,酢酸,プロパン酸又は乳酸からなる群から選択されるカルボン酸の存在下で行われることを特徴とする請求項12又は13記載の調製方法。
【請求項15】
前記カルボン酸の量が,基質としてのヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して5〜30当量の範囲内であることを特徴とする請求項14記載の調製方法。
【請求項16】
前記リンカーの過剰量が,基質としてのヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して5〜30当量の範囲内であることを特徴とする請求項12〜15いずれか1項記載の調製方法。
【請求項17】
前記反応が10〜40℃の温度で,24〜150時間行われることを特徴とする請求項12〜16いずれか1項記載の調製方法。
【請求項18】
抗癌作用を有する物質の調製のための請求項1〜3いずれか1項記載の複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ヒアルロン酸複合体又はその塩,その調製法及びその使用に関する。
【0002】
そのような複合体によって,それらの元の天然型に遊離する可能性を有するヒアルロン酸オリゴマーを固定化することが可能である。
【背景技術】
【0003】
ヒアルロン酸はβ−(1,3)−D−グルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンの繰り返す二つの糖単位からなるグリコサミノグリカンである。
スキーム1:ヒアルロン酸
【0004】
それは,その単離方法及び最初の材料に依存して5.10〜5.10g.mol-1の高分子量であることを特徴とする。この非常に親水性の高い多糖は,全pH領域において塩の形態で水溶性である。それは,結合組織,皮膚,関節の滑液の一部を形成し,水和,プロテオグリカンの形成,細胞分化,増殖及び血管形成のような多くの生物学的プロセスで重要な役割を果たす。
【0005】
HAオリゴマーの結合
上記のように,天然のヒアルロン酸は生物内で非常に速く分解する直鎖多糖類である。枝分かれ構造を有するヒアルロナンの調製について最初の有力な試みは,Toemmeraase K.によって2008年に記載されている(WO 2008/014787)。これは,高分子量を有する脱アセチル化ヒアルロナンのアミノ基とヒアルロナンオリゴマーの末端のアノマー中心との還元的アミノ化による結合に関するものである。別の特許文献Hacker M., Saraf A., Mikos A.G., WO 2008/115799の著者は,ポリエチレンイミンにHAオリゴマーの末端のアノマー中心を結合することを同様の方法で行った。強い結合を確保するためには,アミノ配糖体を加水分解的に非常に安定した第二級アミンに変換する還元的アミノ化が使用される。この反応はわずかに塩基性の環境下で,かつ高温で起こり,シアノ水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として使用する。結果として生じる複合体は,DNA又は間葉系幹細胞のカプセル化に使用され,ここではヒアルロナンオリゴマーとして六量体のみが言及されている。別の可能性はEur. J. Org. Chem. 2011, 5617-25の記事に開示された。ここでは,アミノ基はHAオリゴマーのグルコサミン部分の6位に生じ,その後,このアミノ基はカーボンナノチューブに結合したカルボン酸のNHSエステルと穏やかな条件で反応する。還元的アミノ化を用いてジアミノ又はポリアミノのリンカーにより低分子量のヒアルロナンの末端のアノマー中心を結合することが,Xuにより開示されている (WO 2007/101243)。結果として生じる基質は,活性物質のカプセル化に使用された。リン脂質をHAオリゴマーの末端のアノマー中心に結合するという別の可能性がCarterにより開示された (米国2012/0277416)。第一段階として1位にアミンを有するオリゴマーの誘導体を還元的アミノ化によって調製し,そしてそれをリン脂質の活性カルボキシル基と結合させた。結果として生じる複合体は広範囲の生物活性を示した。還元したアノマー末端にアミノ基を有するHAオリゴマーへの同様の結合方法は,2013年にSiiskonenによって発表され,ここでは指標となる2−アミノアクリドンが結合された。この複合体はサイトゾルにおけるヒアルロナン断片の生体内分布の研究のために使用された。
【0006】
