(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649918
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】パイル織物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 27/00 20060101AFI20200210BHJP
D03D 27/06 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
D03D27/00 E
D03D27/06
D03D27/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-125627(P2017-125627)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-7107(P2019-7107A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】517052781
【氏名又は名称】ソンウォルビナジェイエスシー
【氏名又は名称原語表記】SONGWOL VINA JSC.
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】パク ビョンデ
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンファン
(72)【発明者】
【氏名】越智 次男
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭33−005174(JP,Y1)
【文献】
実公昭30−003973(JP,Y1)
【文献】
特開2010−065352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定本数の緯糸を挿入する毎に、表裏の少なくとも何れか一面にパイル出しをするパイル組織が、複数積層状態に接結してなるパイル織物であって、
前記パイル組織は、外面に突出する外面パイル部及び層間に突出する層間パイル部を形成するパイル経糸を複数備え、
前記層間パイル部は、前記複数のパイル組織の前記緯糸と交錯する組織状態を有し、
一の前記パイル組織において、前記外面パイル部の形成に用いられている前記緯糸に対して、当該外面パイル部として組織されている一又は二以上の前記パイル経糸と異なる他の前記パイル経糸が、前記層間パイル部として組織され、
一の前記パイル組織における前記層間パイル部の形成に用いられている前記緯糸に対して、他の前記パイル組織における前記層間パイル部が、当該一の前記パイル組織における前記層間パイル部と、同一の浮沈状態で組織されていることを特徴とする、パイル織物。
【請求項2】
所定本数の緯糸を挿入する毎に、表裏の少なくとも何れか一面にパイル出しをするパイル組織が、複数積層状態に結合してなる多重パイル織物の製造方法であって、
前記パイル組織が有する複数のパイル経糸により、外面に突出する外パイル部と、層間に突出する層間パイル部と、を形成し、
前記層間パイル部を、前記複数のパイル組織の前記緯糸に交錯させることにより組織し、
前記外面パイル部の形成に用いられている前記緯糸に対して、当該外面パイル部として組織されている一又は二以上の前記パイル経糸と異なる他の前記パイル経糸を、前記層間パイル部として組織し、
一の前記パイル組織における前記層間パイル部の形成に用いられている前記緯糸に対して、他の前記パイル組織における前記層間パイル部を、当該一の前記パイル組織における前記層間パイル部と、同一の浮沈状態で組織することを特徴とする、パイル織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル織物及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
パイル織物とは、表面に突出する輪奈(ループ)状のパイルを複数有するパイル層と、パイル層を保持するベースの生地であるグランド層により形成される織物であり、柔軟性や肌触り、通気性、吸水性等に優れている。
このため、パイル織物は、従来から様々な場面で使用されており、例えば、バスタオルやスポーツタオル、フェイスタオル等、サイズによって多種多様に使い分けられてきた。
【0003】
また、パイル織物は、パイル層を形成するパイル経糸及びグランド層を形成する地経糸と、緯糸とで組織を作り、テリーモーションと呼ばれる表面にパイルを突出させるための特有の工程を経て製織される。
