(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649900
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】換気された口側端くぼみを備えた喫煙物品
(51)【国際特許分類】
A24D 3/04 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
A24D3/04
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-568001(P2016-568001)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公表番号】特表2017-516472(P2017-516472A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061951
(87)【国際公開番号】WO2015181354
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】14170594.7
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】リンドホルム ドゥラロイ セシリア
(72)【発明者】
【氏名】カディリク アレン
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−508864(JP,A)
【文献】
米国特許第04564030(US,A)
【文献】
国際公開第2014/023555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品であって、
たばこロッドと、
前記たばこロッドに接続されたフィルターであって、前記フィルターが、
第一のフィルターセグメントと、
前記第一のフィルターセグメントの下流にある中空管セグメントであって、前記中空管セグメントが、前記フィルターの前記口側の端でくぼみを画定し、前記くぼみが、前記第一のフィルターセグメントの前記下流端から前記フィルターの前記口側の端へと延びる非制限的な流路を提供する、中空管セグメントを備え、
前記中空管セグメントの長さが、フィルター全長の少なくとも約25パーセントであり、かつ約50パーセント未満であり、また前記喫煙物品が前記中空管セグメントに沿った位置にある前記くぼみと連通している換気帯域を含み、
前記換気帯域が前記フィルターの前記口側の端から約10mmから約15mm上流に位置する、喫煙物品。
【請求項2】
前記中空のセグメントの長さが約25mm未満である請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記中空のセグメントの長さが少なくとも約10mmである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記換気帯域が前記第一のフィルターセグメントの前記下流端から少なくとも約1mm下流に位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記換気帯域が前記中空管セグメントを通して提供された少なくとも一つの周辺の列の穿孔を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの周辺の列の穿孔が8〜30個の穿孔を含む、請求項5に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記中空管セグメントの厚さが、約90マイクロメートル〜約140マイクロメートルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記中空管セグメントの厚さが、約100マイクロメートル〜約130マイクロメートルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記中空管セグメントが複数の重なり合った紙層から形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記中空管セグメントが複数のらせん状に巻かれた紙層から形成される、請求項9に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記中空管セグメントの隣接した紙層が、接着剤の中間層によって一つに接着されている、請求項9または10に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記フィルターの50パーセント変形後の前記中空管セグメントの楕円率と、前記フィルターの変形前の前記中空管セグメントの楕円率との間の差が25パーセント未満である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項13】