上記方法の問題点は,それらがさらに天然型に遊離されないHAオリゴマー又はポリマーの複合体を形成させるという事実である。その原因は,今までに知られているアノマー中心へのアミンの結合方法の全てが還元に関する,すなわち永遠に開いたままとなるという末端単位の不可逆的変化に関するものであり,天然型のオリゴマーへの逆の遊離を起こさせないという事実である。この状況は下記のスキーム1によって説明される:
【0007】
発明の概要
上記の問題点は,天然型のHAオリゴマーのそのような逆の遊離を可能にする本発明の一般式I,II,III又はIVのHAオリゴマーの複合体によって解決される。
【0008】
本発明の内容は,一般式I,II,III又はIVのいずれかによるヒアルロン酸のオリゴマーの複合体又はその塩であり,
式中,RはCOOR又はCHOHであり,
はOH又はNHCOCHであり,
はHであるか又はアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンからなる群から選択され,好ましくはNa,K,Mg2+又はLiであり;
はC−C30アルキレン基,両端にカルボニル基を有するC−C28アルキレン基,又はフェニレンビスカルボニル基であり;
XはO又はNH基であり;
がCOORである場合,RはOHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基であり;
がCHOHである場合,RはNHCOCHであり,RはHであり,Rはヒアルロン酸オリゴマーの残基であり;
substrateはヒアルロン酸又はその薬理学的に許容されるその塩である。)
【0009】
結果として生じる複合体の構造は,置換基Xの特性にかなり依存する。Xが酸素橋−O−である場合はイミノ型がかなり存在する。Xが窒素橋−NH−である場合はβ配位を有するアミノ型が優勢である。
【0010】
本発明による複合体におけるヒアルロン酸オリゴマーの残基は1〜17個の糖単位を有し,この糖単位はβ−(1,3)−D−グルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンからなる群から選択される。
【0011】
別の実施態様によると,上記一般式I及びIIのヒアルロン酸オリゴマー複合体は,本発明の方法により調製することができ,その概要は,第一工程において,ヒアルロン酸のオリゴマーをその1位の末端のアノマー中心で,過剰量の一般式:HN−X−R−X−NH(式中,RはC−C30アルキレン基,両端にカルボニル基を有するC−C28アルキレン基,又はフェニレンビスカルボニル基であり;
XはO又はNH基である)のジアミノリンカーとpHが3〜6.99,好ましくは3〜6,さらに好ましくは5〜6の範囲内の弱酸性環境で反応させ,その後,一般式のヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体V及びVI:
(式中,置換基R〜Rは上記で定義したとおりである)を単離することである。
【0012】
反応の第一工程の進行は,スキーム2によって以下に説明される。
スキーム2:
【0013】
この反応は,リンカーの両端部での修飾を統計的方法で実質的になくす過剰量のジアミノリンカーで行われる。
【0014】
驚くべきことに,一定量の弱酸及び水の存在下でのみこの反応が進行することが見いだされた。条件が中性又は塩基性の場合,反応の成功は観察されなかった。HCl又はHSOのような強酸が存在した場合,HAオリゴマーの分解が生じた。
【0015】
3〜6.99の範囲内のpHを有する僅かに酸性の環境は,反応媒体にカルボン酸,好ましくは酢酸,プロパン酸又は乳酸,より好ましくは酢酸を添加することにより達成される。
【0016】
これらの酸の量は,基質としてのヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して5〜30当量,好ましくは10〜15当量の範囲である。
【0017】
さらに,ジアミノリンカーの量は,基質としてのヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して5〜30当量の範囲内,好ましくは10当量である。
【0018】
さらに,第一工程は,10〜40℃,好ましくは20℃の温度で,24〜150時間,好ましくは60〜80時間行われる。
【0019】
