特許第6649920号(P6649920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649920免疫調節用組成物、免疫調節用組成物の製造のための使用、免疫調節用組成物の製造方法、該免疫調節用組成物を用いる食品、医薬品、動物食餌製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649920
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】免疫調節用組成物、免疫調節用組成物の製造のための使用、免疫調節用組成物の製造方法、該免疫調節用組成物を用いる食品、医薬品、動物食餌製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20200210BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200210BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20200210BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20200210BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20200210BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20200210BHJP
【FI】
   A61K35/744
   A61P37/02
   A61K35/747
   C12N1/20 E
   A23L33/135
   A23K10/16
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-128321(P2017-128321)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-24635(P2018-24635A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-154245(P2016-154245)
(32)【優先日】2016年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505164690
【氏名又は名称】有限会社バイオ研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】菅 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】大脇 眞
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−084533(JP,A)
【文献】 特開2014−131504(JP,A)
【文献】 Inflammation, 2014, Vol.37, No.5, pp.1728-1737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A23L 33/00−33/29
A23K 10/00−40/35
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及び/又はラクトバチラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌の菌体及び/又はその処理物であって、pH4.5〜2.0の酸性条件下で120〜140℃の熱処理を施されたものからなり、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、該菌体及び/又はその処理物を有効成分とすることを特徴とする免疫調節用組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物は、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、請求項1記載の免疫調節用組成物。
【請求項3】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物は、IL−12産生誘導能が殆ど消失している、請求項1又は2記載の免疫調節用組成物。
【請求項4】
食品用、医薬用、又は動物食餌用である、請求項1〜のいずれか1項に記載の免疫調節用組成物。
【請求項5】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及び/又はラクトバチラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌の菌体及び/又はその処理物であって、pH4.5〜2.0の酸性条件下で120〜140℃の熱処理を施されたものからなり、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、該菌体及び/又はその処理物の免疫調節用組成物の製造のための使用。
【請求項6】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物は、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、請求項記載の使用。
【請求項7】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物は、IL−12産生誘導能が殆ど消失している、請求項又は記載の使用。
【請求項8】
前記免疫調節用組成物は、食品用、医薬用、又は動物食餌用である、請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及び/又はラクトバチラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌の菌体及び/又はその処理物に、pH4.5〜2.0の酸性条件下で120〜140℃の熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得ることを特徴とする免疫調節用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得る、請求項記載の免疫調節用組成物の製造方法。
