(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649901
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】動的レンズの制御
(51)【国際特許分類】
G02F 1/29 20060101AFI20200210BHJP
G02C 7/08 20060101ALI20200210BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20200210BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20200210BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20200210BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
G02F1/29
G02C7/08
G02C7/12
G02B3/00 B
G02B5/30
G02F1/13 505
【請求項の数】38
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-569044(P2016-569044)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-523445(P2017-523445A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】IB2015053335
(87)【国際公開番号】WO2015186010
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2017年11月21日
(31)【優先権主張番号】62/007,948
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/010,475
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515078671
【氏名又は名称】オプティカ アムカ(エー.エー.)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】ヤディン、ヨアフ
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド、ヤリーフ
(72)【発明者】
【氏名】アロン、アレックス
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−089017(JP,A)
【文献】
特表2010−525388(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/049577(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0225834(US,A1)
【文献】
特開2006−085801(JP,A)
【文献】
特開2011−203547(JP,A)
【文献】
特開平10−232364(JP,A)
【文献】
特表2003−504665(JP,A)
【文献】
特表2013−535022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/29
G02B 3/00,5/30
G02C 7/08,7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学装置であって、
電気光学層と、
前記電気光学層は、前記電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、前記実効局所屈折率は前記場所において前記電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定され;
前記電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長する導電性電極と、
前記電極は1つの配列をなす励起電極を有し、前記励起電極は、相互に平行なそれぞれの軸に沿って前記電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する平行な導電性ストライプを有し、それぞれの前記ストライプは、前記ストライプの軸の相互に分断されたそれぞれの部分の上に延在する2つまたはそれ以上の区画に分割され;そして
制御回路と、
前記制御回路は、それぞれの制御電圧波形を前記励起電極の前記区画に印加し、特定の位相変調プロファイルを前記電気光学層内に形成するように接続され、そして前記制御回路は、複数の前記励起電極のそれぞれの1つまたはそれ以上の前記区画に印加されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更し、それにより前記電気光学層の位相変調プロファイルを変更するように構成され;
を有し、
前記制御回路は、前記光学装置が、前記位相変調プロファイルにより決定される焦点特性を有するレンズとして機能するように、前記励起電極に前記制御電圧波形を印加するように構成される、
ことを特徴とする、光学装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記レンズが多焦点レンズとして機能するために、少なくとも幾つかの前記励起電極の異なる区画に対し、異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
それぞれの前記ストライプの2つまたはそれ以上の前記区画は、それぞれ少なくとも第1と第2の区画を有し、前記ストライプの前記第1の区画は、一緒に前記電気光学層の第1の領域の両端の間に伸長し、一方前記ストライプの前記第2の区画は、一緒に前記電気光学層の第2の領域の両端の間に伸長し、そして
前記制御回路は、前記第1の領域が第1の焦点距離を有し、前記第2の領域が前記第1の焦点距離とは異なる第2の焦点距離を有するように、前記異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するように構成される、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
それぞれの前記ストライプに対し、1つまたはそれ以上のスイッチを有し、前記スイッチは、前記ストライプの前記区画を相互接続し、そして前記制御回路により前記ストライプの前記区画を結合しまたは分離するように動作する、ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
それぞれの前記ストライプの2つまたはそれ以上の前記区画は、それぞれ少なくとも第1と第2の区画を有し、そして前記1つまたはそれ以上のスイッチは、それぞれの前記ストライプ内に前記第1と第2の区画を相互接続する1つのスイッチを有し、そして
前記装置は、全ての前記ストライプの前記第1と第2の区画を同時に電気的に結合しまたは分離するために、前記ストライプのそれぞれの中の前記スイッチを起動するように接続される単一の制御線を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
それぞれの前記ストライプの前記2つまたはそれ以上の区画は、多重のスイッチにより直列に接続される3つまたはそれ以上の区画を有し、そして前記装置は、全ての前記ストライプを横断して前記多重のスイッチを起動するように接続される多重の制御線を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記制御回路は、それぞれの前記導電性ストライプのそれぞれの端部の少なくとも1つに接続され、そして前記多重のスイッチをかわるがわるに起動し、そして前記導電性ストライプのそれぞれの端部に印加される前記制御電圧波形を変更することにより、少なくとも幾つかの前記励起電極の異なる前記区画に異なるそれぞれの前記制御電圧波形を印加するように構成される、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
光学機器であって、
電気的に調整可能なレンズを有し、前記レンズは:
電気光学層と、
前記電気光学層は、前記電気光学層に入射する光の所定の偏光に対し、前記電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、前記実効局所屈折率は前記場所において前記電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定され;
前記電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長する導電性電極と、
前記電極は前記電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する、1つの配列をなす励起電極を有し;
制御回路と;を有し、
