【氏名又は名称】ディスペース デジタル シグナル プロセッシング アンド コントロール エンジニアリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周辺回路をシミュレートしたものは、前記第1の電流操作手段(150)に対応する第1の誘導負荷のシミュレート表現と、前記第2の電流操作手段(160)に対応する電気化学的エネルギー蓄積器のシミュレート表現とを含み、
正の給電電圧(Vp+)を供給するための接続端は前記第1の電流操作手段(150)および前記第2の電流操作手段(160)の双方に接続されており、かつ、負の給電電圧(Vp−)を供給するための接続端は前記第1の電流操作手段(150)および前記第2の電流操作手段(160)の双方に接続されている、
請求項1記載のシミュレーション装置。
モデルサンプリング期間の時間的に連続するN個のシーケンスで、当該N個のシーケンスの各モデルサンプリング期間において前記第1の負荷電流(IL1)を前記第1のソース電流(IS1)に依存して変化させるべく、または、前記第1のソース電流(IS1)を前記第1の負荷電流(IL1)に依存して変化させるべく、前記第1の電流操作手段(150)と前記第2の電流操作手段(160)とに時間的に整合して影響を及ぼすことができる、
請求項1から3までのいずれか1項記載のシミュレーション装置。
前記シミュレーション装置は、前記第1の電流操作手段(150)および/または前記第2の電流操作手段(160)と同一構成である少なくとも1つの他の電流操作手段(170,180,190)を備えている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシミュレーション装置。
前記第1の電流操作手段(150)または前記第2の電流操作手段(160)は前記他の電流操作手段(170,180,190)に並列接続可能であるか、または並列接続されている、
請求項5または6記載のシミュレーション装置。
前記モデルコードはm番目のモデルサンプリング期間中、前記第1の電流操作手段(150)および前記第2の電流操作手段(160)の双方に対して、変化する作用を及ぼすことにより、当該m番目のモデルサンプリング期間中に前記第1の負荷電流(IL1)および前記第1のソース電流(IS1)の双方を変化させる、
請求項14記載の方法。
前記m番目のモデルサンプリング期間中、前記第1の電流操作手段(150)の出力端または前記第2の電流操作手段(160)の出力端を、少なくとも1つの他の電流操作手段(170,180,190)の出力端に並列接続する、
請求項15記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションするためのシミュレーション装置、および、制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションする方法に関する。
【0002】
製品カタログ印刷物“Catalog 2014 Embedded Success dSPACE”第282頁から第311頁までおよび第472頁から第491頁から、シミュレーション装置と、シミュレーション装置のための種々のハードウェアモジュールとが公知であり、これは、インターネット電子版 http://www.dspace.de または http://www.dspace.com/de/gmb/home/medien/product_info.cfm においても開示されている。制御装置の開発分野の知識を有する者には、1つまたは複数の制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションするためにシミュレーション装置を用いることが知られている。さらに、電気的負荷をシミュレーションしたものを制御装置ないしはコントロールデバイスのテストのために使用することも公知である。たとえば、A. Wagener et al. による2007年のタイトル「Hardware-in-the-Loop Test Systems for Electric Motors in Advanced Powertrain Applications」のSAE論文に、HILシミュレータの種々の実用例が列挙されている。HILシミュレータにおける回路コスト、および/または、テスト対象の制御装置(英語:“device under test”ないしは略して“DUT”)の交換時における改造コストは大きい。制御装置は、当該関連分野の用語では、代替的に「コントロールデバイス」と称されることも多い。
【0003】
上述の先行技術のシミュレーション装置の目的は特に、制御装置をその「実」動作環境内に置く必要なく、制御装置の機能性を検査することである。制御装置の「実」動作環境の高リアリティのシミュレーションは、制御装置のテスト時に、たとえば当該制御装置の開発中または修正中に生じた問題やエラーを早期に検出できるようにするための前提条件である。シミュレーション装置を用いて実行されるテストはたとえば、制御装置のパワーエレクトロニクスインタフェースの検査を対象とする。上述の技術的背景では、制御装置はしばしばDUT(英語“device under test”)と称されることが多い。設定される頻度が多い目的は、制御装置ないしはDUTが所望の応答をするか否か、制御装置が(自己のインタフェースを介して受け取った)特定の状態量に対して、(自己のインタフェースを介して出力される)出力量を適切に出力することにより応答するか否かを検査することである。制御装置とその技術的環境との通信は、入出力(英語:“input and output”)を用いて、略してI/Oを用いて、換言すると、制御装置とその技術的環境との間でI/Oインタフェースを介して交換される信号を用いて行われる。たとえば、後の時期に予定されている「実際の」技術的環境が開発技術者に提供されないないしは未だ提供されないとの理由により、かかる制御装置の関連する技術的環境の全部または一部をシミュレートするため、シミュレーション装置が開発技術者によって使用されることが多い。シミュレーション装置は、少なくとも1つのシミュレーション計算機(「計算ユニット」(英語:“computation unit”)とも称される)と、少なくとも1つのI/Oインタフェースとを備えている。モータ制御装置の場合、たとえば1つの計算ユニットまたは複数の計算ユニットをI/Oインタフェースと共に用いることにより、制御対象のモータ(の全部または一部)をシミュレートすることができる。こうするためには、まずモータの数学的表現、すなわち数学的モデルと、当該数学的モデルを含む実行可能なモデルコードとを生成する。このモデルコードは、モータの複数の特性データや状態量を互いに、計算可能な関係に関連付けるものである。関連分野では、この数学的モデルと、数学的モデルから導出される実行可能なモデルコードとは、しばしば同義とされることが多い。制御装置によってモータ(をシミュレートしたもの)に作用する量(操作信号)は、I/Oインタフェースを介して計算ユニットによって受け取られ、計算ユニット上にて、とりわけI/O信号および/または他の伝送ならびに/もしくは記憶された情報に基づき、数学的モデルによって、モータ(をシミュレートしたもの)の状態量が算出される。通常、特定の状態量が1つまたは複数のI/Oインタフェースを介してモータ制御装置へ供給される。シミュレーション装置からモータ制御装置への状態量の伝送は、状態量の種類および目的に応じて、固定的もしくは可変の時間間隔で行うことができ、または要求に応じてのみ行うことも可能である。シミュレーション装置を用いることは、ごく一般的には、僅かなコストのみで幅広いテストケースを検証することができ、また、制御装置の環境を変えて(たとえば複数の異なる駆動アセンブリを)シミュレートできるという顕著な利点を奏する。制御装置が、たとえば電気的駆動装置の駆動制御に用いられるようなパワーエレクトロニクス出力端を備えている場合、上掲の用途例のために構成されたシミュレーション装置は制御装置(たとえばモータ制御装置)から小信号領域の信号を受け取るだけでなく、電気的な大信号も受け取ることは、直接的に明らかである。実際には、電気的負荷をシミュレートするための公知の回路は、制御装置の出力端の電圧(具体的にはたとえば、モータ制御装置の電力部の出力端の電圧)を測定技術により検出し、モータの動作データを考慮して制御装置の接続端を介して流れなければならない、当該電圧に対応するモータ電流を、シミュレート対象のモータの数学的モデルで算出するように動作することが多く、この目標電流値は電流制御ユニットへ供給され、電流制御ユニットはその後、制御装置の接続端において回路の適切な制御により可能な限りリアルタイムで、上述の求められた目標電流に調整する。
【0004】
国際公開第2007/04228号(WO 2007/04228 A1)からはたとえば、電気エネルギー蓄積器としてコイルを使用する回路が公知であり、このコイルのインダクタンスは、シミュレート対象のモータの巻線のインダクタンスより格段に小さい。通常、モータを駆動制御するためには複数の接続端が必要である。というのも、出力が比較的大きいこの種の駆動装置は、多相(大抵は3相)で駆動される必要があるからである。制御装置の接続端には典型的には、パルス幅変調(PWM)された電圧信号が印加され、この電圧信号のデューティ比を介して、当該接続端に印加される電圧の時間平均を調整することができる。コイルの他方の接続端は、ハーフブリッジを介して2つの補助電圧源に接続され、これにより、ハーフブリッジの一方の半導体スイッチのスイッチングによって当該コイルの当該第2の接続端を高電位にすることができ、当該ブリッジの他方の半導体スイッチのスイッチングにより、コイルの第2の接続端を非常に低い電位にすることができる。このようにして、コイル内の電流に影響を及ぼし、制御装置の接続端の電流の実際値を、定められた目標電流の値に調整ないしは制御することができる。