【請求項11】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物に、pH2.0〜3.5の酸性条件下で、120〜125℃の温度で、15〜30分間熱処理を行う、請求項又は10記載の免疫調節用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記乳酸菌の菌体及び/又はその処理物に、pH2.0〜4.5の酸性条件下で、120〜125℃の温度で、20〜60分間熱処理を行う、請求項又は10記載の免疫調節用組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項12のいずれかの製造方法で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする食品の製造方法。
【請求項14】
請求項12のいずれかの製造方法で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする医薬品の製造方法。
【請求項15】
請求項12のいずれかの製造方法で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする動物食餌製品の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する免疫調節用組成物、免疫調節用組成物の製造のための使用、免疫調節用組成物の製造方法、該免疫調節用組成物を用いる食品、医薬品、動物食餌製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌などの微生物の一部は、腸内フローラのバランスを改善して腸内腐敗産物の低減や糞便性状を改善する効果のほか、生体の免疫活性を向上させる効果を有することが知られている。微生物による免疫活性化のメカニズムについては、摂取された微生物が胃を通過して小腸に入り、小腸を覆う粘膜上に存在するパイエル板の表面のM細胞からエンドサイトーシスによって微生物が取り込まれ、基底膜側に接触している樹状細胞が微生物を受け取って分解し、その抗原断片をT細胞に提示することによって、T細胞が活性化されることなどが考えられている。このT細胞は、樹状細胞が出すシグナルの種類によって、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、Treg細胞に分化する。
【0003】
このうち、Th1細胞は、IFNγ、IL−12等のサイトカインを産出し、細菌やウイルスなどの異物を攻撃、破壊して感染を防御し、更にマクロファージも活性化する。ここで、IL−12は、樹状細胞およびマクロファージのような抗原提示細胞からも分泌されるサイトカインであり、癌細胞を直接攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)や、キラーT細胞(CTL細胞)を活性化したり、IFNγの産生を増強したりする、非常に強力な免疫活性物質として知られている。
【0004】
また、Treg細胞は、TGFβ、IL−10等のサイトカインを産生し、マクロファージや樹状細胞の活性化を抑制する。ここで、IL−10は、Th2細胞、単球、マクロファージ等からも分泌されるサイトカインであり、マクロファージからのIL−1、IL−6、IL−12、TNFαの産生を抑制したり、IFNγの産生を抑制したりする、免疫抑制物質として知られている。
【0005】
本出願人らは、マクロファージ培養系や脾臓細胞培養系において、乳酸菌の加熱死菌体によるIL−12の産生誘導効果を明らかにしている。そして、乳酸菌の加熱死菌体を微粒子化することで、該菌体によるIL−12産生誘導能を高めたり(特許文献1)、乳酸菌をpH調整しながら培養し、培養後期にストレスを与え、殺菌することで、該菌体によるIL−12産生誘導能を高めたり(特許文献2)できることを明らかにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4621218号公報
【特許文献2】特開2014−131504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IL−12の産生誘導には、炎症反応や免疫応答の活性化という正の側面と同時に自己を構成する正常な組織、細胞までも攻撃する過剰な免疫応答をも引き起こしてしまうという負の側面がある。一方、IL−10には、免疫応答の抑制という負の側面と同時に自己に対する異常あるいは過剰な免疫応答を抑制する正の働きが備わると考えられている。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、過剰な免疫応答を抑える働きをもつIL−10の産生を誘導させることができ、且つ、過剰な免疫応答を引き起こす働きをもつIL−12の産生誘導が抑えられた免疫調節用組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究した結果、乳酸菌の加熱死菌体を所定のpH環境下に加熱処理することで、そのIL−10産生誘導能はほぼ保たれたまま、IL−12産生誘導能を低減させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、微生物の菌体及び/又はその処理物であって、IL−10産生誘導能を有し、且つ、IL−12産生誘導能が殆ど消失している、該菌体及び/又はその処理物を有効成分とすることを特徴とする免疫調節用組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、微生物の菌体及び/又はその処理物であって、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、該菌体及び/又はその処理物の免疫調節用組成物の製造のための使用を提供するものである。
【0012】
上記発明において、前記微生物の菌体及び/又はその処理物は、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有することが好ましい。
【0013】
前記微生物の菌体及び/又はその処理物は、IL−12産生誘導能が殆ど消失していることが好ましい。
【0014】
また、上記発明において、前記微生物は、乳酸菌、ビフィズス菌、枯草菌、酪酸菌、酵母、麹菌、及び放線菌からなる群から選択された1種又は2種以上であることが好ましい。
【0015】