前記制御回路は、それぞれの制御電圧波形を前記励起電極に印加し、特定の位相変調プロファイルを前記電気光学層内に形成するように接続され;そして
前記光学機器はさらに偏光回転子を有し、
前記偏光回転子は、前記レンズに配向される入射光をインターセプトし、そして前記インターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより前記電気光学層に入射する前記光が、前記インターセプトされた光の当初の直線偏光に関係なく、所定の偏光成分を有することを保証する、ように配置されそして構成され、
前記光学機器はさらに偏光子を有し、前記偏光子は、前記偏光回転子と前記電気的に調整可能なレンズとの間に挿入され、そして前記所定の偏光成分を通過させるように配向される、
ことを特徴とする光学機器。
【請求項9】
前記偏光回転子は四分の一波長板を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記偏光回転子は複屈折板を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の機器。
【請求項11】
適応型眼鏡であって、
眼鏡フレームと;
前記眼鏡フレームに搭載された第1と第2の電気的に調整可能なレンズと;そして
制御回路と;を有し、
前記制御回路は、前記眼鏡を着用する人の1つの眼から前記人により観察される物体までの距離を示す入力を受信し、そして前記第1と第2のレンズを、前記入力により示された前記距離をある距離範囲の中に挟み込む、異なるそれぞれ第1と第2の屈折力を有するように調整する、ように構成される、
ことを特徴とする適応型眼鏡。
【請求項12】
前記第1と第2のレンズは、前記第1と第2の屈折力をそれぞれ前記人の右眼と左眼に入射する前記光に対して適用するように前記眼鏡フレームに搭載される、ことを特徴とする請求項11に記載の眼鏡。
【請求項13】
前記第1のレンズは前記第1の屈折力を第1の偏光の光に対してのみ適用するように構成され、一方前記第2のレンズは前記第2の屈折力を、前記第1の偏光に直交する第2の偏光の光に対してのみ適用するように構成される、ことを特徴とする請求項11に記載の眼鏡。
【請求項14】
前記第1と第2のレンズは、前記第1と第2の屈折力を前記人の単一の眼に入射する前記光に対して適用するように前記眼鏡フレームに搭載される、ことを特徴とする請求項13に記載の眼鏡。
【請求項15】
偏光回転子を有し、前記偏光回転子は、前記第1と第2のレンズに配向される入射光をインターセプトし、そして前記インターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより前記第1と第2のレンズに入射する前記光が、前記入射光の当初の直線偏光に関係なく、前記第1と第2の偏光の両方のそれぞれの成分を有することを保証する、ように配置されそして構成される、ことを特徴とする請求項14に記載の眼鏡。
【請求項16】
センサを有し、前記センサは、前記眼鏡を着用する人の眼から前記人により観察される物体までの前記距離を検知するように構成され、そして前記距離を示す前記入力を前記制御回路に提供するように接続される、ことを特徴とする請求項11−15のいずれかに記載の眼鏡。
【請求項17】
前記センサは、視線追跡装置、前記物体の画像を獲得するように構成されるカメラ、距離計、近接センサ、および前記眼鏡を着用する前記人により操作されるトリガセンサ、から構成されるセンサのグループから選択される、ことを特徴とする請求項16に記載の眼鏡。
【請求項18】
前記センサは前記物体に向かう前記眼の視線方向を検知するように構成され、そして前記制御回路は、前記検知された視線方向に応答して、前記第1と第2のレンズのそれぞれの光軸をシフトするように構成される、ことを特徴とする請求項16に記載の眼鏡。
【請求項19】
前記制御回路は、前記検知された視線方向の変化に応答して、前記変化に対する事前設定の時間遅れを持って前記光軸をシフトするように構成される、ことを特徴とする請求項18に記載の眼鏡。
【請求項20】
光学装置を作製する方法であって、前記方法は:
電気光学層を提供するステップと、
前記電気光学層は、前記電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、前記実効局所屈折率は前記場所において前記電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定され;
前記電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長するように導電性電極を配置するステップと、
前記電極は1つの配列をなす励起電極を有し、前記励起電極は、相互に平行なそれぞれの軸に沿って前記電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する平行な導電性ストライプを有し、それぞれの前記ストライプは、前記ストライプの軸の相互に分断されたそれぞれの部分の上に延在する2つまたはそれ以上の区画に分割され;そして
それぞれの制御電圧波形を前記励起電極の前記区画に印加し、それにより特定の位相変調プロファイルを前記電気光学層内に形成し、そして複数の前記励起電極のそれぞれの電極の1つまたはそれ以上の前記区画に印加されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更し、それにより前記電気光学層の位相変調プロファイルを変更するように、制御回路を接続するステップと;
を有し、
前記制御回路を接続するステップは、前記光学装置が、前記位相変調プロファイルにより決定される焦点特性を有するレンズとして機能するように、前記制御電圧波形を前記励起電極に印加するステップを有する、
ことを特徴とする、光学装置を作製する方法。
【請求項21】
前記制御電圧波形を印加するステップは、前記レンズが多焦点レンズとして機能するために、少なくとも幾つかの前記励起電極の異なる前記区画に対し、異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するステップを有する、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
それぞれの前記ストライプの2つまたはそれ以上の前記区画は、それぞれ少なくとも第1と第2の区画を有し、前記ストライプの前記第1の区画は、一緒に前記電気光学層の第1の領域の両端の間に伸長し、一方前記ストライプの前記第2の区画は、一緒に前記電気光学層の第2の領域の両端の間に伸長し、そして
前記異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するステップは、前記第1の領域が第1の焦点距離を有し、前記第2の領域が前記第1の焦点距離とは異なる第2の焦点距離を有するようにさせる、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記導電性電極を配置するステップは、それぞれの前記ストライプにおいて、前記ストライプの前記区画を1つまたはそれ以上のスイッチで相互接続するステップを有し、前記スイッチは、前記ストライプの前記区画を結合しまたは分離するため前記制御回路により操作される、ことを特徴とする請求項20−22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
それぞれの前記ストライプの前記2つまたはそれ以上の区画は、それぞれ少なくとも第1と第2の区画を有し、そして前記1つまたはそれ以上のスイッチは、それぞれの前記ストライプ内に前記第1と第2の区画を相互接続する1つのスイッチを有し、そして
前記方法は、全ての前記ストライプの前記第1と第2の区画を同時に電気的に結合しまたは分離するために、前記ストライプのそれぞれの中の前記スイッチを起動する単一の制御線を接続するステップを有する、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
それぞれの前記ストライプの前記2つまたはそれ以上の区画は、多重のスイッチにより直列に接続される3つまたはそれ以上の区画を有し、そして前記方法は、全ての前記ストライプを横断して前記多重のスイッチを起動する多重の制御線を接続するステップを有する、ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記制御回路を接続するステップは、それぞれの前記導電性ストライプのそれぞれの端部の少なくとも1つに前記制御回路を接続するステップと、そして、前記多重のスイッチをかわるがわるに起動し、そして前記導電性ストライプのそれぞれの端部に印加される前記制御電圧波形を変更することにより、少なくとも幾つかの前記励起電極の異なる区画に異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するステップと、を有することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
光学機器を作製する方法であって、前記方法は:
電気的に調整可能なレンズを提供するステップを有し、
前記レンズは:
電気光学層と、