前記フィルターの50パーセント変形後の前記中空管セグメントの前記楕円率が25パーセント未満である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空管セグメントにより画定された口側端くぼみを有する喫煙物品に関連する。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこは通常、紙ラッパーで囲まれたたばこカットフィラーの円筒形のロッドと、包まれたたばこロッドと端と端を接して軸方向に整列された円筒形のフィルターとを備える。円筒形のフィルターは通常、紙プラグラップによって囲まれている濾過材料を含む。従来的には、包まれたたばこロッドおよびフィルターは、フィルターの全長および包まれたたばこロッドの隣接部分を囲む、通常は、不透明の紙材料によって形成されるチッピングラッパーの帯により結合される。そのフィルターセクションの口側端にくぼみを有する喫煙物品も提案されてきた。
【0003】
たばこが燃焼するよりはむしろ加熱される多くの喫煙物品が、当業界において提唱されてきた。加熱式喫煙物品では、エアロゾルはエアロゾル発生基体(たばこなど)を加熱することにより生成される。周知の加熱式喫煙物品には、例えば、エアロゾルが電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素または熱源からエアロゾル形成基体への熱の移動によって生成される喫煙物品が含まれる。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、喫煙物品を通して引き込まれた空気中に混入される。放出された化合物が冷めるにつれて凝結してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、ニコチン含有エアロゾルがたばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン源から、燃焼することなく、また一部の場合には加熱することなく、例えば化学反応によって生成される、喫煙物品も周知である。
【0004】
口側端に中空管状要素を有するフィルターを備えた喫煙物品は、米国特許出願公開第2009/0293894号により知られている。フィルターが喫煙可能な材料のロッドにふされた時に中空管状要素はチッピングペーパーにより形成され得る。しかしながら、中空管状要素は、フィルターに追加の強度を付与するように、好ましくは、チッピング材料により上包みされる炭素管などのような円筒形要素を含む。フィルターの口側端でくぼみを画定する中空管状セグメントを備えた喫煙物品を製造する方法は、国際公開第2014/023555号により知られている。
【0005】
消費者の口に達する前に、主流煙の均質化を促進するように適合された口側端くぼみを有するフィルター付き喫煙物品を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明はたばこロッドとたばこロッドに接続されたフィルターとを備えた喫煙物品を提供する。フィルターは、少なくとも第一のフィルターセグメントと、第一のフィルターセグメントの下流にある中空管セグメントとを備える。中空管セグメントは、フィルターの口側の端でくぼみを確定し、第一のフィルターセグメントの下流端からフィルターの口側の端に延びる非制限的な流路を提供する。中空管セグメントの長さは、フィルター全長の少なくとも約25パーセントであり、約50パーセント未満である。さらに、喫煙物品は中空管セグメントに沿った位置にあるくぼみと連通する換気帯域を含む。
換気帯域は、フィルターの口側端から約10mmから約15mm上流に位置する。
【0007】
本明細書に使用される時、「上流」および「下流」という用語は、消費者がその使用の間に喫煙物品を吸う方向に関連して、喫煙物品の要素または要素の部分の相対位置を記述するために使用される。本明細書で記述される喫煙物品は、下流端と反対側の上流端とを備える。使用時には、消費者は喫煙物品の下流端で吸引する。口側の端としても記述される下流端は、遠位端としても記述される場合がある上流端の下流である。
【0008】