前記微生物は、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択された1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明における免疫調節用組成物は、食品用、医薬用、又は動物食餌用であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、IL−10及びIL−12産生能を有する微生物の菌体及び/又はその処理物に、酸性条件下で90〜140℃の熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得ることを特徴とする免疫調節用組成物の製造方法を提供するものである。
【0018】
上記発明においては、前記熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得ることが好ましい。
【0019】
また、前記IL−10及びIL−12産生能を有する菌体及び/又はその処理物に、pH4.5以下のpH環境下で95〜140℃の熱処理を行うことが好ましい。
【0020】
また、上記発明において、前記IL−10及びIL−12産生能を有する菌体及び/又はその処理物に、pH3.5以下のpH環境下で、95〜125℃の温度で、15〜30分間熱処理を行うことが好ましい。
【0021】
さらに、上記発明において、前記IL−10及びIL−12産生能を有する菌体及び/又はその処理物に、pH4.3以下のpH環境下で、120〜125℃の温度で、20〜60分間熱処理を行うことが好ましい。
【0022】
本発明は、上記で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする食品の製造方法を提供するものである。
【0023】
本発明は、上記発明で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする医薬品の製造方法を提供するものである。
【0024】
本発明は、上記発明で得られた免疫調節用組成物を用いることを特徴とする動物食餌製品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の免疫調節用組成物によれば、過剰な免疫応答を抑える働きをもつIL−10の産生を誘導させることができ、且つ、過剰な免疫応答を引き起こす働きをもつIL−12の産生誘導が抑えられているので、IL−12による免疫応答を過剰にひき起こすことなく、IL−10による免疫抑制機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったEF菌のIL−10産生誘導活性を示す図である。
図2】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったEF菌のIL−12産生誘導活性を示す図である。
図3】酢酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったEF菌のIL−10産生誘導活性を示す図である。
図4】酢酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったEF菌のIL−12産生誘導活性を示す図である。
図5】酢酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、30分の熱処理を行ったEF菌のIL−10産生誘導活性を示す図である。
図6】酢酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、30分の熱処理を行ったEF菌のIL−12産生誘導活性を示す図である。
図7】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、60分の熱処理を行ったEF菌のIL−10産生誘導活性を示す図である。
図8】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、60分の熱処理を行ったEF菌のIL−12産生誘導活性を示す図である。
図9】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったKS−1菌のIL−10産生誘導活性を示す図である。
図10】クエン酸−リン酸緩衝液で調整した各pH環境下で、121℃、15分の熱処理を行ったKS−1菌のIL−12産生誘導活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に用いる微生物は、IL−10及びIL−12の産生誘導能を有する微生物であればよく、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌、枯草菌、酪酸菌、酵母、麹菌、放線菌などが挙げられる。例えば、乳酸菌であれば、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)等のラクトバチルス属に属する微生物、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属に属する微生物、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属に属する微生物、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属に属する微生物、などが挙げられる。ビフィズス菌であれば、ビフィドバクテリウム属に属する微生物、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)などが挙げられる。枯草菌であれば、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)などが挙げられる。酪酸菌であれば、宮入菌(Clostridium butyricum)などが挙げられる。酵母であれば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyses pombe)、トルラスポラ・デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)等のサッカロマイセス属に属する微生物、トルラスポラ属に属する微生物、キャンジダ属に属する微生物などが挙げられる。