(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649905
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】溶湯用取鍋
(51)【国際特許分類】
B22D 41/02 20060101AFI20200210BHJP
B22D 41/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
B22D41/02 B
B22D41/00 C
B22D41/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-469(P2017-469)
(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公開番号】特開2018-108596(P2018-108596A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年7月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222875
【氏名又は名称】東洋電化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 竹清
(72)【発明者】
【氏名】山本 展也
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−022113(JP,U)
【文献】
特開平08−323463(JP,A)
【文献】
特開2016−137501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/02
B22D 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に溶湯を収容する取鍋本体と、前記取鍋本体の開口部を覆う蓋体を備え、
前記取鍋本体における前記開口部側の上端部が、分離可能であり、
前記取鍋本体の立設壁において、前記開口部側の上端の幅が1〜70mmの長さであり、
前記上端部の溶湯側の内側面が外側面に対して10〜30度の角度で傾斜しており、
前記蓋体が、前記取鍋本体の前記上端と当接するシール材を有し、
前記開口部側の上端の幅が、前記シール材の断面径よりも小さい
ことを特徴とする溶湯用取鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を溶融して得られる溶湯が貯留され、金属マグネシウムなどの金属ワイヤーを挿入して貯留される溶湯の処理を行うなどする容器である溶湯用取鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属を溶融して得られる溶湯を搬送又は成分調整処理するために、その溶湯を貯留する容器である取鍋が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1において、溶湯を内部に貯留するために上方に向かって開口する円筒容器状の溶湯用取鍋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−137501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の溶湯用取鍋において、取鍋用蓋と当接する立設壁の上端における内側と外側の幅が80〜100mmと厚みがあるため、溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けて金属マグネシウムなどの金属ワイヤーを溶湯に挿入して成分調整処理するときに、金属ワイヤーと溶湯との接触による激しい反応により溶湯が飛散することにより、僅かな隙間を伝って取鍋の立設壁の上端と取鍋用蓋の鍔部の下面との間に溶湯が付着することがあり、さらに長年使用することで飛散した溶湯が取鍋の立設壁の上端等に徐々に堆積してしまい、溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けると隙間が生じて溶湯が外部に漏れ出るおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、溶湯用取鍋に蓋体を取り付けて金属マグネシウムなどの金属ワイヤーを溶湯に挿入して成分調整処理するときに、溶湯と金属ワイヤーと溶湯との接触による激しい反応により溶湯が飛散しても、取鍋の立設壁の上端と蓋体の鍔部の下面との間に溶湯が付着することを低減し、さらには長年使用しても溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けたときに隙間が生じにくくして溶湯が外部に漏れ出ることを大幅に低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、内部に溶湯を収容する取鍋本体と、前記取鍋本体の開口部を覆う蓋体を備え、前記取鍋本体における前記開口部側の上端部が、分離可能であり、前記取鍋本体の立設壁において、前記開口部側の上端の幅が1〜70mmの長さであ