前記電気光学層は、前記電気光学層に入射する光の所定の偏光に対し、前記電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、前記実効局所屈折率は前記場所において前記電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定され;
前記電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長する導電性電極と、
前記電極は前記電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する、1つの配列をなす励起電極を有し;
制御回路と;を有し、
前記制御回路は、それぞれの制御電圧波形を前記励起電極に印加し、特定の位相変調プロファイルを前記電気光学層内に形成するように接続され、そして
前記方法はさらに偏光回転子を配置するステップを有し、
前記偏光回転子は、前記レンズに配向される入射光をインターセプトし、そして前記インターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより前記電気光学層に入射する前記光が、前記インターセプトされた光の当初の直線偏光に関係なく、所定の偏光成分を有することを保証し、
前記方法はさらに、偏光子を前記偏光回転子と前記電気的に調整可能なレンズとの間に挿入するステップと、そして前記偏光子を前記所定の偏光成分を通過させるように配向するステップと、を有する、
ことを特徴とする光学機器を作製する方法。
【請求項28】
前記偏光回転子は四分の一波長板を有する、ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記偏光回転子は複屈折板を有する、ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
適応型眼鏡を操作する方法であって、前記方法は:
第1と第2の電気的に調整可能なレンズを眼鏡フレームに搭載するステップと;
前記眼鏡を着用する人の1つの眼から前記人により観察される物体までの距離を示す入力を受信するステップと;そして
前記第1と第2のレンズを、前記入力により示された前記距離をある距離の範囲に挟み込む、異なるそれぞれ第1と第2の屈折力を有するように調整するステップと;
を有することを特徴とする、適応型眼鏡を操作する方法。
【請求項31】
前記第1と第2のレンズは、前記第1と第2の屈折力をそれぞれ前記人の右眼と左眼に入射する前記光に対して適用するように前記眼鏡フレームに搭載される、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のレンズは前記第1の屈折力を第1の偏光の光に対してのみ適用するように構成され、一方前記第2のレンズは前記第2の屈折力を、前記第1の偏光に直交する第2の偏光の光に対してのみ適用するように構成される、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第1と第2のレンズは、前記第1と第2の屈折力を前記人の単一の眼に入射する前記光に対して適用するように前記眼鏡フレームに搭載される、ことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1と第2のレンズに配向される入射光をインターセプトし、そして前記インターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより前記第1と第2のレンズに入射する前記光が、前記入射光の当初の偏光に関係なく、前記第1と第2の偏光の両方のそれぞれの成分を有することを保証するための、偏光回転子を配置するステップを有する、ことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記入力を受信するステップは、前記眼鏡を着用する人の眼から前記人により観察される物体までの前記距離を検知するステップを有する、ことを特徴とする請求項30−34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記距離を検知するステップは、センサからの出力を受信するステップを有し、前記センサは、視線追跡装置、前記物体の画像を獲得するように構成されるカメラ、距離計、近接センサ、および前記眼鏡を着用する前記人により操作されるトリガセンサ、から構成されるセンサのグループから選択される、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記入力を受信するステップは、前記物体に向かう前記眼の視線方向を検知するステップを有し、そして前記第1と第2のレンズを調整するステップは、前記検知された視線方向に応答して、前記第1と第2のレンズのそれぞれの光軸をシフトするステップを有する、ことを特徴とする請求項30−34のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記それぞれの光軸をシフトするステップは、前記検知された視線方向の変化に応答して、前記変化に対する事前設定の時間遅れを持って前記光軸をシフトするステップを有する、ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に光学装置に関し、特に電気的に調整可能なレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願は2014年6月5日出願の米国暫定特許出願62/007,948(特許文献1);2014年6月11日出願の米国暫定特許出願62/010,475(特許文献2)の恩恵を主張する。これら関連出願の両方は、ここに参照として採り入れられる。
【0003】
調整可能レンズは、その焦点距離、および/または光軸の位置などの光学特性が、一般的に電気制御のもとで使用中に調節可能な光学要素である。このようなレンズは広範囲の用途に使用できる。例えば、米国特許7,475,985(特許文献3)、それはここに参照として採り入れられるが、は視力補正の目的のための電気活性レンズの使用について記載している。
【0004】
電気調整可能なレンズは、一般的に、適合する電気光学的材料、即ち、局所実効屈折率がその材料の両端に印加される電圧の関数として変化する材料、の薄い層を含む。電極または電極アレイは、屈折率を局所的に所望の値に調節するために所望の電圧を印加するのに使用される。液晶はこの目的のために最も頻繁に使用される電気光学材料である。(印加電圧が分子を回転させ、それが複屈折軸を変化させ、それにより実効屈折率を変化させる。)しかし、高分子ゲルのような類似の電気光学特性を有する他の材料もこの目的のために使用可能である。
【0005】
いくつかの調整可能レンズ設計では、液晶ディスプレイに使用される画素格子の類に似た、液晶中の画素の格子を画定するために、電極アレイを使用する。個々の画素の屈折率は電気的に制御され、所望の位相変調プロファイルを与えうる。(「位相変調プロファイル」という用語は本明細書および請求項においては、調整可能レンズの電気光学層の領域に亘る、局所的に変化する実効屈折率の結果としての、その電気光学層を通過する光に適用される局所的位相シフトの分布を意味する。)この種の格子配列を使用するレンズは、例えば上記の米国特許7,475,985(特許文献3)に記載されている。
【0006】
PCT特許出願公報WO2014/049577(特許文献4)、それはここに参照され本明細書に採り入れられるが、は、光学装置であって、電気光学層の活性領域内の任意の位置において局所実効屈折率を有する、電気光学層を有し、実効屈折率は所与の位置における電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される、光学装置を記載している。平行な導電性ストライプを有する、活性領域の上に伸長する励起電極のアレイが電気光学層の片側または両側に配置される。制御回路は、それぞれの制御電圧波形をその励起電極に印加し、そして、励起電極に印加されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更して、それにより電気光学層の位相変調プロファイルを生成するように構成される。
【0007】
米国特許出願公開2012/0133891(特許文献5)は近視を補正する電気光学装置および方法について記載しており、それは少なくとも1つの適応型レンズ、電源、および視線追跡装置を含む。視線追跡装置は画像センサおよび、適応型レンズと画像センサに操作上接続しているプロセッサを含む。プロセッサは電気信号を画像センサから受信し、そして近視を補正するため適応型レンズの補正力を制御するように構成され、その補正力はユーザの注視距離と近視処方箋強度に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国暫定特許出願62/007,948
【特許文献2】米国暫定特許出願62/010,475
【特許文献3】米国特許7,475,985
【特許文献4】PCT特許出願公報WO2014/049577
【特許文献5】米国特許出願公開2012/0133891