【0004】
従来から、上記したパイル経糸を用いた様々な織物が提案されている。
【0005】
特許文献1には、パイル層及びグランド層を備えた第1両面パイルタオル地と第2両面パイルタオル地を結合経糸により接結することで、積層状態に接結されて製織される多重織物が記載されている。
このような構造により、リバーシブル使用においても表裏から紋様が正像として識別することが可能な多重織物が製織できる。
【0006】
特許文献2には、中間にグランド層を、グランド層の上下にパイル層を備えており、パイル層の経糸を任意に上下させることで製織される多重織物が記載されている。
このような構造により、任意の位置で任意の層を表出させることができ、任意の柄を任意の色でカラフルに織ることが可能な多重織物が製織できる。
【0007】
特許文献3には、ガーゼ緯糸とガーゼ経糸の平織組織からなる表布および裏布と、この表裏布間にあって、地緯糸と地経糸の平織組織からなる対向一対の基布間に、パイル経糸を所定の配列で架け渡して地緯糸に交絡させてなる立体中布を備えた、多重織物が記載されている。
このように、基布間をジグザグに渡り結合する、パイル経糸からなる立体構造の中布を備えることで、嵩高になり、保温性や柔軟性、通気性に優れた多重織物が製織できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4959654号
【特許文献2】特開2007−303008号公報
【特許文献3】特許第4898876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の多重織物は、2枚の両面パイルタオル地を1本の接結糸で接結しているものである。また、各両面パイルタオル地の裏面のパイル部が、層間に存在していることから、各層が密着できず、内部に隙間が生まれる。これにより、層間のずれが生じやすく、摩擦等の外力に対する堅牢性に乏しい。
【0010】
また、特許文献2に記載の多重織物は袋状であり、内部に接結部を有していないことから、内部に隙間が生まれる。これにより、層間のずれが生じやすく、摩擦等の外力に対する堅牢性に乏しい。
【0011】
また、特許文献3に記載の多重織物は、パイルが表面に突出するパイル織物ではなく、パイル経糸が内部にのみ組織されていることから、パイル織物特有の包み込まれるような風合いを有していない。また、両面で表出するのはガーゼ経糸であり、凝った模様や立体感のある模様等を形成できず、デザイン性に乏しい。
【0012】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、高強度であり、両面に異なる模様を自在に表現することが可能なパイル織物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、
所定本数の緯糸を挿入する毎に、表裏の少なくとも何れか一面にパイル出しをするパイル組織が、複数積層状態に接結してなるパイル織物であって、
前記パイル組織は、外面に突出する外面パイル部及び層間に突出する層間パイル部を形成するパイル経糸を備え、
前記層間パイル部は、前記複数のパイル組織の前記緯糸と交錯する組織状態を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、層間パイル部は、複数のパイル組織の緯糸と交錯する組織状態を有することで、接結糸の役割を担うこととなる。これにより、各パイル組織が完全に密着し、一体化されることで、層間のずれが抑制される。即ち、摩擦等の外力に対して、変形しにくく高強度なパイル織物を製織することが可能となる。
また、各パイル組織が備えるパイル経糸は、独立して組織することができるため、パイル織物の両外面において異なる模様を自在に表現することが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記パイル組織は、前記パイル経糸を複数備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることで、パイル織物の外面のある一部分について、表現したい色のパイル経糸を、外面パイル部として突出させ、残りのパイル経糸を、層間パイル部として層間に隠しておくことができる。これにより、複数の色を用いたカラフルな模様を、パイル織物の両外面において、独立して自在に表現することが可能となる。
また、このような構成とすることで、パイル織物が有する全ての緯糸に層間パイル部が組織されるため、接結力が増し、パイル織物がさらに高強度となる。
【0017】