り、上端部の溶湯側の内側面が外側面に対して10〜30度の角度で傾斜しており、前記蓋体が、前記取鍋本体の前記上端と当接するシール材を有し、前記開口部側の上端の幅が、前記シール材の断面径よりも小さいことを特徴とする溶湯用取鍋である。
【発明の効果】
【0011】
前記〔1〕に記載の発明によれば、溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けて金属マグネシウムなどの金属ワイヤーを溶湯に挿入して成分調整処理するときに、金属ワイヤーと溶湯との接触による激しい反応により溶湯が飛散しても、取鍋の立設壁の上端と取鍋用蓋の鍔部の下面との間に溶湯が付着することを低減し、さらには長年使用しても溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けたときに隙間が生じにくくして溶湯が外部に漏れ出ることを大幅に低減することができる。また、空の取鍋本体に溶湯を入れる受湯時に、溶湯が跳ねて取鍋本体の上端に付着することを低減することもできる。
【0012】
前記〔
1〕に記載の発明によれば、さらに、取鍋の立設壁の上端に溶湯が飛散して堆積したり、その上端が欠けるなど破損したりしたとしても、取鍋本体における開口部側の上端部を新しい同等部材に取り換えることにより、長年使用しても溶湯用取鍋に取鍋用蓋を取り付けたときに隙間が生じず溶湯が外部に漏れ出ることを防止することができる。
【0013】
前記〔
1〕に記載の発明によれば、さらに、取鍋本体の上端がシール材に当接することにより、取鍋本体と蓋体を密着させて飛散した溶湯が取鍋の立設壁の上端に付着することを低減することができる。
【0014】
前記〔
1〕に記載の発明によれば、さらに、シール材が取鍋本体の上端を覆うことにより、飛散した溶湯が取鍋の立設壁の上端に付着することを防止することができ、さらに立上壁の上端がシール材に対して当接する圧力が大きくなり取鍋本体と蓋体との密着度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の溶湯用取鍋において、蓋体を取り除いた状態の平面図である。
【
図3】本発明の溶湯用取鍋におけるA−A線断面図である。
【
図4】本発明の溶湯用取鍋におけるα部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る溶湯用取鍋に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。また、説明中の上下方向とは、断面図で示された
図3における上下方向である。なお、数値範囲を示す表現は、上限と下限を含むものである。
【0017】
図1〜
図5に示すように、本発明の溶湯用取鍋は、内部に溶湯を収容する取鍋本体1と、取鍋本体1の上方に向かって開口している開口部13を覆う蓋体2を備えている。
【0018】
取鍋本体1は、上端部11と取鍋基部12からなっており、上方に開口して内部に溶湯を貯留する容器状の取鍋基部12の上側に、取鍋基部12の基部立設壁121から延設されるように上端部立設壁111を周壁とする環状の上端部11が固設されている。開口部13は、上端部11の開口と取鍋基部12の開口が一体となって形成されており、この開口部13から溶湯5が取鍋本体1に入れられる。上端部11と取鍋基部12は、上端部11から外側に張り出している板状の上端部固定用フランジ15と取鍋基部12から外側に張り出している板状の取鍋基部固定用フランジ16が、それらに穿設されている貫通孔が連通するように合わせてその貫通孔に螺子とボルトからなる固定具4を通して固定されることにより、一体化されている。また、上端部11と取鍋基部12の間に耐熱性等を有し円環状のガスケットGを配設して上端部11と取鍋基部12との密閉性を向上することもできる。なお、本実施形態において、取鍋本体1は、上端部11と取鍋基部12に分離可能となっているが、他の実施形態において、上端部11と取鍋基部12が分離できない連続した一体物とすることもできる。
【0019】