【発明の概要】
【0009】
以下に記載される本発明の実施形態は改良された電気的に調整可能な光学装置を提供する。
従って本発明の1実施形態によれば、光学装置であって、電気光学層を有し、その電気光学層は、電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、実効局所屈折率はその場所において電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される、光学装置が提供される。電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長する導電性電極は1つの配列をなす励起電極を有し、励起電極は、相互に平行なそれぞれの軸に沿って電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する平行な導電性ストライプを有し、それぞれのストライプは、ストライプの軸の相互に分断されたそれぞれの部分の上に延在する2つまたはそれ以上の区画に分割される。制御回路は、それぞれの制御電圧波形を励起電極の区画に印加し、特定の位相変調プロファイルを電気光学層内に形成するように接続され、そして制御回路は、複数の励起電極のそれぞれの1つまたはそれ以上の区画に印加されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更し、それにより電気光学層の位相変調プロファイルを変更するように構成される。
【0010】
一般的に、制御回路は、光学装置が位相変調プロファイルにより決定される焦点特性を有するレンズとして機能するように、励起電極に制御電圧波形を印加するように構成される。いくつかの実施形態では、制御回路は、レンズが多焦点レンズとして機能するために、少なくとも幾つかの励起電極の異なる区画に対し、異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するように構成される。開示された1つの実施形態では、それぞれのストライプの2つまたはそれ以上の区画は、それぞれ少なくとも第1と第2の区画を有し、ストライプの第1の区画は、一緒に電気光学層の第1の領域の両端の間に伸長し、一方ストライプの第2の区画は、一緒に電気光学層の第2の領域の両端の間に伸長する。制御回路は、第1の領域が第1の焦点距離を有し、第2の領域が第1の焦点距離とは異なる第2の焦点距離を有するように、異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するように構成される。
【0011】
他の実施形態では、光学装置は、それぞれのストライプに対し、1つまたはそれ以上のスイッチを有し、そのスイッチは、ストライプの区画を相互接続し、そして制御回路によりストライプの区画を結合しまたは分離するように動作する。一般的にそれぞれのストライプの2つまたはそれ以上の区画は、少なくともそれぞれの第1と第2の区画を有し、そして1つまたはそれ以上のスイッチは、それぞれのストライプ内に第1と第2の区画を相互接続する1つのスイッチを有し、そして光学装置は、全てのストライプの第1と第2の区画を同時に電気的に結合しまたは分離するために、ストライプのそれぞれの中のスイッチを起動するように接続される単一の制御線を有する。
【0012】
追加的または代替的にそれぞれのストライプの2つまたはそれ以上の区画は、多重のスイッチにより直列に接続された3つまたはそれ以上の区画を有し、そして光学装置は、全てのストライプを横断して多重のスイッチを起動するように接続される多重の制御線を有する。1つの実施形態では、制御回路は、それぞれの導電性ストライプのそれぞれの端部の少なくとも1つに接続され、そして多重のスイッチをかわるがわるに起動し、そして導電性ストライプのそれぞれの端部に印加される制御電圧波形を変更することにより、少なくとも幾つかの励起電極の異なる区画に異なるそれぞれの制御電圧波形を印加するように構成される。
【0013】
本発明の1つの実施形態によれば、電気的に調整可能なレンズを有する光学機器が提供される。
レンズは電気光学層を有し、その電気光学層は、電気光学層に入射する光の所定の偏光に対し、電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、実効局所屈折率はその場所において電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される。導電性電極は電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長し、電極は電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する1つの配列をなす励起電極を有する。制御回路は、それぞれの制御電圧波形を励起電極に印加し、特定の位相変調プロファイルを電気光学層内に形成するように接続される。偏光回転子は、レンズに配向される入射光をインターセプトし、そしてインターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより電気光学層に入射する光が、インターセプトされた光の当初の直線偏光に関係なく、所定の偏光成分を有することを保証する、ように配置されそして構成される。
【0014】
開示された実施形態では、偏光回転子は四分の一波長板または複屈折板を有する。
幾つかの実施形態では、装置は偏光子を有し、偏光子は偏光回転子
と電気的に調整可能なレンズ
との間に挿入され、そして所定の偏光成分を通過させるように配向されている。
【0015】
本発明の1実施形態によればさらに、眼鏡フレームと眼鏡フレームに搭載された第1と第2の電気的に調整可能なレンズとを有する適応型眼鏡が提供される。制御回路は、眼鏡を着用する人の1つの眼からその人により観察される物体への距離を示す入力を受信し、そして第1と第2のレンズを、その入力により示された距離をある距離範囲の中に挟み込む、異なるそれぞれ第1と第2の屈折力を有するように調整する、ように構成される。
いくつかの実施形態では、第1と第2のレンズは、第1と第2の屈折力をそれぞれ人の右眼と左眼に入射する光に対して適用するように眼鏡フレームに搭載される。
【0016】
追加的にまたは代替的に、第1のレンズは第1の屈折力を第1の偏光の光に対してのみ適用するように構成され、一方第2のレンズは第2の屈折力を、第1の偏光に直交する第2の偏光の光に対してのみ適用するように構成される。いくつかの実施形態では、第1と第2のレンズは、第1と第2の屈折力を人の単一の眼に入射する光に対して適用するように眼鏡フレームに搭載される。開示された1つの実施形態では、眼鏡は偏光回転子を有し、偏光回転子は、第1と第2のレンズに配向される入射光をインターセプトし、そしてインターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより第1と第2のレンズに入射する光が、入射光の当初の直線偏光に関係なく、第1と第2の偏光の両方のそれぞれの成分を有することを保証する、ように配置されそして構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、眼鏡はセンサを有し、そのセンサは、眼鏡を着用する人の眼からその人により観察される物体への距離を検知するように構成され、そしてその距離を示す入力を制御回路に提供するように接続される。一般的に、センサは、視線追跡装置、物体の画像を獲得するように構成されるカメラ、距離計、近接センサ、および眼鏡を着用する人により操作されるトリガセンサ、から構成されるセンサのグループから選択される。
追加的にまたは代替的に、センサは物体に向かう眼の視線方向を検知するように構成され、そして制御回路は、検知された視線方向に応答して、第1と第2のレンズのそれぞれの光軸をシフトするように構成される。制御回路は、検知された視線方向の変化に応答して、変化に対する事前設定の時間遅れを持って光軸をシフトするように構成されてもよい。
【0018】
本発明の1実施形態によればさらに、光学装置を作製する方法が提供される。その方法は、電気光学層であって、その活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、実効局所屈折率がその場所において電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される、電気光学層を提供するステップを有する。導電性電極は電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長するように配置される。電極は1つの配列をなす励起電極を有し、その励起電極は、それぞれ相互に平行な軸に沿って電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する平行な導電性ストライプを有する。それぞれのストライプは、ストライプの1つの軸の相互に分断されたそれぞれの部分の上に延在する2つまたはそれ以上の区画に分割される。制御回路は、それぞれの制御電圧波形を励起電極の区画に印加し、それにより特定の位相変調プロファイルを電気光学層内に形成し、そしてそれぞれの複数の励起電極の1つまたはそれ以上の区画に印加されるそれぞれの制御電圧波形を同時に変更し、それにより電気光学層の位相変調プロファイルを変更するように接続される。