【0005】
本願において「半導体スイッチ」とは、半導体技術を用いて製造されたスイッチング手段を指し、たとえば、特にいわゆる電力用電界効果トランジスタ、たとえば電力用MOSFET(英語:“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”)、バイポーラトランジスタまたはいわゆるIGBT(英語:“insulated-gate bipolar transistor”)等の電界効果トランジスタを指す。半導体スイッチを遮断、導通のため、また電流を制御するために用いることが公知である。
【0006】
たとえば、電気駆動装置またはハイブリッド駆動装置を備えた貨物自動車または業務用車両の3相交流モータ等の駆動システムは、10kW超から100kW超に及ぶ出力領域で動くことは珍しくない。かかる駆動システムにおいて、まさに非常に高ダイナミックな負荷切換が行われるときには、制御装置の接続端のたとえば40V超からたとえば1000V超に及ぶ領域の電圧と、数十Aの領域内でありかつピークで数百Aの達し得る電流とを制御しなければならない。制御装置に対するシミュレーション装置のインタフェースにおいて上述の出力領域または電圧領域または電流領域を保証する他にも、損失電力を既存のシミュレーション装置よりも低く抑えたいとの要請がなされることがある。というのも、公知のシミュレーション装置において損失電力により生じる熱により、(損失)熱を放出するための冷却アセンブリを設置する必要がある適用事例が多いからである。さらに、公知のシミュレーション装置のコストが高いという問題もある。その理由は、系統電圧接続端に接続されたシミュレーション装置から系統電圧接続端への電気の逆流が生じ、この逆流には、電力供給会社の厳しい条件が課されているためである。とりわけ逆流電気の周波数、位相および電圧振幅に関する上述の条件を満たすためには、高コストの技術的装置が必要であり、これを調達することは、通常は高い投資に繋がることとなる。
【0007】
かかる先行技術を背景として、本発明の課題は、従来技術をさらに発展させた、制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションするためのシミュレーション装置と、そのシミュレーション方法とを実現することである。
【0008】
前記課題は本発明では、独立請求項に記載のシミュレーション装置およびシミュレーション方法により解決される。従属請求項に本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0009】
本発明は、制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションするためのシミュレーション装置を対象としており、シミュレーション装置は、制御装置に電気的に接続されているか、または電気的に接続可能であり、シミュレーション装置は、第1の負荷電流に影響を及ぼすための第1の電流操作手段と、第1のソース電流に影響を及ぼすための第2の電流操作手段とを備えており、シミュレーション装置はさらに、計算ユニットと、当該計算ユニット上にて実行可能なモデルコードとを備えており、モデルコードによって制御されることが可能な第1の電流操作手段を用いて、第1の負荷電流を調整することができ、第1の負荷電流は、制御装置の第1の負荷接続端へ伝送され、モデルコードによって制御されることが可能な第2の電流操作手段を用いて、第1のソース電流を調整することができ、第1のソース電流は、制御装置の第1の給電接続端へ伝送され、モデルコードが第1の電流操作手段および第2の電流操作手段に影響を及ぼすことにより、
・第1の負荷電流の少なくとも一部を第1のソース電流から回復することができ、および/または、
・第1のソース電流の少なくとも一部を第1の負荷電流から回復することができる
ように、当該モデルコードは構成されている。
【0010】
本発明の第2の対象は、制御装置に接続可能な周辺回路をシミュレーションする方法であり、当該方法では、周辺回路をシミュレートするためのシミュレーション装置に制御装置を電気的に接続し、シミュレーション装置は、
・制御装置の第1の負荷接続端に流れる第1の負荷電流に影響を及ぼすための第1の電流操作手段と、
・制御装置の第1の給電接続端に流れる第1のソース電流に影響を及ぼすための第2の電流操作手段と、
・モデルコードを実行する計算ユニットと
を備えており、
モデルコードと、当該モデルコードにより制御される第1の電流操作手段とを用いて、第1の負荷電流を調整し、
モデルコードと、当該モデルコードにより制御される第2の電流操作手段とを用いて、第1のソース電流を調整し、
・第1の負荷電流の少なくとも一部を第1のソース電流から回復するように、および/または、
・第1のソース電流の少なくとも一部を第1の負荷電流から回復するように
モデルコードは第1の電流操作手段および第2の電流操作手段を制御する。
【0011】
本発明のシミュレーション装置ないしは本発明の方法の利点は、同一の技術的適用分野の場合において公知のシミュレーション装置と比較して、ないしは公知のシミュレーション方法と比較して、
・正味エネルギー消費量が削減すること、および/または、
・公共の配電系統の系統電圧接続端へのいわゆる逆流が実質的に阻止され、または少なくとも低減すること、および/または、
・損失電力が低減すること
である。損失電力の低減が重要である理由は、特に、損失電力に起因して生じる熱を放熱するためには、通常、たとえばファン、冷却装置等の追加コストが必要になり、損失電力が上昇すると、そのコストは上昇する傾向にあるからである。
【0012】
以下、図面を参照して、本発明と、本発明の有利な実施形態とを詳細に説明する。図面中、同種の要素には同一の符号を付している。図中の実施形態は非常に概略化されている。概観しやすくするため、図面中または明細書中では、本発明の理解ないしは本発明の実施形態の理解に重要でない幾つかの詳細については省略している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の第1の電流操作手段の概略図と、計算ユニット、および、第1の電流操作手段に接続された制御装置の概略図であり、第1の電流操作手段の第1の負荷電流は、制御装置の第1の負荷接続端へ供給される。
【
図2】一実施形態の第2の電流操作手段の概略図と、計算ユニット、および、第2の電流操作手段に接続された制御装置の概略図であり、第2の電流操作手段の第1のソース電流は、制御装置の第1の給電接続端へ供給される。
【
図3】3相モータと電気化学的エネルギー蓄積器とをシミュレートする一実施例のシミュレーション装置の概略図、および、系統電圧接続端、トランス、整流手段ならびに制御装置の概略図である。
【0014】
本発明のシミュレーション装置100は少なくとも、
図1および
図3に一例として示された第1の電流操作手段150と、
図2および
図3に一例として示された第2の電流操作手段160とを備えている。シミュレーション装置はさらに、計算ユニットCUも備えており、これはたとえば、別個の筐体内に配置されているか、またはシミュレーション装置の複数の場所に「分散」して配置されている。計算ユニットCUが出力するデータないしは信号には、特に、第1の電流操作手段150および第2の電流操作手段160と、場合によっては1つまたは複数の他の電流操作手段170,180,190とに対して、各スイッチ制御手段152,162,172,182,192から影響を受ける出力電流に影響を及ぼすスイッチング信号として、たとえば、第1のソース電流IS1に影響を及ぼしまたは第1の負荷電流IL1に影響を及ぼすスイッチング信号として機能する信号も含む。具体的には、計算ユニットCUが出力した信号は、第1の電流操作手段150および第2の電流操作手段160のスイッチング特性と、場合によっては他の電流操作手段170,180,190のスイッチング特性とに影響を及ぼすものである。
【0015】