麹菌であれば、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillius awamori)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillius oryzae)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillius niger)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillius sojae)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillius usami)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillius kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillius saitoi)等のアスペルギルス属に属する微生物、モナスカス(Monascus)属に属する微生物、などが挙げられる。放線菌であれば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物などが挙げられる。なお、これら微生物には、菌糸を形成する糸状菌が含まれる。
【0028】
本発明に用いる微生物の菌体は、上記微生物の生菌体、死菌体、あるいは菌体処理物であってもよい。菌体処理物としては、菌体の乾燥物、凍結乾燥物、超音波破砕物、界面活性剤処理物、有機溶剤処理物、溶媒抽出物、溶菌酵素処理物、固定化菌体或いは菌体から精製した酵素等に加え、該菌株の培養液の濃縮物、乾燥物、冷凍物、冷蔵物、凍結乾燥物、超音波破砕物、界面活性剤処理物、有機溶媒処理物、溶媒抽出物、溶菌酵素処理物等が挙げられる。
【0029】
本発明の免疫調節用組成物は、上記のような微生物の菌体及び/又はその処理物であって、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する、該菌体及び/又はその処理物を有効成分とする。
【0030】
IL−10産生誘導能及びIL−12産生誘導能は、例えば、後述する試験例に示されるような細胞培養とELISA法による測定方法において、OK432(商品名:ピシバニール(Picibanil)、中外製薬)のIL−10産生誘導能及びIL−12産生誘導能を基準にして相対活性として評価することができる。
【0031】
OK432は、ヒト由来A群溶血性レンサ球菌 Streptococcus pyogenes 弱毒 Su 株を、H22処理後、ペニシリンGカリウム処理し、凍結乾燥した菌体製剤である。OK432は免疫反応を活性化できることが知られており、その投与によってIL−12等のサイトカインの産生が誘導されることが認められている。
【0032】
本発明において、「OK432のIL−10産生誘導能を基準にして」又は「OK432のIL−12産生誘導能を基準にして」とは、OK432を、本発明における免疫調節用組成物の有効成分である菌体及び/又はその処理物と同じ濃度、具体的には1μg/Lの濃度で用いたときの活性を100%としたときの相対活性を意味するものとする。
【0033】
IL−10産生誘導能は、微生物の菌体を乾燥物換算で終濃度1μg/mLで用いた時、OK432の菌体を乾燥物換算で終濃度1μg/mLで用いた時のIL−10産生誘導能を基準にして、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が最も好ましい。IL−10産生誘導能が、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%未満では、IL−10産生誘導効果が十分得られず、免疫調節の効果が乏しくなる傾向がある。
【0034】
IL−12産生誘導能は、微生物の菌体を乾燥物換算で終濃度1μg/mLで用いた時、OK432の菌体を乾燥物換算で終濃度1μg/mLで用いた時のIL−12産生誘導能を基準にして、30%を超えないことが好ましく、20%を超えないことがより好ましく、10%を超えないことが更に好ましく、IL−12産生誘導能が全く検出できない量であることが最も好ましい。IL−12産生誘導能が、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えると、過剰な免疫応答を引き起こす可能性があり、免疫調節の効果が低下する傾向がある。
【0035】
本発明の免疫調節用組成物によれば、IL−12による免疫応答を過剰にひき起こすことなく、IL−10の産生を誘導することによって、全身の免疫系を調節することができる。ここで免疫系を調節するとは、免疫系の異常な機能亢進、又は低下が原因となるあらゆる疾病などに対して、自然免疫系および獲得免疫系に働きかけることによって正常に整えることをいう。
【0036】
本発明の免疫調節用組成物によって改善効果がもたらされることが期待される具体的な疾患としては、例えば、関節炎、脳脊髄性髄膜炎、I型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸
炎、関節リュウマチ、全身性エリテマトーデス、尋常性乾癬、慢性胃炎、自己免疫性肝炎、バセドウ病などの自己免疫疾患や、スギ花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患などが挙げられる。
【0037】
また、本発明は、IL−10及びIL−12産生能を有する微生物の菌体及び/又はその処理物に、酸性条件下で90〜140℃の熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして20%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得ることを特徴とする免疫調節用組成物の製造方法を提供する。
【0038】
この場合、前記熱処理を行い、OK432のIL−10産生誘導能を基準にして30%以上のIL−10産生誘導能を有し、且つ、OK432のIL−12産生誘導能を基準にして30%を超えないIL−12産生誘導能を有する該菌体及び/又はその処理物を得ることがより好ましい。
【0039】
上記製造方法において、酸性条件下とするには、各pHに調製した溶液、例えば、0.1Mクエン酸と0.2Mリン酸水素ナトリウムとを混合して所定のpHに調製して作製したクエン酸−リン酸緩衝液や、酢酸−酢酸ナトリウムとを混合して所定のpHに調製して作製した酢酸緩衝液を用いることができる。各種pH溶液のpHはpH自動制御装置等(pHスタット)で確認することが好ましい。pH条件としては、pH6.9〜pH2.0が好ましく、pH4.5〜pH2.0がより好ましく、pH4.3〜pH2.0がさらに好ましく、pH3.5〜pH2.0が最も好ましい。
【0040】