「非制限的な流れ」という表現は、本明細書全体を通して、中空管セグメントが、煙および空気が貫流するように実質的に一定の断面積を有するチャネルを内部的に画定することを示すために使用される。さらに、「非制限的な流路」という表現は、本明細書全体を通して、中空管セグメントが、煙および空気の流れの局所的な制限の原因となりうる物体を何も含まないことを示すために使用される。言い換えれば、中空管セグメントは空である。従って、煙および空気が貫流するために利用可能な断面積は、中空管セグメントの全長に沿って実質的に一定であり、中空管セグメントを通した煙および空気の流れは実質的に遮られない。
【0009】
「フィルター全長」という表現は、本明細書全体において、フィルターを形成する様々な構成要素の長さの和を意味するため使用される。従って、「フィルター全長」という表現は、少なくとも中空管セグメントの長さと第一のフィルターセグメントの長さとの和を意味するものと解釈されるべきである。同様に、喫煙物品が複数の中空管セグメントの上流にあるフィルターセグメントを含む場合には、「フィルター全長」という表現は、中空管セグメントの長さと喫煙物品内にあるその他の各フィルターセグメントの長さとの和を意味するものとして解釈されるべきである。
【0010】
本発明によれば、非制限的な中空管セグメントを含むフィルターおよび上記で明記した特徴を持つ換気帯域を含めることで、口側の端での空気および主流煙の分散性の改善が達成された喫煙物品の製造が有利にも可能になる。理論に拘束されることを望むものではないが、中空管によって内部的に画定された非制限的なチャネルと連通する換気帯域を提供することで、喫煙物品のフィルターを通した空気および主流煙、特に、フィルターの下流端での乱流を促すものと理解される。周知のとおり、乱流は流れ内での質量、運動量およびエネルギー輸送のレートを高めることで、流体混合物の均質化に有利に働く。中空のセグメントは、フィルター全長の少なくとも25パーセントであり、かつ約50パーセント未満を表すため、換気帯域を経由してフィルター内に引き込まれた空気と主流煙には、フィルターを離れる前に乱流状態下で十分に混合するための空間が提供される。従って、本発明による喫煙物品では、より適切に分散された空気および主流煙の流れが有利にも消費者の口に達する。
【0011】
さらに、フィルターセグメントまたは中空管セグメントの上流にあるセグメントの長さは、従ってフィルター全長の少なくとも約50パーセントを占める。非制限的な中空管セグメントは、喫煙物品の引き出し抵抗(RTD)の増大には実質的には寄与しない。多くても、非制限的な中空管セグメントは、喫煙物品のRTDをわずかに増大させるだけである。実際には、非制限的な中空管セグメントは、およそ1mm H
2O(約10 Pa)〜およそ20mm H
2O(約200 Pa)の範囲のRTDを発生させるように適合されうる。非制限的な中空管セグメントは、およそ2mm H
2O(約20 Pa)〜およそ10mm H
2O(約100 Pa)のRTDを発生させるように適合されることが好ましい。フィルターセグメントまたは非制限的な中空管セグメントの上流にあるセグメントは、フィルター全長の少なくとも約50パーセントを占めるため、適切な密度および特性の材料濾過材料を選択することにより、喫煙物品の全体的なRTDを満足できるレベルに調節することが有利にも可能である。一部の好ましい実施形態では、フィルターセグメントまたは非制限的な中空管セグメントの上流にあるセグメントは、フィルター全長の少なくとも約60パーセントを占める。
【0012】
中空管セグメントの長さは、約25mm未満であることが好ましい。中空管セグメントの長さは、約15mm未満であることが好ましい。さらに、または別の方法として、中空管セグメントの長さは少なくとも約10mmである。一部の好ましい実施形態では、中空管セグメントの長さは約10mm〜約15mmである。これにより、口側端くぼみと適切なサイズの非制限的な流路が提供されるだけでなく、中空管セグメントと中空管セグメントを囲みうる任意のラッパーとの十分な重なりが確保され、フィルターセグメントまたはたばこロッドとの、または両方との軸方向の整列が維持される。こうしたラッパーは、プラグラップおよびチッピングペーパー帯を含む。
【0013】
換気帯域は、フィルターの口側の端から少なくとも約
10mm上流に位置する。これにより、消費者が喫煙物品を口にくわえた時に換気帯域を塞ぐ可能性が有利なことに低くなる。
【0014】
さらに、換気帯域は、フィルターの口側の端から約15mm未満上流に位置するフィルターの口側の端から約10mm〜約15mm上流に位置する
換気帯域を有する構成は、空気および煙が乱流条件下で貫流し、したがってそれらが喫煙物品の口側の端に達する前に完全に混合されるための非常に適切な非制限的な流路の長さが提供される。
【0015】