本発明のシミュレーション装置100を用いてシミュレートされる周辺回路は有利には、誘導負荷および電気化学的エネルギー蓄積器の双方のシミュレート表現である。制御装置DUTの第1の給電接続端C1および他の(ここでは第2の)給電接続端C2は、当該制御装置DUTの開発プロセスの後の段階において、すなわち、シミュレートされた環境での当該制御装置DUTのテストが完了した後に、通常は「実際の」電気化学的エネルギー蓄積器に、たとえばリチウムイオン電池セルまたは鉛蓄電池セルを含む電池または蓄電池に電気的に接続される。しかし、本発明の説明ではこの「実際の」電気化学的エネルギー蓄積器についてはこれ以上詳細に説明しない。というのも本発明の対象は、時間的に前に行われる制御装置DUTのテストのために「実際の」電気化学的エネルギー蓄積器を置き換えるシミュレーション装置と、対応する方法だからである。計算ユニットCU上にて実行可能である、上記装置および上記方法のために構成されたモデルコードは、本発明の思想における前提条件とすることができる。というのも、モデルコードの作成は当業者の通常業務上の措置だからである。計算ユニットCU上のモデルコードを交換することにより、シミュレーション装置100は、シミュレート対象の変更された負荷および/またはシミュレート対象の変更された電気化学的エネルギー蓄積器の定義された特性に合わせてフレキシブルに適宜変更することができる。電気的特性および他の特性を有する、既に述べた誘導負荷および上記の電気化学的エネルギー蓄積器は双方とも、1つの数学的モデルによって、または複数の(場合によっては互いに結合された)数学的モデルによって記述される。しかし、その詳細は本発明の対象ではない。実行可能なモデルコードの形態で計算ユニットCU上にて実行される上述のモデルは、当業者に知られている。モデルコードが構成変更可能である場合、具体的には特に、シミュレート対象の複数の異なる周辺回路、たとえばシミュレート対象の複数の異なるモータに合わせてフレキシブルに適宜調整可能に構成されている場合、実際の各周辺回路の指定の特性量を表す構成データをモデルコードに追加するためのユーザインタフェースを設けることができる。たとえば、新規の周辺回路をシミュレートする必要が生じた場合には直ちに、モデルコード内のモータコイルの数ならびにインダクタンス値、ロータの質量慣性トルク等の構成データを適応調整できるように構成することができる。モデルコードを有利にはパラメータ化できる構成データの他の一例は、電気化学的エネルギー蓄積器のパラメータ、具体的にはたとえば、エネルギー蓄積セルの種類(たとえば鉛蓄電池セルまたはリチウムイオン蓄電池セル)、蓄電池セルの数、蓄電池セルの充電状態、および/または、蓄電池セルの平均温度等である。
【0016】
図1では、第1の電流操作手段150から、制御される第1の負荷電流IL1が出力され、この第1の負荷電流IL1は、制御装置DUTの第1の負荷接続端W1へ供給される。第1の測定点158において、有利には(
図1には示されていない)測定抵抗における電圧測定を行うことにより、第1の負荷接続端W1における電圧値が測定され、これにより求められた第1の測定量156は有利には、信号接続を介して第1のスイッチ制御手段152に接続された計算ユニットCUへ直接供給される。特に有利には、第1の測定量156は、参照電位に対する第1の負荷接続端W1における測定された第1の電圧値だけでなく、さらに、第1の負荷電流IL1の測定された電流値も含む。よって特に有利なのは、第1の測定点158が第1の負荷接続端W1における電圧測定機能と、第1の負荷電流IL1を測定する電流測定機能との双方を具備することである。
【0017】
よって、第1の測定点158を介して第1の負荷接続端W1における第1の測定量156を測定技術により検出した後、計算ユニット上にて実行可能である数学的なモデルコードを用いて、モデルコードに従ってシミュレート対象の「実際の」負荷の動作データを数学的に考慮して制御装置DUTの第1の負荷接続端W1に流れるべき相応の第1の負荷電流IL1を算出することにより、当該負荷を、具体的にはたとえばモータ巻線をシミュレートし、有利には第1の負荷電流IL1の当該目標電流値を、第1の電流操作手段150へ伝送する。次に、第1の電流操作手段150は直ちに、第1の半導体スイッチ153と第2の半導体スイッチ154とを適切に制御することにより、制御装置DUTの第1の負荷接続端へ、上述のモデルコードにより算出された目標値の第1の負荷電流IL1を供給する。
図1および/または
図2および/または
図3に示されている半導体スイッチ、すなわち第1の半導体スイッチ153、第2の半導体スイッチ154、第3の半導体スイッチ163、第4の半導体スイッチ164、および、
図3に示されている、第3の接続点171、第4の接続点181ならびに第5の接続点191の各接続点にそれぞれ対ごとに接続された他の半導体スイッチは、有利には、それぞれ対応するスイッチ制御手段により出力される各パルス幅変調された電圧信号に依存して、スイッチング動作する。詳細に説明すると、
図1,2および3に示されている実施形態では各スイッチ制御手段は、2つの対応する半導体スイッチを制御する。すなわち、
第1のスイッチ制御手段152は第1の半導体スイッチ153と第2の半導体スイッチ154とを制御し、
第2のスイッチ制御手段162は第3の半導体スイッチ163と第4の半導体スイッチ164とを制御し、
第3のスイッチ制御手段172は、第3の接続点171に接続された、図示の両半導体スイッチを制御し、
第4のスイッチ制御手段182は、第4の接続点181に接続された、図示の両半導体スイッチを制御し、
第5のスイッチ制御手段192は、第5の接続点191に接続された、図示の両半導体スイッチを制御する。
【0018】
計算ユニットCUと第1のスイッチ制御手段152との信号接続は、
図1および
図3においてそれぞれ双方向矢印により記号表示されている。原理的には、計算ユニットCUから第1のスイッチ制御手段152への一方向の信号接続で十分である。しかしオプションとして、計算ユニットCUと第1のスイッチ制御手段152との間に双方向の信号接続を設けることもできる。これはたとえば、第1の電流操作手段150の一実施態様であって、第1の測定量156をまず第1のスイッチ制御手段152へ伝送してから、次にたとえば当該第1のスイッチ制御手段152から計算ユニットCUへの信号接続を介して第1の測定量156を伝送する一実施態様に当てはまる。計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードは有利には、各時間幅において、周期的に更新される第1の測定量156に基づき、第1の電流操作手段150に影響を及ぼすための第1の設定量を算出する。上記時間幅は特に有利にはモデルサンプリング期間であり、有利には、事前に定義された最大時間長を有する。上述の影響は有利には、第1の設定量が計算ユニットCUまたは第1のスイッチ制御手段152のいずれかによって周期的に、第1の半導体スイッチ153および第2の半導体スイッチ154を制御するためのスイッチング信号に変換されることにより及ぼされる。
【0019】
数値シミュレーションの技術分野では、モデルコードがたとえば少なくとも1つの第1の測定値ないしは少なくとも1つの第1のセンサ値を処理する1つの時間幅であって、当該モデルコードがそのまま当該1つの時間幅内で直接、第1の測定値ないしは第1のセンサ値に基づいて、制御対象である少なくとも1つの物理的特性量に影響を及ぼすための少なくとも1つの設定量を算出して出力する時間幅の量は、しばしば「モデルサンプリング期間」と称されることが多い。たとえば、数値シミュレーションでは数マイクロ秒のみのモデルサンプリング期間が通常である。よって本発明では、モデルコードを用いる「サンプリング」との用語は、モデルコードを用いる「信号/データの周期的処理」であって、各モデルサンプリング期間内において少なくとも1つの測定値ないしはセンサ値がモデルコードによって処理され、かつ各モデルサンプリング期間内に、対応する設定量が当該モデルコードによって算出される処理の意味であると解する。
【0020】
図1に示されている、第1の半導体スイッチ153と第2の半導体スイッチ154との第1の接続点151には、これら両半導体スイッチ153,154のスイッチング状態に応じて、正の給電電圧Vp+から負の給電電圧Vp−までの値範囲内の電位が生じ得る。第1の接続点151において電位の正の値領域限界すなわち正の給電電圧Vp+が生じ得るのか否か、および、第1の接続点151において電位の負の値領域限界すなわち負の給電電圧Vp−が生じ得るのか否かは、これら両半導体スイッチ153,154のうち現在最大導通状態にされている半導体スイッチの内部抵抗の無視可能性と、制御装置DUTの第1の負荷接続端W1における電位が第1の接続点151の電位に及ぼす影響とに依存する。しかし、本発明が実施可能であるためには、第1の接続点151において電位の正または負の値領域限界に常に達することができるか否かは重要ではない。というのも、これら2つの値領域限界に達することは、制御装置DUTの周辺を高リアリティでシミュレーションするための要件ではないからである。
【0021】
原則的には、第1の測定量156を第1のスイッチ制御手段152へ直接伝送し、この第1のスイッチ制御手段152から計算ユニットCUへ伝送することができる。しかし有利なのは、第1の測定量156が計算ユニットCUへ伝送され、モデルコードを用いて第1の測定量から算出された第1の設定量が計算ユニットCUを介して(場合によっては、変換された信号方式で)第1のスイッチ制御手段152へ伝送される構成である。本段落において述べた第1の測定量の「転送」のための択一的構成は、
図1において、計算ユニットCUないしは第1のスイッチ制御手段152に繋がる2つの破線の矢印によって示されている。
【0022】
