(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子部品、半導体材料や電池など用いられる導電材に、高耐食性と低接触抵抗を付与するため、従来、金(Au)めっきを施すことが行われてきたが、近年のAu価格の高騰により、実用的なコストに見合わなくなってきている。
【0003】
そこで、低コスト化を図るために、Auめっきの代替として、Ru、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、Au−Ru、Ru−パラジウム(Pd)、銀(Ag)−Pdめっきなどの白金族系めっきを使用することが検討されている。しかしながら、これら白金族系めっき液の殆どは、強酸性であり、また、白金族特有のカバーリングの弱さのために、下地が侵され易く、密着性が得られ難いなどの課題があった。
【0004】
そこで、これらの課題を解決するために、上記白金族めっきを施す前に、貴金属または貴金属合金、例えば、Au、Ag、Pdめっきの何れか1つを、0.1μm〜1.0μm程度施すことが行われていた。すなわち、従来のAuめっき層の代替えとしての白金族めっき層の下地層として、一定の厚みの貴金属または貴金属合金のめっき層が必要とされていた。
【0005】
しかしながら、これらの貴金属めっき処理はコスト増に繋がるため、貴金属めっき処理に代わる、より安価な処理方法が望まれていた。
【0006】
例えば、特開2009−102676号公報(特許文献1)には、金属基体の表層に、めっき層として白金族金属層が形成されている耐食導電被覆材料であって、第1の中間層として、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムからなる群より選択される金属の酸化物層と、第2の中間層として、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金からなる群より選択される白金族金属またはその酸化物を含む層とからなる、耐食導電被覆材料が開示されている。しかしながら、これらは、チタン、ジルコニウム層などを一方の中間層にもつ四層構造を基本とするものであり、本発明のものとは層構成を異にするものである。
【0007】
特開2015−137421号公報(特許文献2)には、導電性金属基体上の最表面に貴金属層を設けた電気接点用貴金属被覆材が開示されており、ここでは貴金属は、金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、オスミウム、オスミウム合金のうちのいずれか1層以上からなるものであり、また前記導電性金属基体と、貴金属銅との間に設けられた下地層として、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、亜鉛からなるものが1層以上あり、基体の材料として、銅、アルミニウム、鉄およびそれらの合金が使用されることが開示されている。しかしながら、ここで開示されている電極の層構成は、中間層を持たず、本発明のものとは明らかに異なるものである。実施例に示されているものも最表面の層として、金、白金、銀、ロジウム、パラジウムの層が開示されているが、ルテニウムについては何ら開示されていない。
【0008】
特開2001−155740号公報(特許文献3)には、アルミニウムまたはマグネシウムからなる電極金属の表面に、下地のNiめっき層と、表面のRh(ロジウム)めっき層と、Niめっき層とRhめっき層の間に、Pdめっき層およびSnNiめっき層を有する、燃料電池用電極が開示されている。しかしながら、ここで開示されている電極の層構成は、本発明のものとは明らかに異なるものであり、層の厚みも本発明のものよりも数倍以上、厚みを要するものである。また、Pdめっき層とSnNiめっき層も、それらの2層もしくは3層の組合せのものが実施例では開示されており、これらの点でも本発明のものとは、明らかに層構成を異にするものである。
【0009】
ルテニウムは、白金族金属の一つであり、従来から、電気接点部や耐摩耗性を必要とする機械部品などの表面被覆に用いられている。
【0010】
ルテニウムは、金、パラジウムやロジウムなどの他の白金族金属に比べて、比較的安価であるものの、硬度が非常に高く、融点も高いことから、他の白金族金属と単純に置き換えて使用することは難しく、ルテニウム層を最表面層とする積層被覆材を検討するのであれば、それに最適化した層構成を検討しなければならい。本発明者らの知る限り、導電材用途において、ルテニウムを最表面層とする被覆材であって、耐食性に優れ、接触抵抗が低いという優れた特性を有するものは知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
積層めっき被覆材
本発明による積層めっき被覆材(第1の態様)は、前記したように、非導電性基材の最表面に、ルテニウム(Ru)層またはルテニウム合金層が設けられた積層めっき被覆材であって、