その後,反応の第二工程が行われ,ここでは上記一般式V及びVIのヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカーの複合体を,水又は水とエタノール,イソプロパノール,メタノールもしくはジメチルスルホキシドからなる群から選択される水混和性有機溶媒との混合物中で,基質の少なくとも1つのアルデヒド基と反応させる。
【0020】
さらに,第二工程も同様に10〜40℃,好ましくは20℃の温度で,24〜150時間,好ましくは60〜80時間行われる。
【0021】
本発明の方法の別の好ましい実施態様によると,上記一般式V及びVIのヒアルロン酸オリゴマー−ジアミノリンカー複合体を,好ましくはシアノホウ化水素(NaBH3CN)又はピコリンボランからなる群から選択される還元剤の存在下で,基質の少なくとも1つのアルデヒド基と上記の方法及び条件により反応させ,基質が加水分解的に非常に強い結合によって結合されている一般式III及びIVの複合体を生成させる。
【0022】
還元剤の量は,ヒアルロン酸の二糖体のモル量に対して0.1〜5当量,好ましくは3当量である。
【0023】
基質のアミノ化又は還元アミノ化による結合の上記の両方の可能性をスキーム3に示す。
【0024】
驚くべきことに,一般式III及びIV(上記のスキームを参照)の複合体が形成される還元的アミノ化の間,還元は,実質的に基質−リンカー結合上でのみ進行する。これは,反応温度,時間, 還元剤の量のような妥協条件による(compromise conditions)ものであり,基本的にイミンを還元する特性をも有するオリゴマー−リンカー結合の還元は見られなかった。
【0025】
HAオリゴマーの末端のアノマー中心を基質−リンカー複合体と結合する試みは,HAオリゴマーの剥離開裂(peeling cleavage)が起こる高温でも成功しない。

したがって,最終的な複合体を調製する場合,最初に二機能性のリンカーをオリゴマーに結合する必要がある。
【0026】
上記の事実から,本発明による複合体を調製する場合,最終的に見いだされた比較的狭い範囲の反応条件(弱酸領域のpH,注意深い還元)を見つけることが必要であったということになる。一般式I,II,III,IVの最終複合体は,今まで知られている解決法と比較して,それらの元の天然型のヒアルロナンオリゴマーを遊離することを可能にするものであり,それはそれらの生物活性の点から重要である。必要条件は,基質がアルデヒド基を含むということであり,これはOH基を含んでいる多糖類の場合には酸化のような化学的修飾によって非常に容易に達成されるであろう。
【0027】
本発明で示された解決法の実現は技術的に複雑ではなく,高価な化学製品,溶媒又は単離方法の使用を要求しない。
【0028】
既に記載したように,本発明による複合体は:
の遊離を可能にする。
【0029】
可逆的な固定化の可能性は,それらの生物活性又は生体適合性のためにオリゴマーのオリジナルの構造を維持することが必要な場合に大変重要である。いくつかのタイプのHAオリゴマーは例えば癌細胞に対して生物活性を示すことが知られている。調製されたシステム(prepared systems)は,癌細胞の選抜系統に対して増強された生物活性を示した。
【0030】
本発明の別の実施態様によると,上記で定義された一般式I〜IVの複合体は,好ましくは薬学及び生物医学において生物学的に活性なオリゴマーのキャリアとして使用され,又は,それらを抗癌作用を有する物質の調製に使用することが可能である。
【0031】
ここに使用された「薬学的に許容される塩」の用語は,生体内における使用に安全で,有効であり,所望の生物活性を有するHA複合体の塩を意味する。薬学的に許容される塩は,好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン,より好ましくはNa,K,Mg又はLiを含む。
【0032】
「多糖」の用語は,ヒアルロン酸のような多糖類,その医薬用の塩,デンプン,グリコーゲン,セルロース等であり,OH基を酸化した後に少なくとも一つのアルデヒド基を有するものを意味する。
【0033】
「複合体」の用語は共有結合による2つ以上の化合物の結合により形成される化合物を意味する。本発明による複合体は,HAオリゴマー及びリンカーが結合してHAオリゴマー−リンカー複合体を生じさせ,その後それを基質,すなわち多糖,好ましくはヒアルロン酸に結合して,HAオリゴマー−リンカー−基質複合体を生じさせることにより形成される。
【0034】
「ヒアルロン酸のオリゴマー」の用語はβ−(1,3)−Dグルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンの交互に繰り返す糖単位を含むヒアルロン酸のオリゴマーを意味する。好ましくは,糖単位の数は2〜18である。