第1のスイッチ制御手段152は有利には、正の給電電圧Vp+から第1の負荷接続端W1への接続を形成するための第1の半導体スイッチ153と、負の給電電圧Vp−から第1の負荷接続端W1への接続を形成するための第2の半導体スイッチ154との双方を制御する。もちろん、第1の半導体スイッチ153と第2の半導体スイッチ154とが同時に最大導通状態になることができないことは明らかである。というのも、両半導体スイッチが同時に最大導通状態になると正の給電電圧Vp+から負の給電電圧Vp−まで短絡が形成されてしまうからである。第1のスイッチ制御手段152は有利には、第2の半導体スイッチ154が当該第1のスイッチ制御手段152によって既に阻止状態にされていたか、ないしは同時に阻止状態にされる場合に初めて、第1の半導体スイッチ153を当該第1のスイッチ制御手段152によって導通状態にするように構成されている。また、第1のスイッチ制御手段152は有利には、第1の半導体スイッチ153が当該第1のスイッチ制御手段152によって既に阻止状態にされていたか、ないしは同時に阻止状態にされる場合に初めて、第2の半導体スイッチ154を当該第1のスイッチ制御手段152によって導通状態にするようにも構成されている。第1の半導体スイッチ153および/または第2の半導体スイッチ154が阻止状態であるにもかかわらず当該阻止状態の半導体スイッチ153,154に流れ得る(比較的小さい)リーク電流については、本願明細書では詳細に言及しない。というのも、これは本発明の理解には不要だからである。
【0023】
第1の半導体スイッチ153および第2の半導体スイッチ154のスイッチング動作の計算技術による準備は、原則的に複数の計算ユニットに「分散」して行うことができ(英語:distributed Computing)、たとえば、かかる準備の一部を計算ユニットCUにおいて行い、一部を第1のスイッチ制御手段152において行うことができる。ただし当該例は、第1のスイッチ制御手段152内に、計算ユニットCUの信号をさらに適切に処理する計算技術的手段が設けられていることを前提とする。
【0024】
第1の半導体スイッチ153および第2の半導体スイッチ154の状態に応じて、第1の負荷電流IL1の電流方向は第1の負荷接続端W1へ向かう方向になるか、または第1の負荷接続端W1から離れていく方向になる。もちろん、第1の負荷接続端W1と第1の接続点151との間に電位差が存在しない場合も生じることがあり、もちろん、このことによって第1の負荷電流IL1が遮断されることになる。計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードにより、第1のスイッチ制御手段152、および、これに対応する第1の半導体スイッチ153ならびに第2の半導体スイッチ154と協働して、当該モデルコードにより定められた第1の負荷電流IL1が、当該モデルコードにより定められた電流方向で、テスト対象の制御装置DUTの第1の負荷接続端W1へ供給される。
【0025】
有利にはシミュレーション実行中に、予め定められた時間間隔で、特に有利には各モデルサンプリング期間中に、第1の測定点158において第1の測定量156が得られる。この第1の測定量156は有利には、測定された絶対値および測定された極性の双方を表すものであり、第1の測定量156はモデルコードにより処理される。特に第1の測定点158において電圧測定を行うための参照電位は、有利には接地電位であり、特に有利には「共用接地電位」である。参照電位接続端は図面中には示されていないが、本願にて開示されている本発明の実施形態において存在するものである。
【0026】
「共用接地電位」とは、制御装置DUTの全ての負荷接続端W1,W2,W3と全ての給電接続端C1,C2とに対して実質的に同一の参照電位とみなすことができる接地電位をいう。具体的には、共用接地電位が存在する場合、第1の負荷接続端W1ならびに他の全ての負荷接続端W2,W3における電圧、および、第1の給電接続端C1および他の給電接続端C2における電圧はそれぞれ、この共用接地電位に対する電位差により表される。
【0027】
原則的には、第1の負荷接続端W1、ないしはテスト対象の制御装置DUTの負荷接続端W1,W2,W3には、当該制御装置DUTの定義された使用目的に応じて異なる負荷を、とりわけ誘導負荷を接続することができる。第1の給電接続端C1ないしは
図1から
図3までに示されている制御装置DUTの両給電接続端C1およびC2にも、1つまたは複数の異なる電気化学的エネルギー蓄積器を接続することができる。よって、ユーザは本発明のシミュレーション装置100を用いて、多数の異なる負荷および異なる電気化学的エネルギー蓄積器を、とりわけ多数の上述の誘導負荷、電池または蓄電池をシミュレートすることができるようになる。こうするためには、シミュレーションモデルないしはモデルコードのパラメータ表現変更および/または適応調整が有利であるかまたは必要になることがあるが、これについては、本発明では説明を要しない。というのも、シミュレーションモデルないしはモデルコードの作成、適応調整および/またはパラメータ表現は、当該技術分野の知識を有する者に周知だからである。テスト対象の制御装置DUTは有利には、給電接続端C1,C2および負荷接続端W1,W2,W3の他に別の接続端Xも有する。制御装置DUTの負荷接続端W1,W2,W3は有利には、後の使用時にモータ巻線の各接続端に接続されるために構成されている。シミュレーションでは、第1の半導体スイッチ153および第2の半導体スイッチ154の状態に応じて電流IL1が第1の負荷接続端W1から第1の電流操作手段150へ、または第1の電流操作手段150から第1の負荷接続端W1へ流れるように、第1の負荷接続端W1は第1の電流操作手段150に接続される。
【0028】
制御装置DUTの上述の別の接続端Xは有利には、
・センサ信号の1つ/複数の入力端、および/または、
・たとえばCANバスインタフェースならびに/もしくはフレックスレイインタフェースならびに/もしくはイーサネットインタフェース等の、ネットワーク接続用の1つ/複数のインタフェース、および/または、
・参照電位に対する1つ/複数の接続端、および/または、
・1つ/複数のアナログ信号出力端、および/または、
・動作電圧入力用の1つ/複数の入力端、および/または、
・動作電圧出力用の1つ/複数の出力端、および/または、
・診断装置用の1つ/複数のインタフェース
を含む。これらの別の接続端Xは、例示列挙に過ぎない。
【0029】
有利には、第1の接続点151と第1の負荷接続端W1との間に第1のコイルL1が配置されている。
【0030】
第1の電流操作手段150の第1の負荷電流IL1は、第1の接続点151から制御装置DUTへ送られるので、有利には、対応する電流‐電圧特性曲線{IL1=f(第1の接続点151における電圧−第1の負荷接続端W1における電圧)}に関して第1のコイルL1からも、特にそのインダクタンスによって影響を受ける。ここで電流‐電圧値対の時間依存性について詳細に言及することは不要である。というのも、コイルの電流が可変である場合のかかる時間依存性は当業者に周知だからである。第1の半導体スイッチ153および第2の半導体スイッチ154の使用されるスイッチング周波数に応じて、たとえば第1のコイルL1が第1の電流操作手段150に包含されていない場合には第1のコイルL1のインダクタンスに代えて、または第1のコイルL1のインダクタンスと共に、第1の接続点151と第1の負荷接続端W1との間の接続線路の線路インダクタンスも、たとえばモデルコードにおいて考慮しなければならない。
【0031】
求められた第1の測定量156は、有利には計算ユニットCUへ直接供給される。このことに代えてたとえば、第1の電流操作手段150の第1の測定量156に含まれる情報を「分割」して伝送すること、具体的にはたとえば、第1の負荷接続端W1において測定された電圧値を計算ユニットCUへ直接伝送し、かつ第1の負荷電流IL1の測定された電流値を第1のスイッチ制御手段152へ伝送することも可能である。後者の実施例は、第1のスイッチ制御手段152が、測定された第1の負荷電流IL1と計算ユニットCUから第1のスイッチ制御手段152へ伝送された情報とに基づいて第1の負荷電流IL1に影響を及ぼすために適切な(図示されていない)情報処理手段を有する場合に有利である。
【0032】
正の給電電圧Vp+および負の給電電圧Vp−の特に有利な供給構成を備えたシミュレーション装置100の有利な実施形態については、
図3についての記載において詳細に説明する。
図2では、第2の電流操作手段160から、制御される第1のソース電流IS1が出力され、この第1のソース電流IS1は、制御装置DUTの第1の給電接続端C1へ供給される。第2の測定点168において、有利には(
図2には示されていない)測定抵抗における電圧測定を行うことにより、第1の給電接続端C1における電圧が測定されて、第2の測定量166が求められる。特に有利には、第2の測定量166は、参照電位に対する第1の給電接続端C1における測定された電圧値だけでなく、さらに、第1のソース電流IS1の測定された電流値も含む。よって特に有利なのは、第2の測定点168が第1の給電接続端C1における電圧測定機能と、第1のソース電流IS1を測定する電流測定機能との双方を具備することである。
【0033】
求められた第2の測定量166は、有利には計算ユニットCUへ直接供給される。このことに代えてたとえば、第2の電流操作手段160の第2の測定量166に含まれる情報を「分割」して伝送すること、具体的にはたとえば、第1の給電接続端C1において測定された電圧値を計算ユニットCUへ直接伝送し、かつ第1のソース電流IS1の測定された電流値を第2のスイッチ制御手段162へ伝送することも可能である。後者の実施例は、第2のスイッチ制御手段162が、測定された第1のソース電流IS1と計算ユニットCUから第2のスイッチ制御手段162へ伝送された情報とに基づいて第1のソース電流IS1に影響を及ぼすために適切な(図示されていない)情報処理手段を有する場合に有利である。