上端部11は、上述したように、取鍋基部12の基部立設壁121から延設されるように上端部立設壁111を周壁とする環状の部材であり、蓋体2の一部と当接する部材である。上端部11は、下側から上側の先端である上端14に向かって連続的に幅が薄くなる傾斜した形状を有しており、上端14において1〜70mmであることが好ましく、1.5〜50mmであることがさらに好ましく、2〜30mmであることが最も好ましい。上端14の幅がこの範囲であると、長期使用における耐久性を備えながらも作製することができるものであり、金属マグネシウムなどの金属ワイヤーを溶湯5に挿入して成分調整処理するときに、金属ワイヤーと溶湯5との接触による激しい反応により溶湯5が飛散しても、上端部11の上端部立設壁111の上端14と蓋体2の鍔部22の下面との間に溶湯5が付着することを低減し、さらには長年使用しても取鍋本体1に蓋体2を取り付けたときに隙間が生じにくくして溶湯5が外部に漏れ出ることを大幅に低減することができる。
【0020】
また、上端部11の溶湯5側の内側面が外側面に対して10〜30度の角度で傾斜しているため、飛散した溶湯5がその傾斜面に沿って貯留している溶湯5へ落下する。また、上端部11は、上端部11の上端14などの一部が欠けるなど破損したときに、新しい上端部11に取り換え、取鍋基部12については継続して使用することができるので、上端部11と取鍋基部12とが分離できない一体物となっているものに比べて、コストが抑えられるとともに長年使用しても取鍋本体1に蓋体2を取り付けたときに隙間が生じず溶湯5が外部に漏れ出ることを防止することができる。
【0021】
上端部11の上端部立設壁111は、外側に位置し板状の上端部外装部112と、内側に位置し飛散した溶湯5と当接する上端部耐火部113を有している。上端部外装部112は、金属などの強度と耐火性を備えた材料であることが好ましい。また、上端部耐火部113は、直接溶湯5と接触するために、耐火煉瓦、耐火断熱煉瓦など耐火性、耐熱性や耐腐食性などに優れたシリカ、ジルコニア、粘土、アルミナなどの無機化合物を主体とする材料であることが好ましい。
【0022】
また、上端部11の上下方向の高さは、取鍋本体1の上下方向の高さにおける5〜30%であることが好ましく、10〜20%であることがさらに好ましい。上端部11の上下方向の高さがこの範囲にあると、上端部11の上端14などの一部が欠けるなど破損したときに、上端部11を容易に取り換えることができ、さらに溶湯5が上端部11と取鍋基部12の接合部分に接触しないので漏洩などを防止することができる。
【0023】
上端部11の下側に、外側に向かって張り出すように設けられている板状の上端部固定用フランジ15が、等間隔に4個設けられているが、取鍋基部固定用フランジ16の個数に応じて、4個以外の複数個設けることができる。
【0024】
取鍋基部12は、上述したように、上方に開口して内部に溶湯を貯留する容器状の部材であり、取鍋本体1の主たる部分である。取鍋基部12は、外周に所定の厚みを有する基部立設壁121を備えており、その内側に溶湯5を貯留する。また、基部立設壁121の外側の側面には、取鍋基部12の内部と連通孔124を介して連通し溶湯5を外部へ排出する排出口125が略三角形状に突設されている。
【0025】
取鍋基部12の基部部立設壁121は、外側に位置し板状の基部外装部122と、内側に位置し溶湯5と当接する基部耐火部123を有している。基部外装部122は、金属などの強度と耐火性を備えた材料であることが好ましい。また、基部耐火部123は、直接溶湯5と接触するために、耐火煉瓦、耐火断熱煉瓦など耐火性、耐熱性や耐腐食性などに優れたシリカ、ジルコニア、粘土、アルミナなどの無機化合物を主体とする材料であることが好ましい。
【0026】
取鍋基部12の上側に、外側に向かって張り出すように設けられている板状の取鍋基部固定用フランジ16が、等間隔に4個設けられているが、上端部固定用フランジ15の個数に応じて、4個以外の複数個設けることができる。
【0027】
蓋体2は、取鍋本体1の開口部13を覆う部材であり、開口部13側に向かって空間Sを有する箱状の蓋体基部21と、その蓋体基部21の周縁に外側に向かって突設された鍔部22を備えている。蓋体基部21が内部に空間Sを有することにより、取鍋本体1内の
溶湯5に金属ワイヤーが添加されたときに激しく反応が起こり、急激に圧力が増えたとしても空間Sにある空気が緩衝して蓋体2を押し上げようとする力を緩和することができる。
【0028】
鍔部22の下面には、上方に向かって窪んだ円環状の溝部23が設けられている。溝部23は、取鍋本体1の上端14と同程度の径で設けられており、その溝部23を埋めるように応力により変形することができる柔軟性を有するシール材3が嵌合している。シール材3により、シール材3が取鍋本体1の上端14と密着しているので取鍋本体1と蓋体2の外部に噴出、漏洩することを防いでいる。なお、本実施形態において、鍔部22は四角形状としているが、五角形等の多角形状とすることもできるし、円形または楕円形状とすることもできる。