さらに、または別の方法として、換気帯域は、第一のフィルターセグメントの下流端から少なくとも約1mm下流に位置し、第一のフィルターセグメントの下流端から少なくとも約2mm下流に位置することが好ましい。換気帯域は、第一のフィルターセグメントの下流端から少なくとも約5mm下流に位置することがより好ましい。換気帯域は、第一のフィルターセグメントの下流端から少なくとも約10mm下流に位置することがさらに好ましい。従って、中空管セグメントにより画定されるくぼみ内に実質的に半径方向に引き込まれる空気は、第一のフィルターセグメントからくぼみに入る実質的に軸方向に沿った主流煙の流れと遭遇する。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、くぼみに引き込まれる空気が、主流煙の流れの一部分を軸方向に引きずるように有利に働き、従って、くぼみ内での空気と主流煙の完全な混合および均質化をさらに促進するものと理解される。
【0016】
換気帯域は、中空管セグメントを貫いて提供された周辺の少なくとも1列の穿孔を含むことが好ましい。一部の好ましい実施形態では、換気帯域は、中空管セグメントを貫いて提供された周辺の2列の穿孔を含む。例えば、穿孔は喫煙物品の製造中にオンラインで形成されうる。周辺の穿孔の各列は、8〜30個の穿孔を含むことが好ましい。
【0017】
たばこロッドは一般に、紙ラッパーによって囲まれた一回分のたばこカットフィラーを含む。
【0018】
中空管セグメントおよびフィルターセグメント(単一または複数)は、プラグラップの帯により囲まれる。中空管セグメントおよびフィルターセグメント(単一または複数)は、不通気性のプラグラップの帯により囲まれることが好ましい。代替的な実施形態において、中空管セグメントおよびフィルターセグメント(単一または複数)は、実質的に通気性のプラグラップの帯、より好ましくは約7,000コレスタ単位〜約20,000コレスタ単位の通気性を持つプラグラップの帯により囲まれることが好ましい。
【0019】
プラグラップは約120gsm未満の坪量を持ちうるが、約100gsm未満であることが好ましく、約80gsm未満であることがより好ましい。さらに、または別の方法として、プラグラップは、少なくとも約20gsmの坪量を持ちうるが、少なくとも約25gsmであることが好ましい。結合用プラグラップは、約20gsmを超える坪量を持つことが好ましい。
【0020】
プラグラップの帯は、中空管セグメントおよびフィルターセグメント(単一または複数)に例えば接着剤を使用して貼り付けられうる。フィルターが実質的に不通気性のプラグラップの帯を含む場合、換気帯域は、プラグラップの一部分を貫いて提供された少なくとも1列の周辺の穿孔を含むことが好ましい。一例として、プラグラップを貫く穿孔は、喫煙物品の製造時にオンラインで形成されうる。プラグラップの一部分を貫いて提供された周辺の列または複数の列の穿孔は、中空管セグメントを貫いて提供された対応する穿孔の列(単一または複数)と実質的に整列された状態にあることが好ましい。
【0021】
プラグラップの帯を含むフィルターは、実質的に不通気性のチッピングペーパー紙の帯によりたばこロッドに取り付けられることが好ましい。チッピングラッパーは、約70gsm未満の坪量を持つ紙を含みうるが、約50gsm未満であることが好ましい。チッピングラッパーは、約20gsmを超える坪量を持つことが好ましい。
【0022】
チッピングペーパーの帯は、フィルター全長の上およびたばこロッドの一部分の上に延びうる。従って、チッピングペーパーの帯は、中空管セグメントを貫いて提供された換気用穿孔と重なりうる。別の方法として、チッピングペーパーの帯は、フィルターの一部分のみの上およびたばこロッドの一部分の上に、すなわち、実質的にフィルターおよびたばこロッドの結合点で延びてもよい。従って、少なくとも一部の実施形態で、チッピングペーパーの帯は、中空管セグメントを貫いて提供された換気用穿孔に重ならなくてもよい。
【0023】
喫煙物品が、中空管セグメントおよび/またはフィルタープラグラップを貫いて提供された換気用穿孔の上に延びるチッピングペーパーの帯を含む場合、チッピングペーパーの帯もまた、1列以上の換気用穿孔を含む。チッピングペーパーを貫いて提供された周辺の列(単一または複数)の穿孔は、中空管セグメントおよび/またはフィルタープラグラップを貫いて提供された対応する列(単一または複数)の穿孔と実質的に整列することが好ましい。
【0024】
上述した通り、本発明による喫煙物品は、第一のフィルターセグメントとの組み合わせで追加的なフィルターセグメントを備えうる。例えば、一つの実施形態で、喫煙物品は、第一のフィルターセグメントとたばこロッドの間に濾過材料のロッド端セグメントをさらに含む。
【0025】