【0034】
有利には、第2の接続点161と第1の給電接続端C1との間に第2のコイルL2が配置されている。第2の電流操作手段160の第1のソース電流IS1は、第2の接続点161から制御装置DUTへ送られるので、第1のソース電流IS1に対応する電流‐電圧特性曲線{IS1=f(第2の接続点161における電圧−第1の給電接続端C1における電圧)}は第2のコイルL2からも、特にそのインダクタンスによって影響を受ける。ここで電流‐電圧値対の時間依存性について詳細に言及することは不要である。というのも、コイルの電流が可変である場合のかかる時間依存性は当業者に周知だからである。第3の半導体スイッチ163および第4の半導体スイッチ164の使用されるスイッチング周波数に応じて、たとえば第2のコイルL2が第2の電流操作手段160に包含されていない場合には第2のコイルL2のインダクタンスに代えて、または第2のコイルL2のインダクタンスと共に、第2の接続点161と第1の給電接続端C1との間の接続線路の線路インダクタンスも、たとえばモデルコードにおいて考慮しなければならない。
【0035】
よって、第2の測定点168を介して第1の給電接続端C1における電圧を測定技術により検出した後、計算ユニットCU上にて実行可能である数学的なモデルコードを用いて、有利には、モデルコードに従ってシミュレート対象の「実際の」電気化学的エネルギー蓄積器の動作データを数学的に考慮して制御装置DUTの第1の給電接続端C1に流れるべき相応の第1のソース電流IS1を算出することにより、当該電気化学的エネルギー蓄積器を、具体的にはたとえば蓄電池または電池をシミュレートし、有利には第1のソース電流IS1の当該目標電流値を、第2の電流操作手段160へ伝送する。次に、第2の電流操作手段160は直ちに、第3の半導体スイッチ163と第4の半導体スイッチ164とを適切に制御することにより、制御装置DUTの第1の給電接続端C1における第1のソース電流IS1を、上述のモデルコードにより算出された目標値に調整する。
【0036】
計算ユニットCUと第2のスイッチ制御手段162との信号接続は、
図2および
図3においてそれぞれ双方向矢印により記号表示されている。原理的には、計算ユニットCUから第2のスイッチ制御手段162への一方向の信号接続で十分である。しかしオプションとして、計算ユニットCUと第2のスイッチ制御手段162との間に双方向の信号接続を設けることもできる。これはたとえば、第2の電流操作手段160の一実施態様であって、第2の測定量166をまず第2のスイッチ制御手段162へ伝送してから、次にたとえば当該第2のスイッチ制御手段162から計算ユニットCUへの信号接続を介して第2の測定量166を伝送する一実施態様に当てはまる。
【0037】
計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードは有利には、各時間幅において、周期的に更新される第2の測定量166に基づき、第2の電流操作手段160に影響を及ぼすための第2の設定量を算出する。上記時間幅は特に有利にはモデルサンプリング期間であり、有利には、事前に定義された最大時間長を有する。上述の影響は有利には、第2の設定量が計算ユニットCUまたは第2のスイッチ制御手段162のいずれかによって周期的に、第3の半導体スイッチ163および第4の半導体スイッチ164を制御するためのスイッチング信号に変換されることにより及ぼされる。
【0038】
図2に示されている、第3の半導体スイッチ163と第4の半導体スイッチ164との第2の接続点161には、これら両半導体スイッチ163,164のスイッチング状態に応じて、正の給電電圧Vp+から負の給電電圧Vp−までの値範囲内の電位が生じ得る。第2の接続点161において電位の正の値領域限界すなわち正の給電電圧Vp+が生じ得るのか否か、または第2の接続点161において電位の負の値領域限界すなわち負の給電電圧Vp−が生じ得るのか否かは、もちろん、
図2に示されているこれら両半導体スイッチ163,164のうち現在最大導通状態にされている半導体スイッチの内部抵抗の無視可能性と、制御装置DUTの第1の給電接続端C1における電位が第2の接続点161の電位に及ぼす影響とに依存する。しかし、本発明が実施可能であるためには、第2の接続点161において電位の正または負の値領域限界に常に達することができるか否かは重要ではない。というのも、これら2つの値領域限界に達することは、制御装置DUTの周辺を高リアリティでシミュレーションするための要件ではないからである。
【0039】
原則的には、第2の測定量166を第2のスイッチ制御手段162へ直接伝送し、この第2のスイッチ制御手段162から計算ユニットCUへ伝送することができる。しかし有利なのは、第2の測定量166が計算ユニットCUへ伝送され、モデルコードを用いて第2の測定量から算出された第2の設定量が計算ユニットCUを介して(場合によっては、変換された信号方式で)第2のスイッチ制御手段162へ伝送される構成である。本段落において述べた第2の測定量の「転送」のための択一的構成は、
図2において、計算ユニットCUないしは第2のスイッチ制御手段162に繋がる2つの破線の矢印によって示されている。
【0040】
第2のスイッチ制御手段162は有利には、正の給電電圧Vp+から第1の給電接続端C1への接続を形成するための第3の半導体スイッチ163と、負の給電電圧Vp−から第1の給電接続端C1への接続を形成するための第4の半導体スイッチ164との双方を制御する。もちろん、第3の半導体スイッチ163と第4の半導体スイッチ164とが同時に最大導通状態になることができないことは明らかである。というのも、両半導体スイッチが同時に最大導通状態になると正の給電電圧Vp+から負の給電電圧Vp−まで短絡が形成されてしまうからである。第2のスイッチ制御手段162は有利には、第4の半導体スイッチ164が当該第2のスイッチ制御手段162によって既に阻止状態にされていたか、ないしは同時に阻止状態にされる場合に初めて、第3の半導体スイッチ163を当該第2のスイッチ制御手段162によって導通状態にするように構成されている。また、第2のスイッチ制御手段162は有利には、第3の半導体スイッチ163が当該第2のスイッチ制御手段162によって既に阻止状態にされていたか、ないしは同時に阻止状態にされる場合に初めて、第4の半導体スイッチ164を当該第2のスイッチ制御手段162によって導通状態にするようにも構成されている。
【0041】
第3の半導体スイッチ163および/または第4の半導体スイッチ164が阻止状態であるにもかかわらず阻止状態の半導体スイッチ163,164に流れ得る(比較的小さい)リーク電流については、本願明細書では詳細に言及しない。というのも、これは本発明の理解には不要だからである。
【0042】
第3の半導体スイッチ163および第4の半導体スイッチ164のスイッチング動作の計算技術による準備は、原則的に複数の計算ユニットに「分散」して行うことができ(英語:distributed Computing)、たとえば、かかる準備の一部を計算ユニットCUにおいて行い、一部を第2のスイッチ制御手段162において行うことができる。ただし当該例は、第2のスイッチ制御手段162内に、計算ユニットCUの信号をさらに適切に処理する計算技術的手段が設けられていることを前提とする。
【0043】
第3の半導体スイッチ163および第4の半導体スイッチ164の状態に応じて、第1のソース電流IS1の電流方向は第1の給電接続端C1へ向かう方向になるか、または第1の給電接続端C1から離れていく方向になる。もちろん、第1の給電接続端C1と第2の接続点161との間に電位差が存在しない場合も生じることがあり、もちろん、このことによって第1のソース電流IS1が遮断されることになる。計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードにより、第2のスイッチ制御手段162、および、これに対応する第3の半導体スイッチ163ならびに第4の半導体スイッチ164と協働して、当該モデルコードにより定められた第1のソース電流IS1が、当該モデルコードにより定められた電流方向で、テスト対象の制御装置DUTの第1の給電接続端C1へ供給される。
【0044】
有利にはシミュレーション実行中に、予め定められた時間間隔で、特に有利には各モデルサンプリング期間中に、第2の測定点168において第2の測定量166が得られる。この第2の測定量166は有利には、測定された絶対値および測定された極性の双方を表すものである。有利には、第2の測定量166は第2の電圧測定量である。すなわち、参照電位に対する第2の測定点168における電圧および極性を表すものである。特に第2の測定点168において電圧測定を行うための参照電位は、有利には接地電位であり、特に有利には「共用接地電位」である。有利には、第2の接続点161と第1の給電接続端C1との間に第2のコイルL2が配置されている。
【0045】
図3では、制御装置DUT、第1の電流操作手段150、第2の電流操作手段160および計算ユニットCUの他にさらに、別の電流操作手段すなわち第3の電流操作手段170、第4の電流操作手段180および第5の電流操作手段190も概略的に示されている。有利には、全ての電流操作手段150,160,170,180,190が同一構成となっている。