【0035】
「ヒアルロン酸オリゴマーの残基」の用語はヒアルロン酸オリゴマーの少なくとも1つの糖単位を意味し,これはβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミン又はβ−(1,3)−Dグルクロン酸である。
【0036】
そのアノマー中心によってリンカーに結合している末端の糖単位が,β−(1,3)−Dグルクロン酸である場合,前記糖単位はβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンである。
【0037】
そのアノマー中心によってリンカーに結合している末端の糖単位がβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンである場合,前記糖単位はβ−(1,3)−Dグルクロン酸である。
【0038】
ヒアルロン酸オリゴマーの残基が1つより多い糖単位を含む場合,β−(1,3)−Dグルクロン酸及びβ−(1,4)−N−アセチル−D−グルコサミンの糖単位が交互に繰り返される。
【0039】
「過剰」の用語はジアミノリンカーの量が,基質としてのヒアルロン酸の二糖単位のモル量に対して1当量より多いことを意味する。
【0040】
「単離された」の用語は,反応を終了した後反応液が中和され,沈殿した反応生成物が,濾過され,乾燥されたことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】影響を受けていない(non-affected)不死化された癌細胞の増殖の抑制率(%)の推移を示す。
【0042】
実施例
ここで使用される「当量」の用語は,そうでないことが示されていない限り,ヒアルロン酸の二糖体に対するものである。パーセントは,そうでないことが示されていない限り,重量パーセントである。
【0043】
最初のヒアルロン酸の分子量(出所:CPN spol.s r.o.,ドルニ ドブロウク, チェコ)は,10〜10g.mol-1の範囲内の重量平均分子量であり,SEC-MALLSによって測定された。
【0044】
2〜18の糖単位を含むヒアルロン酸オリゴマーは,より高い分子量を有するポリマーの酵素分解により調製された。
DS=置換度= 100% ×(結合した置換基又は修飾された二糖体のモル量) /(全二糖体のモル量)
【0045】
実施例1:グルコサミン部分の6位が酸化されたHAアルデヒドの製造
ヒアルロン酸の酸化
NaClO水溶液(0.5当量)を,窒素雰囲気下で,NaCl1% ,TEMPO(0.01当量)及びNaHCO(5当量)を含むヒアルロナン(1g,200kDa)の1パーセント水溶液に徐々に加えた。その混合物を0℃の温度で12時間撹拌し,その後0.1gのエタノールを添加し加え,この混合物をさらに1時間撹拌した。その後,得られた溶液を,蒸留水で0.2%に希釈し,混合物(0.1%のNaCl,0.1%のNaHCO3に対して5リットル1日1回で3回,そして蒸留水に対して7リットル1日2回で7回透析した。その後,得られた溶液を蒸発させ分析した。
DS 10%(NMRで決定)
H NMR(DO):δ5.26(s,1H,polymer−CH(OH)
HSQC(DO): cross signal 5.26 ppm(H)−90ppm(13C)(polymer−CH(OH)
【0046】
実施例2:アジピン酸ジヒドラジドとHA八糖体(HA−8)との複合体の調製
HA八糖体を,水に5%の濃度で溶解した。その後,アジピン酸ジヒドラジド(6当量)及び酢酸(15当量)を添加し,この混合物をpH 4で72時間,20℃の温度で撹拌した。得られた混合物をNaHCOで中和し,イソプロピルアルコールを用いて繰り返し沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ4.11(d,J=8.8Hz,1H,−O−CH−NH−beta),初期の末端のアノマー中心(−O−CH−OH alpha)のシグナルはない。
【0047】
実施例3:アジピン酸ジヒドラジドとHA三糖体(HA−3)の複合体の調製