喫煙物品のそれぞれのフィルターセグメント内の濾過材料は、酢酸セルローストウまたは紙など、繊維質濾過材料のプラグであることが好ましい。フィルター可塑剤を分離したファイバー上に吹き付けることによって従来的な方法で繊維質の濾過材料に塗布しうるが、何らかの追加的材料を濾過材料に塗布する前に行うことが好ましい。別の方法として、または追加的に、本発明による喫煙物品は、炭素を含む一つ以上のセグメントを含みうるが、炭素を含むロッド端セグメントが好ましい。
【0026】
中空管セグメントは、紙材料から形成されることが好ましい。中空管セグメントは、複数の平行に巻かれた紙層または複数のらせん状に巻かれた紙層など、複数の重なり合った紙層から形成されることがより好ましい。複数の重なり合った紙層から中空管セグメントを形成することは、崩壊または変形に対する抵抗力を向上させるのに役立ちうる。
【0027】
各中空管セグメントは少なくとも2つの紙層を含むことが好ましい。別の方法として、または追加的に、中空管セグメントは11未満の紙層を含むことが好ましい。
【0028】
中空管セグメントの壁厚は、少なくとも約90マイクロメートルであることが好ましい。中空管セグメントの壁厚は、少なくとも約100マイクロメートルであることがより好ましい。別の方法として、または追加的に、中空管セグメントの壁厚は、約140マイクロメートル未満である。中空管セグメントの壁厚は、約130マイクロメートル未満であることが好ましい。一部の好ましい実施形態では、中空管セグメントの壁厚は、約90マイクロメートル〜約140マイクロメートルであり、100マイクロメートル〜130マイクロメートルであることが好ましい。
【0029】
複数の巻かれた紙層から管セグメントを形成するための模範的方法には、複数の実質的に連続的な紙の細片を円筒形のマンドレルの周りに重ね合わせて巻くことが含まれる。細片は、マンドレル上に実質的に連続的な管を形成するように、平行にまたはらせん状に巻かれる。形成された管は、紙層が連続的に引かれてマンドレルの周りに巻かれるように、例えばゴムベルトを使用して、マンドレルを中心に回転されてもよい。その後、形成された管は、マンドレルの下流で要求される長さに切断される。
【0030】
喫煙物品の喫煙中にその楕円率を保持する中空管セグメントの能力を制限しうる一つの要因は、喫煙中の管セグメントへの水分の吸収である。したがって、喫煙物品の喫煙時の一つの紙層から次の紙層への水分の移動を抑制するために、各管状部材の隣接した紙層は接着剤の中間層によってまとめて接着されることが好ましく、これにより層間の水分移動に対するバリアが提供される。
【0031】
上述の任意の実施形態において、崩壊または変形に対する中空管セグメントの抵抗力は、フィルターの50パーセント変形後の管セグメントの楕円率と、変形前の管セグメントの楕円率との差が約25パーセント未満、好ましくは約20パーセント未満であるようにしうる。例えば、変形前の管セグメントの楕円率が5パーセントである場合、フィルターの50パーセント変形後の管セグメントの楕円率は30パーセント未満であることが好ましく、25パーセント未満であることがより好ましい。本発明に基づくフィルターの変形を実施するための特定の試験手順は、下記に詳細に説明している。
【0032】
本明細書で使用される場合、「楕円率」という用語は完全な円からの偏位の度合いを意味する。楕円率は百分率表現され、数学的定義は下記の通りである。
【0033】
本発明に従った喫煙物品のセグメント(中空管セグメントなど)の楕円率を決定するために、口側の端は喫煙物品の長軸方向に沿って見られる。例えば、喫煙物品は透明な台上に口側の端において配置されてもよく、その結果、物品の口側の端のイメージは台の下に位置する適切な撮像装置によって記録される。寸法「a」は、その下流端でのセグメントの最小外径となるようにとられ、また寸法「b」は、その下流端でのセグメントの最大外径となるようにとられる。プロセスは同じデザインを有する合計10本の喫煙物品について繰り返され、10回の楕円率測定の数平均は喫煙物品のそのデザインについての楕円率として記録される。
【0034】
喫煙物品フィルターは、一般的に円形の断面であるため、50パーセント変形後の中空管セグメントの楕円率は約25パーセント未満であることが好ましく、約20パーセント未満であることがより好ましい。この場合には、本発明による喫煙物品の口側端くぼみは、フィルターの50パーセント変形後でさえも一般的に円形の断面を保持または回復する。別の方法として、またはさらに、フィルターの67パーセント変形後の管セグメントの楕円率は、約35パーセント未満であることが好ましく、約30パーセント未満であることがより好ましい。
【0035】