非導電性基材と、ルテニウム層またはルテニウム合金層との間に、
下地層としての、ニッケル(Ni)層と、
その下地層の上に中間層としての、非貴金属層と
を有することを特徴とする。
【0028】
ここで、積層めっき被覆材は、非導電性基材上に、下から、下地層、中間層、最表面層の三層構造からなる積層構造を有するものである。すなわち、本発明の積層めっき被覆材は、非導電性基材上に、下地層であるニッケル層、その下地層上に、中間層として非貴金属のめっき皮膜が形成され、その中間層上に、表面層であるRuまたはRu合金めっき皮膜が形成されてなる。
従って、本発明の積層めっき被覆材は、下地層であるニッケル層をニッケルめっきにより形成し、次いで、中間層である非貴金属層を、非貴金属めっきにより形成し、さらにその上に最表面層としてのルテニウム層またはルテニウム合金層を、ルテニウムめっきまたはルテニウム合金めっきにより形成することにより、得ることできる。
【0029】
本発明における下地層、中間層および最表面層はいずれも、例えば、スパッタ法、蒸着法、湿式めっき法など慣用の方法を適宜用いて形成することができるが、作成の容易さや、被覆厚の制御の容易性などの観点から、湿式めっき法を用いてめっき被膜を形成することが好ましく、中でも電気めっき法を用いて形成することがより好ましい。
【0030】
従って、下地層であるニッケル層はニッケルめっき層と、中間層である非貴金属層は非貴金属めっき層と、さらに最表面層であるルテニウム層またはルテニウム合金層はそれぞれルテニウムめっき層またはルテニウム合金めっき層と言い換えることが出来る。
【0031】
<ルテニウム層またはルテニウム合金層(最表面層)>
本発明の積層めっき被覆材の最表面層となるルテニウム層またはルテニウム合金層は、典型的には、電気めっき処理により形成させる。
【0032】
本発明において、ルテニウムめっき処理に使用できるルテニウムめっき液は、本発明の非貴金属層の上にルテニウム層またはルテニウム合金層を形成できるものであれば、特に制限はない。典型的な例を挙げれば、ルテニウムめっき液には、ルテニウム化合物に加えて、電導性電解質など通常の白金族金属めっき液が含むことがある他の成分、界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、分散剤等の任意成分をさらに含んでいても良い。
【0033】
ここで使用可能なルテニウム化合物としては、水性であるめっき液に対して可溶性であって、かつ、めっき液中にルテニウムイオンを供給することができるものであれば特に制限はないが、例えば、硫酸ルテニウム、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、スルファミン酸ルテニウムなどを好適例として挙げることができる。
【0034】
ルテニウムめっき液において使用可能な電導性電解質としては、例えば、スルファミン酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、しゅう酸塩、酒石酸塩、水酸化物、ホウ酸、ホウ酸塩、および炭酸塩からなる群より選択される1種以上のものが挙げられる。
【0035】
ルテニウムめっき液において、ルテニウム化合物の濃度は、例えば、ルテニウム量換算で1〜50g/Lに設定することができる。
【0036】
最表面層がルテニウム合金層である場合には、ルテニウム合金めっき液を使用して、ルテニウム合金層を形成する。
ここで、ルテニウム合金めっきは、ルテニウムと、ニッケル、コバルト、金、銀、銅、鉄、亜鉛、スズ、白金、イリジウム、インジウム、鉄、パラジウムからなる群より選択される金属との合金めっきであるのがよい。好ましくはこのような金属は、パラジウムである。
【0037】
本発明の好ましい態様では、ルテニウムめっき液またはルテニウム合金めっき液を使用して、めっき処理によりめっき被膜を形成してルテニウム層またはルテニウム合金層を形成するが、ここで行うめっき処理については、特に制限はなく、慣用のめっき処理方法および条件を必要に応じて適用することによって、めっき処理を実施ことができる。
【0038】
例えば、めっき液のpHを1〜5の範囲内に調整する。まためっき液の温度は例えば30〜70℃の範囲内に調整し、めっき処理を行うことができる。
また、めっき処理における陰極電流密度は、例えば、0.2〜50A/dm
2に設定することができる。形成されるめっき層の厚みは、必要であれば、適用される電流密度およびめっき時間等により適宜変更することができる。
【0039】
ルテニウム層またはルテニウム合金層の厚みは、特に限定されないが、通常は、0.01〜1μmの範囲であり、ルテニウムが高硬度でかつ高融点であるという特徴を利用して、より薄い範囲が好ましい範囲として上げることが出来る。従って、例えば、ルテニウム層またはルテニウム合金層の厚みは、0.5μm以下であることができ、好ましくは、0.1μmより薄くしておいてもよく、さらに好ましくは0.08μmより薄くしておいてもよい。前記したようにルテニウムには高硬度でかつ高融点であるという特徴があるため、本発明では、ロジウムなどの他の白金族金属の場合に比べて、機械的摩耗や発熱に対して強い特性を維持しつつ、より一層薄くすることができる。