本発明は、所定本数の緯糸を挿入する毎に、表裏の少なくとも何れか一面にパイル出しをするパイル組織が、複数積層状態に結合してなる多重パイル織物の製造方法であって、
前記パイル組織が有するパイル経糸により、外面に突出する外パイル部と、層間に突出する層間パイル部と、を形成し、
前記層間パイル部を、前記複数のパイル組織の前記緯糸に交錯させることにより組織することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高強度であり、両面に異なる模様を自在に表現することが可能なパイル織物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係るパイル織物の部分組織を示すものであって、(a)は経拡大断面図、(b)は織組織図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係るパイル織物の部分組織の経拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るパイル織物の部分組織の織組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、
図1を用いて、本発明の実施形態1に係るパイル織物Aについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0021】
図1において、パイル織物Aは、4本の緯糸を挿入する毎に表裏の何れか一面にパイル出しをするパイル組織A1及びパイル組織A2が積層状態をなすことにより形成されている。このように、1つのパイルを形成するために用いられる緯糸の本数をpic数と呼び、パイル組織A1及びパイル組織A2は4picの組織である。pic数はこれに限定されず、3picや5picであっても良い。
【0022】
パイル組織A1は、パイルを出すためのパイル経糸P1を備えている。また、パイル経糸P1を保持するための地経糸Ga1及びGb1を有している。
【0023】
パイル組織A2は、パイルを出すためのパイル経糸P2を備えている。また、パイル経糸P2を保持するための地経糸Ga2及びGb2を有している。
【0024】
図1(b)は、
図1(a)のように組織された織物の織組織図である。
織組織図とは、升目を用いて各緯糸と各経糸との上下関係を示した図のことで、各経糸が、緯糸に対してどのように組織されているのかを把握することができる。
図1(b)において、右端の列から順番に、P1、Ga1、Gb1、P2、Ga2、Gb2の浮沈状態を示している。
図1(a)において、経糸が、緯糸よりも右側に存在する場合は升目に白丸が示され、緯糸よりも左側に存在する場合は空白の升目として示される。
【0025】
また、パイル組織A1及びパイル組織A2は、4picの組織であるから、4本ごとにまとめられた緯糸a〜hを備えており、
図1(a)において、緯糸a〜hは、全て白丸で示している。例えば緯糸aは、下方から順番に第一緯糸a1、第二緯糸a2、第三緯糸a3、第四緯糸a4というように区別される。
【0026】
ここで、パイル織物Aの表面及び裏面を何れも外面と称し、パイル組織A1及びA2の間の領域を層間と称することとすると、パイル経糸P1は、外面に突出する外面パイル部Po1と、層間に突出する層間パイル部Pi1と、を有している。
また、パイル組織A2も、パイル組織A1と同様に、外面に突出する外面パイル部Po2と、層間に突出する層間パイル部Pi2と、を有している。
【0027】
まず、パイル経糸P1及びP2の浮沈状態について説明する。
【0028】
パイル経糸P1は、緯糸a〜dまでが外面パイル部Po1、緯糸e〜hまでが層間パイル部Pi1である。
【0029】
外面パイル部Po1に関して、パイル経糸P1は、第一緯糸a1と第二緯糸a2の間から層間へ沈み、第二緯糸a2と第三緯糸a3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸a3から第一緯糸c1の間を飛ばして、第一緯糸c1と第二緯糸c2の間から層間へ沈み、第二緯糸c2と第三緯糸c3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸c3から第四緯糸d4の間を飛ばして、第四緯糸d4と第一緯糸e1の間から層間へ沈む。
【0030】