【0019】
本発明の1実施形態によればさらにまた、光学機器を作製する方法が提供される。その方法は、電気的に調整可能なレンズを提供するステップを有し、そのレンズは電気光学層を有し、その電気光学層は、電気光学層に入射する光の所定の偏光に対し、電気光学層の活性領域内の任意の所与の場所において実効局所屈折率を有し、その実効局所屈折率はその場所において電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される。導電性電極が電気光学層のそれぞれ反対側にある第1と第2の側面に伸長する。電極は電気光学層の第1の側面の両端の間に伸長する1つの配列をなす励起電極を有する。制御回路が、それぞれの制御電圧波形を励起電極に印加し、特定の位相変調プロファイルを電気光学層内に形成するように接続される。偏光回転子が、レンズに配向される入射光をインターセプトし、そしてインターセプトされた光の偏光を回転させ、それにより電気光学層に入射する光が、インターセプトされた光の当初の直線偏光に関係なく、所定の偏光成分を有することを保証するように配置される。
【0020】
本発明の1実施形態によればまたさらに、適応型眼鏡を操作する方法が提供される。その方法は、第1と第2の電気的に調整可能なレンズを眼鏡フレームに搭載するステップを有する。眼鏡を着用する人の1つの眼からその人により観察される物体への距離を示す入力が受信される。第1と第2のレンズは、入力により示された距離をある距離の範囲に挟み込む(bracket)する、異なるそれぞれ第1と第2の屈折力を有するように調整される。
【0021】
本発明の1実施形態によればさらに、眼鏡フレームと、眼鏡フレームに搭載された第1と第2の電気的に調整可能なレンズとを有する適応型眼鏡が提供される。センサは眼鏡を着用する人の1つの眼により実行されるジェスチャを示す信号を出力するように構成される。制御回路は、信号に応答して、第1と第2のレンズの少なくとも1つの光学特性を調整するように構成される。
一般的に、1つの眼により実行されるジェスチャは、眼球運動、まばたき、及びウインクから構成されるジェスチャのグループから選択される。
【0022】
本発明の1実施形態によれば追加的に、適応型眼鏡を操作する方法が提供される。その方法は、第1と第2の電気的に調整可能なレンズを眼鏡フレームに搭載するステップを有する。眼鏡を着用する人の1つの眼により実行されるジェスチャを示す信号が受信される。第1と第2のレンズの少なくとも1方の光学特性がその信号に応答して調整される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は図面を伴う以下の実施形態の詳細な記載により、より十分に理解されよう:
【
図1】本発明の1実施形態に基づく、適応型眼鏡の図画的概略図である。
【
図2】本発明の1実施形態に基づく、電気的に調整可能なレンズシステムの概略側面図である。
【
図3A-3D】
図3Aは本発明のもう1つの実施形態に基づく、電気的に調整可能なレンズシステムの図画的概略図である。
図3Bと3Cは本発明の1つの実施形態に基づく、
図3Aのレンズのそれぞれ反対側に形成される電極の概略正面図である。
図3Dは本発明の1つの実施形態に基づく、レンズのそれぞれ反対側にある電極の重ね合わせを示す、
図3Aのレンズの概略正面図である。
【
図4】本発明のもう1つの実施形態に基づく、電気的に調整可能なレンズ上に形成される電極の概略正面図である。
【
図5】本発明の代替的1実施形態に基づく、電気的に調整可能なレンズ上に形成される電極とスイッチング要素を示す、概略的電気図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(概論)
二焦点および多焦点レンズは、レンズを使用する人が異なる距離にある物体を見ることを可能にするために、異なる屈折力のゾーンを有している。この種の多焦点能力は、(老眼に苦しむ高齢者などのような)距離に対する限られた視力調節能力を持つ人々の視力を補正するレンズの能力を高める。しかしながら、レンズのゾーン構造は、任意の所与の距離での視野を、その距離に対して必要な屈折力を提供するレンズのゾーンの領域に制限する。
【0025】
電気的に調整可能な眼鏡レンズは、このような場合に、より柔軟で快適な解決策を提供することができる。このレンズは、眼鏡を着用している人により観察される物体に従って焦点距離およびレンズの光軸を調整するために、様々なタイプのセンサと接続されてもよい。理想的には、この種類の調整は、視角の焦点距離にかかわらず、レンズの全面にわたって視力の最適な補正を提供する。しかし、実際には、センサは、任意の所与の時点で所望の焦点距離と、視角に関して不完全な指標を提供し、したがって、レンズ特性の動的な調整は、不確実でありうる。またさらに、距離調節能力が著しく制限された人々は、レンズの焦点距離が電気的に調整される場合でも、多焦点レンズの使用から恩恵を得ることができる。
【0026】
本明細書中に記載される本発明の実施形態は、とりわけ人間の視力の動的補正に関する実際的な困難に対処するために使用可能な特性を有する、新規な電気的に調整可能なレンズを提供する。これらの実施形態のいくつかは、そのようなレンズにおいて多焦点性能を提供するのに特に有用である。
【0027】
開示された実施形態は、液晶層のような電気光学層を含む光学装置に基づいており、電気光学層はその活性領域内の任意の所与の位置において実効局所屈折率を有し、実効局所屈折率はその位置において電気光学層の両端に印加される電圧波形により決定される。導電性電極は、電気光学層の両側面に伸長し、導電性電極は少なくとも一方の側面に1つの配列をなす励起電極を有し、その励起電極は相互に平行なそれぞれの軸に沿って電気光学層の両端の間に平行に伸長する導電性のストライプを含む。電気光学層の反対側にある電極は、共通電極を有するか(この場合光学装置は円筒型レンズとして機能する)または、他の側のストライプに直交する向きに向く平行なストライプの配列を有する(それにより光学装置は球面または非球面レンズをエミュレートする態様で機能する)。この一般的なタイプの装置とその動作の詳細は、上記のPCT国際出願公開WO 2014/049577(特許文献4)にさらに記載されている。しかし、開示された実施形態の原理は、他の種類の適応型レンズの設計に、必要な変更を加えて代替的に適用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、電気光学層の少なくとも一方の側面の励起電極の各ストライプは2つ以上の区画に分割され、それら区画は、ストライプの軸の相互に分断されるそれぞれの部分の上に延在する。制御回路は、電気光学層内に特定の位相変調プロファイルを生成するように、励起電極の区画にそれぞれの制御電圧波形を印加する。詳細には、制御回路は、少なくともいくつかの励起電極の異なる区画に対し異なる制御電圧波形を印加することができ、それによりレンズは、異なるゾーンが異なる屈折力を有する多焦点レンズとして機能する。制御回路は、1つ以上の異なるゾーンの位相変調プロファイルを変更するために、電極の区画に印加される制御電圧波形を変更することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、区画化されたストライプは、ストライプの区画を相互接続する1つまたは複数のスイッチを含む。これらのスイッチは、そのストライプの区画を電気的に結合しまたは分離するように制御回路により操作できる。従って制御回路は、レンズの異なるゾーンの焦点特性だけでなく、適切にスイッチを開閉することによって、そのゾーンの寸法と位置を動的に変化させることができる。
【0030】
コレステリック液晶のようないくつかの電気光学材料は、偏光に関係なく動作するが、ほとんどの利用可能な液晶と他の電気光学材料は、偏光に対し感応性があり、一定の偏光の入射光に対してのみ、その屈折効果を発揮することができる。電気光学材料のこの制限は、この材料に基づく適応型眼鏡レンズの性能を制限しうる。本明細書に記載される本発明の実施形態のいくつかは、偏光回転要素の革新的な使用によって、この制限を克服し、そしてその制限を眼鏡の性能向上における優位性に転換しさえする。
【0031】
これらの実施形態のいくつかでは、電気的に調整可能なレンズに向けて電気光学層に入射した光を偏光回転子がインターセプトし、そしてインターセプトした光の偏光を回転し、それによりたとえインターセプトされた光が電気光学材料で屈折される偏光に直交する方向に直線的に偏光されていても、電気光学層に入射する光がレンズにより屈折される偏光成分を有することを保証する。偏光回転子は、典型的には、例えば、四分の一波長板または複屈折板を備える。1実施形態では、偏光子が偏光回転子と電気的に調整可能なレンズとの間に介在され、そしてその偏光子はレンズによって屈折される偏光を持つ光の成分のみを通過させるように配向される。代替実施形態では、互いに直交する偏光を有する光を屈折するように配向された電気光学層を有する、2つの電気的に調整可能なレンズが直列に配置され、それにより任意の偏光の入射光が集束されてもよい。