図3に示された実施例のシミュレーション装置100は、
・制御装置DUTの3つの負荷接続端W1,W2,W3のそれぞれ1つに接続されている3つの電流操作手段150,180,190と、
・制御装置DUTのそれぞれ1つの給電接続端C1,C2に接続されている2つの電流操作手段160,170と
を備えている。
【0046】
図3の、それぞれ一点鎖線で囲われている全部で5つの電流操作手段150,160,170,180,190は、計算ユニットCU、正の給電電圧Vp+ならびに負の給電電圧Vp−に対する接続端、および電気的接続線路と共に、同図の有利な実施形態のシミュレーション装置100の最も重要な構成要素であり、当該実施形態は二点鎖線(・・―・・―)によって囲まれて示されている。基本的にモデルコードによって、各電流操作手段150,160,170,180,190に対してそれぞれ対応する設定量が供給されることが明らかである。したがってモデルコードは、各電流操作手段150,160,170,180,190を個別に制御するための計算規則を含む。有利には、シミュレーションの実行中に各モデルサンプリング期間においてモデルコードを用いて各電流操作手段150,160,170,180,190ごとに設定量が更新される。
【0047】
有利には、第1の給電接続端C1および/または他の給電接続端C2にそれぞれ容量が、たとえばそれぞれ接続されるキャパシタによって加えられる。かかる容量ないしはかかるキャパシタは、第1の給電接続端C1および/または他の給電接続端C2における電圧変化を遅延させる。オプションとしてさらに、第1の負荷接続端W1および/または他の(ここでは第2の)負荷接続端W2および/または他の(ここでは第3の)負荷接続端W3にそれぞれ容量が、たとえばそれぞれ接続されるキャパシタによって加えられ、これによって第1の負荷接続端W1および/または他の(ここでは第2の)負荷接続端W2および/または他の(ここでは第3の)負荷接続端W3において電圧変化の遅延が引き起こされることも可能である。本段落において言及した容量ないしはキャパシタにより、制御装置の各対応する接続端の「デカップリング」がなされる。
【0048】
図3はさらに、系統電圧接続端500、トランス400および整流手段も概略的に示す。本発明では、上述の電気回復にもかかわらず、シミュレーション中に「無損失」エネルギー循環を達成することはできないことに留意すべきである。よって、シミュレーション装置の動作中には、特に当該シミュレーション装置において生じるエネルギー損失を補償するため、たとえば、系統電圧接続端500を介して外部エネルギー供給を確保しなければならない。この系統電圧接続端500の電圧は、まずトランス400によって変圧された後、整流手段300によって直流電圧に変換される。整流手段300は出力端において、シミュレーション装置100のための正の給電電圧Vp+と負の給電電圧Vp−とを出力する。
【0049】
ここで留意すべき点は、正の給電電圧Vp+および負の給電電圧Vp−を基本的に他の手法で供給することができ、たとえば蓄電池を用いて供給することができることである。
【0050】
図3の実施例において示されているようにシミュレーション装置100を用いて、3つの巻線接続端を有する3相動作用の交流モータをシミュレートする場合、シミュレーションのために有利なのは、交流モータの「実際の」巻線接続端に代えて、シミュレートされる巻線接続端ごとにそれぞれ電流操作手段150,180,190を、制御装置DUTのそれぞれ1つの負荷接続端W1,W2,W3に接続することである。本実施例を幾らか柔軟な構成にするため、
図3では特に以下の接続構成を設ける:
・有利には制御装置DUTの後の「実際の」使用時に交流モータの第1の巻線接続端に接続される、制御装置DUTの第1の負荷接続端W1は、シミュレーションを行うため、第1の巻線接続端に接続される代わりに、当該第1の負荷接続端W1と第1の接続点151との間に第1の負荷電流IL1を流せるように、第1の電流操作手段150に接続される。
・有利には制御装置DUTの後の「実際の」使用時に交流モータの第2の巻線接続端に接続される、制御装置DUTの第2の負荷接続端W2は、シミュレーションを行うため、第2の巻線接続端に接続される代わりに、当該第2の負荷接続端W2と第4の接続点181との間に第2の負荷電流IL2を流せるように、他の(ここでは第4の)電流操作手段180に接続される。
・有利には制御装置DUTの後の「実際の」使用時に交流モータの第3の巻線接続端に接続される、制御装置DUTの第3の負荷接続端W3は、シミュレーションを行うため、第3の巻線接続端に接続される代わりに、当該第3の負荷接続端W3と第5の接続点191との間に第3の負荷電流IL3を流せるように、他の(ここでは第5の)電流操作手段190に接続される。
・有利には制御装置DUTの後の「実際の」使用時に電気化学的エネルギー蓄積器の第1の接続端に接続される、制御装置DUTの第1の給電接続端C1は、シミュレーションを行うため、第1の接続端に接続される代わりに、当該第1の給電接続端C1と第2の接続点161との間に第1のソース電流IS1を流せるように、(ここでは第2の)電流操作手段160に接続される。
・有利には制御装置DUTの後の「実際の」使用時に電気化学的エネルギー蓄積器の第2の接続端に接続される、制御装置DUTの他の給電接続端C2は、シミュレーションを行うため、第2の接続端に接続される代わりに、当該他の給電接続端C2と第3の接続点171との間に第2のソース電流IS2を流せるように、他の(ここでは第3の)電流操作手段170に接続される。
【0051】
電流操作手段150,160,170,180,190の(有利には同一の)構成の記載および概略的な図から、各電流操作手段から出力される電流IS1,IS2,IL1,IL2,IL3の絶対値およびその電流方向の双方が、モデルコードを用いて調整できることが明らかである。有利には、各モデルサンプリング期間中に、各電流操作手段150,160,170,180,190から制御装置DUTへ出力される各電流IS1,IS2,IL1,IL2,IL3と、各負荷接続端W1,W2,W3および各給電接続端C1,C2とに印加される、参照電位に対する電圧とがそれぞれ、各電流操作手段に対応する、各対応する測定点158,168,178,188,198における測定量156,166,176,186,196を用いて検査される。
図3に示されている実施形態では、有利にはIS1,IS2,IL1,IL2,IL3の参照電位に対する電圧測定と電流測定とを行うために構成されている、各電流操作手段150,160,170,180,190の各測定点158,168,178,188,198はそれぞれ、制御装置DUTの給電接続端C1,C2と負荷接続端W1,W2,W3との群のうち1つの接続端に対応する。
【0052】
本発明の一発展形態のシミュレーション装置では、周辺回路をシミュレートしたものは、第1の電流操作手段150に対応する、第1の誘導負荷のシミュレート表現と、第2の電流操作手段160に対応する、電気化学的エネルギー蓄積器のシミュレート表現とを含み、かつ、正の給電電圧Vp+を供給するための接続端は第1の電流操作手段150および第2の電流操作手段160の双方に接続されており、負の給電電圧Vp−を供給するための接続端は第1の電流操作手段150および第2の電流操作手段160の双方に接続されている。
【0053】
本発展形態では、誘導負荷をシミュレートしたものと電気化学的エネルギー蓄積器をシミュレートしたものとは、同一のシミュレーション装置100に包含される。誘導負荷のシミュレーションはたとえば、計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードを用いて各モデルサンプリング期間中に算出される第1の負荷電流IL1を第1の電流操作手段150が制御装置DUTの第1の負荷接続端W1へ出力することにより行われる。「誘導負荷」とは本発明では、たとえば電磁石、チョークコイルまたはモータをいう。いわゆる「純粋な抵抗負荷」とは異なり、誘導負荷では誘導性リアクタンスは無視できる程度ではなく、通常は、特にたとえば対応するモデルコードを用いて各電流‐時間特性曲線を算出するために、誘導性リアクタンスを使用しなければならない。電気化学的エネルギー蓄積器のシミュレーションはたとえば、計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードを用いて各モデルサンプリング期間中に算出される第1のソース電流IS1を第2の電流操作手段160が制御装置DUTの第1の負荷接続端W1へ出力することにより行われる。第1の負荷電流IL1の少なくとも一部を第1のソース電流IS1から回復すること、または、第1のソース電流IS1の少なくとも一部を第1の負荷電流IL1から回復することは、正の給電電圧Vp+に対する接続端の上述の電気的接続または負の給電電圧Vp−に対する接続端の上述の電気的接続によって可能になる。
【0054】
上述の1つのシミュレーション装置100において誘導負荷のシミュレーションと電気化学的エネルギー蓄積器のシミュレーションとを組み合わせることが有利である理由は、特に、制御装置DUTの技術的周辺をシミュレートしたものにおいて制御装置DUTをテストする多くの現場に即したシミュレーションシナリオにおいて、第1の負荷電流IL1の絶対値と第1のソース電流IS1の絶対値とが平衡しているからである。また、かかる理由により、第2の電流操作手段160のための第1の電流操作手段150からの上述の構成の電気エネルギーの「リサイクル」ないしは回復、またはその逆方向の「リサイクル」ないしは回復が、本発明を使用することにより、従来技術の解決手段と比較して稼働コスト上の利点となることもできる。