また、上記製造方法において、90〜140℃の熱処理は、一圧タンク、レトルト食品製造機、オートクレーブやUHT,チューブラーヒーター等によって行うことができる。加熱条件としては、90〜140℃の熱処理であることが好ましく、95〜140℃の熱処理であることがより好ましく、95〜125℃の熱処理であることがさらに好ましく、120〜125℃の熱処理であることが最も好ましい。
【0041】
さらに、上記製造方法において、熱処理の時間条件としては、特に限定されないが、15〜30分間や20〜60分間の熱処理であることが好ましい。
【0042】
pHや加熱の温度や時間の条件は上記範囲で適宜組み合わせて決めることができるが、具体的には例えば、IL−10及びIL−12産生能を有する菌体及び/又はその処理物に、pH4.5以下のpH環境下で、95〜140℃の熱処理を行うことができる。また、好ましい態様においては、pH4.3以下、より好ましくはpH3.5〜4.3のpH環境下で、120〜125℃の温度で、20〜60分間熱処理を行うことができる。さらに、別の好ましい態様においては、pH3.5以下、より好ましくはpH2.0〜3.5のpH環境下で、95〜125℃の温度で、15〜30分間熱処理を行うことができる。
【0043】
IL−10及びIL−12産生能を有する菌体及び/又はその処理物に、このような処理を施すことにより、理由は定かではないが、そのIL−10産生誘導能はほぼ保たれたまま、IL−12産生誘導能を低減させることができる。
【0044】
本発明の免疫調節用組成物又は免疫調節用組成物は、食品用の組成物の形態であってもよい。すなわち、微生物の菌体及び/又はその処理物を上記方法により加熱処理してなる加熱処理物(以下単に「菌体加熱処理物」とする)を、そのまま、あるいは他の食品用原料を組み合わせて、食品用の組成物の形態となしてもよい。上記菌体加熱処理物に組み合わせる食品用原料としては、例えば、各種糖質や乳化剤、甘味料、酸味料、果汁、フレーバー等が挙げられる。より具体的には、グルコース、シュークロース、フラクトース、蜂蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等の糖アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤が挙げられる。この他にも、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン類やハーブエキス、穀物成分、野菜成分、乳成分等が挙げられる。
【0045】
また、食品の形態としては、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等を目的として提供される健康食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品などの形態であってもよい。
【0046】
本発明の免疫調節用組成物は、医薬用の組成物の形態であってもよい。すなわち、上記菌体加熱処理物を、そのまま、あるいは他の医薬用原料と組み合わせて、医薬用の組成物の形態となしてもよい。上記菌体加熱処理物に組み合わせる他の医薬用原料に特に制限はなく、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤等の形態にして、これを経口剤として利用することができる。また、軟膏剤、クリーム剤、ジェル、ローション等の形態にして、これを皮膚外用剤として利用することができる。
【0047】
また、医薬の投与形態としては、体の中から作用させるため経口的に摂取してもよく、あるいは皮膚に塗布して用いてもよい。また、吸引して呼吸器系に適用してもよく、その投与形態が特に制限されるものではない。投与量についても、その対象者の健康状態や年齢、あるいはどの程度の免疫調節の作用効果を必要としているかなどに応じて、適宜設定すればよい。典型的には、上記菌体加熱処理物の乾燥物換算での摂取量にして、1mg〜1,000mg/日/kgとすることが好ましく、2mg〜20mg/日/kgとすることがより好ましい。なお、医薬とは、ヒトのみでなく動物用の医薬も含む意味である。
【0048】
本発明の免疫調節用組成物は、動物食餌用の組成物の形態であってもよい。すなわち、前記菌体加熱処理物を、そのまま、あるいは他の動物食餌用原料と組み合わせて、動物食餌用の組成物の形態となしてもよい。本発明の免疫調節用組成物は、例えば、家畜、競走馬、鑑賞用動物等の飼料;ペットフード等、動物用の飼料に利用してもよい。
【0049】
本発明の免疫調製用組成物において、前記菌体加熱処理物の含有量は、各種の形態とした場合に、それが使用される量と有効投与量との関係を勘案して適宜定めればよい。典型的には、前記菌体加熱処理物を、乾燥物換算にして、0.1〜100質量%含有することが好ましく、1〜50質量%含有することが好ましく、10〜30質量%含有することが更により好ましい。
【実施例】
【0050】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
<試験例>
[微生物の培養]
微生物は、Enterococcus faecalis KH2(受託番号:NITE P-14444)(以下、「EF菌」とする。)、又はLactobacilus plantarum KS-1(日本DNAデータバンク LC042605)(以下、「KS−1菌」とする。)を用いた。EF菌の培地及びKS−1菌の培地は、いずれもDifco Lactobacilli MRS Broth(商品名、日本ベクトン・ディツキンソン株式会社)を使用し、37℃で培養を行なった。
【0052】
[微生物の処理]
上記EF菌又はKS−1菌の培養液を回収し、更に遠心にて集菌し、菌体濃度が20%となるようにリン酸緩衝液に懸濁した。これをテフロン(登録商標)ホモジナイザーにかけ、菌体同士が凝集するのを避け、できるだけ分散させるようにした。
【0053】
各種pH溶液は、0.1Mクエン酸と0.2Mリン酸水素ナトリウムとを混合して所定のpHに調製して作製したクエン酸−リン酸緩衝液、又は酢酸−酢酸ナトリウムとを混合して所定のpHに調製して作製した酢酸緩衝液を用いた。各種pH溶液のpHはpH自動制御装置(pHスタット)で確認をした。
【0054】
各種pH溶液4.5mLに20%EF菌又はKS−1菌の懸濁液を0.5mL加え、菌体含量を2%とし、121℃15分間、30分間、若しくは60分間、又は100℃15分間オートクレーブで加熱した。また、コントロールとして用いたOK432も同様に各種pHで加熱処理をした。加熱後の菌体懸濁液の固形分含量を測定し、その値を基に所定の濃度に調整した。