【0040】
本発明においてはルテニウムを使用することを特徴としている。ルテニウムは、例えば硬くて高融点材料で知られているロジウムや、金などよりも、更に硬く高融点な金属であることから、本発明により、より耐熱性、耐食性に優れためっき皮膜を得ることが可能である。また、ルテニウムの貴金属価格は、金や、ロジウムを含む他の白金族金属に比べて安価であることから、本発明でのルテニウムの使用は、製品の低コスト化に有益である。
【0041】
<非貴金属層(中間層)>
本発明の積層めっき被覆材において、非貴金属層は、下地層と最表面層との中間に位置し、非貴金属により構成され、典型的には、電気めっき処理により形成させる。
【0042】
ここで、非貴金属は、従来、Auめっきの代替えとして検討されていた白金族金属層の下層に使用し貴金属層で用いる貴金属とは異なるものであって、典型的には、Sn、Sn合金、またはNi合金からなる群より選択される。従って、本発明の積層めっき被覆材における中間層は、Sn、Sn合金、またはNi合金からなる層であることが好ましく、より好ましくは、Sn合金、Ni合金からなる層である。
【0043】
一般的なルテニウムめっき液およびルテニウム合金めっき液は強酸性であるために、AlやCu系の基材に直接めっきを施すと基材そのものが侵され易い。本発明の中間層は、それを抑制するためにルテニウムめっき層の下に層を設けたものであるが、SnやNiなどの単金属の皮膜よりも、耐食性に優れる合金皮膜がより望ましい。
【0044】
前記したSn合金としては、SnNi、SnCo、SnCu、SnPd、およびSnAgからなる群より選択されるものであることが好ましい。これらは耐食性に優れたものである。Sn合金としては、より好ましくは、SnNi、SnCu、SnPd、SnAgからなる群より選択されるものであり、さらに好ましくは、SnNiである。
【0045】
また前記したNi合金としては、NiW、またはNiWPであり、より好ましくは、NiWPである。
【0046】
前記したSn合金およびNi合金で形成されうる合金被膜組成としては、例えば、下記の範囲のものが望ましいものとして挙げられる。
・SnNi合金: Sn 60〜75wt%(Ni25〜40wt%)
・SnCo合金: Sn 70〜85wt%(Co15〜30wt%)
・SnAg合金: Sn 96.5wt%(Ag3.5wt%)
・SnCu合金: Sn 35〜45wt%(Cu15〜30wt%)
・NiW合金: Ni 75〜55wt%(W25〜45wt%)
・NiWP合金: Ni 78.5〜60wt%(W20〜35wt%、P1.5〜5wt%)
【0047】
本発明において、非貴金属層(中間層)の形成に使用できる非貴金属めっき液は、本発明の下地層(ニッケル層)の上に非貴金属層を形成できるものであれば、特に制限はない。典型的な例を挙げれば、めっき液には、スズ化合物、ニッケル化合物に加えて、電導性電解質などの他の成分、錯化剤、界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、分散剤等の任意成分をさらに含んでいても良い。
【0048】
ここで使用可能なスズ化合物および/またはニッケル化合物としては、水性であるめっき液に対して可溶性であって、かつ、めっき液中にスズイオンやニッケルイオンを供給することができる化合物や可溶性塩であれば特に制限はなく、スズやニッケルの例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫化物、硝酸塩、亜硝酸塩、および亜硫酸塩を好適例として挙げることができる。
【0049】
非貴金属めっき液において使用可能な電導性電解質としては、例えば、スルファミン酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、しゅう酸塩、酒石酸塩、水酸化物、ホウ酸、ホウ酸塩、および炭酸塩からなる群より選択される1種以上のものが挙げられる。
【0050】
錯化剤としては、クエン酸、クエン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、グルコン酸、グルコン酸塩、グリシンからなる群より選択される1種以上のものが挙げられる。
【0051】
本発明の好ましい態様では、非貴金属めっき液を使用して、めっき処理によりめっき被膜を形成して非貴金属層を形成するが、ここで行うめっき処理については、特に制限はなく、慣用のめっき処理方法および条件を必要に応じて適用することによって、めっき処理を実施ことができる。
【0052】
例えば、めっき液のpHを1〜5の範囲内に調整する。まためっき液の温度は例えば30〜70℃の範囲内に調整し、めっき処理を行うことができる。