【0055】
本発明の他の一実施形態のシミュレーション装置では、第1の電流操作手段150と第2の電流操作手段160とは同一構成である。第1の電流操作手段150と第2の電流操作手段160とが同一構成であることの利点は、モデルコードの作成およびモデルパラメータ表現が簡素化することである。というのも、さらに両電流操作手段150,160の周辺条件および設定量も同一である場合には、たとえば温度に起因する誤差または素子公差が無視できる程度である限り、出力される電流すなわち第1の負荷電流IL1と第1のソース電流IS1とが同一であるとみなすことができるからである。また、第1の電流操作手段150と第2の電流操作手段160とが同一であることにより、その製造、保守および修理も簡素化することができる。
【0056】
シミュレーション装置100の他の一実施形態では、モデルサンプリング期間の時間的に連続するN個のシーケンスで、当該N個のシーケンスの各モデルサンプリング期間において第1の負荷電流(IL1)を第1のソース電流(IS1)に依存して変化させるべく、または、第1のソース電流(IS1)を第1の負荷電流(IL1)に依存して変化させるべく、第1の電流操作手段(150)と第2の電流操作手段(160)とに時間的に整合して影響を及ぼすことができるように構成されている。上述の時間的整合、および、第1のソース電流IS1に対する第1の負荷電流IL1の上述の依存関係、または、第1の負荷電流IL1に対する第1のソース電流IS1の依存関係は、有利にはモデルコードにて固定化されている。こうするためにはたとえば、第1の電流操作手段150に影響を及ぼすための設定量の算出に、第2の電流操作手段160の特性量、たとえば、第2の電流操作手段160の設定量または第2の測定量166を使用する。シミュレーション装置100の本実施形態では、上述の時間的整合、および、第1のソース電流IS1に対する第1の負荷電流IL1の上述の依存関係、または、第1の負荷電流IL1に対する第1のソース電流IS1の依存関係が、N個のモデルサンプリング期間にわたって確立されている。ここでNは、少なくとも2である整数である。すなわち、N≧2である。本発明の当該実施形態の利点は、上述の時間的整合と第1のソース電流IS1に対する第1の負荷電流IL1の上述の依存関係または第1の負荷電流IL1に対する第1のソース電流IS1の依存関係とを用いない場合に確認できる精度と比較して、第1の負荷電流IL1および/または第1のソース電流IS1の調整を行うモデルコード設定による精度が向上することである。
【0057】
本発明の特に有利な一実施形態のシミュレーション装置は、第1の電流操作手段(150)および/または第2の電流操作手段(160)と同一構成である少なくとも1つの他の電流操作手段170,180,190を備えている。かかる実施形態の一例を、
図3に示しており、当該例は、電気化学的エネルギー蓄積器および3相交流モータをシミュレートするために適している。
図3に示されたシミュレーション装置100は、以下のものを備えている:
・他の(ここでは第3の)電流操作手段170。当該他の電流操作手段170の第3の接続点171は有利には、第3のコイルL3を介して上述の他の給電接続端C2に接続されている。
・他の(ここでは第4の)電流操作手段180。当該他の電流操作手段180の第4の接続点181は有利には、第4のコイルL4を介して上述の他の(ここでは第2の)負荷接続端W2に接続されている。
・他の(ここでは第5の)電流操作手段190。当該他の電流操作手段190の第5の接続点191は有利には、第5のコイルL5を介して上述の他の(ここでは第3の)負荷接続端W3に接続されている。
【0058】
上述の他の(ここでは第3の)電流操作手段170はシミュレーションにおいて、たとえば、第2のソース電流IS2を制御装置の他の給電接続端C2に供給するために用いられる。これにより、第2の電流操作手段160と協働して、第1の給電接続端C1および他の給電接続端C2における電気化学的エネルギー蓄積器のシミュレート対象の電流を、両電流方向でシミュレートすることができる。このことによって有利には、電気化学的エネルギー蓄積器をシミュレートしたものが、誘導負荷をシミュレートしたものに電気エネルギーを供給する動作形式の他にさらに、たとえば、誘導負荷をシミュレートしたものから電気化学的エネルギー蓄積器への電気エネルギーの逆流を含むいわゆる回生が行われる他の動作形式もシミュレートすることができる。第1の電流操作手段150および/または第2の電流操作手段160との比較において1つまたは複数の他の電流操作手段170,180,190が同一構成であることの利点の1つは、モデルコードの作成および/またはパラメータ表現を簡略化できることであるといえる。
【0059】
他の有利な一実施形態のシミュレーション装置100では、他の電流操作手段170,180,190は他の負荷接続端W2,W3または他の給電接続端C2に電気的に接続されている。1つの他の電流操作手段または複数の他の電流操作手段170,180,190がシミュレーション装置100において有利に使用できるか否かは、主に、制御装置DUTの電気伝送(とりわけ電力用)負荷接続端W1,W2,W3および/または給電接続端C1,C2であって、シミュレーション装置100に接続すべき負荷接続端W1,W2,W3および/または給電接続端C1,C2の総数に依存する。
【0060】
たとえば、第1の負荷電流IL1を第1の負荷接続端W1に供給するための第1の電流操作手段150と、第1のソース電流IS1を第1の給電接続端C1に供給するための第2の電流操作手段160とを備えたシミュレーション装置100により、第1の負荷接続端W1から参照電位(たとえば接地電位)まで接続されているモータ巻線をシミュレートしたものを1つのみ有する直流モータのシミュレーションと、第1の電極が給電接続端C1に接続されておりかつ第2の電極が参照電位(たとえば接地電位)に接続されている電気化学的エネルギー蓄積器をシミュレートしたものをシミュレートする、考えられ得る多くのシミュレーションシナリオを実施することができる。
【0061】
それに対して、3相モータと電気化学的エネルギー蓄積器とをシミュレーションの中でシミュレートするように構成されたシミュレーション装置100であって、負荷電流IL1,IL2,IL3がたとえば、それぞれ3相モータの3つの各相電流に有利には個別に影響を及ぼし、2つのソース電流IS1,IS2がたとえば、2つの電池電極に流れる各電流に有利にはそれぞれ個別に影響を及ぼすシミュレーション装置100には、有利には
図3に示されているように、全部で5つの電流操作手段150,160,170,180,190が備えつけられている。
【0062】
他の一実施形態のシミュレーション装置100では、第1の電流操作手段150または第2の電流操作手段160は上述の他の電流操作手段170,180,190に並列接続可能であるか、または並列接続されている。1つの電流操作手段150,160,170,180,190のみでは、かかる異常な大きさの負荷電流IL1,IL2,IL3または異常な大きさのソース電流IS1,IS2を表現することができないシミュレーション装置の実施例もあり得るが、本実施形態の利点は、シミュレーション装置100においてたとえば異常な大きさの負荷電流IL1,IL2,IL3または異常な大きさのソース電流IS1,IS2を生成することができ、これをたとえば給電接続端C1,C2または負荷接続端W1,W2に供給できることである。かかる場合、並列接続された複数の電流操作手段の電流加算、具体的にはたとえば、他の電流操作手段170に並列接続された第1の電流操作手段150または他の電流操作手段180に並列接続された第2の電流操作手段160の電流加算が、たとえば負荷電流IL1,IL2,IL3またはソース電流IS1,IS2の最大値を達成するための解決手段となる。
【0063】
後者の実施形態のシミュレーション装置100は、有利にはマトリクススイッチを備えており、マトリクススイッチは、第1の電流操作手段150または第2の電流操作手段160と他の電流操作手段170,180,190との並列接続を成すように構成されている。かかる実施形態のシミュレーション装置100の利点は特に、上述の並列接続をフレキシブルに、いわゆるリアルタイムで形成し、かつ解消して戻すことができること、具体的にはたとえば、並列接続の形成前の元の状態を復元できることである。マトリクススイッチの各スイッチング手段が、適切に指定されたスイッチング時間を有する場合、たとえば、1モデルサンプリング期間中に、負荷接続端W1,W2,W3または給電接続端C1,C2における選択的な電流増大のために上述の並列接続のいずれか1つを形成し、その直後のモデルサンプリング期間中に、たとえば電流操作手段150,160,170,180,190を負荷接続端W1,W2,W3と給電接続端C1,C2とに「均等に」割り当てるために後者の並列接続を解消することが可能である。
【0064】