【0055】
[IL−10、及びIL−12産生誘導試験]
IL−10、及びIL−12産生誘導能の試験にはマウス脾臓細胞の試験管内培養系を用いた。具体的には、8週齢のBALB/cマウスから脾臓細胞を採取し、常法に従い、10% FBS、50μM 2-メルカプトエタノール、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地で細胞浮遊液(2.5×106 cells/mL)を調製した。これに上記の処理をしたEF菌、KS−1菌、又はOK432を乾燥物換算で終濃度1μg/mLとなるように添加して細胞/菌体混合液を調製し、96穴プレートの各ウェルに0.2mLずつ撒いた。温度37℃、5%CO2の条件下で、IL−10の場合は3日間、IL−12の場合は1日間培養し、培養後の培養上清を回収して、培養上清中のIL−10、及びIL−12量を測定した。IL−10量の測定には、キット「DuoSet IL-10」(商品名、R&D社)を使用し、ELISA法で測定した。IL−12量の測定には、一次抗体として「capture Ab」、二次抗体として「detection Ab」、検出試薬として「HRP-Avidin」(それぞれ商品名、BioLegend Inc.社)、発色基質として「TMB(3,3’,5,5’tetramethylbenzidin)」(商品名、Sigma. Life Scienc社)を使用し、サンドイッチELISA法で測定した。結果はイムノプレートの6ウェルの平均として求めた。
【0056】
[結果]
上記方法で、IL−10産生誘導活性及びIL−12産生誘導活性を測定した。そして、IL−10産生誘導活性については、同濃度でのOK432のIL−10産生誘導活性を100%として、それに対する相対値で求めた。同様に、IL−12産生誘導活性については、同濃度でのOK432のIL−12産生誘導活性を100%として、それに対する相対値で求めた。
【0057】
図1には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変え、121℃で15分間熱処理したEF菌のIL−10産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0058】
図1に示すように、pH6.8の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−10産生誘導活性は、78%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、78%であった。更に、pH3.5の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、42%であり、pH2.6の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、49%であり、pH2.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、28%であった。
【0059】
図2には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で15分間熱処理したEF菌のIL−12産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0060】
図2に示すように、pH6.8の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−12産生誘導活性は、83%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、74%であった。更に、pH3.5の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、0%であり、pH2.6の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、0%であり、pH2.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、0%であった。
【0061】
このように、EF菌を121℃15分の加熱条件で、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて処理する場合には、pH3.5以下の緩衝液で処理することによって、本発明の有効成分となる微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかった。
【0062】
図3には、酢酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で15分間熱処理したEF菌のIL−10産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0063】
図3に示すように、pH7.4の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−10産生誘導活性は、68%であった。また、pH3.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、35%であった。
【0064】
図4には、酢酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で15分間熱処理したEF菌のIL−12産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0065】
図4に示すように、pH7.4の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−12産生誘導活性は、157%であった。また、pH3.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、0%であった。
【0066】
このように、EF菌を121℃15分の加熱条件で、酢酸緩衝液によりpHを変えて処理する場合には、pH3.0以下の緩衝液で処理することによって、本発明の有効成分となる微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかった。
【0067】
図5には、酢酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で30分間熱処理したEF菌のIL−10産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0068】