また、めっき処理における陰極電流密度は、例えば、0.2〜50A/dm
2に設定することができる。形成されるめっき層の厚みは、必要であれば、適用される電流密度およびめっき時間等により適宜変更することができる。
【0053】
非貴金属層の厚みは、特に制限はされないが、通常は、0.05〜3μmの範囲であり、好ましくは、0.05〜1μmの範囲であり、より好ましくは、0.05〜0.8μmの範囲であり、さらに好ましくは、0.05〜0.5μmの範囲である。
【0054】
本発明では最表面層としてルテニウムまたはルテニウム合金による層を使用しており、ルテニウムは高融点、高沸点、高硬度な材料で、通常、緻密な被膜が得られることから、このことが、他の白金族金属を表面層として使用する場合に比べて、中間層をより薄くするに成功した一因と考えられる。ただし、前記説明は、考察の一例であり、本発明を拘束するものではない。
【0055】
<ニッケル層(下地層)>
本発明の積層めっき被覆材における下地層は、非導電性基体の上に形成される。好ましくは下地層は、導電処理された非導電性基材の上に形成される。本発明においては、下地層としては、基材成分の拡散を防止する事ができ、耐熱性を付与することのできるものとして、ニッケル層が使用される。
【0056】
本発明において、ニッケル層(下地層)の形成に使用できるニッケルめっき液は、本発明において非導電性基材の上に下地層を形成できるものであれば、特に制限はない。典型的な例を挙げれば、めっき液には、ニッケル化合物に加えて、電導性電解質などの他の成分、界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、分散剤等の任意成分をさらに含んでいても良い。
【0057】
ここで使用可能なニッケル化合物としては、水性であるめっき液に対して可溶性であって、かつ、めっき液中にニッケルイオンを供給することができる化合物や可溶性塩であれば特に制限はなく、ニッケルの例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫化物、硝酸塩、亜硝酸塩、および亜硫酸塩を好適例として挙げることができる。
【0058】
ニッケルめっき液において使用可能な電導性電解質としては、例えば、スルファミン酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、しゅう酸塩、酒石酸塩、水酸化物、ホウ酸、ホウ酸塩、および炭酸塩からなる群より選択される1種以上のものが挙げられる。
【0059】
本発明の好ましい態様では、ニッケルめっき液を使用して、めっき処理によりめっき被膜を形成してニッケル層を形成するが、ここで行うめっき処理については、特に制限はなく、慣用のめっき処理方法および条件を必要に応じて適用することによって、めっき処理を実施ことができる。
【0060】
例えば、めっき液のpHを1〜5の範囲内に調整する。まためっき液の温度は例えば30〜70℃の範囲内に調整し、めっき処理を行うことができる。
また、めっき処理における陰極電流密度は、例えば、0.2〜50A/dm
2に設定することができる。形成されるめっき層の厚みは、必要であれば、適用される電流密度およびめっき時間等により適宜変更することができる。
【0061】
ニッケル層の厚みは、特に制限はされないが、基体成分の拡散を防止でき、耐熱性を付与することのできる範囲であることが望ましく、通常は、1〜10μmの範囲であり、好ましくは、1〜8μmの範囲であり、より好ましくは、1〜5μmの範囲であり、さらに好ましくは、2〜5μmの範囲である。
【0062】
<非導電性基材>
本発明に用いる非導電性基材は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂材料またはセラミック材料などが挙げられる。具体的には、例えば、樹脂材料としては、ポリアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)やポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリスルフォン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(PA)、ポリアミド(PA)などが挙げられる。また、セラミック材料としては、アルミナや安定化ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0063】
非導電性基材の厚さには特に制限はないが、例えば、0.05〜20mmであり、好ましくは、0.1〜5.0mmである。
【0064】