層間パイル部Pi1に関して、パイル経糸P1は、第一緯糸e1と第二緯糸e2の間から外面へ浮き出し、この第二緯糸e2と第三緯糸e3の間から層間へ突出する。そして、この第三緯糸e3及び第四緯糸e4を飛ばして、パイル組織A2に移行する。次に、第一緯糸f1と第二緯糸f2の間から外面へ浮き出し、第二緯糸f2と第三緯糸f3の間から層間へ沈むことにより、第二緯糸f2に係止する形で組織される。そして、第三緯糸f3及び第四緯糸f4を飛ばして、パイル組織A1に移行する。以下、緯糸g及び緯糸hに対しても、緯糸fに対する浮沈状態と同様に組織される。
【0031】
パイル経糸P2は、緯糸b〜dまでが外面パイル部Po2、緯糸e〜hまでが層間パイル部Pi2である。
【0032】
外面パイル部Po2に関して、パイル経糸P2は、第一緯糸a1から第一緯糸b1の間を飛ばして、第一緯糸b1と第二緯糸b2の間から層間へ沈み、第二緯糸b2と第三緯糸b3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸b3から第一緯糸d1の間を飛ばして、第一緯糸d1と第二緯糸d2の間から層間へ沈み、第二緯糸d2と第三緯糸d3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸d3と第四緯糸d4を飛ばして、第四緯糸d4と第一緯糸e1の間から層間へ沈むことで、パイル組織A1に移行する。
【0033】
層間パイル部Pi2に関して、パイル経糸P2は、パイル経糸P1における層間パイル部Pi1と同様の浮沈状態で組織される。
【0034】
パイル経糸P1及びP2は独立して組織できるため、層間パイル部Pi1と層間パイル部Pi2の浮沈状態は、必ずしも同様とする必要はなく、例えば、緯糸b〜dまでを層間パイル部Pi2、緯糸e〜hまでを外面パイル部Po2としても良い。
【0035】
次に、地経糸Ga1及びGb1の浮沈状態について説明する。地経糸Ga1及びGb1は、パイル経糸P1を保持するものであり、パイル組織A2に移行せず、緯糸a、緯糸c、緯糸e、緯糸gに対して組織される。
【0036】
地経糸Ga1は、第一緯糸a1と第二緯糸a2の間を飛ばして第二緯糸a2と第三緯糸a3の間から層間へ沈み、第三緯糸a3と第四緯糸a4の間から外面へ浮き出す。以下、緯糸c、緯糸e、緯糸gに対しても同様の浮沈状態で組織される。地経糸Gb1は地経糸Ga1と表裏一対となるように、地経糸Ga1とは逆の浮沈状態で緯糸a、緯糸c、緯糸e、緯糸gに対して組織される。
【0037】
次に、地経糸Ga2及びGb2の浮沈状態について説明する。地経糸Ga2及びGb2は、パイル経糸P2を保持するものであり、パイル組織A1に移行せず、緯糸b、緯糸d、緯糸f、緯糸hに対して組織される。
【0038】
地経糸Ga2は、第一緯糸b1と第二緯糸b2の間を飛ばして第二緯糸b2と第三緯糸b3の間から層間へ沈み、第三緯糸b3と第四緯糸b4の間から外面へ浮き出す。以下、緯糸d、緯糸f、緯糸hに対しても、緯糸bに対する浮沈状態と同様に組織される。地経糸Gb2は地経糸Ga2と表裏一対となるように、地経糸Ga2とは逆の浮沈状態で緯糸b、緯糸d、緯糸f、緯糸hに対して組織される。
【0039】
本実施形態によれば、層間パイル部Pi1及びPi2は、パイル組織A1及びA2それぞれの緯糸と交錯する組織状態を有することで、接結糸の役割を担うこととなる。これにより、パイル組織A1及びA2が完全に密着し、一体化されることで、層間のずれが抑制される。即ち、摩擦等の外力に対して、変形しにくく高強度なパイル織物Aを製織することが可能となる。
【0040】
また、パイル組織A1及びA2が備えるパイル経糸P1及びP2は、それぞれ独立して組織することができるため、パイル織物Aの両外面において異なる模様を自在に表現することが可能となる。特に、本実施例においては、パイル織物Aの外面について、模様を形成する箇所を外面パイル部Po1又はPo2として組織することにより、立体感のある模様を自在に表現することが可能となる。
【0041】
<実施形態2>
以下、
図2及び
図3を用いて、本発明の実施形態2に係るパイル織物について説明する。なお、同実施形態において、先の実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0042】
図2において、本実施形態に係るパイル織物Aも、4本の緯糸を挿入する毎に表裏の何れか一面にパイル出しをするパイル組織A1及びパイル組織A2が積層状態をなすことにより形成されている。
【0043】
パイル組織A1は、パイルを出すためのパイル経糸P1及びP3を備えている。また、パイル経糸P1を保持するための地経糸Ga1及びGb1、パイル経糸P3を保持するための地経糸Ga3及びGb3を有している。
【0044】
パイル組織A2は、パイルを出すためのパイル経糸P2及びP4を備えている。また、パイル経糸P2を保持するための地経糸Ga2及びGb2、パイル経糸P4を保持するための地経糸Ga4及びGb4を有している。