HA三糖体(グルクロン酸で終わる)を7%の濃度で水に溶解した。その後,アジピン酸ジヒドラジド(25当量)及び酢酸(25当量)を添加し,この混合物をpH 6で150時間10℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,NaHCOによって中和し,イソプロピルアルコールを用いて繰り返し沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ4.11(d,J=8.8Hz,1H,−O−CH−NH−beta),初期の末端のアノマー中心(−O−CH−OH alpha)のシグナルはない。
【0048】
実施例4:アジピン酸ジヒドラジドとHA十八糖体(HA−18)の複合体の調製
HA十八糖体(グルコサミンで終わる)を5%の濃度で水に溶解した。その後,アジピン酸ジヒドラジド(15当量)及び酢酸(20当量)を添加し,この混合物をpH5で24時間,40℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,NaHCOによって中和し,イソプロピルアルコールを用いて繰り返し沈殿させた。
最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ4.10(d,J=8.7Hz,1H,−O−CH−NH−beta)
【0049】
実施例5:O,O’−1,3−プロパンジイルビスヒドロキシルアミンとHA十糖体(HA−10)の複合体の調製
HA十糖体を3%の濃度で水に溶解した。その後,O,O’−1,3−プロパンジイルビスヒドロキシルアミン(5当量)及び乳酸(5当量)を添加し,この混合物をpH6で100時間20℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,NaHCOによって中和し,イソプロピルアルコールを用いて繰り返し沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ7.53(d,J=5.3Hz,1H,−O−CH=N−Z−isomer),δ6.89(d,J=6.0Hz,1H,−O−CH=N−E−isomer)
【0050】
実施例6:テレフタル酸ジヒドラジドとHA四糖体(HA−4)の複合体の調製
HA四糖体を3%の濃度で水に溶解した。その後,テレフタル酸ジヒドラジド(5当量)及び酪酸(6当量)を添加し,この混合物をpH6で100時間20℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,NaHCOによって中和し,イソプロピルアルコールを用いて繰り返し沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ4.12(d,J=8.8Hz,1H,−O−CH−NH−beta)
【0051】
実施例7:6位がアルデヒドに酸化されたヒアルロナン(実施例1)へのHA−8−アジピン酸ジヒドラジド複合体(実施例2)の還元アミノ化による結合
実施例2で調製された複合体0.01gを2%の濃度で水に溶解した。その後,アルデヒド基を有するヒアルロン酸誘導体(分子量6×10g.mol-1)0.01g及びピコリン−ボラン5当量を添加した。この混合物を24時間20℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,イソプロピルアルコールを用いて沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ2.85,3.12(m,m diastereotoic pair,2H,−NH−CH−polymer)
DOSY NMR(DO):δ4.24(d,J=9.7Hz,1H,−O−CH−NH−beta)高分子量のヒアルロン酸と同じ移動度,及び2.85 a 3.12のジアステレオトピックな水素のシグナルを有する。
【0052】
実施例8:6位がアルデヒドに酸化されたヒアルロナン(実施例1)へのHA−3−アジピン酸ジヒドラジド複合体(実施例3)の還元アミノ化による結合
実施例3で調製された複合体0.01gを2%の濃度で水に溶解した。その後,アルデヒド基を有するヒアルロン酸誘導体(分子量2×10g.mol-1)0.01g及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム0.3当量を添加した。この混合物を72時間10℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,イソプロピルアルコールを用いて沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ2.89,3.04(m,m diastereotopic pair,2H,−NH−CH−polymer)