本発明の好ましい態様によれば、非導電性基材は、下地層と接する表面が導電処理されてなる。すなわち、本発明において、非導電性基材における下地層と接する表面には、導電処理による導電処理面を有することが好ましい。非導電性基材の表面を導電処理することで、下地層を非導電性基材表面に形成し易くなる。ただし、下地層を非導電性基材表面上に形成する上で、非導電性基材表面を導電処理することなく形成することができるのであれば、必ずしも導電処理をする必要はない。
【0065】
本発明において、非導電性基材表面に導電性を付与する導電処理を施す場合には、その処理方法は特に限定されるものではないが、その方法の例としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、無電解めっき法、導電性塗料による塗装、導電性インクやペーストによる法、導電性金属箔の貼付などが挙げられる。
【0066】
前記導電処理により形成された導電処理面の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ステンレス合金、パラジウム、コバルト、金等が挙げられる。
【0067】
導電処理方法として金属箔を貼付する方法による場合、使用する金属箔としては、例えば、市販の銅や銅合金箔、ニッケルやニッケル合金箔、アルミニウムやアルミニウム合金泊、ステンレスやステンレス合金箔、パラジウム箔や金箔などを用いることが出来る。
【0068】
また、導電処理方法として無電解めっき法を使用する場合には、例えば、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解パラジウムめっき、無電解金めっき、無電解コバルトめっきなどを用いることができる。
【0069】
導電処理方法として、無電解ニッケルめっきを使用する場合を例にさらに具体的に説明する。
ここで使用可能な無電解ニッケルめっき液は、本発明において非導電性基材の上に導電処理面を形成できるものであれば、特に制限はない。したがって、該めっき液には、導電処理面を形成できるのであれば、必要に応じて、ニッケル化合物に加えて、還元剤などの他の成分、錯化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定剤等の任意成分をさらに含んでいても良い。
【0070】
またここで使用可能なニッケル化合物としては、無電解ニッケルめっき浴に通常使用されるものを適宜用いることができる。ニッケル塩の具体例としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、クエン酸ニッケルなどを挙げることができる。
【0071】
無電解ニッケルめっき液における還元剤としては、例えば次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、DMAB(ジメチルアミノボラン)、ヒドラジン一水和物、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンなどのヒドラジン化合物が挙げられる。
【0072】
無電解ニッケルめっき液における錯化剤としては、乳酸、コハク酸、酒石酸、りんご酸、プロピオン酸、グリシン、グリコール酸、クエン酸、酢酸とそれらの塩などが挙げられる。
【0073】
さらに、無電解ニッケルめっき浴には、上記以外にもpH緩衝剤や界面活性剤のような成分を含んでも良い。また、硫黄系安定剤や重金属安定剤を適宜含んでも良い。
【0074】
無電解ニッケルによる導電処理面の厚みは、特に制限はされないが、通常は、0.1〜10μmの範囲であり、好ましくは、0.5〜8μmの範囲であり、より好ましくは、1〜5μmの範囲であり、さらに好ましくは、1〜3μmの範囲である。
【0075】
導電処理面に無電解ニッケルなどを用いた場合には、必ずしも下地層(ニッケル層)は必要なく、省略することも可能である。したがって、本発明の別の好ましい態様によれば、前記した本発明の積層めっき被覆材(第1の態様)において、下地層の代わりに、非導電性基材の表面が導電処理されて形成された導電処理面を有する、積層めっき被覆材が提供できる。
【0076】
すなわち、本発明の別の態様として、下記の積層めっき被覆材(本発明の第2の態様)が提供できる:
非導電性基材の最表面に、ルテニウム(Ru)層またはルテニウム合金層が設けられた積層めっき被覆材であって、
非導電性基材と、ルテニウム層またはルテニウム合金層との間に、
中間層としての、非貴金属層
を有し、かつ
非導電性基材が中間層と接する表面が導電処理されてなる、積層めっき被覆材。
【0077】
すなわち、この本発明の別の態様は、非導電性基材と、下地層と、中間層と、ルテニウム(Ru)層またはルテニウム合金層とを有する本発明の積層めっき被覆材において、下地層の代わりに、導電処理面を有するものであるといえる。この本発明の別の態様は、下地層の代わりに導電処理面を有すること以外は、上記した非導電性基材と、下地層と、中間層と、ルテニウム(Ru)層またはルテニウム合金層とを有する本発明の積層めっき被覆材と同様の構成をとることができる。
【0078】
積層めっき被覆材の製造方法