一部の実施形態で、喫煙物品が喫煙試験を受けた後に測定されるフィルターの50パーセント変形後の中空管セグメントの楕円率は、約35パーセント未満であることが好ましく、約30パーセント未満であることがより好ましい。別の方法として、または追加的に、喫煙物品が喫煙試験を受けた後に測定されるフィルターの67パーセント変形後の中空管セグメントの楕円率は、約45パーセント未満であることが好ましく、約40パーセント未満であることがより好ましい。これは有利なことに、喫煙物品の喫煙時に、口側端くぼみの楕円率の一貫性を提供する。
【0036】
本発明による喫煙物品の試験をするために使用された喫煙試験については、下記に詳しく説明する。喫煙前および後の両方に行われた変形試験後に楕円率を測定することが必要な場合、同じデザインを有する喫煙物品の2つの試料が、使用されるべきである。すなわち、歪みのない未喫煙の喫煙物品は、喫煙前の変形試験に使用されるはずであり、同じデザインを有する歪みのない物品は喫煙試験に供され、喫煙後の変形試験に使用される。
【0037】
上述した通り、喫煙物品の喫煙中にその楕円率を保持する中空管セグメントの能力を制限しうる一つの要因は、管セグメントへの水分の吸収である。したがって、中空管セグメントはその内部表面上に被覆層を備えてもよく、それが中空管セグメントへの水分の吸収を抑制しうる。中空管セグメントが複数の紙層から形成される実施形態では、被覆層は追加的にまたは別の方法として、隣接した紙層の一部または全部の間に提供される。適切な被覆材料には、ろう、ポリマー系材料およびその組み合わせが含まれるが限定されない。特に適切なろうとしては植物ろうがあり、またその他の特に適切な材料はエチルセルロースおよびニトロセルロースである。
【0038】
粉砕に対する中空管セグメントの抵抗力を増大させるには、フィルターは、50パーセント圧縮時に少なくとも約20ニュートンの未喫煙時の圧縮強度を有することが好ましい。別の方法として、または追加的に、50パーセント圧縮時のフィルターの未喫煙時の圧縮強度は約50ニュートン未満であることが好ましい。「圧縮強度」という用語は、喫煙物品のフィルターセクションの特定の圧縮を提供するために要する力の測定値である。圧縮強度は、下記に詳しく説明する圧縮強度試験を使用して測定されるが、ここで所定の喫煙物品デザインの圧縮強度は、同一デザインを持つ10個の喫煙物品サンプルについての圧縮強度測定値の数平均である。
【0039】
一部の実施形態で、風味剤またはその他の添加物を、通常は物品を喫煙する直前の消費者による手動での放出により、要求に応じて放出するための手段を伴うフィルターを提供することが望ましい場合がある。したがって、フィルターは、例えば、外側シェルおよび添加物を含む内部コアが含まれる一つ以上の壊れやすいカプセルなど、風味剤を含む材料を含む、少なくとも一つのフィルターセグメントを備えうる。少なくとも一つのフィルターセグメントは、繊維質の濾過材料内に散在する一つ以上の壊れやすいカプセルを含むことが好ましい。少なくとも一つのフィルターセグメントは、第一のフィルターセグメント、またはフィルター内に組み込まれうる追加的なフィルターセグメント、またはその組み合わせとしうる。
【0040】
風味剤を含有する材料を含む実施形態において、少なくとも一つの風味を含むフィルターセグメントは、風味添加物に対して実質的に不通気性であるプラグラップによって囲まれることが好ましい。これにより、望ましくない消費者の指との接触が起こったり喫煙物品の外観を変色させたりしうる喫煙物品の外側へのプラグラップを通した添加物の移動が有利なことに抑制される。
【0041】
試験の手順
変形および圧縮強度試験
試験の対象となる喫煙物品が、平坦な面と平坦な面に向かい合った円形プレートの間に配置され、円形プレートの直径は10mmである。喫煙物品の口側の端に最も近くにある円形プレートが口側の端から8mmの場所に配置される。次に、毎秒100mmの定速で円形プレートを平坦な面に向けて移動させることにより、フィルターが圧縮される。円形プレートによってかけられる力は、円形プレートと平坦な面の間で喫煙物品の一部分に望まれる変形が得られるまで増大する。例えば、50パーセント変形を得るには、喫煙物品の圧縮部分が、圧縮前のその部分の直径の50パーセントの直径になるまで圧縮される。同様に、67パーセント変形を得るには、喫煙物品は、圧縮部分が圧縮前のその部分の直径の33パーセントの直径に減少するまで圧縮される。直径は圧縮方向に測定されるが、これは平坦な面と円形プレートの間に延びる方向である。要求される圧縮が達成されたら、その圧縮を提供するために要求される力がフィルターの圧縮強度として記録される。次に、圧縮力が除去されるように円形プレートが外される。何らかのさらなる試験または測定が実施される前に、喫煙物品を30秒間放置して膨張させる。