【0032】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、眼鏡を着用する人の眼から人に観察される物体までの距離を検知するセンサと一緒に眼鏡フレームに搭載される、電気的に調整可能なレンズを含む適応型眼鏡を提供する。制御回路は、検知された距離に応じてレンズを調整するが、明確に距離を決定することは常に可能または望ましいものではない。したがって、いくつかの実施形態では、制御回路は、検知された距離をブラケットする(ある距離の範囲で挟む)、異なるそれぞれの集束力(また屈折力とも呼ばれる)を持つようにフレーム内のレンズを調整する。本明細書及び特許請求の範囲において「ブラケット」は、焦点ブラケットの意味において使用され、屈折力が、検知された距離に基づいて選択された特定の目標屈折力値の周辺の範囲の値であることを意味する。(ブラケットは、対称である必要はなく、そして屈折力の一つは、実際に目標屈折力そのものであってもよい。)このようなブラケット化は、物体との距離が自動的に検知される場合だけでなく、ユーザが手動で焦点距離を設定する場合に被写界深度を高めるために、適応型眼鏡によって使用されてもよい。
【0033】
これらの実施形態のいくつかは、それぞれの電気光学層を有する一対の上記のような電気的に調整可能なレンズであって、その電気光学層は、第1のレンズが特定の偏光の光に対してだけその屈折力を適用し、一方で第2のレンズは、第1のレンズとは異なる屈折力をそれと直交する偏光の光に対してだけ適用するように配向される、1対のレンズを使用する。1つの実施形態では、これらの二つのレンズは、眼鏡を着用している人の左右の眼にそれぞれ入射した光に対しその屈折力を適用するように配置される。もう1つ別の実施形態では、人の片方の眼に入射した光に対しそれぞれの屈折力を適用するように2つのレンズが眼鏡フレームに相前後して装着される。いずれの場合も、人の片方の眼または両方の眼は、異なる焦点距離における2つの画像を受け取る。代替的に、左右の電気的に調整可能なレンズの両方は、偏光に関係なくそれぞれの屈折力を適用してもよい;この目的のために、レンズは、偏光の影響を受けない電気光学材料から構成され、または上記のように、それらは二つの偏光に影響されるレンズおよび/またはレンズと偏光回転子から構成されてもよい。これらのいずれの場合においても、脳は、実際に対象の物体にフォーカスされた画像を選択し、そして処理することができる。
【0034】
(システムの記述)
図1は、本発明の1つの実施形態による、適応型眼鏡20の絵画的概略図である。眼鏡20は、フレーム25内に取り付けられた電気的に調整可能なレンズ22及び24を有する。焦点距離と光学中心(または等価的に、光軸)を含むレンズの光学特性は、制御回路26によって制御され、それは電池28または他の電源によって電力供給される。制御回路26は、一般的に、本明細書に記載された機能を実行するための埋め込みマイクロプロセッサを有し、それは結線接続されたおよび/またはプログラム可能な論理要素および適切なインタフェースを備える。眼鏡20のこれら及び他の要素は、典型的には、フレーム25上又は内に取り付けられるが、代替的にフレーム25に有線で接続される別個のユニット(図示せず)に含まれていてもよい。
【0035】
眼鏡20は、眼鏡を着用している人の眼から人に観察される物体34までの距離を検知する1つまたは複数のセンサを含む。制御回路26はセンサの測定値に従ってレンズ22と24を調整する。図示の例では、センサは、左右の眼のそれぞれの視線方向32を検知する1対の視線追跡装置30を含む。制御回路26は、典型的には、検知された視線方向に応答してレンズのそれぞれの光軸をシフトさせる。また、制御回路は、視線追跡装置30によって測定される瞳孔間距離を、ユーザの焦点距離を推定するために(実際の注視方向を解析することさえなく)、そして恐らくは物体34を識別するために使用することができる。
【0036】
カメラ36は、制御回路26による物体34の識別および焦点距離の設定において使用するために、物体34の画像を獲得する。視線追跡装置30またはカメラ36のどちらかは、焦点距離を決定するのに用いられてもよいが、これらのセンサの両方は、物体のより信頼性の高い識別を与えるために一緒に使用することができる。代替的にまたは付加的に、カメラ36は、物体34までの距離を測定する距離計または他の近接センサによって置換えまたは補足されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、眼鏡20は、眼鏡20の他の構成要素を活性化する少なくとも1つのトリガセンサ38を含む。例えば、トリガセンサ38は、制御回路26と他の要素を定期的にトリガーするタイマー、または頭部運動センサのような観察距離の変化を示す他のセンサ、またはユーザ入力センサを含んでもよい。動作の一つのモードでは、トリガセンサ38が作動する場合、カメラ36または他の近接センサは、ユーザの視野内の物体までの距離を検出する。視野内のすべての物体がほぼ同じ距離にある場合には、レンズ22及び24は、ユーザの視力をその距離にフォーカスするように構成されうる。ユーザの視野内の複数の物体が異なる距離で検出された場合、視線追跡装置30が起動され、例えばユーザの瞳孔間距離を解析することにより、ユーザが観察している距離を決定する。
【0038】
追加的または代替的に、制御回路26は、ユーザ入力に応答して、眼鏡20の機能を起動させることができる。種々の入力デバイス(図示せず)が、この目的のために使用することができる。例えば:
・フレーム25上のボタン(プッシュボタンまたはタッチボタン)。
・目の動き、ウインクおよび/または瞬きによってレンズ特性を変化させる、視線追跡装置30または他のセンサに基づく、眼ベースのジェスチャ制御システム。
・有線またはBluetooth(登録商標)リンクのような無線通信リンクを介して制御回路26に接続されている、リストバンドなどの外部装置上に配置されるボタン。
・手首の回転や特定の方向への動きなどの特定の運動に従って、制御回路にレンズ特性を変更させる、有線または無線通信リンクを介して制御回路26に接続される、リストバンドのような外部装置上の運動検知器。
・有線または無線通信リンクを介して制御回路26に接続される携帯型または着用型装置上に実装される、アプリケーション。
・事前設定の音声コマンドを識別するための音声分析または音響分析に基づき、制御回路26がレンズ特性を変更する、音声制御。
【0039】
さらに追加的又は代替的に、制御回路26は、ユーザ入力及び/又はセンサ入力によって決定され、そしていくつかの条件の下でレンズ22及び24の焦点距離を最適化するのに役立ちうる、事前設定の動作モードを有することができる。そのような動作モードは例えば、以下を含んでもよい:
・マニュアル−ユーザが手動で単一の距離(読書、中間または遠方)を選択する。レンズ22と24はそれに応じて調整され、オートフォーカスシステムは無効になっている。
・オフィス−レンズ22と24の中間と近距離の調整を奨励。
・スタンバイ−しばらくの間、何の動きも検出されない場合は、エネルギーを節約するために、センサ30、36およびレンズ22、24をシャットダウンする。
・運転−遠方視力を奨励。安全上の理由から、レンズ22及び24の少なくとも一部を遠方視力設定で常に維持し、揺れを無視することが可能である。
・読書−近距離視力を奨励、特別な場合にのみ他の範囲に切り替える。
・ノーマル−状況データ無し。この場合、制御回路はセンサ30,36にのみ依存する。
【0040】
センサ30および36による観察距離の正確な検出は困難でかつ不確実である可能性があり、そしてレンズ22と24の屈折力の誤設定は、ユーザにとって妨げになりうる。この問題を軽減するために、レンズ22及び24は、センサに基づいて推定される特定の目標距離をある距離範囲内に挟む(ブラケットする)、異なるそれぞれの屈折力に設定されてもよい。この目標距離は、一般的には物体34のような、観察している物体までの推定距離である。レンズ間の屈折力の不一致は、両眼視が、多くの場合、視界がフォーカスされて見えるようにするためには、鋭く焦点の合った画像を見るための片目だけを必要とする、という事実を利用している。
【0041】
例えば、検出器30及び36が目標距離が1メートルであると示し、それに対してレンズ22と24が1ジオプトリに設定する必要があり(ユーザの通常の屈折力補正に対して)、そしてユーザが0.2のデフォーカスの許容範囲を有している場合、制御回路26はレンズ22および24をそれぞれ0.8と1.2ジオプトリの屈折力に設定してもよい。この焦点のブラケット化は、検出された距離が正確ではなかった場合に、距離の広い範囲(0.6−1.4ジオプトリの屈折力に相当する)にわたってピントの合った状態で見る能力をユーザに提供する。
【0042】