本発明による積層めっき被覆材の製造方法は、前記したように、
非導電性基材の表面上に、
Niめっきにより、下地層を形成させ、
下地層の上に、非貴金属めっきにより、中間層を形成させ、
中間層の上に、ルテニウムめっきまたはルテニウム合金めっきにより、最表面層を形成させる工程を含む。好ましくは、前記方法において、非導電性基材の表面が導電処理した後、下地層を形成させることを含む。
【0079】
本発明の別の態様によれば、前記した本発明の方法において、下地層を形成させる代わりに、非導電性基材の表面を導電処理して導電処理面を形成させることができる。これにより前述した本発明の第2の態様の被覆材を製造することができる。
【0080】
本発明による方法の典型的な工程は、例えば、基材が非導電性の樹脂材料である場合には、まず、脱脂処理を非導電性基材の表面に施し、エッチング処理、酸洗処理を行い、
ついで、触媒付与処理と無電解Niを施し、電解脱脂処理を施した上で、酸洗浄を行い、その上で、上記のように、Niめっきにより下地層を形成させ、次いで、下地層の上に、非貴金属めっきにより中間層を形成させ、さらに、中間層の上に、ルテニウムめっきまたはルテニウム合金めっきにより、最表面層を形成させる。
【0081】
本発明におけるルテニウム層またはルテニウム合金層(最表面層)は、(必要に応じて導電処理した)非導電性基材上の少なくともルテニウム皮膜の特性を必要とする部分(例えば、耐食性、低接触抵抗性の確保などを目的として使用される箇所)の表面に形成されていればよく、ルテニウム皮膜の特性を必ずしも必要としない他の部分においては、ルテニウム層またはルテニウム合金層を設ける必要はない。このため、例えば、電気めっき法であれば、片面のみのめっきや、ストライプめっき、スポットめっきなどの部分めっきで形成されていても良い。
【0082】
本発明による積層めっき被覆材は、導電性であって、耐食性に優れ、接触抵抗が低いことから、コネクタ、摺動接点、タクトスイッチ、シートスイッチ、摺動接点などの電気的接続を必要とする電気接点に適用することができ、また、基材成分の拡散を抑制できるため、例えば、LED、燃料電池用電極、燃料電池用集電板、プリント配線板などに適用することができ、さらに、さらに、より耐食性が求められる自動車向け半導体やパワー半導体などにも適用することが出来る。
【実施例】
【0083】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
以下に示す[1]〜[3]の試験を行った。
【0085】
[1] 試験用皮膜の作成と外観の観察
(試験片1〜9の作成)
20mm×25mmのCu板に、
図4に示した試験片1および試験片2に示す皮膜構成の試験片を作成した。試験片2は、試験片1におけるSnNiめっき層をNiWめっき層にしたものであり、試験片1と同様の手順にて作成した。
また、下地層にAuめっき処理を施した試験片を、試験片3として作製した。
【0086】
具体的には、Cu板へのめっき皮膜の作成は、
図6に示した手順に従って行った。なお、手順の各工程の間では、水洗処理を行った。
【0087】
20mm×25mmの樹脂(ABS(ポリアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン))板に、
図4および
図5に示した試験片4および試験片5に示す皮膜構成の試験片を作成した。試験片5は、試験片4におけるSnNiめっき層をNiWめっき層にしたものであり、試験片2と同様の手順にて作製した。
【0088】
試験片6および試験片7は、試験片4および試験片5の皮膜構成から「下地層」(ニッケル層)を省略したものであり、それ以外は試験片4および試験片5と同様の手順にて作製した。
【0089】
具体的には、ABS板へのめっき皮膜の作成は、
図6および
図7に示した手順に従って行った。なお、手順の各工程の間では、水洗処理を行った。
【0090】
銅箔が貼られた20mm×25mmのABS板に、
図5に示した試験片8および試験片9に示す皮膜構成の試験片を作成した。試験片9は、試験片8におけるSnNiめっき層をNiWめっき層にしたものであり、試験片8と同様の手順にて作製した。
【0091】
試験片8および試験片9の作成手順は、
図7に示したよう試験片1及び試験片2と同様の手順にて作製した。
【0092】
ここで、各めっき条件と浴組成は、下記の表1の通りとした。
【0093】
【表1】
【0094】
各めっき処理は、各めっき厚がそれぞれ下記の膜厚になるように行った。
無電解Ni:3μm
Ni: 3μm
SnNi: 0.1μm
Ru: 0.02μm
NiW: 0.1μm
Au: 0.02μm
【0095】
以上のようにして、試験片1(参考例)、試験片2(参考例)、および試験片3(比較例)、試験片4(本発明)、試験片5(本発明)、試験片6(本発明)、試験片7(本発明)を得た。
【0096】
(試験片1〜9の外観観察)
作成された試験片1〜9の外観を目視で観察した。
【0097】