【0042】
喫煙試験
喫煙物品の喫煙をシミュレートするために、喫煙物品は、ISO条件下で(35mlの喫煙が60秒毎にそれぞれ2秒持続)、標準喫煙試験に供される。ISO試験方法では、喫煙物品の喫煙は換気帯域を完全に開放した状態で行われる。
【0043】
ここで、以下の添付図面を参照しながら本発明をさらに説明するが、これは例証としてのみである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】
図2は、フィルターが包装されていない状態の
図1の喫煙物品の口側の端を示す。
【
図3】
図3は、本発明による中空管セグメントを形成するための管状部材を形成するための模範的方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1および2は、本発明による喫煙物品10を図示する。喫煙物品10は、一方の端で軸方向に整列させたフィルター14に取り付けられたたばこカットフィラーの包まれたロッド12を含む。チッピングペーパー16の帯は、フィルター14とたばこの包まれたロッド12の一部分を囲んで、喫煙物品10の2つの部分をひとまとめにする。
【0046】
図2に示す通り、フィルター14は、中空管セグメント18と、風味を含んでも含まなくてもよい第一のフィルターセグメント20と、ロッド端フィルターセグメント22とを備える。中空管セグメント18およびフィルターセグメント20および22は、3つのセグメントを結合してフィルター14を形成する結合用プラグラップ23の帯によって囲まれる。一つ以上のセグメント18、20、22は、追加的に個別のプラグラップで包まれてもよい。
【0047】
第一のフィルターセグメント20およびロッド端フィルターセグメント22は、酢酸セルローストウなど、適切な濾過材料で形成される。その上、第一のフィルターセグメントは適切な風味剤を備えうるが、これは、第一のフィルターセグメント20内に含まれた一つ以上の壊れやすいカプセルの形態で提供されうる。この場合には、一つ以上の壊れやすいカプセルは、消費者によって望ましい時に、第一のフィルターセグメント20を消費者の指の間で圧迫することにより破裂させられる。ロッド端フィルターセグメント22は、炭素含有の吸着材料などの吸着材料を含む。
【0048】
中空管セグメント18は、フィルター14内の口側端くぼみ24を画定し、また第一のフィルターセグメントの下流端20とフィルターの口側の端14の間に延びる非制限的な流路を提供する。より詳細には、中空管セグメント18は、煙および空気が貫流するための実質的に一定の断面積を持つチャネルを内部的に画定する。さらに、中空管セグメント18は、煙および空気の流れを局所的に制限する原因となるように適合された物体は何も含まない。従って、煙および空気が貫流するために利用可能な断面積は、中空管セグメント18の全長に沿って実質的に一定であり、中空管セグメント18を通した煙および空気の流れは遮られない。
【0049】
図1および2の実施形態において、中空管セグメント18の長さは、フィルター全長の約35パーセントである。さらに、中空管セグメント18は、約100マイクロメートル〜約130マイクロメートルの壁厚を持ちうる。
【0050】
中空管セグメント18は、複数のらせん状に巻かれた紙層で形成されうるが、これは例えば、喫煙中または第一のフィルターセグメント20内に存在する時に一つ以上の壊れやすいカプセルの破裂中の口側端くぼみ24の変形に対する抵抗力をさらに向上できる。フィルター14の50パーセント変形後の中空管セグメントの楕円率は、25パーセント未満としうる。
【0051】
喫煙物品10は、中空管セグメント18に沿った位置に換気帯域26をさらに含む。より詳細には、換気帯域26は、中空管セグメント18の壁を貫いて延びる2列の穿孔を含む。2列の穿孔はまた、結合用プラグラップ23の帯を貫き、またチッピングペーパー16の帯を貫いて延びる。結合用プラグラップ23の帯を貫き、またチッピングペーパー16の帯を貫いて延びる穿孔の列は、中空管セグメント18の壁を貫いて延びるものと実質的に整列する。
【0052】
図3は、本発明による喫煙物品の形成に使用するために、切断されて複数の中空管セグメントを形成できる中空管部材30を形成する模範的方法を示す。複数の連続的な紙層32は、円筒形のマンドレル34の周りに、ジグザグ状に重なり合った配置でらせん状に巻かれる。各プライをマンドレル34の周りに巻く前に、接着剤槽36を使用して、適切な接着剤を一つ以上のプライ32に塗布しうる。形成された管状部材30がさらに下流で希望の長さに切断されるまでマンドレル34の周りで回転するように、プライ32はゴムベルト38によって駆動される。