レンズ22及び24は、常時、または、物体との距離が不明である特定の状況下でのみ、異なる屈折力で動作することができる。左右のレンズの屈折力の差(上記の例では0.4ジオプトリ)は、一定であるか、または、センサ30,36により検出された物体との距離の信頼度;センサ30,36の出力の確率分布;照明条件;検出された距離そのもの;そして、ユーザの嗜好;などのいくつかのパラメータの関数として変化することができる。
【0043】
別の1実施形態では、レンズ22(またはレンズ24)は、ユーザの目の1つまたは両方に入射する入射光に対して、異なるそれぞれの屈折力を適用する二つ以上の光学素子を含んでもよい。これらの光学素子は、例えば、要素内の電気光学層を直交する方向に配向させて、異なる偏光の光を屈折するように構成されてもよい。この実施形態は、
図2を参照して以下にさらに記載される。レンズ22と24は、同様に直交する偏光で動作するように構成されてもよい。
【0044】
先に述べたように、いくつかの実施形態では、制御回路26は、屈折力を調整することに追加して、またはその代替として、瞳の位置に合わせて動的に、レンズ22と24の光軸をシフトする(すなわち、光学中心を位置決めする)ために、視線追跡装置30により示される視線方向を使用する。光軸を瞳でシフトすることにより、レンズの品質は、ユーザがレンズの端部の近傍を介して見ている場合は特に、改善することができる。
【0045】
しかし光軸の誤ったシフトは、粗末なユーザ体験もたらす結果となり得る。1つの実施形態では、制御回路26は検出された視線方向の変化に応答して光軸をシフトする場合に、事前設定の時間遅延を適用することによりこの問題を克服する。このように、レンズの光学中心は、それが最適な位置に到達するまで、目の動きに応答して徐々に移動する。ユーザに判らないくらい十分に遅いレンズ中心の緩やかな動きは、急なレンズシフトに比べて、ユーザにとってより自然な体験を生成することができる。レンズ22及び24の光学中心は、目の動きに応答して、徐々に又は瞬時に、同時にまたは前後してのいずれかで移動させることができる。
【0046】
(電気的に調整可能なレンズの詳細な特性)
図2は、本発明の実施形態による、電気的に調整可能なレンズ22の概略側面図である。レンズ24は、典型的には、同様の設計のものである。
図示の実施形態では、レンズ22は、複数の要素を含む複合レンズである:固定レンズ40は、典型的にはガラスまたはプラスチックから作られ、ベースラインの屈折力を提供し、その屈折力は2つの電気的に調整可能なレンズ42及び44によって動的に変更される。(この理由から、レンズ22自体は、電気的に調整可能な1つのレンズとみなすことができる。)代替的に、レンズ22は、単一の電気的に調整可能な要素から構成されてもよく、そして固定レンズ40は、いくつかの用途では必要とされないかもしれない。いくつかの実施形態では、レンズ22は、偏光子および/または偏光回転子のような偏光素子46を備え、それは以下で記載される機能を有する。
【0047】
電気的に調整可能なレンズ42と44は、一方で前章に記載の考察を考慮に入れながら、ユーザに観察される物体への焦点距離に応じてレンズ22の屈折力を調整する。追加的に又は代替的に、レンズ42,44の光軸48は、前章で同様に記載されたように、視線方向32の変化に応答してシフトされてもよい。レンズ42及び44は、直交する円筒軸を有する、電気的に調整可能な円筒型レンズを有してもよい。代替的に、レンズ42及び44は、
図3A−3Dに示すように、二次元位相変調プロファイルを生成し、それにより球面または非球面レンズ(またはそれらのフレネル等価物)をエミュレートするように構成されてもよい。これらの種類のレンズ構成の両方は、レンズを駆動する波形と共に、上記WO2014/049577(特許文献4)に詳細に記載されている。
【0048】
前述のように、レンズ42及び44がそれぞれ偏光依存性の電気光学層を含んでいるいくつかの実施形態では、2つのレンズは、互いに直交する偏光を屈折するように配向されている:これらのレンズの一つは、例えば、レンズ42は、X方向に偏光した光(
図2に示す絵でページの中の方を向く)で動作し、そしてY方向の偏光(このビューでは上向き)に影響を与えない。レンズ44は、Y方向に偏光した光で動作し、場合によっては、レンズ42と異なる焦点距離を有し、そしてX方向に偏光した光に影響を与えない。レンズ42と44を通過する非偏光の光は、したがって、両方の距離で集束し、およそ約半分の光が、レンズ42の焦点距離に応じて集束し、一方他の半分の光はレンズ44の焦点距離に応じて集束する。
【0049】
この解決策は、電子ディスプレイから発せられた光のような偏光した光を発する物体に対しては効果が無い可能性がある。この場合、光がレンズ42及び44の1つと同じ方向に偏光されていると、すべての光はそのレンズの焦点距離に従って集束する。
【0050】
この種の偏光依存性を避けるため、いくつかの実施形態では、偏光素子46は偏光回転子を有し、その偏光回転子は、インターセプトされた光の当初の偏光に拘わらず、レンズ42と44の電気光学層に入射する光がそれぞれの偏光のそれぞれにおいて成分を有することを保証するため、入射光をインターセプトし、入射光の偏光を回転させる。例えば、1つの実施形態では、偏光素子46は、典型的には、広い光帯域幅を持つ四分の一波長板を備える。四分の一波長板の軸は、レンズ42及び44の偏光軸に対して45°の角度で配向されている。それにより、四分の一波長板を通過する任意の直線偏光の光の偏光は、回転され、それにより、エネルギーはレンズの直交する偏光方向の間で均等に分割され、そして単に非偏光の場合のように、レンズ42と44の両方の焦点距離に集束される。眼鏡20(
図1)のレンズ22および24は、同じ方向または反対方向のいずれかの方向に偏光を回転させる、四分の一波長板をそれぞれ含んでいてもよい。
【0051】
代替的1実施形態では、偏光素子46は、波長依存の偏光回転子を形成する、透明な複屈折板を含む。波長λの関数としての複屈折率Δn(λ)及び厚さdを有する層は、以下の式によって与えられる軸間の相対位相遅れを有する波長依存偏光回転子を形成する:
【数1】
レンズ22における複屈折板は、X軸またはY軸(これらがレンズ42及び44の偏光軸であると仮定して)のいずれかに沿った偏光を有して複屈折板に入射する光の偏光を回転させるように配向されている。回転量は、波長λと膜厚dに依存する。複屈折板を出る光の強度は、複屈折板が十分に厚いかぎりは、任意のしかし非常に狭い範囲の波長にわたって平均した場合に、X軸偏光光とY軸偏光光との間で均等に分割される。この配置は、光の半分がレンズ42によってフォーカスされ、他の半分がレンズ44によってフォーカスされることを保証する。
【0052】
いくつかの実施形態では、偏光素子46はまた、偏光回転子とレンズ42との間に介在され、そしてレンズ42により集束された偏光成分を通過させるように配向された偏光子を有する。(この場合には、レンズ44を省略してもよく、あるいは、レンズ42と44は同じ偏光軸を有する円柱レンズであってもよい。)そうするとレンズ22は、その向きに関係なく、任意の偏光の光で動作する。前述の実施形態と同様に、偏光回転子(四分の一波長板または複屈折板のような)はレンズ42の偏光軸に対して45°の角度で配向されている。偏光子はその偏光軸がレンズ42の偏光軸に対して平行なように配向される。この構成は、任意の直線偏光(および非偏光)が、強度の半分がレンズ42を通過し、レンズの偏光に平行に偏光され、それによりレンズ42がその光を望み通りにフォーカスすることを保証する。
【0053】
図3A−3Dは、本発明の1実施形態による電気的に調整可能なレンズ42の詳細を示す図である。
図3Aは、レンズ42の絵画的図であり、一方
図3B及び
図3Cは、レンズ42内の電気光学層50のそれぞれ反対側にある透明基板52及び54を示す側面図である。
図3Dは、光学装置42の側面図であり、レンズ42のそれぞれ反対側にある基板52及び54上に配置される励起電極56および60の重ね合わせを示す。レンズ44は、同様の設計のものでよい。
【0054】
電気光学層50は、典型的には、上記PCT国際出願公開WO2014/049577(特許文献4)に記載されているように、液晶層からなる。上述したように、電気光学層50は、電極56および60によって印加される電圧波形に応答して、1つの偏光の方向にある光だけを屈折させ、一方で他の方向の偏光の光は、屈折することなくレンズ42を通過する。代替的に、電気光学層50は、偏光に依存しない、コレステリック液晶または他の電気光学材料から構成されてもよい。
【0055】
基板52と54上の電極56と60は、それぞれ、互いに直交する方向で、電気光学層50の活性領域の上に延在する透明導電材料の平行なストライプを含む。図中の電極56および60は、均一な形状及び間隔であるが、ストライプは、代替的に変化する寸法及び/又はピッチを有してもよい。
図3Dに示すように、電極56および60の重ね合わせは、電極60の水平方向のストライプと電極56の縦のストライプの重なりの領域により画定される、画素64の配列を形成する。
【0056】