【0045】
以上より、パイル組織A1及びA2は、それぞれパイル経糸を2本ずつ備えているが、本数はこれに限定されず、3本や4本備えていても良い。
【0046】
パイル経糸P3及びP4の浮沈状態について説明する。なお、パイル経糸P1及びP2の浮沈状態は実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0047】
パイル経糸P3は、緯糸a〜dまでが、層間に突出する層間パイル部Pi3、緯糸e〜hまでが、外面に突出する外面パイル部Po3である。
【0048】
層間パイル部Pi3に関して、パイル経糸P3は、第一緯糸a1と第二緯糸a2の間から外面へ浮き出し、第二緯糸a2と第三緯糸a3の間から層間へ突出する。そして第三緯糸a3及び第四緯糸a4を飛ばして、パイル組織A2に移行する。次に、第一緯糸b1と第二緯糸b2の間から浮き出し、第二緯糸b2と第三緯糸b3の間から沈むことにより、第二緯糸b2に係止する形で組織される。そして、第三緯糸b3及び第四緯糸b4を飛ばして、パイル組織A1に移行する。以下、緯糸c及び緯糸dに対しても、緯糸bに対する浮沈状態と同様に組織される。
【0049】
外面パイル部Po3に関して、パイル経糸P3は、第一緯糸e1と第二緯糸e2の間から層間へ沈み、第二緯糸e2と第三緯糸e3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸e3から第一緯糸g1の間を飛ばして、第一緯糸g1と第二緯糸g2の間から層間へ沈み、この第二緯糸g2と第三緯糸g3の間から外面へ突出する。
【0050】
パイル経糸P4は、緯糸a〜dまでが、層間に突出する層間パイル部Pi4、緯糸e〜hまでが、外面に突出する外面パイル部Po4である。
【0051】
層間パイル部Pi4に関して、パイル経糸P4は、パイル経糸P3における層間パイル部Pi3と同様の浮沈状態で組織される。
【0052】
外面パイル部Po4に関して、パイル経糸P4は、第一緯糸e1から第一緯糸f1の間を飛ばして、第一緯糸f1と第二緯糸f2の間から層間へ沈み、第二緯糸f2と第三緯糸f3の間から外面へ突出する。次に、第三緯糸f3から第一緯糸h1の間を飛ばして、第一緯糸h1と第二緯糸h2の間から層間へ沈み、第二緯糸h2と第三緯糸h3の間から外面へ突出する。
【0053】
地経糸Ga3及びGb3は、地経糸Ga1及びGb1と同様の浮沈状態のため、説明は省略する。また、地経糸Ga4及びGb4は、地経糸Ga2及びGb2と同様の浮沈状態のため、説明は省略する。
【0054】
本実施形態によれば、パイル織物Aの外面のある一部分について、表現したい色のパイル経糸を、外面パイル部として突出させ、残りのパイル経糸を、層間パイル部として層間に隠しておくことができる。
【0055】
即ち、本実施形態の場合、例えば、パイル組織A1において、パイル経糸P1を赤色、パイル経糸P3を青色とすると、緯糸a〜dの部分は、パイル経糸P1の外面パイル部Po1により赤色が表現され、緯糸e〜hの部分は、パイル経糸P3の外面パイル部Po3により青色が表現される。
さらに、緯糸a〜dの部分において、パイル経糸P3は、層間パイル部Pi3として、層間に隠れているため、外面に青色は表現されない。緯糸e〜hの部分についても同様に、パイル経糸P1は、層間パイル部Pi1として、層間に隠れているため、外面に赤色は表現されない。
【0056】
これにより、複数の色を用いたカラフルな模様を、パイル織物の両外面において、独立して自在に表現することが可能となる。
【0057】
また、パイル織物Aが有する緯糸a〜h全てに層間パイル部が組織されるため、接結力が増し、パイル織物がさらに高強度となる。
【0058】
なお、前記実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
A パイル織物
A1、A2 パイル組織
P1、P2、P3、P4 パイル経糸
Po1、Po2、Po3、Po4 外面パイル部
Pi1、Pi2、Pi3、Pi4 層間パイル部
Ga1、Gb1、Ga2、Gb2、Ga3、Gb3、Ga4、Gb4 地経糸
a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1 第一緯糸
a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2、h2 第二緯糸
a3、b3、c3、d3、e3、f3、g3、h3 第三緯糸
a4、b4、c4、d4、e4、f4、g4、h4 第四緯糸