【0029】
蓋体2は、外側に位置し板状の蓋体外装部24と、内側に位置し溶湯5と当接し得る蓋体耐火部25を有している。蓋体外装部24は、金属などの強度と耐火性を備えた材料であることが好ましい。また、蓋体耐火部25は、直接溶湯5と接触し得るために、耐火煉瓦、耐火断熱煉瓦など耐火性、耐熱性や耐腐食性などに優れたシリカ、ジルコニア、粘土、アルミナなどの無機化合物を主体とする材料であることが好ましい。
【0030】
そして、金属ワイヤーを取鍋基部12内の溶湯5に添加させるために、蓋体基部21の上面に内部の空間Sと外部を連通し、略円筒形状の挿入口26が突設されている。なお、本実施形態において、挿入口26は二本設けられているが、他の実施形態において、1本又は3本以上の複数本とすることができる。
【0031】
シール材3は、蓋体2の外周から外側に向かって突設された鍔部22と、鍔部22の取鍋本体1側に設けられた溝部23に嵌合し柔軟性を有する部材である。上述したように、シール材3により、取鍋本体1の上端14と密着し取鍋本体1と蓋体2の外部に噴出、漏洩することを防ぐことができる。
図3に示すように、開口部13側の上端14の幅が、垂直方向に沿ったシール材3の断面径よりも小さくなっているので、上端14がシール材3に対して当接する圧力が大きくなり、取鍋本体1の上端部11と蓋体2の鍔部22との密着度を高め溶湯5の漏洩等を防ぐことができる。そして、シール材3は、溶湯5と接触しても融けないようなセラミックファイバーなど柔軟性を有しつつ、耐火性、耐熱性を有する素材を用いることが好ましい。なお、本実施形態においてシール材は、鍔部22に設けられた溝部23に設けられているが、他の実施形態において、取鍋本体1の上端14と対向する蓋部の下面に設けられていてもよい。さらに、本実施形態においてシール材3は円環状であるが、取鍋本体1の上端14の形状に応じて種々の形状とすることができ、さらに断面形状が円形であるが楕円形状、多角形状とすることもできる。断面形状が楕円形状や多角形状のときには、断面径として最大となる径を測定する。
【0032】
蓋体基部21の側面には内部の空間Sと外部を連通し、上方に開口し屈曲している排気口27を有している。排気口27により、金属ワイヤーを溶湯5に添加するときに金属ワイヤーと溶湯とが反応して生じる金属ワイヤー由来の蒸気などを外部に放出させて内圧を高め過ぎないようにすることができる。また、排気口27が屈曲していることにより、金属ワイヤーを溶湯5に添加するときに金属ワイヤーと溶湯5とが反応して溶湯5が飛散したとしても、排気口27の内部のどこかで衝突し一直線状に外部に噴出することがないので、溶湯5のロスを抑制することができ、作業者に対する安全性も高めることができる。本実施形態では、排気口27は略「く」の字状に屈曲しているが、他の実施形態において、L字状、J字状などの形状に屈曲させることができるし、また、飛散した溶湯5が噴出しない程度の長さを有する屈曲していない直線状とすることもできる。
【0033】
金属ワイヤーは、溶湯5の成分等を調整する線状の金属であり、例えば、その成分として、鉄鋼用に、脱酸のためにカルシウム及びシリコンを含有する材料、脱硫のためにカルシウム及びアルミニウムを含有する材料を用いることができる。そして、溶鋼成分を安定させるために、硫黄を含有する材料、溶鉱成分の微調整を行うために、炭素を含有する材料を用いることもできる。さらに、鋳鉄用に、脱硫又は球状化のために、マグネシウム、シリコン、鉄などを含有する材料を用いることもできる。なお、金属ワイヤーは、これらの材料に対して、薄い鋼板などの金属で被覆して用いられることが好ましい。金属ワイヤーは、目的に応じて、1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・取鍋本体
11・・・上端部
111・・・上端部立設壁
112・・・上端部外装部
113・・・上端部耐火部
12・・・取鍋基部
121・・・基部立設壁
122・・・基部外装部
123・・・基部耐火部
124・・・連通孔
125・・・排出口
13・・・開口部
14・・・上端
15・・・上端部固定用フランジ
16・・・取鍋基部固定用フランジ
2・・・蓋体
21・・・蓋体基部
22・・・鍔部
23・・・溝部
24・・・蓋体外装部
25・・・蓋体耐火部
26・・・挿入口
27・・・排気口
3・・・シール部
4・・・固定具
5・・・溶湯
S・・・空間
G・・・ガスケット