本発明のシミュレーション装置100の他の一実施形態では、シミュレーション装置100は、制御装置DUTに接続されたモータをシミュレートするように構成されている。モータのシミュレーションは有利には、制御装置DUTの1つ/複数の負荷接続端W1,W2,W3において、当該1つ/複数の負荷接続端W1,W2,W3に対してそれぞれ設けられた1つ/複数の電流操作手段150,180,190によって、モデルコードを用いて算出された、当該1つ/複数の負荷接続端W1,W2,W3に対応する負荷電流IL1,IL2,IL3に調整することによって行われる。この負荷電流IL1,IL2,IL3は、モデルコードを用いて「実際の」負荷電流を模して再現されたものであり、各負荷電流IL1,IL2,IL3はそれぞれ、各モータ巻線電流が制御装置DUTによって供給された場合に実際のモータに流れる各モータ巻線電流に相当する。かかる実施形態のシミュレーション装置100の利点の1つは、いわばボタンを押すごとに、モデルコードを交換することによって、それぞれ異なるモータをシミュレートできることである。
【0065】
有利な一発展形態のシミュレーション装置100では、シミュレーション装置100から系統電圧接続端500への電流の逆流が阻止されているか、または実質的に阻止されている。たとえば、系統電圧接続端500が公共の3相交流配電網に対する接続端であるかまたは単相配電網に対する接続端であるかにかかわらず、後者の逆流の阻止により、公共の配電網へ相当量の逆流がなされる従来公知のシミュレーション装置とコストを比較した場合、シミュレーション装置100の調達および動作に係るコスト上の利点が達成される。というのも、かかる逆流には通常、公共の配電網を提供する電力供給会社の厳しい条件が課されているからである。とりわけ周波数、位相関係および電圧振幅に関して、逆流電流と公共の配電網との両立性を保証しなければならず、上述のシミュレーション装置からの逆流を阻止しない場合、または少なくとも許容最大限界値未満に抑えない場合、かかる両立性を保証するために高い追加投資を要する場合がある。
【0066】
有利な一実施形態のシミュレーション装置100ではモデルコードは、同一のモデルサンプリング期間において第1の負荷電流IL1および第1のソース電流IS1の双方の変化をトリガするものである。同一のモデルサンプリング期間において第1の負荷電流IL1および第1のソース電流IS1の双方の変化をトリガする利点は、第1の負荷電流IL1および第1のソース電流IS1の高リアリティのシミュレーションが可能になることである。他の有利な一実施形態では、シミュレーション装置100の計算ユニットCUはマイクロプロセッサおよび/またはFPGAを備えており、このマイクロプロセッサおよび/またはFPGAは第1の電流操作手段150および/または第2の電流操作手段160を制御するように構成されている。特に有利なのは、比較的高頻度で切り替わりかつ時間的に比較的問題ないモデルコード部分をマイクロプロセッサにおいて計算し、比較的低頻度で切り替わりかつ時間的に問題があるモデルコード部分をFPGAにおいて計算することである。モデルコード実行をマイクロプロセッサとFPGAとに分割することにより、マイクロプロセッサの強みを、具体的には特に、マイクロプロセッサのモデルコード変化の実装のフレキシビリティを有利に活用することができ、かつ、FPGAの強みを、特に、基本的な論理機能の実行時のFPGAの速度が特に高速であることと、基本的な論理機能の並列処理の特に良好な支援とを有利に活用することができる。
【0067】
本発明の他の有利な一実施形態のシミュレーション装置100では、第1の電流操作手段150および/または第2の電流操作手段160はそれぞれ、パワーFETまたはシリコンカーバイドFETを備えている。特に有利には、第1の半導体スイッチ153、第2の半導体スイッチ154、第3の半導体スイッチ163および第4の半導体スイッチ164はパワー電界効果トランジスタ、略してパワーFETであるか、またはシリコンカーバイド電界効果トランジスタ、略してシリコンカーバイドFETである。複数の異なるスイッチング手段、とりわけ複数の異なる半導体スイッチを用いた対比試験により、第1ならびに/もしくは第2のソース電流IS1ならびに/もしくはIS2を制御するため、および/または、第1ならびに/もしくは第2ならびに/もしくは第3の負荷電流IL1ならびに/もしくはIL2ならびに/もしくはIL3を制御するための半導体スイッチとして、パワーFETまたはシリコンカーバイドFETをシミュレーション装置100に設けた場合、本発明の構成のシミュレーション装置100は特に高信頼性かつ特に高リアリティでソース電流IS1,IS2および/または負荷電流IL1,IL2,IL3を生成することが判明している。本発明の有利な一実施形態の方法では、モデルコードはm番目のモデルサンプリング期間中、第1の電流操作手段150および第2の電流操作手段160の双方に対して、変化する作用を及ぼし、これにより、当該m番目のモデルサンプリング期間中に第1の負荷電流IL1および第1のソース電流IS1の双方を変化させる。上記にて述べた有利な時間的整合、および、第1の負荷電流IL1の変化と第1のソース電流IS1の変化との双方向の有利な依存関係は、既に述べたように、有利にはモデルコードにて固定化されている。こうするためにはたとえば、m番目のモデルサンプリング期間において、第1の電流操作手段150に影響を及ぼすための設定量の算出に、第2の電流操作手段160の特性量、たとえば、第2の電流操作手段160の設定量または第2の測定量166を使用する。特に有利なのは、本発明の後者の実施形態の方法である。というのもこれにより、上述の時間的整合と第1の負荷電流IL1および/または第1のソース電流IS1の変化の双方向の依存関係とを用いない場合に確認できる精度およびリアリティと比較して、第1の負荷電流IL1および/または第1のソース電流IS1の調整を行うモデルコード設定による精度およびリアリティを向上させることができるからである。
【0068】
本方法の有利な一実施形態では、m番目のモデルサンプリング期間中、第1の電流操作手段150の出力端または第2の電流操作手段160の出力端を、少なくとも1つの他の電流操作手段170,180,190の出力端に並列接続する。本方法のかかる実施形態の利点は、シミュレーション装置100においてm番目のモデルサンプリング期間中に、たとえば異常な大きさの負荷電流IL1,IL2,IL3または異常な大きさのソース電流IS1,IS2を生成することができ、これをたとえば給電接続端C1,C2または負荷接続端W1,W2,W3へ供給できることである。2つの電流操作手段の「並列接続」との文言は本発明では、両電流操作手段の出力端が、予め規定されたまたは算出された期間にわたって互いに接続され、これにより総和電流が得られることをいう。以下の実施例では、2つの電流操作手段の並列接続は、以下のようにより明確に説明することができる:本実施例では、第1の電流操作手段150は他の(ここでは第4の)電流操作手段180に並列接続されるように構成されており、こうするために、これら両電流操作手段150および180の出力端が接続される。よってこれにより、第1の負荷電流IL1と第2の負荷電流IL2との総和が形成される。これにより生成された総和電流=IL1+IL2は本実施例では、(図示されていない)マトリクススイッチを用いて第1の負荷接続端W1または第2の負荷接続端W2に接続される。ここで本実施例は終了する。第1の電流操作手段150または第2の電流操作手段160と他の電流操作手段170,180,190との並列接続による電流加算により、当該m番目のモデルサンプリング期間中に、上述の並列接続を行わない場合よりも、負荷電流IL1,IL2,IL3またはソース電流IS1,IS2の最大値を高くできるという利点が奏される。もちろん、本方法の当該実施形態を複数のモデルサンプリング期間に適用することも可能である。
【0069】
本発明の他の有利な一実施形態の方法では、計算ユニットCU上にて実行されるモデルコードを用いて、
・制御装置DUTの第1の負荷接続端W1において測定された第1の測定量156に依存して、第1の電流操作手段150に影響を及ぼすための第1の設定量を算出し、かつ、
・制御装置DUTの第1の給電接続端C1において測定された第2の測定量166に依存して、第2の電流操作手段160に影響を及ぼすための第2の設定量を算出し、その後、
・第1の設定量により影響を受けた第1の負荷電流IL1であって、第1の電流操作手段150から制御装置DUTの第1の負荷接続端W1へ出力される第1の負荷電流IL1が更新され、
・第2の設定量により影響を受けた第1のソース電流IS1であって、第2の電流操作手段160から制御装置DUTの第1の給電接続端C1へ出力される第1のソース電流IS1が更新される。
モデルコードを用いて第1の測定量156および第2の測定量166を上述のように考慮することにより、第1および第2の設定量の計算可能性が向上し、かつこれにより、第1の負荷電流IL1および第1のソース電流IS1を比較的迅速かつ正確に出力すること、すなわち最終的には、制御装置DUTの周辺回路の特に高リアリティのシミュレーションが達成されるという利点が奏される。
【0070】
特に有利なのは、本発明のシミュレーション装置100を用いて、または本発明のシミュレーション装置100のいずれかの実施形態を用いて、本発明の方法および本発明の方法の各実施形態を実施することである。このことにより、本発明の方法および本発明の装置およびその各実施形態や発展形態の上述の各利点を組み合わせることができる。