DOSY NMR(DO):δ4.11(d,J=8.8Hz,1H,−O−CH−NH−beta)高分子量のヒアルロン酸と同じ移動度,及び2.89 a 3.04のジアステレオトピックな水素のシグナルを有する。
【0053】
実施例9: 6位がアルデヒドに酸化されたヒアルロナン(実施例1)へのHA−8−アジピン酸ジヒドラジド複合体(実施例2)の還元なしでの結合
実施例2で調製された複合体0.1gを2%の濃度で1/1の比率の水/DMSO混合物に溶解した。その後,アルデヒド基を有するヒアルロン酸誘導体(分子量2×10g.mol-1)0.1gを添加した。この混合物を72時間20℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,イソプロピルアルコールを用いて沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ7.48(m,1H,−N=CH−polymer)
DOSY NMR(DO):δ4.24(d,J=9.7Hz,1H,−O−CH−NH−beta)高分子量のヒアルロン酸と同じ移動度,及びシグナル7.48を有する。
【0054】
実施例10: 6位がアルデヒドに酸化されたヒアルロナン(実施例1)へのHA−18−アジピン酸ジヒドラジド(実施例4)の還元なしでの結合
実施例4で調製された複合体0.1gを2%の濃度で水に溶解した。その後,アルデヒド基を有するヒアルロン酸誘導体(分子量2×10g.mol-1)0.1gを添加した。この混合物を100時間10℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,イソプロピルアルコールを用いて沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
H NMR(DO):δ7.47(m,1H,−N=CH−polymer)
DOSY NMR(DO):δ4.25(d,J=9.7Hz,1H,−O−CH−NH−beta)高分子量のヒアルロン酸と同じ移動度,及びシグナル7.47を有する。
【0055】
実施例11:6位がアルデヒドに酸化されたヒアルロナン(実施例1)へのHA−10−O,O’−1,3−プロパンジイルビスヒドロキシルアミン複合体(実施例5)の還元なしでの結合
実施例5で調製された複合体0.01gを2%の濃度で水に溶解した。その後,アルデヒド基を有するヒアルロン酸誘導体(分子量2×10g.mol-1)0.01gを添加した。この混合物を48時間20℃の温度で撹拌した。得られた混合物を,イソプロピルアルコールを用いて沈殿させた。最終固体生成物を真空下で乾燥した。
DOSY NMR(DO):δ7.53(d,J=5.3Hz,1H,−O−CH=N−Z−isomer),δ6.89(d,J=6,0Hz,1H,−O−CH=N−E−isomer)高分子量のヒアルロン酸と同じ移動度を有する。
【0056】
実施例12:実施例8により調製された複合体の生物学的試験
実施例8により調製した複合体で処理した後のA2058株の生存率の測定
標準条件(10%FBSを含む培地DMEM,37℃,5%のCO)で培養した細胞株を1ウェル当たり5000個の細胞密度で4枚の96−ウェル培養パネルへ播種し,200μlの培地中で24時間インキュベートした。その後,該培養液を,1000,100及び10μg/mlの濃度で複合体(実施例8)を含む新鮮培地に換えた。対照の細胞用の培地は該複合体を含まない新鮮な培地に換えた。処理直後に,細胞の生存率をMTT法により最初のパネルで測定した。要するに,20μlのMTT溶液(5mg/ml)を細胞に加え,それらを37℃,暗所で2.5時間一緒にインキュベートした。インキュベーション後,培地を吸い取り,細胞単層を10%Toriton X-100を含むDMSOとイソプロパノール(1:1)の混合物で溶解した。前記パネルの個々のウェル中で生じた色を,プレート分光光度計(690nmの補正で570nmにおける吸光度)によって測定した。この測定を,24時間ごとに他のパネルでも同様に繰り返した。最終生存率は,所定の時間と時間T0におけるサンプルの吸光度の比率として計算された。A2058はヒト黒色腫に由来した,不死化した細胞株であり,非常に浸潤性であるため,腫瘍形成及び転移のモデルとしてしばしば使用される。
【0057】
細胞増殖の抑制率(%)の結果を図1に示す。これにより,本発明による複合体の影響により細胞増殖の抑制が指数関数的に増加することが明らかである。
図1