制御回路58および62は、制御回路26または他のコントローラの制御下で、励起電極56及び60にそれぞれ制御電圧を印加する。上記WO2014/049577(特許文献4)に記載されるように、レンズ42内の制御回路は、同時にかつ独立して、1組の励起電極のそれぞれに(すべての電極を含んでもよい)印加される制御電圧を変更することができる。制御回路58及び62は一緒に、電気光学層50の両側の励起電極の組に印加される電圧を変更することができ、それにより電気光学層50の2次元位相変調プロファイルを変更する。
【0057】
励起電極56及び60に印加される制御電圧は、位相変調プロファイルによって決定されるようにレンズ42の焦点特性を調整する。制御回路58および62は、焦点距離を変更し、および/またはレンズの光軸をシフトするために制御電圧を変更することができる。
制御回路58および62によって電極56及び60の両端の間に印加される電圧パターンは、円対称の位相変調プロファイルを与えるように選択されてもよく、それにより、球面または非球面レンズをエミュレートしてもよい。代替的に、異なる電圧パターンが印加され、それによりレンズ42が、例えば、一つの軸または他の軸に沿ってより強い円筒成分を持つ、非点収差レンズとして機能してもよい。
【0058】
(分割された動的レンズ)
いくつかのケースでは、レンズ22及び24のような電子的に調整可能なレンズの領域を分割することが望ましい場合がある。例えば、いくつかのシナリオでは、眼鏡20は、レンズが分割され、レンズの一部がユーザの視力補正のため常に無限大に設定され、他の部分が動的に変化するように構成されてもよい。以下に記載される実施形態は、電子的に調整可能なレンズの領域の代替的な、空間分割をサポートする。これらの実施形態のレンズは、活性領域の全て(又は少なくとも一部)上におよぶ単一のレンズとして動作するか、あるいは、活性領域は、2つ以上の区域に分割され、各区域は、(焦点距離及び/又は光軸)のような異なるレンズ特性を実装することができる。レンズは、これらのモードの間で動的に切り替わるように作製することができる。
【0059】
図4は、本発明の1つの実施形態による、分割された電子的に調整可能なレンズで使用される、基板70上に形成される電極の概略正面図である。基板70およびその上に形成される電極は、レンズ42において、例えば、基板52と電極56の代わりに電圧波形を電気光学層50(
図3A−3D)に印加するために使用されてもよい。基板54上に形成された電極60は、
図3Cに示すままであってもよく、あるいは代替的に、
図4に示したものと同様の方法で分割されていてもよい。さらに代替的に、分割された円筒レンズを作製するために、電極60は、基板54上で単一の共通電極によって置換されてもよい(不図示)。
【0060】
基板70上の電極は、電気光学層の活性領域を横切るそれぞれの相互に平行な軸に沿って延びる、平行な導電性ストライプの配列からなる。各ストライプは、ストライプの軸のそれぞれの、相互に分断された部分の上に延在する、2つの区画76および78に分割されている。(
図5に示される動的方式のような代替方式では、各ストライプは3つまたはそれ以上の区画に分割されてもよい。)一般的に、必要条件ではないが、区画76は、
図4に示される図で、基板70の上端において導体に接続され、そしてその導体から制御され、一方区画78は、下端において導体に接続され、そしてその導体から制御される。
【0061】
区画76は、一緒に、レンズの領域72を横切って延び、そして領域72カバーし、一方区画78は、別の領域74を横切って延び、そして領域74をカバーする。制御回路26は、領域72内の区画に対して、領域74内の対応する区画に対するものとは異なる制御電圧波形を印加することができ、そしてそれにより、領域72と74に対応する、異なる焦点ゾーンを有する多焦点レンズとしてレンズを機能させる。しかし、所望であれば各ストライプ内の各区画76と対応する区画78に対して同じ波形が印加され、それにより両方の領域72及び74が同じ焦点特性を有してもよい。
【0062】
図5は、本発明の代替的な実施形態による、電気的に調整可能なレンズ内の基板80上に形成された電極区画82とスイッチ84を示す電気回路図である。各ストライプは、前の実施形態と同様に、二つの区画82のように少ない区画を有してもよい。しかし
図5に示す実施形態では、各ストライプはR1、R2、...、Rnとラベル付けされたn個の区画82に分割され、それらはG1、G2、...、Gn−1とラベル付けされた薄膜トランジスタのようなスイッチ84によって直列に接続される。制御線86は、ストライプの全てを横切る、スイッチ84の対応する行を作動させるために接続され、単一の制御線が全てのストライプにわたってそれぞれのスイッチGiに接続される。適切な制御線を作動させることによって、制御回路26は、このように、全てのストライプの中において、それぞれの区画をその近隣の区画から同時に結合しまたは分離することができる。
【0063】
良好な光学的品質を達成するために、区画82の間のギャップは、典型的には、区画それ自体の長さよりはるかに小さい。区画は全て、
図5に示す例のように、類似の長さであってもよく、または異なる区画は、それぞれのストライプ内及び異なるストライプ間の両方で異なる長さを持ってもよい。
【0064】
制御回路26は、典型的には、それぞれの導電性ストライプの1端または両端、例えば区画R1および場合によって区画Rnに対して制御電圧波形を印加するように接続されている。異なる区画に異なる、それぞれの制御電圧波形を印加するために、制御回路は、適切なスイッチ84を起動させ、そして、導電性ストライプのそれぞれの端に印加される制御電圧波形を変更することができる。
【0065】
例えば、スイッチGiの線に沿ってレンズ80を区画割りするため、制御回路は、k≠iの制御線86のすべてを、対応するスイッチGkをオンにする(閉じる)ように設定し、それにより隣接する区画82が電気的に接続される。同時に制御線iはスイッチGiをオフにする(開く)ように設定され、それにより区画Ri及びRi+1を区画割り線に沿って分断する。制御回路26は、第1のセットの焦点特性を実装するために選択された電圧波形を区画R1に印加する。これらの波形は、スイッチ84を通過し、そしてしたがって、各ストライプ内の区画82を通って、オープンスイッチGiに到達するまで、下方に伝播する。同様に、制御回路26は、異なる焦点特性を実現するように選択された他の波形を区画Rnに印加し、そしてこれら波形はスイッチGiにおける同じ分断線に至るまでスイッチ84と区画82を上方に向かって通過する。
【0066】
別の実施形態では、レンズ80は、区画割りされた動的レンズを実装するために使用され、そこでは、区画の1行あるいはそのような行のグループによって定義される、2つ以上のゾーンの各々が、異なる焦点特性(焦点距離および/または光軸)を実装するように設定され、制御回路は区画R1に接続される。区画R1...Rnに対応するゾーン1...nは、以下のステップを適用することにより焦点特性F...Fnを実装できる:
1)全てのスイッチ、Gk、k=1...n−1を「オン」にする。
2)焦点特性Fnを実現するために電極に電圧を印加する。
3)j=n−1から1に対し以下を繰り返す:
a)スイッチGjを「オフ」にする。
b)レンズに焦点特性Fjを実現するため電極に電圧を印加する。
【0067】
この方法を使用して、スイッチ84は1行ずつ一度にオフ(開放)にされうる。区画Rjの中の電極区画の電圧は、スイッチjの開放とスイッチJ−1の開放との間のインターバルに更新される。このインターバルの持続時間は最小限に抑えることが望ましいが、区画Rjへの電圧がその最終値に達し、そして、正しく更新されることを保証するのに十分なほど長くなければならない。
【0068】
各電極区画Rjに印加される電圧は、経時変化する:区画Rj+1... Rnが更新された場合、この電圧は、レンズのゾーンjに正しい焦点特性Fjを実装するのに必要な電圧と異なることがある。液晶は、それに印加される時間平均電圧によって影響されるので、これらの電圧変化は、ゾーンjの変調関数にノイズを追加しうる。このノイズは、区画Rj+1 ...Rnが更新されたときに印加された電圧を補償するように、各区画Rjが更新されたときにその電極に印加される電圧を変更し、それにより区画Rjへの時間平均電圧が所望の値を有することにより低減することができる。
【0069】
この方式の効率を高めるために、隣接する区画82が類似の駆動電圧を必要とする(従って、類似のレンズを実装する)場合、隣接する区画82は、これらの区画を繋ぐスイッチ84を閉じることによって同時に更新することができる。
【0070】
追加的または代替的に、制御回路26は、各ストライプ内の区画R1と区画Rnの両方に接続され、R1から下方へそしてRnから上方へ同時に上記と同様の伝播シーケンスを使用することができる。このようにして、レンズのすべてのセクションの電圧をより短時間で更新することができる。
【0071】
上記の実施形態は例示のために引用され、そして本発明は上記に特に示され、そして記載されたものに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は上記に記載された種々の特徴の組み合わせおよびサブ組み合わせを含み、そして上記の記載を読んだ当業者が想起する、従来技術に無いそれらの変化形および修飾を含む。