Ru/Niのみからなる層の場合には、通常、良質なRu被膜外観を得るのは難しいところ、試験片1〜9はいずれも、クラックやピンホールの無い良質なRu皮膜外観を有するものであった。
【0098】
従って、試験片1および試験片2は、Auめっきを用いる従来の方法によるもの(試験片3)と同等の皮膜外観を得ることができたことから、Auめっきを削減でき低コスト化が可能であることが確認できた。
【0099】
非導電性の樹脂基材を用いた試験片4、試験片5、試験片6及び試験片7は、導電性金属基材を用いる従来の方法によるもの(試験片1,試験片2,試験片3)と同等の皮膜外観を得ることができたことから、本発明により、軽量化、低コスト化が可能であることが確認できた。
【0100】
[2] 耐食性試験(硝酸ばっ気試験)
前記[1]にて作成した試験片1、試験片2、および試験片4〜9について、JIS−H8620附属書1に従って、硝酸ばっ気試験を行った。
【0101】
まず、各試験片の汚れをエタノールで除去して乾燥させた後、容積2Lのデシケーターの底部に5mlの硝酸を入れ、磁製板の上に試験片を載せて蓋をして、約23℃で1時間放置した。
【0102】
次いで、試験片を取り出し、静かに水洗して乾燥させた後、試験片の表面の皮膜を、デジタルマイクロスコープにて観察し、以下の基準にて評価した。
【0103】
<評価基準>
A:めっき皮膜に、膨れや剥がれが無い。
B:めっき皮膜に、僅かな膨れや剥がれを有する。
C:めっき皮膜に、著しい膨れや剥がれを有する。
【0104】
<評価結果>
評価の結果は下記の表のとおりであった。
【0105】
【表2】
【0106】
したがって、試験片1および試験片2と同様に、試験片4〜9のいずれについても、硝酸ばっ気試験後であっても、膨れや剥がれ等の無い良質な皮膜となったことが確認できた。
【0107】
[3] 接触抵抗測定試験
前記[1]にて作成した試験片1、試験片2、および試験片4〜9について、電気接点シミュレーター(株式会社山崎精機研究所製、CRS−113−AU型)を用いて、試験片作成直後において、接触抵抗を測定した。
【0108】
また、試験片の作成直後に加えて、各試験片を、高温高湿試験機に入れて、150℃、85%RHの環境下において352時間保持した後に、各試験片の接触抵抗の測定も行った。
【0109】
測定条件は、印加電流10mA、解放電圧20mA以下、荷重0.05N、走査速度1mm/minとし、4端子法にて測定を行った。
【0110】
結果は下記のとおりであった。
【0111】
試験片1:
試験片作製直後の接触抵抗7.23mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は10.26mΩとなり、抵抗値の上昇を142%程度に抑制することが出来た。
【0112】
試験片2:
試験片作製直後の接触抵抗7.62mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は11.53mΩとなり、抵抗値の上昇を151%程度に抑制することが出来た。
【0113】
試験片4:
試験片作製直後の接触抵抗7.37mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は10.91mΩとなり、抵抗値の上昇を148%程度に抑制することが出来た。
【0114】
試験片5:
試験片作製直後の接触抵抗7.55mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は11.87mΩとなり、抵抗値の上昇を157%程度に抑制することが出来た。
【0115】
試験片6:
試験片作製直後の接触抵抗7.51mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は11.11mΩとなり、抵抗値の上昇を148%程度に抑制することが出来た。
【0116】
試験片7:
試験片作製直後の接触抵抗7.72mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は12.02mΩとなり、抵抗値の上昇を156%程度に抑制することが出来た。
【0117】
試験片8:
試験片作製直後の接触抵抗7.03mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は10.32mΩとなり、抵抗値の上昇を147%程度に抑制することが出来た。
【0118】
試験片9:
試験片作製直後の接触抵抗7.06mΩに対し、150℃、85%RHの環境下で352時間保持後の接触抵抗は11.63mΩとなり、抵抗値の上昇を165%程度に抑制することが出来た。
【0119】
以上の[1]〜[3]の試験結果から、本発明によれば、非導電性基材に対し、高価なAuを用いること無く、低コストで耐食性に優れ、且つ接触抵抗劣化の少ない、金属基材を用いたものよりも軽量なめっき被覆材を得ることができることが確認できた。