図5に示すように、pH7.4の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−10産生誘導活性は、83%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、50%であった。
【0069】
図6には、酢酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で30分間熱処理したEF菌のIL−12産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0070】
図6に示すように、pH7.4の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−12産生誘導活性は、232%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、9%であった。
【0071】
このように、121℃30分の加熱条件で、酢酸緩衝液によりpHを変えて処理する場合には、pH4.0以下の緩衝液で処理することによって、本発明の有効成分となる微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかった。
【0072】
図7には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で60分間熱処理したEF菌のIL−10産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0073】
図7に示すように、pH4.5の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−10産生誘導活性は、22%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、6%であった。さらに、pH3.5の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、0%であった。
【0074】
図8には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で60分間熱処理したEF菌のIL−12産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0075】
図8に示すように、pH4.5の緩衝液で処理したEF菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−12産生誘導活性は、10%であった。また、pH4.0の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、0%であった。さらに、pH3.5の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、0%であった。
【0076】
このように、121℃60分の加熱条件で、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、EF菌を処理する場合には、pH4.5の緩衝液で処理することによって、本発明の有効成分となる微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかった。
【0077】
図9には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で15分間熱処理したKS−1菌のIL−10産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0078】
図9に示すように、pH6.8の緩衝液で処理したKS−1菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−10産生誘導活性は、27%であった。pH4.5の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、37%であった。pH4.0の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、49%であった。pH3.5の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、41%であった。pH3.0の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−10産生誘導活性は、22%であった。
【0079】
図10には、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、121℃で15分間熱処理したKS−1菌のIL−12産生誘導活性を測定した結果が示されている。
【0080】
図10に示すように、pH6.8の緩衝液で処理したKS−1菌1μg/mLを使用したときのマウス脾臓細胞のIL−12産生誘導活性は、62%であった。pH4.5の緩衝液で処理したEF菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、87%であった。pH4.0の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、119%であった。pH3.5の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、68%であった。pH3.0の緩衝液で処理したKS−1菌を使用したときのIL−12産生誘導活性は、4%であった。
【0081】
このように、121℃15分の加熱条件で、クエン酸−リン酸緩衝液によりpHを変えて、KS−1菌を処理する場合には、pH3.0以下の緩衝液で処理することによって、本発明の有効成分となる微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかった。
【0082】
以上のように、EF菌及びKS−1菌を酸性条件下で熱処理することにより、IL−10産生誘導能は比較的高く維持されるのに対し、IL−12産生誘導能は著しく減少することがわかった。これによって、IL−12産生誘導能が低く、IL−10産生誘導能が高い、微生物の菌体及び/又はその処理物が得られることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10